特許第6796713号(P6796713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6796713自動車用液体容器の補強要素および補強要素を備えた自動車用液体容器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796713
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】自動車用液体容器の補強要素および補強要素を備えた自動車用液体容器
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/03 20060101AFI20201130BHJP
   B65D 25/02 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   B60K15/03 Z
   B60K15/03 B
   B65D25/02 B
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-518383(P2019-518383)
(86)(22)【出願日】2017年10月6日
(65)【公表番号】特表2019-532866(P2019-532866A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(86)【国際出願番号】EP2017075549
(87)【国際公開番号】WO2018065605
(87)【国際公開日】20180412
【審査請求日】2019年6月3日
(31)【優先権主張番号】102016219539.5
(32)【優先日】2016年10月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598001467
【氏名又は名称】カウテックス テクストロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】ゲーベルト、クラウス
(72)【発明者】
【氏名】クヴァント、フランク
(72)【発明者】
【氏名】マルクス、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ローレンツ、ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・メーゲルン、アンドレ
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0014307(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
B65D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両用液体容器の補強要素であって、
中央部分(28)と、該中央部分の端部側で補強要素を液体容器(64)に接続する少なくとも1つの接続部(4)を有し、
前記接続部(4)が、第1の材料から成り、第2の材料(10)によって少なくとも部分的に封入されている少なくとも第1と第2のウェブ(6、8、62、76、78)を有し、
前記第2の材料(10)が、前記ウェブ(6、8)の貫通開口部(12、16、18、58、80)に貫入しており、
前記ウェブ(6、8、62、76、78)が前記中央部分(28)上に一体的に形成されている自動車両用液体容器の補強要素。
【請求項2】
前記第1のウェブ(6、62)が、前記第2のウェブ(8、62)よりも、前記補強要素(2)の長手方向軸線(L)から小さい間隔(D1)に位置している、請求項1に記載の補強要素。
【請求項3】
前記ウェブ(6、8)が、少なくとも部分的に二重壁の形で配置され、
および/または、
前記第1のウェブ(6)が第1のスリーブ(6)を形成しており、前記第2のウェブ(8)が第2のスリーブ(8)を形成しており、前記第2のスリーブ(8)が、少なくとも部分的に周方向側から前記第1のスリーブ(6)を取り囲んでおり、
および/または、
3つ以上のウェブ(6、8、62)が設けられている、請求項1または2に記載の補強要素。
【請求項4】
前記ウェブ(6、8、62)が長手方向軸線(L)に対して横断方向の断面で見て、五角形、六角形を含む多角形状を有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項5】
前記ウェブ(6、8、62)に通気用開口部(36)が付与されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項6】
前記補強要素(2、54、60)が長手方向軸線(L)に沿って延在し、少なくとも部分的に前記第1のウェブ(6、62)および/または前記第2のウェブ(6、62)によって周方向側から取り囲まれている貫通開口部(14)を有している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項7】
前記第1のウェブ(6、62、76)の貫通開口部(12、16、58、80)が長手方向軸線(L)から前記長手方向軸線(L)に対して横断方向(r)で見て、少なくとも部分的に前記第2のウェブ(8、62、78)の貫通開口部(12、18、58、80)と整列して配置されており、
および/または、
前記第1のウェブ(6、62、76)の前記貫通開口部(12、16)のそれぞれが、前記長手方向軸線(L)に対して横断方向(r)で見て、前記第2のウェブ(8、62)の貫通開口部(12、18、58、80)と整列して配置されており、
および/または、
貫通開口部(12、16、18、58、80)が、1つ以上のウェブ(6、8、62、76)上に複数列および/または格子状に配置されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項8】
前記第2の材料(10)が、端部側および周方向側から少なくとも2つのウェブ(6、8、62、76、78)を封入しており、
および/または、
前記補強要素(2、54、60)が2つのハーフシェル(20、22)から組み立てられており、
および/または、
1つの接続部(4)が前記補強要素(2、54、60)の両端部(24、26)にそれぞれ設けられている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項9】
前記第1の材料が、PA、PAI、PEEK、PAEK、PPA、PBT、PE、HDPE、POM、PPS、またはPAであり、および/または前記第2の材料が、PA、PAI、PEEK、PAEK、PPA、PBT、PE、HDPE、POM、PPS、またはPAである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項10】
前記第1の材料と前記第2の材料との間の引離し力が15kN以上であり、
および/または、
前記第1の材料の引張り強度が、前記第2の材料の降伏応力の最大2.6倍である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項11】
前記第1のウェブ(6、62、76)と前記第2のウェブ(8、62、78)とが、少なくとも部分的に互いに一定の間隔(c)にあり、
および/または、
前記第1のウェブ(76)および/または前記第2のウェブ(78)が、直方体状またはプレート状の部分(82)を有し、前記貫通開口部(80)が、前記直方体状またはプレート状の部分(82)に配置されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項12】
前記ウェブ(6、62、76、78)が、中央部分(28)から始まってフォーク状に分岐されており、
および/または、
前記補強要素(2、54、60、72)の第1の端部(24)と前記第1の端部(24)の反対側にある第2の端部(26)とに、それぞれ1つの接続部(4)が設けられており、これら接続部(4)が、中央部分(28)を介して互いに接続されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項13】
前記補強要素が、1つ以上の支柱(30)を有する中央部分(28)を有しており、
および/または、
前記補強要素が、1つの支柱(74)を有する中央部分(28)を有している、請求項1〜12のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項14】
前記貫通開口部(12、58、80)が、互いに対して軸線方向のずれを有している、請求項1〜13のいずれか1項に記載の補強要素。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の補強要素(2、54、60、72)を有している自動車用液体容器であって、
前記補強要素(2、54、60、72)が、前記液体容器(64)の内部空間に配置されている自動車用液体容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用液体容器の補強要素、およびこのタイプの補強要素を有する自動車用液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体容器の補強要素は、自動車の静的および動的な運転荷重を受けている状態で液体容器の形状を保ち、そして補剛するのに役立つ。特に、2つの半シェルから組み立てられている液体容器の場合、補強要素は容器を構造的に強化するのに役立つ。ここで、第一に、液体容器全体の重量を小さく保つために、補強要素はできるだけ軽量設計であるべきであるという要件がある。更に、補強要素と原則的に複数層で構成される容器の内壁との間に、信頼性の高い接続が確立されるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、自動車用液体容器の改善された補強要素を特定するという技術的課題に基づいている。更に、補強要素を有する自動車用液体容器が特定される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の技術的課題は、請求項1に記載の補強要素、および請求項14に記載の液体容器によって解決される。本発明の更なる改良例は、従属請求項および以下の説明によってもたらされる。
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、自動車用液体容器の補強要素に関し、補強要素は、補強要素を自動車用液体容器に接続する少なくとも1つの接続部を有し、接続部は、第1の材料から作られ、第2の材料によって少なくとも部分的に封入された、少なくとも第1および第2のウェブを有し、第2の材料は、第1と第2のウェブの貫通開口部に貫入している。
【0006】
液体容器は、例えば燃料タンクであり得る。
【0007】
液体容器は、SCR触媒コンバータ用の尿素溶液を貯蔵するための容器であり得る。
【0008】
液体容器は、例えばエンジンまたはバッテリーを冷却するための冷却液を貯蔵する容器であり得る。
【0009】
液体容器は、多層壁構造を有することができる。例えば、液体容器の壁のサンドウィッチ構造または層状構造は、貯蔵される液体に対して拡散障壁となる層を有することができる。このタイプの拡散障壁は、例えば、少なくとも2つの更なる層によって両側から封入することができる。
【0010】
二成分設計によって、補強要素を成分毎に最適化することを可能とする。例えば、第1の材料は小重量で高強度を有することができ、第2の材料はタンク壁の材料に対する溶接能力に関して最適化される。
【0011】
第2の材料による貫通開口部への貫入のために、第1の材料と第2の材料との間に信頼性の高いポジティブロック接続が得られる。
【0012】
補強要素の更なる改良例によれば、第1のウェブが第2のウェブよりも補強要素の長手方向軸線からの間隔が小さく設けられている。
【0013】
少なくとも第1のウェブと第2のウェブとが、長手方向軸線に対して互いにずれて配置されることにより、長手方向軸線に対して横断方向の断面で見て、複数のポジティブロック接続を第1の材料と第2の材料との間に形成することができる。したがって、信頼性の高い接続を第1の材料と第2の材料との間に構成することができ、静的および動的な運転荷重を複数のウェブに分配することができる。
【0014】
第1のウェブは、少なくとも長手方向軸線と第2のウェブとの間の区画に配置することができる。したがって、第1と第2のウェブは、長手方向軸線に対する横断方向に沿った半径方向において、互いに対して半径方向のずれまたは半径方向の間隔を有する。換言すれば、第1および第2のウェブは、少なくとも部分的に、長手方向軸線から見て長手方向軸線に対して横断方向に整列して配置される。
【0015】
第2の材料で充填されている貫通開口部は、長手方向軸線に沿って第1の材料から第2の材料へ、またその逆向きに配向される荷重を導入するために、長手方向軸線に対して横断方向に配向することができる。
【0016】
補強要素の更なる改良例によれば、第1と第2のウェブは、少なくとも部分的に二重壁の形で配置される。このように、これらウェブのコンパクトな配置を達成することができる。ウェブ間に形成される中間空間は第2の材料で充填することができる。更に、第1と第2のウェブは第2の材料によって両側から封入することができ、その結果、長手方向軸線に対して横断方向の断面で見て、5層の壁構造を実現することができる。
【0017】
長手方向軸線に対して横断方向の断面で見て、補強要素は、少なくとも部分的にサンドウィッチ構造の形で構成することができ、サンドウィッチ構造は、例えば5層を有することが可能である。即ち、例えば、第2の材料からなる第1の層が、少なくとも部分的に両側から、第1の材料からなる2つの層によって囲まれ、第1の材料で囲まれたこれらの層が次いで、第2の材料の2つの層によって囲まれる。
【0018】
代替または追加として、第1のウェブは第1のスリーブを形成することができ、第2のウェブは第2のスリーブを形成することができる。第2のスリーブは、少なくとも部分的に円周方向から第1のスリーブを囲む。多層壁構造は、入れ子状のスリーブによる簡単な形で実現することができる。
【0019】
3つ以上のウェブを設けることもできる。このようにして、運転荷重を複数のウェブに分配することができる。一例として、3つのウェブが設けられ、それらが、例えば互いに入れ子状になるように配置された3つのスリーブによって実現される場合、7層壁構造を達成することができる。
【0020】
第1および第2のウェブは、長手方向軸線に沿って測定されるウェブの高さ方向の範囲で見て少なくとも部分的に、互いに半径方向に一定の間隔を有することができ、この半径方向の間隔は、特に、長手方向軸線に対して直交方向で測定される。
【0021】
2つのウェブは、共通の溝底部で収束することができ、または共通の溝底部から始まって延在することができる。このように、これらのウェブは、補強要素のカラー上に、または中間区画もしくは中央部分上に、簡単な方法で、例えば射出成形法において一体的に成形することができる。このタイプの中間区画または中央部分は、例えば、補強要素の対向する端部に設けられる2つの接続部の間に配置することができ、これらの接続部を長手方向軸線に沿って互いに連結することができる。
【0022】
長手方向軸線に沿って測定して、第1のウェブと第2のウェブとは、同じ高さを有することができ、および/または、長手方向軸線に対して直交して配向される共通の平面に対して面一の端面で終端することができる。このようにして、補強要素のコンパクトな全体設計を達成することができる。
【0023】
第1と第2のウェブは、射出成形法における生産能を促進するために、同じ壁厚を有することができる。
【0024】
長手方向軸線に対して横断方向で測定されるウェブの壁厚またはウェブ厚さは、2mm〜8mmであり得る。長手方向軸線Lに対して平行に測定されるウェブのウェブ高さは、10mm〜80mmであり得る。ウェブの貫通開口部の直径または包囲径は、3mm〜20mmとすることができ、貫通開口部は、円形、楕円形、または多角形の断面形状を有することができる。
【0025】
第2の材料は、射出成形法で第1の材料のウェブに接続することができる。ここで、第2の材料は、その一部が、第1の材料のウェブの周りに係合するかまたは第1の材料のウェブ同士の間に形成された中間空間内に係合するウェブを形成するようにして第1の材料を封入することができる。
【0026】
第2の材料は、ウェブの領域の端部側で第1の材料を取り囲んで封入し、貫通開口部の領域で前記第1の材料を貫通する、キャップの形態で形成することができる。
【0027】
特に、第2の材料のウェブ同士の間に横断支柱を形成することができ、この横断支柱は、第1の材料のウェブの貫通開口部内に配置される。
【0028】
横断支柱は、3mm〜20mmの円直径また包囲直径を有することができ、横断支柱は、円形、楕円形、または多角形の断面形状を有することができる。
【0029】
補強要素の端面には、第2の材料に溝を形成することができ、この溝は、液体容器の内壁とこの内壁に接続される補強要素の端面との間で液体を排出するために設けられる。
【0030】
ウェブは、長手方向軸線に対して横断方向の断面で見て、五角形、六角形などの多角形状を有することができる。したがって、ウェブは、簡単な方法の射出成形法で作製することができる。多角形状を有するウェブは、例えば、平坦面を有することができ、半径セグメントまたは角セグメントを介して互いに接続される2つ以上のウェブセグメントから形成することができる。
【0031】
ウェブセグメントは、特に、補強要素の長手方向軸線に対して横断方向に延在する1つ以上の貫通開口部を有することができる。例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の貫通開口部を、このタイプのウェブセグメントに設けることができる。ウェブセグメントは、長手方向軸線に対して見て、互いに対してある角度で配置することができる。第1のウェブのウェブセグメントには、第2のウェブのウェブセグメントを離隔して当てがうことができ、これは、これらウェブの対称的な構造および運転荷重の均一な負荷を達成するためである。
【0032】
ウェブには通気用開口部を付与することができる。通気用開口部は、ウェブ同士の間に形成された中間領域を第2の材料で充填することを確実にすることができ、例えば射出成形法において、前記中間領域に存在する空気を第2の材料によって通気用開口部を介して移動させることができる。
【0033】
例えば、通気用開口部は、ウェブ同士間に形成されかつ第2の材料で充填される中間空間から始まり、補強要素の周方向のシェル外面またはシェル内面に開口する孔または陥凹部である。
【0034】
通気用開口部は複数を設けることができる。例えば、各ウェブセグメント、または互いに離隔して配置され、第1および第2のウェブを備えるウェブセグメントの対に、通気用開口部を割り当てることができる。
【0035】
できるだけ軽量構造である補強要素を達成するために、補強要素は、長手方向軸線に沿って延在して少なくとも部分的に第1のウェブおよび/または第2のウェブによって周方向側から取り囲まれた貫通孔を有することができる。材料削減という観点に加えて、長手方向軸線に沿って延在する貫通孔は更に最終組立て形態でその領域に燃料を貯蔵することを可能にし、結果として、補強要素は利用可能なタンク容積に対してわずかな制限を生じるだけである。
【0036】
長手方向軸線に沿って延在する貫通孔は、特に、長手方向軸線に沿って測定される全長にわたって補強要素を貫通する中央貫通路とすることができる。
【0037】
ウェブの貫通開口部の簡単で安価な製造を達成するために、補強要素の更なる改良例によれば、第1のウェブの貫通開口部は、長手方向軸線から長手方向軸線に対して横断方向で見て、少なくとも部分的に第2のウェブの貫通開口部と整列して配置される。
【0038】
第1のウェブの全ての貫通開口部を、長手方向軸線に対して横断方向で見て、第2のウェブの貫通開口部と整列して配置することができる。
【0039】
貫通開口部は、1つ以上のウェブに、複数列および/またはグリッド状に配置することができる。それにより、第1の材料および第2の材料の間で信頼性の高い接続を確立するために、長手方向軸線に沿って測定される補強要素の高さ範囲および長手方向軸線に対して横断方向の両方にわたって、第2の材料と第1の材料との間に複数のポジティブロック接続を確立することができる。
【0040】
第1の材料のウェブに形成され、第2の材料で充填される貫通開口部は、円形、楕円形、または多角形の形状を有することができる。切欠き効果の結果としての荷重ピークは、円形または楕円形の断面形状によって回避することができる。円形の断面形状は安価に作製することができる。
【0041】
第1の材料のウェブの貫通開口部は、例えば、射出成形工程後に金型キャビティから引き抜かれるか、または取り出される射出成形用金型内のマンドレル形状もしくはピン形状の金型構成要素または成形スライドを用いて形成することができる。引抜きは、例えば、このタイプのマンドレルまたはピンの長手方向軸線に沿った直線移動で行われる。このようにして、簡単な方法で貫通開口部を2つ以上のウェブに形成することができる。
【0042】
更なる改良例によれば、第2の材料が、少なくとも2つのウェブ、即ち第1のウェブと第2のウェブとを端面側および周方向側から封入し、かつこれらウェブに貫入するように設けられる。このようにして、信頼性の高い接続を第1の材料と第2の材料との間に確立することができる。
【0043】
特に射出成形による補強要素の安価な製造を達成するために、補強要素は2つのハーフシェルから組み立てることができる。
【0044】
特に、これらのハーフシェルは同一形状を有することができる。したがって、ハーフシェルは、例えば単一の射出成形キャビティを用いて作製することができる。更に、2つのハーフシェルから補強要素を製造することで、必要に応じて、ハーフシェルの組立て前に交換部品または取付け部品を補強要素に対してまたは補強要素内に固定することができるという利点が得られる。
【0045】
これらのハーフシェルは、後の、ハーフシェル同士および/またはタンクに対する相互溶接をする際に、安価な接続および/または予備固着を提供するために、ポジティブロック方式で互いに嵌合する接続要素を有することができる。したがって、溝またはマンドレルなどの成形要素をハーフシェルに設けることができ、これらの成形要素は、ハーフシェルを互いに対して固着するために、ポジティブロック方式で互いの中に係合すること、および/または互いに押し込むことができる。互いに嵌合するハーフシェルの成形要素の間に、しまり嵌めを形成することができる。
【0046】
これらのハーフシェルは、一体的に接合された形で互いに接続することができる。それにより、解除不能な接続をハーフシェル同士の間に形成することができる。
【0047】
補強要素が2つのハーフシェルから形成される場合、これらハーフシェルは、特に長手方向軸線を含む長手方向面または接続面に沿って接合させることができる。
【0048】
液体容器のハーフシェルおよび/または液体容器の内壁に対する補強要素の確実な取付けを達成するために、いずれの場合も、補強要素の両端にそれぞれ1つの接続部を設けることができる。
【0049】
補強要素の両端に配置された接続部同士は、第1の材料から作られた支柱を介して互いに連結することができ、支柱間に間隔が形成され、結果として、長手方向軸線に沿って延在する貫通孔は支柱によって部分的にのみ画定される。このように、自動車用液体容器に貯蔵される燃料は、長手方向軸線に沿って延在する貫通孔の領域にも貯蔵することができる。
【0050】
補強要素は、1つ以上の所定の破壊点を有することができ、その結果、衝突の際に液体容器の過度な横方向荷重もしくはせん断荷重および/または長手方向荷重が発生した場合、タンク壁の破壊を防止し、燃料の漏出を回避するために、補強要素が2つに分割される。
【0051】
接続部は、補強要素の端部側の端面領域において、完全に第2の材料から形成することができる。特に、第2の材料から形成されて端部側に突出している部分を、タンク内壁に接続するための溶接予備部分として提供することができる。
【0052】
補強要素の更なる改良例によれば、第1の材料は、PAI(ポリアミドイミド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PAEK(ポリアリルエーテルケトン)、PPA(ポリフタルアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、POM(ポリオキシメチレン)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、またはPA(ポリアミド)であり、ならびに/あるいは第2の材料は、PAI(ポリアミドイミド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PAEK(ポリアリルエーテルケトン)、PPA(ポリフタルアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、POM(ポリオキシメチレン)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、またはPA(ポリアミド)である。例えば、第1の材料はPOMであり、第2の材料はHDPEであり得る。
【0053】
第2の材料は、タンク壁に溶接することが好ましい。
【0054】
第1の材料および/または第2の材料は繊維強化されていてもよい。
【0055】
補強要素は、更なる改良例によれば、第1の材料と第2の材料との間の引離し力が15kN以上であるように設けられている。この目的のため、補強要素は、いずれの場合も両端でプレートに溶接され、プレートは、液体容器の材料または液体容器の壁材料から成る。端部側プレートは、均一な力を加えることができる圧締め装置によって延伸機内で圧締めされ、50〜100mm/分の延伸速度で破断するまで荷重を掛けられる。ここで、プレートは、補強要素の長手方向軸線に沿って反対方向に互いから離れるように変位させられる。
【0056】
補強要素は、更なる改良例によれば、第1の材料の引張り強度が、第2の材料の降伏応力の最大2.6倍であるように設けられる。引張り強度および降伏応力は、特に、DIN EN ISO 527に準拠して決定することができる。
【0057】
特に、上述した1.5kN以上の引離し力は、材料の組み合わせによる第1の材料と第2の材料との間における接続の具体的な実施形態によって達成することができ、その場合、第1の材料の引張り強度は第2の材料の降伏応力の最大2.6倍である。
【0058】
補強要素の更なる改良例によれば、第1のウェブと第2のウェブとは、少なくとも部分的に互いに一定の間隔をもって配置されている。代替または追加として、第1のウェブおよび/または第2のウェブは、直方体状またはプレート状の部分を有することができ、貫通開口部は、直方体状またはプレート状の部分に配置することができる。したがって、これらウェブは、射出成形法において一定の壁厚を有する壁要素として、安価で簡単な方法で作製することができる。特に、プレート状部分は、プレート状部分同士の間に形成される領域への第2の材料の導入を容易にするために、互いに対面する平行な平坦面を有することができる。
【0059】
貫通開口部は、プレート状のウェブに設けることができ、これらの貫通開口部は、整列してまたは互いにずらして配置される。
【0060】
ウェブは、補強要素の中央部分からフォーク状に分岐させることができる。特に、ウェブは、長手方向または長手方向軸線に沿って片持ち状に突出して延在させることができる。
【0061】
補強要素の第1の端部とこの第1の端部の反対側にある第2の端部とのそれぞれに1つの接続部を設けることができ、これら接続部同士は、中央部分を介して互いに連結することができる。
【0062】
補強要素は、1つ以上の支柱を有する中央部分を有することができる。
【0063】
補強要素は、例えば、2つの対向する端部領域のそれぞれに1つの接続部を備えた単一の支柱を有することができる。単一の支柱は、プレート状に形成することができ、一定の厚さを有することができる。更に、接続部は、プレート状支柱からフォーク状に分岐させることができる。それにより、補強要素は、実質的に一定の壁厚を有する射出成形部品として安価に製造することができる。
【0064】
ウェブの貫通開口部は、互いに軸方向にずれていてもよい。したがって、第1のウェブの第1の貫通開口部の中心長手方向軸線は、第2のウェブの第2の貫通開口部の中心長手方向軸線からある間隔をもって延びることができる。特に、第1と第2との貫通開口部の長手方向軸線同士は、互いに平行にかつ互いに離間して延びることができる。
【0065】
特に、貫通開口部の第1の格子状または列状の配置を第1のウェブ上に設けることができ、その配置は、第2のウェブの貫通開口部の第2の格子状または列状の配置とは異なる。例えば、第1のウェブは貫通開口部の単一列配置を有することができ、第2のウェブは、貫通開口部の二重列または複数列配置を有することができる。貫通開口部の個々の配置の結果として、第1の材料と第2の材料との間の接続は、最終組立て状態において吸収されるべき運転荷重に適合させることができる。
【0066】
第1のウェブの貫通開口部と第2のウェブの貫通開口部との間のオフセットは、特に、ウェブが貫通開口部が設けられた直方体状またはプレート状の部分を有するいずれの場合も、射出成形法における製造技術の観点から特に簡単かつ安価に実現することができる。
【0067】
更なる態様によれば、本発明は、上述の補強要素を有し、該補強要素が液体容器の内部空間内に配置されている自動車用液体容器に関する。
【0068】
液体容器、特に燃料タンクは、2つのハーフシェルから組み立てることができ、補強要素の第1の接続部は液体容器の第1のハーフシェルに当てがわれ、そこで接続され、補強要素の第2の接続部は液体容器の第2のハーフシェルに当てがわれ、そこで接続される。
【0069】
これらハーフシェルは接続部に溶接することができ、ハーフシェルおよび接続部は、互いに溶接することができるプラスチックを含む。
【0070】
以下の本文では、本発明について、例示の実施形態をそれぞれ概略的に示している図面を使用して、更に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】本発明による補強要素を示す斜視図である。
図2図1の補強要素の接続部を示す縦断面図である。
図3】本発明による補強要素の別の接続部を示す縦断面図である。
図4】本発明による補強要素の更に別の接続部を示す縦断面図である。
図5】本発明による自動車用の液体容器を示す断面図である。
図6】本発明による別の補強要素を示す縦断面図である。
図7図7Aは、図6の補強要素の接続部の一改良例を示す斜視図、図7Bは、図6の補強要素の接続部の更なる改良例を示す斜視図である。
図8】本発明による別の自動車用の液体容器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1は、自動車用の液体容器64(図5)の補強要素2を示している。本例では、液体容器64は燃料タンク64である。補強要素2は、補強要素2を液体容器64に接続する接続部4を有する。
【0073】
接続部4は、第1の材料から作られた第1のウェブ6および第2のウェブ8を有する。本例では、第1の材料はPOMである。補強要素2は、自動組立てまたは接合装置において補強要素2を扱うために設けられたカラー9を有する。
【0074】
第1のウェブ6および第2のウェブ8は第2の材料10によって封入される。第2の材料10はウェブ6、8の貫通開口部12に貫入する。第1のウェブ6は、補強要素4の長手方向軸線Lから、第2のウェブ8よりも小さい間隔D1で位置する。したがって、第2のウェブ8の長手方向軸線Lからの間隔D2は、間隔D1よりも大きい。間隔D1およびD2は、図1、2、および3に示されている。本例では、第2の材料10はHDPEである。
【0075】
溝11が、第2の材料10の端面上に形成されている。接続部4に流入した燃料は、最終組立て状態で、溝11を介してタンク壁と接続部4との間から流出することができる。
【0076】
ウェブ6、8は二重壁の形態で配置される。第1のウェブ6は第1のスリーブ6を形成し、第2のウェブ8は第2のスリーブ8を形成する。第2のスリーブ8は周方向側から第1のスリーブ6を取り囲む。ウェブ6、8は、長手方向軸線Lに対して横断方向の断面で見て、六角形を有する。
【0077】
接続部4の構造を更に分かりやすくするため、図1は、一点鎖線によって示されるように、接続部4の一部領域において第2の材料10を透過的に示している。当然ながら、第2の材料10は、本例では、端部側および周方向側からウェブ6、8を完全に封入している。
【0078】
補強要素2は、長手方向軸線Lに沿って延在する貫通孔14を有する。第1のウェブ6の貫通開口部16は、長手方向軸線に対して横断方向rで見て、第2のウェブ8の貫通開口部18と整列して配置される。
【0079】
ウェブ6、8の貫通開口部12は格子状に配置される。
【0080】
補強要素2は、平面Eに沿って互い接合される2つのハーフシェル20、22から組み立てられる。補強要素2の両端部24、26のそれぞれに1つの接続部4が設けられる。
【0081】
第1および第2の材料の間の引離し力は15kNより大きい。第1の材料の引張り強度は、第2の材料10の降伏応力の最大2.6倍である。
【0082】
図2から分かるように、ウェブ6、8は中央部分28上に一体的に形成され、この中央部分は、ウェブ6、8に加えて周方向側面に、部分的に貫通孔14を取り囲むかまたは画定する支柱30を有し、その貫通孔14は長手方向軸線Lに沿って延在する。支柱30は、長手方向軸線に対して横断方向で過負荷の場合に最初に破損する所定の破断点を備え、その結果、端部側の接続部4同士が互いに分離される。
【0083】
長手方向軸線に対して横断方向で測定される壁厚またはウェブ厚さaは、2mm〜8mm、本例では5mmであり得る。長手方向軸線Lに対して平行に測定されるウェブ高さhは、10mm〜80mm、本例では40mmであり得る。貫通開口部12の直径dは、3〜20mm、本例では5mmであり得る。
【0084】
本例では、第2の材料10は、補強要素2を端部側で終端させるキャップの形態で形成される(図2)。第2の材料10は、その一部に関して、第1の材料のウェブ6、8の周りに係合して横断支柱34が貫通するウェブ32を有する。
【0085】
第2の材料10は、ウェブ6、8のオーバーモールディングによって射出成形で形成される。第2の材料10に関する工程においてもたらされる形状を例示するため、第2の材料10は図2Cで別個に示される。
【0086】
第2の材料10の3つのウェブ32は、横断支柱34を介して互いに接続される。前記横断支柱34は、貫通開口部12内の接続部4の領域に配置され、第2の材料10に対する第1の材料のポジティブロック接続を確実にする。
【0087】
ウェブ6、8には、通気用開口部36が付与され、その通気用開口部は、ウェブ6、8の共通の溝底部38または第2の材料10を導入する前のウェブ6、8の間に形成される中間空間40から始まり、ウェブ6、8を貫通してシェル内面42またはシェル外面44の領域で開口する。
【0088】
本例では、ウェブ6、8は、それぞれ、角セグメントまたは角領域48を介して互いに結合される6つのウェブセグメント46から形成される。いずれの場合も、各ウェブセグメント48には、外側平坦面50と内側平坦面52との間で4つの貫通開口部12が配置される。
【0089】
図示される長手方向断面の接続部4の領域において、あるいは長手方向軸線Lに対して横断方向の断面Qで見て、5層壁構造がもたらされる。
【0090】
接続要素54の更なる改良例によれば、6つの貫通開口部58がウェブセグメント56上に配置される(図3)。貫通開口部58は、長手方向軸線Lに沿った軸線方向bで見て3列に配置される。
【0091】
接続要素60の更なる改良例によれば、3つのウェブ62が設けられる。
【0092】
図5は、自動車用の液体容器64を示している。液体容器64は上側ハーフシェル66と下側ハーフシェル68とを有する。ハーフシェル66、68は、接続面70に沿って互いに溶接されている。ハーフシェル66、68は、上述の補強要素2、54、60によって互いに接続される。補強要素2、54、60の両端部に配置される接続部4は、それぞれ、ハーフシェル66およびハーフシェル68に溶接される。接続部4は、中央部分28を介して互いに連結される。
【0093】
図6は、更なる補強要素72を断面で示している。補強要素72は2つの端部側接続部4を有する。端部側接続部4は、それぞれ、第1のウェブ76と第2のウェブ78とを有する。ウェブ76、78は、第2の材料10によって取り囲まれ、その材料が貫通している。更に、補強要素72は、本例ではプレート状または帯状の支柱74として構成されている中央部分28を有する。長手方向軸線Lに沿って見たときに一定の断面を有するプレート状または帯状の支柱74から始まって、ウェブ76、78は、二股状に分岐している。ウェブ76、78は、中央部分28のプレート状の支柱78と実質的に同じ壁厚を有する。
【0094】
図7Aおよび7Bは、ウェブ76、78の可能な改良例を示している。図7Aによれば、ウェブ76、78は、整列して配置された貫通開口部80を有する。図7Bによるウェブ76、78は、互いに対してオフセット状態を有する貫通開口部80の配置の更なる変形例を示している。ここで、図7Aによるウェブ76は、一列配置の貫通開口部80を有し、図7Bによるウェブ78は、二列配置の貫通開口部80を有する。図7Aによるウェブ76、78の領域における貫通開口部80の配置は対称的であり、それによって、貫通開口部80の規則的に整列された配置がもたらされる。
【0095】
図7Aおよび7Bの斜視図から分かるように、ウェブ76、78は、中央部分28または中央部分28のプレート状の支柱74から始まる二股状に分岐している。ウェブ76、78の幾何学形状および貫通開口部80の配置を更に分かりやすくするため、図7Aおよび7Bは、第2の材料10の図示を省いている。当然ながら、図6、7A、および7Bにしたがって示される補強要素72の場合、それぞれのウェブ76、78は、補強要素72を燃料タンクの内壁に取り付けるために設けられる第2の材料10を備えている。
【0096】
ウェブ76、78は互いに一定の間隔cをおいている。第1のウェブ76および第2のウェブ78はプレート状部分82を有する。各プレート状部分82に貫通開口部80が配置される。これらプレート状部分82は、互いに対面し且つ互いに実質的に平行に配向された平坦面84を有する。
【0097】
図8は、一例として、補強要素72を燃料タンク64に組み込んだ状態を示している。各接続部4は、ハーフシェル66、68に溶接され、それにより、燃料タンク64の構造の補剛をもたらしている。
【符号の説明】
【0098】
2 補強要素
4 接続部
6 第1のウェブ
8 第2のウェブ
9 カラー
10 第2の材料、キャップ
11 溝
12 貫通開口部
14 長手方向軸線Lに沿って延在する貫通孔
16 第1のウェブの貫通開口部
18 第2のウェブの貫通開口部
20 ハーフシェル
22 ハーフシェル
24 補強要素の端部
26 補強要素の端部
28 中央部分
30 支柱
32 ウェブ
34 横断支柱
36 通気用開口部
38 溝底部
40 中間空間
42 シェル内面
44 シェル外面
46 ウェブセグメント
48 角セグメント、角領域
50 外側平坦面
52 内側平坦面
54 補強要素
56 ウェブセグメント
58 貫通開口部
60 補強要素
62 ウェブ
64 液体容器
66 上側ハーフシェル
68 下側半シェル
70 接続面
72 補強要素
74 プレート状支柱
76 第1のウェブ
78 第2のウェブ
80 貫通開口部
82 プレート状部分
84 平坦面
D1 間隔
D2 間隔
h ウェブ高さ
r 方向
a 壁厚、ウェブ厚さ
X 軸線方向
c 間隔
d 直径
E 平面
L 長手方向軸線
図1
図2A)】
図2B)】
図2C)】
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8