特許第6796714号(P6796714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796714
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】ホイールブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/12 20060101AFI20201130BHJP
   B60B 27/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   F16D65/12 Y
   F16D65/12 X
   B60B27/00 J
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-518397(P2019-518397)
(86)(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公表番号】特表2019-536948(P2019-536948A)
(43)【公表日】2019年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2016073887
(87)【国際公開番号】WO2018065056
(87)【国際公開日】20180412
【審査請求日】2019年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ダーグ,インゲマル
(72)【発明者】
【氏名】アウグストソン,ケント
(72)【発明者】
【氏名】アンデション,トビアス
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0069818(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102012010498(DE,A1)
【文献】 特表2004−509300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
B60B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向に配置された外向きの歯配列(104)を有するホイールハブ(102)と、前記ホイールハブ(102)の前記外向きの歯配列(104)と噛合結合して前記ホイールハブ(102)との間の相対的な円周方向の移動を防止するように配置された、内向きの歯配列(108)を有するブレーキディスク(106)と、を備えた車両のホイールのホイールブレーキ装置(100,200)であって、
前記ホイールハブ(102)及び前記ブレーキディスク(106)の一方は、円周方向に配置された溝部(110;210)を備え、
前記ホイールブレーキ装置は、前記ホイールハブ(102)と前記ブレーキディスク(106)とを結合して前記ホイールハブ(102)と前記ブレーキディスク(106)との間の相対的な軸方向の移動を防止する、少なくとも1つのリテーナ(112,212)を更に備え、
前記少なくとも1つのリテーナ(112,212)は、前記ホイールハブ(102)及び前記ブレーキディスク(106)の一方の前記円周方向に配置された溝部(110;210)に少なくとも部分的に配置され、
前記少なくとも1つのリテーナ(112,212)は、前記ホイールブレーキ装置(100,200)の軸方向に延びる貫通孔(114)を備え、
前記ホイールブレーキ装置(100,200)は、前記少なくとも1つのリテーナ(112,212)の前記貫通孔(114)を通過して、前記少なくとも1つのリテーナ(112,212)を前記ホイールハブ(102)及び前記ブレーキディスク(106)の一方に結合する固定手段(116,220)を更に備えた、
ことを特徴とするホイールブレーキ装置(100,200)。
【請求項2】
前記円周方向に配置された溝部(110)は、前記ホイールハブ(102)の前記外向きの歯配列(104)に配置され、
前記円周方向に配置された溝部(110)は、前記外向きの歯配列(104)を軸方向に離間した第1の歯部(109)及び第2の歯部(111)に分割する、
請求項1に記載のホイールブレーキ装置(100)。
【請求項3】
前記ホイールハブ(102)の前記外向きの歯配列(110)は、交互に代わる隆起部(118)及び溝部(120)を円周方向に備え、
前記少なくとも1つのリテーナ(112)は、前記外向きの歯配列(110)の前記溝部(120)の1つの半径外方に配置された固定手段(116)によって、前記ブレーキディスク(106)に結合された、
請求項1又は2に記載のホイールブレーキ装置(100)。
【請求項4】
前記固定手段(116)の半径内方に配置された前記外向きの歯配列の前記溝部(120)の幅(W1)は、前記固定手段(116)の半径内方に配置された外向きの歯配列の前記溝部(120)の近接する隆起部(118)の反対側の溝部の幅(W2)より大きい、
請求項3に記載のホイールブレーキ装置(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのリテーナ(112)の内径(205)は、前記ホイールハブ(102)の前記円周方向に配置された溝部(110)の半径(207)より小さく、前記少なくとも1つのリテーナ(112)は、前記ホイールハブ(102)の前記円周方向に配置された溝部(110)において半径方向に予張力が与えられている、
請求項1〜4のいずれか1つに記載のホイールブレーキ装置(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのリテーナ(112)は、前記ブレーキディスク(106)から離れる方向を向く少なくとも1つの突出部(122)と、前記ブレーキディスク(106)の方向を向く少なくとも1つの窪み部(124)と、を備えた、
請求項1〜5のいずれか1つに記載のホイールブレーキ装置(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのリテーナ(112)は、前記ホイールブレーキ装置(100)の前記円周方向で見て、前記少なくとも1つのリテーナ(112)の貫通孔(114)の両側に突出部(112)及び窪み部(124)を備えた、
請求項6に記載のホイールブレーキ装置(100)。
【請求項8】
前記突出部(122)及び前記窪み部(124)は、前記少なくとも1つのリテーナ(112)の同じ円周方向の位置に配置された、
請求項6又は7に記載のホイールブレーキ装置(100)。
【請求項9】
前記固定手段(116)は、前記ブレーキディスク(106)のボルト孔に結合されるボルトである、
請求項1に記載のホイールブレーキ装置(100)。
【請求項10】
前記円周方向に配置された溝部(210)は、前記ブレーキディスク(106)に配置された、
請求項1に記載のホイールブレーキ装置(100)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのリテーナ(212)は、前記ブレーキディスク(106)の前記円周方向に配置された溝部に配置され、
前記ホイールブレーキ装置は、前記少なくとも1つのリテーナ(212)を前記ホイールハブ(102)に結合する固定手段(220)を備えた、
請求項10に記載のホイールブレーキ装置(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールブレーキ装置に関する。本発明は、車両、特に、トラックと一般的に呼ばれる小型車両、中型車両及び大型車両に適用可能である。トラックについて本発明を主に説明するが、本発明は、例えば、バス、作業機械、乗用車などの他のタイプの車両にも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
小型車両、中型車両及び大型車両としても知られているトラックの形態をとる車両に関して、ホイールブレーキに対する要求が常に高い。これらの要求は、特に、車両を適切に減速するために適切に機能する必要がある、ホイールブレーキの制動能力に関連している。
その要約によれば、米国特許出願公開第2015/069818号明細書は、アクスルハブとロータを有するディスクブレーキアセンブリと共に使用するハブ−ロータアダプタに関する。ハブ−ロータアダプタは、その内側端部に環状開口を形成する壁部を有するアダプタ本体を含むことができる。アダプタ本体は、ロータに取り付けられるように形成された内側フランジと、アクスルハブに取り付けられるように形成された外側フランジと、を有している。
その要約によれば、独国特許出願公開第102012010498号明細書は、ハブの歯に近接して配置された係止溝を有する装置に関する。係止溝が円周方向に延びている。2つの部分リングが係止溝に配置されている。他の2つの部分リングが係止溝に配置されている。部分リングの1つは、バイメタルとして設計されるか、形状記憶合金として製造される。部分リングの1つは、金属材料から作られている。前者の部分リングが後者の部分リングと噛み合うように、部分リング間で恒久的な結合が実現される。
その要約によれば、国際公開第02/25135号パンフレットは、ハブ及びブレーキディスクを備え、それが回転しないように配置された車両のディスクブレーキのブレーキディスク/ハブアセンブリに関する。ブレーキディスクは、いくつかのばね要素によって作用される弾性的な予張力に抗して軸方向に移動することができるように、ハブの軸方向に配置されている。この目的のため、各ばね要素は、ハブに固定される保持部を有している。各ばね要素はまた、ハブとブレーキディスクとの間に本質的に配置された、少なくとも1つの割り当てられた中間要素に対して固定する、少なくとも1つのばね部を備えている。発明の設計は、ばね要素がブレーキディスクと直接接触しないことで、ばね要素が熱的に過負荷となるのを効果的に防止するという事実によって有利である。
その要約によれば、独国特許出願公開第102007008725号明細書は、ハブを持った中空円筒部を有する、ブレーキディスク又はハブ結合に関し、中間要素が支持バー上をスライドするワイヤーブラケットとして形成されている。支持バーは、ハブの中空円筒部の軸方向に設けられている。支持バーに設けられた肩部は、ストッパを有してスライド方向に軸方向に固定されており、支持バーは、カバー領域においてブレーキディスクと共にカムシャフトを形成している。
【0003】
一般的に、ホイールブレーキは、ホイールハブに結合されたブレーキディスクを備え、ホイールハブが車両のそれぞれのホイールに接続されている。ホイールブレーキはまた、ブレーキディスクに対する制動動作を与える、即ち、ブレーキディスクを締め付けてホイールの回転速度を低下させるように配置されたブレーキパッドを備えている。従って、ブレーキディスクは、ホイールがその運動を停止するまで、ブレーキパッドに対して滑っている。これは、注意が必要である、ブレーキディスクに摩擦熱を発生させる。
【0004】
また、市場からの様々な要求を満たすためにトラックが絶えず開発されているので、ホイールブレーキ及びそれに関連する部品も絶えず開発され、例えば、より費用効果が高く、より耐久性が高く、発生した摩擦熱を処理する能力が高くなっている。
【0005】
従って、その製造コストを低減し、並びにその機能を改善する、ホイールレーキ装置を改良することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術と比較して、改善された機能を可能にするだけでなく、より費用効果が高いホイールブレーキ装置を提供することである。この目的は、請求項1に記載のホイールブレーキ装置によって少なくとも部分的に達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、車両ホイールのホイールブレーキ装置が提供される。ホイールブレーキ装置は、円周方向に配置された外向きの歯配列を含んだホイールハブと、ホイールハブの外向きの歯配列と噛合結合してホイールハブとの相対的な円周方向の移動を防止するように配置された、内向きの歯配列を含んだブレーキディスクと、を備えている。ホイールハブ及びブレーキディスクの一方は、円周方向に配置された溝部を備えている。ホイールブレーキ装置は、ホイールハブとブレーキディスクとを結合して、ホイールハブとブレーキディスクとの間の相対的な軸方向の移動を防止する、少なくとも1つのリテーナを更に備えている。少なくとも1つのリテーナは、ホイールハブ及びブレーキディスクの一方の円周方向に配置された溝部に少なくとも部分的に配置される。
【0008】
「外向きの歯配列」という用語は、以下の説明全体を通して、歯の上面、即ち、歯の隆起部がホイールハブの幾何学的な中心軸から離れる方向を向いていると解釈すべきである。同様に、「内向きの歯配列」という用語は、歯の上面、即ち、歯の隆起部がホイールハブの幾何学的な中心軸を向いていることを意味していると理解すべきである。歯配列は、例えば、スプライン配列、歯車輪郭(cog profile)、歯結合(toothed connection)などによって形成することができる。
【0009】
また、「円周方向に配置された溝部」という用語は、ブレーキディスク及びホイールハブの一方の溝部が円周方向に延びていることを意味すると理解すべきである。当然ながら、溝部は、軸方向にも延びていてもよく、ブレーキディスク又はブレーキハブの全周の周りに配置される必要がないばかりか、むしろ円周方向に区分的に配置されていてもよい。
【0010】
本発明の利点は、ホイールハブに対するブレーキディスクの簡単な組み付けが提供されることである。歯配列と溝部に配置されたリテーナとの間の結合は、ブレーキディスクがホイールハブに対して軸方向及び円周方向に移動することを効果的に防止する。また、ブレーキディスクとホイールハブとの間の相対的な軸方向への移動を防止するリテーナを設けることによって、ブレーキディスクとホイールハブとの間の接触面が減少する。これは、これらの部品間の熱伝達を低減するので有利である。
【0011】
また、本発明は、ブレーキディスクをホイールハブに結合するのに必要な部品が少ないので、ブレーキディスクをホイールハブに簡単に組み付けることを可能にする。さらに、本発明は、ブレーキディスクとホイールハブとの間の接触面の総数を減らす、より少ない歯数を設けることを可能にする。これによって、熱伝達が減少する。
【0012】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのリテーナは、ホイールブレーキ装置の軸方向に延びる貫通孔を備えることができる。ホイールブレーキ装置は、リテーナの貫通孔を貫通して、少なくとも1つのリテーナをホイールハブ及びブレーキディスクの一方に結合する固定手段を更に備えている。
【0013】
これによって、リテーナは、ホイールハブ及びブレーキディスクの一方にしっかりと結合される。固定手段は、例えば、リテーナを結合するボルト、ねじ又は他の適切な手段とすることができる。
【0014】
例示的な実施形態によれば、円周方向に配置された溝部は、ホイールハブの外向き歯配列に配置されていてもよい。円周方向に配置された溝部は、外向き歯配列を軸方向に離間した第1の歯部及び第2の歯部に分割する。
【0015】
利点は、歯配列の中断(interruption)がリテーナの軸方向への効果的な停止を与えることである。また、歯の隆起部のみを機械加工する必要があるので、円周方向に配置された溝部を歯配列に設けることは比較的容易である。円周方向に配置された溝部は、好ましくは、歯配列の隆起部を通って切削された断続的な溝とすることができる。しかしながら、円周方向に配置された溝部は、連続的な溝であってもよい。
【0016】
例示的な実施形態によれば、ホイールハブの外向きの歯配列は、その円周方向に交互に代わる隆起部と溝部とを備えていてもよい。少なくとも1つのリテーナは、外向きの歯配列の1つの溝部の半径外方(radially above)に配置された固定手段によって、ブレーキディスクに結合されている。
【0017】
以下の説明全体を通して「半径外方」という用語は、ホイールハブの幾何学的な軸、例えば、車軸に関するものであると解釈すべきである。従って、固定手段は、外向きの歯配列の溝部と比較して、ホイールハブの幾何学的な軸からさらに離れたラジアル距離(radial distance)に配置されている。
【0018】
これによって、さらなるスペースが利用可能であるため、固定手段をブレーキディスクに結合することが容易になる。
【0019】
例示的な実施形態によれば、固定手段の半径内方(radially below)に配置された外向きの歯配列の溝部の幅は、その近接する隆起部の反対側の溝部の幅より大きくてもよい。
【0020】
「半径内方」という用語は、ホイールハブの幾何学的な軸に関するものであると解釈すべきである。また、近接する隆起部は、より大きな寸法を持つ溝部に直接連結される隆起部であると理解すべきである。従って、隆起部は、その他方側の溝部の幅と比較して、その一方側により大きな幅を持つ溝部を有している。さらに、溝部の幅は、円周方向により大きくなっていると理解すべきである。
【0021】
これによって、固定手段をブレーキディスクに結合する、さらなるスペースが提供される。また、より広い幅の歯の溝部を設けることは、例えば、高負荷に耐えることができる、より大きな固定手段を可能にする。さらに、ホイールブレーキ装置の簡単な組み立てを提供することもできる。
【0022】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのリテーナの内径(inner radius)は、ホイールハブの円周方向に配置された溝部の半径より小さくてもよく、リテーナは、ホイールハブの円周方向に配置された溝部において半径方向に予張力を与える。
【0023】
少なくとも1つのリテーナの「内径」は、リテーナがホイールブレーキ装置に結合されたとき、ホイールハブの幾何学的な軸を向くリテーナの表面の半径であることを容易に理解すべきである。同様に、円周方向に配置された溝部の半径は、リテーナの内径が接触する溝部の内面である。
【0024】
溝部において半径方向に予張力が与えられた少なくとも1つのリテーナを設ける利点は、リテーナとホイールハブとの間の改良された固定が提供されることである。
【0025】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのリテーナは、ブレーキディスクから離れる方向を向く少なくとも1つの突出部と、ブレーキディスクの方向を向く少なくとも1つの窪み部と、を備えていてもよい。
【0026】
本発明の発明者らは、リテーナの突出部及び窪み部がリテーナの改良された固定を提供することを思いがけなく見出した。従って、リテーナが円周方向に配置された溝部に連結されて、固定手段によって固定されると、リテーナは、溝部の軸方向を向く内面並びにブレーキディスクの表面に対して曲がって連結することとなる。しかしながら、リテーナの他の構造的変更もまた、その所望の曲げ特性を達成できることを容易に理解すべきである。例えば、ノブ、バルブ、ニップルなどがリテーナ構造に設けられてもよい。他の代替例は、リテーナを予め曲げて所望の効果を達成することである。
【0027】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのリテーナは、ホイールブレーキ装置の円周方向で見て、リテーナの貫通孔の両側に突出部及び窪み部を備えていてもよい。
【0028】
これによって、貫通孔の両側でリテーナを曲げることが可能になる。
【0029】
例示的な実施形態によれば、突出部及び窪み部は、リテーナの同じ円周方向の位置に配置されていてもよい。
【0030】
例示的な実施形態によれば、リテーナは、ホイールブレーキ装置の円周方向で見て、その端部に屈曲部を備えていてもよい。
【0031】
「屈曲部」は、その部分がホイールブレーキ装置の軸方向に曲がっていることを意味すると理解すべきである。
【0032】
例示的な実施形態によれば、固定手段は、ブレーキディスクのボルト孔に結合されるボルトであってもよい。
【0033】
例示的な実施形態によれば、円周方向に配置された溝部は、ブレーキディスクに配置されていてもよい。
【0034】
これによって、リテーナは、上述したようなホイールハブに代えて、ブレーキディスクに安全に結合される。
【0035】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのリテーナは、ブレーキディスクの円周方向に配置された溝部に配置されていてもよい。ホイールブレーキ装置は、少なくとも1つのリテーナをホイールハブに結合する固定手段を備えている。
【0036】
従って、ブレーキディスクをホイールハブに軸方向に固定する代替的な解決策が提供される。利点は、ホイールハブに取り付けられる前に、ブレーキディスクにリテーナを予め組み付けることができることである。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、ホイールブレーキ装置のリテーナが提供される。リテーナは、ホイールブレーキ装置のブレーキディスクに結合するボルトを受けるように配置された貫通孔を持つ細長い形状を有している。リテーナは、貫通孔の両側に少なくとも1つの突出部と、少なくとも1つの窪み部と、を備えている。
【0038】
第2の態様の効果及び特徴は、本発明の第1の態様に関連して上述したリテーナと大部分類似している。
【0039】
本発明の更なる特徴及びそれによる利点は、添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討すれば明らかになるであろう。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に説明するもの以外の実施形態を生み出すことができることを理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の上記並びに追加の目的、特徴及び利点は、本発明の例示的な実施形態の以下の例示的かつ非限定的な説明を通してより理解されるであろう。
【0041】
図1】本発明の例示的な実施形態に係るホイールブレーキ装置を備えた、トラックの形態をとる大型車両の側面図である。
図2】本発明の例示的な実施形態に係るホイールブレーキ装置の分解斜視図である。
図3】少なくとも部分的に組み立てられた、図2のホイールブレーキ装置を示している。
図4a図2及び3のホイールブレーキ装置で使用されるリテーナの例示的な実施形態を示している。
図4b図2及び3のホイールブレーキ装置で使用されるリテーナの例示的な実施形態を示している。
図5】歯の形状の例示的な実施形態を示す、図2及び3のホイールブレーキ装置の断面図である。
図6】本発明の他の例示的な実施形態に係るホイールブレーキ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の例示的な実施形態を示す添付の図面を参照し、本発明を以下により詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は徹底性及び完全性のために提供されている。説明の全体を通して、同じ参照符号は同じ要素を指している。
【0043】
図1を特に参照すると、本発明の例示的な実施形態に係るホイールブレーキ装置100を備えた車両1が規定されている。図1に示す車両1は、ここではトラックの形態をとる大型車両であって、以下でさらに説明する、本発明のホイールブレーキ装置100に特に適している。
【0044】
ここで、本発明の例示的な実施形態に係るホイールブレーキ装置100の分解斜視図である図2を参照する。ホイールブレーキ装置100は、ホイールボルト101を介して車両1のホイール(図示せず)に結合されたホイールハブ102を備えている。ホイールブレーキ装置100はまた、ホイールハブ102に結合されたブレーキディスク106を備えている。ブレーキディスク106は、ホイールブレーキ装置100の「停止要素(stopping element)」として配置され、ブレーキパッド(図示せず)がブレーキディスク106の各面に係合することによって、車両1の車輪速度を減速するように構成されている。また、ホイールブレーキ装置100は、複数のリテーナ112を備えている。リテーナ112は、ホイールハブ102とブレーキディスク106との間の結合部として配置され、ブレーキディスク106がホイールハブ102に対して少なくとも1つの軸方向に移動するのを防止するように構成されている。図2に示す実施形態では、8つのリテーナ112が使用され、それぞれの固定手段116によって、各リテーナ112がブレーキディスク106に結合されている。固定手段116は、リテーナ112の貫通孔114を貫通して、ブレーキディスク106のボルト孔113に結合されることが好ましい。ボルト孔113は、ねじ付きボルト孔113であることが好ましい。リテーナ112の詳細については、図4a及び4bの説明に関連して後述する。
【0045】
図2に更に示すように、ホイールハブ102は、外向きの歯配列104を備えている。ホイールハブ102の外向きの歯配列104は、ホイールハブ102の円周方向で見て、交互に代わる隆起部118及び溝部120を備えている。交互に代わる隆起部118及び溝部120は、ホイールハブ102の軸方向に延びている。ホイールハブ102の外向きの歯配列104は、ブレーキディスク106に配置された内向きの歯配列108と噛合結合するように配置されている。これによって、ホイールブレーキ装置100の円周方向におけるホイールハブ102とブレーキディスク106との間の相対移動が防止されている。
【0046】
また、ホイールハブ102は、円周方向に配置された溝部110を備えている。円周方向に配置された溝部110は、ホイールハブ102の外向きの歯配列104に配置され、外向きの歯配列104を軸方向に離間した第1の歯部109と第2の歯部111とに分割する。従って、円周方向に配置された溝部110は、ホイールハブ102の軸端部107から0ではない距離に配置されている。円周方向に配置された溝部110は、少なくとも1つのリテーナ112を受けるように配置され、リテーナ112の内面115が円周方向に配置された溝部110の内面117と結合する。図2は不連続な円周方向に配置された溝部110を示しているが、円周方向に配置された溝部110は、ホイールハブ102の円周方向の周りに配置された連続的な溝部であってもよい。
【0047】
上述したように、ブレーキディスク106は、ホイールハブ102の外向きの歯配列104と噛合結合するように配置された、内向きの歯配列108を備えている。従って、外向きの歯配列104の各隆起部118は、内向きの歯配列108の各溝部を向いている。
【0048】
ここで、少なくとも部分的に組み立てられた、図2のホイールブレーキ装置100を示す図3を参照する。従って、ブレーキディスク106は、ホイールハブ102と結合し、ブレーキディスク106の内向きの歯配列108(図2参照)は、ホイールハブ102の外向きの歯配列104(図2参照)と噛合結合し、複数のリテーナ112は、ホイールハブ102の円周方向に配置された溝部110に配置されて、各ボルト116によってブレーキディスク106に結合されている。
【0049】
また、ホイールブレーキ装置100の幾何学的軸線203に対するリテーナ112の内面115の半径205は、円周方向に配置された溝部110の内面117の半径207より小さい。これによって、複数のリテーナ112は、円周方向に配置された溝部110において半径方向に予張力がかけられ(pre-tensioned)、これによってこれらの部品間の結合が改善される。
【0050】
ここで、本発明の例示的な実施形態に係る、上述のリテーナ112を示す図4a及び4bを参照する。図示するように、リテーナ112は、ホイールブレーキ装置100の円周方向に延びている。これによって、上述したように、リテーナ112は、半径205を持つわずかに曲がった形状で提供される(図3参照)。また、リテーナ112は、リテーナ112をブレーキディスク106に結合するときに、ボルト116が貫通する貫通孔114を備えている。従って、貫通孔114は、ホイールブレーキ装置100の軸方向に配置されている。
【0051】
さらに、リテーナ112は、リテーナ112の円周方向で見て貫通孔114の両側に、突出部122及び窪み部124を備えている。突出部112及び窪み部124はまた、リテーナ112の軸方向で見て、リテーナ112の両側に配置されている。従って、突出部112及び窪み部124は、ホイールブレーキ装置100に取り付けられたとき、ホイールブレーキ装置100の半径方向に延びている。図4a及び4bに示すように突出部122及び窪み部124を設けることで、図4bに示すように、ボルト116がリテーナ112をブレーキディスク106に結合すると、リテーナ112が、窪み部124の半径方向の延設部の周りでブレーキディスク106から離れる方向401に曲がる。これによって、リテーナ112の外端部128は、ブレーキディスク106を向く円周方向に配置された溝部110の表面119(図2参照)に対して軸方向の圧縮力を与える。これによって、リテーナ112とホイールハブ102との間にしっかりとした密着(tight fit)が与えられる。
【0052】
リテーナ112が円周方向に配置された溝部110に配置され、ボルト116がブレーキディスク106に取り付けられ、即ち、ボルト締めされると、リテーナ112がブレーキディスク106を向く表面119を押す。従って、これによって、ホイールハブ102とブレーキディスク106との間に軸方向のしっかりとした密着が与えられる。
【0053】
また、上述したリテーナ112は、比較的製造が容易であり、これによって費用効果の高いホイールブレーキ装置100を提供することができるので有利である。1つの理由は、リテーナ112が、リテーナ材料の比較的大きなシート/切片から所望の長さに切断できるという事実による。
【0054】
上述したホイールブレーキ装置100の断面図である図5を特に参照する。より詳細には、図5は、ホイールハブ102の外向きの歯配列104を示している。溝部120の円周方向の幅は、外向きの歯配列104のすべての溝部120について同じ大きさではない。詳細には、リテーナ112をブレーキディスク106に結合するボルト116の半径内方に配置された溝部120は、外向きの歯配列104の残りの溝部120の幅W2と比較して、より大きい幅W1を有している。利点は、ボルト116をリテーナ112及びブレーキディスク106に結合することが容易であることである。リテーナ112をブレーキディスク106に結合する他の利点は、ホイールハブ102の材料厚さを薄くすることができることである。これによって、よりコンパクトなホイールブレーキ装置100が得られる。
【0055】
ここで、本発明の他の例示的な実施形態に係るホイールブレーキ装置200を示す図6を参照する。以下においては、図2〜5に関連して上述したホイールブレーキ装置100との相違点についてのみ説明する。
【0056】
図6から分かるように、リテーナ212は、ブレーキディスク106に配置された円周方向に配置された溝部210を介して、ブレーキディスク106に結合されている。ブレーキディスク106において周方向に配置された溝部220は、ブレーキディスク106の内向き歯配列108の軸端部に配置されることが好ましい。また、リテーナ212は、固定手段220、即ち、1つ以上のボルトによってホイールハブ102に結合されている。従って、1つ以上のボルト220は、リテーナ212の貫通孔を貫通して、ホイールブレーキ装置200のホイールハブ102に結合されるように配置されている。
【0057】
本発明は、上述及び図示の実施形態に限定されないことを理解されたい。むしろ、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内で、多くの変更及び修正がなされ得ることを認識するであろう。例えば、リテーナは、ブレーキディスク並びにホイールハブの両方に結合されてもよい。このような場合、一方のボルトが、リテーナの一方の貫通孔を貫通してブレーキディスクに結合され、他方のボルトが、リテーナの他方の貫通孔を貫通してホイールハブに結合される。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6