特許第6796712号(P6796712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6796712グラフェン膜正極材料の製造方法およびそのアルミニウムイオン電池としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796712
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】グラフェン膜正極材料の製造方法およびそのアルミニウムイオン電池としての使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20201130BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20201130BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20201130BHJP
   C01B 32/184 20170101ALI20201130BHJP
   H01M 2/16 20060101ALN20201130BHJP
【FI】
   H01M4/587
   H01M4/46
   H01M10/054
   C01B32/184
   !H01M2/16 F
   !H01M2/16 P
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-517932(P2019-517932)
(86)(22)【出願日】2018年2月27日
(65)【公表番号】特表2019-537198(P2019-537198A)
(43)【公表日】2019年12月19日
(86)【国際出願番号】CN2018077312
(87)【国際公開番号】WO2019000990
(87)【国際公開日】20190103
【審査請求日】2019年3月28日
(31)【優先権主張番号】201710522262.8
(32)【優先日】2017年6月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519111888
【氏名又は名称】ハンヂョウ ガオシー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANGZHOU GAOXI TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガオ チャオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ハオ
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102750998(CN,A)
【文献】 特開2016−047777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
C01B 32/182−32/184
H01M 10/054
H01G 11/32 − 11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)質量%で、含有量が0.05%〜5%の酸化グラフェン溶液をベース上に塗布し、乾燥真空圧力50kpa、乾燥温度60℃で乾燥させた後、ベースを除去し、酸化グラフェン膜を得るステップと、
(2)酸化グラフェン膜を化学還元または電解液が浸漬可能な程度に高温熱還元し、グラフェン膜正極材料を得るステップとを含むことを特徴とする、グラフェン膜正極材料の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ(1)の酸化グラフェン溶液の溶媒は、脱イオン水、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、エタノール、1−ブタノール、アセトニトリル,またはこれらの任意の比からなる混合物から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(1)におけるベースは、ポリエチレンフィルム、アルミ箔、銅箔、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタラートフィルムから選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(2)の化学還元剤は、ヒドラジン水和物蒸気、ヨウ化水素水溶液、アスコルビン酸ナトリウム水溶液から選ばれ、高温熱還元温度は1000〜3000℃、還元雰囲気は窒素ガスまたはアルゴン雰囲気下、高温熱還元時間は100〜1000分であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(2)で得られるグラフェン膜の厚みは、10μm〜1mmであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法で得られたグラフェン膜正極材料のアルミニウムイオン電池としての使用。
【請求項7】
電池の外装は、ボタン型電池ケース、ソフトパック電池ケースまたはステンレス電池ケースから選ばれ、電池負極は、アルミニウム金属またはアルミニウム合金であり、セパレータは、ガラス繊維、ポリプロピレンセパレータ、ポリテトラフルオロエチレンセパレータまたはポリエチレンセパレータから選ばれることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性、超高導電率および広い温度使用範囲を有するグラフェン膜正極材料の製造方法およびそのアルミニウムイオン電池としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムイオン電池は、高速充放電が可能な新型二次電池であり、コストが低く、出力密度が高く、安全性が高いという利点を有し、ウルトラキャパシタに代わる新型エネルギー貯蔵技術とみなされている。しかしながら、現在のアルミニウムイオン電池技術は、主に正極材料の比容量の低さ、大規模加工生産の可能性およびコストに制限されており、例えば、出願公開番号CN104241596Aの中国発明特許(出願公開日2014年12月24日)は、カーボン紙に類似したアルミニウムイオン電池正極を公開しており、90mah/gの比容量を有するが、靭性、倍率性能および数百回しかないサイクル寿命によりこの正極材料の用途が制限されている。
【0003】
現在、アルミニウムイオン電池正極のサイクル寿命および倍率性能などは、依然としてアルミニウムイオン電池の用途を制限する重要因子である。そのため、アルミニウム−グラフェン電池の性能を大幅に向上させるために、適切な正極材料を見出すことが、現在、研究の最重点となっている。
【0004】
一般に、グラフェン膜の製造過程において、グラフェン膜を緻密にするために、往々にしてホットプレス工程が用いられ、さらに追加の圧力が加えられるが、これにより電解液がグラフェン膜の中に浸透できなくなるため、電極材料とすることができない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、先行技術の欠点に対して、本分野の技術的偏見を克服し、電解液が浸漬可能なグラフェン膜正極材料の製造方法およびそのアルミニウムイオン電池としての使用を提供することにある。
【0006】
本発明の目的は、以下の技術的解決手段によって実現される。すなわち、次のステップを含む、グラフェン膜正極材料の製造方法である。
(1)質量%で、含有量が0.05%〜5%の酸化グラフェン溶液をベース上に塗布し、乾燥させた後、ベースを除去し、酸化グラフェン膜を得る。
(2)酸化グラフェン膜を化学還元または電解液が浸漬可能な程度に高温熱還元し、超高導電率を有するグラフェン膜正極材料を得る。
さらに、前記ステップ(1)の溶媒は、脱イオン水、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、エタノール、1−ブタノール、アセトニトリル,またはこれらの任意の比からなる混合物から選ばれる。
【0007】
さらに、前記ステップ(1)におけるベースは、ポリエチレンフィルム、アルミ箔、銅箔、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタラートフィルムなどから選ばれ、乾燥真空圧力は0.1〜100kPa、乾燥温度は40〜200℃である。
【0008】
さらに、前記ステップ(2)の化学還元剤は、ヒドラジン水和物蒸気、ヨウ化水素水溶液、アスコルビン酸ナトリウム水溶液などから選ばれ、高温熱還元温度は1000〜3000℃、還元雰囲気は窒素ガスまたはアルゴン雰囲気下、高温熱還元時間は100〜1000分である。
【0009】
さらに、前記ステップ(2)に記載の超高導電率を有するグラフェン膜の厚みは、10μm〜1mmである。
【0010】
超高導電グラフェンエアロゲルを正極とする、上記方法で得られたグラフェン膜正極材料のアルミニウムイオン電池としての使用。電池外装は、ボタン型電池ケース、ソフトパック電池ケースまたはステンレス電池ケースから選ばれる。電池負極は、アルミニウム金属またはアルミニウム合金である。セパレータは、ガラス繊維、ポリプロピレンセパレータ、ポリテトラフルオロエチレンセパレータまたはポリエチレンセパレータから選ばれる。
【0011】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。本発明は、アルミニウムイオン電池に用いるグラフェン膜正極材料の製造方法を最適化するとともに、高配向性および浸透性をもたせる。最適化後のグラフェン膜を組み立てたアルミニウムイオン電池は、従来のグラフェン膜正極材料からなるアルミニウムイオン電池に比べ、出力密度およびエネルギー密度が著しく上昇し、250,000回のサイクル後にも91%の性能を保持し、摂氏零下40度〜摂氏120度の非常に広い温度範囲において充分安定した電池性能を有する。また、緩い構造のグラフェン膜は、10,000回曲げた後にも完全な電気化学的性能を保持する。かつ、このグラフェン膜は、自立し連続化生産が可能であり、コストが低廉で、今度、電気自動車、ウェアラブルデバイスの面で極めて高い実践的用途の価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明により製造したグラフェン膜ベースアルミニウムイオン電池の100A/g定電流充放電条件下でのサイクル性能曲線である。
図2】本発明により製造したグラフェン膜ベースアルミニウムイオン電池の0〜120度での容量および充電電圧最適化後の効率の変化曲線である。
図3】本発明により製造したグラフェン膜ベースアルミニウムイオン電池の零下40度〜0度での容量および倍率性能である。
図4】本発明により製造したグラフェン膜ベースアルミニウムイオン電池の零下30度および80度での安定サイクル曲線である。
図5】本発明により製造したアルミニウム−グラフェン膜電池の動作温度範囲および安定性能温度範囲と市販されている電池およびキャパシタとの比較である。図中、Aはリチウムイオン電池、Bは水系キャパシタ、Cは有機系キャパシタ、Dは本発明のアルミニウムイオン電池である。
図6】本発明により製造したアルミニウム−グラフェン膜電池の柔軟性を示す図であり、0〜180度の曲げ角度、1万回の曲げ回数の後でも100%の電気化学的性能を保持することができ、180度曲げた状態でも500回以上の安定サイクルが可能である。
図7】本発明により製造したグラフェン膜正極の浸漬性を示す図である。
図8】球形ベースに塗布して得られた自立グラフェン膜の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
グラフェン膜の本願について、配向度が高いほど、電子移動能力が強くなり、導電性も高くなる。そのため、当業者は、高配向度グラフェン膜の製造に力を入れ、電池に適用しようとしている。本発明は、上記技術的偏見を克服し、電池の効率に対する配向度および浸透率の影響を総合的に考慮し、乾燥温度を最適化し、簡単なステップにより、柔軟性、超高導電率および広い温度使用範囲を有するグラフェン膜正極材料を得る。このグラフェン膜を用いて組み立てたアルミニウムイオン電池は、従来の緻密なグラフェン膜正極材料からなるアルミニウムイオン電池に比べ、出力密度およびエネルギー密度が著しく上昇し、250,000回のサイクル後にも91%の性能を保持し、摂氏零下40度〜摂氏120度の非常に広い温度範囲において充分安定した電池性能を有する。また、緩い構造のグラフェン膜は、10,000回曲げた後にも完全な電気化学的性能を保持する。
【0014】
以下、実施例により本発明について具体的に説明する。これらの実施例は、本発明についてのさらなる説明のみに用いられ、本発明の保護範囲を限定するものではない。当業者が本発明の内容に基づいて行った非本質的な変更及び調整は、いずれも本発明の保護範囲内に属する。
【0015】
<実施例1>
(1)酸化グラフェン10重量部を脱イオン水1000重量部に溶解し、均等に溶解分散した酸化グラフェン水溶液が得られるまで4時間均等に撹拌した。
(2)酸化グラフェン溶液をポリテトラフルオロエチレン薄膜上に均等に塗布し、塗布厚みを500μmに制御し、60℃および50kpaの気圧で乾燥し、酸化グラフェン膜を得た。
(3)窒素ガス雰囲気の黒鉛化炉において、酸化グラフェン膜を2800℃まで加熱し、1時間保持し、超高導電率を有するグラフェン膜を得た。測定の結果、導電率は10S/mを超え、密度は1mg/cm超であった。このグラフェン膜は、20MPaの引張強度および4%の引張比を有する。
(4)グラフェン膜から50cm×50cmの正方形の正極シートを切り出し、得られた正極シート、アルミ箔負極シート、ガラス繊維セパレータを、イオン液体を電解質とし、アルミニウムラミネートフィルムソフトパック電池ケースで組み立てることにより、グラフェン膜を正極とするアルミニウムイオン電池を得た。図1は、本実施例により製造したグラフェン膜ベースアルミニウムイオン電池の100A/g定電流充放電条件下でのサイクル性能曲線である。図からわかるように、このグラフェン膜は、120mAh/g近い高比容量を提供することができ、かつ250,000回のサイクルの後でも91%の容量を保持することができた。
(5)得られたアルミニウムイオン電池を高低温測定サイクル試験装置の中に置き、異なる温度での性能を測定することにより、優れた温度安定性を有することがわかった。図2に示すように、グラフェン膜正極は、摂氏100度においても115mAh/gを超える比容量を有し、かつ有効な充電終止電圧最適化方法の下で、安定したサイクルおよびクーロン効率を保持することができた。図3に示すように、摂氏80度でグラフェン膜正極は117mAh/gの比容量を保持することができ、12,000回の安定サイクルが可能であり、摂氏零下30度で85mAh/gの比容量を保持することができ、1000回の安定サイクルが可能であった。図4に示すように、摂氏零下40度でも、このアルミニウム−グラフェン膜電池は、比較的良好な性能を有した。この優れた温度使用範囲が広いアルミニウム−グラフェン膜電池の性能は、通常のキャパシタおよびリチウムイオン電池を遥かに超えるものであった(図5に示す通り)。得られたアルミニウムイオン電池に対して曲げ測定を行うことにより、10,000回曲げた後、この電池の性能が変わらないことがわかった(図6に示す通り)。
【0016】
<実施例2>
(1)酸化グラフェン0.5重量部を脱イオン水1000重量部に溶解し、均等に溶解分散した酸化グラフェン水溶液が得られるまで4時間均等に撹拌した。
(2)酸化グラフェン溶液をポリテトラフルオロエチレン薄膜上に均等に塗布し、塗布厚みを500μmに制御し、60℃および50kpaの気圧で乾燥し、酸化グラフェン膜を得た。
(3)ヒドラジン水和物蒸気を用いて酸化グラフェン膜を1時間還元し、超高導電率を有するグラフェン膜を得た。測定の結果、導電率は105S/mを超え、密度は1mg/cm3超であり、18MPaの引張強度および3.7%の引張比を有した。
(4)グラフェン膜から50cm×50cmの正方形の正極シートを切り出し、得られた正極シート、アルミ箔負極シート、ガラス繊維セパレータを、イオン液体を電解質とし、アルミニウムラミネートフィルムソフトパック電池ケースで組み立てることにより、グラフェン膜を正極とするアルミニウムイオン電池を得た。このグラフェン膜は、110mAh/g近い高比容量を提供することができ、かつ250,000回のサイクルの後でも92%の容量を保持することができた。
(5)得られたアルミニウムイオン電池を高低温測定サイクル試験装置の中に置き、異なる温度での性能を測定することにより、優れた温度安定性を有することがわかった。グラフェン膜正極は、摂氏100度においても110mAh/gを超える比容量を有し、かつ有効な充電終止電圧最適化方法の下で、安定したサイクルおよびクーロン効率を保持することができた。摂氏80度でグラフェン膜正極は114mAh/gの比容量を保持することができ、12,000回の安定サイクルが可能であり、摂氏零下30度で80mAh/gの比容量を保持することができ、1000回の安定サイクルが可能であった。摂氏零下40度でも、このアルミニウム−グラフェン膜電池は、比較的良好な性能を有した。この優れた温度使用範囲が広いアルミニウム−グラフェン膜電池の性能は、通常のキャパシタおよびリチウムイオン電池を遥かに超えるものであった。得られたアルミニウムイオン電池に対して曲げ測定を行うことにより、10,000回曲げた後、この電池の性能が変わらないことがわかった。
【0017】
<実施例3>
(1)酸化グラフェン50重量部を脱イオン水1000重量部に溶解し、均等に溶解分散した酸化グラフェン水溶液が得られるまで4時間均等に撹拌した。
(2)酸化グラフェン溶液をポリテトラフルオロエチレン薄膜上に均等に塗布し、塗布厚みを500μmに制御し、60℃および50kpaの気圧で乾燥し、酸化グラフェン膜を得た。
(3)窒素ガス雰囲気の黒鉛化炉において、酸化グラフェン膜を1000℃まで加熱し、3時間保持し、超高導電率を有するグラフェン膜を得た。測定の結果、導電率は105S/mを超え、密度は1mg/cm3超であり、19MPaの引張強度および3.9%の引張比を有した。
(4)グラフェン膜から50cm×50cmの正方形の正極シートを切り出し、得られた正極シート、アルミ箔負極シート、ガラス繊維セパレータを、イオン液体を電解質とし、アルミニウムラミネートフィルムソフトパック電池ケースで組み立てることにより、グラフェン膜を正極とするアルミニウムイオン電池を得た。このグラフェン膜は、115mAh/g近い高比容量を提供することができ、かつ250,000回のサイクルの後でも91%の容量を保持することができた。
(5)得られたアルミニウムイオン電池を高低温測定サイクル試験装置の中に置き、異なる温度での性能を測定することにより、優れた温度安定性を有することがわかった。グラフェン膜正極は、摂氏100度においても110mAh/gを超える比容量を有し、かつ有効な充電終止電圧最適化方法の下で、安定したサイクルおよびクーロン効率を保持することができた。摂氏80度でグラフェン膜正極は110mAh/gの比容量を保持することができ、12,000回の安定サイクルが可能であり、摂氏零下30度で78mAh/gの比容量を保持することができ、1000回の安定サイクルが可能であった。摂氏零下40度でも、このアルミニウム−グラフェン膜電池は、比較的良好な性能を有した。この優れた温度使用範囲が広いアルミニウム−グラフェン膜電池の性能は、通常のキャパシタおよびリチウムイオン電池を遥かに超えるものであった。得られたアルミニウムイオン電池に対して曲げ測定を行うことにより、10,000回曲げた後、この電池の性能が変わらないことがわかった。
【0018】
比較例1:
(1)酸化グラフェン50重量部を脱イオン水1000重量部に溶解し、均等に溶解分散した酸化グラフェン水溶液が得られるまで4時間均等に撹拌した。
(2)酸化グラフェン溶液をポリテトラフルオロエチレン薄膜上に均等に塗布し、塗布厚みを500μmに制御し、60℃および100kpaの気圧で乾燥し、酸化グラフェン膜を得た。
(3)ヒドラジン水和物蒸気を用いて酸化グラフェン膜を1時間還元し、超高導電率を有するグラフェン膜を得た。測定の結果、導電率は104S/mを超え、密度は1mg/cm3超であり、6MPaの引張強度しかなかった。
(4)グラフェン膜から50cm×50cmの正方形の正極シートを切り出し、得られた正極シート、アルミ箔負極シート、ガラス繊維セパレータを、イオン液体を電解質とし、アルミニウムラミネートフィルムソフトパック電池ケースで組み立てることにより、グラフェン膜を正極とするアルミニウムイオン電池を得た。このグラフェン膜は、60mAh/g近い高比容量を提供することができ、10,000回のサイクルの後でも30%の容量を保持することができた。
(5)得られたアルミニウムイオン電池を高低温測定サイクル試験装置の中に置き、異なる温度での性能を測定することにより、優れた温度安定性を有することがわかった。グラフェン膜正極は、摂氏100度で比容量が50mAh/gまで低下し、摂氏80度でグラフェン膜正極の比容量は55mAh/gまで低下し、摂氏零下30度で比容量は30mAh/gまで低下した。
【0019】
比較例2:
(1)酸化グラフェン10重量部を脱イオン水1000重量部に溶解し、均等に溶解分散した酸化グラフェン水溶液が得られるまで4時間均等に撹拌した。
(2)酸化グラフェン溶液をポリテトラフルオロエチレン薄膜上に均等に塗布し、塗布厚みを500μmに制御し、60℃および50kpaの気圧で乾燥し、酸化グラフェン膜を得た。
(3)窒素ガス雰囲気の黒鉛化炉において、酸化グラフェン膜を1KPaの物理的圧力の下で2800℃まで加熱し、1時間保持し、超高導電率を有するグラフェン膜を得た。測定の結果、導電率は106S/mを超え、密度は2mg/cm3超であった。
(4)グラフェン膜から50cm×50cmの正方形の正極シートを切り出し、得られた正極シート、アルミ箔負極シート、ガラス繊維セパレータを、イオン液体を電解質とし、アルミニウムラミネートフィルムソフトパック電池ケースで組み立てることにより、グラフェン膜を正極とするアルミニウムイオン電池を得た。測定の結果、このアルミニウムイオン電池にはいかなる性能もないことがわかった。これは、緻密な電極の中に電解液がまったく浸漬できないことによりものである。図7に示すように、比較例2におけるホットプレスで得られたグラフェン膜は、表面の液滴接触角が80秒以内にまったく変化もせず、いかなる浸漬挙動もないことが証明された。これに比べ、実施例1におけるホットプレスで得られたグラフェン膜は、表面の液滴接触角が20秒後に0となり、非常に良好な浸漬性を有することが証明された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8