特許第6796812号(P6796812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

特許6796812ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法
<>
  • 特許6796812-ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 図000002
  • 特許6796812-ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 図000003
  • 特許6796812-ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 図000004
  • 特許6796812-ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 図000005
  • 特許6796812-ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 図000006
  • 特許6796812-ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 図000007
  • 特許6796812-ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 図000008
  • 特許6796812-ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 図000009
  • 特許6796812-ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 図000010
  • 特許6796812-ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 図000011
  • 特許6796812-ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 図000012
  • 特許6796812-ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796812
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20201130BHJP
   E06B 3/663 20060101ALI20201130BHJP
   E06B 3/67 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   C03C27/06 101D
   E06B3/663 H
   E06B3/67 A
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-508708(P2019-508708)
(86)(22)【出願日】2018年2月9日
(86)【国際出願番号】JP2018004627
(87)【国際公開番号】WO2018179908
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-72697(P2017-72697)
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 将
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 英一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和也
(72)【発明者】
【氏名】野中 正貴
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕之
(72)【発明者】
【氏名】清水 丈司
(72)【発明者】
【氏名】石川 治彦
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−352567(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/109368(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/152052(WO,A1)
【文献】 特開2003−321255(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/109369(WO,A1)
【文献】 特開2000−086305(JP,A)
【文献】 特開2016−175811(JP,A)
【文献】 特開2016−175812(JP,A)
【文献】 特開平09−183636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/06
E06B 3/66−3/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板に複数のピラーを配置する配置工程と、
前記第一基板を撮影し、撮影された画像に画像処理を施して、前記複数のピラーの配置を検査する検査工程と、
前記複数のピラーを囲む枠状のシール材を、前記第一基板と前記第一基板に対向する第二基板の間に挟んで、前記第一基板と前記第二基板を気密に接合することで、前記第一基板と前記第二基板の間に、前記シール材に囲まれた内部空間を形成する接合工程と、
前記内部空間を減圧する減圧工程と、
前記内部空間を、減圧状態で封止する封止工程を備え、
前記第一基板は、網入りガラスではない第一ガラス板と、前記第一ガラス板上に位置する低放射膜を含み、
前記配置工程では、前記低放射膜に前記複数のピラーを配置する、
ガラスパネルユニットの製造方法。
【請求項2】
前記低放射膜は、前記第一ガラス板上に位置する低放射層と、前記低放射層上に位置する保護層を含み、
前記配置工程では、前記保護層の表面に前記複数のピラーを配置する、
請求項1のガラスパネルユニットの製造方法。
【請求項3】
前記配置工程と前記減圧工程の間に行う加熱により、前記保護層をガス化する、
請求項2のガラスパネルユニットの製造方法。
【請求項4】
前記接合工程は、前記シール材を加熱により溶融する工程を含み、
前記接合工程の加熱により、前記保護層をガス化する、
請求項3のガラスパネルユニットの製造方法。
【請求項5】
前記第二基板は、網入りガラスを含む、
請求項1〜4のいずれか一つのガラスパネルユニットの製造方法。
【請求項6】
前記第二基板は、粗面を有する擦りガラスを含み、
前記接合工程では、前記第一基板に前記粗面が対向する状態で、前記第一基板と前記第二基板を接合する、
請求項1〜4のいずれか一つのガラスパネルユニットの製造方法。
【請求項7】
第三ガラス板を含む第三基板を、前記第一基板または前記第二基板に対して、枠状の第二シール材を介して気密に接合する第二接合工程を、さらに備える、
請求項1〜6のいずれか一つのガラスパネルユニットの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つのガラスパネルユニットの製造方法で製造されたガラスパネルユニットを、窓枠に嵌め込む嵌め込み工程を備える、
ガラス窓の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対のガラス板の間に、減圧状態の内部空間が形成されたガラスパネルユニットが、従来知られている。減圧状態の内部空間には、一対のガラス板の間の距離を維持するために、複数のピラー(スペーサ)が配置される。
【0003】
この種のガラスパネルユニットにおいて、一対のガラス板のうち一方のガラス板の内面に低放射膜を設けてもよいことが、特許文献1等に記載されている。
【0004】
多様な種類のガラス板に対して、低放射膜を有するガラス板を重ねてガラスパネルユニットを製造するときに、前者のガラス板の種類に応じて、製造工程(装置)を変更することが必要となる場合がある。
【0005】
たとえば、網入りガラスに対して、低放射膜を有するガラス板を重ねてガラスパネルユニットを製造する場合に、以下のような問題が生じるおそれがある。すなわち、網入りガラスの上に複数のピラーが配置されていると、各ピラーの配置を画像処理で検査する際に、各ピラーと網が重なって検査の邪魔になる場合がある。
【0006】
これを避けるため、網と重ならないように各ピラーを配置するには、網入りガラスの種類に応じてピラーの配置形態を変更する必要が生じ、製造工程(装置)の共通化が困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本国公開特許公報2002−255594号
【発明の概要】
【0008】
本開示は、共通の工程を用いて、多様な種類のガラス板と、低放射膜を有するガラス板が重なった構造のガラスパネルユニットを製造すること、およびこのガラスパネルユニットを用いたガラス窓を製造することを、目的とする。
【0009】
本開示の一態様に係るガラスパネルユニットの製造方法は、配置工程、接合工程、減圧工程、および封止工程を備える。前記配置工程は、第一基板に複数のピラーを配置する工程である。前記接合工程は、前記複数のピラーを囲む枠状のシール材を介して、前記第一基板と前記第一基板に対向する第二基板を気密に接合することで、前記第一基板と前記第二基板の間に、前記シール材に囲まれた内部空間を形成する工程である。前記減圧工程は、前記内部空間を減圧する工程である。前記封止工程は、前記内部空間を、減圧状態で封止する工程である。前記第一基板は、第一ガラス板と、前記第一ガラス板上に位置する低放射膜を含み、前記配置工程では、前記低放射膜に前記複数のピラーを配置する。
【0010】
本開示の一態様に係るガラス窓の製造方法は、前記ガラスパネルユニットを、窓枠に嵌め込む嵌め込み工程を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1Aは、一実施形態のガラスパネルユニットの製造方法で用いられる第一ガラス板を示す断面図である。図1Bは、同上の第一ガラス板上に低放射膜が位置する状態を示す断面図である。図1Cは、同上の第一ガラス板上に低放射層と保護層が位置する状態を示す断面図である。
図2図2は、同上の製造方法の配置工程で用いられる装置を一部破断して示す側面図である。
図3図3は、同上の製造方法の接合工程で用いられる第一基板を示す平面図である。
図4図4は、図3のA−A線断面図である。
図5図5は、同上の接合工程で用いられる第一基板と第二基板を示す斜視図である。
図6図6は、同上の製造方法で製造されたガラスパネルユニットを示す平面図である。
図7図7は、図6のB−B線断面図である。
図8図8は、変形例1のガラスパネルユニットを示す断面図である。
図9図9は、変形例2のガラスパネルユニットを示す平面図である。
図10図10は、図9のC−C線断面図である。
図11図11は、変形例2のガラスパネルユニットの他例を示す断面図である。
図12図12は、上記実施形態のガラスパネルユニットを備えるガラス窓を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態は、ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法に関し、特に、減圧された内部空間を有するガラスパネルユニットの製造方法、およびこのガラスパネルユニットを用いたガラス窓の製造方法に関する。
【0013】
添付図面に基づいて、一実施形態のガラスパネルユニット90およびガラスパネルユニット90を備えるガラス窓9について、順に説明する。なお、添付図面においては各構成を概略的に示しており、図示の各構成の寸法形状は、実際の寸法形状とは異なる。
【0014】
(ガラスパネルユニット)
図6図7に示すように、一実施形態のガラスパネルユニット90は、第一基板1、第二基板2、シール材5、複数のピラー4、およびゲッター45を備える。本実施形態では、ガラスパネルユニット90は、ピラー4を多数備えている。
【0015】
第一基板1は、第一ガラス板15と、第一ガラス板15の厚み方向の一側を覆う低放射層170を備える。低放射層170は、第一ガラス板15のうち第二基板2に対向する面を覆う。第一基板1のうち第二基板2に対向する面は、低放射層170の表面で構成されている。
【0016】
第二基板2は、網入りガラス61で構成されている。網入りガラス61は、針金で形成された網615が内蔵されたガラス板である。網入りガラス61は、火炎を浴びたときに崩壊することが網615によって抑えられるので、高い防火性を有する。
【0017】
第二基板2は、少なくとも網入りガラス61で構成されていればよく、網入りガラス61の厚み方向の両側または片側に、適宜のコーティングが施されてもよい。
【0018】
シール材5は、ガラスフリット等の熱接着剤を用いて形成された枠体500と、同じくガラスフリット等の熱接着剤を用いて形成された円弧状の仕切り502を含む。枠体500を形成する材料と、仕切り502を形成する材料とでは、互いに溶融温度が相違することが好ましい。
【0019】
枠体500は、第一基板1の周縁部と、第二基板2の周縁部に、それぞれ接合されている。第一基板1と第二基板2の互いの周縁部は、枠体500を介して気密に接合されている。
【0020】
仕切り502は、枠体500に囲まれる空間を、第一基板1が有する排気孔55に連通する空間59と、空間59を除く内部空間51とに仕切っている。排気孔55には、外側からキャップ552が嵌め込まれている。複数のピラー4およびゲッター45は、内部空間51に位置する。内部空間51は、たとえば0.1Pa以下の真空度に至るまで減圧された断熱空間である。
【0021】
複数のピラー4は、互いに距離をあけて分散配置されている。複数のピラー4の材料、寸法形状、配置パターン等は、適宜に設定され得る。
【0022】
各ピラー4は、第一基板1のうち第二基板2に対向する面に押し当たり、かつ、第二基板2のうち第一基板1に対向する面に押し当たることで、第一基板1と第二基板2の間隔を、所定間隔に維持する。第二基板2のうち第一基板1に対向する面は、網入りガラス61の表面で構成されている。
【0023】
ゲッター45は、気体分子を吸着するように構成されており、複数のピラー4のそれぞれから、距離をあけて位置する。ゲッター45は、第一基板1に設置されているが、第二基板2に設置されてもよい。
【0024】
次に、一実施形態のガラスパネルユニット90を製造するための各工程について説明する。
【0025】
一実施形態のガラスパネルユニット90の製造方法は、配置工程、検査工程、接合工程、減圧工程、および封止工程を備える。
【0026】
配置工程では、図2に示すパンチングの装置7を用いて、第一基板1に複数のピラー4が配置される。
【0027】
この工程での第一基板1には、保護層171が設けられている。
【0028】
つまり、第一基板1においては、図1A図1B及び図1C等に示すように、第一ガラス板15の表面に低放射層170があり、低放射層170の表面にさらに保護層171があり、低放射層170と保護層171で低放射膜17が構成されている。保護層171は、たとえばカーボンを用いて形成される。
【0029】
図2に示すように、装置7は、ステージ状の基板支持部71と、基板支持部71の上方に設置される抜き型72と、抜き型72の上方に供給されるシート400と、シート400の上方に設置される複数のパンチ73を備える。
【0030】
基板支持部71は、第一基板1を、低放射膜17が上端に位置する姿勢で支持する。
【0031】
抜き型72は、基板支持部71に支持された第一基板1の上方に位置する。抜き型72は、上下に貫通する複数の貫通孔721を有する。抜き型72の上面には、複数の貫通孔721を覆うようにシート400が載せられる。シート400の材質には、樹脂、金属等の各種の材質が用いられる。
【0032】
各パンチ73は、柱状であり、詳しくは、円柱状である。各パンチ73は、抜き型72に載せられたシート400の一部分401を、その先端面で下方に打ち抜くように構成されている。各パンチ73の先端面の下方には、シート400の一部分401と、抜き型72の貫通孔721が位置する。各パンチ73は、貫通孔721に挿し通すことが可能な寸法形状を有する。
【0033】
配置工程では、各パンチ73が、下方にむけて一直線状の軌道で打ち込まれる。これにより、各パンチ73が、シート400の一部分401を、抜き型72の貫通孔721を通じて下方に打ち抜く。打ち抜かれた一部分401は、それぞれパンチ73の先端面に当たった状態で、第一基板1が備える低放射膜17の表面、つまり保護層171の表面に押し付けられ、ピラー4を構成する。装置7は、複数のパンチ73をシート400に対して同時に打ち込むように構成されているが、装置7はこの形態に限定されず、少なくとも一つのパンチ73をシート400に打ち込むように構成されていればよい。
【0034】
低放射膜17のうち、低放射層170は保護層171で覆われているので、各ピラー4の一部分401が低放射膜17に勢いよく押し付けられても、低放射層170が傷付くことは抑えられる。
【0035】
なお、各ピラー4を第一基板1に配置する手段は、装置7のような、パンチングによってシート400からの打ち抜きと配置を連続的に実行する装置に限定されず、他の装置や他の手段を用いることも可能である。また、低放射膜17が保護層171を備えないことも有り得る。この場合には、低放射層170で低放射膜17が構成される。
【0036】
検査工程では、第一基板1に各ピラー4が適正に配置されているか否かが、検査される。具体的には、カメラを用いて第一基板1が撮影され、撮影された画像に適宜の画像処理が施されることにより、検査が行われる。
【0037】
検査工程を行った後に、接合工程が行われる。
【0038】
接合工程を行う段階において、第一基板1の低放射膜17の表面には、図3図4及び図5に示すように、シール材5とゲッター45がさらに配置されている。
【0039】
シール材5に含まれる枠体500と仕切り502は、ディスペンサー等の塗布装置を用いて、第一基板1の低放射膜17の表面に塗布され、その後に乾燥および仮焼成される。接合工程では、仕切り502に通気路504が形成されている。
【0040】
接合工程では、第一基板1と、第二基板2、つまり網入りガラス61とは、図5等に示すように、シール材5、複数のピラー4、およびゲッター45を挟んだ状態でセットされ、接合炉内で加熱される。
【0041】
加熱により溶融した枠体500を介して、第一基板1と第二基板2の互いの周縁部が気密に接合される。この段階では、内部空間51と空間59は、通気路504を通じて互いに連通している。
【0042】
配置工程において低放射層170を覆っていた保護層171は、接合工程における接合炉内での加熱により、内部空間51においてガス化される。なお、接合炉内での加熱以外のタイミング、つまり配置工程と減圧工程の間の適宜のタイミングで、保護層171を加熱してガス化することも可能である。
【0043】
減圧工程では、たとえば排気孔55に連通するように第一基板1に排気管が接続され、排気管を通じて、内部空間51が、たとえば0.1Pa以下の真空度に至るまで減圧される。言い換えると、減圧工程では、内部空間51が真空引きされる。このとき、ガス化した保護層171の成分は、他の空気成分と共に内部空間51から排出される。
【0044】
封止工程では、仕切り502が所定温度で加熱溶融されることで、通気路504を塞ぐように仕切り502が変形する。これにより、内部空間51が、減圧状態、詳しくは真空状態を維持したままで封止される。
【0045】
仕切り502の溶融温度は、枠体500の溶融温度よりも高く設定されていることが好ましい。この設定により、接合工程の段階で仕切り502が変形して通気路504を塞ぐことが、より確実に防止される。
【0046】
以上、説明した一実施形態のガラスパネルユニット90においては、低放射層170を有する第一基板1によって日射による熱の通過が抑制され、網入りガラス61を有する第二基板2によって防火性が高められる。しかも、製造過程において、第二基板2、つまり網入りガラス61に複数のピラー4を配置するのではなく、第一基板1に複数のピラー4を配置するので、検査工程において各ピラー4が網615に重なることがなく、検査に不具合を生じることが抑えられる。
【0047】
一実施形態のガラスパネルユニット90では、排気孔55を第一基板1に一つ設けているが、内部空間51を減圧状態で封止できるのであれば、排気孔55を第一基板1に複数設けることや、排気孔55を第二基板2に一つまたは複数設けることも可能である。
【0048】
また、一実施形態のガラスパネルユニット90では、仕切り502を変形させることで内部空間51を封止しているが、他の方法で内部空間51を封止することも可能である。たとえば、内部空間51を減圧状態に維持したまま、排気孔55に挿入したガラスフリット等の熱接着剤を加熱溶融させて排気孔55を塞ぎ、これにより内部空間51を封止することも可能である。
【0049】
続いて、上記実施形態のガラスパネルユニット90の変形例について説明する。以下では、既に説明した構成と同様の構成については、図中に上記実施形態と同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成については、詳しく説明する。
【0050】
(変形例1)
変形例1のガラスパネルユニット90Aについて、図8に基づいて説明する。
【0051】
変形例1においては、第二基板2Aが、粗面620を有する擦りガラス62で構成されている。擦りガラス62の粗面620とは反対側の面には、さらに適宜のコーティングが施されてもよい。
【0052】
粗面620は、表面処理によって多数の微細な凹凸が形成された面である。擦りガラス62は、粗面620を有することで、半透明または不透明に構成されている。粗面620は、内部空間51に面しているので、粗面620に水が付着して透けて視えることは防止されている。
【0053】
変形例1のガラスパネルユニット90Aにおいては、低放射層170を有する第一基板1によって、日射による熱の通過が抑制され、擦りガラス62を有する第二基板2Aによって、全体の透明性が抑えられる。しかも、配置工程において、複数のピラー4が、第二基板2A、つまり粗面620を有する擦りガラス62に配置されるのではなく、第一基板1に配置されるので、粗面用の特別な配置手段を用いずとも、各ピラー4が安定的に配置される。
【0054】
(変形例2)
変形例2のガラスパネルユニット90Bについて、図9図10に基づいて説明する。
【0055】
変形例2のガラスパネルユニット90Bは、第二基板2に対向する第三基板3と、第二基板2と第三基板3の互いの周縁部を全周に亘って気密に接合する第二シール材38を、さらに備える。
【0056】
第三基板3は、少なくとも第三ガラス板35で構成されていればよい。第三基板3は、全体として透明であるが、半透明または非透明でもよい。
【0057】
第二基板2と第三基板3の互いの対向面22,32の間には、第二シール材38により封止された第二の内部空間が、形成されている。
【0058】
図10に示すように、枠状である第二シール材38の内側には、枠状のスペーサ34が、さらに配置されている。枠状のスペーサ34は、その周方向の少なくとも一部に、中空部分を有する。スペーサ34の中空部分には、乾燥剤36が充填されている。
【0059】
スペーサ34はアルミニウム等の金属で形成されており、貫通孔341を有する。貫通孔341は、スペーサ34の内周面に開口している。スペーサ34の中空部分は、貫通孔341を介して第二の内部空間に連通している。
【0060】
乾燥剤36は、たとえばシリカゲルである。第二シール材38は、たとえばシリコン樹脂、ブチルゴム等の高気密性の樹脂で形成されている。
【0061】
第二の内部空間は、第二基板2、第三基板3および第二シール材38で密閉された空間であり、乾燥ガスが充填されている。乾燥ガスは、たとえばアルゴン等の乾燥した希ガス、または乾燥空気である。変形例2のガラスパネルユニット90Bは、さらに高い断熱性を発揮する。
【0062】
なお、第三基板3の位置は、第二基板2に対向する位置に限定されない。第三基板3は、第一基板1または第二基板に対向すればよい。図11に示すように、第三基板3が第一基板1に対向する場合には、第二シール材38が、第一基板1と第三基板3の互いの周縁部に接合される。
【0063】
変形例2のガラスパネルユニット90Bの製造方法は、上述した配置工程、検査工程、接合工程、排気工程および封止工程に加えて、第二接合工程を備える。第二接合工程は、第二基板2に対して、第二シール材38を介して第三基板3が接合される工程である。なお、第三基板3が第一基板1に対向する場合、第二接合工程は、第一基板1に対して、第二シール材38を介して第三基板3が接合される工程である。
【0064】
(ガラス窓)
一実施形態のガラスパネルユニット90を用いて製造されたガラス窓9について、図12に基づいて説明する。
【0065】
ガラス窓9は、一実施形態のガラスパネルユニット90と、ガラスパネルユニット90の周縁部に嵌め込まれた矩形枠状の窓枠95を備える。ガラス窓9においては、正面から視たときに、ガラスパネルユニット90のシール材5の枠体500が窓枠95に覆われる位置にあることが好ましい。
【0066】
ガラス窓9を製造する方法は、一実施形態のガラスパネルユニット90を製造するための各工程に加えて、ガラスパネルユニット90に窓枠95を嵌め込む嵌め込み工程を備える。嵌め込み工程において、変形例1のガラスパネルユニット90Aを窓枠95に嵌め込んでもよいし、変形例2のガラスパネルユニット90Bを窓枠95に嵌め込んでもよい。
【0067】
(態様)
以上、説明した実施形態および各変形例から理解されるように、第1の態様のガラスパネルユニットの製造方法は、配置工程、接合工程、減圧工程、および封止工程を備える。配置工程は、第一基板(1)に複数のピラー(4)を配置する工程である。接合工程は、複数のピラー(4)を囲む枠状のシール材(5)を、第一基板(1)と第一基板(1)に対向する第二基板(2;2A;2B)の間に挟んで、第一基板(1)と第二基板(2;2A;2B)を気密に接合する工程である。接合工程では、第一基板(1)と第二基板(2;2A;2B)の間に、シール材(5)に囲まれた内部空間(51)を形成する。減圧工程は、内部空間(51)を減圧する工程である。封止工程は、内部空間(51)を、減圧状態で封止する工程である。第一基板(1)は、第一ガラス板(15)と、第一ガラス板(15)上に位置する低放射膜(17)を含む。配置工程では、低放射膜(17)に複数のピラー(4)を配置する。
【0068】
したがって、第1の態様のガラスパネルユニットの製造方法によれば、低放射膜(17)を有する第一基板(1)に対して、複数のピラー(4)を介して第二基板(2;2A;2B)を重ね、ガラスパネルユニット(90)を製造することができる。ここで、第二基板(2;2A;2B)として各種の網入りガラス、擦りガラス等の多様なガラス板を用いる場合も、ガラス板の種類によらず共通の工程、つまり配置工程、接合工程、減圧工程、および封止工程を経て、ガラスパネルユニット(90;90A;90B)を製造することができる。
【0069】
一例として、第二基板(2A)が網入りガラス(61)である場合も、配置工程では複数のピラー(4)が第一基板(1)に配置されるので、その後の検査工程において、網入りガラス(61)の網(615)が各ピラー(4)に重なって邪魔になることがない。また、第二基板(2B)が擦りガラス(62)である場合も、複数のピラー(4)は、粗面(620)を有する擦りガラス(62)ではなく第一基板(1)の側に配置されるため、配置工程において、複数のピラー(4)の配置は安定的に行われる。そのため、第1の態様のガラスパネルユニットの製造方法によれば、第二基板(2;2A;2B)を構成するガラス板の種類に応じた特別な工程を設ける必要なく、低放射膜(17)を有するガラスパネルユニット(90;90A;90B)を製造することができる。
【0070】
第2の態様のガラスパネルユニットの製造方法は、第1の態様のガラスパネルユニットの製造方法と組み合わせ得る。第2の態様のガラスパネルユニットの製造方法では、低放射膜(17)は、第一ガラス板(15)上に位置する低放射層(170)と、低放射層(170)上に位置する保護層(171)を含む。配置工程では、保護層(171)の表面に複数のピラー(4)を配置する。
【0071】
したがって、第2の態様のガラスパネルユニットの製造方法によれば、複数のピラー(4)を低放射膜(17)に配置したときに低放射層(170)が傷付くことが、保護層(171)の存在によって抑えられる。
【0072】
第3の態様のガラスパネルユニットの製造方法は、第2の態様のガラスパネルユニットの製造方法と組み合わせ得る。第3の態様のガラスパネルユニットの製造方法では、配置工程と減圧工程の間に行う加熱により、保護層(171)をガス化する。
【0073】
したがって、第3の態様のガラスパネルユニットの製造方法によれば、保護層(171)が除去された状態でガラスパネルユニット(90;90A;90B)が製造される。
【0074】
第4の態様のガラスパネルユニットの製造方法は、第3の態様のガラスパネルユニットの製造方法と組み合わせ得る。第4の態様のガラスパネルユニットの製造方法では、接合工程は、シール材(5)を加熱により溶融する工程を含む。接合工程の加熱により、保護層(171)をガス化する。
【0075】
したがって、第4の態様のガラスパネルユニットの製造方法によれば、接合工程の際に保護層(171)が除去される。
【0076】
第5の態様のガラスパネルユニットの製造方法は、第1〜第4のいずれか一つの態様のガラスパネルユニットの製造方法と組み合わせ得る。第5の態様のガラスパネルユニットの製造方法では、第二基板(2A)は、網入りガラス(61)を含む。
【0077】
したがって、第5の態様のガラスパネルユニットの製造方法によれば、防火性の高いガラスパネルユニット(90A)を製造することができる。しかも、配置工程において、複数のピラー(4)は第一基板(1)の側に配置されるので、接合工程の前に、画像処理による検査を行ったときに、網入りガラス(61)の網(615)が各ピラー(4)に重なって邪魔になることがない。
【0078】
第6の態様のガラスパネルユニットの製造方法は、第1〜第4のいずれか一つの態様のガラスパネルユニットの製造方法と組み合わせ得る。第6の態様のガラスパネルユニットの製造方法では、第二基板(2B)は、粗面(620)を有する擦りガラス(62)を含む。接合工程では、第一基板(1)に粗面(620)が対向する状態で、第一基板(1)と第二基板(2B)を接合する。
【0079】
したがって、第6の態様のガラスパネルユニットの製造方法によれば、全体として不透明または半透明なガラスパネルユニット(90B)を製造することができる。しかも、配置工程において、複数のピラー(4)は、粗面(620)を有する擦りガラス(62)に配置されるのではなく、第一基板(1)の側に配置されるので、各ピラー(4)の配置が安定的に行われる。
【0080】
第7の態様のガラスパネルユニットの製造方法は、第1〜第6のいずれか一つの態様のガラスパネルユニットの製造方法と組み合わせ得る。第7の態様のガラスパネルユニットの製造方法は、第二接合工程をさらに備える。第二接合工程は、第三ガラス板(35)を含む第三基板(3)を、第一基板(1)または第二基板(2;2A;2B)に対して、枠状の第二シール材(38)を介して気密に接合する工程である。
【0081】
したがって、第7の態様のガラスパネルユニットの製造方法によれば、さらに断熱性の高いガラスパネルユニット(90;90A;90B)が製造される。
【0082】
第8の態様のガラス窓の製造方法は、第1〜第7のいずれか一つの態様のガラスパネルユニットの製造方法と組み合わせ得る。第8の態様のガラスパネル窓の製造方法は、ガラスパネルユニット(90;90A;90B)を、窓枠(95)に嵌め込む嵌め込み工程を備える。
【0083】
したがって、第8の態様のガラス窓の製造方法によれば、ガラス板の種類によらず共通の工程、つまり配置工程、接合工程、減圧工程、封止工程、及び嵌め込み工程を経て、低放射膜(17)を有するガラス窓(9)を製造することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 第一基板
12 面
15 第一ガラス板
17 低放射膜
170 低放射層
171 保護層
2,2A,2B 第二基板
3 第三基板
35 第三ガラス板
38 第二シール材
4 ピラー
5 シール材
51 内部空間
55 排気孔
61 網入りガラス
62 擦りガラス
620 粗面
9 ガラス窓
90,90A,90B ガラスパネルユニット
95 窓枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12