(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、庫内温度が所定温度より低いとき、前記加熱室を所定時間加熱する「予熱ステージ」を前記「初期調理ステージ」の前段で行うように構成された、請求項1に記載の加熱調理器。
前記制御部は、前記「初期調理ステージ」の前記「強加熱温調制御」において、前記スチーム加熱部による蒸気の噴射量を最大とし、前記循環ファンにより循環動作を実行するよう構成された、請求項1または2に記載の加熱調理器。
前記制御部は、前記「初期調理ステージ」および前記「本調理ステージ」におけるそれぞれの前記「中加熱温調制御」において、前記スチーム加熱部による蒸気の噴射量を制限するよう構成された、請求項1から3のいずれか一項に記載の加熱調理器。
前記制御部は、前記「初期調理ステージ」および前記「本調理ステージ」におけるそれぞれの前記「弱加熱温調制御」において、前記循環ファンにより循環動作のみを実行するよう構成された、請求項1から4のいずれか一項に記載の加熱調理器。
前記制御部は、前記「本調理ステージ」の前記「強加熱温調制御」における蒸気の噴射量が、前記「初期調理ステージ」の前記「強加熱温調制御」における蒸気の噴射量より少なく設定し、且つ前記「本調理ステージ」の前記「中加熱温調制御」における蒸気の噴射
量より多く設定した、請求項1から5のいずれか一項に記載の加熱調理器。
前記「本調理ステージ」の前記「強加熱温調制御」における蒸気の噴射量が、前記「初期調理ステージ」の前記「強加熱温調制御」における蒸気の噴射量より少なく設定され、且つ前記「本調理ステージ」の前記「中加熱温調制御」における蒸気の噴射量より多く設定された、請求項9から13のいずれか一項に記載のスチーム加熱方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように肉を柔らかく美味しくするためには、タンパク質における「ミオシン」と「アクチン」の変性温度を考慮して、食品温度を、特定の温度に維持して「低温スチーム調理」を行う必要がある。陸上動物の肉におけるタンパク質の「ミオシン」の変性温度は50〜60℃の範囲であり、「アクチン」の変性温度は66〜73℃の範囲である。また、食品の衛生管理上において、鶏肉の場合には63℃以上で長時間加熱することが定められている。
【0008】
このため、肉を柔らかく美味しくし、且つ衛生上の問題を解消させるためには、好ましくは63〜64℃の非常に狭い温度範囲に庫内温度を維持しつつ「低温スチーム調理」を行う必要がある。また、「低温スチーム調理」を用いて食品を加熱する場合には、加熱調理する食品により最適なスチーム加熱環境(庫内温度および調理時間)が異なっている。例えば、キュウリ、レタス、ネギにおいては庫内温度が50〜60℃、調理時間が10〜15分であり、トマトにおいては庫内温度が60〜70℃、調理時間が15〜20分であり、カボチャにおいては庫内温度が70〜80℃、調理時間が20〜30分であるというように、野菜の中でもその種類に応じて「低温スチーム調理」における加熱調理時の最適な庫内温度および調理時間が異なっている。
【0009】
上記のように、「低温スチーム調理」を用いて食品を美味しくさせるためには、精度の高い温度調整を行うことが必要である。しかしながら、加熱調理器においては、スチーム加熱の機能を用いて、庫内温度を所望の温度に維持することは困難であった。特に、加熱室内に蒸気を噴射しつつ庫内温度の調整を行うために、加熱室の全体の庫内温度を所望の温度に保つことは非常に困難であった。
【0010】
本発明は、調理内容に応じて庫内温度を所望温度に確実に維持して、最適な「低温スチーム調理」を行うことができる加熱調理器を提供すること、および加熱調理器によるスチーム加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の加熱調理器は、
被加熱物を収容する加熱室、
前記被加熱物に対する調理内容を設定するための操作部、
前記加熱室内に蒸気を噴射して前記被加熱物をスチーム加熱し、蒸気の噴射量を変更できる構成を有するスチーム加熱部、
前記加熱室内の空気を循環させる循環動作を行う循環ファン、
前記加熱室の内部温度を検出する庫内温度センサ、および
前記庫内温度センサにより検出された庫内温度および前記操作部により設定された調理内容に基づいて、前記スチーム加熱部おけるスチーム加熱動作および前記循環ファンの循環動作を制御する制御部、を備えた加熱調理器であって、
前記操作部において調理内容として「低温スチーム調理」が設定されたとき、前記制御部は、少なくとも「初期調理ステージ」および「本調理ステージ」を実行するよう構成されており、
前記「初期調理ステージ」および前記「本調理ステージ」のそれぞれにおいて、前記庫内温度センサにより検出された前記庫内温度に基づいて、第1温調制御レベルおよび前記第1温調制御レベルより温度の高い第2温調制御レベルを閾値として、前記庫内温度が前記第1温調制御レベル未満のとき、前記スチーム加熱部のスチーム加熱動作と前記循環ファンの循環動作に対して「強加熱温調制御」を行い、前記庫内温度が前記第1温調制御レベル以上で前記第2温調制御レベル未満のとき、前記スチーム加熱部のスチーム加熱動作と前記循環ファンの循環動作に対して「中加熱温調制御」を行い、前記庫内温度が前記第2温調制御レベル以上のとき、前記スチーム加熱部のスチーム加熱動作と前記循環ファンの循環動作に対して「弱加熱温調制御」を行うように構成され、
前記「強加熱温調制御」、前記「中加熱温調制御」、前記「弱加熱温調制御」の順に前記加熱室に対するスチーム加熱動作の加熱出力が低くなるよう構成されている。
【0012】
本発明の一態様の加熱調理器におけるスチーム加熱方法は、
被加熱物を収容する加熱室と、
前記被加熱物に対する調理内容を設定するための操作部と、
前記加熱室内に蒸気を噴射して前記被加熱物をスチーム加熱し、蒸気の噴射量を変更できる構成を有するスチーム加熱部と、
前記加熱室内の空気を循環させる循環動作を行う循環ファンと、
前記加熱室の内部温度を検出する庫内温度センサと、
前記庫内温度センサにより検出された庫内温度および前記操作部により設定された調理内容に基づいて、前記スチーム加熱部おけるスチーム加熱動作および前記循環ファンの循環動作を制御する制御部と、を備えた加熱調理器におけるスチーム加熱方法であって、
前記操作部において調理内容として「低温スチーム調理」が設定されたとき、少なくとも「初期調理ステージ」および「本調理ステージ」を実行するステップを含み、
前記「初期調理ステージ」および前記「本調理ステージ」のそれぞれのステップにおいて、
前記庫内温度センサにより検出された前記庫内温度に基づいて、第1温調制御レベルおよび前記第1温調制御レベルより温度の高い第2温調制御レベルを閾値として、前記庫内温度が前記第1温調制御レベル未満のとき、前記スチーム加熱部のスチーム加熱動作と前記循環ファンの循環動作に対して「強加熱温調制御」を行い、
前記庫内温度が前記第1温調制御レベル以上で前記第2温調制御レベル未満のとき、前記スチーム加熱部のスチーム加熱動作と前記循環ファンの循環動作に対して「中加熱温調制御」を行い、および
前記庫内温度が前記第2温調制御レベル以上のとき、前記スチーム加熱部のスチーム加熱動作と前記循環ファンの循環動作に対して「弱加熱温調制御」を行うと共に、
前記「強加熱温調制御」、前記「中加熱温調制御」、前記「弱加熱温調制御」の順に前記加熱室に対するスチーム加熱動作の加熱出力が低くなるよう設定されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、調理内容に応じて庫内温度を所望温度に確実に維持して、最適な「低温スチーム調理」を行うことができる加熱調理器およびスチーム加熱方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず始めに、本発明の加熱調理器および加熱調理器におけるスチーム加熱方法の各種態様について説明する。
【0016】
本発明に係る第1の態様の加熱調理器は、
被加熱物を収容する加熱室、
前記被加熱物に対する調理内容を設定するための操作部、
前記加熱室内に蒸気を噴射して前記被加熱物をスチーム加熱し、蒸気の噴射量を変更できる構成を有するスチーム加熱部、
前記加熱室内の空気を循環させる循環動作を行う循環ファン、
前記加熱室の内部温度を検出する庫内温度センサ、および
前記庫内温度センサにより検出された庫内温度および前記操作部により設定された調理内容に基づいて、前記スチーム加熱部おけるスチーム加熱動作および前記循環ファンの循環動作を制御する制御部、を備えた加熱調理器であって、
前記操作部において調理内容として「低温スチーム調理」が設定されたとき、前記制御部は、少なくとも「初期調理ステージ」および「本調理ステージ」を実行するよう構成されており、
前記「初期調理ステージ」および前記「本調理ステージ」のそれぞれにおいて、前記庫内温度センサにより検出された前記庫内温度に基づいて、第1温調制御レベルおよび前記第1温調制御レベルより温度の高い第2温調制御レベルを閾値として、前記庫内温度が前記第1温調制御レベル未満のとき、前記スチーム加熱部のスチーム加熱動作と前記循環ファンの循環動作に対して「強加熱温調制御」を行い、前記庫内温度が前記第1温調制御レベル以上で前記第2温調制御レベル未満のとき、前記スチーム加熱部のスチーム加熱動作と前記循環ファンの循環動作に対して「中加熱温調制御」を行い、前記庫内温度が前記第2温調制御レベル以上のとき、前記スチーム加熱部のスチーム加熱動作と前記循環ファンの循環動作に対して「弱加熱温調制御」を行うように構成され、
前記「強加熱温調制御」、前記「中加熱温調制御」、前記「弱加熱温調制御」の順に前記加熱室に対するスチーム加熱動作の加熱出力が低くなるよう構成されている。
【0017】
上記のように構成された第1の態様の加熱調理器は、調理内容に応じて庫内温度を所望の温度に確実に維持して、最適な「低温スチーム調理」を行うことができる。
【0018】
本発明に係る第2の態様の加熱調理器において、前記の第1の態様における前記制御部は、庫内温度が所定温度より低いとき、前記加熱室を所定時間加熱する「予熱ステージ」を前記「初期調理ステージ」の前段で行うように構成してもよい。
【0019】
本発明に係る第3の態様の加熱調理器は、前記の第1の態様または第2の態様の前記「本調理ステージ」における第1温調制御レベルが、前記「初期調理ステージ」における第1温調制御レベルより高い温度に設定され、前記「本調理ステージ」における第2温調制御レベルが、前記「初期調理ステージ」における第2温調制御レベルより高い温度に設定されてもよい。
【0020】
本発明に係る第4の態様の加熱調理器は、前記の第1の態様から第3の態様のいずれかの態様における前記制御部が、前記「初期調理ステージ」の前記「強加熱温調制御」において、前記スチーム加熱部による蒸気の噴射量を最大とし、前記循環ファンにより循環動作を実行するよう構成されてもよい。
【0021】
本発明に係る第5の態様の加熱調理器は、前記の第1の態様から第4の態様のいずれかの態様における前記制御部が、前記「初期調理ステージ」および前記「本調理ステージ」におけるそれぞれの前記「中加熱温調制御」において、前記スチーム加熱部による蒸気の噴射量を制限するよう構成されてもよい。
【0022】
本発明に係る第6の態様の加熱調理器は、前記の第1の態様から第5の態様のいずれかの態様における前記制御部が、前記「初期調理ステージ」および前記「本調理ステージ」におけるそれぞれの前記「弱加熱温調制御」において、前記循環ファンにより循環動作のみを実行するよう構成されてもよい。
【0023】
本発明に係る第7の態様の加熱調理器において、前記の第1の態様から第6の態様のいずれかの態様における前記制御部は、前記「本調理ステージ」の前記「強加熱温調制御」における蒸気の噴射量が、前記「初期調理ステージ」の前記「強加熱温調制御」における蒸気の噴射量より少なく設定し、且つ前記「本調理ステージ」の前記「中加熱温調制御」における蒸気の噴射量より多く設定してもよい。
【0024】
本発明に係る第8の態様の加熱調理器は、前記の第1の態様から第7の態様のいずれかの態様における前記制御部が、少なくとも「初期調理ステージ」および「本調理ステージ」のそれぞれにおいて前記循環ファンにより循環動作を行うように構成してもよい。
【0025】
本発明に係る第9の態様の加熱調理器は、前記の第1の態様から第8の態様のいずれかの態様における前記スチーム加熱部が、加熱出力が異なる少なくとも2種類のスチームヒータを有して、蒸気の噴射量を変更できるように構成されてもよい。
【0026】
本発明に係る第10の態様の加熱調理器におけるスチーム加熱方法は、
被加熱物を収容する加熱室と、
前記被加熱物に対する調理内容を設定するための操作部と、
前記加熱室内に蒸気を噴射して前記被加熱物をスチーム加熱し、蒸気の噴射量を変更できる構成を有するスチーム加熱部と、
前記加熱室内の空気を循環させる循環動作を行う循環ファンと、
前記加熱室の内部温度を検出する庫内温度センサと、
前記庫内温度センサにより検出された庫内温度および前記操作部により設定された調理内容に基づいて、前記スチーム加熱部おけるスチーム加熱動作および前記循環ファンの循環動作を制御する制御部と、を備えた加熱調理器におけるスチーム加熱方法であって、
前記操作部において調理内容として「低温スチーム調理」が設定されたとき、少なくとも「初期調理ステージ」および「本調理ステージ」を実行するステップを含み、
前記「初期調理ステージ」および前記「本調理ステージ」のそれぞれのステップにおいて、
前記庫内温度センサにより検出された前記庫内温度に基づいて、第1温調制御レベルおよび前記第1温調制御レベルより温度の高い第2温調制御レベルを閾値として、前記庫内温度が前記第1温調制御レベル未満のとき、前記スチーム加熱部のスチーム加熱動作と前記循環ファンの循環動作に対して「強加熱温調制御」を行い、
前記庫内温度が前記第1温調制御レベル以上で前記第2温調制御レベル未満のとき、前記スチーム加熱部のスチーム加熱動作と前記循環ファンの循環動作に対して「中加熱温調制御」を行い、および
前記庫内温度が前記第2温調制御レベル以上のとき、前記スチーム加熱部のスチーム加熱動作と前記循環ファンの循環動作に対して「弱加熱温調制御」を行うと共に、
前記「強加熱温調制御」、前記「中加熱温調制御」、前記「弱加熱温調制御」の順に前記加熱室に対するスチーム加熱動作の加熱出力が低くなるよう設定されている。
【0027】
上記のように構成された第10の態様の加熱調理器におけるスチーム加熱方法は、調理内容に応じて庫内温度を所望の温度に確実に維持して、最適な「低温スチーム調理」を行うことができる。
【0028】
本発明に係る第11の態様のスチーム加熱方法は、前記の第10の態様において、庫内温度が所定温度より低いとき、前記加熱室を所定時間加熱する「予熱ステージ」を前記「初期調理ステージ」の前段で行うステップを含むものでもよい。
【0029】
本発明に係る第12の態様のスチーム加熱方法は、前記の第10の態様または第11の態様において、前記「本調理ステージ」における第1温調制御レベルが、前記「初期調理ステージ」における第1温調制御レベルより高い温度に設定され、前記「本調理ステージ」における第2温調制御レベルが、前記「初期調理ステージ」における第2温調制御レベルより高い温度に設定されてもよい。
【0030】
本発明に係る第13の態様のスチーム加熱方法は、前記の第10の態様から第12の態様のいずれかの態様における前記「初期調理ステージ」の前記「強加熱温調制御」において、前記スチーム加熱部による蒸気の噴射量を最大とし、前記循環ファンにより循環動作が実行されてもよい。
【0031】
本発明に係る第14の態様のスチーム加熱方法は、前記の第10の態様から第13の態様のいずれかの態様の前記「初期調理ステージ」および前記「本調理ステージ」におけるそれぞれの前記「中加熱温調制御」において、前記スチーム加熱部による蒸気の噴射量が制限されてもよい。
【0032】
本発明に係る第15の態様のスチーム加熱方法は、前記の第10の態様から第14の態様のいずれかの態様の前記「初期調理ステージ」および前記「本調理ステージ」におけるそれぞれの前記「弱加熱温調制御」において、前記循環ファンにより循環動作のみが実行されてもよい。
【0033】
本発明に係る第16の態様のスチーム加熱方法は、前記の第10の態様から第15の態様のいずれかの態様の前記「本調理ステージ」の前記「強加熱温調制御」における蒸気の噴射量が、前記「初期調理ステージ」の前記「強加熱温調制御」における蒸気の噴射量より少なく設定され、且つ前記「本調理ステージ」の前記「中加熱温調制御」における蒸気の噴射量より多く設定されてもよい
【0034】
本発明に係る第17の態様のスチーム加熱方法は、前記の第10の態様から第16の態様のいずれかの態様の少なくとも「初期調理ステージ」および「本調理ステージ」のそれぞれにおいて、前記循環ファンが循環動作を継続して行ってもよい。
【0035】
以下、本発明に係る加熱調理器および加熱調理器におけるスチーム加熱方法を示す実施の形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施の形態において示される数値、形状、構成、ステップ、およびステップの順序などは、一例を示すものであり、本発明を限定するものではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0036】
以下の実施の形態の加熱調理器においては、蒸気によるスチーム加熱機能、熱風の循環によるコンベクション加熱機能、マイクロ波による高周波加熱機能、およびヒータの輻射加熱によるヒータ加熱機能を備える加熱調理器について説明するが、この構成は例示であり、本発明は、以下の実施の形態において説明する構成に限定されるものではない。本発明の加熱調理器としては、少なくともスチーム加熱機能およびコンベクション加熱機能を有する加熱調理器であれば適用でき、その構成の他に、高周波加熱機能、ヒータ加熱機能のそれぞれの機能を単独で備える加熱調理器、若しくはそれぞれの機能を組み合わせた加熱調理器、または以下の実施の形態において説明する技術的特徴と同等の技術的思想に基づいて構成される各種加熱調理器を含むものである。
【0037】
《実施の形態1》
以下、本発明に係る実施の形態1の加熱調理器について添付の図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態1の加熱調理器の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態1の加熱調理器において扉が開いた状態を示す斜視図である。
【0038】
図1および
図2に示すように、加熱調理器は、調理器本体1の内部に設けられた加熱室2の正面開口が扉3により開閉可能に構成されている。扉3の上方端部には把手3aが設けられており、把手3aを使用者が握持して扉3を回動し、加熱室2の正面開口を上開きに開閉する。加熱室2の内部は扉3の閉成により実質的に密閉状態となり、加熱室2の内部に配置された被加熱物である食品が実質的な密閉状態で加熱調理される。
【0039】
図1に示すように、加熱調理器の正面には、上開きの扉3に加熱調理の調理温度設定、調理時間設定、および被加熱物の種類などの各種調理条件を含む調理内容を設定するための操作部4が設けられている。また、加熱調理器の正面に設けられた操作部4は、各種調理条件および加熱調理中の加熱状態などを表示する表示部分などを有している。
【0040】
図2に示すように、実施の形態1の加熱調理器においては、加熱室2の内部に被加熱物である食品20が載置される調理皿5を収納できるように構成されている。調理皿5は、加熱室2の内部において上段、中段、または下段に配置できる構成である。このため、加熱室2の両側の側面壁には、調理皿5を支持することができる複数の段差(突出部6)が形成されている。
【0041】
加熱室2の内部に配置された調理皿5において、食品20を載置するための載置面には発熱体が埋設されている。発熱体は、マイクロ波を吸収して、発熱するものであり、フェライトなどが用いられている。なお、実施の形態1においては、調理皿5として発熱体を埋設した構成例で説明するが、後述するスチーム加熱における「低温スチーム調理」のシーケンスを実行する場合には、高周波加熱の機能が用いられていないため、調理皿5に発熱体が埋設した構成である必要はない。
【0042】
また、実施の形態1においては、調理皿5が加熱室2の側面壁の所定位置に形成された突出部6により支持される構成で説明するが、調理皿5が加熱室2の内部の所定の位置に配置される構成であればよく、例えば、天井壁から吊り下げる構成や、調理皿に下方に突出する足を設けて加熱室2の底面に載置する構成でもよい。実施の形態1の加熱調理器において用いられる調理皿5の載置面には凹凸の複数の溝が形成されており、食品加熱時に生じる食品から出る水分(食品におけるアクおよび臭み)が溝に入り、食品に直接触れることが防止されている。
【0043】
図3は、実施の形態1の加熱調理器における加熱手段(加熱部)などの配置構成を模式的に記載した正面断面図である。実施の形態1の加熱調理器における加熱手段(加熱部)としては、水蒸気により加熱室内部の食品をスチーム加熱するスチーム加熱ユニット(スチーム加熱部)10、加熱室2の内部に熱風を循環させて熱風循環加熱する熱風循環ユニット(熱風循環部)11、加熱室2の天井壁を含む部分に設けられて輻射加熱する平面ヒータユニット(平面ヒータ部)12、およびマイクロ波を放射して誘電加熱する高周波加熱ユニット(高周波加熱部)13、が設けられている。
【0044】
スチーム加熱ユニット10は、調理器本体1の内部で加熱室2の外側に設けられた貯水室14を有し、貯水室14の内部の水が2種類のスチームヒータ(16、17)により高温度に加熱されて水蒸気が生成される構成である。生成された水蒸気は、加熱室2の上部に形成された噴出口22(
図2参照)から加熱室内部に集中的に噴射されて、被加熱物である食品がスチーム加熱される。実施の形態1におけるスチーム加熱ユニット10においては、アルミダイカストにより形成された貯水室14の側面に第1スチームヒータ16および第2スチームヒータ17が埋設されている。第1スチームヒータ16は出力650Wのシーズヒータで構成されており、第2スチームヒータ17を出力350Wのシーズヒータで構成されている。実施の形態1における具体的な構成については、本発明の構成を特定するものではないが、少なくとも2つのスチームヒータ(16、17)を有し、第1スチームヒータ16の出力が第2スチームヒータ17を出力より大きく設定することは本発明に含んでもよい。このように構成されたスチーム加熱ユニット10においては、加熱出力が異なり、蒸気の噴射量が変更可能なスチーム加熱機能を用いて加熱調理することができる。
【0045】
熱風循環ユニット11は、加熱室2の背面側に設けられた循環ファン18により加熱室2から吸引した空気を、コンベクションヒータ18により加熱して熱風を形成し、その熱風を加熱室2の内部に戻して、加熱室2の内部において熱風循環加熱を行う構成である。加熱室2の天井壁の一部を構成するように設けられた平面ヒータユニット12は、内側と外側に2分割された平面ヒータ21を備え、調理条件などを含む調理内容に応じて適宜切替えられ得る構成である。高周波加熱ユニット11は、マイクロ波を放射するアンテナが加熱室2の底面壁下に設けられており、高周波発生装置、例えばマグネトロンにより形成されたマイクロ波が、導波管を通り指向性を有するアンテナに送られて、加熱室2の内部に対して所望の方向に放射される構成である。
【0046】
上記のように、実施の形態1の加熱調理器においては複数の加熱手段(加熱部)が設けられており、使用者が所望の加熱部を選択することにより、または使用者が調理内容(調理条件を含む)を選択することにより、適切な加熱部が選択される構成である。使用者が加熱調理器の加熱室2の内部に被加熱物である食品を配置して、扉3を閉じ、操作部4において加熱部、調理内容などを設定して開始ボタンを押圧することにより調理動作が開始される。
【0047】
なお、加熱室2の壁面には加熱室2の内部を照らすための庫内灯が設けられている。また、扉3により閉じられた加熱室2の内部状態を確認できるように、扉3には耐熱性の透明なガラスが設けられている。
【0048】
実施の形態1の加熱調理器における温度検出手段としては、加熱室2の庫内温度(加熱室内温度)を検出するための庫内温度センサ7、例えばサーミスタが加熱室2の天井壁の奥側に突設されている。また、実施の形態1の加熱調理器においては、加熱室2内の被加熱物などの温度を検出するために、赤外線センサ(IRセンサ)8が設けられている。赤外線センサ8は、加熱室2の右側の側面壁の略中央上部に設けられており、加熱室2の内部における特定の温度検出対象の温度を検出する構成である。
【0049】
なお、実施の形態1の加熱調理器においては、赤外線センサ8を加熱室2の右側の側面壁の略中央上部に設けた構成で説明するが、赤外線センサ8の配設位置としては加熱室2の内部の特定の温度検出対象の温度を検出できる配置であればよく、実施の形態1の配設位置に限定されるものではない。
【0050】
更に、実施の形態1の加熱調理器においては、平面ヒータユニット12が設けられた天井壁の温度を検出するための温度検出手段として天井壁温度センサ9が設けられている。天井壁温度センサ9は天井壁の上側に設けられており、平面ヒータユニット12の近傍に設けられている。
【0051】
実施の形態1の加熱調理器においては、温度検出手段からの各種の温度検出データが調理器本体1に設けられた制御部(例えば、マイクロコンピュータ)15に入力される構成である。実施の形態1の加熱調理器は、制御部15が操作部4で設定された調理内容などに基づいて加熱調理シーケンスを特定して、被加熱物(食品)に対して最適な調理を行うように構成されている。
【0052】
[低温スチーム調理]
上記のように構成された実施の形態1の加熱調理器において、「低温スチーム調理」の動作について具体的に説明する。
【0053】
実施の形態1の加熱調理器において、「低温スチーム調理」を用いてデリケート(繊細)な温度調整を必要とする食品として「温泉卵」を作る場合について説明する。「温泉卵」は、「ゆで卵」の調理の一種であり、卵黄が半熟状態であり、卵白が半凝固状態の「ゆで卵」である。この「温泉卵」を作るときに「低温スチーム調理」を用いた場合の動作について説明する。
【0054】
一般的に、卵黄は65℃で凝固を開始し、70℃で完全に凝固する。一方、卵白は58℃で凝固を開始し、80℃で完全に凝固する。そのために、加熱室2の庫内温度を68〜72℃の温度範囲に維持することにより、加熱室2の内部に配置された卵の黄身の温度が、65〜69℃の温度範囲に維持されて、卵黄が半熟であり、卵白が柔らかい「温泉卵」が作成される。
【0055】
図4は、実施の形態1の加熱調理器において、「低温スチーム調理」により「温泉卵」を作るときの加熱室2の庫内温度推移を示すグラフである。
図4において、縦軸が庫内温度[℃]であり、横軸が時間[秒]であり、庫内温度を68〜72℃の温度範囲に制御しているときの温度推移を示している。なお、加熱室2の庫内温度を略68〜72℃の温度範囲とすることにより、加熱室2の内部に配置された食品温度は略65〜69℃の温度範囲に維持される。実施の形態1においては、庫内温度を5℃刻みの制御範囲としており、食品温度の制御範囲としても基本的には5℃刻みとなる。
【0056】
以下、実施の形態1の加熱調理器において、操作部4で調理内容として「低温スチーム調理」が設定されたときの動作について説明する。「低温スチーム調理」においては、最初に、加熱室2の庫内温度をスチーム加熱を行うための最低温度以上の温度に上昇させる「予熱ステージP1」が実行される。この「予熱ステージP1」は、スチーム加熱において加熱室内に噴射された蒸気が凝結しない温度に加熱室2を予め加熱するものである。「予熱ステージP1」においては、加熱室2がスチーム加熱を行うための最低温度以上の温度となるように、熱風循環ユニット11および/または平面ヒータユニット12が所定時間駆動される。
【0057】
「予熱ステージP1」における加熱動作は、予め設定された所定時間実行されて、加熱室2がスチーム加熱を行うための最低温度以上の温度と達すると、「初期調理ステージP2」および「本調理ステージP3」の2段階のスチーム加熱が実行される。実施の形態1においては、「初期調理ステージP2」および「本調理ステージP3」の2段階のスチーム加熱を行う構成で説明するが、本発明としては、加熱される食品、調理内容などに応じて適宜複数段階のスチーム加熱を行うように構成してもよい。
【0058】
実施の形態1の加熱調理器において、それぞれの調理ステージ(P2、P3)では2つの温調制御レベル(A、B)を閾値として使用して、庫内温度の調整が行われている。「初期調理ステージP2」においては、第1温調制御レベルA1および第2温調制御レベルB1が2つの閾値として用いられている。また、「本調理ステージP3」においては、第1温調制御レベルA2および第2温調制御レベルB2が2つの閾値として用いられている。ここで使用される庫内温度は、庫内温度センサ7により検出された検出温度を庫内状況(例えば、天井壁温度センサなどにより検出された加熱室温度情報など)を考慮して較正された温度であり、加熱室2の内部における調理温度である。
【0059】
図5Aおよび
図5Bは、実施の形態1の加熱調理器において、「低温スチーム調理」における各ステージで用いられる駆動対象の加熱部、および調理時間に関する具体的な一例を示す表である。
図5Aおよび
図5Bに示すように、実施の形態1における「低温スチーム調理」において制御部15の駆動対象としては、少なくとも平面ヒータユニット12の平面ヒータ21、熱風循環ユニット11の循環ファン18とコンベクションヒータ19と、スチーム加熱ユニット10の第1スチームヒータ16と第2スチームヒータ17である。なお、
図5Aは、「予熱ステージP1」および「初期調理ステージP2」における温調制御動作を示しており、
図5Bは、「本調理ステージP3」における温調制御動作を示している。
【0060】
図6は、実施の形態1の加熱調理器において、「低温スチーム調理」を実行(スチーム加熱)するときの状態を模式的に示す図であり、
図6の(a)がスチーム加熱ユニット10の第1スチームヒータ16が稼働(オン状態)しているときであり、
図6の(b)が第1スチームヒータ16および第2スチームヒータ17の両方が稼働(オン状態)しているときの状態を模式的に示している。
【0061】
[低温スチーム調理における温調制御動作]
「低温スチーム調理」における温調制御動作で最初に実行される「予熱ステージP1」は、庫内温度が所定温度以下の時に実行される。「低温スチーム調理」のスタート時において、庫内温度が所定温度より高い場合には、例えば直前まで他の加熱調理を行っていた場合には、「予熱ステージP1」を最初から実行する必要がないとして、「予熱ステージP1」の一部若しくは全ての動作を飛び越えて次の段階の動作から始めてもよい。ここで所定温度とは、加熱室2においてスチーム加熱を行うための最低温度以上の温度である。
【0062】
「予熱ステージP1」においては、最初に「初期予熱動作」が行われる。「初期予熱動作」においては、庫内温度を上昇させるために、平面ヒータユニット12の輻射加熱ヒータである平面ヒータ21が起動される。平面ヒータ21による加熱は、予め設定された第1予熱時間、例えば20秒間実行される。次に、「本予熱動作」が予め設定された第2予熱時間、例えば30秒間実行される。「本予熱動作」においては、熱風循環ユニット11の循環ファン18とコンベクションヒータ19が用いられる。熱風循環ユニット11が用いられることにより、加熱室内部に熱風が循環して加熱室内部の全体が略均等な温度となる。「予熱ステージP1」が終了すると、スチーム加熱機能を用いたスチーム加熱動作が開始される。
【0063】
スチーム加熱動作の最初は、「初期調理ステージP2」であり、後段の「本調理ステージP3]より低い温度を閾値として温度調整される。
図4に示すように、例えば2つの温調制御レベルとして第1温調制御レベルA1(例えば、68℃)および第2温調制御レベルB1(例えば、70℃)が設定されている。
【0064】
図5Aの表に示すように、「初期調理ステージP2」において、庫内温度が第1温調制御レベルA1(例えば、68℃)未満の場合(低温度)には、強加熱温調制御動作が実行される。この強加熱温調制御動作においては、第1スチームヒータ(650W)16および第2スチームヒータ(350W)17の両方が稼働(オン状態)する最大噴射量で稼働されると共に、熱風循環ユニット11の循環ファン18は稼働状態(オン状態)である。
【0065】
上記のように「初期調理ステージP2」において強加熱温調制御動作が実行されて、庫内温度が徐々に上昇して第1温調制御レベルA1を越えたとき(適温時)、中加熱温調制御動作が実行される。この中加熱温調制御動作においては、第1スチームヒータ(650W)16はオフ状態となり、第2スチームヒータ(350W)17がオン/オフ比であるデューティ比により制御される。このとき、スチーム加熱ユニット10からの蒸気の噴射量が制限されており、第2スチームヒータ(350W)17のデューティ比として20秒(オン状態)/40秒(オフ状態)に設定されている。このとき熱風循環ユニット11の循環ファン18は継続してオン状態が維持されており、加熱室2の内部の庫内温度の均一化が図られている。
【0066】
更に、庫内温度が徐々に上昇して第2温調制御レベルB1を越えたとき(高温時)、弱加熱温調制御動作が実行される。弱加熱温調制御動作においては、第1スチームヒータ(650W)16と共に、第2スチームヒータ(350W)17もオフ状態となり、熱風循環ユニット13の循環ファン18のみが継続してオン状態が維持されており、加熱室2の内部の庫内温度の均一化が図られている。
【0067】
弱加熱温調制御動作においては加熱源が稼働していない状態であるため、加熱室2の庫内温度は直ぐに下降を始める。庫内温度が第2温調制御レベルB1より下がると、再び中加熱温調制御動作が実行される。中加熱温調制御動作においては、デューティ比が制御された第2スチームヒータ(350W)17だけが加熱源であるため、庫内温度は緩やかに下降を続ける。そして、庫内温度が第1温調制御レベルA1より下がったとき、前述の強加熱温調制御動作が実行されて、再び庫内温度は徐々に上昇し始める。このように、「初期調理ステージP2」において2つの閾値(A1、B1)を用いて温調制御動作が行われることにより、庫内温度が所定の温度範囲(例えば、68℃〜70℃)に確実に保持されることになる。
【0068】
上記のように「初期調理ステージP2」は、予め決められた所定時間(初期調理時間:例えば420秒)実行されると、次の段階の「本調理ステージP3]が実行される。
【0069】
「本調理ステージP3]においては、「初期調理ステージP2」において設定されている第1温調制御レベルA1および第2温調制御レベルB1より高い温度の温調制御レベル(A、B)が設定されている。実施の形態1においては、例示としてであるが、「本調理ステージP3]における第1温調制御レベルA2が70℃であり、および第2温調制御レベルB2が72℃に設定されている。
【0070】
図5Bの表に示すように、「本調理ステージP3」において、庫内温度が第1温調制御レベルA2(例えば、70℃)未満の場合(低温度)には、強加熱温調制御動作が実行される。この強加熱温調制御動作においては、第1スチームヒータ(650W)16がオン状態であり、第2スチームヒータ(350W)17がオフ状態である。また、熱風循環ユニット11の循環ファン18はオン状態である。
【0071】
上記のように「本調理ステージP3」において強加熱温調制御動作が実行されて、庫内温度が徐々に上昇して第1温調制御レベルA2を越えたとき(適温時)、中加熱温調制御動作が実行される。この中加熱温調制御動作においては、第1スチームヒータ(650W)16はオフ状態となり、第2スチームヒータ(350W)17がオン状態となる。ここでは、デューティ比制御の加熱動作は行われていない。このとき熱風循環ユニット13の循環ファン18は継続して稼働状態(オン状態)である。
【0072】
更に、庫内温度が徐々に上昇して第2温調制御レベルB2を越えたとき(高温時)、弱加熱温調制御動作が実行される。弱加熱温調制御動作においては、第1スチームヒータ(650W)16および第2スチームヒータ(350W)17はオフ状態であり、熱風循環ユニット13の循環ファン18のみが継続して稼働状態(オン状態)である。
【0073】
弱加熱温調制御動作においては加熱源が稼働していない状態であるため、加熱室2の庫内温度は直ぐに下降を始める。庫内温度が第2温調制御レベルB2より下がると、中加熱温調制御動作が実行される。中加熱温調制御動作においては、第2スチームヒータ(350W)17だけが加熱源であるため、庫内温度は緩やかに下降を続ける。そして、庫内温度が第1温調制御レベルA2より下がったとき、強加熱温調制御動作が実行されて、再び庫内温度は徐々に上昇する。その結果、「本調理ステージP3」においては、庫内温度が所定の温度範囲(例えば、70℃〜72℃)に確実に保持される温調制御動作が行われる。
【0074】
上記のように、本発明に係る実施の形態1の加熱調理器で「低温スチーム調理」を実行する場合、「予熱ステージP1」の後段において、少なくとも2段階のスチーム加熱(「初期調理ステージP2」および「本調理ステージP3」)を行い、それぞれの調理ステージ(P2、P3)においては、2つの温調制御レベル(A、B)を用いて、庫内温度を所定温度範囲に確実に維持すると共に、少なくとも2段階のスチーム加熱で目標温度範囲に徐々に近づけるように制御する構成である。従って、本発明に係る実施の形態1において具体的に説明した加熱調理器およびスチーム加熱方法における技術的特徴を用いることにより、調理内容および食品の種類などに対応して、庫内温度を所望の温度に確実に維持しつつ最適な「低温スチーム調理」を行うことが可能となる。
【0075】
本発明の加熱調理器は、実施の形態1において説明したように、少なくとも以下のように構成してもよい。
【0076】
本発明の加熱調理器は、少なくとも被加熱物を収容する加熱室(2)、
被加熱物に対する調理内容を設定するための操作部(4)、
加熱室内に蒸気を噴射して被加熱物をスチーム加熱し、蒸気の噴射量を変更できる構成を有するスチーム加熱部(10)、
加熱室内の空気を循環させる循環動作を行う循環ファン(18)、
加熱室の内部温度を検出する庫内温度センサ(7)、および
庫内温度センサにより検出された庫内温度および操作部により設定された調理内容に基づいて、スチーム加熱部おけるスチーム加熱動作および循環ファンの循環動作を制御する制御部(15)、を備えた加熱調理器である。本発明の加熱調理器における操作部において調理内容として「低温スチーム調理」が設定されたとき、制御部は、少なくとも「初期調理ステージ(P2)」および「本調理ステージ(P3)」を実行するよう構成されており、「初期調理ステージ(P2)」および「本調理ステージ(P3)」のそれぞれにおいて、庫内温度センサにより検出された庫内温度に基づいて、第1温調制御レベル(A1、A2)および第1温調制御レベルより温度の高い第2温調制御レベル(B1、B2)を閾値として設定されており、庫内温度が第1温調制御レベル未満のとき、スチーム加熱部のスチーム加熱動作と循環ファンの循環動作に対して「強加熱温調制御」を行い、庫内温度が第1温調制御レベル以上で第2温調制御レベル未満のとき、スチーム加熱部のスチーム加熱動作と循環ファンの循環動作に対して「中加熱温調制御」を行い、庫内温度が第2温調制御レベル以上のとき、スチーム加熱部のスチーム加熱動作と循環ファンの循環動作に対して「弱加熱温調制御」を行うように構成されている。また、「強加熱温調制御」、「中加熱温調制御」、「弱加熱温調制御」は、その順番に加熱室に対するスチーム加熱動作の加熱出力が低くなるよう構成されている。
【0077】
また、本発明の加熱調理器における制御部は、庫内温度が所定温度より低いとき、加熱室を所定時間加熱する「予熱ステージP1」を「初期調理ステージ(P2)」の前段で行うように構成されている。「本調理ステージ(P3)」における第1温調制御レベル(A2)は、「初期調理ステージ(P2)」における第1温調制御レベル(A1)より高い温度に設定されており、「本調理ステージ(P3)」における第2温調制御レベル(B2)は、「初期調理ステージ(P2)」における第2温調制御レベル(B1)より高い温度に設定されている。
【0078】
さらに、本発明の加熱調理器における制御部は、「初期調理ステージ(P2)」の「強加熱温調制御」において、スチーム加熱部による蒸気の噴射量を最大とし、循環ファンにより循環動作を実行するよう構成されている。制御部は、「初期調理ステージ(P2)」および「本調理ステージ(P3)」におけるそれぞれの「中加熱温調制御」において、スチーム加熱部による蒸気の噴射量を制限するよう構成されている。制御部は、「初期調理ステージ(P2)」および「本調理ステージ(P3)」におけるそれぞれの「弱加熱温調制御」において、循環ファンにより循環動作のみを実行するよう構成されている。制御部は、「本調理ステージ(P3)」の「強加熱温調制御」における蒸気の噴射量が、「初期調理ステージ(P2)」の「強加熱温調制御」における蒸気の噴射量より少なく設定し、且つ「本調理ステージ(P3)」の「中加熱温調制御」における蒸気の噴射量より多く設定している。制御部は、少なくとも「初期調理ステージ(P2)」および「本調理ステージ(P3)」のそれぞれにおいて循環ファンにより循環動作を行うように構成されている。また、スチーム加熱部が、加熱出力が異なる少なくとも2種類のスチームヒータを有して、蒸気の噴射量を変更できるように構成されている。
【0079】
本発明の加熱調理器におけるスチーム加熱方法は、少なくとも下のようなステップを含む構成としてもよい。
【0080】
本発明の加熱調理器におけるスチーム加熱方法は、被加熱物を収容する加熱室(2)と、被加熱物に対する調理内容を設定するための操作部(4)と、加熱室内に蒸気を噴射して被加熱物をスチーム加熱し、蒸気の噴射量を変更できる構成を有するスチーム加熱部(10)と、加熱室内の空気を循環させる循環動作を行う循環ファン(18)と、加熱室の内部温度を検出する庫内温度センサ(7)と、庫内温度センサにより検出された庫内温度および操作部により設定された調理内容に基づいて、スチーム加熱部おけるスチーム加熱動作および循環ファンの循環動作を制御する制御部(15)と、を備えた加熱調理器におけるスチーム加熱方法であって、
操作部において調理内容として「低温スチーム調理」が設定されたとき、少なくとも「初期調理ステージ(P2)」および「本調理ステージ(P3)」を実行するステップを含み、
「初期調理ステージ(P2)」および「本調理ステージ(P3)」のそれぞれのステップにおいて、
庫内温度センサにより検出された庫内温度に基づいて、第1温調制御レベル(A1、A2)および第1温調制御レベルより温度の高い第2温調制御レベル(B1、B2)を閾値として、庫内温度が第1温調制御レベル未満のとき、スチーム加熱部のスチーム加熱動作と循環ファンの循環動作に対して「強加熱温調制御」を行い、
庫内温度が第1温調制御レベル以上で第2温調制御レベル未満のとき、スチーム加熱部のスチーム加熱動作と循環ファンの循環動作に対して「中加熱温調制御」を行い、そして
庫内温度が第2温調制御レベル以上のとき、スチーム加熱部のスチーム加熱動作と循環ファンの循環動作に対して「弱加熱温調制御」を行うと共に、
「強加熱温調制御」、「中加熱温調制御」、「弱加熱温調制御」の順番に加熱室に対するスチーム加熱動作の加熱出力が低くなるよう設定されている。
【0081】
以上のように、実施の形態を用いて具体的な構成を示して説明したように、本発明によれば、調理内容などに応じて庫内温度を所望の温度に確実に維持して、最適な「低温スチーム調理」を行うことができる加熱調理器を提供すること、および加熱調理器によるスチーム加熱方法を提供することができる。