(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおいて、隣接する前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差して設置されることを特徴とする、請求項1に記載の引張り可能な複合電極。
引張り可能なリチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液、正極電極耳及び負極電極耳を含み、前記正極電極耳の一つの端部が前記正極に接続され、前記負極電極耳の一つの端部が前記負極に接続され、前記電解液が前記正極と前記負極の間に位置し、前記正極及び/又は負極が前記請求項1〜4の中のいずれかの一項の引張り可能な複合電極を採用することを特徴とする引張り可能なリチウムイオン二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0014】
図1及び
図2を参照すると、本発明の実施例は、引張り可能な複合電極の製造方法を提供する。引張り可能な複合電極の製造方法は、以下のステップを含む。
【0015】
S1:弾性基板を提供して、第一方向及び第二方向に沿って、弾性基板に予引張を付与し、弾性基板を引張状態にさせる。第一方向及び第二方向は、交差する方向である。
【0016】
S2:カーボンナノチューブ活性物質複合層を引張状態の弾性基板の表面に敷設する。具体的には、下記のサブステップを含む。
【0017】
S21:第一カーボンナノチューブフィルム構造体を引張状態の弾性基板の表面に敷設する。第一カーボンナノチューブフィルム構造体は積層して設置された複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含み、各々のドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、基本的に同一方向に沿って配列されている複数のカーボンナノチューブを含む。
【0018】
S22:第一カーボンナノチューブフィルム構造体の弾性基板から離れた表面に第一活性物質層を加える。
【0019】
S23:第一活性物質層の弾性基板から離れた表面に第二カーボンナノチューブフィルム構造体を敷設する。第二カーボンナノチューブフィルム構造体は、積層して設置された複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。
【0020】
S3:弾性基板に対する予引張を除去し、引張状態にある弾性基板を元の形態に回復させ、カーボンナノチューブ活性物質複合層の表面にしわを形成して、更に引張り可能な複合電極を形成する。
【0021】
ステップS1において、第一方向及び第二方向が交差する角度は、限定されない。好ましくは、第一方向及び第二方向は垂直して交差する。これは、垂直して交差する第一方向及び第二方向に沿って、弾性基板に予引張を付与する時に、弾性基板の荷重を均一にするためである。弾性基板に対する予引張を除去する時に、カーボンナノチューブ活性物質複合層の表面に形成されたしわは、分布、大きさ及び形状などが更に均一になる。更に引張り可能な複合電極が任意の方向に引張られる時に、多くのしわは、応力方向により良好な引張りを獲得でき、引張り可能な複合電極の異なる方向の引張り能力を高める。本実施例では、第一方向及び第二方向が垂直して交差する。
【0022】
他の実施例において、三つ又は三つ以上の方向に沿って、弾性基板に予引張を付与して、弾性基板を引張状態にさせ、三つ又は三つ以上の方向を対称的で且つ交差する方向にしてもよい。
【0023】
弾性基板の材料は、任意の弾性材料である。例えば、弾性基板は、シリコンゴム、ポリ塩化ビニール(PVC)、ポリ四フッ化エチレン、ポリウレタン(PU)又はジメチルポリシロキサン(PDMS)などである。本実施例では、弾性基板は、厚さが1mmである長方形のPDMS基板である。
【0024】
弾性基板に対して、第一方向及び第二方向に沿って、二つの方向へ向かう予引張をそれぞれ付与することができる。二つの方向へ向かう予引張とは、第一方向の両側へ向かって弾性基板にそれぞれ予引張を付与すること、又は第二方向の両側へ向かってそれぞれ予引張を付与することを指す。理解できることは、第一方向及び第二方向に沿って、弾性基板に対して、一つの方向へ向かう予引張をそれぞれ付与することもできる、ということである。即ち、第一方向に弾性基板の一つの端部を固定し、他の端部に予引張を付与する。或いは、第二方向に弾性基板の一つの端部を固定し、他の端部に予引張を付与する。本実施例では、第一方向及び第二方向に沿って、弾性基板に対して、二つの方向へ向かう予引張をそれぞれ付与する。第一方向は長方形の長辺に平行であり、第二方向は長方形の短辺に平行である。
【0025】
弾性基板は、第一方向及び第二方向に沿う予引張量を等しくてもよいし、等しくなくともよい。本実施例では、弾性基板は、第一方向及び第二方向に沿う予引張量が等しい。弾性基板が第一方向に沿う予引張量は、予め引張られた弾性基板の第一方向に沿う長さと元の形態の弾性基板の第一方向に沿う長さとの比を百分率で示したものを指す。弾性基板が第二方向に沿う予引張量は、予め引張られた弾性基板の第二方向に沿う長さと元の形態の弾性基板の第二方向に沿う長さとの比を百分率で示したものを指す。
【0026】
弾性基板の予引張量を弾性基板の弾性範囲に制御する必要がある。弾性基板の予引張量は、弾性基板の材料及び実際のニーズに応じて設定する。本実施例では、弾性基板がPDMS基板であり、弾性基板の第一方向及び第二方向に沿う予引張量は、それぞれ150%以上400%以下である。第一方向及び第二方向に沿って、同時に弾性基板に外力を印加することによって、弾性基板に予引張を付与する。外力の大きさは、弾性基板が破壊されないという状況の下で、少なくとも弾性変形を発生する大きさである。本実施例では、ホルダーによりPDMS基板に予引張を付与する。
【0027】
ステップS21において、好ましくは、第一カーボンナノチューブフィルム構造体における複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおいて、隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが、交差して設置される。これによって、第一カーボンナノチューブフィルム構造体は、ネット構造体になる。第一カーボンナノチューブフィルム構造体が引張られる時、ネット構造体が自身の変形によって、一定の応力変形を吸収でき、一定の範囲で自身の導電ネットワークの完全性を保持でき、断裂しにくく、電気抵抗の増加速度を減速できる。隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差する角度は、限定されない。本実施例では、隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差する角度は、90°である。
【0028】
ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して獲得される。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、次の通りである。
【0029】
まず、超配列カーボンナノチューブアレイを提供する。超配列カーボンナノチューブアレイは、生長基板の表面に生長される。
【0030】
超配列カーボンナノチューブアレイは、化学気相堆積法を採用して製造される。超配列カーボンナノチューブアレイは、互いに平行で、生長基板に垂直に生長された複数のカーボンナノチューブからなる。隣接するカーボンナノチューブは、互いに接触して、分子間力で接続される。生長の条件を制御することによって、超配列カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボンや、残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法については、特許文献1を参照されたい。
【0031】
次に、ピンセットなどの工具を利用して、超配列カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブを引き出して、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを獲得する。具体的な方法は下記の通りである。まず、一定の幅を有するテープ又は接着性を有する棒を利用して超配列カーボンナノチューブアレイと接触し、一定の幅を有する超配列カーボンナノチューブアレイにおける複数のカーボンナノチューブを選定する。次に、所定の速度で選定された複数のカーボンナノチューブを引き出し、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブからなる連続なドローン構造カーボンナノチューブフィルムを形成する。引き出す方向は、超配列カーボンナノチューブアレイの生長方向と基本的に垂直である。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは同じ方向に沿って配列され、分子間力で端と端とが接続されている。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブの配列方向はドローン構造カーボンナノチューブフィルムの引き出す方向と平行である。
【0032】
図3を参照すると、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブからなる。複数のカーボンナノチューブは同じ方向に沿って配列される。同じ方向に沿って配列されるとは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける大多数のカーボンナノチューブの延長方向が基本的に同じ方向に沿うことである。且つ、大多数のカーボンナノチューブの延長方向が基本的にドローン構造カーボンナノチューブフィルムの表面と平行である。もちろん、微視的には、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおいて、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブ以外に、同じ方向に沿っておらずランダムな方向を向いたカーボンナノチューブも存在している。ここで、ランダムな方向を向いたカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブと比べて、割合は小さい。従って、ランダムな方向を向いたカーボンナノチューブは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける大多数のカーボンナノチューブの配列方向に顕著な影響をもたらさない。具体的には、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブは、絶対的な直線状ではなく、適度に湾曲して配列できる。或いは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブは、完全に同じ方向に沿って配列されず、適度に配列方向から離れることができる。従って、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける、同じ方向に沿って配列される大多数のカーボンナノチューブの中の並列するカーボンナノチューブは、部分的に接触する可能性がある。
【0033】
超配列カーボンナノチューブアレイから、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを引き出した後、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを引張状態の弾性基板の表面に敷設する。即ち、引張られた弾性基板の表面に第一カーボンナノチューブフィルム構造体を直接に形成する。具体的には、超配列カーボンナノチューブアレイから第一カーボンナノチューブフィルムを引き出した後、第一カーボンナノチューブフィルムを引張状態の弾性基板の表面に敷設する。その後、超配列カーボンナノチューブアレイから第二カーボンナノチューブフィルムを引き出し、第二カーボンナノチューブフィルムを第一カーボンナノチューブフィルムの表面に敷設する。且つ、第二カーボンナノチューブフィルムを第一カーボンナノチューブフィルムと積層して設置させる。これによって類推して、第一カーボンナノチューブフィルム構造体を形成する。理解できることは、複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを積層して設置して、第一カーボンナノチューブフィルム構造体を形成した後、第一カーボンナノチューブフィルム構造体を引張状態の弾性基板の表面に敷設する、ということである。
【0034】
第一カーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの延在方向が第一方向及び第二方向と成す角度は限定されない。本実施形態では、第一カーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの延在方向は、第一方向又は第二方向と平行である。
【0035】
第一カーボンナノチューブフィルム構造体は比較的純粋であり、基本的に不純物を含まない。このため、カーボンナノチューブ活性物質複合層は、第一カーボンナノチューブフィルム構造体の自身の粘性によって、弾性基板の表面に固定することができる。
【0036】
ステップS22において、第一活性物質層の材料は、リチウムイオン二次電池の正極活性物質材料、リチウムイオン二次電池の負極材料又はコンデンサーの電極活性物質材料などである。リチウムイオン二次電池の正極活性物質材料は、リン酸鉄リチウム(lithium iron phosphate,LiFePO
4)、酸化コバルトリチウム(lithium cobalt oxide,LiCoO
2)、マンガン酸リチウム(lithium manganate,LiMn
2O
4)、LiNiO
2、LiNi
0.8Co
0.2O
2、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2の中の一種又は複数種である。リチウムイオン二次電池の負極活性材料は、LiTiO
2、Li
4Ti
5O
12又はグラファイトなどである。コンデンサーの電極活性物質材料は、活性炭、二酸化マンガン、二酸化ルテニウムなどである。
【0037】
第一カーボンナノチューブフィルム構造体の弾性基板から離れた表面に第一活性物質層を加える具体的な方法は、次の通りである。電極活性物質を揮発しやすい有機溶媒に分散し、混合溶液を形成する。混合溶液を第一カーボンナノチューブフィルム構造体の表面に均一に滴下し、揮発しやすい有機溶剤を目立った液滴がなくなるまで蒸発させた後、第一活性物質層を形成する。本実施例では、細胞粉砕機で電極活性物質をエタノールに分散し、しばらく分散した後、移液銃で少量の分散液を取って、分散液を第一カーボンナノチューブフィルム構造体に均一に滴下する。
【0038】
第一カーボンナノチューブフィルム構造体における積層して設置されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、複数の微孔が形成され、第一活性物質層における活性物質粒子のサイズが微孔のサイズより小さい時、第一活性物質層の部分が第一カーボンナノチューブフィルム構造体の中に嵌め込まれる。
【0039】
ステップS23において、好ましくは、第二カーボンナノチューブフィルム構造体における複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおいて、隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは交差して設置される。隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差する角度は、限定されない。本実施例では、隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差する角度は、90°である。
【0040】
ステップS23の後及びステップS3の前に、更にステップ24及びステップ25を含む。ステップS24及びステップS25は次の通りである。ステップS24:第二カーボンナノチューブフィルム構造体の弾性基板から離れた表面に第二活性物質層を加える。ステップS25:第二活性物質層の弾性基板から離れた表面に第三カーボンナノチューブフィルム構造体を敷設する。第三カーボンナノチューブフィルム構造体は、積層して設置された複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。これによって類推して、ステップS24及びステップS25を繰り返す。好ましくは、第三カーボンナノチューブフィルム構造体における隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差して設置される。より好ましくは、隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差する角度は、90°である。
【0041】
引張り可能な複合電極において、活性物質層が層状のカーボンナノチューブフィルム構造体の間に覆われており、層状のサンドイッチ構造を形成する。各々のカーボンナノチューブフィルム構造体におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムの数量は等しくてもよいし、等しくなくともよい。好ましくは、第一カーボンナノチューブフィルム構造体及び最外層のカーボンナノチューブフィルム構造体におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムの数量は、中間層のカーボンナノチューブフィルム構造体におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムの数量より多い。これによって、カーボンナノチューブフィルム構造体が活性物質層をよりよく支持することができる。最外層のカーボンナノチューブフィルム構造体は、弾性基板との距離が最も遠いカーボンナノチューブフィルム構造体を指す。本実施例では、ステップS24及びステップS25を9回繰り返し、獲得したカーボンナノチューブ活性物質複合層は、12層のドローン構造カーボンナノチューブフィルム構造体及び11層の活性物質層を含む。第一カーボンナノチューブフィルム構造体及び最外層のカーボンナノチューブフィルム構造体はそれぞれ6層のドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなる。中間層のカーボンナノチューブフィルム構造体は2層のドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなる。
【0042】
ステップS3では、カーボンナノチューブ活性物質複合層が弾性基板の表面に接着されるので、弾性基板の予引張を除去した後、弾性基板は、第一方向及び第二方向に沿う長さが短くなり、カーボンナノチューブ活性物質複合層におけるカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ活性物質複合層の法線方向に上向きに曲げられ、複数の突起が形成される。即ち、カーボンナノチューブ活性物質複合層のある部分が他の部分より高い。カーボンナノチューブ活性物質複合層の表面に、波状的な起伏を有する構造が形成される。カーボンナノチューブ活性物質複合層の表面は、しわを含み、しわの状態になる。引張り可能な複合電極を任意の方向に沿って引張る場合には、複数のしわが応力変形の方向に広げられ、応力変形が吸収される。カーボンナノチューブ活性物質複合層におけるカーボンナノチューブは断裂せず、引張り可能な複合電極の完全性を保持できる。引張り可能な複合電極を異なる方向に沿って同時に引張る場合には、複数のしわが異なる応力変形の方向に同時に広げられ、応力変形が吸収される。カーボンナノチューブ活性物質複合層におけるカーボンナノチューブは断裂せず、カーボンナノチューブ活性物質複合層の完全性を保持できる。応力変形が弾性基板の予引張量より小さければ、カーボンナノチューブ活性物質複合層の表面のしわの変形は可逆的となる。
【0043】
ステップS3の後、更に弾性基板の完全性を確保した上で、カーボンナノチューブ活性物質複合層を切断するステップを含んでもよい。レーザーでカーボンナノチューブ活性物質複合層を切断することができる。他の実施例では、切断する過程において、引張り可能な複合電極の端部に一定の大きさのカーボンナノチューブ活性物質複合層を残し、残したカーボンナノチューブ活性物質複合層を電極耳とする。
【0044】
ステップS3の後、更に弾性基板を除去するステップを含む。引張り可能な複合電極が弾性基板を含まないようにする。
【0045】
実施例1:
本実施例では、PDMS/ドローン構造カーボンナノチューブフィルム/Li(NiCoMn)
1/3O
2の複合正極を製造する。その製造方法は、厚さが7mmである長方形のPDMS基板を提供して、長方形のPDMS基板の長さ及び幅に沿って、それぞれPDMS基板に150%の引張量の引張を付与する。その後、75mm×75mmのアルミニウム合金フレームに敷設された6層の積層して設置されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムで、引張られているPDMS基板を覆う。45mgのLi(NiCoMn)
1/3O
2という活性物質を細胞粉砕機で60mLのエタノールに分散し(10%のパワー、45min)、分散液を形成した後、移液銃で6mLの分散液を取って、分散液を、6層の積層して設置されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムに均一に滴下する。エタノールが目立った液滴がなくなるまで蒸発した後、Li(NiCoMn)
1/3O
2という活性物質層が形成される。Li(NiCoMn)
1/3O
2という活性物質層を2層の積層して設置されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムで覆い、移液銃で6mLの分散液を取って、分散液を、2層の積層して設置されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムに均一に滴下する。エタノールが目立った液滴がなくなるまで蒸発した後、Li(NiCoMn)
1/3O
2という活性物質層が形成される。上記のステップを10回繰り返す。最後に、6層の積層して設置されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムで覆う。エタノールが目立った液滴がなくなるまで蒸発した後、PDMS基板に対する予引張を除去し、弾性基板の完全性を確保した上で、レーザーでドローン構造カーボンナノチューブフィルム/Li(NiCoMn)
1/3O
2を切断し、30mm×30mmの活性物質区域を有するPDMS/ドローン構造カーボンナノチューブフィルム/Li(NiCoMn)
1/3O
2の複合正極を獲得する。ここで、積層して設置されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムの中の隣接するカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差して設置される。交差する角度は90°である。
【0046】
実施例2:
本実施例では、引張り可能なPDMS/ドローン構造カーボンナノチューブフィルム/Li(NiCoMn)
1/3O
2の複合電極を製造する。その製造方法は、実施例1の製造方法と基本的に同じである。異なるのは、活性物質層の材料がLi
4Ti
5O
12であることである。
【0047】
比較例1:
本比較例では、PDMS/ドローン構造カーボンナノチューブフィルム/Li(NiCoMn)
1/3O
2の複合正極を製造する。その製造方法は、実施例1の製造方法と基本的に同じである。異なるのは、本比較例のPDMS基板は予引張の処理を行わないことである。
【0048】
比較例2:
本比較例では、PDMS/ドローン構造カーボンナノチューブフィルム/Li
4Ti
5O
12の複合負極を製造する。その製造方法は、実施例2の製造方法と基本的に同じである。異なるのは、本比較例のPDMS基板は予引張の処理を行わないことである。
【0049】
図4は、実施例1の複合正極の表面形貌を示す図である。Li(NiCoMn)
1/3O
2の粒子のサイズが大きいので、しわがLi(NiCoMn)
1/3O
2の粒子の近くに形成される。
【0050】
図5は、実施例2の複合負極の表面形貌を示す図である。Li
4Ti
5O
12の粒子のサイズが小さいので、カーボンナノチューブ活性物質複合層の表面に、波状的な起伏を有する構造が形成される。カーボンナノチューブ活性物質複合層の表面は、しわを含み、しわの状態になる。
【0051】
図6を参照すると、実施例1の複合正極にX軸方向、Y軸方向及び45°の方向に沿ってそれぞれ引張量が150%の引張を付与した後の複合正極の電気抵抗の増加量は、それぞれ7.5%、7.6%及び7.2%である。しかしながら、比較例1の予引張の処理を行わない複合正極に、カーボンナノチューブの軸方向に沿って引張りをする時に、電気抵抗は、急速に増加し、40%の応力変形を発生する時の軸方向の電気抵抗が50%増加する。これは、予引張の処理を行わない複合正極と比べて、二つの方向に沿って予引張を付与した複合正極は、異なる方向の0〜150%の応力変形のもとで、優れた電気抵抗の安定性を保持でき、更に、二つの方向に沿って予引張を付与する工程によって、引張り可能な複合正極は、各々の方向に沿う応力変形に耐えられる能力が大幅に高められる、ということを説明できる。
【0052】
図7を参照すると、実施例2の複合負極にX軸方向、Y軸方向及び45°の軸方向に沿ってそれぞれ引張量が150%の引張を付与した後の複合負極の電気抵抗の増加量は、それぞれ6%、10.6%及び5%である。しかしながら、比較例2の予引張の処理を行わない複合負極に、カーボンナノチューブの軸方向に沿って引張りをする時に、電気抵抗は、急速に増加し、50%の応力変形を発生する時の軸方向の電気抵抗が50%増加する。これは、予引張の処理を行わない複合負極と比べて、二つの方向に沿って予引張を付与した複合負極は、異なる方向の0〜150%の応力変形のもとで、優れた電気抵抗の安定性を保持でき、更に、二つの方向に沿って予引張を付与する工程によって、引張り可能な複合負極は、各々の方向に沿う応力変形に耐えられる能力が大幅に高められる、ということを、説明できる。
【0053】
図8及び
図9を参照すると、0〜150%の繰り返し引張の回数が2000回を過ぎた後、実施例1における複合正極及び実施例2における複合負極の表面形貌は、繰り返し引張りをする前の表面形貌に非常に似ており、繰り返し引張をした後の複合電極は、相対的に均一なしわの形貌を依然として保持する。
図10を参照すると、0〜150%の繰り返し引張りをする回数が2000回を過ぎた後、実施例1における複合正極及び実施例2における複合負極の各々の軸方向抵抗の初期状態の軸方向抵抗からの増加量は、10%より小さい。
【0054】
図11を参照すると、実施例2の複合負極に異なる方向に沿って2000回の0〜150%の繰り返し引張をした後の複合負極の容量保持率は、それぞれ92.5%、91.8%、91.2%である。これは、実施例2の複合負極が、大きな応力変形のもとで、繰り返して引張られることに耐える能力を有することを、説明できる。
図12を参照すると、実施例1の複合正極に異なる方向に沿って2000回の0〜150%の繰り返し引張をした後の複合正極の容量保持率は、それぞれ92.5%、91.8%、91.2%である。これは、実施例2の複合正極が、大きな応力変形のもとで、繰り返して引張られることに耐える能力を有することを、説明できる。
【0055】
図13は、実施例2の複合負極に異なる方向に沿って応力変形を印加した時の表面形貌を示す図である。
図13から、二つの方向に沿って弾性基板に予引張を付与することによって、複合負極の表面に形成されたしわ構造は、複合負極がもう一度応力変形を受ける時には、応力変形の方向に広げられ、応力変形が吸収され、複合負極の完全性を保持できることが分かる。図(V)から、複合負極が同時に二つの方向に沿って引張られる時には、しわ構造が二つの引張方向に沿って同時に広げられるので、引張り可能な複合負極は、機能及び構造の完全性を保持できることが分かる。図(VI)から、応力変形を除去した後、複合負極の表面形貌がしわ状態に回復し、細微な損傷を除いて、引張られた複合負極の表面形貌は、引張られる前の表面形貌と基本的に同じである。これは、実施例2の複合負極の形貌の、異なる方向に沿う応力変形のもとでの伸び広がりが優れた可逆性を有することを、説明できる。
【0056】
図14は、充放電区間が1.0〜2.5Vであり、充放電速度が順に0.1、0.2、0.5、1、2、5Cである時における、実施例2の複合負極に異なる引張方向に沿ったそれぞれの倍率性能をテストした結果を示す図である。
図14から、低倍率のもとで、引張られた複合負極の比容量は、引張られていない複合負極の比容量と接近し、5Cの高い電流密度のもとでも、引張られた複合負極が引張られていない複合負極に対する容量保持率は、96%より大きい。これは、引張られた複合負極が優れた容量保持率を有することを、説明できる。
【0057】
図15は、充放電区間が2.8〜4.3Vであり、充放電速度が順に0.1、0.2、0.5、1、2、5Cである時における、実施例1の複合正極に異なる引張方向に沿ったそれぞれの倍率性能をテストした結果を示す図である。
図15から、5Cの高い電流密度のもとでも、X向に沿って、引張量150%で引張られた複合正極の引張られていない複合正極に対する容量保持率は、96.9%であり、Y向に沿って、引張量150%で引張られた複合正極の引張られていない複合正極に対する容量保持率は、97.7%であり、45°の方向に沿って、引張量150%で引張られた複合正極の引張られていない複合正極に対する容量保持率は、98.5%であることが分かる。これは、引張られた複合正極が優れた容量保持率を有することを、説明できる。
【0058】
図16及び
図17を参照すると、本発明の実施例は、更に上記製造方法によって得られた引張り可能な複合電極10を提供する。引張り可能な複合電極10は、弾性基板120及びカーボンナノチューブ活性物質複合層140を含む。カーボンナノチューブ活性物質複合層140は、弾性基板120の表面に敷設される。カーボンナノチューブ活性物質複合層140は、複数のカーボンナノチューブフィルム構造体142及び複数の活性物質層144を含む。カーボンナノチューブフィルム構造体142及び複数の活性物質層144が積層して、交互に設置される。即ち、隣接する二つのカーボンナノチューブフィルム構造体142の間に一つの活性物質層144が設置され、活性物質層144がカーボンナノチューブフィルム構造体142の間に覆われ、層状のサンドイッチ構造体を形成する。各々のカーボンナノチューブフィルム構造体142は、複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムが積層して設置される。各ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブを含み、複数のカーボンナノチューブが基本的に同じ方向に沿って配列され、隣接するドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差して設置される。カーボンナノチューブ活性物質複合層140の弾性基板から離れた表面は複数のしわ146を有する。
【0059】
弾性基板120の材料は、任意の弾性材料である。例えば、弾性基板120は、シリコンゴム、ポリ塩化ビニール(PVC)、ポリ四フッ化エチレン、ポリウレタン(PU)又はジメチルポリシロキサン(PDMS)などである。本実施例では、弾性基板120は、厚さが1mmである長方形のPDMS基板である。
【0060】
カーボンナノチューブフィルム構造体142は比較的純粋であり、基本的に不純物を含まない。このため、カーボンナノチューブ活性物質複合層140は、カーボンナノチューブフィルム構造体142の自身の粘性によって、弾性基板120の表面に固定することができる。カーボンナノチューブフィルム構造体142において、隣接する二つのドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差して設置される。隣接する二つのドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの交差角度は限定されない。本実施例では、隣接する二つのドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの交差角度は、90度である。
【0061】
各々のカーボンナノチューブフィルム構造体142におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムの数量を等しくてもよいし、等しくなくともよい。好ましくは、弾性基板120と直接的に接触するカーボンナノチューブフィルム構造体142及び弾性基板120との距離が最も遠いカーボンナノチューブフィルム構造体142におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムの数量は、それぞれ中間層のカーボンナノチューブフィルム構造体142におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムの数量より多い。これによって、カーボンナノチューブフィルム構造体が活性物質層をよりよく支持することができる。本実施例では、カーボンナノチューブ活性物質複合層140は、12層のドローン構造カーボンナノチューブフィルム構造体及び11層の活性物質層を含み、弾性基板120と直接的に接触するカーボンナノチューブフィルム構造体142及び弾性基板120との距離が最も遠いカーボンナノチューブフィルム構造体142がそれぞれ6層のドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなり、中間層のカーボンナノチューブフィルム構造体142が2層のドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなる。
【0062】
活性物質層144の材料は、リチウムイオン二次電池の正極活性物質材料、リチウムイオン二次電池の負極材料又はコンデンサーの電極活性物質材料などである。リチウムイオン二次電池の正極活性物質材料は、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、酸化コバルトリチウム(LiCoO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、LiNiO
2、LiNi
0.8Co
0.2O
2、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2の中の一種又は複数種である。リチウムイオン二次電池の負極活性材料は、LiTiO
2、Li
4Ti
5O
12又はグラファイトなどである。コンデンサーの電極活性物質材料は、活性炭、二酸化マンガン、二酸化ルテニウムなどである。本実施例では、活性物質層の材料はLiTiO
2である。
【0063】
カーボンナノチューブフィルム構造体142における積層して設置されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、複数の微孔が形成され、活性物質層144における活性物質粒子のサイズが微孔のサイズより小さい時、活性物質層144の部分がカーボンナノチューブフィルム構造体142の中に嵌め込まれる。本実施例では、活性物質層144の材料は、ナノメートルスケールのLiTiO
2の粒子であり、活性物質層144の部分がカーボンナノチューブフィルム構造体142の中に嵌め込まれる。
【0064】
しわ146は、カーボンナノチューブ活性物質複合層142におけるカーボンナノチューブが、カーボンナノチューブ活性物質複合層142の法線方向に上向きに曲げられ、形成された複数の突起を指す。即ち、カーボンナノチューブ活性物質複合層142のある部分が他の部分より高い。引張り可能な複合電極10を任意の方向に沿って引張る場合には、複数のしわ146が応力変形の方向に広げられ、応力変形が吸収される。カーボンナノチューブ活性物質複合層におけるカーボンナノチューブは断裂せず、カーボンナノチューブ活性物質複合層140の完全性を保持でき、更にカーボンナノチューブ活性物質複合層140における導電ネットワークの完全性を保持できる。引張り可能な複合電極10を異なる方向に沿って同時に引張る場合には、複数のしわ146が異なる応力変形の方向に同時に広げられ、応力変形が吸収される。カーボンナノチューブ活性物質複合層におけるカーボンナノチューブは断裂せず、カーボンナノチューブ活性物質複合層140の完全性を保持でき、更にカーボンナノチューブ活性物質複合層140における導電ネットワークの完全性を保持できる。応力変形が弾性基板120の予引張量より小さければ、カーボンナノチューブ活性物質複合層140の表面のしわの変形は可逆的となる。
【0065】
本実施例では、活性物質層144の面密度は5mg/cm
2であり、活性物質層144がカーボンナノチューブ活性物質複合層140に占める割合は95%より大きい。
【0066】
好ましくは、応用される時、引張り方向は、引張り可能な複合電極10におけるカーボンナノチューブの延在方向に対して、一定の角度を保持する。より好ましくは、引張り方向が引張り可能な複合電極10におけるカーボンナノチューブの延在方向と成す角度は、30°以上60以下である。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの束のそれ自体の断裂伸長量はそれほど長くない。よって、応力変形を印加する時、カーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブは容易に断裂し、カーボンナノチューブフィルム構造体142の電気抵抗が急激に増大し、導電性が下がる。カーボンナノチューブフィルム構造体142におけるカーボンナノチューブの延在方向が引張り方向と一定の角度を成す時、カーボンナノチューブフィルム構造体142は、それ自体の変形によって、一定の応力変形を吸収でき、一定の範囲でそれ自体の導電ネットワークの完全性を保持できるので、引き切られにくく、且つ電気抵抗の増加を遅らせることができる。
【0067】
弾性基板120はあってもよいし、なくてもよい。例えば、他の実施例において、引張り可能な複合電極は、弾性基板120はなく、カーボンナノチューブ活性物質複合層140からなる。
【0068】
図18を参照すると、本発明は、引張り可能なリチウムイオン二次電池20を提供する。引張り可能なリチウムイオン二次電池20は、引張り可能な正極210、引張り可能な負極220、電解液230、正極電極耳240、負極電極耳250及び実装構造体260を含む。正極電極耳240の一つの端部は引張り可能な正極210に接続され、正極電極耳240のもう一つの端部は実装構造体260から伸びる。負極電極耳250の一つの端部は引張り可能な負極220に接続され、負極電極耳250のもう一つの端部は実装構造体260から伸びる。電解液230は引張り可能な正極210と引張り可能な負極220の間に位置する。実装構造体260は、引張り可能な正極210、引張り可能な負極220及び電解液230を実装することに用いられる。
【0069】
引張り可能な正極210及び引張り可能な負極220は、それぞれ引張り可能な複合電極10を採用する。引張り可能な正極210の中の活性物質層の材料はLiNi
0.8Co
0.2O
2であり、引張り可能な負極220の中の活性物質層の材料はLiTiO
2である。理解できることは、引張り可能な正極210の中の活性物質層の材料はLiNi
0.8Co
0.2O
2に限定されず、任意のリチウムイオン二次電池20の正極活性物質材料であってもよく、引張り可能な負極220の中の活性物質層の材料はLiTiO
2に限定されず、任意のリチウムイオン二次電池20の負極活性物質材料であってもよいことである。
【0070】
電解液230がゲル電解液である。本実施例では、リチウムイオン二次電池のゲル電解液の製造方法は、次の通りである。水がない雰囲気(気体中)において、0.35gのポリ酸化エチレン(PEO Mw〜100000)、0.35gのシアン化エチレン及び0.30gのLiTFSi(Lithium bis (trifluoromethane) sulfonimide)を、50mlの質量比例が40:1であるジクロロメタンとアセトンとの混合溶剤に溶解し、マグネティックスターラーで均一なコロイド状に十分に攪拌する。
【0071】
本実施例では、正極電極耳240は、引張り可能な正極210の中のカーボンナノチューブ活性物質複合層と一体化した構造である。正極電極耳240は、引張り可能な正極210を製造する過程において、カーボンナノチューブ活性物質複合層を切断する時、引張り可能な複合電極の一つの端部にカーボンナノチューブ活性物質複合層を残すことによって、形成される。負極電極耳250は、引張り可能な負極220の中のカーボンナノチューブ活性物質複合層と一体化した構造である。もちろん、他の実施例では、正極電極耳240及び負極電極耳250も他の導電構造体であってもよい。
【0072】
実装構造体260の材料は、引張り可能な材料である。本実施例では、実装構造体260の材料は、PDMSである。
【0073】
引張り可能なリチウムイオン二次電池20の実装方法は、次の通りである。厚さが0.6mmであるPDMS薄膜270を提供し、PDMS薄膜270に引張り可能な複合負極220におけるカーボンナノチューブ活性物質複合層のサイズと同じである二つの孔を開設し、固化されていないPDMSでPDMS薄膜270を引張り可能な複合負極220に接着し、孔にカーボンナノチューブ活性物質複合層を合わせて、引張り可能な複合負極220におけるカーボンナノチューブ活性物質複合層にPDMS薄膜270の孔と槽状構造体を形成させる。固化されていないPDMSが固化された後、少量のゲル電解液を槽状構造体が充満されるまで滴下し、室温で20h〜26h乾燥した後、もう一度ゲル電解液を滴下し、ゲル電解液が槽状構造体を充満するまで繰り返し操作する。グローブボックスで引張り可能な正極210と引張り可能な負極220を合わせて、貼合し、排気した後、PDMSでシールし、PDMSが固化された後、引張り可能なリチウムイオン二次電池20を獲得する。
【0074】
図19は、引張り可能なリチウムイオン二次電池の循環性能を示す図である。
図19から、引張り可能なリチウムイオン二次電池は、50回の0.1Cの充放電循環が経った後の容量保持率が、90.3%であり、引張り可能なリチウムイオン二次電池は、X、Y、45°の方向に沿ってそれぞれ150%の引張量の引張を付与した後の容量保持率が、それぞれ94.2%、96.1%、96.1%であり、50回の0.1Cの充放電循環が経った後の容量保持率が、依然として0.41mAh/cm
2、0.37mAh/cm
2、0.40mAh/cm
2に達することが分かる。これは、本実施例の引張り可能なリチウムイオン二次電池は、異なる方向に沿う応力変形のもとで、優れた充放電循環性能を有する、ということを説明できる。
【0075】
図20を参照すると、引張り可能なリチウムイオン二次電池に、異なる方向の0〜150%の応力変形を付与した場合における、2000回の繰り返し引張をする前とした後の電圧容量の曲線を示す図である。
図20から、X、Y、45°の方向に沿って引張られた引張り可能なリチウムイオン二次電池の比容量がそれぞれ0.47mAh/cm
2、0.49mAh/cm
2、0.50mAh/cm
2であり、循環する前とした後の容量保持率がそれぞれ90.3%、94.2%及び96.2%であることが分かる。これは、本実施例の引張り可能なリチウムイオン二次電池が優れた引張循環性能を有する、ということを説明できる。
【0076】
本発明により提供される引張り可能な複合電極の製造方法は、二つの方向に沿って弾性基板に予引張を付与した後、弾性基板の表面にカーボンナノチューブフィルム活性物質複合層を敷設し、その後、弾性基板に対する予引張を除去することにより、カーボンナノチューブフィルム活性物質複合層の表面に複数のしわを形成する。引張り可能な複合電極が複数の異なる方向に沿って、同時に引張られる時に、複数のしわが異なる応力変形方向に同時に広げられ、応力変形が吸収されるので、カーボンナノチューブフィルム活性物質複合層の導電ネットワークの完全性を保持でき、更に引張り可能な複合電極に大きな応力変形を印加する時に、引張り可能な複合電極は、電気抵抗の安定を保持できる。また、応力変形が弾性基板の予引張量より小さければ、カーボンナノチューブフィルム活性物質複合層の表面のしわの変形が可逆的となるので、この方法で製造された引張り可能な複合電極は、繰り返して引張られることができる。そして、引張り可能な複合電極を採用する引張り可能なリチウムイオン二次電池は、応力変形のもとで、優れた電気化学性能を有し、大きな応力変形のもとで、優れた電気抵抗の安定性及び引張循環性能を有する。