【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、車両ホイールのホイールブレーキ装置が提供される。ホイールブレーキ装置は、円周方向に配置された外向きの歯配列を含んだホイールハブと、ホイールハブの外向きの歯配列と噛合結合してホイールハブとの相対的な円周方向の移動を防止するように配置された、内向きの歯配列を含んだブレーキディスクと、を備えている。ホイールハブ及びブレーキディスクの一方は、円周方向に配置された溝部を備えている。ホイールブレーキ装置は、ホイールハブとブレーキディスクとを結合して、ホイールハブとブレーキディスクとの間の相対的な軸方向の移動を防止する、少なくとも1つのリテーナを更に備えている。少なくとも1つのリテーナは、ホイールハブ及びブレーキディスクの一方の円周方向に配置された溝部に少なくとも部分的に配置される。
【0008】
「外向きの歯配列」という用語は、以下の説明全体を通して、歯の上面、即ち、歯の隆起部がホイールハブの幾何学的な中心軸から離れる方向を向いていると解釈すべきである。同様に、「内向きの歯配列」という用語は、歯の上面、即ち、歯の隆起部がホイールハブの幾何学的な中心軸を向いていることを意味していると理解すべきである。歯配列は、例えば、スプライン配列、歯車輪郭(cog profile)、歯結合(toothed connection)などによって形成することができる。
【0009】
また、「円周方向に配置された溝部」という用語は、ブレーキディスク及びホイールハブの一方の溝部が円周方向に延びていることを意味すると理解すべきである。当然ながら、溝部は、軸方向にも延びていてもよく、ブレーキディスク又はブレーキハブの全周の周りに配置される必要がないばかりか、むしろ円周方向に区分的に配置されていてもよい。
【0010】
本発明の利点は、ホイールハブに対するブレーキディスクの簡単な組み付けが提供されることである。歯配列と溝部に配置されたリテーナとの間の結合は、ブレーキディスクがホイールハブに対して軸方向及び円周方向に移動することを効果的に防止する。また、ブレーキディスクとホイールハブとの間の相対的な軸方向への移動を防止するリテーナを設けることによって、ブレーキディスクとホイールハブとの間の接触面が減少する。これは、これらの部品間の熱伝達を低減するので有利である。
【0011】
また、本発明は、ブレーキディスクをホイールハブに結合するのに必要な部品が少ないので、ブレーキディスクをホイールハブに簡単に組み付けることを可能にする。さらに、本発明は、ブレーキディスクとホイールハブとの間の接触面の総数を減らす、より少ない歯数を設けることを可能にする。これによって、熱伝達が減少する。
【0012】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのリテーナは、ホイールブレーキ装置の軸方向に延びる貫通孔を備えることができる。ホイールブレーキ装置は、リテーナの貫通孔を貫通して、少なくとも1つのリテーナをホイールハブ及びブレーキディスクの一方に結合する固定手段を更に備えている。
【0013】
これによって、リテーナは、ホイールハブ及びブレーキディスクの一方にしっかりと結合される。固定手段は、例えば、リテーナを結合するボルト、ねじ又は他の適切な手段とすることができる。
【0014】
例示的な実施形態によれば、円周方向に配置された溝部は、ホイールハブの外向き歯配列に配置されていてもよい。円周方向に配置された溝部は、外向き歯配列を軸方向に離間した第1の歯部及び第2の歯部に分割する。
【0015】
利点は、歯配列の中断(interruption)がリテーナの軸方向への効果的な停止を与えることである。また、歯の隆起部のみを機械加工する必要があるので、円周方向に配置された溝部を歯配列に設けることは比較的容易である。円周方向に配置された溝部は、好ましくは、歯配列の隆起部を通って切削された断続的な溝とすることができる。しかしながら、円周方向に配置された溝部は、連続的な溝であってもよい。
【0016】
例示的な実施形態によれば、ホイールハブの外向きの歯配列は、その円周方向に交互に代わる隆起部と溝部とを備えていてもよい。少なくとも1つのリテーナは、外向きの歯配列の1つの溝部の半径外方(radially above)に配置された固定手段によって、ブレーキディスクに結合されている。
【0017】
以下の説明全体を通して「半径外方」という用語は、ホイールハブの幾何学的な軸、例えば、車軸に関するものであると解釈すべきである。従って、固定手段は、外向きの歯配列の溝部と比較して、ホイールハブの幾何学的な軸からさらに離れたラジアル距離(radial distance)に配置されている。
【0018】
これによって、さらなるスペースが利用可能であるため、固定手段をブレーキディスクに結合することが容易になる。
【0019】
例示的な実施形態によれば、固定手段の半径内方(radially below)に配置された外向きの歯配列の溝部の幅は、その近接する隆起部の反対側の溝部の幅より大きくてもよい。
【0020】
「半径内方」という用語は、ホイールハブの幾何学的な軸に関するものであると解釈すべきである。また、近接する隆起部は、より大きな寸法を持つ溝部に直接連結される隆起部であると理解すべきである。従って、隆起部は、その他方側の溝部の幅と比較して、その一方側により大きな幅を持つ溝部を有している。さらに、溝部の幅は、円周方向により大きくなっていると理解すべきである。
【0021】
これによって、固定手段をブレーキディスクに結合する、さらなるスペースが提供される。また、より広い幅の歯の溝部を設けることは、例えば、高負荷に耐えることができる、より大きな固定手段を可能にする。さらに、ホイールブレーキ装置の簡単な組み立てを提供することもできる。
【0022】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのリテーナの内径(inner radius)は、ホイールハブの円周方向に配置された溝部の半径より小さくてもよく、リテーナは、ホイールハブの円周方向に配置された溝部において半径方向に予張力を与える。
【0023】
少なくとも1つのリテーナの「内径」は、リテーナがホイールブレーキ装置に結合されたとき、ホイールハブの幾何学的な軸を向くリテーナの表面の半径であることを容易に理解すべきである。同様に、円周方向に配置された溝部の半径は、リテーナの内径が接触する溝部の内面である。
【0024】
溝部において半径方向に予張力が与えられた少なくとも1つのリテーナを設ける利点は、リテーナとホイールハブとの間の改良された固定が提供されることである。
【0025】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのリテーナは、ブレーキディスクから離れる方向を向く少なくとも1つの突出部と、ブレーキディスクの方向を向く少なくとも1つの窪み部と、を備えていてもよい。
【0026】
本発明の発明者らは、リテーナの突出部及び窪み部がリテーナの改良された固定を提供することを思いがけなく見出した。従って、リテーナが円周方向に配置された溝部に連結されて、固定手段によって固定されると、リテーナは、溝部の軸方向を向く内面並びにブレーキディスクの表面に対して曲がって連結することとなる。しかしながら、リテーナの他の構造的変更もまた、その所望の曲げ特性を達成できることを容易に理解すべきである。例えば、ノブ、バルブ、ニップルなどがリテーナ構造に設けられてもよい。他の代替例は、リテーナを予め曲げて所望の効果を達成することである。
【0027】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのリテーナは、ホイールブレーキ装置の円周方向で見て、リテーナの貫通孔の両側に突出部及び窪み部を備えていてもよい。
【0028】
これによって、貫通孔の両側でリテーナを曲げることが可能になる。
【0029】
例示的な実施形態によれば、突出部及び窪み部は、リテーナの同じ円周方向の位置に配置されていてもよい。
【0030】
例示的な実施形態によれば、リテーナは、ホイールブレーキ装置の円周方向で見て、その端部に屈曲部を備えていてもよい。
【0031】
「屈曲部」は、その部分がホイールブレーキ装置の軸方向に曲がっていることを意味すると理解すべきである。
【0032】
例示的な実施形態によれば、固定手段は、ブレーキディスクのボルト孔に結合されるボルトであってもよい。
【0033】
例示的な実施形態によれば、円周方向に配置された溝部は、ブレーキディスクに配置されていてもよい。
【0034】
これによって、リテーナは、上述したようなホイールハブに代えて、ブレーキディスクに安全に結合される。
【0035】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのリテーナは、ブレーキディスクの円周方向に配置された溝部に配置されていてもよい。ホイールブレーキ装置は、少なくとも1つのリテーナをホイールハブに結合する固定手段を備えている。
【0036】
従って、ブレーキディスクをホイールハブに軸方向に固定する代替的な解決策が提供される。利点は、ホイールハブに取り付けられる前に、ブレーキディスクにリテーナを予め組み付けることができることである。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、ホイールブレーキ装置のリテーナが提供される。リテーナは、ホイールブレーキ装置のブレーキディスクに結合するボルトを受けるように配置された貫通孔を持つ細長い形状を有している。リテーナは、貫通孔の両側に少なくとも1つの突出部と、少なくとも1つの窪み部と、を備えている。
【0038】
第2の態様の効果及び特徴は、本発明の第1の態様に関連して上述したリテーナと大部分類似している。
【0039】
本発明の更なる特徴及びそれによる利点は、添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討すれば明らかになるであろう。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に説明するもの以外の実施形態を生み出すことができることを理解することができる。