【文献】
山本 輝明、外3名,リチウムイオン二次電池用Ti-Si系合金負極材料の微細構造と電極特性,電池討論会講演要旨集,2005年,pp.480-481
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CuKα1線を用いた粉末X線回折装置(XRD)により測定されるX線回折パターンにおいて、MxSiy(0.1≦x/y≦7.0)で表されるシリサイドのメインピークのピーク強度に対するSiの(111)面のピークのピーク強度の比が1未満であることを特徴とする請求項3に記載のSi系負極活物質。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、実施形態の一例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態の一例に限定されるものではない。
【0017】
<本Si系負極活物質>
本実施形態の一例に係る非水電解液二次電池用負極活物質(以下「本Si系負極活物質」と称する)は、ケイ素(Si)と、Si及び半金属・金属元素Mを含む化合物Aと、を含有するものである。
【0018】
(Si)
本Si系負極活物質において、ケイ素(Si)は、例えば純ケイ素のほかに、SiOやSiO
2等のケイ素酸化物や、Si
3N
4やSiC等のケイ素化合物などのケイ素含有物質を主成分とするものを挙げることができる。この中でも、純ケイ素を主成分とするものが好ましい。
ここで、「純ケイ素を主成分とする」とは、ケイ素(Si)の45質量%以上、中でも50質量%以上、その中でも55質量%以上を純ケイ素が占めるものをいう。
【0019】
(化合物A)
本Si系負極活物質は、上記ケイ素(Si)のほかに、Si及び半金属・金属元素Mを含む化合物Aを含有することを特徴とする。
この際、Siと化合物Aを形成する半金属・金属元素M、すなわちSiと化合物Aを形成する半金属又は金属元素としては、B、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素であるのが好ましい。
【0020】
化合物AすなわちSi及び半金属・金属元素Mを含む化合物としては、M
xSi
y(0.1≦x/y≦7.0)で表されるシリサイドであるのが好ましい。
M
xSi
yで表されるシリサイドとしては、例えばTiSi
2、CoSi
2、NiSi
2、Mn
11Si
19などを挙げることができる。
化合物Aが、M
xSi
yで表されるシリサイドであれば、SiとM
xSi
yを含有する負極活物質において、当該Siの結晶性を低下させることで、サイクル特性をより一層高めることができ、しかも、放電プロファイルにおけるプラトー領域を低減若しくは無くすことができ、さらにはハイレートでもプロファイルを維持した状態で放電することができる。
【0021】
M
xSi
yにおける「x/y」は、0.1以上7.0以下であるのが好ましく、中でも0.1より大きく或いは7.0未満、中でも0.2より大きく或いは4.0未満、その中でも0.3より大きく或いは3.0未満、さらにその中でも0.4より大きく或いは2.0未満であるのがさらに好ましい。
【0022】
(各成分の含有割合)
本Si系負極活物質中のSiの含有量は50wt%より多いことが好ましい。
本Si系負極活物質において、Siはリチウムイオンの挿入脱離に寄与する物質であるから、Siの含有量が50wt%より多いことで、容量を維持することができる。但し、Siの含有量が多過ぎると、負極活物質としての膨張収縮を抑えることができなくなり、サイクル特性を向上させることが難しくなる。
かかる観点から、本Si系負極活物質中のSiの含有量は50wt%より多いことが好ましく、中でも55wt%より多い或いは85wt%未満、その中でも60wt%より多い或いは80wt%未満、その中でも63wt%より多い或いは78wt%未満であるのが好ましい。
【0023】
本Si系負極活物質中の酸素原子(O)の含有量は30wt%未満であることが好ましい。
本Si系負極活物質において、酸素原子(O)の含有量が30wt%以上であれば、充放電に寄与しない酸素原子(O)の比率が高くなり、容量や充放電効率が低くなり、好ましくない。また、酸素原子(O)の含有量が少な過ぎると、大気中の酸素と急激な反応を起こし発熱・発火の危険があり好ましくない。
かかる観点から、本Si系負極活物質中の酸素原子(O)の含有量は30wt%未満であるのが好ましく、中でも0wt%より多い或いは20wt%未満、その中でも0.1wt%より多い或いは15wt%未満、その中でも0.2wt%より多い或いは10wt%未満、さらにその中でも0.6wt%より多い或いは5wt%未満であるのが好ましい。
【0024】
本Si系負極活物質中の、化合物Aを形成する半金属・金属元素Mの含有量は10wt%より多く且つ50wt%未満であるのが好ましい。
本Si系負極活物質中の化合物Aを形成する半金属・金属元素Mの含有量が10wt%より多ければ、負極活物質としての膨張収縮を抑えることができ、サイクル特性を向上させることが可能となる。但し、化合物Aを形成する半金属・金属元素Mの含有量が多くなり過ぎると、容量を維持することが困難となる。
かかる観点から、本Si系負極活物質中の化合物Aを形成する半金属・金属元素Mの含有量は10wt%より多く且つ50wt%未満であるのが好ましく、中でも11wt%より多い或いは40wt%未満、その中でも13wt%より多い或いは35wt%未満、その中でも15wt%より多い或いは30wt%未満であるのが好ましい。
【0025】
(その他の成分)
本Si系負極活物質は、ケイ素(Si)及び化合物A以外の成分を含有していてもよい。
ケイ素(Si)及び化合物A以外の成分としては、例えば上記半金属・金属元素Mを、化合物Aの構成元素としてではなく、単独で金属、酸化物若しくは炭化物、窒化物などの化合物として含有する場合を挙げることができる。
また、ケイ素(Si)及び化合物A以外の成分として、H、Li、B、C、O、N、F、Na、Mg、Al、K、Cu、Ca、Ga、Ge、Ag、In、Sn及びAuからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属元素の金属、酸化物、炭化物、窒化物などの化合物を挙げることができる。
この際、本Si系負極活物質において、ケイ素(Si)及び化合物A以外の成分の含有量は、15at%未満であるのが好ましく、中でも0at%より多い或いは12at%未満、その中でも1at%より多い或いは10at%未満、さらにその中でも2at%より多い或いは7at%未満であるのが好ましい。
【0026】
本Si系負極活物質は、原料由来の不回避不純物を含有していてもよい。
この際、本Si系負極活物質において、不回避不純物の含有量は、2wt%未満であるのが好ましく、中でも1wt%未満、その中でも0.5wt未満であるのが好ましい。
【0027】
(X線回折パターンにおける特徴)
本Si系負極活物質においては、CuKα1線を用いた粉末X線回折装置(XRD)により測定されるX線回折パターンにおいて、Siの(111)面のピークの半値全幅が0.25°以上であるのが好ましい。
Siの(111)面のピークの半値全幅は、Siの結晶性の程度を示すことができるから、それが0.25°以上であれば結晶性が低いことを示している。その影響として、サイクル特性が向上すると共に、放電プロファイルにおけるプラトー領域を低減若しくは無くすことができ、ハイレートでもプロファイルを維持した状態で放電することができる。但し、Siの(111)面のピークの半値全幅が大き過ぎると、充放電容量や充放電効率が低下する可能性がある。
かかる観点から、X線回折パターンにおいて、Siの(111)面のピークの半値全幅は0.25°以上であるのが好ましく、中でも0.65°より大きい或いは2.0°未満、その中でも0.70°より大きい或いは1.5°未満、その中でも0.75°より大きい或いは1.0°未満であるのがさらに好ましい。
本Si系負極活物質において、Siの(111)面のピークの半値全幅を上記範囲に調整するには、Si以外の元素を添加したり、溶融液を急冷したり、改質処理を行ったりなどすればよい。但し、かかる方法に限定するものではない。
【0028】
さらに、本Si系負極活物質においては、上記X線回折パターンにおいて、Siの(111)面のピークのピーク強度は20000cps未満であるのが好ましい。
Siの(111)面のピークのピーク強度が20000cps未満であれば、放電プロファイルにおけるプラトー領域を低減若しくは無くすことができる。但し、Siの(111)面のピークのピーク強度が小さ過ぎると、充放電効率が低下する可能性がある。
かかる観点から、X線回折パターンにおいて、Siの(111)面のピークのピーク強度は20000cps未満であるのが好ましく、中でも100cpsより大きい或いは4000cps未満、その中でも200cpsより大きい或いは3000cps未満、その中でも400cpsより大きい或いは2000cps未満であるのがさらに好ましい。
本Si系負極活物質において、Siの(111)面のピークのピーク強度を上記範囲に調整するには、Si以外の元素を添加したり、溶融液を急冷したり、改質処理を行ったりなどすればよい。但し、かかる方法に限定するものではない。
Siの結晶性を特定するには前述の半値全幅だけではなく、ピーク強度も重要な因子であり、これらの2つ因子がともに上記範囲内にあることが好ましい。
【0029】
CuKα1線を用いた粉末X線回折装置(XRD)により測定されるX線回折パターンにおいて、M
xSi
y(0.1≦x/y≦7.0)で表されるシリサイドのメインピークのピーク強度に対するSiの(111)面のピークのピーク強度の比が1未満であるのが好ましい。
ここで、「シリサイドのメインピーク」とは、上記シリサイドに由来するピークの中で、ピーク強度が最大であるピークの意味である。
M
xSi
yで表されるシリサイドのメインピークのピーク強度に対するSiの(111)面のピークのピーク強度の比が1未満であれば、放電プロファイルにおけるプラトー領域をより一層確実に低減若しくは無くすことができるから、好ましい。
かかる観点から、M
xSi
yで表されるシリサイドのメインピークのピーク強度に対するSiの(111)面のピークのピーク強度の比が1未満であるのが好ましく、中でも0.70未満、その中でも0.40未満であるのがさらに好ましい。
M
xSi
yで表されるシリサイドのメインピークのピーク強度に対するSiの(111)面のピークのピーク強度の比を上記範囲に調整するには、M元素量を調整したり、Si以外の元素を添加したり、溶融液を急冷したり、改質処理を行ったりするなどすればよい。但し、かかる方法に限定するものではない。
【0030】
(粒子形状)
本Si系負極活物質の粒子形状は、特に限定されるものではない。例えば球状、多面体状、紡錘状、板状、鱗片状若しくは不定形又はそれらの組み合わせを用いることができる。例えばガスアトマイズによれば球状となり、ジェットミルなどにより粉砕すると、粒界に沿って粒子が割れるために不定形状になることが確認されている。
【0031】
(Siの結晶子サイズ)
本Si系負極活物質において、Siの結晶子サイズ、中でもSiの(111)面の結晶子サイズは300Å未満であるのが好ましい。
Siの結晶子サイズが低下することとで、膨張収縮の影響をより一層小さくすることができ、サイクル特性を向上させることができる。但し、Siの結晶子サイズは1Åよりも低下させることは困難であると考えることができる。
かかる観点から、Siの結晶子サイズ、中でもSiの(111)面の結晶子サイズは300Å未満であるのが好ましく、中でも1Åより大きい或いは250Å未満、その中でも5Åより大きい或いは200Å未満、その中でも10Åより大きい或いは150Å未満、その中でも20Åより大きい或いは100Å未満であるのがさらに好ましい。
本Si系負極活物質においてSiの結晶子サイズを上記範囲に調整するには、Si以外の元素を添加したり、溶融液を急冷したり後述するように改質処理を行うのが好ましい。ただし、かかる方法に限定するものではない。
【0032】
(真密度)
本Si系負極活物質は、真密度が2.5g/cm
3以上であるのが好ましい。
本Si系負極活物質の真密度が2.5g/cm
3以上であれば、電極密度を向上させることができ、エネルギー密度を向上させることができる。但し、本Si系負極活物質の真密度が大き過ぎると、Siの比率が減少し、容量が少なくなるとなる可能性がある。
かかる観点から、本Si系負極活物質の真密度は2.5g/cm
3以上であるのが好ましく、中でも2.6g/cm
3より大きい或いは3.9g/cm
3未満、その中でも2.7g/cm
3より大きい或いは3.8g/cm
3未満、さらにその中でも2.9g/cm
3より大きい或いは3.7g/cm
3未満であるのがさらに好ましい。
本Si系負極活物質の真密度を上記範囲に調整するには、M元素量を調整すればよい。但し、かかる方法に限定するものではない。
【0033】
(D50)
レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、凝集した粉粒を一個の粒子(凝集粒子)として捉えて粒径を算出する測定方法である。その測定方法によるD50とは、50%体積累積粒径、すなわち体積基準粒度分布のチャートにおいて体積換算した粒径測定値の累積百分率表記の細かい方から累積50%の径を意味する。
【0034】
本Si系負極活物質のD50は、4μm未満であるのが好ましい。D50が4μm未満であれば、膨張・収縮の影響を小さくできるから好ましい。但し、本Si系負極活物質のD50が小さ過ぎると比表面積が大きくなり、電解液との副反応が大きくなる可能性がある。
かかる観点から、本Si系負極活物質のD50は4μm未満であるのが好ましく、中でも0.01μmより大きい或いは3.5μm未満、その中でも0.05μmより大きい或いは3.2μm未満、さらにその中でも0.1μmより大きい或いは3μm未満であるのが好ましい。
本Si系負極活物質のD50を上記範囲に調整するには、解砕条件や粉砕条件を変えることによりD50の調整をするのが好ましい。但し、これらの調整方法に限定されるものではない。
【0035】
(比表面積)
本Si系負極活物質の比表面積(SSA)は3m
2/g以上であるのが好ましい。本Si系負極活物質の比表面積(SSA)が3m
2/g以上であれば、表面の改質が十分になされており、電極抵抗を低下させることができるため、好ましい。他方、本Si系負極活物質のSSAが大き過ぎると、電解液との副反応が大きくなる可能性がある。
かかる観点から、本Si系負極活物質の比表面積(SSA)は3m
2/g以上であるのが好ましく、中でも140m
2/g未満であるのがさらに好ましく、その中でも3.1m
2/gより大きい或いは60m
2/g未満、その中でも3.2m
2/gより大きい或いは30m
2/g未満、さらにその中でも3.3m
2/gより大きい或いは10m
2/g未満であるのが特に好ましい。
本Si系負極活物質のSSAを上記範囲に調整するには、粉砕条件や改質条件を調整するのが好ましい。但し、これらの調整方法に限定されるものではない。
【0036】
<本Si系負極活物質の製造方法>
本Si系負極活物質は、ケイ素(Si)又はケイ素(Si)含有物質と、半金属・金属元素M又は半金属・金属元素M含有物質と、必要に応じてその他の原料物質とを混合して加熱溶融して微粒化し、必要に応じて解砕乃至粉砕を行い、必要に応じて分級を行った後、強力な衝撃力を利用した改質装置を用いて改質処理して、Siの結晶性を低下させることで得ることができる。但し、このような方法に限定されるものではない。
【0037】
上記微粒化方法としては、公知の方法を採用すればよい。例えば本Si系負極活物質は、ケイ素(Si)又はケイ素(Si)含有物質と、半金属・金属元素M又は半金属・金属元素M含有物質と、必要に応じてその他の原料物質とを混合して加熱して溶融液とした後、アトマイズ法などによって微粒化させてもよいし、又、前記のように溶融液とした後、ロール鋳造法により鋳造し、さらに非酸素雰囲気下で粉砕を行って微粒化させてもよい。その他の微粒化方法を採用してもよい。
【0038】
原料を上記のように加熱して溶融液とした場合、その溶融液が冷却した際に化合物Aが生成することになる。
ただし、本発明において金属を溶融させる方法として、特開2010−135336に記載されるようなアーク溶解工程を経てはならない。これは、特開2011−518943の段落[0029]及び、特開2014−513197の段落[0011]に記載されるとおり、アーク溶解を行うと残留大気により酸化が起こってしまうためである。一度、原料中に大量の酸素が取り込まれてしまうと、後の工程で取り除くことは難しい。
【0039】
上記のアトマイズ法としては、例えば、国際公開01/081033号パンフレットの
図2に記載の装置を用いて、自発核生成による沸騰を起こさせて生じる圧力波を利用して、冷却媒中に滴下した溶融金属を微粒化する方法を採用してもよい。
【0040】
上記微粒化した後、必要に応じて解砕乃至粉砕を行い、必要に応じて分級を行って粒度を調整するのが好ましい。
【0041】
強力な衝撃力を利用した改質装置を用いて行う改質処理は、条件設定によってメカニカルミリング或いはメカニカルアロイングなどを行うことができる装置を使用する改質処理であり、本Si系負極活物質の比表面積(SSA)を大きくすることができ、且つ、上述のようにSiの結晶性を低下させることができる処理である。
この装置により、特開2010−135336に記載されるような遊星ボールミルでは容易に到達できないレベルまでSiの結晶性を低下させることが可能である。
【0042】
上記改質処理としては、例えば、反応槽内に回転羽根を備えた処理装置を使用し、回転羽根の回転数を700〜1500rpmとし、反応槽内に投入する媒体として、本Si系負極活物質のD50に対して1500〜4000倍程度の粒径のビーズを使用して処理するのが好ましい。
上記回転羽根の回転数は、ピンミルが9000〜10000rpm程度であることを考慮すると、微粉砕処理する際の回転数に比べると遅いと言える。かかる観点から、回転羽根の回転数は700〜1500rpmであるのが好ましく、中でも750rpm以上或いは1500rpm以下、その中でも800rpm以上或いは1500rpm以下であるのが好ましい。なお、撹拌羽根のサイズが変わった場合も、周速を合わせることで、同等の効果を得ることができる。
【0043】
また、ビーズミルやボールミルなどの粉砕機において、反応槽内に投入する媒体は、その大きさの1/1000程度まで粉砕できると言われている。よって、本Si系負極活物質のD50に対して1500倍〜4000倍程度の粒径のビーズを使用するということは、粉砕よりも表面改質が優先的に行われていることになる。
かかる観点から、反応槽内に投入する媒体の粒径は4〜10mmφであるのが好ましく、中でも5mmφ以上或いは8mmφ以下、その中でも5mmφ以上或いは7mmφ以下であるのがさらに好ましい。
媒体の材質としては、Al
2O
3、ZrO
2、SiC、Si
3N
4、WCなどを挙げることができる。
【0044】
<本負極>
本実施形態に係る負極(以下「本負極」と称する)としては、本Si系負極活物質と、バインダーと、必要に応じて導電材と、必要に応じて負極活物質としてのグラファイトとを含む塗膜を、集電体上に備えた非水電解液二次電池用負極を挙げることができる。
【0045】
(バインダー)
バインダーとしては、ポリイミド、ポリアミド及びポリアミドイミドのうちのいずれを用いてもよい。これらは単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせてもよい(以下、これらを総称して「ポリイミド等」とも言う。)。更にこれら以外のバインダーを更に併用してもよい。
【0046】
上記のポリイミド等としては、市販のものを制限なく用いることができる。特にポリアミドとしては、200〜400℃のガラス転移点Tgを有するものを用いることが好ましい。ポリアミドイミドとしても、200〜400℃のガラス転移点Tgを有するものを用いることが好ましい。
【0047】
上記のポリイミド等は、負極活物質粒子(以降、単に「活物質粒子」と言えば「負極活物質粒子」の意である)の表面の少なくとも一部に固着しているのが好ましい。
ポリイミド等の固着の形態として特に好ましい形態は、活物質粒子の表面を少なくとも一部おいて面状に固着している形態である。「面状」とは、膜状と同義であり、点状に散在している状態と対極にある状態である。また、「固着」とは、活物質粒子とポリイミド等との間に機械的な結合力(例えば係合や嵌合等のアンカー効果)又は化学的な結合力が生じるような状態で結合している状態であり、活物質粒子とポリイミド等とを単に混合して両者が結果的に接触しているだけ状態は「固着」に当たらない。
活物質粒子の表面にポリイミド等を面状に固着させるための方法については後述する。
【0048】
ポリイミド等は、活物質粒子の表面の全域を被覆しているのではなく、ポリイミド等が固着していない部分を活物質粒子表面に残すような態様で、該表面に固着していることが好ましい。そして、隣接する活物質粒子間は、ポリイミド等が固着していない部分において接触すると共に、その接触点の周辺にポリイミド等が固着して連結しているのが好ましい。このようにポリイミド等が固着していない部分を介して活物質粒子どうしが接触することで電子伝導性を確保することができる。
【0049】
活物質粒子の表面に面状に固着しているポリイミド等は、当該粒子と隣り合う別の活物質の表面に固着しているポリイミド等からなる連結部位を介して一体的に連結しているのが好ましい。すなわち、上述したように、活物質粒子は隣接する粒子同士接触すると共に、その接触点の周辺に固着したポリイミド等が互いに連結して連結部位を形成しているのが好ましい。
ポリイミド等からなる該連結部位は、活物質粒子にリチウムイオンが挿入され膨張するときに、該粒子との固着状態を維持したままで伸長が可能である。このことによって、膨張に起因する活物質粒子の活物質層からの脱落が効果的に防止され、充放電のサイクル特性が向上する。また、このことは、充電に伴う電池の厚みの増加の抑制にも寄与する。充電に伴う電池の厚みの増加の抑制は、本発明の負極を、携帯電話用の電池のように、電池収容スペースが限られている場面で用いられる電池に適用した場合に特に有効である。一方、放電によって活物質粒子からリチウムイオンが脱離すると該粒子は収縮するところ、連結部位も該粒子の収縮に伴い収縮が可能である。このように、ポリイミド等からなる連結部位は、活物質粒子どうしをあたかもバネのように連結しているので、該粒子が活物質層から脱落することが効果的に防止される。
【0050】
活物質粒子どうしが、ポリイミド等からなる連結部位を介して連結していることに加え、複数個の活物質粒子が、前記の連結部位を介して数珠状に連結していることがさらに好ましい。この際、数珠状の連結は、直線状でもよく、あるいは蛇行状でもよい。また、数珠状の連結は、文字どおり環状になっていてもよく、あるいは非環状でもよい。
さらに、数珠状の連結は、一本の線となる態様でもよく、あるいは枝分かれの態様であってもよい。複数の活物質粒子が数珠状に連結していることで、活物質粒子の膨張による体積の増加が、数珠状の連結の再配置によって一層緩和され、充電に伴う電池の厚みの増加が一層抑制される。
このように複数個の活物質粒子が数珠状に連結するようにするには、例えば負極合剤を集電体に塗布した後、後述するように、比較的低温で加熱して乾燥させるようにすればよい。但し、この方法に限定するものではない。急激に乾燥させるのではなく、緩やかに乾燥させることにより、溶媒が揮発する経路が生じ、この経路に沿って活物質粒子が配列されるのではないか、と考えることができる。
【0051】
活物質層中に含まれるポリイミド等の割合は、活物質粒子の質量に対して1〜15質量%であるのが好ましく、特に2質量%以上或いは10質量%以下であるのがさらに好ましい。活物質層に含まれるポリイミド等の割合は以下の方法により測定することができる。
本負極が、ポリイミド等以外の有機物を含まない場合、負極の質量から負極に含まれている有機物以外の元素の質量、すなわちSi、Cu、Al、Fe、Ca、F、P及びC等の無機物の質量を差し引くことで有機物の質量を求め、その有機物の質量を活物質層の質量で除することで活物質層中に含まれるポリイミド等の割合を算出することができる。具体的には、先ず負極の質量を測定する。また、負極から活物質層を除去して集電体の質量を測定する。次に、負極を完全溶解させて無機物の全質量を、ICP発光分析装置を用いて測定する。そして、負極の質量から無機物の全質量を差し引き有機物の質量を算出する。また、無機物の全質量のうち、集電体以外の構成材料の質量を算出し、算出された値と有機物の質量とを足し合わせて活物質層の質量を算出する。そして、有機物の質量を活物質層の質量で除し、更に100を乗じることで、活物質層に含まれるポリイミド等の割合を算出することができる。
【0052】
本Si系負極活物質は、単独の負極活物質として使用することも可能であるし、また、グラファイトと組み合わせて使用することも可能である。
この場合、バインダーとしてCMC/SBRなどを使用してもよい。
【0053】
(導電材)
導電材としては、例えば金属微粉や、アセチレンブラック等の導電性炭素材料の粉末等を用いることができる。導電材として金属微粉を用いる場合には、Sn、Zn、Ag及びIn等のリチウムイオン伝導性有する金属又はこれらの金属の合金等の微粉を用いることが好ましい。
【0054】
(グラファイト)
負極活物質としてのグラファイトを本Si系負極活物質に加えることで、ケイ素に起因する高容量化と、グラファイトに起因する良好なサイクル特性とを両方得ることができる。
特に本Si系負極活物質は、上述のように、放電プロファイルにおけるプラトー領域が無いため、炭素材料(Graphite)と組み合わせて使用した際、放電プロファイルに段部ができるのを防ぐことができ、黒鉛などの炭素材料(Graphite)と組み合わせて負極活物質として使用した際に制御し易く、好適である。
【0055】
(配合組成)
本負極において、バインダーの含有量は、本Si系負極活物質100質量部に対して1〜25質量部であるのが好ましく、中でも2質量部以上或いは20質量部以下であるのがさらに好ましい。
また、導電材を配合する場合には、導電材の含有量は、本Si系負極活物質100質量部に対して1〜15質量部であるのが好ましく、中でも2質量部以上或いは10質量部以下であるのがさらに好ましい。
また、負極活物質としてグラファイトを配合する場合には、グラファイトの含有量は、本Si系負極活物質とグラファイトとの混合質量比は0.5:95〜50:50、特に0.5:95〜20:80であるのが好ましい。
【0056】
(本負極の製造方法)
本負極は、上記本Si系負極活物質(粒子状)と、バインダーと、導電材と、溶媒と、必要に応じて炭素材料(Graphite)などの他の材料とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をCu等からなる集電体の表面に塗布して乾燥させることで負極活物質層を形成し、その後、必要に応じて活物質層をプレスして形成することができる。
【0057】
負極合剤を集電体の表面に塗布した後の乾燥は、非酸素雰囲気、例えば窒素雰囲気下やアルゴン雰囲気下において、1時間〜10時間、特に1時間〜7時間乾燥を行うのが好ましい。
【0058】
ここで、バインダーとしてポリイミドを用いた場合の本負極の製造方法について説明する。
【0059】
先ず、本Si系負極活物質(粒子状)と、ポリイミドの前駆体化合物と、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒、必要に応じて、金属微粉やアセチレンブラック等の導電材や炭素材料(Graphite)などとを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をCu等からなる集電体の表面に塗布する。
この際、ポリイミドの前駆体化合物としては、ポリアミック酸(ポリアミド酸)を用いることができる。
【0060】
負極合剤を集電体の表面に塗布したら、塗膜を加熱して有機溶剤を揮発させるとともに、ポリイミドの前駆体化合物を重合させてポリイミドとすることができる。
この際、当該前駆体化合物の重合条件を調整することで、活物質粒子の表面にポリイミドを面状に固着させることができ、ポリイミドからなる連結部位を介して活物質を数珠状に連結することができる。
【0061】
前駆体化合物の重合条件として、多段階の加熱を行うことが有利であることが、本発明者らの検討の結果判明した。特に、少なくとも2段階、好適には少なくとも3段階、さらに好ましくは4段階の加熱を行うことが有利である。例えば、2段階の加熱を行う場合には、1段階目の加熱を100〜150℃で行うことが好ましく、2段階目の加熱を200〜400℃で行うことが好ましい。
加熱時間に関しては、1段階目の加熱時間を2段階目の加熱時間と同じか又はそれよりも長くすることが好ましい。例えば、1段階目の加熱時間を120〜300分、特に180分以上或いは240分以下に設定し、2段階目の加熱時間を30〜120分、特に30〜60分に設定することが好ましい。
【0062】
3段階の加熱を行う場合には、上述した2段階の加熱において、1段階目と2段階目の中間の加熱温度を採用することが好ましい。
この中間の加熱は、150〜190℃で行うことが好ましい。加熱時間は、1段階目及び2段階目の時間と同じか又は1段階目と2段階目の中間の時間とすることが好ましい。つまり、3段階の加熱を行う場合には、各段階で加熱時間を同じにするか、又は段階が進むにつれて加熱時間を短くすることが好ましい。
さらに4段階の加熱を行う場合には、3段階目よりも高い加熱温度を採用することが好ましい。
【0063】
加熱を何段階で行うかにかかわらず、加熱は、窒素やアルゴン等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
また、加熱処理のときには、活物質層をガラス板等の押さえ部材で押さえることも好ましい。こうすることで、有機溶媒が潤沢な状態で、つまりポリアミック酸が有機溶媒中にあたかも飽和したような状態で、該ポリアミック酸を重合させることができるので、生成するポリイミドの分子鎖どうしが絡まりやすくなるからである。
【0064】
以上の多段階加熱を行うことで、負極合剤に含まれている有機溶媒を徐々に揮発させることができ、それによってポリアミドの前駆体化合物を十分に高分子量化させることができるとともに、活物質粒子の表面の広い範囲にわたりポリイミドを固着させることができ、活物質層中にはその厚み方向全域にわたる三次元網目状の空隙を形成することができる。
【0065】
<非水電解液二次電池>
本実施形態に係る非水電解液二次電池(「本二次電池」と称する)として、本負極と、正極と、セパレータと、非水電解液等とから構成することができる電池を挙げることができる。
【0066】
(正極)
正極は、例えば集電体の少なくとも一面に正極活物質層が形成されてなるものである。正極活物質層には正極活物質が含まれている。正極活物質としては、当該技術分野において従来知られているものを特に制限なく用いることができる。例えば各種のリチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。そのような物質としては、例えばLiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiMn
1.5Ni
0.5O
4、LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2、LiCo
0.5Ni
0.5O
2、LiNi
0.7Co
0.2Mn
0.1O
2、Li(Li
xMn
2xCo
1-3x)O
2(式中、0<x<1/3である)、LiFePO
4、LiMn
1-zM
zPO
4(式中、0<z≦0.1であり、MはCo、Ni、Fe、Mg、Zn及びCuからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。)などが挙げられる。
【0067】
(セパレータ)
負極及び正極とともに用いられるセパレータとしては、合成樹脂製不織布、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、又はポリテトラフルオロエチレンの多孔質フィルム等が好ましく用いられる。
【0068】
(非水電解液)
非水電解液は、支持電解質であるリチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液からなる。有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系有機溶媒、フルオロエチレンカーボネート等の前記カーボネート系有機溶媒の一部をフッ素化したフッ素系有機溶媒等の1種又は2種以上の組み合わせが用いられる。具体的には、フルオロエチレンカーボネート、ジエチルフルオロカーボネート、ジメチルフルオロカーボネート等を用いることができる。リチウム塩としては、CF
3SO
3Li、(CF
3SO
2)NLi、(C
2F
5SO
2)
2NLi、LiClO
4、LiA1Cl
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiCl、LiBr、LiI、LiC
4F
9SO
3等が例示される。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。但し、本発明が以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0071】
<実施例1>
ケイ素(Si)とチタン(Ti)のインゴットを混合して加熱溶融させ、1700℃に加熱した溶融液を、液体急冷凝固装置(単ロール型)を用いて急速冷却し、急冷薄帯合金を得た。得られた急冷薄帯合金を、乾式ボールミルを用いて粗粉砕した後、さらに窒素雰囲気(大気1%未満、残部は液体窒素からの気化窒素(純度99.999%以上))下でジェットミル粉砕機を用いて粒度調整を行い、合金微粉末とした。
【0072】
得られた合金微粉末を、ナノ粒子表面改質装置(製品名「シモロイヤー」、反応装置内に回転羽根を装備)を用いて改質処理を行った。すなわち、容量2Lの容器内に、ZrO
2ビーズ2kgと、前記合金微粉末50gを入れて、1500rpmで3h処理を行った。処理後の合金微粉末を目開き75μmの篩で分級し、負極活物質としての合金微粉末(サンプル)を得た。
得られた合金微粉末(サンプル)の化学分析を実施したところ、Si:70wt%、Ti:26wt%であった。
【0073】
<実施例2>
ケイ素(Si)とチタン(Ti)のインゴットを混合して加熱溶融させ、1700℃に加熱した溶融液を、液体急冷凝固装置(単ロール型)を用いて急速冷却し、急冷薄帯合金を得た。得られた急冷薄帯合金を、乾式ボールミルを用いて粗粉砕した後、さらに窒素雰囲気(大気1%未満、残部は液体窒素からの気化窒素(純度99.999%以上))下でジェットミル粉砕機を用いて粒度調整を行い、合金微粉末とした。
【0074】
得られた合金微粉末を、ナノ粒子表面改質装置(製品名「シモロイヤ―」、反応装置内に回転羽根を装備)を用いて改質処理を行った。すなわち、容量2Lの容器内に、ZrO
2ビーズ2kgと、合金微粉末50gを入れて、1500rpmで3h処理を行った。処理後の合金微粉末を目開き75μmの篩で分級し、負極活物質としての合金微粉末(サンプル)を得た。
得られた合金微粉末(サンプル)の化学分析を実施したところ、Si:76wt%、Ti:20wt%であった。
【0075】
<実施例3>
ケイ素(Si)とチタン(Ti)のインゴットを加熱溶融させ、1700℃に加熱した溶融液を、液体急冷凝固装置(単ロール型)を用いて急速冷却し、急冷薄帯合金を得た。得られた急冷薄帯合金を、乾式ボールミルを用いて粗粉砕した後、さらに窒素雰囲気(大気1%未満、残部は液体窒素からの気化窒素(純度99.999%以上))下でジェットミル粉砕機を用いて、粒度調整を行い、合金微粉末とした。
【0076】
得られた合金微粉末を、ナノ粒子表面改質装置(製品名「シモロイヤ―」、反応装置内に回転羽根を装備)を用いて改質処理を行った。すなわち、容量2Lの容器内に、ZrO
2ビーズ2kgと、合金微粉末50gを入れて、1500rpmで3h処理を行った。処理後の合金微粉末を目開き75μmの篩で分級し、負極活物質としての合金微粉末(サンプル)を得た。
得られた合金微粉末(サンプル)の化学分析を実施したところ、Si:84wt%、Ti:15wt%であった。
【0077】
<実施例4>
ケイ素(Si)とチタン(Ti)とマンガン(Mn)のインゴットを混合して加熱溶融させ、1700℃に加熱した溶融液を、液体急冷凝固装置(単ロール型)を用いて急速冷却し、急冷薄帯合金を得た。得られた急冷薄帯合金を、乾式ボールミルを用いて粗粉砕した後、さらに窒素雰囲気(大気1%未満、残部は液体窒素からの気化窒素(純度99.999%以上))下でジェットミル粉砕機を用いて粒度調整を行い、合金微粉末とした。
【0078】
得られた合金微粉末を、ナノ粒子表面改質装置(製品名「シモロイヤー」、反応装置内に回転羽根を装備)を用いて改質処理を行った。すなわち、容量2Lの容器内に、ZrO
2ビーズ2kgと、前記合金微粉末50gを入れて、1500rpmで3h処理を行った。処理後の合金微粉末を分級し、負極活物質としての合金微粉末(サンプル)を得た。
得られた合金微粉末(サンプル)の化学分析を実施したところ、Si:66wt%、Ti:19wt%、Mn:4wt%であった。シリサイドの判定には、TiSi
2(ICDDのPDFカード:01−071−0187)、Mn
11Si
19(ICDDのPDFカード:03−065−2862)を使用し、39°付近のピークをTiSi
2のメインピーク、41°付近のピークをMn
11Si
19のピークとした。それぞれのピーク強度の合計値を使って、M
xSi
yのメインピークに対するSi(111)ピーク強度比を算出した。
【0079】
<比較例1>
ケイ素(Si)のインゴットを加熱溶融させ、1700℃に加熱した溶融液を、液体急冷凝固装置(単ロール型)を用いて急速冷却し、急冷薄帯金属を得た。得られた急冷薄帯金属を、乾式ボールミルを用いて粗粉砕した後、さらに窒素雰囲気(大気1%未満、残部は液体窒素からの気化窒素(純度99.999%以上))下でジェットミル粉砕機を用いて、粒度調整を行い、金属微粉末(サンプル)とした。
得られた金属微粉末(サンプル)の化学分析を実施したところ、Si:99wt%であった。
【0080】
<比較例2>
ケイ素(Si)のインゴットと塊状チタンを原子比85:15(重量比76.8:23.2)で混合し、液体急冷凝固装置(単ロール型)を用いて溶解し、溶湯をアルゴンガスで、回転する銅製のロールに吹き付けて急冷し、Si−Ti合金を作製した。次いで、Si−Ti合金を遊星ボールミル装置にてアルゴンガス雰囲気中窒化シリコン製ボールを使用し、2時間粉砕して微粉末の電極材料を得た。
【0081】
<比較例3>
固相Aには、SiとBを用い、これらを重量比19.9:0.1の混合物とした。この混合物を高周波溶解槽に投入して溶解させ、得られた合金溶湯を、単ロール法により急冷凝固させて、第一の合金塊を得た。また、固相Bには、TiとSiを用い、これらの原子比1:2の混合物とした。この混合物を高周波溶解槽に投入して溶解させ、得られた合金溶湯を、単ロール法により急冷凝固させて、組成式TiSi
2で表される金属間化合物からなる第二の合金塊を得た。次いで、第一の合金塊と第二の合金塊とを重量比20:80で混合した混合物を遊星ボールミルの容器内に投入し、メカニカルアロイングを1時間行い、微粉末の電極材料を得た。
【0082】
<各種物性値の測定方法>
実施例及び比較例で得られた金属微粉末(サンプル)の各種物性値を次のように測定した。
【0083】
(組成分析)
実施例及び比較例で得られた金属微粉末(サンプル)について、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により、各元素の含有量を測定した。但し、酸素については、酸素・窒素分析装置(LECO社製)を用いて、含有量を測定した。
【0084】
(D50)
レーザー回折粒子径分布測定装置用自動試料供給機(マイクロトラック・ベル株式会社製「Microtorac SDC」)を用い、実施例及び比較例で得られた金属微粉末(サンプル)を、超音波ホモジナイザーを用いて水中に分散させた分散液の状態とし、当該分散液を水溶性溶媒に投入した。40mL/secの流速中、マイクロトラック・ベル株式会社製レーザー回折粒度分布測定機「MT3300II」を用いて粒度分布を測定し、得られた体積基準粒度分布のチャートからD50を求めた。
【0085】
(比表面積:SSA)
実施例及び比較例で得られた金属微粉末(サンプル)の比表面積(SSA)を次のようにして測定した。
先ず、サンプル(粉体)1.0gを全自動比表面積測定装置Macsorb(株式会社マウンテック製)用のガラスセル(標準セル)に秤量し、オートサンプラ―にセットした。窒素ガスでガラス内を置換した後、前記窒素ガス雰囲気中で250℃、15分間熱処理した。その後、窒素・ヘリウム混合ガスを流しながら4分間冷却を行った。冷却後、サンプルをBET一点法にて測定した。
なお、冷却時及び測定時の吸着ガスは、窒素30%:ヘリウム70%の混合ガスを用いた。
【0086】
(真密度)
実施例及び比較例で得られた金属微粉末(サンプル)の真密度を次のようにして測定した。
先ず、サンプル(粉体)をサンプルバスケット10ccの7分目まで入れて、投入したサンプル量を測定した。次に真密度測定装置BELPycno(株式会社マウンテック製)内に、サンプル入れたサンプルバスケットをセットして、装置のフタを閉め、測定を開始した。
なお、測定には、ヘリウムガスを使用し、測定部の温度は25℃±0.1℃で管理した。
【0087】
(X線回折)
CuKα1線を用いた粉末X線回折装置(XRD、装置名「UltimaIV、(株)リガク製」)を用いて、下記測定条件1で測定してX線回折パターン(「XRDパターン」とも称する)を得た。
【0088】
=XRD測定条件1=
線源:CuKα(線焦点)、波長:1.541836Å
操作軸:2θ/θ、測定方法:連続、計数単位:cps
開始角度:15.0°、終了角度:120.0°、積算回数:1回
サンプリング幅:0.01°、スキャンスピード:1.0°/min
電圧:40kV、電流:40mA
発散スリット:0.2mm、発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:開放、受光スリット:開放
オフセット角度:0°
ゴニオメーター半径:285mm、光学系:集中法
アタッチメント:ASC−48
スリット:D/teX Ultra用スリット
検出器:D/teX Ultra
インシデントモノクロ:CBO
Ni−Kβフィルター:無
回転速度:50rpm
【0089】
なお、本発明が規定するSi系負極活物質に該当するか否かを確認するため、XRD測定をする際は、そのXRD測定の設定条件が妥当であるか否かを、例えば、比較例1のようなSiを99%以上含む結晶性のSi粉末を測定し、Siの(111)面のピークに相当する2θ=28.42°付近のピークのピーク強度が、基準物質のデータに合致しているか否か、すなわち80000〜90000cps程度になっているか否かを1つの指標として判断するのが好ましい(アモルファスのSi粉末は指標には不適)。
【0090】
得られたXRDパターンにおいて、2θ=15〜18°に明確なピークがないことを確認し、この範囲のcpsの平均値をバックグラウンド(BG)の強度Aとした。 次に、ICDDカード番号:00−005−0565(化学式:Si)のカード情報を元にSiの(111)面のピークに相当する2θ=28.42°付近のピークのcpsの最大値をピーク強度Bとしたときに、ピーク強度Bとバックグラウンド(BG)の強度Aとの差を、Siの(111)面のピークのピーク強度C(Si(111)ピーク強度)とするとした。そのピークの半値全幅(FWHM)を求め、Si(111)半値全幅として表に示した。
【0091】
ここで、M
xSi
yで表されるシリサイドの同定方法について記載する。
化学分析の結果から、M元素を推定し、M元素とSiのシリサイドが形成されると想定して同定を行った。解析用ソフトウエア(製品名「PDXL」)を用いて、解析するためのXRDパターンデータを読み込んだ。その後、自動検索を選択して同定を行った。自動検索対象として全サブファイルを選択し、元素フィルターとして、M元素とSiが含まれるように設定して自動検索を実行した。
自動検索を行うと結晶相検索結果としていくつかのカード番号がピックアップされ、その中からピークの一致性が高い結晶相候補が選択された。その後、解析するためのXRDパターンデータのピーク位置と選択された結晶相候補のピークの位置の一致性を確認した。問題なければ、そのまま使用し、ピーク位置にズレが生じている場合は、結晶相検索結果としてピックアップされているカード番号の中から手動で再選択を行う。再選択の際は、ICDDカードに設定されているカードの信頼性(Quality)を参考にし、Qualityの高い順(S→I→B)でカードを再選択してピーク位置の確認を行った。
【0092】
上記によって、選択されたM元素とSiのシリサイドのICDDカード番号を読み、M元素とSiのシリサイドのメインピークに相当する2θ(例えば、ICDDカード番号01−071−0187のTiSi
2の場合は2θ=39.11°)付近のcpsの最大値をピーク強度Dとしたときに、ピーク強度Dとバックグラウンド(BG)の強度Aとの差をシリサイド(M
xSi
y)のメインピーク強度Eとした。そして、M
xSi
yのメインピークのピーク強度Eに対するSiの(111)面のピークのピーク強度C(Si(111)ピーク強度)の比をシリサイド(M
xSi
y)のメインピークに対するSi(111)ピーク強度比として表1に示した。
【0093】
(Si(111)の結晶子サイズ)
前述のXRD測定条件1で得られたXRDパターンを用いて、解析用ソフトウエア(製品名「PDXL」)を用いて、解析することにより、Si(111)の結晶子サイズを求めた。解析用ソフトウエア(製品名「PDXL」)を用いて、解析するためのXRDパターンデータを読み込んだ。その後、カード情報読込を選択して同定を行った。ICDDカード番号:00−005−0565(化学式:Si)を結晶相候補として確定し、WPPF法によって精密化を行った。精密化は5回程度連続して行い、Rwpの小数点第1位とSの小数点第2位が変わらないことを確認したら終了とした。
上記を実施した後に、ピークリストのSi(111)の結晶子サイズを確認して、表1に示した。
【0094】
(電極の作製)
実施例及び比較例で得られた金属微粉末(サンプル):導電材:結着剤=85:5:10(重量%)の混合比となるようにこれらを混合し、これらをN−メチルピロリドンに分散させて負極合剤を得た。導電材としてはアセチレンブラックを用いた。結着剤としてはポリイミドを用いた。この負極合剤を、厚み15μmの電解銅箔上に塗布した。塗膜を乾燥して負極活物質層を形成し負極を得た。
【0095】
(電極抵抗)
前述の負極電極を50mm×100mmのサイズに打ち抜いてからロールプレス機を使用して120℃でプレス厚密した。得られた電極を窒素雰囲気中で熱処理を行った。熱処理後の電極をロレスターMCP−T610(株式会社三菱アナリテック製)で、端子AP2プローブを使用して電極抵抗を測定した。端子は負極合剤層表面の3ヶ所を測定し、平均値を採用し、表に示した。
【0096】
(電池の作製)
上記のようにして得られた負極を直径14mmφの円形に打ち抜き、160℃で6時間真空乾燥を施した。そして、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、電気化学評価用セルTOMCEL(登録商標)を組み立てた。対極としては金属リチウムを用いた。電解液としては、カーボネート系の混合溶媒にLiPF
6を1mol/lになるように溶解させた電解液を用いた。セパレータとしては、ポリプロピレン製多孔質フィルムを用いた。
【0097】
<電池特性の評価>
(電池性能評価試験)
上記のようにして準備した電気化学評価用セルTOMCEL(登録商標)を用いて次に記述する方法で初期活性を行った。作製した電気化学評価用セルTOMCEL(登録商標)を6時間静置した後、25℃にて0.1Cで0.01Vまで定電流定電位充電した後(電流値が0.01Cになった時点で充電終了)、0.1Cで1.0Vまで定電流放電した。これを3サイクル繰り返した。なお、実際に設定した電流値は負極中の負極活物質の含有量から算出した。
【0098】
(放電プロファイル形状)
前述で得た1サイクル目の放電曲線をもとにして、「放電プロファイル形状」の判定を行った。すなわち、得られた放電曲線を線形近似して、相関係数の高さを比較し、「放電プロファイル形状」の指数とした。なお、表1には、比較例3の数値を100とした場合の指数として示した。この際、放電初期から放電末期までの区間で連続的に電位が変化していく、つまり直線性が高ければ、線形近似した際の相関係数は高くなり、プラトーが無いことを示すことになる。
【0099】
(ハイレート時の放電プロファイル維持特性)
前述の方法で、初期活性を行った電気化学評価用セルTOMCELを用いて、放電レート特性評価を行った。まず、25℃にて0.1Cで0.01Vまで定電流定電位充電した後(電流値が0.01Cになった時点で充電終了)、5Cで1.0Vまで定電流放電した。
5C時の放電曲線から、前述のように「放電プロファイル形状」の判定を行い、5Cでの「放電プロファイル形状」指数を求めた。前述の0.1Cでの「放電プロファイル形状」指数に対する5Cでの「放電プロファイル形状」指数の比を「ハイレート時の放電プロファイル維持特性」とした。なお、表1には、比較例3の数値を100とした場合の指数として示した。
【0100】
(45℃サイクル特性)
前述と同様に、電気化学評価用セルTOMCELを作製した。作製した電気化学評価用セルTOMCEL(登録商標)を6時間静置した後、25℃にて0.1Cで0.01Vまで定電流定電位充電した後(電流値が0.01Cになった時点で充電終了)、0.1Cで1.0Vまで定電流放電した。これを3サイクル繰り返した。なお、実際に設定した電流値は負極中の負極活物質の含有量から算出した。上記のようにして、初期活性を行った後の電気化学評価用セルTOMCELを用いて、下記に記述する方法で充放電試験し、45℃サイクル特性を評価した。電池を充放電する環境温度を45℃となるようにセットした環境試験機内にセルを入れて、充放電できるように準備し、セル温度が環境温度になるように、5時間静置した。その後、充放電範囲を0.01V−1.0Vとし、充電は0.1C定電流定電位、放電は0.1C定電流で1サイクル充放電行った後に、1Cにて充放電サイクルを98回行い、その後、0.1Cにて充放電サイクルを1サイクル行った。Cレートは初期活性時の25℃、3サイクル目の放電容量を元に計算した。100サイクル目の放電容量を2サイクル目の放電容量で割り算して求めた数値の百分率(%)を45℃サイクル特性値として求めた。なお、表1には、比較例3の数値を100とした場合の指数で示した。
【0101】
【表1】
【0102】
上記実施例及びこれまで発明者が行ってきた試験結果から、Siと、Si及び半金属・金属元素Mを含む化合物と、を含有するSi系負極活物質に関しては、負極活物質中のSiの含有量が50wt%より多く、酸素原子(O)の含有量が30wt%未満であり、半金属・金属元素Mの含有量が10wt%より多く、50wt%未満であり、さらに、CuKα1線を用いた粉末X線回折装置(XRD)により測定されるX線回折パターンにおいて、Siの(111)面のピークの半値全幅が0.25°以上であり、Siの(111)面のピークのピーク強度が20000cps未満であり、真密度が2.5g/cm
3以上であるSi系負極活物質であれば、サイクル特性を高めることができ、放電プロファイルにおけるプラトー領域を低減若しくは無くすことができ、さらにはハイレートでもプロファイルを維持した状態で放電することができることが分かった。