(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
処理水に含まれる汚濁物質が堆積する傾斜部と、該傾斜部を10[mm]以上の高さで昇降させる昇降部と、該昇降部による前記傾斜部の昇降を制御する制御部と、を備え、
前記傾斜部は、複数の傾斜板と、該複数の傾斜板を支持するフレームと、該フレームに前記傾斜板を連結する連結部と、を有し、
前記連結部は、前記傾斜板に固定された第1部分と、前記フレームに固定された第2部分と、を有し、
前記第1部分は、前記傾斜板の長手方向における両端と、下端とが開放されるように曲折された板状の部材であり、
前記第2部分は、前記長手方向に延びる軸状または棒状の部材であり、
前記第1部分を前記第2部分に引っ掛けることで、前記第1部分と前記第2部分とは、下方側に遊びを有して係合しており、
前記制御部は、前記昇降部を制御して、前記傾斜部の下降速度を50[mm/s]以上または自由落下による落下速度以上にすることを特徴とする沈降装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示に係る沈降装置および堆積物除去装置の実施形態を説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る沈降装置6および堆積物除去装置7を適用した沈澱池1の一例を示す断面図である。
図1には、沈澱池1の長さ方向に平行なX軸と、沈澱池1の幅方向に平行なY軸と、沈澱池1の深さ方向(鉛直方向)に平行なZ軸の3軸からなる直交座標系が示されている。以下では、この直交座標系を用いて、沈澱池1、沈降装置6、および堆積物除去装置7の各部を説明する場合がある。
【0013】
本実施形態の沈澱池1は、たとえば、上水、下水、その他の廃水などの処理水を浄化する設備である。より具体的には、本実施形態の沈澱池1は、たとえば、下水処理施設の最終沈澱池であり、沈砂池、最初沈澱池、およびエアレーションタンクを通過した処理水が流入する。
【0014】
沈澱池1は、たとえば、処理水流入部2と、ピット3と、掻寄機4と、阻流壁5と、沈降装置6と、堆積物除去装置7と、越流トラフ8と、処理水流出部9と、を備えている。処理水流入部2は、沈澱池1における処理水の最上流部であり、沈澱池1の上流側の設備で処理された処理水を沈澱池1に流入させる。ピット3は、たとえば、処理水の上流側(X軸−側)が下流側(X軸+側)よりも低くなるように傾斜した沈澱池1の底部の最上流部に、凹状に設けられている。図示を省略するが、ピット3の底部には、たとえば、ポンプに接続された排出口が設けられている。
【0015】
掻寄機4は、たとえば、一対のチェーン41と、複数のスプロケットホイール42と、複数のフライト43と、駆動装置44と、を備えている。一対のチェーン41は、沈澱池1の長さ方向(X軸方向)、すなわち沈澱池1の上流部における処理水の流れ方向に、おおむね平行に配置されている。また、一対のチェーン41は、沈澱池1の幅方向(Y軸方向)、すなわち処理水の流れ方向に交差する水平方向に、間隔をあけて配置されている。
【0016】
スプロケットホイール42は、たとえば、沈澱池1の幅方向に延びるシャフトの両端部に設けられている。スプロケットホイール42は、たとえば、沈澱池1の底部において、ピット3の下流側(X軸+側)と沈澱池1の最下流部に間隔をあけて配置されている。また、スプロケットホイール42は、沈澱池1を流れる処理水の水面近傍において、ピット3の下流側と阻流壁5の上流側(X軸−側)に間隔をあけて配置されている。
図1に示す例では、沈澱池1の幅方向(Y軸方向)の一方側に配置された四つのスプロケットホイール42に一方のチェーン41が架け渡され、沈澱池1の幅方向の他方側に配置された四つのスプロケットホイール42に他方のチェーン41が架け渡されている。
【0017】
フライト43は、たとえば、沈澱池1の幅方向(Y軸方向)に延びる細長い板状の部材である。沈澱池1の幅方向において、フライト43の一端が一方のチェーン41に取り付けられ、フライト43の他端が他方のチェーン41に取り付けられている。複数のフライト43は、たとえば、無端状のチェーン41の全周にわたって等間隔に設けられているが、
図1では、便宜上、一部のフライト43の図示を省略している。
【0018】
駆動装置44は、たとえば、モータ、ギア、チェーンなどによって構成され、スプロケットホイール42を回転させて、一対のチェーン41を循環駆動させる。
図1に示す例において、駆動装置44は、一対のチェーン41が右回りに回転するように、スプロケットホイール42を駆動する。駆動装置44の大部分は、処理水の水面よりも上方の水上部に配置されている。
【0019】
阻流壁5は、沈澱池1の長さ方向(X軸方向)において、沈澱池1の上流部における処理水の流れ方向の下流側(X軸+側)に配置されている。阻流壁5は、たとえば、沈澱池1の幅方向(Y軸方向)および深さ方向(Z軸方向)におおむね平行に設けられ、沈澱池1の処理水の流れを遮るように設けられている。阻流壁5の下端は、沈澱池1の底部よりも上方に配置され、処理水の水面から所定の深さまで、処理水流入部2から処理水流出部9へ向かう処理水の流れを遮るように設けられている。
【0020】
沈降装置6は、処理水に含まれる汚濁物質が堆積する傾斜部61と、その傾斜部61を昇降させる昇降部62と、その昇降部62による傾斜部61の昇降を制御する制御部63(
図4参照)と、を備える。沈降装置6の各部の詳細は後述する。また、
図1に示す例では、昇降部62と制御部63とによって、傾斜部61に堆積した堆積物を除去する堆積物除去装置7が構成されている。換言すると、本実施形態の沈降装置6は、傾斜部61と、堆積物除去装置7とを備えている。
【0021】
越流トラフ8は、たとえば、沈降装置6を通過することで固体粒子を含む汚濁物質が沈降して除去された処理水を越流させる複数のV字状のノッチを備えている。越流トラフ8を越流した処理水は、たとえば処理水流出部9を介して、沈澱池1の下流側の設備へ流出する。
【0022】
以上のような構成を備えた沈澱池1では、処理水が次のように処理される。上流側の設備から、沈澱池1の処理水流入部2に流入した処理水は、沈澱池1における処理水の最上流部である処理水流入部2から、沈澱池1の長さ方向に下流側(X軸+側)へ向けて流れる。この過程で、処理水中の固体粒子を含む汚濁物質やフロックが沈降して、沈澱池1の底部に堆積する。沈澱池1の底部に堆積した堆積物、たとえば汚泥は、掻寄機4によって掻き取られてピット3に集められる。
【0023】
より具体的には、掻寄機4は、駆動装置44を駆動させてスプロケットホイール42を回転させることで、一対のチェーン41を循環駆動させる。これにより、沈澱池1の幅方向(Y軸方向)に延びてその両端部が一対のチェーン41に取り付けられた複数の細長い板状のフライト43が、沈澱池1の底部に沿って沈澱池1の下流側(X軸+側)から上流側(X軸−側)へ移動する。これにより、沈澱池1の底部に堆積した堆積物が、ピット3に掻き寄せられる。ピット3に集められた堆積物は、たとえば、ピット3の排出口からポンプによって吸い出される。
【0024】
沈澱池1の底部に沿って流れて阻流壁5の下方を通過した処理水は、沈降装置6の下端から上方へ向けて流れる。また、沈澱池1において、阻流壁5の下端よりも上方を流れる処理水は、阻流壁5によって堰き止められ、阻流壁5の下端をくぐるように沈澱池1の底部へ向けて流れ、沈降装置6の下端から上方へ向けて流れる。
【0025】
沈降装置6は、前述のように、傾斜部61を備えている。傾斜部61は、たとえば、複数の傾斜板、または、傾斜管を備えている。すなわち、沈降装置6は、たとえば、複数の傾斜板を備えた傾斜板沈降装置、または、傾斜管を備えた傾斜管沈降装置である。傾斜管は、たとえば、複数の傾斜した流路を備えている。
【0026】
沈降装置6の下端から上方へ向けて流入した処理水は、傾斜部61の斜面に沿って上方へ流れる。その過程で、処理水中の固体粒子を含む汚濁物質やフロックが沈降して、傾斜部61の斜面上に堆積する。傾斜部61を通過することで汚濁物質やフロックが沈降して除去された処理水は、越流トラフ8を越えて、処理水流出部9から沈澱池1の下流側の設備へ流出する。
【0027】
沈降装置6が傾斜部61を有することで、より広い面積で処理水中の汚濁物質やフロックの沈殿物を沈降および堆積させて除去することができる。すなわち、処理水中の固体粒子を含む汚濁物質を沈降させて除去する距離を短縮することができ、汚濁物質やフロックの沈殿効率および分離効率を向上させることができる。また、傾斜部61の斜面上の堆積物の一部は、傾斜部61の斜面を滑り落ちて沈澱池1の底部へ落下する。これにより、傾斜部61に堆積した堆積物を除去する頻度を低減することができる。しかしながら、傾斜部61の斜面を滑り落ちることなく、傾斜部61の斜面に付着して堆積した堆積物は、従来の技術では容易に除去することができないという課題がある。
【0028】
具体的には、前記した従来の振動式シックナーのように、傾斜部61に振動を与えても、傾斜部61に堆積した固体粒子を含む堆積物は、十分に除去することができない。より詳細には、たとえば、ボールバイブレータを用いて、傾斜部61を、1[mm]以下の振幅で、264[Hz]から383[Hz]までの周波数で振動させても、傾斜部61の斜面に堆積した堆積物は十分に除去されない。また、たとえばタービンバイブレータを用いて、傾斜部61を、1[mm]以下の振幅で、153[Hz]から414[Hz]までの周波数で振動させても、傾斜部61の斜面に堆積した堆積物は十分に除去されない。さらに、たとえばピストンバイブレータを用いて、傾斜部61を、1[mm]以下の振幅で、79[Hz]から117[Hz]までの周波数で振動させても、傾斜部61の斜面に堆積した堆積物は十分に除去されない。
【0029】
たとえば、沈澱池1に流入する処理水が下水である場合、傾斜部61の斜面に付着する主な堆積物は汚泥である。傾斜部61に付着した汚泥は、たとえば二日間以上の長時間にわたって放置されると、生物反応にともなってガスを発生させる。このガスにより、傾斜部61に付着した堆積物が処理水の表面に浮上して、処理水の水質を悪化させるおそれがある。
【0030】
傾斜部61に付着した堆積物を除去する技術として、空気洗浄装置を導入することが考えられる。空気洗浄装置は、たとえば、ブロワを作動させて散気管から空気泡を噴出することで、傾斜部61を撹拌振動させ、傾斜部61に付着した堆積物を剥離させる。しかしながら、このような空気洗浄装置は、散気管から多量の空気泡を噴出させるために、比較的に大きな動力を必要とする。さらに、傾斜部61から剥離した堆積物が空気泡によって撹拌されて処理水中に分散したり水面に浮上したりするため、傾斜部61の洗浄中は沈澱池1に対する処理水の流入を停止させる必要がある。
【0031】
以上のような従来技術の課題を解決することが可能な、本開示の一実施形態に係る沈降装置6および堆積物除去装置7の各部の構成について、
図2から
図7を参照して詳細に説明する。
【0032】
図2は、
図1に示す沈降装置6および堆積物除去装置7の模式的な拡大断面図である。
図3は、
図2に示す昇降部62の拡大図である。
図4は、昇降部62の構成の一例を示す空気圧回路図である。前述のように、本実施形態の堆積物除去装置7は、処理水の汚濁物質が堆積する傾斜部61を昇降させる昇降部62と、その昇降部62による傾斜部61の昇降を制御する制御部63と、を備えている。
【0033】
また、本実施形態の沈降装置6は、前述のように、傾斜部61と、堆積物除去装置7とを備えている。すなわち、本実施形態の沈降装置6は、処理水に含まれる汚濁物質が堆積する傾斜部61と、その傾斜部61を昇降させる昇降部62と、その昇降部62による傾斜部61の昇降を制御する制御部63と、を備えている。
【0034】
傾斜部61は、前述のように、たとえば、複数の傾斜板61a、または、傾斜管を備えている。本実施形態の沈降装置6において、傾斜部61は、複数の傾斜板61aを備えている。すなわち、本実施形態の沈降装置6は、傾斜板沈降装置である。なお、傾斜部61が傾斜管を備える場合、傾斜管は、たとえば複数の傾斜した管状の流路を有している。この場合、沈降装置6は、傾斜管沈殿装置である。
【0035】
特に限定はされないが、傾斜板61aの寸法の一例は、次のとおりである。沈澱池1の幅方向(Y軸方向)に沿う傾斜板61aの長手方向の寸法は、たとえば、1[m]から2[m]程度である。沈澱池1の深さ方向(Z軸方向)に対して傾斜した傾斜板61aの短手方向の寸法は、たとえば、0.3[m]から1[m]程度である。傾斜板61aの板厚は、たとえば、1[mm]から3[mm]程度である。
【0036】
傾斜部61は、たとえば、複数の傾斜板61aに加えて、これら複数の傾斜板61aを支持するフレーム61bと、そのフレーム61bに傾斜板61aを連結する連結部61cと、を有している。フレーム61bは、たとえば、沈澱池1の長さ方向(X軸方向)に沿って延びる横枠部61b1と、沈澱池1の深さ方向(Z軸方向)に沿って延びる縦枠部61b2とを備えている。傾斜板61aおよびフレーム61bの材質は特に限定されず、たとえば、耐食性を有する金属や樹脂によって構成することができる。なお、連結部61cの詳細については後述する。
【0037】
フレーム61bの横枠部61b1は、たとえば、沈澱池1の幅方向(Y軸方向)において、複数の傾斜板61aの一端と他端にそれぞれ二本が、上下に離隔して配置されている。フレーム61bの横枠部61b1は、たとえば、沈澱池1の長さ方向(X軸方向)におおむね平行に配置されている。フレーム61bの横枠部61b1は、たとえば、沈澱池1の幅方向における傾斜板61aの端部、すなわち傾斜板61aの長手方向の一端と他端に、連結部61cを介して連結され、複数の傾斜板61aを支持している。
【0038】
フレーム61bの縦枠部61b2は、たとえば、沈澱池1の幅方向(Y軸方向)において、複数の傾斜板61aの一端と他端にそれぞれ二本が、沈澱池1の長さ方向の上流側(X軸−側)と下流側(X軸+側)に離隔して配置されている。フレーム61bの縦枠部61b2は、たとえば、沈澱池1の深さ方向(Z軸方向)におおむね平行に配置され、上端部が処理水の水面よりも上方の水上部まで延びている。フレーム61bの縦枠部61b2は、たとえば、沈澱池1の深さ方向に離隔して配置された二本の横枠部61b1に連結され、横枠部61b1および連結部61cを介して複数の傾斜板61aを支持している。
【0039】
また、フレーム61bの縦枠部61b2は、たとえば、上端部に軸部61b3を有している。軸部61b3は、たとえば、沈澱池1の幅方向(Y軸方向)の外側へ延び、沈澱池1の外縁部によって下方から支持されている。なお、軸部61b3は、たとえば、沈澱池1の幅方向の内側へ延びていてもよい。この場合、沈澱池1の幅方向における外縁部の内側に、沈澱池1の長さ方向(X軸方向)に延びるビームを懸け渡し、そのビームによって軸部61b3を下方から支持してもよい。
【0040】
昇降部62は、前述のように、処理水の汚濁物質が堆積する傾斜部61を昇降させるように構成されている。昇降部62は、沈澱池1において処理水の水面よりも上方の水上部に設けられている。より具体的には、昇降部62は、たとえば、傾斜部61のフレーム61bに設けられた軸部61b3を下方から支持する沈澱池1の外縁部に支持されて固定されている。より詳細には、昇降部62は、たとえば、固定ブラケット11を介して、沈澱池1の外縁部に支持されて固定されている。
【0041】
昇降部62は、たとえば、傾斜部61を、処理水の流れ方向(X軸方向)に交差する幅方向(Y軸方向)の両側で支持する支持部64を有している。昇降部62は、たとえば、支持部64を昇降させることで、支持部64に支持された傾斜部61を昇降させる。より具体的には、支持部64は、たとえば、傾斜部61のフレーム61bに設けられた軸部61b3を下方から支持して昇降するように設けられている。
【0042】
また、支持部64は、たとえば、少なくとも一方向に遊びを有して傾斜部61を支持するように構成されている。より具体的には、支持部64は、たとえば、傾斜部61を下方から支持する支持底部64bと、傾斜部61の両側に空隙を介して対向する移動規制部64aと、を有している。また、支持部64は、支持底部64bの上方が開放されている。より詳細には、
図3に示す例において、支持部64は、たとえば、上部が開放されたU字型、J字型、または円弧状の断面形状を有するフック状の形状に成形されている。なお、支持部64は、たとえば円環状の形状のように上部が閉じた形状であってもよく、複数の部品で構成されていてもよい。
【0043】
支持部64は、たとえば、フック状の形状の底部の支持底部64bによって、傾斜部61のフレーム61bに設けられた軸部61b3を支持する。支持部64の移動規制部64aは、支持底部64bの上に傾斜部61のフレーム61bの軸部61b3が支持された状態で、軸部61b3に対して、沈澱池1の長さ方向(X軸方向)の両側に間隙を介して対向するように設けられている。すなわち、
図3に示す例において、支持部64は、たとえば、沈澱池1の上流方向(X軸−方向)と、沈澱池1の下流方向(X軸+方向)と、上方向の少なくとも三方向以上に遊びを有して傾斜部61を支持するように構成されている。
【0044】
昇降部62は、たとえば、エアシリンダ65と、エアシリンダ65に設けられたスピードコントローラ66と、を有している。また、支持部64は、たとえば、エアシリンダ65のピストンロッド65aに連結されている。昇降部62は、エアシリンダ65のピストンロッド65aを伸縮させることで、ピストンロッド65aに連結された支持部64を昇降させる。なお、昇降部62は、エアシリンダ65を備える構成に限定されず、たとえばギア、モータ、ボールねじ、チェーン、ワイヤロープ、リンク機構等を使用した昇降機構によって支持部64を昇降させるようにしてもよい。
【0045】
図4に示すように、昇降部62は、たとえば、エアシリンダ65と、スピードコントローラ66と、空気供給部67と、フィルタ/レギュレータ68と、電磁弁69と、を備えている。昇降部62は、たとえば、沈澱池1の幅方向(Y軸方向)の一方側と他方側に、それぞれ二つずつ、合計で四つのエアシリンダ65を備えている。
【0046】
四つのエアシリンダ65は、すべて
図4に示すエアシリンダ65と同様の構成を備える。そのため、
図4では、二つのエアシリンダ65とそれに付随する構成のみを図示し、他の二つのエアシリンダ65とそれに付随する構成の図示を省略する。なお、昇降部62が備えるエアシリンダ65の数は、特に限定されない。
【0047】
空気供給部67は、たとえば、空気を圧縮する圧縮機と、圧縮された空気を貯留するタンクとを備え、エアー用ゴムホースを介してフィルタ/レギュレータ68に接続されている。空気供給部67は、制御部63からの制御信号に基づいて、圧縮された空気をフィルタ/レギュレータ68に供給する。フィルタ/レギュレータ68は、たとえば、フィルタが内蔵された減圧弁である。フィルタ/レギュレータ68は、各エアシリンダ65に対して設けられた電磁弁69にエアチューブを介して接続され、所定の圧力に減圧された清浄な空気を電磁弁69に供給する。
【0048】
電磁弁69は、たとえば、4方向、4ポート、3位置の電磁弁である。電磁弁69は、たとえば、制御部63の制御信号に基づいて、
図4に示す全てのポートが閉じた状態と、右側が励磁された状態と、左側が励磁された状態とを切り替える。
【0049】
電磁弁69は、右側が励磁されると、右側の矢印が交差した状態になり、1番と2番のポートが接続され、4番と3番のポートが接続される。この状態で、圧縮された空気がフィルタ/レギュレータ68を介して電磁弁69に供給されると、
図4における下方側のスピードコントローラ66の逆止弁が開き、
図4におけるエアシリンダ65の下方側に圧縮された空気が供給される。
【0050】
これにより、エアシリンダ65のピストンロッド65aが
図4における上方側に移動して収縮し、支持部64が上昇する。また、ピストンロッド65aの収縮にともなって、
図4におけるエアシリンダ65の上方側から空気が排出され、
図4における上方側のスピードコントローラ66へ流入する。すると、
図4における上方側のスピードコントローラ66の逆止弁が閉じ、流量制御弁を通して空気が排出される。
【0051】
また、電磁弁69は、左側が励磁されると、左側の矢印が平行な状態になり、1番と4番のポートが接続され、2番と3番のポートが接続される。この状態で、圧縮された空気がフィルタ/レギュレータ68を介して電磁弁69に供給されると、
図4における上方側のスピードコントローラ66の逆止弁が開き、
図4におけるエアシリンダ65の上方側に圧縮された空気が供給される。
【0052】
これにより、エアシリンダ65のピストンロッド65aが
図4における下方側に移動して伸長し、支持部64が下降する。また、ピストンロッド65aの伸長にともなって、
図4におけるエアシリンダ65の下方側から空気が排出され、
図4における下方側のスピードコントローラ66へ流入する。すると、
図4における下方側のスピードコントローラ66の逆止弁が閉じ、流量制御弁を通して空気が排出される。
【0053】
すなわち、本実施形態において、スピードコントローラ66は、エアシリンダ65のメータアウト制御を行うように構成されている。また、スピードコントローラ66は、たとえば、
図4における下方側のスピードコントローラ66の流量制御弁を通過する空気の流量が、
図4における上方側のスピードコントローラ66の流量制御弁を通過する空気の流量よりも、大きくなるように設定されている。
【0054】
換言すると、スピードコントローラ66は、たとえば、ピストンロッド65aの伸長時にエアシリンダ65から排出された空気を通過させる流量制御弁の空気流量が、ピストンロッド65aの収縮時にエアシリンダ65から排出された空気を通過させる流量制御弁の空気流量よりも多くされている。これにより、
図3に示す例において、ピストンロッド65aに連結されて傾斜部61を支持する支持部64の下降速度は、支持部64の上昇速度よりも高速になる。
【0055】
このような構成により、昇降部62は、たとえば、傾斜部61の下降速度が傾斜部61の上昇速度よりも高速になるように構成されている。なお、傾斜部61の下降速度が傾斜部61の上昇速度よりも高速になる昇降部62の構成は、
図3に示す構成に限定されない。
【0056】
図5は、
図3の昇降部62の変形例を示す拡大断面図である。
図3に示す例において、昇降部62を構成するエアシリンダ65は鉛直方向に沿って配置され、ピストンロッド65aの伸縮方向は鉛直方向に沿う方向であった。これに対し、
図5に示す変形例では、エアシリンダ65は水平方向に沿って配置され、ピストンロッド65aの伸縮方向は水平方向に沿う方向である。また、この変形例において、昇降部62は、レバー機構70を備えている。
【0057】
図5に示す変形例において、エアシリンダ65は、たとえば、固定ブラケット12および支軸13を介して、沈澱池1の外縁部に支持されて固定されている。レバー機構70は、たとえば、第1アーム71と、第2アーム72と、支軸73と、連結軸74とを備えている。
【0058】
第1アーム71は、たとえば、鉛直方向に沿って延びている。第2アーム72は、たとえば、第1アーム71の下端に連結されて水平方向に沿って延びている。第1アーム71の鉛直方向に沿う長さは、第2アーム72の水平方向に沿う長さよりも長い。第1アーム71と第2アーム72は、おおむねL字状の形状を成している。支持部64は、第2アーム72の上に固定されている。
【0059】
支軸73は、たとえば、沈澱池1の幅方向(Y軸方向)に沿って延び、第1アーム71と第2アーム72との連結部に取り付けられている。支軸73は、たとえば、第1アーム71および第2アーム72を、支軸73を中心に回動自在に支持している。連結軸74は、たとえば、第1アーム71の上部に取り付けられ、第1アーム71とピストンロッド65aとを連結している。
【0060】
このような構成により、
図5に示す変形例に係る昇降部62は、エアシリンダ65のピストンロッド65aが収縮すると、支軸73を中心に第1アーム71と第2アーム72が回動して、支持部64が上昇する。また、昇降部62は、エアシリンダ65のピストンロッド65aが伸長すると、支軸73を中心に第1アーム71と第2アーム72が回動して、支持部64が上昇した位置から元の位置へ下降する。
【0061】
図5に示す変形例に係る昇降部62においても、
図3に示す昇降部62と同様に、支持部64の下降速度が、支持部64の上昇速度よりも高速になるように構成することができる。すなわち、スピードコントローラ66は、たとえば、ピストンロッド65aの伸長時にエアシリンダ65から排出された空気を通過させる流量制御弁の空気流量が、ピストンロッド65aの収縮時にエアシリンダ65から排出された空気を通過させる流量制御弁の空気流量よりも多くされている。
【0062】
なお、昇降部62がエアシリンダ65を有しない場合には、たとえば、カム機構などを用いることで、支持部64の下降速度が支持部64の上昇速度よりも高速になるように構成することができる。また、たとえば、昇降部62がサーボモータを備える場合には、制御部63が昇降部62を制御して、傾斜部61の下降速度を傾斜部61の上昇速度よりも高速にするにように、制御部63を構成してもよい。
【0063】
また、昇降部62がエアシリンダ65を備える場合でも、たとえば、昇降部62を構成するスピードコントローラ66の流量制御弁を自動制御することによって、傾斜部61の下降速度を傾斜部61の上昇速度よりも高速にするにように、制御部63を構成してもよい。このように、制御部63は、たとえば、傾斜部61の下降速度が傾斜部61の上昇速度よりも高速になるように、昇降部62を制御することができる。
【0064】
ここで、傾斜部61の傾斜板61aとフレーム61bとを連結する連結部61cの構成例について詳細に説明する。
図6は、
図2の沈降装置6を構成する傾斜部61の構成例を示す斜視図である。前述のように、傾斜部61は、たとえば、複数の傾斜板61aと、これら複数の傾斜板61aを支持するフレーム61bと、そのフレーム61bに傾斜板61aを連結する連結部61cと、を有している。フレーム61bは、たとえば、沈澱池1の長さ方向(X軸方向)に沿って延びる横枠部61b1と、沈澱池1の深さ方向(Z軸方向)に沿って延びる縦枠部61b2とを備えている。
【0065】
連結部61cは、たとえば、傾斜板61aに固定された第1部分61c1と、フレーム61bに固定された第2部分61c2と、を有している。これら第1部分61c1と第2部分61c2とは、遊びを有して係合している。より具体的には、第1部分61c1は、たとえば、断面形状がU字型になるように曲折された板状の部材であり、沈澱池1の幅方向(X軸方向)の両端と、下端が開放されている。第1部分61c1は、たとえば、沈澱池1の幅方向(X軸方向)における傾斜板61aの一方の端部と他方の端部に、それぞれ、上下に間隔をあけて二つずつ固定されている。
【0066】
第2部分61c2は、たとえば、沈澱池1の幅方向に延びる軸状または棒状の部材であり、先端に抜け止めの拡径部が形成され、先端と反対側の基端がフレーム61bの横枠部61b1に固定されている。第2部分61c2は、横枠部61b1において、傾斜板61aに固定された第1部分61c1に対応する位置に設けられている。
【0067】
傾斜板61aをフレーム61bに連結するには、傾斜板61aに固定された連結部61cの第1部分61c1を、フレーム61bに固定された連結部61cの第2部分61c2に引っ掛ける。これにより、第1部分61c1と第2部分61c2とが、第2部分61c2の下方側に遊びを有した状態で係合する。また、たとえば、第2部分61c2を係合させる第1部分61c1の溝幅を、第2部分61c2の直径よりも大きくすることで、第1部分61c1と第2部分61c2とが、沈澱池1の長さ方向(X軸方向)に遊びを有した状態で係合する。
【0068】
なお、傾斜板61aとフレーム61bとを遊びを持たせて連結する構成は、
図6に示す構成に限定されない。
図7は、
図6に示す傾斜板61aとフレーム61bとを連結する連結部61cの変形例を示す斜視図である。
図7に示す例において、連結部61cは、傾斜板61aに固定された部分と、フレーム61bの棒状の横枠部61b1を挿通させる貫通孔とを有している。この例において、横枠部61b1の直径よりも連結部61cの貫通孔の直径を大きくすることで、傾斜板61aとフレーム61bとを遊びを持たせて連結することが可能である。
【0069】
また、傾斜部板61をフレーム61bに対して強固に連結する場合は、たとえば、横枠部61b1と縦枠部61b2との連結部に遊びを持たせてもよい。具体的には、横枠部61b1と縦枠部61b2との連結部を、長孔とピンによって構成し、長孔とピンとの間に少なくとも一方向の遊びまたは空隙を形成する。さらにフレームを分割可能な複数の部品によって構成し、各部品の連結部を長孔とピンによって構成し、長孔とピンとの間に少なくとも一方向の遊びまたは空隙を形成してもよい。
【0070】
以下、本実施形態の沈降装置6および堆積物除去装置7の作用について説明する。
【0071】
前述のように、本実施形態の沈降装置6は、処理水に含まれる汚濁物質が堆積する傾斜部61と、その傾斜部61を昇降させる昇降部62と、その昇降部62による傾斜部61の昇降を制御する制御部63と、を備えている。また、本実施形態の堆積物除去装置7は、処理水の汚濁物質が堆積する傾斜部61を昇降させる昇降部62と、その昇降部62による傾斜部61の昇降を制御する制御部63と、を備えている。
【0072】
このような構成により、制御部63によって昇降部62を制御することで、昇降部62によって傾斜部61を上昇させることができる。また、制御部63によって昇降部62を制御することで、昇降部62によって傾斜部61を下降させることができる。すなわち、制御部63は、傾斜部61に堆積した堆積物を除去するときに、傾斜部61を上昇させ、次いで、下降させるように、昇降部62を制御することができる。また、制御部63は、あらかじめ傾斜部61を上昇させておき、傾斜部61に堆積した堆積物を除去するときに、傾斜部61を下降させるように、昇降部62を制御することができる。
【0073】
なお、傾斜部61に堆積した堆積物をより効率よく除去する観点から、傾斜部61を上昇させてから下降させるか、または、傾斜部61を下降させてから上昇させる、往復の昇降動作を行うように、制御部63によって昇降部62を制御することが好ましい。なお、傾斜部61を下降させてから上昇させる往復の昇降動作よりも、傾斜部61を上昇させてから下降させる往復の昇降動作の方が、傾斜部61に堆積した堆積物を効果的に除去することができる。
【0074】
このように、本実施形態の沈降装置6および堆積物除去装置7は、制御部63によって昇降部62を制御して、昇降部62によって傾斜部61を昇降させることができる。これにより、従来のように傾斜部61を比較的に高い周波数で振動させる場合と比較して、傾斜部61に堆積した堆積物が、処理水から大きな流体抵抗を受けて効率よく除去される。なお、昇降部62による傾斜部61の連続的かつ周期的な昇降動作を、仮に振動と捉えた場合、その周波数は、たとえば1[Hz]以下であり、その振幅は、たとえば1[mm]以上である。
【0075】
また、傾斜部61に堆積した堆積物をより確実に除去する観点から、複数回にわたって傾斜部61の昇降動作を行うように、制御部63によって昇降部62を制御することが好ましい。なお、昇降部62による傾斜部61の昇降動作は、一回でもよく、連続的に繰り返し行ってもよく、上昇と下降の間、または、昇降と昇降との間に、昇降動作を停止する期間を設けて間欠的に昇降させてもよい。前記したような傾斜部61の種々の昇降動作を行うためのプログラムを備える制御部63によって昇降部62を制御することで、前記したような傾斜部61の種々の昇降動作を行うことができる
【0076】
また、傾斜部61の昇降動作の高さは、たとえば、10[mm]以上、30[mm]以下であることが好ましい。これにより、傾斜部61の昇降時に堆積物に対して処理水からより大きな流体抵抗を作用させ、堆積物の除去効果を向上させるとともに、昇降動作に必要な昇降部62の動力を低減することができる。また、傾斜部61を上昇させた後、傾斜部61の下降を開始するまでの時間を10[秒]以下にするように、制御部63によって昇降部62を制御することで、傾斜部61に堆積した堆積物の除去効果を、より向上させることができる。
【0077】
また、昇降部62は、傾斜部61の下降動作の終了時に、傾斜部61のフレーム61bに設けられた軸部61b3を、沈澱池1の周縁部に衝突させるように構成してもよい。これにより、昇降部62による傾斜部61の下降動作の終了時に、沈澱池1の周縁部から傾斜部61に作用する衝撃力によって傾斜部61を振動させ、傾斜部61に堆積した固体粒子を含む堆積物の除去効果を向上させることができる。この場合、傾斜部61は、複数の傾斜板61aによって構成されていることが好ましい。これにより、傾斜板61aを効果的に振動させて、傾斜板61aに堆積した堆積物を効果的に除去することができる。
【0078】
このような傾斜部61の昇降動作によって傾斜部61から剥離した堆積物は、処理水中で凝集して粗大化し、傾斜部61の斜面を滑り落ちて沈澱池1の底部に沈降する。これにより、従来の空気洗浄装置のように傾斜部61から剥離した堆積物が空気泡によって撹拌されて処理水中に分散したり水面に浮上したりすることが防止され、堆積物を効率よく除去して処理水の水質を向上させることができる。したがって、従来の空気洗浄装置のように傾斜部61の洗浄中に沈澱池1に対する処理水の流入を停止させる必要がなく、沈澱池1による処理水の処理効率を向上させることができる。
【0079】
また、沈降装置6および堆積物除去装置7を構成する昇降部62と制御部63は、従来の空気洗浄装置のように処理水中に設置する必要がなく、沈澱池1における処理水の水面よりも上方の水上部に設置することが可能である。そのため、処理水中に設置する従来の空気洗浄装置と比較して、沈降装置6および堆積物除去装置7の維持管理性を向上させることができる。
【0080】
さらに、本実施形態の沈降装置6および堆積物除去装置7は、昇降部62によって傾斜部61を昇降させるように構成されている。そのため、たとえば、傾斜部61の複数の傾斜板61aの傾斜角度を変化させるような装置とは異なり、沈澱池1の長さ方向(X軸方向)または幅方向(Y軸方向)に、複数の沈降装置6または複数の堆積物除去装置7を隣接させて設置することが可能である。
【0081】
また、本実施形態の沈降装置6および堆積物除去装置7において、昇降部62は、たとえば、傾斜部61の下降速度が傾斜部61の上昇速度よりも高速になるように構成されている。または、本実施形態の沈降装置6および堆積物除去装置7において、制御部63は、昇降部62を制御して、傾斜部61の下降速度を傾斜部61の上昇速度よりも高速するように構成されている。
【0082】
このような構成により、昇降部62によって傾斜部61を勢いよく下降させて傾斜部61に堆積した堆積物の除去効率を向上させることができる。一例として、傾斜部61の上昇速度は30[mm/s]程度であり、傾斜部61の下降速度は50[mm/s]程度である。これにより、傾斜部61の下降動作の終了時に、傾斜部61に比較的に大きな慣性力を作用させ、傾斜部61に堆積した堆積物を効果的に除去することができる。
【0083】
なお、昇降部62による傾斜部61の下降速度は、たとえば、傾斜部61の自由落下による落下速度と同等以上にすることができる。これにより、傾斜部61の下降動作の終了時に、たとえば傾斜板61aなどの傾斜部61がたわみながら振動することで、傾斜部61に堆積した堆積物の除去効果を向上させることができる。一方、傾斜部61の上昇速度が傾斜部61の下降速度と同等以上である場合、傾斜部61から剥離した堆積物が処理水の水面に浮上することで、沈澱池1の下流側に流れる処理水に堆積物が混入して水質を悪化させるおそれがある。
【0084】
また、本実施形態の沈降装置6および堆積物除去装置7において、昇降部62は、傾斜部61を、処理水の流れ方向(X軸方向)に交差する幅方向(Y軸方向)の両側で支持する支持部64を有している。支持部64は、少なくとも一方向に遊びを有して傾斜部61を支持するように構成されている。
【0085】
この構成により、昇降部62による傾斜部61の昇降動作にともなって、傾斜部61を振動させやすくすることができ、傾斜部61に堆積した堆積物を、より効果的に除去することができる。さらに、傾斜部61を昇降部62に固定せず、昇降部62の支持部64によって傾斜部61を支持することで、たとえば地震が発生したときに、傾斜部61と昇降部62との相対的な移動を許容して、昇降部62が損傷するのを防止できる。
【0086】
また、本実施形態の沈降装置6および堆積物除去装置7において、支持部64は、傾斜部61を下方から支持する支持底部64bと、傾斜部61の両側に空隙を介して対向する移動規制部64aと、を有している。
【0087】
この構成により、支持部64において、傾斜部61と移動規制部64aとの間の空隙が、傾斜部61との間の遊びになり、傾斜部61を振動しやすくすることができる。また、支持部64は、傾斜部61の両側の移動規制部64aの間での傾斜部61の移動を許容しつつ、移動規制部64aの外側への移動を規制することができる。これにより、傾斜部61と昇降部62との相対的な移動を許容しつつ、傾斜部61が支持部64から脱落するのを防止できる。
【0088】
また、本実施形態の沈降装置6および堆積物除去装置7において、支持部64は、支持底部64bの上方が開放されている。
【0089】
この構成により、たとえば地震によって、傾斜部61に鉛直方向上方の加速度が発生した場合に、傾斜部61を下方から支持する支持底部65bの上方が開放されているため、傾斜部61の鉛直方向上方への移動を許容することができる。これにより、支持部64および昇降部62の損傷を防止することができる。
【0090】
また、本実施形態の沈降装置6および堆積物除去装置7において、昇降部62は、エアシリンダ65と、そのエアシリンダ65に設けられたスピードコントローラ66と、を有している。また、支持部64は、エアシリンダ65のピストンロッド65aに連結されている。
【0091】
この構成により、本実施形態の沈降装置6および堆積物除去装置7は、従来の空気洗浄装置と比較して、傾斜部61に堆積した堆積物を除去するために必要な空気量を、大幅に削減することができる。これにより、従来の空気洗浄装置と比較して、傾斜部61に堆積した堆積物を除去するのに必要な動力を、大幅に低減することができる。また、昇降部62は、ピストンロッド65aに連結され、傾斜部61を支持して昇降させる支持部64の上昇速度と下降速度を、スピードコントローラ66によって調節することができる。
【0092】
また、本実施形態の沈降装置6において、傾斜部61は、複数の傾斜板61aと、これら複数の傾斜板61aを支持するフレーム61bと、そのフレーム61bに傾斜板61aを連結する連結部61cと、を有している。また、連結部61cは、傾斜板61aに固定された第1部分61c1と、フレーム61bに固定された第2部分61c2と、を有している。そして、これら第1部分61c1と第2部分61c2とは、遊びを有して係合している。
【0093】
この構成により、傾斜部61の昇降動作によって、傾斜部61を構成する傾斜板61aを振動しやすくすることができる。これにより、傾斜板61aに堆積した堆積物の除去効率を、より向上させることができる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態によれば、傾斜部61に堆積した堆積物を従来よりも効果的に除去することが可能な沈降装置6および堆積物除去装置7を提供することができる。
【0095】
以上、図面を用いて本開示に係る堆積物除去装置および沈降装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【0096】
たとえば、前述の実施形態では、沈降装置6および堆積物除去装置7を一階層の沈澱池1に適用する例を説明したが、二階層以上の多階層式の沈澱池に本開示の沈降装置および堆積物除去装置を適用することも可能である。二階層沈澱池の例を、
図8に示す。
図8の上の図に示すように、沈降装置6および堆積物除去装置7は、たとえば、二層のみに適用することが可能である。多階層式の沈殿池において、流量分配を晴天時に均等となるように設定している場合は、沈殿池の構造上、雨天時に二層(下の層)の流量が増量される。この対応としても、一層のみに適用することは有効である。また、
図8の下の図に示すように、一層と二層に設置した傾斜部61を、水上部に設置した沈降装置6および堆積物除去装置7の昇降部62および制御部63によって昇降させることができる。