(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記生体に接触する第二電極によって検出される生体信号が入力される第二チョッパ増幅回路であって、第二制御信号に基づいてチョッパ制御される第二チョッパ増幅回路を備え、
前記制御部は、
前記生体信号計測モードの動作において、第二周波数の前記第二制御信号を前記第二チョッパ増幅回路に出力し、
前記テストモードの動作において、前記第二周波数と異なる周波数の前記第二制御信号を前記第二チョッパ増幅回路に出力する
請求項1または2に記載の生体信号計測装置。
さらに、前記第一チョッパ増幅回路から出力される信号を増幅する第三チョッパ増幅回路であって、第三制御信号に基づいてチョッパ制御される第三チョッパ増幅回路を備え、
前記制御部は、
前記生体信号計測モードの動作において、第三周波数の前記第三制御信号を前記第三チョッパ増幅回路に出力し、
前記テストモードの動作において、前記第三周波数と異なる周波数の前記第三制御信号を前記第三チョッパ増幅回路に出力する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体信号計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0014】
(実施の形態)
[生体信号計測システムの概要]
図1は、実施の形態に係る生体信号計測システム100の構成を示す外観図である。
図1では、計測の対象となる被験者5も併せて図示されている。
【0015】
生体信号計測システム100は、被験者5の生体信号を計測するシステムであり、ヘッドセット10、情報処理装置20、及び、提示部30を備える。ヘッドセット10、情報処理装置20及び提示部30は、それぞれ有線通信又は無線通信によって接続され、装置間で情報を送受信する。
【0016】
ヘッドセット10は、生体信号を検出する装置の一例であり、後述する脳波計の構成を有する。被験者5の頭部には、複数の電極51(
図2A及び
図2B参照)が装着される。複数の電極51は、生体信号を計測する計測電極51aと、計測電極で計測した電位との差を計算するために用いられる基準電位を計測する参照電極51bとを含む。また、ヘッドセット10は、被験者5が生体信号計測システム100に対して操作情報を入力する操作入力装置10a(
図5参照)を備え、所望の処理を実現するための操作が入力される。なお、生体信号計測システム100を構成する生体信号検出装置としては、脳波計に限られず、体、手、足等に貼り付けた電極から心電図信号(Electrocardiogram(ECG)信号)を検出する心電計であってもよい。
【0017】
情報処理装置20は、ヘッドセット10からの操作入力を受け取り、所定の処理を実施する。例えば、情報処理装置20は、コンピュータであってもよい。ここでいう「所定の処理」とは、ゲーム、健康管理、学習等、家庭用のコンピュータで実施されるようなアプリケーションの総称である。
【0018】
提示部30は、情報処理装置20で行われた処理結果を提示する出力デバイスである。ここでいう「提示する」とは、映像をディスプレイに表示すること、及び/又は音声をスピーカから出力することの両方を含む。すなわち、提示部30は、画像情報を表示し、又は、音響情報を出力するディスプレイ及び/又はスピーカである。
【0019】
[ヘッドセットの構成]
図2A及び
図2Bは、ヘッドセット10の形状及び概略構成の一例を示す図である。
図2Aは、ヘッドフォン型のヘッドセットを示し、
図2Bは、バンド型のヘッドセットを示す。被験者5は、
図2A及び
図2Bに示されるヘッドセット10を頭部に装着する。
【0020】
図2Aに示されるヘッドセット10は、被験者5の頭部に沿うようにアーチ状のヘッドフォン型の形状を有している。
図2Aに示されるヘッドセット10は、図示されるように、複数の電極51、装着部40、及び耳当て46を備える。
【0021】
装着部40は、被験者5の頭部に装着される、複数の電極51が設けられたアーチ状の部材である。装着部40は、操作面43、外側面44及び装着面45を含む。外側面44は、被験者5がヘッドセット10を装着したときに被験者5の頭部と反対側に配置される面である。装着面45は、被験者5がヘッドセット10を装着したときに被験者5の頭部側に配置される面である。操作面43は、操作ボタン41及び表示部47を有する。複数の電極51は、ヘッドセット10の装着面45と、耳当て46の端であってヘッドセット10の装着面45と同一側の面とに設けられている。
【0022】
被験者5は、ヘッドセット10を装着する前に、操作面43に配置された操作ボタン41を操作してヘッドセット10を起動し、その後に、ヘッドセット10を頭部に装着する。ヘッドセット10は、例えば、
図2Aの紙面に向かって左の耳当て46が被験者5の右耳、
図2Aの紙面に向かって右の耳当て46が被験者5の左耳に位置するように、被験者5の頭部に装着される。また、耳当て46は、被験者5の左右の耳を覆うように当てられる。装着面45に設けられた電極51は、被験者5の皮膚(つまり、頭皮)に当てられる。耳当て46の端に設けられた電極51は、被験者5の耳の後ろに当てられる。
図2Aの紙面に向かって左の耳当て46の端に設けられた電極51は、後述するアース電極とし、
図2Aの紙面に向かって右の耳当て46の端に設けられた電極51は後述する参照電極とし、その他の電極51は計測電極としてもよい。なお、アース電極及び参照電極の配置位置は、これに限られず、
図2Aの紙面に向かって右の耳当て46の端に設けられた電極51をアース電極とし、
図2Aの紙面に向かって左の耳当て46の端に設けられた電極51を参照電極としてもよい。
【0023】
操作面43は、表示部47に操作の状態及びアプリケーションの処理結果等を表示する。
【0024】
図2Bに示されるヘッドセット10は、被験者5の頭部に巻きつけて装着されるバンド型の形状を有している。このバンド型のヘッドセット10は、複数の電極51、及び、装着部40を備える。装着部40は、被験者5の頭部に装着される、複数の電極51が設けられた環状の部材である。装着部40は、操作面43、外側面44及び装着面45を含む。電極51、操作面43の構成は、
図2Aに示されるヘッドフォン型のヘッドセット10と同様である。
【0025】
被験者5はヘッドセット10を装着する前に、操作面43に配置された操作ボタン41を操作してヘッドセット10を起動し、その後に、バンド型のヘッドセット10の外側面44の半分(操作面43の側)が被験者5の額に来るように装着する。電極51は、装着面45に配置されており、被験者5の額に接触される。なお、複数の電極51のうちアース電極に相当する電極51及び参照電極に相当する電極51は、装着面45からリード線(図示せず)を延長して耳の後ろに当てる構成であってもよい。操作面43には、さらに表示部47が備えられ、表示部47に、操作の状態やアプリケーションの処理結果を表示することができる。なお、アース電極とは、一般的に言うグランド電極(接地電位を有する電極)のことではなく、被験者5において基準電位となる電位を有する電極のことをいう。
【0026】
[電極形状]
図3A〜
図3Eは、被験者5の皮膚と接触する電極51の接触面の形状例を示す図である。電極51の材料は、導電性の物質によって構成される。電極51の材料の一例は、金、又は、銀である。望ましい電極51の材料は、銀−塩化銀(Ag/AgCl)である。銀−塩化銀は生体と接触した場合の分極が少なく、かつ分極電圧が安定しているためである。
【0027】
電極51の接触面の形状は、医療用で使われる電極と同様の、
図3Aに示される円形(例えば、直径10mm)でもよいし、それ以外にも、用途によってさまざまな形状としてもよい。例えば、
図3Bに示されるような三角形や、
図3Cに示されるように四角形又は正方形であってもよい。
【0028】
また、ヘッドフォン型のヘッドセット10の装着面45に配置する電極51としては、
図3Dに示されるように、複数の円柱(図中では5本)で構成された電極51としてもよい。この構成によれば、被験者5の皮膚に電極51を接触させるため、髪の毛をかき分けることができる。なお、各円柱における皮膚との接触面は、
図3Dに示されるように円形であってもよいし、楕円等の他の形状であってもよい。また、電極51の形状は、円柱に限られず、角柱であってもよい。円柱又は角柱の数は、
図3Dに示されるように5本であってもよいし、5本に限られず、適宜、変更してもよい。また、
図3Dに示される個々の円柱の先端は、皮膚との接触面側に角が取れた(つまり、丸みをもつ)形状でもよい。これにより、各円柱と皮膚との接触面積を増加することができる。
【0029】
また、
図3Eに示されるように、電極51の形状は、被験者5の皮膚との接触面が同心円状である電極51であってもよい。この形状の電極51は、例えば
図2Aのヘッドフォン型のヘッドセット10の耳当て46又は
図2Bのバンド型のヘッドセット10で用いられ、額や耳の後ろなど、髪の毛の無い箇所に接触される。
図3Eに示される形状の電極51は、
図3Dに示される形状の電極51に比べて皮膚への圧力が緩和されるので、被験者5が受ける負担が緩和される。
【0030】
[生体信号計測システムの構成]
図4は、生体信号計測システム100の全体構成を示すブロック図である。上述したように、生体信号計測システム100は、ヘッドセット10、情報処理装置20及び提示部30を備える。ヘッドセット10は、操作入力装置10a及び生体信号計測装置10bを備える。
【0031】
ヘッドセット10は、操作入力装置10aにおいて被験者5の操作入力を受け、生体信号計測装置10bにおいて操作時の被験者5の生体信号を計測する。ヘッドセット10で計測された生体信号は、情報処理装置20に送信される。
【0032】
情報処理装置20は、操作入力装置10a又は生体信号計測装置10bからの入力を受けて、所定の処理を実施し、提示部30に対して処理結果を出力する。ヘッドセット10と情報処理装置20とは、無線通信又は有線通信によって接続される。
【0033】
図5は、ヘッドセット10及び情報処理装置20の詳細な構成を示す機能ブロック図である。ここでは、ヘッドセット10と情報処理装置20とが無線通信によって接続される場合を例として説明する。
【0034】
操作入力装置10aは、操作入力部11及び操作信号出力部12を備える。
【0035】
操作入力部11は、操作ボタン41(
図2A及び
図2B参照)から入力された操作入力情報を取得し、操作の内容を判定する入力器である。操作信号出力部12は、操作入力部11で取得された操作入力情報を情報処理装置20に送信する送信器である。操作入力部11で取得された操作入力情報は、操作信号出力部12から情報処理装置20に向けて送信される。
【0036】
生体信号計測装置10bは、電極部13、生体信号増幅部14及び生体信号出力部15を備える。
【0037】
電極部13は、複数の電極51で構成される。複数の電極51は、上述したように、計測電極と参照電極とで構成される。複数の電極51は、例えば、被験者5の皮膚に接触する位置に配置される。
【0038】
生体信号増幅部14は、複数の電極51の間の電位差に相当する生体信号を増幅するアンプである。具体的には、生体信号増幅部14は、被験者5の皮膚に配置された計測電極51a(
図6参照)と、複数の電極51のうち被験者5の耳の後ろに配置された参照電極51b(
図6参照)との間の電位差を計測し、計測した電位差を増幅する。増幅された電位差は、例えば、生体信号増幅部14に設けられたA/Dコンバータ(図示せず)によりデジタル信号に変換される。生体信号出力部15は、生体信号増幅部14で増幅された電位差を情報処理装置20に送信する送信器である。生体信号増幅部14においてデジタル値に変換された生体信号の電位差は、生体信号出力部15より情報処理装置20に送信される。
【0039】
なお、生体信号増幅部14は、所定以上の電位の大きさの生体信号を計測できる場合には、生体信号を増幅する必要は無く、複数の電極51の電位を測定するだけでもよい。
【0040】
情報処理装置20は、操作信号取得部21、生体信号取得部22、生体信号処理部23、アプリケーション処理部(アプリ処理部)26、表示情報出力部27及び音響情報出力部28を備える。
【0041】
情報処理装置20は、操作入力情報を操作信号取得部21において受信し、生体信号を生体信号取得部22において受信することで、ヘッドセット10からの情報を受信する。
【0042】
生体信号は、記録されただけの原信号では情報として使用できないことが多い。そのため、生体信号処理部23において原信号から意味のある情報を抽出する処理が行われる。生体信号処理部23は、例えば、脳波計測の場合には、特定の周波数(例えば10Hz)の信号を抽出し、当該周波数での信号のパワースペクトル密度(Power Spectral Density)を算出する。なお、生体信号処理部23は、情報処理装置20ではなくヘッドセット10側に配置されてもよい。つまり、本実施の形態においては、ヘッドセット10と生体信号処理部23とにより電子機器が構成されてもよい。
【0043】
アプリケーション処理部26では、情報処理装置20の中心的なアプリケーション処理(アプリ処理)が行われる。アプリケーション処理は、ヘッドセット10から信号の入力を受けて所定の処理を行うことで実現される。所定の処理とは、例えば、ゲームアプリにおけるゲーム進行、健康管理アプリにおける記録・データ管理・表示、学習アプリにおける出題・採点・結果表示などである。
【0044】
アプリケーション処理部26で処理された結果は、アプリケーション処理部26から表示情報出力部27及び音響情報出力部28に出力される。表示情報出力部27及び音響情報出力部28は、アプリケーション処理部26で処理された結果を被験者5にフィードバックするために、視覚的又は聴覚的な信号を提示部30に出力する。
【0045】
提示部30は、表示情報出力部27及び音響情報出力部28から出力された信号を提示(つまり、表示及び/又は音声出力)する。これにより、信号が被験者5に提示される。提示部30は、例えば、テレビ、ディスプレイ、又は、スピーカである。
【0046】
[ヘッドセットのハードウェア構成]
図6は、ヘッドセット10のハードウェア構成を示すブロック図である。ヘッドセット10は、操作ボタン群71、制御信号変換回路72、計測電極51a、参照電極51b、アース電極51c、第三チョッパ増幅回路74、A/Dコンバータ75、送信回路79、信号処理ユニット78、アンテナ80、及びバッテリ81を備える。
【0047】
このうち、操作ボタン群71と制御信号変換回路72とは、
図5に示した操作入力部11に対応する。操作ボタン群71における各ボタンは、操作ボタン41に対応する。また、計測電極51aと、参照電極51bと、アース電極51cとは、
図2A及び
図2Bに示した電極51及び
図5に示した電極部13に対応する。第三チョッパ増幅回路74及びA/Dコンバータ75は、生体信号増幅部14に含まれる。
【0048】
また、信号処理ユニット78は、CPU101、RAM102、プログラム103及びROM104を有する。また、送信回路79とアンテナ80とは、
図5に示した生体信号出力部15及び/又は操作信号出力部12として機能する。送信回路79とアンテナ80とを「出力部」又は「送信器」と呼ぶこともある。
【0049】
これらの各構成要素は、互いにバス105で接続され、相互にデータの授受が可能である。また、ヘッドセット10は、バッテリ81を電源として動作する。
【0050】
操作ボタン群71に関する各ボタンの押下情報は、制御信号変換回路72においてヘッドセット10の動作を制御する制御信号に変換され、バス105を経由してCPU101に送られる。
【0051】
第三チョッパ増幅回路74には、計測電極51aと参照電極51bとアース電極51cとが直接、接続、又は、バッファアンプ等を経て接続される。これらの電極は、ヘッドセット10の所定の場所に設置される。計測電極51aと参照電極51bとの間の電位差は、第三チョッパ増幅回路74で増幅され、A/Dコンバータ75でアナログの生体信号からデジタルの生体信号に変換される。デジタルの生体信号に変換された電位差は、処理や送信可能な生体信号としてバス105を経由してCPU101に送られる。
【0052】
CPU101は、RAM102に格納されたプログラム103を実行する。プログラム103には、後述する
図8のフローチャートに示される、ヘッドセット10における信号の処理手順が記述されている。ヘッドセット10は、このプログラム103に従って操作信号と生体信号をデジタル信号に変換し、送信回路79を経由してアンテナ80より送信する。プログラム103は、ROM104に格納される場合もある。
【0053】
なお、信号処理ユニット78、制御信号変換回路72、送信回路79、第三チョッパ増幅回路74、及びA/Dコンバータ75は、1つの半導体集積回路にコンピュータプログラムを組み込んだDSP(Digital Signal Processor)等のハードウェアとして実現されてもよい。1つの半導体集積回路に実装すると、実装面積が削減され、消費電力が低減される効果も得られる。
【0054】
また、第三チョッパ増幅回路74とA/Dコンバータ75とを1つの半導体集積回路に集積し、信号処理ユニット78と制御信号変換回路72と送信回路79とを別の半導体集積回路に集積し、2つの半導体集積回路同士を1つのパッケージ内で接続してSiP(システム・イン・パッケージ)として統合し、コンピュータプログラムを組み込んだDSP等のハードウェアとして実現されてもよい。上記2つの半導体集積回路を別々の製造プロセスで実現することで、1つの半導体集積回路に実装したものに比べコストが低減される効果も得られる。
【0055】
[情報処理装置のハードウェア構成]
図7は、情報処理装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。情報処理装置20は、アンテナ83、受信回路82、信号処理ユニット108、画像制御回路84、表示情報出力回路85、音響制御回路86、音響情報出力回路87及び電源88を備える。これらの構成要素のうち、アンテナ83と受信回路82とは、
図5に示した生体信号取得部22及び/又は操作信号取得部21に対応する。これらを「受信器」と呼ぶこともある。
【0056】
信号処理ユニット108は、CPU111、RAM112、プログラム113及びROM114を有する。信号処理ユニット108は、
図5に示した生体信号処理部23及び/又はアプリケーション処理部26に対応する。画像制御回路84及び表示情報出力回路85は、
図5に示した表示情報出力部27に対応する。また、音響制御回路86及び音響情報出力回路87は、
図5に示した音響情報出力部28に対応する。これらは互いにバス115で接続され、相互にデータの授受が可能である。また、それぞれの回路には電源88から電力が供給される。
【0057】
ヘッドセット10からの操作情報及び生体情報はアンテナ83を経由して受信回路82で受信され、バス115を経由してCPU111に送られる。
【0058】
CPU111は、RAM112に格納されたプログラム113を実行する。プログラム113には、後述する
図8のフローチャートに示される、情報処理装置20における信号の処理手順が記述されている。情報処理装置20は、このプログラム113に従って操作信号と生体信号とを変換し、所定のアプリケーションを実行するための処理を行い、被験者5に画像や音響によってフィードバックを行うための信号を生成する。プログラム113は、ROM114に格納される場合もある。
【0059】
信号処理ユニット108で生成された画像のフィードバック信号は、画像制御回路84を経由して表示情報出力回路85から提示部30に出力される。同様に、信号処理ユニット108で生成された音響のフィードバック信号は、音響制御回路86を経由して音響情報出力回路87から出力される。
【0060】
なお、信号処理ユニット108と受信回路82と画像制御回路84と音響制御回路86とは、1つの半導体集積回路にプログラムを組み込んだDSP等のハードウェアとして実現されてもよい。1つの半導体集積回路にすると、消費電力が低減される効果も得られる。
【0061】
[生体電位測定システムの動作]
次に、以上のように構成された本実施の形態に係る生体信号計測システム100の動作について説明する。
【0062】
図8は、生体信号計測システム100の基本的な処理のフローを示すフローチャートである。ステップS11からステップS14まではヘッドセット10における処理(ステップS10)を示し、ステップS21からステップS25までは情報処理装置20における処理(ステップS20)を示す。
【0063】
はじめに、ヘッドセット10における処理ステップS10について説明する。
【0064】
<ステップS11>
操作入力部11は、被験者5により行われた操作入力を受け付ける。具体的には、受付のタイミングでどの操作ボタン41が押されているかを検出する。受付のタイミングの例は、操作ボタン41が押下された時である。操作ボタン41が押下されたか否かの検出は、例えば、操作ボタン41が押下されたときの機械的なボタン位置の変化、又は、電気信号の変化を検出することにより行われる。また、操作入力部11は、押下された操作ボタン41の種類により、操作入力部11が受け付けた操作入力の種類を検出し、操作信号出力部12に伝達する。
【0065】
<ステップS12>
操作信号出力部12は、操作入力部11が受け付けた操作入力に対応する操作信号を情報処理装置20に送信する。
【0066】
<ステップS13>
生体信号増幅部14は、電極部13における複数の電極51の間の電位差に相当する生体信号を測定し、増幅する。例えば、電極部13における複数の電極51のうち、右側頭部(国際10−20法のC4の電極位置)に配置された計測電極51aと参照電極51bとの間の電位差を測定する。また、生体信号増幅部14は、測定した生体信号を増幅する。増幅された生体信号は、生体信号増幅部14から生体信号出力部15へ伝達される。
【0067】
<ステップS14>
さらに、生体信号出力部15は、伝達された生体信号を情報処理装置20へ送信する。
【0068】
なお、ヘッドセット10における処理ステップS10において、ステップS11及びステップS12と、ステップS13及びステップS14とは、それぞれ並列な処理として行ってもよく、ステップS11からステップS14の処理を、全て上述した順序どおりに行う必要は無い。
【0069】
次に、情報処理装置20における処理ステップS20について説明する。
【0070】
<ステップS21>
情報処理装置20において、操作信号取得部21は、操作信号出力部12からの操作信号を受信する。操作信号取得部21は、受信した操作信号をアプリケーション処理部26に伝達する。
【0071】
<ステップS22>
生体信号取得部22は、生体信号出力部15からの生体信号を受信する。生体信号取得部22は、受信した生体信号を、生体信号処理部23に伝達する。
【0072】
<ステップS23>
生体信号取得部22にて受信した生体信号を、生体信号処理部23にて分析処理して、意味のある情報を抽出する。例えば、所定の周波数成分の生体信号を抽出する。所定の周波数成分とは、例えば脳波の計測の場合には10Hzである。
【0073】
<ステップS24>
アプリケーション処理部26は、操作信号取得部21からの操作信号と生体信号処理部23からの生体信号を受けて、現在のアプリを実行するための所定の処理を行う。所定の処理とは、上述したように、例えば、ゲームアプリにおけるゲーム進行、健康管理アプリにおける記録・データ管理・表示、学習アプリにおける出題・採点・結果表示などである。
【0074】
<ステップS25>
アプリケーション処理部26の処理結果を被験者5にフィードバックするために、表示情報出力部27は映像情報を提示部30に出力し、音響情報出力部28は音響情報を提示部30に出力する。これにより、提示部30からは、処理結果に対応する画像及び音が出力される。
【0075】
なお、情報処理装置20における処理ステップS20において、ステップS22及びステップS23と、ステップS24の処理は、それぞれ並列な処理として行ってもよい。また、アプリケーション処理部26は、操作信号取得部21からの操作信号と生体信号処理部23からの生体信号の両方の信号を用いて処理を行う必要はなく、生体信号のみを用いて処理を行ってもよい。その場合には、操作信号を受信するステップS21を省略することもできる。
【0076】
以上のような処理のフローによって、生体信号計測システム100は、被験者5から脳波又は心電等の生体情報を得ることができる。
【0077】
[生体信号計測装置の詳細な構成]
次に、ヘッドセット10が備える生体信号計測装置10bの詳細な構成について説明する。
図9は、ヘッドセット10が備える生体信号計測装置10bの詳細な構成を示す回路ブロック図である。
図9には、ヘッドセット10が備えるハードウェア構成のうち、生体信号計測装置10bに関連するハードウェア構成が示されている。
【0078】
生体信号計測装置10bは、計測電極51a、参照電極51b、スイッチ素子Sa1、スイッチ素子Sa2、スイッチ素子Sb1、スイッチ素子Sb2、第一チョッパ増幅回路52a、第二チョッパ増幅回路52b、第一ハイパスフィルタ53a、第二ハイパスフィルタ53b、生体信号増幅部14、生体信号出力部15、制御部60、及び操作ボタン41で構成される。
【0079】
スイッチ素子Sa1及びスイッチ素子Sa2は、制御部60から出力されるスイッチ制御信号SCS1に応じて、第一チョッパ増幅回路52aに計測電極51aによって検出される生体信号を入力するか基準電圧源の基準電圧(例えば、0.9V)を入力するかを切り替える。スイッチ素子Sa1及びスイッチ素子Sa2は、例えば、FET(Field Effect Transistor)であるが、その他のスイッチ素子であってもよい。
【0080】
第一チョッパ増幅回路52aは、生体に接触する計測電極51aによって検出される生体信号が入力される増幅器である。計測電極51aは、第一電極の一例である。第一チョッパ増幅回路52aは、いわゆるバッファアンプとして機能し、インピーダンス変換を行う。第一チョッパ増幅回路52aは、電圧増幅を行わない(電圧増幅率は1である)が、電圧増幅を行ってもよい。なお、本明細書において、「増幅回路」又は、「増幅器」の用語は、必ずしも1よりも大きな電圧増幅率をもつ増幅回路又は増幅器だけに限られず、電圧増幅率が1以下であるアンプも含まれる。
【0081】
第一チョッパ増幅回路52aは、入力部に設けられた変調用のチョッパ回路、及び、出力部に設けられた復調用のチョッパ回路を有し、チョッパ回路は、制御部60から出力される第一制御信号CS1の周波数に応じてチョッパ制御を行う。つまり、第一チョッパ増幅回路は、第一制御信号CS1に基づいてチョッパ制御される。第一制御信号CS1は、基本的には、ハイレベル及びローレベルの二値のいずれかの値となるチョッパクロックである。このようなチョッパ制御によれば、低周波ノイズを抑制することができる。
【0082】
スイッチ素子Sb1及びスイッチ素子Sb2は、制御部60から出力されるスイッチ制御信号SCS2に応じて、第二チョッパ増幅回路52bに参照電極51bによって検出される生体信号を入力するか基準電圧源の基準電圧(例えば、0.9V)を入力するかを切り替える。スイッチ素子Sb1及びスイッチ素子Sb2は、例えば、FETであるが、その他のスイッチ素子であってもよい。
【0083】
第二チョッパ増幅回路52bは、生体に接触する参照電極51bによって検出される生体信号が入力される増幅器である。参照電極51bは、第二電極の一例である。第二チョッパ増幅回路52bは、いわゆるバッファアンプとして機能し、インピーダンス変換を行う。第二チョッパ増幅回路52bは、電圧増幅を行わない(電圧増幅率は1である)が、電圧増幅を行ってもよい。
【0084】
第二チョッパ増幅回路52bは、入力部に設けられた変調用のチョッパ回路、及び、出力部に設けられた復調用のチョッパ回路を有し、チョッパ回路は、制御部60から出力される第二制御信号CS2の周波数に応じてチョッパ制御を行う。つまり、第二チョッパ増幅回路は、第二制御信号CS2に基づいてチョッパ制御される。第二制御信号CS2は、基本的には、ハイレベル及びローレベルの二値のいずれかの値となるチョッパクロックである。このようなチョッパ制御によれば、低周波ノイズを抑制することができる。
【0085】
第一ハイパスフィルタ53aは、第一チョッパ増幅回路52aからの出力信号の不要な低周波成分を除去するフィルタである。第一ハイパスフィルタ53aは、例えば、カットオフ周波数が0.5Hzのパッシブフィルタである。
【0086】
第二ハイパスフィルタ53bは、第二チョッパ増幅回路52bからの出力信号の不要な低周波成分を除去するフィルタである。第二ハイパスフィルタ53bは、例えば、カットオフ周波数が0.5Hzのパッシブフィルタである。
【0087】
生体信号増幅部14は、第三チョッパ増幅回路74、ローパスフィルタ54及びA/Dコンバータ75で構成される。
【0088】
第三チョッパ増幅回路74は、第一ハイパスフィルタ53aからの出力信号CH1_inと第二ハイパスフィルタ53bからの出力信号Ref_inとの差(つまり、電位差)を増幅するアンプである。言い換えると、基本的には、第三チョッパ増幅回路74は、第一チョッパ増幅回路52aから出力された信号と第二チョッパ増幅回路52bから出力された信号との差を増幅する。これにより、第三チョッパ増幅回路74は、参照電極51bでの電位を基準とする計測電極51aでの電位を増幅した信号を増幅後の生体信号として出力する。第三チョッパ増幅回路74の電圧増幅率は、例えば、1200である。
【0089】
第三チョッパ増幅回路74は、入力部に設けられた変調用のチョッパ回路、及び、出力部に設けられた復調用のチョッパ回路を有し、チョッパ回路は、制御部60から出力される第三制御信号CS3の周波数に応じてチョッパ制御を行う。つまり、第三チョッパ増幅回路は、第三制御信号CS3に基づいてチョッパ制御される。第三制御信号CS3は、基本的には、ハイレベル及びローレベルの二値のいずれかの値となるチョッパクロックである。このようなチョッパ制御によれば、低周波ノイズを抑制することができる。
【0090】
ローパスフィルタ54は、第三チョッパ増幅回路74からの出力信号の不要な高周波成分を除去するフィルタである。ローパスフィルタ54は、例えば、カットオフ周波数が100Hzのアクティブフィルタである。
【0091】
A/Dコンバータ75は、ローパスフィルタ54からの出力信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する変換器であり、例えば、1kHzサンプリングで12ビットのデジタル信号に変換する。
【0092】
生体信号出力部15は、上述したように、生体信号増幅部14で増幅された電位差を情報処理装置20に送信する送信器である。生体信号増幅部14のA/Dコンバータ75においてデジタル値に変換された生体信号の電位差は、生体信号出力部15より情報処理装置20に送信される。
【0093】
制御部60は、生体信号計測モードの動作、及び、テストモードの動作を切り替える制御を行う。制御部60は、例えば、マイクロコンピュータまたはプロセッサによって実現されるが、専用回路によって実現されてもよい。
【0094】
生体信号計測モードは、言い換えれば、通常モードであり、計測電極51a及び参照電極51bの間の電位差を第三チョッパ増幅回路74で増幅して出力するモードである。つまり、生体信号計測モードは、通常通り被験者5の脳波を計測するモードである。
【0095】
これに対し、テストモードは、生体信号出力部15から適切に信号が出力されるか(提示部30において信号がモニタできるか)を確認するための動作テストを行うモードである。テストモードにおいては、ヘッドセット10は、被験者5に装着されていなくてもよい。
【0096】
生体信号計測装置10bでは、第一チョッパ増幅回路52a、及び、第二チョッパ増幅回路52bのそれぞれにおいてチョッパ回路を停止させることで、第一チョッパ増幅回路52a、及び、第二チョッパ増幅回路52bにおいて低周波ノイズが生じる。
図10は、第一チョッパ増幅回路52a、及び、第二チョッパ増幅回路52bから出力される信号のノイズレベルを示す模式図である。
【0097】
生体信号計測モードで被験者5の脳波を計測する場合には、ノイズは不要である。したがって、
図10の(a)に示されるように、チョッピングオン時には、第一チョッパ増幅回路52a、及び、第二チョッパ増幅回路52bから出力される信号のノイズレベルは小さい。したがって、制御部60は、生体信号計測モードの動作においては、第一チョッパ増幅回路52a、及び、第二チョッパ増幅回路52bのそれぞれにおいてチョッパ回路を動作させる。
【0098】
一方、
図10の(b)に示されるように、チョッピングオフ時には、第一チョッパ増幅回路52a、及び、第二チョッパ増幅回路52bにおいて低周波ノイズが生じる。制御部60は、テストモードの動作においては、第一チョッパ増幅回路52a、及び、第二チョッパ増幅回路52bのそれぞれにおいてチョッパ回路を停止させ、意図的に低周波ノイズを生じさせる。このような低周波ノイズは、第三チョッパ増幅回路74において完全には打ち消されないためテスト信号として利用できる。
【0099】
これにより、テスト信号を生成する回路を追加することなく、簡易的な動作テストを行うことが可能となる。特に、睡眠時の脳波(例えば、δ波及びθ波)の周波数である0.5Hz以上8Hz以下の帯域のテスト信号を生成して動作テストを行うことは難しいが、生体信号計測装置10bでは、このような動作テストが容易に実現できる。
【0100】
[モード切り替えの動作例1]
以下、生体信号計測モード、及び、テストモードの切り替えの動作例1について詳細に説明する。
図11は、モードの切り替えの動作例1のフローチャートである。
図12は、動作例1における生体信号計測装置10bの状態を示す図である。
【0101】
動作例1において、制御部60は、まず、生体信号計測モードの動作を行う。制御部60は、スイッチ素子Sa1、スイッチ素子Sa2、スイッチ素子Sb1、及び、スイッチ素子Sb2を生体信号計測モード用の設定に制御する(S31)。
【0102】
制御部60は、具体的には、スイッチ制御信号SCS1を出力することにより、スイッチ素子Sa1をオンし、かつ、スイッチ素子Sa2をオフする。これにより、計測電極51a及び第一チョッパ増幅回路52aが電気的に接続され、計測電極51aによって検出される生体信号が第一チョッパ増幅回路52aに入力される。また、制御部60は、スイッチ制御信号SCS2を出力することにより、スイッチ素子Sb1をオンし、かつ、スイッチ素子Sb2をオフする。これにより、参照電極51b及び第二チョッパ増幅回路52bが電気的に接続され、参照電極51bによって検出される生体信号が第二チョッパ増幅回路52bに入力される。
【0103】
次に、制御部60は、第一チョッパ増幅回路52a、第二チョッパ増幅回路52b、及び、第三チョッパ増幅回路74のそれぞれにおいてチョッパ回路を動作させる(S32)。制御部60は、具体的には、第一制御信号CS1、第二制御信号CS2、及び、第三制御信号CS3として周波数が2kHzの矩形波を出力する。
【0104】
次に、制御部60は、テストモードを指示する信号が取得されたか否かを判定する(S33)。この判定は、テストモードを指示する信号が取得されるまで行われる(S33でNO)。テストモードを指示する信号は、例えば、操作ボタン41に対してテストモードを指示する操作が行われることにより、操作ボタン41から制御部60に出力される。テストモードを指示する信号は、情報処理装置20が備えるユーザインターフェース(図示せず)への操作に基づいて制御部60に出力されてもよい。
【0105】
制御部60は、テストモードを指示する信号が取得されたと判定すると(S33でYES)、テストモードの動作を行う。制御部60は、スイッチ素子Sa1、スイッチ素子Sa2、スイッチ素子Sb1、及び、スイッチ素子Sb2をテストモード用の設定に制御する(S34)。
【0106】
制御部60は、具体的には、スイッチ制御信号SCS1を出力することにより、スイッチ素子Sa1をオフし、かつ、スイッチ素子Sa2をオンする。これにより、基準電圧源及び第一チョッパ増幅回路52aが電気的に接続され、0.9Vの基準電圧が第一チョッパ増幅回路52aに入力される。また、制御部60は、スイッチ制御信号SCS2を出力することにより、スイッチ素子Sb1をオフし、かつ、スイッチ素子Sb2をオンする。これにより、基準電圧源及び第二チョッパ増幅回路52bが電気的に接続され、0.9Vの基準電圧が第二チョッパ増幅回路52bに入力される。
【0107】
次に、制御部60は、第一チョッパ増幅回路52a、及び、第二チョッパ増幅回路52bのそれぞれにおいてチョッパ回路を停止させる(S35)。制御部60は、具体的には、第一制御信号CS1、及び、第二制御信号CS2として周波数が0Hzのローレベル信号を出力する(L固定)。これにより、第一チョッパ増幅回路52a、及び、第二チョッパ増幅回路52bにおいて生じる低周波ノイズをテスト信号として利用することができる。この低周波ノイズは、例えば、1/fノイズ(言い換えれば、ピンクノイズ)と呼ばれるノイズである。
【0108】
なお、ステップS35においては、第一制御信号CS1、及び、第二制御信号CS2として周波数が0Hzのハイレベル信号(H固定)が出力されてもよい。また、ステップS35においては、第一制御信号CS1及び第二制御信号CS2の一方が周波数が0Hzのローレベル信号であり、第一制御信号CS1及び第二制御信号CS2の他方が周波数が0Hzのハイレベル信号であってもよい。つまり、第一制御信号CS1及び第二制御信号CS2として相補的な信号(ハイレベル信号およびローレベル信号)が出力されてもよい。
【0109】
なお、ステップS35においては、第一チョッパ増幅回路52aのチョッパ回路、及び、第二チョッパ増幅回路52bのチョッパ回路の少なくとも一方が停止されればよい。またステップS35において、チョッパ回路を停止させることは必須ではない。テストモードにおいては、第一チョッパ増幅回路52a及び第二チョッパ増幅回路52bの少なくとも一方から通常モードよりも低周波ノイズが多く出力されればよい。
【0110】
例えば、制御部60は、第一制御信号CS1の周波数を2kHzよりも高い周波数とすることで第一チョッパ増幅回路52aにおいて通常モードよりも低周波ノイズを増大させることができる。つまり、制御部60は、テストモードの動作において、通常モードと異なる周波数の第一制御信号CS1を第一チョッパ増幅回路52aに出力すればよい。第二チョッパ増幅回路52bにおいても同様である。
【0111】
[モード切り替えの動作例2]
以下、生体信号計測モード、及び、テストモードの切り替えの動作例2について詳細に説明する。
図13は、モードの切り替えの動作例2のフローチャートである。
図14は、動作例2における生体信号計測装置10bの状態を示す図である。
【0112】
動作例2においては、制御部60は、第一チョッパ増幅回路52a、及び、第二チョッパ増幅回路52bのそれぞれにおいてチョッパ回路を停止させるだけでなく(S35)、第三チョッパ増幅回路74のチョッパ回路も停止させる(S36)。制御部60は、具体的には、第三制御信号CS3として周波数が0Hzのローレベル信号を出力する(L固定)。
【0113】
これにより、第一チョッパ増幅回路52a、及び、第二チョッパ増幅回路52bにおいて生じる低周波ノイズに加えて、第三チョッパ増幅回路74において生じる低周波ノイズをテスト信号として利用することができる。この低周波ノイズは、例えば、1/fノイズ(言い換えれば、ピンクノイズ)と呼ばれるノイズである。動作例2では、第三チョッパ増幅回路74において生じる低周波ノイズにより、比較的振幅の大きいテスト信号を得ることができる。
【0114】
なお、ステップS36において、チョッパ回路を停止させることは必須ではない。ステップS36においては第三チョッパ増幅回路74から通常モードよりも低周波ノイズが多く出力されればよい。例えば、制御部60は、第三制御信号CS3の周波数を2kHzよりも高い周波数とすることで第三チョッパ増幅回路74において通常モードよりも低周波ノイズを増大させることができる。つまり、制御部60は、テストモードの動作において、通常モードと異なる周波数の第三制御信号CS3を第三チョッパ増幅回路74に出力すればよい。
【0115】
[表示動作例]
次に、生体信号計測システム100の、被験者5の脳波の波形の表示動作例について説明する。まず、表示動作に関連して、情報処理装置20の生体信号処理部23の詳細構成について説明する。
図15は、生体信号処理部23の詳細構成を示す図である。
図15に示されるように、生体信号処理部23は、生体信号波形調整部23aと、生体信号解析部23bとを備える。
【0116】
生体信号波形調整部23aは、生体信号取得部22で取得された生体信号に対して、振幅の調整などの波形調整を行う。
【0117】
生体信号解析部23bは、波形調整された生体信号にソフトウェア的なフィルタ処理を行う。例えば、生体信号解析部23bは、高域通過フィルタ、または、低域通過フィルタとして機能する。フィルタのカットオフ周波数はユーザによって適宜変更可能である。また、生体信号解析部23bは、ハムノイズの周波数(50Hz又は60Hz)のみを遮断するノッチフィルタを備えていてもよい。生体信号解析部23bは、これらのフィルタ等を用いて信号処理を行い、表示情報出力部27を経由して提示部30によって表示される生体電位波形を生成する。また、生体信号解析部23bは、波形調整された生体信号から特定の周波数の信号を抽出し、当該周波数での信号のパワースペクトル密度を算出してもよい。
【0118】
次に、生体信号計測システム100の表示動作例について説明する。
図16は、生体信号計測システム100の表示動作例を示すフローチャートである。
図17は、生体信号計測モードにおける提示部30での表示例を示す図である。
図18は、テストモードにおける提示部30での表示例を示す図である。
【0119】
まず、アプリ処理部26は、初期処理を行う(S41)。
図17及び
図18に示されるように、アプリ処理部26は、初期処理において、提示部30における電極図示部30cに、被験者5が装着しているヘッドセット10が備える計測電極51a及び参照電極51bの位置及び接続状態を表示する。接続状態は、計測電極51a及び第一チョッパ増幅回路52aが接続されているか否か、並びに、参照電極51b及び第二チョッパ増幅回路52bが接続されているか否かを示す。接続状態は、言い換えれば、スイッチ素子Sa1及びスイッチ素子Sb1のオン/オフ状態である。
図17及び
図18においては、電極及びチョッパ増幅回路が接続されている場合には電極を示す丸印がハッチング有りで表現され、電極及びチョッパ増幅回路が接続されていない場合には電極を示す丸印がハッチング無しで表現される。
【0120】
次に、アプリ処理部26は、テストモードであるか否かを判定する(S42)。上述のように、操作ボタン41に対してテストモードを指示する操作が行われる場合、アプリ処理部26は、テストモードを指示する操作に応じてヘッドセット10から送信される通知信号が操作信号取得部21によって取得されたか否かを判定する。また、テストモードを指示する操作が、情報処理装置20が備えるユーザインターフェース(図示せず)に対して行われる場合、アプリ処理部26は、このような操作が行われたか否かを判定する。
【0121】
アプリ処理部26は、現在の動作モードがテストモードであると判定した場合(S42でYES)、
図18に示されるように、提示部30における計測情報表示部30aに、「テスト信号入力中」と表示する(S43)。また、アプリ処理部26は、提示部30におけるテスト信号入力状態表示部30dに、「テスト信号入力:有」と表示する。
【0122】
一方、アプリ処理部26は、現在の動作モードがテストモードではなく生体信号計測モードであると判定した場合(S42でNO)、
図17に示されるように、提示部30における計測情報表示部30aに、「生体信号計測中」と表示する(S44)。また、アプリ処理部26は、提示部30におけるテスト信号入力状態表示部30dに、「テスト信号入力:無」と表示する。
【0123】
そして、生体信号計測装置10bにおいて生体信号(ここでは、脳波信号)が測定され(S45)、得られた生体信号は、生体信号取得部22を介して生体信号処理部23に伝送される。
【0124】
生体信号を取得した生体信号処理部23において、生体信号波形調整部23aは、生体信号の波形を調整し(S46)、生体信号解析部23bは、波形調整された生体信号にフィルタ処理等の信号処理を行う。この結果、生体信号解析部23bからアプリ処理部26に生体信号波形が出力される。
【0125】
生体信号波形を受信したアプリ処理部26は、
図17及び
図18に示されるように、提示部30における生体信号波形表示部30bに、受信した生体信号波形を表示する(S47)。
【0126】
以上のように、生体信号計測システム100においては、提示部30に、リアルタイムで、計測情報を示す計測情報表示部30a、生体信号波形を示す生体信号波形表示部30b、電極の位置を示す電極図示部30c、テスト信号の入力状態を示すテスト信号入力状態表示部30dが表示され、多くの情報が一目で分かる。
【0127】
[アクティブ電極]
なお、
図19A及び
図19Bに示されるように、計測電極51a及び第一チョッパ増幅回路52aは、例えば、一つの基板55に実装されることによりアクティブ電極50として実現されてもよい。
図19A及び
図19Bは、アクティブ電極50の外観を示す模式図である。
図19Aに示されるように、計測電極51aは、基板55の一方の主面55aに実装され、
図19Bに示されるように、第一チョッパ増幅回路52aは、基板55の他方の主面55bに実装される。このように、計測電極51a及び第一チョッパ増幅回路52aが一つの基板55に実装されれば、計測電極51a及び第一チョッパ増幅回路52aを電気的に接続する配線の配線長を短くすることができる。そうすると、不要ノイズの発生などが抑制される。
【0128】
なお、図示されないが、参照電極51b及び第二チョッパ増幅回路52bについても、一つの基板に実装されることによりアクティブ電極として実現されてよい。
【0129】
[効果等]
以上説明したように、生体信号計測装置10bは、生体に接触する計測電極51aによって検出される生体信号が入力される第一チョッパ増幅回路52aであって、第一制御信号CS1に基づいてチョッパ制御される第一チョッパ増幅回路52aと、第一周波数の第一制御信号CS1を第一チョッパ増幅回路52aに出力する生体信号計測モードの動作、及び、第一周波数と異なる周波数の第一制御信号CS1を第一チョッパ増幅回路52aに出力するテストモードの動作を選択的に実行する制御部60とを備える。計測電極51aは、第一電極の一例である。第一周波数は、例えば、2kHzであるが、生体信号計測モードにおいて第一チョッパ増幅回路52aから生じるノイズが小さくなるように経験的または実験的に適宜定められればよい。
【0130】
このような生体信号計測装置10bは、第一制御信号CS1の周波数を変更することにより第一チョッパ増幅回路52aで生じるノイズをテスト信号として出力することができる。したがって、生体信号計測装置10bは、回路規模の増大を抑制しつつ、テスト信号を用いた動作テストを実現することができる。
【0131】
また、例えば、制御部60は、テストモードの動作において、0Hzの第一制御信号CS1を第一チョッパ増幅回路52aに出力する。
【0132】
このような生体信号計測装置10bは、チョッパ制御を停止させることにより第一チョッパ増幅回路52aで生じるノイズをテスト信号として出力することができる。
【0133】
また、例えば、生体信号計測装置10bは、さらに、生体に接触する参照電極51bによって検出される生体信号が入力される第二チョッパ増幅回路52bであって、第二制御信号CS2に基づいてチョッパ制御される第二チョッパ増幅回路52bを備える。制御部60は、生体信号計測モードの動作において、第二周波数の第二制御信号CS2を第二チョッパ増幅回路52bに出力し、テストモードの動作において、第二周波数と異なる周波数の第二制御信号CS2を第二チョッパ増幅回路52bに出力する。参照電極51bは、第二電極の一例である。第二周波数は、例えば、2kHzであるが、生体信号計測モードにおいて第二チョッパ増幅回路52bから生じるノイズが小さくなるように経験的または実験的に適宜定められればよい。
【0134】
このような生体信号計測装置10bは、第二制御信号CS2の周波数を変更することにより第二チョッパ増幅回路52bで生じるノイズをテスト信号として出力することができる。
【0135】
また、例えば、制御部60は、テストモードの動作において、0Hzの第二制御信号CS2を第二チョッパ増幅回路52bに出力する。
【0136】
このような生体信号計測装置10bは、チョッパ制御を停止させることにより第二チョッパ増幅回路52bで生じるノイズをテスト信号として出力することができる。
【0137】
また、例えば、生体信号計測装置10bは、さらに、第一チョッパ増幅回路52aから出力される信号を増幅する第三チョッパ増幅回路74であって、第三制御信号CS3に基づいてチョッパ制御される第三チョッパ増幅回路74を備える。制御部60は、生体信号計測モードの動作において、第三周波数の第三制御信号CS3を第三チョッパ増幅回路74に出力し、テストモードの動作において、第三周波数と異なる周波数の第三制御信号CS3を第三チョッパ増幅回路74に出力する。第三周波数は、例えば、2kHzであるが、生体信号計測モードにおいて第三チョッパ増幅回路74から生じるノイズが小さくなるように経験的または実験的に適宜定められればよい。
【0138】
このような生体信号計測装置10bは、第三制御信号CS3の周波数を変更することにより第三チョッパ増幅回路74で生じるノイズを比較的振幅の大きいテスト信号として出力することができる。
【0139】
また、例えば、制御部は、テストモードの動作において、0Hzの第三制御信号CS3を第三チョッパ増幅回路74に出力する。
【0140】
このような生体信号計測装置10bは、チョッパ制御を停止させることにより第三チョッパ増幅回路74で生じるノイズをテスト信号として出力することができる。
【0141】
また、例えば、制御部60は、ユーザの操作に応じて得られる信号に基づいて生体信号計測モードの動作、及び、テストモードの動作を選択的に実行する。ユーザの操作に応じて得られる信号は、例えば、上記実施の形態のテストモードを指示する信号である。
【0142】
このような生体信号計測装置10bは、ユーザの操作に応じて生体信号計測モードとテストモードとを切り替えることができる。
【0143】
また、例えば、生体信号計測装置10bは、さらに、計測電極51aと、計測電極51a及び第一チョッパ増幅回路52aが実装される基板55とを備える。
【0144】
このような生体信号計測装置10bは、計測電極51a及び第一チョッパ増幅回路52aを電気的に接続する配線の配線長を短くすることにより、不要ノイズの発生を抑制することができる。
【0145】
また、ヘッドセット10などの脳波計は、生体信号計測装置10bと、生体の頭部に装着される、計測電極51aが設けられた装着部40とを備える。
【0146】
このような脳波計は、第一制御信号CS1の周波数を変更することにより第一チョッパ増幅回路52aで生じるノイズをテスト信号として出力することができる。したがって、脳波計は、回路規模の増大を抑制しつつ、テスト信号を用いた動作テストを実現することができる。
【0147】
また、生体信号計測装置10bの制御方法は、第一周波数の第一制御信号CS1を第一チョッパ増幅回路52aに出力する生体信号計測モードの動作、及び、第一周波数と異なる周波数の第一制御信号CS1を第一チョッパ増幅回路52aに出力するテストモードの動作を選択的に実行する。
【0148】
このような制御方法は、第一制御信号CS1の周波数を変更することにより第一チョッパ増幅回路52aで生じるノイズをテスト信号として出力することができる。したがって、制御方法は、回路規模の増大を抑制しつつ、テスト信号を用いた動作テストを実現することができる。
【0149】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、このような実施の形態に限定されるものではない。
【0150】
例えば、上記実施の形態で説明された回路構成は、一例であり、本発明は上記回路構成に限定されない。つまり、上記回路構成と同様に、本発明の特徴的な機能を実現できる回路も本発明に含まれる。例えば、上記回路構成と同様の機能を実現できる範囲で、ある素子に対して、直列又は並列に、スイッチ素子(トランジスタ)、抵抗素子、または容量素子等の素子が接続されたものも本発明に含まれる。
【0151】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0152】
また、上記実施の形態において、制御部などの構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0153】
また、制御部などの構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、制御部などの構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0154】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0155】
例えば、本発明は、生体信号計測装置の制御方法として実現されてもよいし、このような制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。また、本発明は、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0156】
また、上記実施の形態で説明された生体信号計測システムは、単一の装置として実現されてもよいし、複数の装置によって実現されてもよい。生体信号計測システムが複数の装置によって実現される場合、上記実施の形態で説明された生体信号計測システムが備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。
【0157】
また、本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。