(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
形状測定装置のZ軸基準ミラーのXY方向の測定範囲の一部に対応する大きさの測定予定範囲を有する1つの平面を持ちかつバー状に構成された1本の直方体形状のバーミラーを、互いに直交するX方向沿いの位置とY方向沿いの位置とにそれぞれ移動させたときの、前記バーミラーの前記1つの平面の平面度をライン状に順次測定して、前記X方向のライン状の測定データと前記Y方向のライン状の測定データとを測定データ取得装置で取得し、
取得した前記X方向のライン状の測定データで構成される前記X方向のラインと取得した前記Y方向のライン状の測定データで構成される前記Y方向のラインとの交点位置で前記X方向のライン状の測定データと前記Y方向のライン状の測定データとがZ方向において互いに近づくように、前記X方向のライン状の測定データと前記Y方向のライン状の測定データとをデータ移動部で前記Z方向に移動させ、
前記データ移動部により移動された前記X方向のライン状の測定データと前記Y方向のライン状の測定データとを合成して合成平面を合成平面算出部で作成し、
前記合成平面を作成したときの前記X方向のライン状の測定データと前記Y方向のライン状の測定データとの格子点での前記Z方向のねじれ補正量を求めて、求めた前記ねじれ補正量が最小となるように、ねじれ補正係数をねじれ補正係数決定部で決定し、
前記ねじれ補正係数決定部で決定された前記ねじれ補正係数を用い、前記合成平面の前記ねじれ補正量を補正部で補正して、前記ねじれ補正係数を用いて補正された前記合成平面の前記ねじれ補正量を使用して、前記Z軸基準ミラーの前記XY方向の前記測定範囲の平面度を校正する、平面度校正方法。
形状測定装置のZ軸基準ミラーのXY方向の測定範囲の一部に対応する大きさの測定予定範囲を有する1つの平面を持ちかつバー状に構成された1本の直方体形状のバーミラーを、互いに直交するX方向沿いの位置とY方向沿いの位置とにそれぞれ移動させたときの、前記バーミラーの前記1つの平面の平面度をライン状に順次測定して、前記X方向のライン状の測定データと前記Y方向のライン状の測定データとを取得する測定データ取得装置と、
取得した前記X方向のライン状の測定データで構成される前記X方向のラインと取得した前記Y方向のライン状の測定データで構成される前記Y方向のラインとの交点位置で前記X方向のライン状の測定データと前記Y方向のライン状の測定データとがZ方向において互いに近づくように、前記X方向のライン状の測定データと前記Y方向のライン状の測定データとを前記Z方向に移動させるデータ移動部と、
前記データ移動部により移動された前記X方向のライン状の測定データと前記Y方向のライン状の測定データとを合成して合成平面を作成する合成平面算出部と、
前記合成平面を作成したときの前記X方向のライン状の測定データと前記Y方向のライン状の測定データとの格子点での前記Z方向のねじれ補正量を求めて、求めた前記ねじれ補正量が最小となるように、ねじれ補正係数を決定するねじれ補正係数決定部と、
前記ねじれ補正係数決定部で決定された前記ねじれ補正係数を用い、前記合成平面の前記ねじれ補正量を補正する補正部を備えて、
前記ねじれ補正係数を用いて補正された前記合成平面の前記ねじれ補正量を使用して、前記Z軸基準ミラーの前記XY方向の前記測定範囲の平面度を校正する、平面度校正装置。
【背景技術】
【0002】
近年のオプトエレクトロニクス技術の進歩により、ディジタル放送が4Kから8Kへと高精細化が進展している。この結果、ディジタルカメラ等のカメラと、スマートフォン等のカメラを使用するモバイル機器とにおいて、画質向上への要請より、カメラに使用されるレンズの表面形状は、設計形状に対しての誤差が0.03μm(30nm)以下に仕上がった、高精度レンズへの要望が高まりつつある。
【0003】
その中で、レンズの表面形状について高精度な測定を行う形状測定装置においても、より高精度な測定へのニーズが高まりつつある。そこで、基準参照ミラーを用いてレンズの表面形状を測定する測定手法(例えば特許文献1参照)が提案されている。
【0004】
しかしながら、レンズの表面形状の、より高精度な測定のために使用した参照ミラー自体のひずみ等により、測定誤差が発生してしまう。このため、この参照ミラーのひずみを、校正用テーブルを使用して校正する測定手法(例えば特許文献2参照)も提案されている。
【0005】
しかし、特に基準参照平面をXY方向の2次元で使用する形状測定装置では、ミラーが500mm程度の大きい場合には、50nm以上のオーダで、基準参照平面に用いられるミラーにひずみが含まれ、ミラーが500mm未満程度に小さい場合でも、基準参照平面に用いられるミラーに20〜50nmのオーダでひずみが含まれ、2次元の校正は、バーミラー等の1次元測定に比べて、より難しいものとなる。
【0006】
より高精度な測定を行うために、バーミラーにより、XY方向の2次元で、大きな基準参照平面を用いることなく、バーミラーの1つの平面部分を用い、XY面内でX方向沿いの位置及びY方向沿いの位置にそれぞれバーミラーを順次移し、各位置で、バーミラーの1つの同じ平面部分を測定して、校正用データではなく、X方向のライン状の測定データ及びY方向のライン状の測定データを取得する測定方法も提案されている。
【0007】
しかしながら、X方向のライン状の測定データ及びY方向のライン状の測定データとをXY格子状に組み合わせて、平面データを数学的に作成する場合、ねじれの位置関係が発生して、測定誤差が発生するという問題点がある。
【0008】
このねじれの問題を解決するために、XYZ方向の3方向でライン状の測定データを測定した3ラインの測定データを使用して、3ラインの測定データの各交点が交わるように、ねじれを補正する補正方法もある(例えば特許文献3参照。)。
【0009】
図11は、特許文献3に記載された従来の校正手法を示すものである。
【0010】
図11において、従来の校正装置は、基準ミラー101、サンプル102、定盤103、回転軸104、回転ステージ105、1次元ステージ106R、106L、センサー107A、107B、1次元形状測定部108、支持部109、110により構成されている。
【0011】
回転ステージ105でサンプル102を左右方向の半径方向に走査し、サンプル102表面と基準ミラー101表面とを同時に測定し、サンプル102表面と基準ミラー101表面の差を求めることにより、ステージの誤差を除き、センサー107A、107Bを一体に同時に左右に移動させ、ライン状の測定を行う。センサー107A、107Bを一体に同時に左右に移動させることで、ステージの移動時の真直度誤差の影響を受けずに、基準ミラーを基準にサンプル102の第一の位置の表面形状をライン状に測定する。
【0012】
1次元ステージ106R、106Lを移動させて測定位置を移動させ、1次元測定部108を左右に移動させ、第二の位置の表面形状をライン状に測定する。
【0013】
さらに、1次元ステージ106R、106Lを移動させて測定位置を移動させ、1次元測定部108を左右に移動させて第三の位置の表面形状をライン状に測定する。
【0014】
測定後、
図12に示すように、各3ラインのXY位置の一致する位置で、Z位置が一致するように、各ラインの測定データを移動させることにより、ねじれの位置が発生しない測定結果を得る。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における平面度校正方法及び装置は、形状測定方法及び装置を使用して、校正用の補正テーブルを取得するものであり、取得した補正テーブルを使用して形状測定方法及び装置で測定した測定結果を補正することにより、高精度な形状測定を実施するものである。
【0024】
図1Aは、このとき使用する、測定物の形状測定方法に係る形状測定装置の全体構成図である。以下、まず、形状測定方法及び装置を説明したのち、平面度校正方法及び装置を説明する。
【0025】
1)使用する形状測定装置の装置構成の説明
本発明の実施の形態1を実施する好適な装置構成を
図1Aに示す。
図1Aは、本発明の実施の形態1にかかる形状測定方法を実施するための形状測定装置90の概略構成を示す斜視図である。
図1Bは、前記形状測定方法に係る形状測定装置で校正動作を行うときの形状測定装置90の全体構成図である。
図1Cは、前記形状測定方法に係る形状測定装置90の制御部などのブロック図である。
図1Dは、前記形状測定方法の動作を示すフローチャートである。
【0026】
図1Aにおいて、形状測定装置90は、XYステージ3と、上部石定盤8及び下部石定盤91と、周波数安定化He−Neレーザ4と、プローブ1と、Z軸ステージ2と、X軸基準ミラー5と、Y軸基準ミラー6と、Z軸基準ミラー7と、X軸レーザ出射部27と、Y軸レーザ出射部28とを備えている。この形状測定装置90は、測定物9の表面形状を測定するものであるが、測定物9の代わりに、
図1Bに示すように、バーミラー9aの表面形状を測定して、後述するようにミラーの校正動作を行う。なお、以下の装置の構成の説明では、測定物9に対する測定として説明するが、校正動作のときは、測定物9をバーミラー9aと読み替えればよい。
【0027】
このような形状測定装置90は、以下のように構成されている。
【0028】
測定物9を保持する下部石定盤91上に、XY軸方向に移動可能に、XYステージ3が配置されている。
【0029】
XYステージ3上には上部石定盤8が配置され、上部石定盤8の上に、測定物9のXYZ座標位置を測定するための周波数安定化He−Neレーザ4が配置されている。
【0030】
プローブ1は、Z軸ステージ2を介して上部石定盤8に取り付けられている。XYステージ3は、XYステージ3の下側に配置されてモータ駆動のY軸ステージ3Yと、XYステージ3の上側に配置されてモータ駆動のX軸ステージ3Xとで構成されている。発振周波数安定化He−Neレーザ4により周波数安定化He−Neレーザ光15が出射され、出射されたレーザ光15が、上部石定盤8に配置された光学系92を介して、X,Y,Z軸の3方向のレーザ光に分岐されたのち、下部石定盤91にそれぞれ固定されかつナノメートルオーダーの高い平面度をそれぞれ持つ、X軸基準ミラー5と、Y軸基準ミラー6と、Z軸基準ミラー7と、プローブ1のミラー16とにそれぞれ反射させる。
【0031】
このように構成することにより、X座標検出装置93Xと、Y座標検出装置93Yと、プローブ1のZ方向位置を検出するZ座標検出装置93Zとで、ナノメートルオーダーの超高精度で、測定物9の表面のXYZ座標を測定できる。
図1Cに示すように、X座標検出装置93XとY座標検出装置93YとZ座標検出装置93Zとには、演算処理部94が接続されて、X座標検出装置93XとY座標検出装置93YとZ座標検出装置93Zとから入力された測定データを演算処理部94で演算処理して、測定物9の表面の三次元座標データを得て、形状測定を行うことができる。ここで、27はX軸方向レーザ出射部、28はY軸方向レーザ出射部である。X座標検出装置93XとY座標検出装置93Yとで測定データ取得装置52の一例を構成している。
【0032】
これらのユニット、すなわち、プローブ1(言い換えれば、フォーカス検出用レーザ13などを含むプローブユニット14)と、Z軸ステージ2と、XYステージ3と、発振周波数安定化He−Neレーザ4と、X軸方向レーザ出射部27と、Y軸方向レーザ出射部28と、X座標検出装置93Xと、Y座標検出装置93Yと、Z座標検出装置93Zと、演算処理部94となどは、制御部100により動作制御され、自動的に形状測定装置90での計測動作又は後述する校正動作を行うように構成されている。
【0033】
ここで、Z軸基準ミラー7は、例えば、
図13に示すように、矩形形状の外周部の1つの円312上の3か所313を支持して上部石定盤8に設置し、設置時の曲げ方向の固定力で、Z軸基準ミラー7を変形させないように支持している。しかし、前記の外周3か所の支持方法でも、直径500mm程度の大きさのZ軸基準ミラー7では、重力により、100nm程度ひずみが発生した状態で支持されている。
【0034】
図2に、本発明の実施の形態1にかかる形状測定方法を実施する形状測定装置のプローブ1の構成を示す。
【0035】
図2で、プローブ1のスタイラス12は、マイクロエアースライダ10により支持されており、マイクロエアースライダ10の可動部分のスライド部87は、板状のマイクロスプリング11で円筒状のガイド89に吊支持されている。測定物9とスタイラス12の先端とに働く弱い原子間力でマイクロスプリング11がたわむ。このマイクロスプリング11のたわみを、マイクロエアースライダ10の上端のマイクロスプリング11に保持されたミラー16上に照射された、フォーカス検出用レーザ13のレーザ光Gを利用してフォーカス検出部13Fで計測し、この原子間力が一定となるように、プローブユニット14全体をZ方向に、Z軸ステージ2でフィードバックしつつ、同時にZ方向の変位を、前記周波数安定化He−Neレーザ光15をミラー16に照射して反射を測定することにより、Z方向の位置をレーザ測長器などのZ座標検出装置93Zで測定し、この状態で、XY方向にこのプローブユニット14全体を走査して、測定物9の表面の形状を測定する。この構成によれば、スタイラス12を取り付ける可動部であるマイクロエアースライダ10の可動部の重量を軽くできる。このような構成により、最大75°の高傾斜面まで、測定物9の表面形状をナノメートル精度で高精度に測定することが可能である。なお、フォーカス検出部13Fは、後述する誤差信号発生部82とサーボ回路83とで構成されている。
【0036】
このような構成のZ方向に移動可能なプローブ1において、フォーカス検出用レーザ13から発したレーザ光Gは、コリメートレンズ72と、偏光ビームスプリッタ73と、λ/4波長板74とを透過した後、ダイクロイックミラー75で反射し、対物レンズ76によってマイクロスライダ10の上端面に取付けられたミラー16上に集光する。ミラー16から対物レンズ76に戻ったレーザ光Gの反射光は、ダイクロイックミラー75及び偏光ビームスプリッタ73を全反射し、レンズ78で集光されてハーフミラー79で2つに分離され、ピンホール80を通過し、2つの光検出器81で受光される。2つの光検出器81の出力は誤差信号発生部82によりフォーカス誤差信号となり、サーボ回路83によってこのフォーカス誤差信号がゼロとなるようにリニアモータ84を制御し、プローブ1を含むZ移動部の自重分は渦巻きバネ86により支持されるプローブ1は円筒状のスライド部87を有し、マイクロスライダ10はエアー供給部88から供給されるエアーの吹き出し穴を有するガイド89の内壁をエアースライダ10としてZ方向に可動である。スライド部87の上部にはミラー23が固定され、スライド部87、プローブ1、ミラー16からなる可動部の重量はマイクロスプリング11によって支えられる。
【0037】
スタイラス12は、測定物9の表面上を弱い測定圧で走査され、表形状に沿って上下するが、スタイラス12が上下するとフォーカスサーボが働いてプローブ全体が上下するのでミラー16上に常に対物レンズ76の焦点が合っている。
【0038】
ここで、プローブ1のXY位置について、X軸レーザ出射部27とY軸レーザ出射部28との距離は一定で変化しないように構成されている。このように、一定に距離を保つように構成することにより、X及びY方向にそれぞれ出射されたレーザ光により、プローブ中心からX軸基準ミラー5及びY軸基準ミラー6までの距離をX座標検出装置93XとY座標検出装置93Yとでそれぞれ高精度に測定することが可能である。
【0039】
この形状測定装置90は、測定物9であるレンズの面上で、プローブ1をXY方向に走査することにより、レンズ9上のXYZ座標データ列をX座標検出装置93XとY座標検出装置93YとZ座標検出装置93Zとで取得し、演算処理部94によって、プローブ1によって測定されたXY座標位置でのZ座標データの列が演算処理され、レンズ9の形状測定を行う。
【0040】
<バーミラーデータ歪の校正>
ここで、直方体形状のバーミラー9aを使用して、Z軸基準ミラー7の例えば100nm程度のひずみを校正する場合を考える。
【0041】
すなわち、Z軸基準ミラー7を使用するとき、ミラーの精度は本来的には高いはずであるが、測定物9の測定精度が上がってくると、Z軸基準ミラー7の平面精度のひずみを含んだままの測定データが取得されてしまうことになる。
【0042】
そこで、このZ軸基準ミラー7の平面精度のひずみを取り除くことを、本発明者らは考えた。
【0043】
このため、測定物9を測定する位置に、Z軸基準ミラー7よりも平面精度が高いバーミラー9aを使用して、バーミラー9aのある1つの面9bを測定することにより、Z軸基準ミラー7の平面精度のひずみを取得し、取得したひずみを測定データから除けば、高い測定精度が取得できることを創作するに至った。
【0044】
具体的には、まず、前記形状測定装置で校正用のバーミラー9aを測定する。
【0045】
次いで、測定結果に基づいてZ軸基準ミラー7の平面精度を補正して、仮補正テーブルを作成する。
【0046】
最後に、仮補正テーブルP1は、Z軸基準ミラー7の平面度の補正は1回の計算では行えず、複数回の計算を繰り返すときに作成される、途中の中間段階の一時的な補正テーブルである。
【0047】
この校正のために使用するバーミラー9aの平面度が、Z軸基準ミラー7の精度よりも高い高精度なものを使用するが、製作誤差により理想直線から外れたもので、この値を産業技術総合研究所にて値付けを行い、トレーサブルな校正データを取得しより信頼性の高い校正を行なう。
【0048】
図3に、校正に使用するバーミラー9aのデータ例を示す。
図3の縦軸はバーミラー9aの平面精度を表すZ座標値であり、横軸はバーミラー9aを例えばX方向沿いに配置したときのバーミラー9aのX方向の位置である。バーミラー9aを例えばY方向沿いに配置したときは、横軸はバーミラー9aのY方向の位置となる。
図3に示すバーミラー9aは、バーミラー9aの長さ520mm(±260mm)のエリアで±15nmに平面度(すなわち平面精度)で加工され、平面度数値がトレーサビリティーのある状態で校正されている。このデータを校正用データとして制御部100の記憶部51内に記憶し、すべてのライン状すなわち直線状の測定データを、校正用データを使用して補正し、以降の平面度の補正を行う。
【0049】
すなわち、この実施形態にかかる平面度校正方法は、
図1Dに示すように、以下のステップを順に行う。
【0050】
(ステップS1) まず、X方向のライン状の測定データ226XとY方向のライン状の測定データ226Yとを測定データ取得装置52で取得する。このとき、例えば、
図3は3ライン測定しているが、テーブル作成の信頼性を上げるための、産総研で測定した校正用のバーミラーテーブルで、
図3の3ラインはZ参照ミラーの測定データではない。
【0051】
(ステップS2) 次いで、両測定データ226X,226Yの格子点(すなわち交点位置)230がZ方向において互いに近づくように測定データ226X,226Y同士をデータ移動部53でZ方向に移動させる。
【0052】
(ステップS3) 次いで、合成平面39A〜39Cを合成平面算出部54で作成する。
【0053】
(ステップS4) 次いで、格子点230でのZ方向の差、すなわち、ねじれ補正量dZsを求めて、求めたねじれ補正量dZsが最小となるように、ねじれ補正係数φをねじれ補正係数決定部55で決定する。
【0054】
(ステップS5) 次いで、ねじれ補正係数決定部55で決定されたねじれ補正係数φを用い、合成平面39のねじれ補正量dZsを補正部56で補正して、ねじれ補正係数φを用いて補正された合成平面39のねじれ補正量dZsを使用して、Z軸基準ミラー7のXY方向の測定範囲の平面度を校正する。
【0055】
このようにして、校正された平面度を使用すべく、Z軸基準ミラー7のひずみを校正用補正テーブルを使用して校正すれば、直線状に測定したデータを組み合わせ、ねじれを補正しつつデータの交点部での誤差の影響を低減することができて、高精度な平面度校正を行うことができる。この結果、この校正情報を使用することにより、測定物9の表面を高精度に測定することができる。
【0056】
<ステップS1:X方向及びY方向のライン状の測定データ取得>
図4は、本発明の実施形態1の平面度校正方法でのバーミラー9aの位置と測定データとの説明図である。測定に使用するバーミラー9aは、1本であり、
図1Bに示すように、測定物9の代わりに、下部石定盤91上に直接的に載置又は治具を介して間接的に載置される。
【0057】
具体的には、1本のバーミラー9aを
図4に1点鎖線のIで示すようにX方向沿いの位置に配置して、バーミラー9aの1つの平面9bの形状測定を行い、ライン状のX方向測定データ226Xを取得する。その後、Y方向に所定間隔Xhだけバーミラー9aの位置を移動させて配置し、再度、バーミラー9aの同一平面9bの形状測定を行い、ライン状のX方向測定データ226Xを取得する。これを所定回数繰り返したのち、今度は、同じ1本のバーミラー9aを
図4に1点鎖線のIIで示すようにY方向沿いの位置に配置して、バーミラー9aの同一平面9bの形状測定を行い、ライン状のY方向測定データ226Yを取得する。その後、X方向に所定間隔Yhだけバーミラー9aの位置を移動させて配置し、再度、バーミラー9aの同一平面9bの形状測定を行い、ライン状のY方向測定データ226Yを取得する。これを所定回数繰り返す。
【0058】
このように、
図4では、バーミラー9aをX方向沿いの位置に置いたときの平面9bの形状測定により取得したライン状のX方向測定データ226Xを実線で示す。また、
図4で、バーミラー9aをY方向沿いの位置に置いたときの同一平面9bの形状測定により取得したライン状のY方向測定データ226Yを点線で示す。
【0059】
各測定データ226X,226Yは、直線状に並んだ多数の座標データの集まりであり、ライン状のX方向測定データ226Xとライン状のY方向測定データ226Yとは、互いに交差して格子形状の測定データ228を構成している。
【0060】
ここで、バーミラー9aとしては、棒状のバーミラー9aのうちの少なくとも1つの平面9bについて、予め形状データが既知であり、かつZ軸基準ミラー7よりも平面精度の高いものを使用する。このようなバーミラー9aの1つの平面9bであって、Z軸基準ミラー7のXY方向の測定範囲の一部に対応する大きさの測定予定範囲の形状を測定することにより、形状測定装置90に設置されているZ軸基準ミラー7のひずみを、後述するように測定することができる。よって、Z軸基準ミラー7のXY方向の測定範囲は、例えば、矩形領域であって、バーミラー9aの1つの例えば矩形の平面9bの領域より十分に大きく、バーミラー9aをX方向に順次平行移動して並べることができ、かつ、Y方向に順次平行移動して並べることができる程度の大きさとなっている。
【0061】
具体的には、Z軸基準ミラー7のXY方向の測定範囲内に対応する前記測定予定範囲において、順次、1本のバーミラー9aの位置をX方向沿い及びY方向沿いにそれぞれ所定間隔Xh,Yhで移動させて、1本のバーミラー9aをX方向沿いの複数の位置とY方向沿いの複数の位置とにそれぞれ配置して、X方向及びY方向のそれぞれの測定データをライン状に取得する。そして、結果的に、X方向ライン状の測定データとY方向のライン状の測定データとが組み合わさった格子形状の測定データ228が、前記測定予定範囲内に構成できるようにする。このようにすれば、Z軸基準ミラー7のXY方向の測定範囲内に対応する前記測定予定範囲の測定データを取得し、予め既知のデータと照合して、Z軸基準ミラー7のひずみをそれぞれ取得して、補正に必要な校正用データ、例えば仮補正テーブルを取得し、取得した校正用データを記憶部51に仮補正テーブルとして記憶することができる。
【0062】
ここで、X方向の測定データ226XとY方向の測定データ226Yとは、それぞれライン状に測定して取得したデータであり、例えば、X方向のライン状のX方向測定データ226XのY方向へのシフトピッチをXhとする。Y方向のライン状のY方向測定データ226YのX方向へのシフトピッチをYhとする。そして、例えば、X方向のX方向測定データ226Xの1つのライン沿いの取り込みピッチを、シフトピッチXhより小さいXaとし、Y方向のY方向測定データ226Yの1つのライン沿いの取り込みピッチを、シフトピッチYhより小さいYaとして、測定データの取得を行う。その理由は、スタイラス12を走査して測定する前記形状測定装置では、走査方向の方が測定時間がかかるため、コンピュータにデータを取り込むピッチYaをシフトピッチYhより小さく設定するためである。
【0063】
X方向の取り込みピッチXaとY方向の取り込みピッチYaとは、それぞれ、演算処理時間と精度との関係で、予め決めることができる。例えば、ピッチを小さくすれば、データ量が多くなって演算処理時間が長くなるが、精度は高くなる一方、ピッチを大きくすれば、データ量が小さくなって演算処理時間が短くなるが、精度は低くなる。一般に、形状測定装置は、取り込める測定点数に制限がある。ピッチは小さい方が精度は良いが、測定時間を考慮して、所望の点数に決定すればよい。例えば400mm×400mmのエリアを測定する場合、シフトピッチ10mm、取り込みピッチXa、Yaはそれぞれ0.1mm程度で測定することができる。
【0064】
測定データを取得するステップS1の詳細な手順について、説明する。
【0065】
まず、ステップS1Aとして、Z軸基準ミラー7を変形しないように、Z軸基準ミラー7を保持する冶具をY方向に順次、所定量だけシフトしつつ、X方向にライン状に測定データを測定し、測定した測定データを記憶部51に記憶する。
【0066】
同様に、ステップS1Bとして、冶具をX方向に順次、所定量だけシフトし、Y方向にライン状に測定データを測定し、測定した測定データを記憶部51に記憶する。
【0067】
この場合、Z軸基準ミラー7の設置位置のZ方向と、A方向(X軸周りの回転位置)と、B方向(Y軸周りの回転位置)とは、上部石定盤8への設置条件により、ナノの精度では平行と高さとが一致することなく設置及び測定され、ライン状に測定した測定データのZ位置と角度姿勢とは、上部石定盤8と設置冶具との平面度及び姿勢に応じて、それぞれ測定するラインで少しずつずれた状態で測定データは記憶部51に記憶される。
【0068】
<設置精度に起因するZ方向とA方向とB方向との位置ずれ>
図5に、測定直後のX方向とY方向とのそれぞれのライン状の測定データ226X,226Yのプロット例を示す。各ライン状の測定データ226X,226Yは、ナノメータ(1nm=1e
−9m)の精度オーダで加工された直線で形成された同一のバーミラー9aの測定データである。バーミラー9aを、測定する下部石定盤91に設置するとき、下部石定盤91はマイクロメータ(1μm=1e
−6m)の精度オーダで加工されているが、バーミラー9aを設置した下部石定盤91の仕上がり精度の影響をバーミラー9aが受け、バーミラー9aの設置精度はマイクロオーダの精度となる。これにより、設置したバーミラー9aを下部石定盤基準でナノメータの単位では、各ライン状の測定データ226X,226Yは、
図4のように、各ライン状の測定データ226X,226Yの格子の各点230でXY位置を合わせても、Z方向では異なった傾き又は高さで表示されて、例えば3〜5μmの凹凸の歪がある。
【0069】
<ステップS2及びS3:データ移動及び合成平面作成>
X方向のライン状の測定データ226XとY方向のライン状の測定データ226Yとを格子状に組み合わせる際、X方向のライン状の測定データ226XとY位置方向のライン状の測定データ226Yとが格子状に交差して一致する各格子点230でのZ方向の位置を互いに合わせることによる、合成平面算出部54でのXY方向の2次元の合成平面データの作成方法について、以下、説明する。
【0070】
先のステップS1Bにおいては、各ライン状の測定データ226X,226Yを、1本の仮想の各測定ラインでのZ方向のナノメータオーダのひずみのある棒として仮想的に取り扱い、この各測定ライン上の各格子点230のXY位置の形状測定装置90に対するXY方向の絶対座標も記憶部51に記憶しておく。
【0071】
このバーミラー9aの下部石定盤91に対する平行度の取り付け精度に対するXY方向の誤差は、十分に小さく無視できるオーダである。例えば、XY方向の誤差について以下に考察すると、長さ500mmのバーミラー9aに対し、Z方向に10μm以下の平行度の精度でバーミラー9aを下部石定盤91に取り付けていると、傾きによるXY方向の計測誤差は、関数電卓によると、
{1−cos(10μm/500mm)}*500mm=3.05e−11mm=3.05e−5nm≒0
となる。よって、XY方向の位置合わせによる影響はサブナノ以下となって無視できるため、バーミラー9aのZ方向の10μm以下の取り付け誤差は、考慮する必要はない。
【0072】
X方向とY方向とのライン状の測定データ226X,226Yで、XY格子点230のX座標とY座標が一致したそれぞれの格子点230の位置で、Z方向に互いに近づくように、棒に対応するX方向又はY方向のライン状の測定データ226X又は226Yをデータ移動部53で移動し、各ライン状の測定データ226X,226Y同士を合成平面算出部54で結合する。この計算モデルを、以下に記す。
【0073】
棒が無重力で空気等の無い真空の宇宙空間に浮かんだ状態であると仮定すると、外部から力の働かない場合、棒は静止している。しかし、棒に対してZ方向に外力等が一定時間加わり、この力で一定速度に動き出すと、摩擦がないので、ブレーキがかかることなく、同一方向に同一速度で棒が動き続ける。これは、棒に働く仮想ニュートン力学のモデルである。
【0074】
ここで、棒の各格子点をZ方向で一致させるため、X方向測定データと、Y方向測定データとのXY位置の一致する点では、Z方向に離れた距離に比例する引力Fが加わるモデルをデータ移動部53で仮定する。
【0075】
この引力Fで、棒であるX方向測定データとY方向測定データとの各格子点230が近づき出すとする。
図5は、引力Fが働き、X方向測定データとY方向測定データとが近づく、すなわち、棒の各格子点230が近づく状態を示す。
【0076】
しかし、無重力空間で、摩擦力の無い場合、この引力Fにより動き始めた棒は、無限に動き続けるので、Z方向の移動に対し、Z方向の移動速度に比例した仮想の減衰力をデータ移動部53で仮定し、計算が安定するモデルとする。
【0077】
このモデルにより、各格子点230間に引力Fが働き、各格子点230が一致する様に、全格子点230で格子点230間に働く力Fをデータ移動部53で計算し、各格子点230の仮想質量M=1を仮定し、計算した力を仮想質量Mでデータ移動部53で除算する。このように計算することにより、この力より、加速度をデータ移動部53で算出し、この加速度をデータ移動部53で積分計算して速度を算出し、さらに速度をデータ移動部53で積分することで、各格子点230のZ方向で一致する位置を算出し、各格子点230をそれぞれの一致する位置にデータ移動部53でZ方向に移動させる。移動量が格子点230間の計算前の距離より十分に小さい所定の閾値を予め設定しておき、格子点230間の移動距離が所定の閾値より小さくなったとデータ移動部53で判断した場合、各格子点230の重ね合わせは終了したとデータ移動部53で判断し、データ移動部53での計算は終了する。
【0078】
<合成平面算出部54での結合時のねじれの発生>
図6の(a)〜(c)に、X方向とY方向との各ライン状の測定データ226X,226Yをデータ移動部53により各格子点230で一致させて結合して、合成平面算出部54で合成平面を作成する際の、変化状況の図を示す。
図6において、点線はライン状のY方向測定データ226Yを示し、実線はライン状のX方向測定データ226Xを示す。
【0079】
図6の(a)は、測定データ取得装置52で測定した直後のX方向とY方向との各ライン状の測定データ226X,226Yをまとめて表示した図である。
【0080】
図6の(b)は、
図6の(a)の測定データ226X,226Yを、データ移動部53において前記手順で計算したように、X方向測定データ226XとY方向測定データ226Yとの格子点230の位置が一致するように、データ移動部53でデータを移動させて、合成平面算出部54で合成平面を算出した計算例を示す。前記計算で各格子点230の位置が一致する様に、X方向の測定データ226XとY方向の測定データ226Yとの格子点230でのZ座標をデータ移動部53で移動させて合成平面算出部54で合成平面を算出すると、
図6の(b)に示すように、ねじれ31が発生した合成平面44の状態となる。この理由は、X方向測定データ226XとY方向測定データ226Yとのそれぞれにおける理想的な直線の測定ラインを合成平面算出部54でXY方向において格子状に組み合わせても、ねじれ31の位置を規制することができない。このため、X方向の測定データ226XとY方向の測定データ226Yとをそれぞれ示すX方向とY方向との直線を格子状に組み合わせて合成平面算出部54で合成平面を算出して結合するとき、
図6の(b)のように当該結合された平面がねじれ31の合成平面44の状態でも、
図6の(c)の当該平面が、ねじれ31を解消した理想的な平面32の状態でも、結合の前記積分計算がデータ移動部53で可能なためである。
【0081】
<ステップS3:合成平面算出部54で算出した合成平面データの記憶と補正テーブルの準備>
図6の(b)の結合された合成平面のデータを、Z軸基準ミラー7の仮補正データとして、ねじれ31を含んだ状態で、テーブルを記憶部51に、仮補正テーブルをP1として記憶する。
【0082】
形状測定装置90の平面度校正方法としては、Z軸基準ミラー7の校正のため、前記測定データから、Z軸基準ミラー7のXY方向の測定範囲内の任意のXY位置に対するZ位置の補正量を仮補正テーブルP1として算出する必要がある。ここで、前記仮補正テーブルP1を使用して、X方向とY方向とのそれぞれに等間隔ピッチで、格子点230についてZ方向のZ軸基準ミラー7のひずみが補正量でそれぞれ補正される必要があり、前記任意のXY位置でのZ軸基準ミラー7の補正量を求める必要がある。
【0083】
<ステップS3:合成平面算出部54による任意のXY位置でのZ方向の補正量(Z位置補正量)の算出の関数、実施例>
格子状に保存された仮補正テーブルより、任意のXY位置34に対応する、補正量算出のために、ある1つのXY位置34(ただし、座標は(X,Y)とする。)を囲む周辺の4点の格子点230の位置、すなわち、座標(X0,Y0)の位置と、座標(X0,Y1)の位置と、座標(X1,Y0)の位置と、座標(X1,Y1)の位置とでのそれぞれのZ位置の補正量より、前記XY位置34でのZ位置の補正量dZsを合成平面算出部54で算出する。
【0084】
仮補正テーブルは、XY格子状に等間隔ピッチで構成されており、任意のXY位置34に対するZ軸基準ミラー7のZ位置の補正量dZsは、直線の一次補間関数にて、Z位置の補正量dZsを合成平面算出部54で算出する。
【0085】
任意のXY位置34の仮補正テーブルP1を合成平面算出部54で参照するために、全ての仮補正テーブルP1を合成平面算出部54で順番に探すと、計算時間が長くなるので、仮補正テーブルP1を合成平面算出部54で効率的に参照するために、参照テーブルRTの各ライン状の測定データの間隔ピッチであるX方向とY方向とのシフトピッチXh、Yhを用い、仮補正テーブルP1の参照のためのインデックスを合成平面算出部54で算出する。
【0086】
そのために、関数IintX(U)を定義する。例えば、XYの測定範囲(例えば直径500mmの円形範囲と一辺が400mmの正方形範囲との合計範囲)で、XY格子状に仮補正テーブルは作成される。が、この格子形状の仮補正テーブルの参照を高速に行うために、整数化のコマンド(int)を使って、高速参照を実行することができる。ここで、一般的な整数化の関数intでは、0から−1までの出力が0となる。この整数化の関数intを使用すると、参照位置に誤差を生じることになるため、新たに、関数IintX(U)を定義する。一般的な整数化の関数intと比較して、この新たに定義された関数Iintでは、−1〜0までの出力が−1とする点が異なるだけである。このような新たに定義された関数Iintを使用して、仮補正テーブルP1の効率的なデータ参照を合成平面算出部54で行う。関数IintX(U)は、
図7に示す実数Uの変化に対応して、Uを超えない最大の整数値を出力する、階段状の関数である。この関数IintX(U)を用い、XYの測定位置34より仮補正テーブルP1を合成平面算出部54で参照することにより、計算時の仮補正テーブルP1の参照の時間を高速化する。
【0087】
ここで、XY位置を整数のijで表し、整数でアドレス化した、XY位置とする。ここで、iとjとは、それぞれ整数であり、それぞれ、原点からのX方向及びY方向に何個目の測定位置を示すラベルであり、これをインデックスと呼ぶ。例えば、X位置をXdとし、Y位置をYdとし、格子化したX方向のピッチ及びY方向のピッチをXp,Ypとすると、
Xd=i*Xp
Yd=j*Yp
となり、格子のXY位置をijで表すことができる。
【0088】
また、XY位置34より、参照される周辺4点の位置33のインデックスは、
i=Iint{(X−Xh/2)/Xh}
j=Iint{(Y−Yh/2)/Yh}
i1=i+1
j1=j+1
で定義され、これらのインデックスを用いて、
図8におけるXY位置34の周辺の4点の位置33、すなわち、座標(X0,Y0)の位置と、座標(X0,Y1)の位置と、座標(X1,Y0)の位置と、座標(X1,Y1)の位置とのそれぞれの参照データを、合成平面算出部54で算出する。すなわち、校正に使用するZ方向の補正値は、H[i,j]の仮補正テーブルとして記憶部51に記憶されており、i、jを決定してi、jで読み出すと、i,jの格子位置でのZ方向の補正量を求めることができる。XY位置34を含むXYの有効範囲は、平面が定義されている範囲内である。なお、H[i,j]は、i,j格子位置でのZ方向の補正量である。また、格子位置をX方向に+1ずらしたZ方向の補正量がH[i+1,j]である。
【0089】
具体的には、周辺4点の位置33の座標のXの値におけるインデックスと、Yの値におけるインデックスとは、それぞれ、
X0=i*Xh、
Y0=j*Yh、
X1=(i+1)*Xh、
Y1=(j+1)*Yh、
とする。
【0090】
これを基に、
図8に示すように、
座標(X0,Y0)の位置でのZ方向の補正値は、H[i,j]であり、
座標(X0,Y1)の位置でのZ方向の補正値は、H[i,j+1]であり、
座標(X1,Y0)の位置でのZ方向の補正値は、H[i+1,j]であり、
座標(X1,Y1)の位置でのZ方向の補正値は、H[i+1,j+1]である。
【0091】
これらを基に、仮補正テーブルP1を合成平面算出部54で効率的に参照して、合成平面算出部54で参照データを算出する。合成平面算出部54で算出された周辺4点の位置33の参照データの値を用いて1次補間することにより、XY位置34でのZ位置の補正量dZsを合成平面算出部54で算出する。
【0092】
具体的には、左側(X−)のラインをZ0とし、右側(X+)のラインをZ1とし、任意のXY位置34での仮のZ位置の補正量をZhとすると、
Z0=(H[i+1,j]−H[i,j])*(X−X0)/(X1−X0)+H[i,j]、
Z1=(H[i+1,j+1]−H[i,j+1])*(X−X0)/(X1−X0)+H[i,j+1]、
Zh=(Z1-Z0)*(Y-Y0)/(Y1-Y0)+Z0
の周辺4点の位置33からの直線補間にて、XY位置34でのZ位置の補正量Zhを合成平面算出部54で算出する。よって、4つの格子点位置での仮補正テーブルでの補正量をH[i,j],H[i,j+1],H[i+1,j],H[i+1,j+1]として表すことができる。Z0はH[i,j],H[i,j+1]上のY位置での補正量であり、Z1はH[i+1,j],H[i+1,j+1]上のY位置での補正量である。XY任意の位置でのZ補正量を、周りの4点(4つの格子点)のZ方向の補正量より求めたのが、dZ1(X,Y)である。
【0093】
これにより、任意のXY位置34での仮のZ位置の補正量Zhを合成平面算出部54で算出し、仮の補正量をdZ1(X,Y)とすると、
dZ1(X,Y)=Zh
として、合成平面算出部54で仮の補正量dZ1(X,Y)を求める。
【0094】
この関数を用い、XY有効範囲内で、任意のXY位置34に対するZ位置の補正量Zhを合成平面算出部54で算出し、その後、バーミラー9aの結合された合成平面のデータによる、ねじれ31のある合成平面44の表面形状を、仮補正テーブルP1を用いて、合成平面算出部54で求める。
【0095】
<ステップS4及びS5:ねじれ誤差の補正>
格子状にバーミラー9aを用いて測定データ取得装置52で測定されてX方向とY方向との測定データをそれぞれ取得し(ステップS1を参照)、XYの格子点230がZ方向で一致するようにデータ移動部53でデータを移動させた(ステップS2を参照)後に、合成平面算出部54で前記データ同士が結合された(ステップS3を参照)合成平面44は、ねじれ31の状態を含んでいる。
【0096】
図9Aにねじれ31の一例としての凸ひずみ35のある合成平面39Aの例を示す。
図9Bにねじれ31の無い合成平面39Bの例を示す。
図9Cにねじれ31の別の例としての凹ひずみ37のある合成平面39Cの例を示す。ここで、
図9A〜
図9Cの各X方向を測定データのX方向の位置とし、各Y方向を測定データのY方向の位置とし、dZsをねじれ31により発生したZ方向の誤差であるねじれ補正量とし、ねじれ補正係数をφとする。ここで、Z方向のねじれ補正量dZsは、
dZs=X*Y*φ
として、ねじれ31により発生したZ方向の誤差であるねじれ補正量dZsを表す。
【0097】
以下に、ステップS4における、ねじれ補正係数φの取得方法について、以下に、2つの方法、すなわち、第一の方法及び第二の方法として説明する。この2つの方法のいずれかを使用すればよい。
【0098】
<ステップS4:(1)第一の方法>
第一の方法は、
図9Bに直線36で示すように、バーミラー9aを対角に設置する。例えば、X方向及びY方向のそれぞれとは45°傾斜した斜め45°の方向(言い換えれば、矩形の測定予定範囲の対角に相当する方向)の直線36に沿ってバーミラー9aを設置し(ステップS4a)、斜め方向の測定データ(以下、「斜めライン状の測定データ」と呼ぶ。)の取得した(ステップS4b)のち、ねじれ補正係数φをねじれ補正係数決定部55で算出する(ステップS4c)方法である。
【0099】
(ステップS4a) まず、ねじれ補正係数決定部55による、ねじれ31を補正するねじれ補正係数φの算出のために、バーミラー9aを、X方向とY方向とのそれぞれに対して斜め45°の方向に直線36に沿って下部石定盤91に設置する。
【0100】
(ステップS4b) 次いで、斜めライン状の測定データの取得を、X座標検出装置93XとY座標検出装置93Yとで構成される測定データ取得装置52で行う。
【0101】
(ステップS4c) 次いで、合成平面にねじれ31のある状態で、前記仮補正テーブルP1を用いて合成平面の表面形状を求めるとき、ねじれ補正係数φが不適切な場合には、斜め45°の設置ラインの直線36に沿って設置した斜めライン状の測定データは、凸ひずみ35あるいは凹ひずみ37のように、バーミラー9aの測定データが変形することになる。この状態を
図9A及び
図9Cに示す。
【0102】
図9Bは、合成平面39Bがひずんでいない場合の測定結果であり、XY斜め45°方向の直線36に沿って設置したバーミラー9aの斜めライン状の測定データも、直線36に沿った直線状の正しい測定データが取得できる。
【0103】
しかし、ねじれ補正係数φが正しくない場合、
図9A又は
図9Cの様に、斜め45°の直線36に沿って設置されたバーミラー9aの斜めライン状の測定データは、直線にならず、
図9Aの凸ひずみ35、あるいは
図9Cの凹ひずみ37のような斜めライン状の測定データの測定結果が得られる。
【0104】
ここで、ねじれ補正係数決定部55は、一例として、表面形状を算出するソフトウエアで構成することができる。このような構成のねじれ補正係数決定部55は、ねじれ補正係数φを変更することで、測定した測定データの再計算が行え、斜め45°の直線36に設置したバーミラー9aの再評価が行えるように、ソフトウエアを構成しておくことができる。バーミラー9aの固有のひずみは、前記<バーミラーデータ歪の校正>において説明したように取り除かれているので、ねじれ31により発生した誤差成分のねじれ補正量dZsの校正を行なうことが可能である。
【0105】
この状態で、斜め45°の直線36のバーミラー9aの斜めライン状の測定データが、本来のバーミラー形状である直線データとなるように、ねじれ補正係数決定部55が、ねじれ補正係数φを変化させ、ライン形状と平面との差の二乗和が最小になるように収束計算等を行って、ねじれ補正係数φの数値を決定してXY位置に応じたねじれ補正量dZsをねじれ補正係数決定部55で補正しつつ算出する。
【0106】
以上で第一のねじれ補正係数φの決定手順でのねじれ補正係数決定部55でのねじれ補正係数φの算出を完了する。
【0107】
<ステップS4:(2)第二の方法>
第二の方法は、バーミラー9aとは異なる、別の測定サンプル41を用意し、その測定サンプル41の測定データを取得したのち、Z軸周りのC方向に90°回転設置して測定データを再び取得して、ねじれ補正係数φをねじれ補正係数決定部55で算出する方法である。
【0108】
以下に、第一の方法とは異なる第二の方法にかかるねじれ補正係数φの決定の実施例を記載する。
【0109】
(ステップS4d) まず、
図10の(a)に示すように、平面よりZ方向にうねりを有する、すなわち、例えば100nm程度ずれてひずんだ(言い換えれば、100nmのうねり41bを有する)、平面のミラー等の、平面サンプル41を用意する。この平面サンプル41を、その姿勢判別マーク41aがZ軸周りにC方向の0°の第1位置42の状態で下部石定盤91に設置する。
【0110】
(ステップS4e) 次いで、正方格子状に、ねじれ補正係数φが未決定の状態でひずんだ平面エリア(
図10の上面)41cを矩形に測定を行い、前記仮補正テーブルP1を用いて表面形状の第1測定データを測定データ取得装置52で求め、求めた第1測定データを記憶部51に記憶する。ねじれ補正係数φは校正されていないので、この第1測定データは、ねじれのある状態の表面形状のデータである。
【0111】
図10の(a),(b)では、平面サンプル41は、波板状に歪んだ形状例を示しているが、平面サンプル41としては、回転方向及び回転量がわかるサンプル形状であれば任意の形状でもよい。
【0112】
(ステップS4f) 次に、平面サンプル41を、Z軸周りのC方向に90°だけ回転させ、回転した第2位置43の状態で下部石定盤91に設置する。すなわち、Z軸周りのC方向に90°だけ回転した第2位置43を、正方格子状に矩形に測定し、前記仮補正テーブルP1を用いて表面形状の第2測定データを測定データ取得装置52で求め、求めた第2測定データを記憶部51に記憶する。ここで、ねじれ補正係数φは校正されていないので、この第2測定データは、
図10のねじれのある状態の表面形状のデータである。
【0113】
(ステップS4g) 次に、Z軸周りのC方向に90°だけ回転して測定した第2測定データを、データ移動部53でZ軸周りのC方向に−90°だけ回転し、第2測定データの座標が回転する前と同じ位置まで第2測定データをデータ移動部53で回転して、第3測定データを取得する。この際、測定した測定サンプル41の第3測定データは、第2測定データから90°回転することで、第1測定データと同じ形状になるが、形状測定装置90に起因のねじれの部分の形状は、Z軸周りのC方向の0°設置時の第1測定データに比べ、Z軸周りのC方向に90°だけ異なる形状のデータとなる。
【0114】
(ステップS4h) この第3測定データと、Z軸周りのC方向の0°に設置して同じ経路で測定した第1測定データとのXY方向の各同一XY位置での格子点230での平面測定結果として、Z方向のデータの差を差分算出部58で算出する。差分算出部58での算出した結果には、ねじれ補正係数φは校正されていないので、
図9A、あるいは
図9Cに示す、ねじれ状態の差分結果が求まる。
【0115】
(ステップS4i) 次に、差分算出部58での算出した差分データと平面との差が最小となるようにねじれ補正係数φを変化させる収束計算等をねじれ補正係数決定部55で行うことにより、新たなねじれ補正係数φの数値をねじれ補正係数決定部55で決定する。
【0116】
以上で、ねじれ補正係数決定部55での、第二のねじれ補正係数φの決定手順での算出を完了する。
【0117】
ねじれ補正係数決定部55でのねじれ補正係数φの校正は、上記第一の方法か第二の方法のいずれかで校正する。
【0118】
<ステップS5:平面度校正の運用例>
この校正された、ねじれ補正係数φを補正部56で用いる。具体的には、前記XY格子状に測定したバーミラー9aの測定データで、各ライン状の測定データごとに、バーミラー9aのひずみを補正部56で補正し、この補正された各ライン状の測定データをXY位置が一致するように、XY方向の格子点230を結合し、ねじれ補正係数φを用いて合成平面39のねじれ補正量dZsを補正するように、仮補正テーブルに前記ねじれ補正係数φを補正部56で適用し、Z軸参照平面のねじれを校正されたZ軸参照平面データすなわち補正テーブルを補正部56で作成し、3次元の形状測定装置90のZ軸基準ミラー7のための補正テーブルとして校正に使用する。
【0119】
<効果>
この校正で使用するバーミラー9aとして、例えば国家機関等で校正し、トレーサビリティーのある平面度校正データのあるバーミラー9aを用いることができる。バーミラー9aを用いて、各ライン状の測定データの測定値を校正すると、より高精度で、信頼性の高い平面度校正を行なうことが可能である。すなわち、バーミラー9aを用いて取得したX方向とY方向との各ライン状の測定データを格子状に組み合わせ、各格子点230でZ方向にデータを互いに接近する方向に移動させ、Z方向の差である、ねじれ補正量dZsが最小となるように、ねじれ補正係数φを決定する。決定したねじれ補正係数φを用い、合成平面39のねじれ補正量dZsを補正部56で補正して、ねじれ補正係数φを用いて補正された合成平面39のねじれ補正量dZsを使用して、Z軸基準ミラー7のXY方向の測定範囲の平面度を校正することができる補正テーブルを取得できる。このように構成することにより、高精度な平面度校正を行なう際の、ねじれを補正するデータの交点部230での誤差の影響を低減することができて、高精度な平面度校正方法及び装置を提供することができる。
【0120】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。