特許第6796663号(P6796663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6796663電気生理学的処置中に医療デバイスを測位するシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796663
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】電気生理学的処置中に医療デバイスを測位するシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/06 20060101AFI20201130BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20201130BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20201130BHJP
   A61B 5/0492 20060101ALI20201130BHJP
   A61B 5/044 20060101ALI20201130BHJP
   A61B 5/0402 20060101ALI20201130BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20201130BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20201130BHJP
   A61M 25/095 20060101ALI20201130BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   A61B5/06
   A61B5/04 300J
   A61B5/04 314K
   A61B5/04 310M
   A61B18/12
   A61B34/10
   A61M25/095
   G01B7/00 103M
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-566858(P2018-566858)
(86)(22)【出願日】2017年4月25日
(65)【公表番号】特表2019-534054(P2019-534054A)
(43)【公表日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】US2017029428
(87)【国際公開番号】WO2017222634
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2019年2月4日
(31)【優先権主張番号】62/353,252
(32)【優先日】2016年6月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ マーコヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】フージャン チュイ
(72)【発明者】
【氏名】ウェンウェン リー
(72)【発明者】
【氏名】ルーク マクスパデン
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/061387(WO,A1)
【文献】 特開2016−105803(JP,A)
【文献】 特表2014−523776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04−5/06
A61B 18/12
A61B 34/10
A61M 25/095
G01B 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の電気生理学的処置中に医療デバイスを測位するシステムであって、
プロセッサを備え、前記プロセッサは、
前記心臓内に挿入された第1カテーテルに含まれる少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して前記心臓内で測定された磁気的測位データを使用して、前記磁気的測位データを含む心臓モデルを生成する処理、及び
前記心臓モデルを生成する処理の後、前記電気生理学的処置中に、前記心臓内に挿入された電気生理学カテーテルに含まれる少なくとも一つの磁気式測位センサの測位と、前記心臓モデルに含まれる前記磁気的測位データとを使用して、前記心臓モデルに定義された座標系内で前記電気生理学カテーテルを測位する処理
を実行する、システム。
【請求項2】
前記電気生理学的処置が、電気生理学マッピングを含む、請求項1に記載のシステム
【請求項3】
前記電気生理学カテーテルが、複数電極を有する電気生理学マッピング・カテーテルを備える、請求項1に記載のシステム
【請求項4】
前記電気生理学カテーテルが、非接触型の電気生理学マッピング・カテーテルを備える、請求項3に記載のシステム
【請求項5】
前記電気生理学的処置が、アブレーションを含む、請求項1に記載のシステム
【請求項6】
前記プロセッサは、前記電気生理学カテーテルが前記心臓内で移動したときに、前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、前記心臓モデルに定義された前記座標系内で前記電気生理学カテーテルを再度測位する処理をさらに実行する、請求項1に記載のシステム
【請求項7】
記電気生理学カテーテルを測位する処理が、前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサの回転角を決定する処理をさらに含む、請求項1に記載のシステム
【請求項8】
前記電気生理学カテーテルが、少なくとも一つの放射線不透過性マーカを備えており、前記回転角を決定する処理が、前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサの前記回転角を決定するために、前記少なくとも一つの放射線不透過性マーカの決定された位置を使用することを含む、請求項7に記載のシステム
【請求項9】
前記電気生理学カテーテルが、複数電極を有する電気生理学マッピング・カテーテルを備えており、
前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサの前記回転角を決定する処理では、前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサの前記回転角を決定するために、前記電気生理学マッピング・カテーテルの前記複数電極によって生成される電界が使用される、請求項7に記載のシステム
【請求項10】
前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサが、前記電気生理学カテーテルのシャフト上に位置している、請求項1に記載のシステム
【請求項11】
前記プロセッサは、前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、前記電気生理学的処置中に前記心臓内での前記電気生理学カテーテルの移動を補償する処理をさらに実行する、請求項1に記載のシステム
【請求項12】
前記電気生理学的処置中に前記電気生理学カテーテルの移動を補償する処理が、前記電気生理学カテーテルが前記心臓内で移動した場合に、前記測位する処理を繰り返すことを含む、請求項11に記載のシステム
【請求項13】
前記電気生理学的処置が、診断行為を含む、請求項1に記載のシステム
【請求項14】
前記電気生理学的処置が、治療行為を含む、請求項1に記載のシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年6月22日に出願された米国仮出願第62/353,252号の利益を主張し、この米国仮出願は、本明細書において十分に記載されているかのように参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、心臓の診断行為(例えば、マッピング)及び治療行為(例えば、アブレーション)などの電気生理学的処置に関する。特に、本開示は、解剖学的モデルの作成のための、及び電気生理学研究を行うためのシステム、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な医療行為に関連して解剖学的モデルを作成することが望ましい。例えば、心臓モデルは、心臓の電気生理学研究に関連して作成されることが多い。当業者は、心臓の電気生理学研究において用いる心臓モデルを獲得し、表示するための多くの手法(例えば、ロービング・カテーテルを使用して、表面が適合される多数の幾何学的点を収集すること)に精通しているであろう。
【0004】
心臓モデルが作成されると、そのモデルは、例えば、一つ又は複数の電気生理学マップを表示するために使用され得る。一般に、電気生理学マップは、複数の電気生理学データ点から作成され、この電気生理学データ点の各々は、測定された電気生理学データと位置データとの両方を含んでおり、測定された電気生理学情報が、空間内の特定の位置と関連付けられることを可能にし(つまり、測定された電気生理学情報が患者の心臓上のある点における電気的活動を示すものとして解釈されることを可能にし)、したがって、心臓モデル上の適当な位置に表示されることを可能にする。
【0005】
非接触型電気生理学的マッピングに対する一定の現存するアプローチにおいては、非接触型の複数電極を有するマッピング・カテーテルが、心臓内へ最初に導入される。マッピング・カテーテルが配置されると、心臓モデルを作成するために、ロービング・カテーテルが導入される。しかしながら、マッピング・カテーテルの存在は、例えば、心臓の部分へのロービング・カテーテルによるアクセスを妨げることによって、心臓モデルの作成を複雑にすることがある。さらに、心臓モデルの作成中にマッピング・カテーテルが移動する場合、心臓モデルは無効になることがある。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において開示されるものは、心臓電気生理学的処置を実行する方法であって、少なくとも一つの磁気式測位センサを含むカテーテルを患者の心臓内へ挿入するステップと、カテーテルを使用して、心臓モデルを生成するステップであって、心臓モデルは、少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して測定された磁気的測位データを含む、生成するステップと、患者の心臓からカテーテルを除去するステップと、患者の心臓からカテーテルを除去した後に、少なくとも一つの磁気式測位センサを含む電気生理学カテーテルを患者の心臓内へ挿入するステップと、電気生理学カテーテルを患者の心臓内の初期位置に配置するステップと、電気生理学カテーテルの少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、心臓モデルに定義された座標系内で電気生理学カテーテルを測位するステップと、電気生理学カテーテルを使用して、電気生理学的処置を実行するステップと、を含む、方法である。電気生理学カテーテルの少なくとも一つの磁気式測位センサは、電気生理学カテーテルのシャフト上に配置され得る。
【0007】
電気生理学的処置は、電気生理学マッピングなどの診断行為、アブレーションなどの治療行為、又は、両方の組み合わせとすることができる。
【0008】
電気生理学デバイスは、非接触型電気生理学マッピング・カテーテルなどの複数電極を有する電気生理学マッピング・カテーテルとすることができる。
【0009】
実施形態において、本方法は、初期位置から後続の位置への電気生理学カテーテルの移動を監視することと、電気生理学カテーテルの少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、心臓モデルに定義された座標系内で電気生理学カテーテルを再度測位することと、も含むことができる。
【0010】
電気生理学カテーテルの少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、心臓モデルに定義された座標系内で電気生理学カテーテルを測位することが、電気生理学カテーテルの少なくとも一つの磁気式測位センサの回転角を決定することを含むことができることも想定される。例えば、電気生理学カテーテルは、電気生理学カテーテルの少なくとも一つの磁気式測位センサの回転角を決定するために使用される、少なくとも一つの放射線不透過性マーカを含むことができる。別の例として、電気生理学カテーテルの少なくとも一つの磁気式測位センサの回転角は、電気生理学マッピング・カテーテル上で複数の電極を使用して決定され得る。
【0011】
本開示の別の実施形態によれば、電気生理学的処置を実行する方法は、プローブを使用して、解剖学的領域のモデルを生成することであって、プローブは、少なくとも一つの磁気式測位センサを含んでおり、モデルは、少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して測定された磁気的測位データを含む、生成することと、解剖学的領域内に電気生理学デバイスを配置することであって、電気生理学デバイスが、少なくとも一つの磁気式測位センサを含む、配置することと、電気生理学デバイスの少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、モデルに定義された座標系内に電気生理学デバイスを測位することと、電気生理学デバイスを使用して、電気生理学的処置を実行することと、を含む。
【0012】
本方法は、電気生理学デバイスの少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、電気生理学的処置中に電気生理学デバイスの移動を補償することを含むことができる。例えば、もし電気生理学デバイスが移動した場合には、測位するステップが繰り返され得る。
【0013】
電気生理学的処置は、診断行為及び/又は治療行為を含むことができる。
【0014】
電気生理学デバイスは、複数の電極を含むことができ、電気生理学デバイスの少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、モデルに定義された座標系内で電気生理学デバイスを測位することは、電気生理学デバイスの回転角を決定するために複数の電極を使用することを含むことができる。
【0015】
代替的に、電気生理学デバイスは、放射線不透過性マーカを含むことができ、電気生理学デバイスの少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、モデルに定義された座標系内で電気生理学デバイスを測位することは、電気生理学デバイスの回転角を決定するために放射線不透過性マーカを使用することを含むことができる。
【0016】
本開示のさらに別の実施形態において、電気生理学的処置を実行する方法は、少なくとも一つの磁気式測位センサを搭載するプローブを解剖学的領域内へ挿入することと、少なくとも一つの磁気式測位センサが解剖学的領域を移動するにつれて、少なくとも一つの磁気式測位センサの複数の位置を測定することによって、解剖学的領域のモデルを生成することと、解剖学的領域からプローブを除去することと、解剖学的領域からプローブを除去した後に、少なくとも一つの磁気式測位センサを含む電気生理学デバイスを解剖学的領域内の初期位置に配置することと、電気生理学デバイスの少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、解剖学的領域のモデルに定義された座標系内で電気生理学デバイスの初期位置を測位することと、電気生理学デバイスを使用して、電気生理学的処置を実行することと、を含む。
【0017】
本方法は、初期位置から後続の位置への電気生理学デバイスの移動を監視することと、電気生理学デバイスの少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、解剖学的領域のモデルに定義された座標系内で電気生理学デバイスの後続の位置を測位することと、を含むことができる。
【0018】
電気生理学デバイスの少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、解剖学的領域のモデルに定義された座標系内で電気生理学デバイスの初期位置を測位することは、電気生理学デバイスの回転角を決定することを含むことができることも予想される。
【0019】
本発明の前述の及び他の態様、特徴、詳細、有用性、及び利点は、下記の説明及び特許請求の範囲を読むことから、ならびに添付の図面を検討することから、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電気生理学的処置において使用され得るような測位システムの概略図である。
【0021】
図2】本明細書において説明されるような心臓の幾何学的形状を作成するために使用され得るような例示的なカテーテルを示す図である。
【0022】
図3】本明細書において開示されるような電気生理学的処置を行うために使用され得るような例示的な電気生理学カテーテルを示す図である。
【0023】
図4】本明細書において開示されるような電気生理学的処置の実行時に行われ得る代表的なステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、電気生理学研究に関連した解剖学的モデルの作成のための方法、装置、及びシステムを提供する。例証の目的のために、例示的な実施形態は、本明細書において、心臓電気生理学マッピングという状況下で詳細に説明されるであろう。しかしながら、本明細書において説明される方法、装置、及びシステムは、心臓アブレーションを含むが、これに限定されない、他の状況において利用され得ることが想定される。
【0025】
図1は、一つもしくは複数の医療デバイス(例えば、一つもしくは複数のカテーテル13)を操作及び測位し、一つもしくは複数の心臓モデルを作成し、(楕円形として概略的に描かれた)患者11の心臓10において発生する電気的活動を測定し、ならびに/又は測定された電気的活動及び/もしくは測定された電気的活動に関連する情報もしくは測定された電気的活動を表す情報を心臓モデル上にマッピング及び表示することによって、心臓電気生理学研究を行うためのシステム8の概略図を示す。システム8は、心臓10に対して治療(例えば、アブレーション)を提供するためにも使用され得る。
【0026】
したがって、システム8は、典型的には3次元空間内の物体の位置、及び、いくつかの態様においては向きを決定し、それらの位置を、少なくとも一つの基準(例えば、腹部パッチ21及び/又は固定された基準31)に関連して決定された位置情報として表現することができる。このデータは、ひいては、当業者が精通しているように、一つ又は複数のロービング測位要素を使用して、患者の心臓10のモデルを作成するために使用され得る。
【0027】
システム8は、心臓表面に沿った複数の点において電気生理学データを測定し、電気生理学データが測定された各測定点についての位置情報に関連付けて測定データを記憶するためにも使用され得る。これらの電気生理学データ点は、知られている技法に従って、患者の心臓10の一つ又は複数の電気生理学マップを作成するために使用され得る。
【0028】
図1に示されるように、及び本明細書において説明されるように、システム8は、インピーダンス・ベースの測位機能と、磁気ベースの測位機能との両方を組み込んだハイブリッド・システムである。いくつかの実施形態において、システム8は、St.Jude Medical,Inc.のEnSite(商標)Velocity(商標)心臓マッピング及び視覚化システムを含み、これは、電界を生成し、又は電気的測位フィールドに依存する別の測位システムを生成する。Biosense Webster,Inc.のCARTOナビゲーション及びロケーション・システム、Northern Digital Inc.のAURORA(登録商標)システム、SterotaxisのNIOBE(登録商標)Magnetic Navigation System、ならびに、どちらもSt.Jude Medical,Inc.からのものである、MediGuide(商標)技術及びEnSite Precision(商標)システムを含むが、これらに限定されない、他の測位システムが、本教示に関連して使用されてもよい。当業者がそのような測位システムの基本動作を認識する限りにおいて、それらのシステムは、本開示を理解するために必要な程度においてのみ本明細書において説明される。
【0029】
コンピュータ20は、従来の汎用コンピュータ、専用コンピュータ、分散コンピュータ、又は任意の他のタイプのコンピュータを含んでもよい。コンピュータ20は、一つ又は複数のプロセッサ28、例えば、単一の中央処理装置(CPU)、又は並列処理環境と一般に称される、複数の処理装置などを含んでもよく、これらは、本明細書において開示される様々な態様を実施する命令を実行し得る。
【0030】
例証を簡単にするために、患者11は、楕円形として概略的に示される。図1に示される実施形態において、表面電極の三つのセット(例えば、パッチ電極12、14、16、18、19、及び22)は、電流源25に結合されて示される。
【0031】
図1は、磁気源30も示しており、磁気源30は、磁界発装置に結合される。明瞭さのために、図1には二つの磁界発生装置32及び33のみが示されるが、本教示の範囲から逸脱せずに、付加的な磁界発生装置(例えば、パッチ電極12、14、16、18、19、及び22によって定義されるものと類似する三つの概ね直交する軸を定義する、合計6つの磁界発生装置)が使用され得ることが理解されるべきである。
【0032】
上述したように、システム8は、例えば、少なくとも一つの測位センサを有する代表的なカテーテル13を使用して、心臓モデルを作成するために使用され得る。カテーテル13(又は、複数のそのようなカテーテル)は、典型的には、一つ又は複数の導入器を介して、及び、よく知られている手順を使用して、患者の心臓及び/又は血管系内へ導入されることが理解されるべきである。本開示の目的のために、例示的なカテーテル13のセグメントが、図2に示される。図2において、カテーテル13は、経中隔シース35を通って患者の心臓10の左心室50内へ延在する。左心室への経中隔アプローチの使用は、周知であり、本明細書においてさらに説明される必要はない。カテーテル13は、任意の他の適切な手法で心臓10内へ導入されることも可能である。
【0033】
図2は、カテーテル13によって搭載される複数の要素17、52、54、56も示す。本開示の態様によれば、要素17、52、54及び56のうちの少なくとも一つは、磁界発生装置32、33と共に動作する磁気源30によって生成され得るような磁気的測位フィールド内でカテーテル13の測位を可能にする磁気センサである。同様に、要素17、52、54、56のうちの少なくとも一つは、パッチ電極12、14、16、18、19、22と共に動作する電流源25によって生成され得るようなインピーダンス・ベースの測位フィールド内でカテーテル13の測位を可能にする電極である。
【0034】
いずれにしても、当業者は、そのようなカテーテルを使用して、カテーテル13が心腔を通って移動するにつれて収集される複数の幾何学点から心臓モデルを作成することに精通しているであろう。下記に詳細に説明されるように、本開示の実施形態において、カテーテル13の磁気的な測位は、複数の幾何学点及び結果として生じる心臓モデルを生成するために使用される。
【0035】
システム8は、一つ又は複数の電気生理学マップを作成するためにも使用され得る。一般に、電気生理学マップは、複数の電気生理学データ点から作成され、電気生理学データ点の各々は、測定された電気生理学データと位置データとの両方を含んでおり、測定された電気生理学情報が、空間内の特定の位置と関連付けられることを可能にする(つまり、測定された電気生理学情報が、患者の心臓10上のある点における電気的活動を示すものとして解釈されることを可能にする)。
【0036】
図3は、本明細書における教示に従って、電気生理学的処置(例えば、電気生理学マッピング)を行うために左心室50内に配置される、St.Jude Medical,Inc.のEnSite(商標)Array(商標)非接触型マッピング・カテーテルなどの、代表的な電気生理学カテーテル60を示す。電気生理学カテーテル60は、電極アレイ62と、例えば、スタイレット64の使用を通じて、又はアレイ62内部のバルーン63の膨張などを介して、電極アレイ62を安定した再現可能な幾何学的形状に配置するために拡張され得る膨張可能なバルーン63とを含む。
【0037】
電極アレイ62は、編み込んだ絶縁ワイヤ66を含む。絶縁体は、複数の電極68を形成するために所定の位置においてワイヤ66から除去され得る。代表的な電気生理学カテーテル60のさらなる詳細は、米国特許第6,240,307号において説明されており、この米国特許は、本明細書において十分に記載されているかのように参照によって本明細書に組み込まれる。
【0038】
本開示の態様によれば、電気生理学カテーテル60は、磁気式測位センサ70も含んでおり、磁気式測位センサ70は、磁界発生装置32、33と共に動作する磁気源30によって電気生理学カテーテル60が磁気的に測位されることを可能にする。実施形態において、磁気式測位センサ70は、電極アレイ62の近くの電気生理学カテーテル60のシャフト72上に位置している。図3に示される実施形態において、磁気式測位センサ70は、電極アレイ62に近位の位置においてシャフト72内に埋め込まれる。他の実施形態において、磁気式測位センサ70は、シャフト72の長さに沿った他の位置に配置され得る。例えば、磁気式測位センサ70は、センサ70がアレイ62に関して中心に位置するように、バルーン63と同心円の(co−radial)シャフト72の一部内に埋め込まれ得る。
【0039】
ここで、本開示の様々な態様が、図4を参照して説明されるであろう。図4は、本開示の態様に従って心臓電気生理学的処置を行うための例示的な方法400の代表的なステップを示すフローチャートである。いくつかの実施形態において、例えば、図4は、図1のコンピュータ20によって(例えば、下記にさらに説明されるように、一つ又は複数の特殊なモジュールを実行する、一つ又は複数のプロセッサ28によって)行われ得る、いくつかの例示的なステップを表し得る。
【0040】
本明細書における教示は、ソフトウェア実装及び/又はハードウェア実装され得ること、ならびに、それらは、一つ又は複数のスレッドを有し得る単一のCPU上で実行されてもよく、又は並列処理環境において、その各々が一つ又は複数のスレッドを有し得る複数のCPUにわたって分散されてもよいことが理解されるべきである。
【0041】
図4のブロック402において、磁気的に測位可能なカテーテル(つまり、少なくとも一つの磁気式測位センサを含むカテーテル)が、患者の心臓内へ挿入される。例えば上記で説明したように、図2に示されるような一つ又は複数の磁気式測位センサ(例えば、17、52、54、56のうちの一つ又は複数)を搭載するカテーテル13は、経中隔導入器35を介して、患者の心室50内へナビゲートされ得る。
【0042】
ブロック404において、磁気的に測位可能なカテーテルが、心臓モデルを生成するために使用される。例えば上記で説明したように、カテーテル13を心室50内に亘って移動させ、磁界発生装置32、33と共に磁気源30によって生成される磁気的測位フィールド内において、磁気式測位センサの位置を周期的に検出することにより、多数の幾何学点を収集することができる。そして、そのような多数の幾何学点から、心臓の幾何学的形状の3次元モデルを作成することについては、様々なアプローチが公知である。結果として生じるモデルは、カテーテル13上の磁気センサを使用して測定された磁気的測位データを含む。
【0043】
ブロック406において、磁気的に測位可能なカテーテルが、患者の心臓から除去される。例えば、カテーテル13は、経中隔導入器35を通って引き抜かれ得る。他方で、導入器35は、下記に説明するように、電気生理学的処置におけるさらなるステップのために、適所に残され得る。
【0044】
ブロック408において、例えば図3に示されるように、電気生理学(EP)カテーテル60が、患者の心臓内へ挿入される。上記で説明したように、電気生理学カテーテル60は、少なくとも一つの磁気式測位センサ70を有しており、磁気的に測位可能となっている。これにより、下記にさらに詳細に説明されるように、電気生理学カテーテル60は、ブロック404において作成された心臓モデル内で、測位されることができる。
【0045】
ブロック410において、電気生理学カテーテル60が、初期位置に配置され、電気生理学データ点を収集するために準備される。ブロック410に包含されるイベントの詳細な手順は、電気生理学カテーテル毎に異なってもよい。例えば、EnSite(商標)Array(商標)カテーテルの場合には、電気生理学カテーテル60が配置された後に、電極アレイ62は拡張されることが可能であり、これは電気的活動を記録するための電極68を心臓の表面上に位置付ける。
【0046】
ブロック412において、電気生理学カテーテル60上の少なくとも一つの磁気式測位センサ70の測位と、心臓モデルにおける磁気的測位データとを少なくとも使用することにより、電気生理学カテーテル60の位置が、ブロック404において作成された心臓モデル内で測位される。例えば、一つ又は複数の基準点(例えば、左心室先端)が識別されることが可能であり、電気生理学カテーテル60の少なくとも一つの磁気センサ70と、心臓モデルにおける測位データとの両方を使用するその測位は、心臓モデル内で電気生理学カテーテル60の初期測位を確認するために使用され得る。
【0047】
ブロック412における電気生理学カテーテル60の初期測位は、電気生理学カテーテル60の回転角を決定することも含むことができる。より詳細には、ブロック412は、電気生理学カテーテル60によって搭載される少なくとも一つの磁気式測位センサ70の回転角を決定することを含むことができる。本開示の実施形態において、電気生理学カテーテル60は、放射線不透過性マーカ74を含んでおり、蛍光透視法を使用して決定されるような、放射線不透過性マーカ74の位置は、電気生理学カテーテル60の回転角を決定するために使用される。
【0048】
本開示の他の実施形態、例えば、複数電極を有する電気生理学カテーテル60を利用する実施形態などにおいて、電極によって作成される電界は、電気生理学カテーテル60の回転角を決定するために使用され得る。
【0049】
さらに別の実施形態において、磁気センサ70は、電気生理学カテーテル60の回転角を決定するために独立して使用され得る、6自由度の磁気センサとすることができる。
【0050】
さらなる実施形態において、二つの磁気センサ70は、電気生理学カテーテル60の回転角を決定するために共に使用され得る。
【0051】
電気生理学カテーテル60が心臓モデル内で測位されると、電気生理学カテーテル60の回転角の任意の決定を含めて、電気生理学的処置がブロック414において行われ得る。例えば、電気生理学カテーテル60は、電気生理学的マッピングなどの診断行為を実行するために(例えば、電気生理学カテーテル60によって感知された生信号から電気信号を計算すること、及び、実施形態において、計算された電気信号を心臓モデル上に表示すること)、ならびに/又はアブレーションなどの治療行為を実行するために使用され得る。
【0052】
心臓において複数のカテーテルを用いて行われる、多くの現存する電気生理学的処置とは対照的に、上記で説明した電気生理学的処置は、心腔内で単一のカテーテル(すなわち、電気生理学カテーテル60)のみを用いて行われる。これにより、電気生理学的処置中に、電気生理学カテーテル60がその初期位置から移動してしまうというリスクが最小限になる。
【0053】
それでもなお、電気生理学的処置中に、電気生理学カテーテル60が故意に又は偶然に移動される場合があることが理解されるべきである。したがって、本開示の態様によれば、ブロック416では、例えば初期位置(ブロック410)からその後の位置への電気生理学カテーテル60の移動が監視される。
【0054】
移動が検出された場合、ブロック418は、電気生理学カテーテル60の新しい測位に応じた調整(例えば、補正)を実行することができ、それによって、過去に収集されたデータが無効になることを最小限にし、又は取り除き、電気生理学的処置を実質的に中断せずに継続することができることを保証する。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態が、一定程度の詳細さで上記に説明されてきたが、当業者は、本発明の趣旨又は範囲から逸脱せずに、開示された実施形態に対して数多くの変更を行い得る。
【0056】
例えば、上記に説明した実施形態において、第1の磁気的に測位可能なカテーテル(例えば、カテーテル13)は、幾何学的形状を生成するために使用され、第2の磁気的に測位可能なカテーテル(例えば、カテーテル60)は、電気生理学的処置を行うために使用される。しかしながら、他の実施形態において、単一の磁気的に測位可能なカテーテル(例えば、カテーテル60)は、幾何学的形状を生成することと、電気生理学的処置を行うこととの両方のために使用されてもよい。
【0057】
あらゆる方向への言及(例えば、上部、下部、上方、下方、左、右、左方向、右方向、頂部、底部、上、下、垂直、水平、時計回り、及び反時計回り)は、本発明についての読者の理解を助ける識別目的のために使用されているにすぎず、特に本発明の位置、向き、又は使用に関して、限定を与えるものではない。接合への言及(例えば、取り付けられる、結合される、接続される等)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続間の中間部材及び要素間の相対的移動を含んでもよい。そのため、接合への言及は、必ずしも二つの要素が直接接続されており、互いに固定された関係にあることを暗示するとは限らない。
【0058】
上記の説明に含まれ、又は添付の図面において示されるあらゆる事柄は、限定ではなく、あくまでも例示として解釈されるべきことが意図される。詳細又は構造における変化は、添付の特許請求の範囲において定義されるような本発明の精神から逸脱せずに行われ得る。以下に、本明細書で開示される発明を列記する。
[項目1]
心臓の電気生理学的処置を実行する方法であって、
少なくとも一つの磁気式測位センサを含むカテーテルを患者の心臓内へ挿入すること、
前記カテーテルを使用して心臓モデルを生成することであって、前記心臓モデルは、前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して測定された磁気的測位データを含む、生成すること、
前記患者の心臓から前記カテーテルを除去すること、並びに、
前記患者の心臓から前記カテーテルを除去した後に、
少なくとも一つの磁気式測位センサを含む電気生理学カテーテルを前記患者の心臓内へ挿入すること、
前記電気生理学カテーテルを前記心臓内の初期位置に配置すること、
前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、前記心臓モデルに定義された座標系内で前記電気生理学カテーテルを測位すること、及び
前記電気生理学カテーテルを使用して、前記電気生理学的処置を実行すること、
を含む方法。
[項目2]
前記電気生理学的処置が、電気生理学マッピングを含む、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記電気生理学デバイスが、複数電極を有する電気生理学マッピング・カテーテルを備える、項目1に記載の方法。
[項目4]
前記電気生理学デバイスが、非接触型の電気生理学マッピング・カテーテルを備える、項目3に記載の方法。
[項目5]
前記電気生理学的処置が、アブレーションを含む、項目1に記載の方法。
[項目6]
前記初期位置からその後の位置への前記電気生理学カテーテルの移動を監視すること、及び
前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、前記心臓モデルに定義された前記座標系内で前記電気生理学カテーテルを再度測位すること、
をさらに含む項目1に記載の方法。
[項目7]
前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、前記心臓モデルに定義された座標系内で前記電気生理学カテーテルを測位することが、前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサの回転角を決定することをさらに含む、項目1に記載の方法。
[項目8]
前記電気生理学カテーテルが、少なくとも一つの放射線不透過性マーカを備えており、前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサの前記回転角を決定することが、前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサの前記回転角を決定するために、前記少なくとも一つの放射線不透過性マーカを使用することを含む、項目7に記載の方法。
[項目9]
前記電気生理学デバイスが、複数電極を有する電気生理学マッピング・カテーテルを備えており、前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサの前記回転角を決定することが、前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサの前記回転角を決定するために、前記電気生理学マッピング・カテーテルの前記複数電極を使用することを含む、項目7に記載の方法。
[項目10]
前記電気生理学カテーテルの前記少なくとも一つの磁気式測位センサが、前記電気生理学カテーテルのシャフト上に位置している、項目1に記載の方法。
[項目11]
電気生理学的処置を実行する方法であって、
プローブを使用して、解剖学的領域のモデルを生成することであって、前記プローブは、少なくとも一つの磁気式測位センサを備えており、前記モデルは、前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して測定された磁気的測位データを含む、生成すること、
前記解剖学的領域内に電気生理学デバイスを配置することであって、前記電気生理学デバイスが、少なくとも一つの磁気式測位センサを備える、配置すること、
前記電気生理学デバイスの前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、前記モデルに定義された座標系内に前記電気生理学デバイスを測位すること、及び
前記電気生理学デバイスを使用して、前記電気生理学的処置を実行すること、
を含む方法。
[項目12]
前記電気生理学デバイスの前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、前記電気生理学的処置中に前記電気生理学デバイスの移動を補償することをさらに含む、項目11に記載の方法。
[項目13]
前記電気生理学的処置中に前記電気生理学デバイスの移動を補償することが、前記電気生理学デバイスが移動した場合に、前記測位するステップを繰り返すことを含む、項目12に記載の方法。
[項目14]
前記電気生理学的処置が、診断行為を含む、項目11に記載の方法。
[項目15]
前記電気生理学的処置が、治療行為を含む、項目11に記載の方法。
[項目16]
前記電気生理学デバイスが、複数電極を備えており、前記電気生理学デバイスの前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、前記モデルに定義された座標系内で前記電気生理学デバイスを測位することが、前記電気生理学デバイスの回転角を決定するために前記複数電極を使用することをさらに含む、項目11に記載の方法。
[項目17]
前記電気生理学デバイスが、放射線不透過性マーカを備えており、前記電気生理学デバイスの前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、前記モデルに定義された座標系内で前記電気生理学デバイスを測位することが、前記電気生理学デバイスの回転角を決定するために前記放射線不透過性マーカを使用することをさらに含む、項目11に記載の方法。
[項目18]
電気生理学的処置を実行する方法であって、
少なくとも一つの磁気式測位センサを搭載するプローブを解剖学的領域内へ挿入すること、
前記少なくとも一つの磁気式測位センサが前記解剖学的領域を移動するにつれて、前記少なくとも一つの磁気式測位センサの複数の位置を測定することによって、前記解剖学的領域のモデルを生成すること、並びに
前記解剖学的領域から前記プローブを除去し、前記解剖学的領域から前記プローブを除去した後に、
少なくとも一つの磁気式測位センサを含む電気生理学デバイスを前記解剖学的領域内の初期位置に配置すること、
前記電気生理学デバイスの前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、前記解剖学的領域の前記モデルに定義された座標系内で前記電気生理学デバイスの前記初期位置を測位すること、及び
前記電気生理学デバイスを使用して、前記電気生理学的処置を実行すること、
を含む方法。
[項目19]
前記初期位置からその後の位置への前記電気生理学デバイスの移動を監視すること、及び
前記電気生理学デバイスの前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、前記解剖学的領域の前記モデルに定義された前記座標系内で前記電気生理学デバイスの前記その後の位置を測位すること、
をさらに含む項目18に記載の方法。
[項目20]
前記電気生理学デバイスの前記少なくとも一つの磁気式測位センサを使用して、前記解剖学的領域の前記モデルに定義された座標系内で前記電気生理学デバイスの前記初期位置を測位することが、前記電気生理学デバイスの回転角を決定することをさらに含む、項目18に記載の方法。
図1
図2
図3
図4