(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のレゾルバ信号処理装置、ドライブ装置、レゾルバ信号処理方法、及びプログラムを、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それらの構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0008】
実施形態のレゾルバとして、二相励磁二相出力型を例示する。二相出力型のレゾルバは略90度の位相差で振幅変調されたA相、B相の二相の信号を出力する。例えば、上記の二相の信号は、位相θ0によって振幅が変化する正弦波と余弦波である。二相励磁型のレゾルバは略90度の位相差で振幅変調されたA相、B相の励磁信号が供給される。レゾルバには、二相励磁二相出力型のほかに、一相励磁二相出力型、二相励磁一相出力型などがある。
なお、以下の説明の中で電気的に接続されることを、単に「接続される」ということがある。比較対象の速度、位相などの値が同じ値をとる場合、或いは略同じ値をとる場合のことを、単に「同じ」ということがある。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係るレゾルバ信号処理装置100を含むドライブ装置1の構成図である。
【0010】
ドライブ装置1は、例えば、レゾルバ2(図中の記載はSS。)と、モータ3(図中の記載はM。)と、インバータ4と、レゾルバ信号処理装置100とを備える。
【0011】
レゾルバ2の軸は、モータ3の出力軸に連結されていて、モータ3の出力軸の回転に連動して回転する。例えば、モータ3は、インバータ4によって駆動される。
【0012】
レゾルバ信号処理装置100は、レゾルバ2に接続されていて、レゾルバ2に二相励磁信号を供給し、レゾルバ2が出力する二相の信号を受ける。
【0013】
ここで
図2Aから
図2Cを参照してレゾルバ2について説明する。
図2Aは、実施形態のレゾルバ2の構成図である。
図2Bは、実施形態のレゾルバ2の二相励磁信号を説明するための図である。
図2Cは、実施形態のレゾルバ2の二相の出力信号を説明するための図である。
【0014】
例えば、レゾルバ2は、励磁位相θexの二相励磁信号により励磁される。レゾルバ2は、モータ3の出力軸の機械角位相θrmを検出する。レゾルバ2は、二相励磁信号の励磁位相θexと、機械角位相θrmとに関連する位相θ0に基づいた二相の信号を出力する。
【0015】
図に示すsinθexとcosθexとして示す信号は、二相励磁信号の一例である。sinθ0とcosθ0として示す信号は、二相の出力信号の一例である。例えば、二相励磁信号と二相の出力信号はともに連続信号である。機械角位相θrmと、二相励磁信号の励磁位相θexと、位相θ0は、式(1)に示す関係にある。
【0016】
θ0=θrm+θex ・・・(1)
θex=∫ωex(t)dt ・・・(2)
【0017】
上記の式(1)における励磁位相θexは、式(2)に示すように励磁角周波数ωex(t)に基づいて導出される。励磁角周波数ωex(t)は、時刻tに依存して変化する。励磁位相θexは、励磁角周波数ωex(t)の時間積分によって導出される。
【0018】
図1に戻りレゾルバ信号処理装置100の説明を続ける。
レゾルバ信号処理装置100は、上記の二相の信号に基づきレゾルバ2の位相、つまりモータ3の出力軸の機械角位相θrmを検出し、その推定値である機械角位相推定値θrm_hatをインバータ4に供給する。以下、レゾルバ2の位相とその推定値を、単に機械角位相θrm、機械角位相推定値θrm_hatと呼ぶ。
これにより、インバータ4は、機械角位相θrmに代わるフィードバック情報として、機械角位相推定値θrm_hatを用いることにより、機械角位相推定値θrm_hatに基づいた位置制御によりモータ3を駆動することができる。
【0019】
レゾルバ信号処理装置100について説明する。
レゾルバ信号処理装置100は、例えば、出力バッファー回路101A、101Bと、入力バッファー回路104A、104Bと、レゾルバ信号処理ユニット200とを備える。
【0020】
出力バッファー回路101A、101Bの入力は、レゾルバ信号処理ユニット200に接続される。出力バッファー回路101A、101Bの出力は、レゾルバ2の励磁側に接続される。出力バッファー回路101A、101Bは、後述のレゾルバ信号処理ユニット200から供給される励磁信号に基づいた2相の信号をレゾルバ2に供給する。
【0021】
例えば、出力バッファー回路101Aには、A相出力用の図示されないデジタルアナログ変換器102A(以下、DA変換器という。図中の記載はDA。)、図示しない信号増幅用のバッファー、絶縁用のトランス103A(図中の記載はT。)などが含まれる。DA変換器102Aと、信号増幅用のバッファーと、トランス103Aは、記載の順に接続されている。トランス103Aは、レゾルバ信号処理装置100とレゾルバ2とを電気的に絶縁する。トランス103Aの変圧比を1と仮定して、以下の説明におけるトランスの説明を省略する。出力バッファー回路101Bも同様であり、B相出力用の図示されないDA変換器102B、図示しない信号増幅用のバッファー、トランス103Bなどが含まれる。DA変換器102Bは、DA変換器102Aと同じものであってよい。トランス103Bは、トランス103Aと同じものであってよい。DA変換器102Bと、信号増幅用のバッファーと、トランス103Bは、記載の順に接続されている。なお、トランス103A、103Bの変圧比が1でない場合には、以下の説明を比の値に併せて適宜補正してもよい。
【0022】
入力バッファー回路104A、104Bの入力は、レゾルバ2の出力側に接続される。入力バッファー回路104A、104Bの出力は、レゾルバ信号処理ユニット200に接続される。入力バッファー回路104A、104Bは、レゾルバ2から位相θ0に基づいた二相の信号を受け、後述のレゾルバ信号処理ユニット200に供給する。
【0023】
例えば、入力バッファー回路104Aには、A相入力用のアナログデジタル変換器105A(以下、AD変換器という。図中の記載はAD。)、図示されない信号増幅用のバッファー、絶縁用のトランス106A(図中の記載はT。)などが含まれる。絶縁用のトランス106Aと、信号増幅用のバッファーと、AD変換器105Aは、記載の順に接続される。入力バッファー回路104Bも同様であり、B相入力用のAD変換器105B、図示されない信号増幅用のバッファー、トランス106Bなどが含まれる。絶縁用のトランス106Bと、信号増幅用のバッファーと、AD変換器105Bは、記載の順に接続される。
【0024】
AD変換器105A、105Bは、レゾルバ2が出力するA相、B相の各アナログ信号をそれぞれデジタル値に変換する。AD変換器105A、105Bが変換するタイミングは、図示されないサンプリング指令信号生成処理部から出力されるサンプリング指令信号により規定され、予め定められた所定の周期になる。AD変換器105A、105Bは、変換したデジタル値を、レゾルバ信号処理ユニット200に供給する。
【0025】
レゾルバ信号処理ユニット200は、デジタル値で供給された2相の信号から、レゾルバ2の位相に対応する位相情報に変換して、出力バッファー回路101A、101Bを経由してインバータ4に供給する。
【0026】
インバータ4は、図示されない半導体スイッチング素子とインバータ制御部とを備える。インバータ4は、レゾルバ信号処理ユニット200からモータ3の機械角位相推定値θrm_hatの供給を受け、機械角位相推定値θrm_hatに従い、モータ3を駆動する。
【0027】
次にレゾルバ信号処理ユニット200について説明する。
レゾルバ信号処理ユニット200は、偏差算出ユニット201と、PI制御器204(図中の記載はPI。)と、リミッタ205と、積分器206(積分演算ユニット)と、変換処理ユニット207、208と、減算器209と、基準信号生成処理ユニット210と、加算器211と、励磁位相推定値生成ユニット215とを備える。PI制御器204は、PI演算ユニットの一例である。
【0028】
偏差算出ユニット201は、乗算器202A、202Bと、減算器203とを備える。
【0029】
乗算器202Aの入力は、AD変換器105Aの出力と後述の変換処理ユニット207の出力とに接続されている。乗算器202Aは、AD変換器105Aから供給されるA相の信号成分と、変換処理ユニット207から供給される正弦波信号(sinθref)とを乗じて、第1の積を得る。乗算器202Aは、出力に接続されている減算器203の第1入力に、第1の積を供給する。
【0030】
乗算器202Bの入力は、AD変換器105Bの出力と後述の変換処理ユニット207の出力とに接続されている。乗算器202Bは、AD変換器105Bから供給されるB相の信号成分と、変換処理ユニット207から供給される余弦波信号(cosθref)とを乗じて、第2の積を得る。乗算器202Bは、出力に接続されている減算器203の第2入力に、第2の積を供給する。
【0031】
減算器203は、乗算器202Aによって算出された第1の積の値から、乗算器202Bによって算出された第2の積の値を減算して、その差をPI制御器204に供給する。減算器203によって算出された差を、偏差sin(θref−θ0)と呼ぶ。
【0032】
PI制御器204は、偏差sin(θref−θ0)を積分する第1積分処理と、偏差sin(θref−θ0)に定数を乗算するゲイン乗算処理と、第1積分処理の結果とゲイン乗算処理の結果とを加算する演算処理とを実施する。これを比例積分演算という。PI制御器204の演算結果の値は、励磁角周波数(或いは周波数)の次元を持ち、これを励磁角周波数ωexと呼ぶ。ゲイン乗算処理の定数は、レゾルバ2のタイプに依存する。これについて後述する。
【0033】
加算器211は、PI制御器204の演算結果である励磁角周波数ωexと、後述する基準角周波数ωrefとを加算して出力する。その結果を励磁角周波数補償値ωex_compと呼ぶ。
【0034】
リミッタ205は、加算器211から供給される励磁角周波数補償値ωex_compを、所望の範囲の値に制限する。例えば、リミッタ205は、励磁角周波数補償値ωex_compが予め定められた閾値に基づいた所望の範囲を超えない場合には、励磁角周波数補償値ωex_compを制限することなく出力し、励磁角周波数補償値ωex_compが所望の範囲を超える場合には、励磁角周波数補償値ωex_compを所定の値に制限する。なお、励磁角周波数補償値ωex_compが予め定められた閾値に基づいた所望の範囲を超えないことは、PI制御器204の演算結果に基づく励磁角周波数補償値ωex_compが所定の条件を満たすことの一例である。
【0035】
積分器206は、例えば、励磁角周波数補償値ωex_compを積分する第2積分処理を実施する。ただし、励磁角周波数補償値ωex_compがリミッタ205によって制限された場合には、励磁角周波数補償値ωex_compに代えて、その制限値を積分する。積分器206の演算結果を励磁位相θexと呼ぶ。
【0036】
減算器209は、基準信号生成処理ユニット210から供給される基準位相θrefの値から、積分器206の演算結果である励磁位相θexの値を減算する。
【0037】
励磁位相推定値生成ユニット215は、減算器209の演算結果に基づいて、励磁位相推定値θrm_hatを生成する。
【0038】
基準信号生成ユニット210は、基準周波数frefに基づいて、基準角周波数ωrefと、基準位相θrefとを生成する。基準信号生成ユニット210は、基準角周波数ωrefを積分して基準位相θrefを生成してもよい。
【0039】
変換処理ユニット207は、上記の基準位相θrefを余弦波信号(cosθref)と正弦波信号(sinθref)に変換する。正弦波信号(sinθref)は、偏差算出ユニット201の乗算器202Aに供給される。余弦波信号(cosθref)は、偏差算出ユニット201の乗算器202Bに供給される。
【0040】
変換処理ユニット208は、上記の励磁位相θexを余弦波信号(cosθex)と正弦波信号(sinθex)に変換する。正弦波信号(sinθex)は、出力バッファー回路101Aの入力に供給される。余弦波信号(cosθex)は、出力バッファー回路101Bの入力に供給される。
【0041】
上記のように、レゾルバ信号処理ユニット200とレゾルバ2は、トラッキングループを形成する。トラッキングループの作用によって、レゾルバ信号処理ユニット200は、レゾルバ2から供給されたA相とB相の信号から励磁位相θexを算出する。
【0042】
上記のトラッキングループは、基準位相θrefとレゾルバ出力に含まれる位相θ0(=θrm+θex)とが等しくなるように作用する。基準位相θrefとレゾルバ出力に含まれる位相θ0との差(θref−θ0)がトラッキングループ内部に配置されたPI制御により0に近い値をとるようになる。よって、偏差sin(θref−θ0)は、(θref−θ0)に近似できる。(θref−θ0)をΔθで表す。
【0043】
上記の通りリミッタ205が励磁角周波数補償値ωex_compを所望の範囲に制限することにより、トラッキングループは、リミッタ205の制限された条件に従い作用する。これにより、励磁位相θexが急峻に変化することを抑制できる。
【0044】
上記の場合、レゾルバ信号処理装置100を、レゾルバ2の種類に合わせてリミッタ205の制限値を規定することにより、励磁角周波数ωexの帯域が互いに異なるレゾルバ2に適用させることが可能になる。レゾルバ信号処理ユニット200において、リミッタ205は、レゾルバ2の種類を識別する識別情報に基づいて、レゾルバ2の種類に対応する制限値を選択して設定するようにしてもよい。
【0045】
レゾルバ2の特性を示す1項目に軸倍角がある。軸倍角とは、機械角に対する電気角の比率である。レゾルバ2の軸倍角は、レゾルバ2の構造により規定される。例えば、レゾルバ2の軸が1回転した時にN回転分の出力信号を出力するタイプを「NX」型と呼ぶことがある。Nは、自然数である。これによれば、レゾルバ2の軸が1回転した時に1回転分の出力信号を出力するタイプは、「1X」型になる。
【0046】
レゾルバ2の回転速度に対する励磁角周波数ωexの変化率は、レゾルバ2の軸倍角により定まる。例えば、「1X」型のレゾルバ2を「NX」型のものに代えると、「NX」型の場合に回転速度に対する励磁角周波数(励磁角周波数ωex_NX)の変化率は、「1X」型の場合の回転速度に対する励磁角周波数ωex_1XのN倍になる。
【0047】
レゾルバ2の軸が回転している場合には励磁周波数が静止している場合と異なる値を示す。そのため、トランス103A、103B、106A、106Bの各トランスの励磁周波数の範囲に留意して、リミッタ205の制限値を規定するとよい。
【0048】
図3と
図4は、実施形態の軸倍角と励磁周波数とモータ速度との関係を説明するための図である。
図3と
図4に示すグラフの横軸にモータ3の回転速度が設定され、縦軸に励磁周波数が設定されている。
【0049】
図3に例示するレゾルバ2は、例えば、「1X」型である。例えば、レゾルバ2を、基準周波数frefを用いて励磁すると、モータ3が停止している場合には、基準周波数frefと励磁周波数が等しくなる。モータ3が回転していると、励磁周波数は、回転周波数に依存して変化する。
仮に、上記の各トランスの励磁周波数仕様を(fref±Δf)(Hz)とした場合、励磁周波数がその仕様内に収まるように制御することで、各トランスが過負荷状態で利用されることを制限できる。
【0050】
例えば、同グラフから読み取れる運転範囲は、基準周波数を中心にして規定される±6,000rpmになる。
【0051】
図4に例示するレゾルバ2は、「1X」型と「NX」型とである。これを対比すると、「NX」型のグラフの傾きが「1X」型のグラフの傾きの概ねN倍になっている。各タイプについて、互いに異なる基準周波数を設定することができる。図に示す例では、fref(Hz)と、Nfref(Hz)とである。
【0052】
上記のように、軸倍角が異なると、励磁周波数の条件が異なるため、各トランスに適した周波数範囲で利用するために、リミッタ205の制限値を規定するとよい。
【0053】
(シミュレーションによる検証)
図5は、実施形態のレゾルバ位相検出系のシミュレーションの結果について説明するための図である。
【0054】
図5内の(a)と(b)に示すシミュレーションの結果は、時間の経過に伴ってモータ3の回転子速度(rad/s)を正負に振った際に、モータ3の回転子速度及びレゾルバ2の位相が正常に検出できるかを検証するためのものである。
【0055】
図5内の(a)のグラフにモータ3の回転子速度ωrm(rad/s)と、レゾルバ2の励磁角周波数ωrm_hatとを示す。
図5内の(b)のグラフにモータ3の機械角位相θrm(rad)と、レゾルバ2の位相θrm_hatとを示す。
【0056】
時刻t1までモータ3の回転が停止した状態にある。
時刻t1から時刻t2まで、モータ3の回転子速度ωrm(rad/s)を所定の変化率で増加させる。これに伴い、レゾルバ2の励磁角周波数ωrm_hatが、回転子速度ωrmに合わせて増加する。さらに、モータ3の機械角位相θrm(rad)と、レゾルバ2の位相θrm_hatが、同様の変化の傾向し、モータ3の回転子が回転状態にある。
【0057】
時刻t2から時刻t3まで、モータ3の回転子速度ωrm(rad/s)を所定の値に固定する。これに伴い、レゾルバ2の励磁角周波数ωrm_hatが、回転子速度ωrmと同じ値の固定値を示す。さらに、モータ3の機械角位相θrm(rad)と、レゾルバ2の位相θrm_hatが、同様の変化の傾向し、モータ3の回転子が定速で回転状態にある。
【0058】
時刻t3から時刻t4まで、モータ3の回転子速度ωrm(rad/s)を所定の変化率で減少させる。これに伴い、レゾルバ2の励磁角周波数ωrm_hatが、回転子速度ωrmに合わせて減少する。さらに、モータ3の機械角位相θrm(rad)と、レゾルバ2の位相θrm_hatが、同様の変化の傾向し、モータ3の回転子の回転速度が徐々に低下している。
【0059】
時刻t4から時刻t5まで、時刻t3から時刻t4までと同様に、モータ3の回転子速度ωrm(rad/s)を所定の変化率で減少させると、回転子速度ωrmが負の値をとり、時刻t4までの回転方向と逆の方向に回転し始める。
【0060】
時刻t5から時刻t6まで、時刻t2から時刻t3までと同様に、モータ3の回転子速度ωrm(rad/s)を所定の値に固定する。この時の値は、上記の場合とは異なり負の値をとる。これに伴い、レゾルバ2の励磁角周波数ωrm_hatが、回転子速度ωrmと同じ大きさの負の固定値を示す。さらに、モータ3の機械角位相θrm(rad)と、レゾルバ2の位相θrm_hatが、同様の変化の傾向し、モータ3の回転子が定速で回転状態にある。
【0061】
時刻t6から時刻t7まで、時刻t1から時刻t2までと同様の変化率で、モータ3の回転子速度ωrm(rad/s)を増加させると、回転子速度ωrmが負の値をとっているが、その大きさが減少していることが読み取れる。時刻t7から時刻t8までの場合も、上記と同様にモータ3の機械角位相θrm(rad)と、レゾルバ2の位相θrm_hatが、同様の変化の傾向を示す。
【0062】
時刻t7になると、モータ3の回転子の回転が停止して、レゾルバ2の検出結果も同様に回転が停止した状態になる。これにより、位相も初期状態の0(rad)に戻る。
【0063】
このシミュレーションの結果から、レゾルバ信号処理ユニット200とレゾルバ2は、速度及び位相を正しく検出することが分かる。
【0064】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、レゾルバ信号処理装置100は、偏差算出ユニット201と、PI制御器204と、積分器206とを備える。偏差算出ユニット201は、レゾルバ2が励磁信号に応じて出力する信号として、振幅変調されたA相の信号及びA相に直交するB相の信号を取得する。偏差算出ユニット201は、A相の信号に基準位相θrefに基づいた余弦値を乗算して得られた第1積と、B相の信号に基準位相θrefに基づいた正弦値を乗算して得られた第2積との偏差を算出する。PI制御器204は、第1積分演算を含み、前記偏差をゼロに収束させるように規定された比例積分演算を実施する。積分器206は、PI制御器204による比例積分演算の結果から生成される値を積分する第2積分演算を実施して、第2積分演算の結果をレゾルバ2の位相情報として出力する。これにより、レゾルバ2の出力信号から、簡易な方法でレゾルバ2の位相情報を抽出することができる。
【0065】
このようなレゾルバ信号処理装置100の偏差算出ユニット201は、レゾルバ2が励磁信号に応じて出力する信号として、sinθ0で振幅変調されたA相の信号及びcosθ0で振幅変調されたB相の信号を取得して、上記の偏差を算出してもよい。
【0066】
トラッキングループ内に設けられたリミッタ205は、励磁角周波数ωexが所定の制限値を超えた時に励磁角周波数ωexを制限する。これにより、レゾルバ2からの信号にノイズが重畳した場合であっても、レゾルバ2の励磁位相θexの検出値に与える影響を抑えることができ、かつ、レゾルバ2が所望の回転数よりも高速に回転することを抑制しつつ、応答性や安定性を損なわず実用的性能の優れたレゾルバの位相検出が可能になる。
【0067】
インバータ4が、レゾルバ信号処理装置100によって生成された位相の推定値に基づいてモータ3を駆動することにより、ドライブ装置1は、モータ3における位置制御の精度を高めることができる。
【0068】
以上説明した実施形態のレゾルバ信号処理ユニット200の各機能部の一部又は全部は、例えば、コンピュータの記憶部(メモリなど)に記憶されたプログラム(コンピュータプログラム、ソフトウェアコンポーネント)がコンピュータのプロセッサ(ハードウェアプロセッサ)によって実行されることで実現されるソフトウェア機能部である。なお、制御器30の各機能部の一部又は全部は、例えば、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなハードウェアによって実現されてもよく、或いはソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0069】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、実施形態の構成は、上記例に限定されない。例えば、各実施形態の構成は、互いに組み合わせて実施されてもよい。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0071】
例えば、実施形態のレゾルバは、二相励磁二相出力型に制限されることなく、レゾルバ信号処理装置100の一部を変更して一相励磁二相出力型又は二相励磁一相出力型のレゾルバに適用してもよい。
【0072】
上記において、リミッタ205が加算器211から供給される励磁角周波数補償値ωex_compを、所望の範囲の値に制限するものと説明したが、これに代えて加算器211を設けない場合には、リミッタ205は、励磁角周波数ωexを処理の対象にして、励磁角周波数ωexを所望の範囲の値に制限するようにしてもよい。
実施形態の一態様のレゾルバ信号処理装置は、偏差算出ユニットと、PI演算ユニットと、積分演算ユニットとを備える。偏差算出ユニットは、前記A相の信号に基準位相θrefに基づいた余弦値を乗算して得られた第1積と、前記B相の信号に前記基準位相θrefに基づいた正弦値を乗算して得られた第2積との偏差を算出する。PI演算ユニットは、第1積分演算を含み、前記偏差をゼロに収束させるように規定された比例積分演算を前記偏差に基づいて実施する。積分演算ユニットは、前記比例積分演算の結果から生成される値を積分する第2積分演算を実施して、前記第2積分演算の結果を前記レゾルバの位相情報として出力する。