(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(a)工程において、前記管状体の少なくとも一部が基準内径から0.1mm以上2.0mm以下拡径した状態で、前記管状体の内面で前記アノード導電性部材と接触している請求項1〜6のいずれか一項に記載の管状体の製造方法。
前記(b)工程において、前記管状体の少なくとも一部が、基準外径から0.1mm以上2.0mm以下縮径した状態で前記管状体の外面で前記アノード導電性部材と接触している請求項1〜7のいずれか一項に記載の管状体の製造方法。
前記(a)工程または前記(b)工程においてカソードを用いており、該カソードは、前記管状体の内面と外面のうち前記アノード導電性部材が接触している面とは逆の面側であって前記管状体から乖離して配置されている請求項1〜8のいずれか一項に記載の管状体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2の電解研磨方法は、作業者が電解研磨作業中に電解液や電極に触れないため、安全に作業できる方法を提供するものの、複雑な装置が必要であって、そのため均一な電解液の液流が得られにくいという課題があった。更に、ステントを回転させることによって、ステントとアノード導電性部材との電気接点を移動させるが、ステントとアノード導電性部材と電気的に接している実質的な面積は広くないため、電流密度の不均一を生じやすく、電解研磨された表面に研磨が不均一な部分が発生してしまうという課題があった。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、管状体の電解研磨において、簡易な方法及び装置を用いて、ムラを少なく均一に電解研磨を達成できる管状体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題解決のために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、下記[1]〜[8]の管状体の製造方法を提供する。
[1]下記(a)工程および(b)工程を少なくとも1回以上含むことを特徴とする管状体の製造方法。
(a)管状体と電気的に接触するアノード導電性部材によって、管状体の内面を内側から支持して、管状体の外面を電解研磨する工程
(b)管状体と電気的に接触するアノード導電性部材によって、管状体の外面を外側から支持して、管状体の内面を電解研磨する工程
[2]前記(a)工程において、管状体の少なくとも一部が、基準内径から0.1mm以上2.0mm以下拡径した状態で管状体の内面でアノード導電部材と接触していることを特徴とする[1]に記載の管状体の製造方法。
[3]前記(b)工程において、管状体の少なくとも一部が、基準外径から0.1mm以上2.0mm以下縮径した状態で管状体の外面でアノード導電部材と接触していることを特徴とする[1]に記載の管状体の製造方法。
[4]前記(b)工程の回数が前記(a)工程の回数より少ないことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の管状体の製造方法。
[5]前記(a)工程と前記(b)工程を順次行うこと1回以上繰り返すことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の管状体の製造方法。
[6](b)工程の1回の電解研磨時間が(a)工程の1回の電解研磨時間よりも短いことを特徴とする[5]に記載の管状体の製造方法。
[7]前記(a)工程において、10秒以上60秒以下の範囲で電圧を供給し電解研磨し、前記(b)工程において、3秒以上10秒以下の範囲で電圧を供給して電解研磨する工程を含むことを特徴とする[6]に記載の管状体の製造方法。
[8]前記管状体がステントである[1]〜[7]のいずれかに記載の医療用管状体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な方法及び装置を用いて、ムラなく均一に電解研磨を施すことができるため、平滑性に優れる管状体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の管状体の製造方法は、アノード導電性部材を管状体の内面と接触させて管状体を支持しつつ外面を電解研磨する工程と、アノード導電性部材を管状体の外面と接触させて管状体を支持しつつ管状体の内面を電解研磨する工程を各々1回以上含んでいる製造方法である。
【0014】
このように、管状体の内面と外面を別々に研磨することによって、均一な電流密度分布下で研磨処理できるため、平滑性の優れた管状体を製造することができる。
【0015】
尚、本発明では、内面を研磨する工程と外面を研磨する工程を各々1回以上含んでいれば良く、内面を先に研磨してもよいし、外面を先に研磨してもよい。また、外面あるいは内面のいずれかを複数回連続的に研磨した後に、他面を研磨してもよい。
【0016】
以下に、本発明に係る管状体の製造方法として、管状体としてステントを例として実施の一形態について図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
<管状体>
管状体、特に医療用の管状体には、例えば、(イ)1本の線状の金属もしくは高分子材料からなるコイル状のタイプ、(ロ)金属チューブをレーザーなどによって切り抜き加工したタイプ、(ハ)線状の部材をレーザーなどで溶接して組み立てたタイプ、(ニ)複数の線状金属を織って作ったタイプ等がある。
本発明に係る医療用管状体(以下、管状体と称することがある。)としては、例えば、体内管腔構造に挿入される大きさである第1の径から、管状体の外表面の少なくとも一部が血管壁に接触する第2の径まで拡径する管状体が挙げられる。特に、血管、尿管、胆管等の体内管腔構造の形成術に用いられる医療用管状体としては、ステントを好ましく用いることが出来る。
【0018】
ステントに用いられる材料としては、拡径、縮径などの変形時や留置時に耐えうる材料であれば特に限定されないが、医療用ステンレスである316Lステンレス、タンタル、Co−Cr(コバルトクロム)合金、Ni−Ti(ニッケルチタン)合金等を好ましく用いることができる。
【0019】
金属製のステントを製造する方法としては、チューブ状材料をレーザーで網目状に切り抜き加工した後、電解研磨を行う方法を好ましく用いることができる。
【0020】
電解研磨は、ステントの屈曲した線状部分であるストラット部分のレーザー加工、あるいはレーザー加工後の熱処理等により生成した表面酸化皮膜の除去や、ストラットの断面の鋭利なエッジの丸め(ラウンド形状)加工等を目的として行われる。電解研磨は、金属溶出の低減、疲労特性の向上、清潔性の向上等の様々な目的のために特に最終の仕上げの工程として施されることが好ましい。
【0021】
<アノード導電性部材>
アノード導電性部材13の材料としては、十分な導電性を有していれば特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、チタン、銅、アルミニウム、白金、金等の金属あるいはそれらの合金を挙げることができる。
【0022】
アノード導電性部材13の形状は、ステント14の内面もしくは外面を支持可能であれば、例えば、板状、芯状、棒状、またはワイヤ状であってもよいし、
図3及び
図5で示したパイプ状の構造でもよい。電気接点18の面積を大きくとることができる点で、パイプ状のアノード導電性部材を好ましく用いることが出来る。
【0023】
<カソード>
カソード16の材料としては、十分な導電性を有していれば特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、チタン、銅、アルミニウム、白金、金等の金属あるいはそれらの合金を挙げることができる。
【0024】
カソード16の形状としては、ステント14が電解研磨可能であれば特に限定されないが、例えば、板状、芯状、棒状、ワイヤ状等を挙げる事ができ、カソード16の表面積を大きくとるために、また電解研磨時に発生した気泡、温度変化や液中イオンの濃度勾配を避ける目的で、カソード16にメッシュ形状やパンチング形状を形成させてもよい。
【0025】
<電解研磨方法>
図1には、ステントに電極を接触させて電解研磨する従来の一般的なステントの電解研磨方法を示している。
【0026】
電解研磨は、電解液槽15に貯留された電解液17中において、導電性ワイヤ12aで電源11のプラス極と接続されたアノード導電性部材13が被研磨物であるステント14に接している。また、導電性ワイヤ12bで電源11のマイナス極と接続されたカソード16がステント14から乖離して設置される。このような配置状態において、アノード導電性部材13とカソード16との間に電圧が印加されると、アノードとして作用するステント14において表面の金属元素が電解液17中に溶解する。これにより、ステントは、電解研磨され、表面が平滑になりに光沢を生じさせることができる。
【0027】
しかしながら、従来の一般的な電解研磨方法では、ステント14とアノード導電性部材13との電気接点18の領域は研磨されず、また、液槽内において電気接点周辺領域は、他の領域と比べて電流密度が大きく増大するため、液槽内の電流密度が不均一となり、その結果、研磨不均一(研磨ムラ)が発生してしまう傾向があった。
【0028】
図2〜
図5は、本発明の実施の一形態の概略図及び断面図を示したものである。
図2、
図3には、本発明の(a)工程であるステント14の内面にアノード導電性部材13を接触させた状態でステント14の外面を電解研磨する工程を示している。
【0029】
一方、
図4、
図5には、本発明の(b)工程であるステント14の外面にアノード導電性部材13を接触させた状態でステント14の内面を電解研磨する工程を示している。
前記(a)工程及び(b)工程を各々1回以上含むように電解研磨を実施することで、ステント14の外面及び内面ともにムラ無く均一に電解研磨を行うことが出来る。
【0030】
尚、(a)工程を先に行ってもよいし、(b)工程を先に行ってもよい。また、(a)工程あるいは(b)工程のいずれか一方を複数回連続的に行った後に、他方の工程を行うこともできる。
【0031】
本発明の製造方法においては、表面の平滑性に優れる点や均一な寸法のステントが得られやすい点で、ステント14とアノード導電性部材13とが接する電気接点18の全面積は、ステント14の内面積もしくは外面積の少なくとも50%以上で接していることが好ましい。電気接点18の面積を十分に大きくとることで、ステント14周辺において均一な電解液の電流密度を得られやすい。
【0032】
電解研磨中にステント14を塑性変形や破断を生じさせることなく固定しやすく、電流密度の局所ムラも生じにくいという観点で、(a)工程においては、アノード導電性部材13とステント14を接触させる際に、ステント14の少なくとも一部を、基準内径から拡径した状態で接触させることが好ましく、同様に(b)工程においては、ステント14の少なくとも一部を、基準外径から縮径した状態で接触させることが好ましい。
【0033】
特に、安定的にステントを固定させやすく、平滑な研磨面が得られやすい点で、0.1mm以上2.0mm以下拡径あるいは縮径した状態で接触していることが好まく、0.5mm以上1.0mm以下拡径あるいは縮径した状態で接触させることが特に好ましい。
【0034】
ステント14をアノード導電性部材13で押圧することで、接触がより強固になり、電流がより流れやすくなることで、電気接点18周辺領域の電流密度が均一になりやすく、ステント14周辺の電解液の電流密度を均一にしやすいため、研磨ムラの少ない優れた平滑性を有する研磨面や、ムラの少ない均一な寸法のステントを得ることができる。
【0035】
一般的な冠状動脈及び/又は血管内ステントは、長さ約7〜約200mm、直径約1〜約12mmの範囲で設計され得るが、前記範囲外のサイズのステント14であっても、本発明は拡径もしくは縮径された状態となる様にアノード導電性部材13に接触させることが好ましい。
【0036】
尚、本発明における基準内径または基準外径とは、医療用管状体の製造における電解研磨前の管状体の内面の直径(以下、内径と称することがある。)、または、管状体の外面の直径(以下、外径と称することがある。)を示す。
【0037】
カソード16は、電解研磨の際、ステント14とアノード導電性部材13との接触している面に対し、逆の面側にステント14から乖離して配置される。例えば、(a)工程において、カソード16はステント14の外周の周囲を囲むようにステント14から乖離して配置される。
【0038】
更に、ステント14に連続的に一定の電場を与えやすい点で、カソード16はステント14との距離(以下、電極間距離と称することがある。)が一定となるようにステント16の外周面の形状と同様に湾曲した形状を有していることが好ましい。
【0039】
(a)工程において、ステント14とカソード16の電極間距離は、電解研磨時に発生した気泡、温度変化や液中イオンの濃度勾配等の影響を受けにくく平滑な処理表面が得られやすい点、電極同士の接触を防止する点、あるいは、単位時間当たりの電解研磨における研磨量をコントロールしやすい点などから、下限は10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましく、30mm以上が特に好ましく、上限は100mm以下が好ましく、90mm以下がより好ましく、80mm以下が特に好ましい。
(a)工程において、カソード16の個数は特に限定されないが、ステント14の全周を覆うように1つで構成されてもよいし、分割されて構成されていてもよい。
(a)工程において、カソード16の表面積は電子授受の観点から、ステント14の表面積に対して少なくとも2倍以上の表面積を有していることが好ましい。
【0040】
(b)工程において、カソード16はステント14の内周の中央付近にステント14から乖離して配置されていることが好ましい。
更に、ステント14に連続的に一定の電場を与えやすい点で、カソード16は、ステント14との電極間距離が一定となるように湾曲した形状、もしくは、棒状やパイプ状の形状を有していることが好ましい。
【0041】
尚、(b)工程において、ステント14とカソード16の電極間距離は、電極同士の接触を起こさない程度に長くしておくことが好ましい。
(b)工程において、カソード16の個数は特に限定されないが、ステント14の内面に取り囲まれるように1つで構成されてもよいし、分割されて構成されていてもよい。
【0042】
液槽15は、電解液17を貯留する。電解液17は、特に限定されるものではなく、例えば、Ni−Ti(ニッケルチタン)合金の場合、公知のアルコール系または硫酸系の水溶液が挙げられる。なお、液槽15は、電解液17によって腐食等しない材料で形成されることが好ましい。また、電解研磨中は、電解研磨時に発生する気泡の分散や、温度変化や液中イオンの濃度勾配を抑制出来る点で、マグネチックスターラーや循環ポンプ等によって電解液17を撹拌することが好ましい。またそれとは別に、もしくは、共働させて、アノード導電性部材13自身に回転や揺動等の動作をさせることで、電解液17を撹拌してもよい。
【0043】
電圧がアノードを構成するアノード導電性部材13とステント14及びカソード16に印可されて、ステント14を所望の滑らかさに電解研磨することができる。
尚、本発明における電解研磨時間とは、アノード導電性部材13をステント14に接触させて電圧を印可している時間である。
【0044】
電解研磨の好ましい電圧値は、平滑な表面が得られれば特に限定されないが、使用する金属材料、電解液に適した電圧値を選択すれば良いが、例えば、Ni−Ti(ニッケルチタン)合金の場合、10〜30Vの範囲が好ましい。
【0045】
尚、電解研磨の回数は、平滑な表面が得られれば特に限定されないが、(a)工程および(b)工程を合計2〜30回繰り返すことが好ましい。
【0046】
一般的な冠状動脈及び/又は血管内ステントは、直径約1〜約12mmの範囲で設計され得ることから、カソード16とステント14の電極間距離は、(a)工程よりも(b)工程において限定されるために実質的に小さくなることが多く、電解研磨時に発生した気泡を拡散させやすい、温度変化や液中イオンの濃度勾配を抑制させやすい点で、電解研磨回数は、(a)工程よりも(b)工程のほうが少ないことが好ましい。
【0047】
また、ステント14の外面と内面の表面性ならびに寸法形状を保つ点で、(a)工程と(b)工程を順次経て行うことを1回以上繰り返すことが好ましい。
【0048】
(a)工程と(b)工程を順次行うことを1回以上繰り返す場合は、上述したように、カソード16とステント14の電極間距離は、(a)工程よりも(b)工程において限定されるために実質的に小さくなることが多いため、電解研磨時に発生した気泡を拡散させやすい、温度変化や液中イオンの濃度勾配を抑制させやすい点で、(a)工程の1回の電解研磨時間よりも(b)工程の1回の電解研磨時間ほうが短いことが好ましい。
【0049】
電圧を印可する時間、即ち、電解研磨時間としては、(a)工程においては、1回の電解研磨時間の下限が10秒以上であることが好ましく、20秒以上であることが特に好ましい、また上限は60秒以内が好ましく、40秒以内が特に好ましい。
【0050】
(b)工程の1回の電解研磨時間としては、下限が3秒以上であることが好ましく、5秒以上であることが特に好ましい。また上限は10秒以下が好ましく、8秒以下が特に好ましい。
【0051】
(a)工程あるいは(b)工程の工程ごとにステント14を電解液17から取り出し、アルコール、水、硝酸、またはそれらを組み合わせた溶液でステント14を洗浄することもできる。
電解研磨を数回繰り返し、最終的には、超音波浴中に室温で1〜30分間浸漬して洗浄するのが好ましい。
【0052】
本発明の管状体の製造方法は、簡便に平滑な表面が得られやすいため、医療用の管状体に好ましく用いることが出来る。
【0053】
以上のように、本発明の実施の形態にかかるステントの製造方法について具体例を用いて説明したが、本発明は上記実施の形態によって制限を受けるものでなく、前・後記の主旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0054】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
外径が8.0mmで内径が7.6mmのニッケルチタン合金製のステント14を用意した。
(a)工程
ステント14を外径が8.0mmのパイプ状のSUS304製のアノード導電性部材13に対してステント14が拡径(+0.4mmの拡径)するように挿通して、アノード導電性部材13の外面に対してステント14の内面の全面(ステントの内面積の100%)と接触させて固定した。
【0055】
電解液槽15内には、市販されているTi合金用の電解研磨溶液である電解液17を貯留し、ステント14との電極間距離が等距離(45mm〜55mm)になるように湾曲形状のSUS304製のカソード16を設置した。(なお、この電解液17の推奨電圧は20Vである。)
電圧20Vで30秒間、電解液17に対して電力供給し、この電解液17にステント14が浸されることで、ステント14の外表面の電解研磨が行われた。電力供給完了後、ステント14を水で洗浄して乾燥させ、ステント14とアノード導電性部材の電気接点18を変更する。
【0056】
(b)工程
ステント14を内径が7.6mmのパイプ状のSUS304製のアノード導電性部材13に対してステント14が縮径(−0.4mmの縮径)するように挿通して、アノード導電性部材13の内面に対してステント14の外面の全面(ステント外面積の100%)と接触させて固定した。
【0057】
電解液槽15内には、市販されているTi合金用の電解研磨溶液である電解液17を貯留し、ステント14との電極間距離が等距離(3mm〜4mm)になるように棒状のSUS304製のカソード16を設置した。(なお、この電解液17の推奨電圧は20Vである。)
電圧20Vで5秒間、電解液17に対して電力供給し、この電解液17にステント14が浸されることで、ステント14の内表面の電解研磨が行われた。電力供給完了後、ステント14を水で洗浄して乾燥させ、ステント14とアノード導電性部材の電気接点18を変更する。
【0058】
この後、(a)の工程を3回連続して実施した後、(b)の工程と(a)の工程を各々3回ずつ交互に実施した。
【0059】
(比較例1)
外径が8.0mmで内径が7.6mmのニッケルチタン合金製のステント14を用意した。
(a)工程
ステント14をクリップ形状のSUS304製のアノード導電性部材13で固定した(ステントの内面の全面積の5%で接触)以外は、実施例1の(a)工程と同様の方法で、8回連続して繰り返し実施した。
【0060】
(比較例2)
外径が8.0mmで内径が7.6mmのニッケルチタン合金製のステント14を用意した。
実施例1の(a)工程のみ、8回連続して繰り返し実施した。
【0061】
(比較例3)
外径が8.0mmで内径が7.6mmのニッケルチタン合金製のステント14を用意した。
実施例1の(b)工程のみ、8回連続して繰り返し実施した。
【0062】
(結果)
実施例1、ならびに、比較例1〜3の電解研磨方法の結果、いずれの例においても電解研磨は行えた。特に、実施例1では、外面も内面もステント14の表面が均一に光沢を示すまで研磨できた。
【0063】
一方、比較例1では、ステント14の外面も内面も表面は電解研磨を行えているものの、内面は外面に比べて研磨面にバリが残っており、ステント14の外面と内面に研磨ムラが見られた。
【0064】
比較例2では、ステント14の外面の電解研磨は行えているものの、内面は外面に比べて研磨面にバリが残っており、ステント14の外面と内面に研磨ムラが見られた。
【0065】
比較例3では、ステント14の内面の電解研磨は行えているものの、外面は内面に比べて研磨面にバリが残っており、ステント14の外面と内面に研磨ムラが見られた。
【0066】
このことから、本発明の電解研磨方法は、簡易な方法により、ムラなく均一に電解研磨を達成できることがわかる。