(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、第1の実施形態および第2の実施形態を以て説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜その説明を省略するものとする。特に、各実施形態に共通する汎用的な要素については、断りのない限り、第1の実施形態と第2の実施形態とでは同様であるものとする。
【0011】
従来技術における過電流検出回路および電源電流検出回路の回路構成について、
図1および
図2を以て説明する。
図1は、一般的な過電流検出回路の回路図であり、
図2は、一般的な電源電流検出回路の回路図である。
【0012】
まず、
図1について説明する。過電流検出回路は、コンバータ回路のスイッチング素子がON時に素子を流れる電流を検出し、スイッチング素子が破壊される電流に到達する前にスイッチングを停止させる回路である。過電流検出回路は、
図1に示すように、ダイオードブリッジDB1、リアクタンス素子L1、スイッチング素子Q1、シャント抵抗R1、ダイオードD1、コンデンサC1、および電流検出部100から構成され、交流電源200と接続される。
図1における破線の矢印は、測定される電流の経路を示している。ダイオードブリッジDB1は、
図1の薄い色の線で示される矩形部のように、4つのダイオードがブリッジ構造を形成して構成される。電流検出部100は、2つの端子を備え、各端子はシャント抵抗R1の両端に接続される。これによって、電流検出部100は、スイッチング素子Q1がON時に流れる電流を検出できる。
【0013】
次に、
図2について説明する。電源電流検出回路は、商用電源の負荷電流を検出し、これによってコンバータ回路のスイッチングの制御を行うことができる。電源電流検出回路は、
図2に示すように、ダイオードブリッジDB1、リアクタンス素子L1、スイッチング素子Q1、シャント抵抗R2、ダイオードD1、コンデンサC1、電流検出部100から構成され、交流電源200と接続される。
図2における破線の矢印は、測定される電流の経路を示している。
図1と同様に、電流検出部100は、2つの端子を備え、各端子がシャント抵抗R2の両端に接続される。これによって、電流検出部100は、交流電源200の負荷電流を検出できる。
【0014】
空気調和装置は、
図1や
図2に示した各種の電流検出回路を備え、種々の制御を行う。ここで、
図1の過電流検出回路と、
図2の電源電流検出回路とを同じ回路基板で構成する場合、すなわち、回路基板を共通化する場合について考える。
図1および
図2は、使用する部品が共通し、また、電流検出部100についても同一の構成である。しかしながら、
図1と
図2とでは、電流を測定する位置、電流が流れる経路や方向が異なる。そのため、単に
図1と
図2の構成を組み合わせただけでは共通化できず、制御基板やマイコンポートなどによって、電流検出部100の端子の正負を適切に調整する処理が必要となり、基板が大規模になり、コストの増大を招くこととなる。そこで、以下に説明する第1の実施形態または第2の実施形態に示す構成とすることで、過電流検出回路の回路基板と、電源電流検出回路の回路基板とを共通化することができる。
【0015】
まず、第1の実施形態について説明する。
図3は、第1の実施形態における回路基板構成を示す図である。第1の実施形態の回路基板は、
図3に示すように、ダイオードブリッジDB1、リアクタンス素子L1、スイッチング素子Q1、ダイオードD1、コンデンサC1、電流検出部100の各部品を配置する配置部と、交流電源200に接続される端子とを備えて構成される。また、第1の実施形態の回路基板は、抵抗配置部R1,R2、ジャンパ配置部JP1〜JP4を備えて構成される。
【0016】
抵抗配置部R1,R2は、抵抗器の実装が可能な1対の導体ランドパターンを有し、半田付けなどによって導体ランドパターン間に抵抗器を実装することができる。また、抵抗配置部R1,R2には、有限の抵抗値を持つ抵抗器以外にも、ジャンパ線のような導体やいわゆるゼロオーム抵抗などを実装することができ、これによって導体ランドパターン間を電気的に短絡(ショート)することができる(以下では、ジャンパ線やゼロオーム抵抗などの専ら電気的な短絡の用に供される部品を総称して「短絡部品」として参照する)。なお、説明する実施形態における用語「導体ランドパターン」は、部品の取り付けに用いられる導体のパターンを指し、例えば、表面実装用のパッドやスルーホール基板における部品取り付け穴などが挙げられる。
【0017】
ジャンパ配置部JP1〜JP4は、短絡部品の実装が可能な1対の導体ランドパターンを有し、短絡部品の実装の有無によって、導体ランドパターン間の電気的な短絡(ショート)および開放(オープン)を切り替えることができる。すなわち、ジャンパ配置部JP1〜JP4は、短絡と開放とを選択的に切り替えることができる切替部として機能する。
【0018】
第1の実施形態における回路基板は、各部品が
図3に示すように電気的に接続される配線パターンを有する。ここで、第1の実施形態における回路基板の詳細な配線パターンについて、
図4を以て説明する。
図4は、第1の実施形態における回路基板構成の詳細を説明する図である。
【0019】
第1の実施形態における回路基板は、
図4(a)の太線で示すように、ジャンパ配置部JP1の一方の導体ランドパターンと、ジャンパ配置部JP3の一方の導体ランドパターンと、電流検出部100の+端子とが接続される配線パターンを備える。
【0020】
また、第1の実施形態における回路基板は、
図4(b)の太線で示すように、ジャンパ配置部JP2の一方の導体ランドパターンと、ジャンパ配置部JP4の一方の導体ランドパターンと、電流検出部100の−端子とが接続される配線パターンを備える。
【0021】
また、第1の実施形態における回路基板は、
図4(c)の太線で示すように、ジャンパ配置部JP1の他方の導体ランドパターンと、ジャンパ配置部JP2の他方の導体ランドパターンと、抵抗配置部R1の導体ランドパターンとが接続される配線パターンを備える。
【0022】
また、第1の実施形態における回路基板は、
図4(d)の太線で示すように、ジャンパ配置部JP3の他方の導体ランドパターンと、ジャンパ配置部JP4の他方の導体ランドパターンと、抵抗配置部R2の導体ランドパターンとが接続される配線パターンを備える。
【0023】
図3および
図4に示す配線パターンを備える回路基板とすることで、過電流検出回路の回路基板と電源電流検出回路の回路基板とを共通化できる。したがって、
図3に示す構成の回路基板において、抵抗配置部R1,R2およびジャンパ配置部JP1〜JP4への、抵抗器や短絡部品の実装の有無を適切に組み合わせることで、過電流検出回路として動作する回路とするか、電源電流検出回路として動作する回路とするかを選択することができる。
【0024】
そこで、第1の実施形態の回路基板を用いて構成される過電流検出回路および電源電流検出回路について、
図5を以て説明する。
図5は、第1の実施形態の回路基板において過電流検出回路および電源電流検出回路を構成した回路図である。
図5(a)は、過電流検出回路の構成を、
図5(b)は、電源電流検出回路の構成を、それぞれ示している。なお、以下の
図5の説明においては、下記の表1を適宜参照するものとする。表1は、過電流検出回路構成時および電源電流検出回路構成時における、抵抗配置部R1,R2およびジャンパ配置部JP1〜JP4の状態を示す表である。
【0026】
第1の実施形態の回路基板において過電流検出回路を構成する場合には、
図5(a)および表1に示すような構成とする。すなわち、抵抗配置部R1にシャント抵抗を実装し、抵抗配置部R2に短絡部品を実装して導体ランドパターン間を電気的に短絡する。また、ジャンパ配置部JP1およびJP4に短絡部品を実装して、導体ランドパターン間を電気的に短絡し、ジャンパ配置部JP2およびJP3には短絡部品を実装せず、導体ランドパターン間を電気的に開放する。これによって、スイッチング素子Q1がONである場合に、
図1に示した過電流検出回路に相当する回路が構成され、電流検出部100は、
図5(a)の破線の矢印で示される経路の電流を測定することができる。
【0027】
一方で、第1の実施形態の回路基板において電源電流検出回路を構成する場合には、
図5(b)および表1に示すような構成とする。すなわち、抵抗配置部R1に短絡部品を実装して導体ランドパターン間を電気的に短絡し、抵抗配置部R2にシャント抵抗を実装する。また、ジャンパ配置部JP2およびJP3に短絡部品を実装して、導体ランドパターン間を電気的に短絡し、ジャンパ配置部JP1およびJP4には短絡部品を実装せず、導体ランドパターン間を電気的に開放する。これによって、スイッチング素子Q1がOFFである場合に、
図2に示した電源電流検出回路に相当する回路が構成され、電流検出部100は、
図5(b)の破線の矢印で示される経路の電流を測定することができる。
【0028】
このように、第1の実施形態において示した回路構成とすることで、電流の極性と、電流の経路とを部品の実装の有無によって選択でき、過電流検出回路および電源電流検出回路の回路基板を共通化できる。したがって、同一の回路基板において部品の実装の有無によって、過電流検出回路とするか、電源電流検出回路とするかを選択できる。また、回路基板を共通化することによって、回路基板の開発コストや評価時間などを低減できる。
【0029】
ここまで、第1の実施形態について説明した。次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態における回路基板構成を示す図である。第2の実施形態の回路基板は、
図6に示すように、ダイオードブリッジDB1、リアクタンス素子L1、スイッチング素子Q1、ダイオードD1、コンデンサC1、シャント抵抗R1、電流検出部100の各部品を配置する配置部と、交流電源200に接続される端子とを備えて構成される。また、第2の実施形態の回路基板は、ジャンパ配置部JP1〜JP6を備えて構成される。なお、ジャンパ配置部JP1〜JP6は、第1の実施形態において説明したものと同様であるため、詳細は省略する。
【0030】
第2の実施形態における回路基板は、各部品が
図6に示すように電気的に接続される配線パターンを有する。ここで、第2の実施形態における回路基板の詳細な配線パターンについて、
図7および
図8を以て説明する。
図7および
図8は、第2の実施形態における回路基板構成の詳細を説明する図である。
【0031】
第2の実施形態における回路基板は、
図7(a)の太線で示すように、ジャンパ配置部JP1の一方の導体ランドパターンと、ジャンパ配置部JP3の一方の導体ランドパターンと、電流検出部100の+端子とが接続される配線パターンを備える。
【0032】
また、第2の実施形態における回路基板は、
図7(b)の太線で示すように、ジャンパ配置部JP2の一方の導体ランドパターンと、ジャンパ配置部JP4の一方の導体ランドパターンと、電流検出部100の−端子とが接続される配線パターンを備える。
【0033】
また、第2の実施形態における回路基板は、
図8(a)の太線で示すように、ジャンパ配置部JP1の他方の導体ランドパターンと、ジャンパ配置部JP2の他方の導体ランドパターンと、抵抗配置部R1の一方の導体ランドパターンと、ジャンパ配置部JP5の一方のランドとが接続される配線パターンを備える。
【0034】
また、第2の実施形態における回路基板は、
図8(b)の太線で示すように、ジャンパ配置部JP3の他方の導体ランドパターンと、ジャンパ配置部JP4の他方の導体ランドパターンと、抵抗配置部R1の他方の導体ランドパターンと、ジャンパ配置部JP6の一方のランドとが接続される配線パターンを備える。
【0035】
また、第2の実施形態における回路基板は、
図8(c)の太線で示すように、ジャンパ配置部JP5の他方の導体ランドパターンと、ジャンパ配置部JP6の他方の導体ランドパターンとが接続される配線パターンを備える。
【0036】
図6〜8に示す配線パターンを備える回路基板とすることで、過電流検出回路の回路基板と電源電流検出回路の回路基板とを共通化できる。したがって、
図6に示す構成の回路基板において、ジャンパ配置部JP1〜JP6への短絡部品の実装の有無を適切に組み合わせることで、過電流検出回路として動作する回路とするか、電源電流検出回路として動作する回路とするかを選択することができる。
【0037】
そこで、第2の実施形態の回路基板を用いて構成される過電流検出回路および電源電流検出回路について、
図9を以て説明する。
図9は、第2の実施形態の回路基板において過電流検出回路および電源電流検出回路を構成した回路図である。
図9(a)は、過電流検出回路の構成を、
図9(b)は、電源電流検出回路の構成を、それぞれ示している。なお、以下の
図9の説明においては、下記の表2を適宜参照するものとする。表2は、過電流検出回路構成時および電源電流検出回路構成時における、ジャンパ配置部JP1〜JP6の状態を示す表である。
【0039】
第2の実施形態の回路基板において過電流検出回路を構成する場合には、
図9(a)および表2に示すような構成とする。すなわち、ジャンパ配置部JP1、JP4およびJP6に短絡部品を実装して、導体ランドパターン間を電気的に短絡し、ジャンパ配置部JP2、JP3およびJP5には短絡部品を実装せず、導体ランドパターン間を電気的に開放する。これによって、スイッチング素子Q1がONである場合に、
図1に示した過電流検出回路に相当する回路が構成され、電流検出部100は、
図9(a)の破線の矢印で示される経路の電流を測定することができる。
【0040】
一方で、第2の実施形態の回路基板において電源電流検出回路を構成する場合には、
図9(b)および表2に示すような構成とする。すなわち、ジャンパ配置部JP2、JP3およびJP5に短絡部品を実装して、導体ランドパターン間を電気的に短絡し、ジャンパ配置部JP1、JP4およびJP6には短絡部品を実装せず、導体ランドパターン間を電気的に開放する。これによって、スイッチング素子Q1がOFFである場合に、
図2に示した電源電流検出回路に相当する回路が構成され、電流検出部100は、
図9(b)の破線の矢印で示される経路の電流を測定することができる。
【0041】
このように、第2の実施形態において示した回路構成とすることで、電流の極性と、電流の経路とを部品の実装の有無によって選択でき、過電流検出回路および電源電流検出回路の回路基板を共通化できる。したがって、同一の回路基板において部品の実装の有無によって、過電流検出回路とするか、電源電流検出回路とするかを選択できる。また、回路基板を共通化することによって、回路基板の開発コストや評価時間などを低減できる。さらに、第2の実施形態に係る回路基板によれば、シャント抵抗を配置する抵抗配置部を1箇所にできるため、第1の実施形態に係る回路基板よりも省スペースな構成とすることができる。
【0042】
以上、説明した本発明の各実施形態によれば、複数の機能を選択できる回路基板、この回路基板を用いた回路およびこの回路を備える空気調和装置を提供することができる。
【0043】
なお、第1の実施形態および第2の実施形態における回路基板は、特に実施形態を限定するものではないが、一般的なプリント基板とすることができる。また、部品を実装する形態についても特に限定されず、表面実装やスルーホール実装など、任意の形態を適用することができる。したがって、実装される部品も特に限定されず、チップ部品やリード部品などを任意に選択して用いることができる。
【0044】
以上、本発明について各実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、当業者が推考しうる実施態様の範囲内において、本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【解決手段】複数の機能を選択できる回路基板において、抵抗配置部R1、R2と、ジャンパ配置部JP1〜JP4と、ジャンパ配置部JP1及びジャンパ配置部JP3の第1の導体ランドパターンと電流検出部100の+端子とが接続される配線パターンと、ジャンパ配置部JP2及びジャンパ配置部JP4の第1の導体ランドパターンと電流検出部100の−端子とが接続される配線パターンと、ジャンパ配置部JP1及びジャンパ配置部JP2の第2の導体ランドパターンと抵抗配置部R1の導体ランドパターンとが接続される配線パターンと、ジャンパ配置部JP3及びジャンパ配置部JP4の第2の導体ランドパターンと抵抗配置部R2の導体ランドパターンとが接続される配線パターンとを備える。