(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、正極に特定の化合物を添加し、また、非水電解質に特定のリチウム塩を添加することにより、非水電解質二次電池の低温回生特性を改善することが可能であることを見出し、以下に説明する態様の発明を想到するに至った。
【0010】
本開示の一態様は、正極、負極、非水電解質、を備える非水電解質二次電池であって、正極は、リチウム含有遷移金属酸化物と、周期表の第5族の元素及び第6族の元素のうち少なくとも一方の元素と、リン酸化合物とを含み、非水電解質は、P−O結合とP−F結合とを有するリチウム塩を含む、非水電解質二次電池である。本開示の一態様によれば、低温回生特性を改善することが可能となる。なお、本明細書において、「第5族/第6族元素」と称する場合、第5族の元素及び第6族の元素のうち少なくとも一方の元素を意味している。
【0011】
低温回生特性が改善されるメカニズムについては十分に明らかでないが、以下のことが考えられる。電池の充放電により、非水電解質中のP−O結合とP−F結合とを有するリチウム塩は、負極表面等で還元分解され、分解生成物が生成される。また、電池の充放電により、正極に含まれる第5族/第6族元素は非水電解質に溶出し、負極側に移動する。そして、負極表面で、上記分解生成物及び第5族/第6族元素を含む被膜が形成される。このとき正極に第5族/第6族元素及びリン酸化合物の両方が存在すると、第5族/第6族元素の溶出及び析出形態が変化し、負極表面で低抵抗の被膜が形成されると考えられる。このような低抵抗の被膜形成により、低温回生特性が改善されると考えられる。ここで、低温は、例えば−30℃以下のことである。
【0012】
本開示の別の態様である非水電解質二次電池においては、負極は、黒鉛系炭素材と、黒鉛系炭素材の表面に固着された非晶質炭素材と、を含む。これにより、非晶質炭素材が表面に固着していない黒鉛系炭素材を用いた場合と比較して、負極表面でより低抵抗の被膜が形成されると考えられ、低温回生特性がより改善される。
【0013】
本開示の別の態様である非水電解質二次電池においては、リン酸化合物は、金属元素と水素元素とを含むリン酸化合物である。また、リン酸化合物は、一般式M
xH
yPO
4(Mは金属元素、xは1〜2、yは1〜2)で表されるリン酸化合物である。これにより、金属元素、水素元素を含まないリン酸化合物と比較して、負極表面でより低抵抗の被膜が形成されると考えられ、低温回生特性がより改善される。
【0014】
本開示の別の態様である非水電解質二次電池においては、リチウム塩は、一般式Li
xP
yO
zF
α(xは1〜4の整数、yは1又は2、zは1〜8の整数、αは1〜4の整数)で表されるリチウム塩である。また、リチウム塩は、モノフルオロリン酸リチウム又はジフルオロリン酸リチウムである。これにより、負極表面でより低抵抗の被膜が形成されると考えられ、低温回生特性がより改善される。
【0015】
本開示の実施形態について以下に説明する。但し、本実施形態は一例であって、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<非水電解質二次電池の構成>
実施形態の一例である非水電解質二次電池は、負極と、正極と、非水電解質とを備える。正極と負極との間には、セパレータを設けることが好適である。非水電解質二次電池の構造の一例としては、正極及び負極がセパレータを介して巻回されてなる電極体と、非水電解質とが外装体に収容された構造が挙げられる。或いは、巻回型の電極体の代わりに、正極及び負極がセパレータを介して積層されてなる積層型の電極体など、他の形態の電極体が適用されてもよい。非水電解質二次電池は、例えば円筒型、角型、コイン型、ボタン型、ラミネート型など、いずれの形態であってもよい。
【0017】
<正極>
正極は、例えば金属箔等の正極集電体と、正極集電体の片面又は両面に形成された正極合材層とで構成される。正極集電体には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。
【0018】
正極合材層は、正極活物質であるリチウム含有遷移金属酸化物と、第5族/第6族元素と、リン酸化合物とを含む。正極合材層は、導電材及び結着材を更に含むことが好適である。
【0019】
[リチウム含有遷移金属酸化物]
リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウム(Li)及び遷移金属元素を少なくとも含む金属酸化物であり、例えば、一般式Li
xMe
yO
2で表すことができる。上記一般式中、Meはニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)等の遷移金属元素である。xは例えば0.8以上1.2以下である。yはMeの種類及び酸化数によって異なるが、例えば0.7以上1.3以下である。リチウム含有遷移金属酸化物としては、Ni、Co及びMnを含有するニッケルコバルトマンガン酸リチウムが特に好ましい。
【0020】
リチウム含有遷移金属酸化物の添加元素は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)に制限されるものではなく、他の添加元素を含んでいても良い。他の添加元素としては、例えば、リチウム以外のアルカリ金属元素、Mn、Ni及びCo以外の遷移金属元素、アルカリ土類金属元素、第12族元素、第13族元素及び第14族元素が挙げられる。他の添加元素の具体例としては、例えば、ジルコニウム(Zr)、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)及びカルシウム(Ca)等が挙げられる。これらの中では、Zrが好適である。Zrを含有することにより、リチウム含有遷移金属酸化物の結晶構造が安定化され、正極合材層の高温での耐久性、及び、サイクル性が向上すると考えられている。リチウム含有遷移金属酸化物におけるZrの含有量は、Liを除く金属の総量に対して、0.05mol%以上10mol%以下が好ましく、0.1mol%以上5mol%以下がより好ましく、0.2mol%以上3mol%以下が特に好ましい。
【0021】
リチウム含有遷移金属酸化物の粒径は、特に限定されないが、2μm以上30μm以下であることが好ましい。リチウム含有遷移金属酸化物の粒子が、一次粒子が凝集して形成された二次粒子である場合、当該二次粒子が上記の粒径を有することが好ましく、当該一次粒子は例えば50nm以上10μm以下の粒径を有することが好ましい。リチウム含有遷移金属酸化物の粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したリチウム含有遷移金属酸化物の粒子を無作為に100個抽出し、各粒子の長径及び短径の長さの平均値を各粒子の粒径として、100個の粒子の粒径を平均した値とすることができる。リチウム含有遷移金属酸化物のBET比表面積は、特に限定されないが、好ましくは0.1m
2/g以上6m
2/g以下である。なお、リチウム含有遷移金属酸化物のBET比表面積は、公知のBET式粉体比表面積測定装置によって測定できる。
【0022】
[第5族/第6族元素]
第5族/第6族元素は、リチウム含有遷移金属酸化物の近傍に存在している限り、いずれの形態で含まれていてもよい。例えば、第5族/第6族元素の化合物がリチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面に付着していてもよいし、また、第5族/第6族元素がリチウム含有遷移金属酸化物中に含有されていてもよいし、両者が共存していてもよい。負極上に低抵抗な被膜を形成し、低温回生特性をより改善することができる点で、第5族/第6族元素がリチウム含有遷移金属酸化物中に含有されている形態が特に好ましい。
【0023】
周期表の第5族に属する元素とは、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)及びドブニウム(Db)であり、周期表の第6族に属する元素とは、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びシーボーギウム(Sg)である。これらのうち、負極上に低抵抗な被膜を形成し、低温回生特性をより改善することができる点で、W、Nb、Ta、Cr及びMoが好ましく、W、Nbがより好ましく、Wが特に好ましい。第5族/第6族元素の化合物がリチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面に付着している場合の第5族/第6族元素の化合物としては、例えば、WO
2、WO
3及びW
2O
5等の酸化タングステン、NbO、Nb
2O
3、NbO
2及びNb
2O
5等の酸化ニオブ、並びに、タングステン酸リチウム等の酸化タングステンの塩、ニオブ酸リチウム等の酸化ニオブの塩等が挙げられる。酸化タングステンの中では、酸化数が最も安定な6価となるWO
3が好ましく、酸化ニオブの中では、酸化数が安定な4価となるNbO
2、5価となるNb
2O
5が好ましい。
【0024】
第5族/第6族元素の化合物は、例えば正極活物質と機械的に混合して、活物質粒子の表面に付着させることができる。第5族/第6族元素の化合物は、導電材及び結着材を混練して正極合材スラリーを作製する際に添加してもよい。
【0025】
第5族/第6族元素の化合物をリチウム含有遷移金属酸化物に付着させる場合、当該化合物中の第5族/第6族元素が、リチウム含有遷移金属酸化物のLiを除く金属(即ち、遷移金属及び上記添加元素)の総量に対して、0.05mol%以上10mol%以下となるように当該化合物を添加することが好ましく、0.1mol%以上5mol%以下となるように当該化合物を添加することがより好ましく、0.2mol%以上3mol%以下となるように当該化合物を添加することが特に好ましい。第5族/第6族元素の含有量を当該範囲内とすることで、当該範囲外の場合と比較して、負極上に低抵抗な被膜の形成が促進され、低温回生特性をより改善することが可能となる。
【0026】
第5族/第6族元素の化合物の粒径は、リチウム含有遷移金属酸化物の粒径よりも小さいことが好ましく、当該酸化物の粒径の25%以下であることが特に好ましい。第5族/第6族元素の化合物の粒径は、例えば、50nm〜10μmである。粒径が当該範囲内であれば、正極合材層中における第5族/第6族元素の良好な分散状態が維持され、正極からの溶出が好適に行われると考えられる。第5族/第6族元素の化合物が凝集体として存在する場合、当該化合物の粒径は、凝集体を形成する最小単位の粒子(一次粒子)の粒径である。
【0027】
一方、リチウム含有遷移金属酸化物に第5族/第6族元素を含有させる場合、リチウム含有遷移金属酸化物と第5族/第6族元素とを固溶させることが好ましい。なお、第5族/第6族元素は、その一部が正極活物質の一次粒子の界面又は二次粒子の表面に析出していてもよい。第5族/第6族元素を含有するリチウム含有遷移金属酸化物としては、例えば、上記一般式Li
xMe
yO
2において、Meがニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)等の遷移金属に加えて、第5族/第6族元素を含むもの等が挙げられる。特に、Ni、Co及びMnを含み、さらに、W又はNbを含有してなるリチウム含有遷移金属酸化物が好ましく、Ni、Co及びMnを含み、さらに、Wを含有してなるリチウム含有遷移金属酸化物がより好ましい。
【0028】
第5族/第6族元素を含有するリチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、Ni、Co又はMn等を含有する複合酸化物と、水酸化リチウム等のリチウム化合物と、第5族/第6族元素の酸化物とを混合し、得られた混合物を焼成することにより、合成することができる。
【0029】
第5族/第6族元素を含有するリチウム含有遷移金属酸化物中の第5族/第6族元素の含有量は、リチウム含有遷移金属酸化物のLiを除く金属(即ち、遷移金属及び上記添加元素)の総量に対して、0.05mol%以上10mol%以下となる量であることが好ましく、0.1mol%以上5mol%以下となる量であることがより好ましい。第5族/第6族元素の含有量を当該範囲内とすることで、当該範囲外の場合と比較して、負極上に低抵抗な被膜の形成が促進され、低温回生特性をより改善することが可能となる。
【0030】
[リン酸化合物]
リン酸化合物は、特に限定されないが、リン酸塩、縮合リン酸塩等が挙げられ、例えば、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸バリウム、リン酸マンガン、リン酸コバルト、リン酸ニッケル、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸水素バリウム、リン酸水素マンガン、ピロリン酸リチウム、ピロリン酸マグネシウム、メタリン酸リチウム、メタリン酸マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、金属元素と水素元素を含むリン酸化合物が好ましく、一般式M
xH
yPO
4(Mは金属元素、xは1〜2、yは1〜2)で表されるリン酸化合物がより好ましく、特にリン酸水素マグネシウム(MgHPO
4)、リン酸水素マンガン(MnHPO
4)がより好ましい。尚、これらの化合物は水和物の形として存在してもよい。
【0031】
前述したように、電池の充放電において、第5族/第6族元素は正極から溶出し、負極へ移動すると共に、同じく電池充放電において、P−O結合及びP−F結合を有するリチウム塩が負極表面で還元分解されることにより、第5族/第6族元素及び当該リチウム塩由来の分解生成物を含む被膜が負極上に形成される。ここで、正極中にリン酸化合物が含有されていると、リン酸化合物の触媒作用によって正極での第5族/第6族元素の溶出挙動、及び、P−O結合及びP−F結合を有するリチウム塩の分解反応速度が変化して、正極合材層にリン酸化合物が存在しない場合と比較して、低い抵抗を有する被膜が形成され、低温回生特性が改善されるものと考えられる。特に、正極中のリン酸化合物が金属元素と水素元素を含むリン酸化合物であると、正極での第5族/第6族元素の溶出挙動、及び、P−O結合及びP−F結合を有するリチウム塩の分解反応速度がさらに適切なものになり、より一層低い抵抗を有する被膜が形成され、低温回生特性がより改善される。
【0032】
リン酸化合物の含有量は、正極活物質であるリチウム含有遷移金属酸化物の総量に対して、0.03質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上8質量%以下がより好ましい。リン(P)元素換算では、リチウム含有遷移金属酸化物の総量に対して、0.01質量%以上3質量%以下が好ましく、0.03質量%以上2質量%以下がより好ましい。リン酸化合物の含有量が少なすぎると、負極表面において低抵抗の被膜が十分に形成されないおそれがあり、リン酸化合物の含有量が多すぎると、正極活物質における効率的な電子の授受を阻害するおそれがある。
【0033】
リン酸化合物の粒径は、例えば50nm〜10μmであることが好ましい。粒径が当該範囲内であれば、正極合材層中におけるリン酸化合物の良好な分散状態が維持される。リン酸化合物が凝集体として存在する場合、リン酸化合物の粒径は、凝集体を形成する最小単位の粒子(一次粒子)の粒径である。
【0034】
リン酸化合物は、例えば正極活物質と機械的に混合して、活物質粒子の表面に付着させることができる。或いは、導電材及び結着材を混練して正極合材スラリーを作製する工程において、リン酸化合物を添加することにより、正極合材層に混合してもよい。
【0035】
[導電材]
導電材の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック及び黒鉛等の炭素材料等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
[結着材]
結着材の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、並びに、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩(CMC−Na、CMC−K、CMC-NH
4等、また部分中和型の塩であってもよい)、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
<非水電解質>
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含み、電解質塩はP−O結合とP−F結合とを有するリチウム塩を含む。
【0038】
P−O結合とP−F結合とを有するリチウム塩は、例えば一般式Li
xP
yO
zF
α(xは1〜4の整数、yは1又は2、zは1〜8の整数、αは1〜4の整数)で表されるリチウム塩が好ましく、特にモノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウムがより好ましい。前述したように当該リチウム塩は、電池の充放電時において、負極上で還元分解されるが、P−O結合及びP−F結合を有することで、負極上で過剰に還元分解されることが抑制され、負極上に形成される被膜の低抵抗化を図ることが可能であると考えられる。
【0039】
P−O結合とP−F結合とを有するリチウム塩の含有量は、例えば、1リットルの非水溶媒に対して0.01〜0.5molであることが好ましく、0.02〜0.2molであることがより好ましい。P−O結合とP−F結合とを有するリチウム塩の含有量が0.01mol未満であると、負極上での還元分解量が少なく、0.5molを超えると還元分解が多くなり、いずれの場合も負極上に形成される被膜の低抵抗化に影響を与える場合がある。
【0040】
電解質塩は、P−O結合とP−F結合とを有するリチウム塩に加え、他の電解質塩を含んでいてもよい。他の電解質塩としては、例えば、LiBF
4、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiSCN、LiCF
3SO
3、LiC(C
2F
5SO
2)、LiCF
3CO
2、Li(P(C
2O
4)F
4)、Li(P(C
2O
4)F
2)、LiPF
6−x(C
nF
2n+1)
x(1≦x≦6、nは1又は2)、LiB
10Cl
10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li
2B
4O
7、Li(B(C
2O
4)
2)[リチウム−ビスオキサレートボレート(LiBOB)]、Li(B(C
2O
4)F
2)等のホウ酸塩類、LiN(FSO
2)
2、LiN(C
1F
2l+1SO
2)(C
mF
2m+1SO
2){l、mは1以上の整数}等のイミド塩類等が挙げられる。リチウム塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。他の電解質塩の濃度は、1リットルの非水溶媒当たり0.8〜1.8molとすることが好ましい。
【0041】
非水溶媒としては、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、カルボン酸エステル類が例示できる。具体的には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート類;プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等の鎖状カルボン酸エステル;及び、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)等の環状カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0042】
非水電解質はエーテル類を含んでいても良い。エーテル類としては、例えば、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、1,8−シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチル等の鎖状エーテル類等が挙げられる。
【0043】
非水電解質はニトリル類を含んでいても良い。ニトリル類の例としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル等が挙げられる。
【0044】
非水電解質はハロゲン置換体を含んでいてもよい。ハロゲン置換体の例としては、例えば、4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、メチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0045】
<負極>
負極は、例えば金属箔等からなる負極集電体と、当該集電体の片面又は両面に形成された負極合材層とで構成されることが好適である。負極集電体には、負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合剤層は、負極活物質の他に、結着材等を含むことが好適である。
【0046】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであり、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛系炭素材、非晶質炭素材、SiやSn等のリチウムと合金化する金属、合金材料又は金属複合酸化物等が挙げられる。また、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。特に、負極表面で低抵抗な被膜が形成されやすい点等から、黒鉛系炭素材と、黒鉛系炭素材の表面に固着された非晶質炭素材とを含む炭素材料を用いることが好ましい。
【0047】
黒鉛系炭素材とは、グラファイト結晶構造の発達した炭素材のことであり、天然黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。これらは、鱗片形状でも良く、また球状に加工する球形化の処理が施されていても良い。人造黒鉛は石油、石炭ピッチ、コークス等を原料にしてアチソン炉や黒鉛ヒーター炉等で2000〜3000℃、もしくはそれ以上の熱処理を行うことで作製される。X線回折によるd(002)面間隔は0.338nm以下であることが好ましく、c軸方向の結晶の厚さ(Lc(002))は30〜1000nmが好ましい。
【0048】
非晶質炭素材とは、グラファイト結晶構造が発達していない炭素材であって、アモルファスまたは微結晶で乱層構造な状態の炭素であり、より具体的にはX線回折によるd(002)面間隔が0.342nm以上であることを意味する。非晶質炭素材としては、ハードカーボン(難黒鉛化炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化炭素)、カーボンブラック、カーボンファイバー、活性炭などが挙げられる。これらの製造方法は特に限定されない。例えば、樹脂または樹脂組成物を炭化処理することで得られ、フェノール系の熱硬化性樹脂やポリアクリロニトリルなどの熱可塑性樹脂、石油系または石炭系のタールやピッチなどを用いることができる。また、例えばカーボンブラックは、原料となる炭化水素を熱分解することにより得られ、熱分解法としては、サーマル法、アセチレン分解法等が挙げられる。不完全燃焼法としては、コンタクト法、ランプ・松煙法、ガスファーネス法、オイルファーネス法等が挙げられる。これらの製造方法により生成されるカーボンブラックの具体例としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック等がある。また、これらの非晶質炭素材は、表面が更に別の非晶質や不定形の炭素で被覆されていても良い。
【0049】
また、非晶質炭素材は、黒鉛系炭素材の表面に固着した状態で存在するのが好ましい。ここで固着しているとは、化学的/物理的に結合している状態であり、本発明の負極活物質を、水や有機溶剤中で攪拌しても黒鉛系炭素材と非晶質炭素材が遊離しないことを意味する。
【0050】
黒鉛系炭素材表面に、黒鉛系炭素と比較して、反応面積が大きく、多配向の組織構造を有する非晶質炭素材を固着させることで、非晶質炭素材表面に反応過電圧が低い被膜が形成されるため、黒鉛系炭素材全体のLi挿入/脱離反応に対する反応過電圧が低下すると考えられる。さらに、非晶質炭素材は黒鉛系炭素材に比較して貴な反応電位をもつため、正極から溶出した第5族/第6族元素と優先的に反応し、非晶質炭素材表面に、よりリチウムイオン透過性に優れた良質な被膜が形成されるため、黒鉛系炭素材全体のLi挿入/脱離反応に対する反応抵抗がさらに低下すると考えられる。
【0051】
黒鉛系炭素材料と非晶質炭素材の比率は、特に限定されないが、Li吸蔵性に優れる非晶質炭素材の割合が多いほうが好ましく、非晶質炭素材の割合は活物質中の0.5wt%以上、より好ましくは、2wt%以上が好ましい。但し、非晶質炭素材が過剰になると、黒鉛表面に均一に固着出来なくなるため、この点を考慮して上限を定めることが好ましい。
【0052】
黒鉛系炭素材に非晶質炭素を固着する方法としては、非晶質炭素材に石油系または石炭系のタールやピッチなどを加えて黒鉛系炭素材と混合した後に熱処理する方法がある。その他、黒鉛粒子と固体の非晶質炭素との間に圧縮剪断応力を加えて被覆するメカノフージョン法や、スパッタリング法等により被覆する固相法、非晶質炭素をトルエン等の溶剤に溶解させて黒鉛を浸漬したのち熱処理する液相法等がある。
【0053】
非晶質炭素の一次粒子径は、Liの拡散距離の観点から小さいことが好ましく、また、比表面積は、Li吸蔵反応に対する反応表面積が大きくなるため、大きいほうが好ましい。しかしながら、大きすぎると表面での過剰な反応が生じ抵抗の増加につながる。このため、非晶質炭素の比表面積は5m
2/g以上〜200m
2/g以下が好ましい。過剰な比表面積を低減させることからも、一次粒子径は20nm以上〜1000nm以下が好ましく、より好ましくは40nm以上〜100nm以下であり、粒子内に空洞が存在する中空構造でないことが好ましい。
【0054】
[結着材]
結着材としては、正極の場合と同様にフッ素系樹脂、PAN、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。水系溶媒を用いて負極合材スラリーを調製する場合は、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩(PAA−Na、PAA−K等、また部分中和型の塩であってもよい)、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることが好ましい。
【0055】
<セパレータ>
セパレータには、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シート等が用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、セルロース等が好適である。セパレータは、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。また、ポリエチレン層及びポリプロピレン層を含む多層セパレータであってもよく、セパレータの表面にアラミド系樹脂等の樹脂が塗布されたものを用いることもできる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本開示をより具体的に詳細に説明するが、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
[正極活物質の作製]
NiSO
4、CoSO
4及びMnSO
4を水溶液中で混合して共沈させることで得たニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を焼成して、ニッケルコバルトマンガン複合酸化物を作製した。次に、当該複合酸化物と、炭酸リチウムと、酸化タングステン(WO
3)とをらいかい乳鉢を用いて混合した。この混合物における、リチウムと、遷移金属であるニッケルコバルトマンガンと、タングステンとの混合比(モル比)は1.15:1.0:0.005であった。この混合物を空気中において900℃で10時間焼成した後、粉砕することにより、Wを含むリチウム遷移金属酸化物(正極活物質)を得た。そして、得られたリチウム遷移金属酸化物の元素分析をICP発光分析法により行ったところ、遷移金属全体に対するNi、Co、Mn、Wの各元素のモル比はそれぞれ46.5、27.5、26、0.5であった。
【0058】
次に、得られたリチウム遷移金属酸化物に、当該酸化物のLiを除く金属元素(遷移金属)の総量に対して0.5mol%のWO
3、及び当該酸化物の総量に対して2質量%のリン酸リチウム(Li
3PO
4)を混合して、WO
3及びLi
3PO
4が粒子表面に付着した正極活物質を得た。
【0059】
[正極の作製]
上記正極活物質と、カーボンブラックと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、91:7:2の質量比で混合した。当該混合物に分散媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加して混練し、正極合材スラリーを調製した。次に、正極芯体であるアルミニウム箔上に正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させて、アルミニウム箔に正極合材層を形成した。このように正極合材層を形成した正極芯体を所定のサイズに切り出し、圧延して、アルミニウムタブを取り付け、正極とした。
【0060】
上記のようにして得られた正極について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均粒径が150nmの酸化タングステンの粒子、及び、平均粒径が100nmのリン酸リチウムの粒子が、リチウム含有遷移金属複合酸化物の表面に付着していることが確認された。但し、酸化タングステン及びリン酸リチウムは、その一部が導電材と結着材を混合する工程において正極活物質の表面から剥がれる場合があるので、正極活物質粒子に付着することなく、正極内に酸化タングステン及び/又はリン酸リチウムの一部が含まれている場合もある。また、SEMでの観察により、リン酸リチウムは、酸化タングステンに付着しているか、或いは、酸化タングステンの近傍に存在していることが確認された。
【0061】
[負極の作製]
黒鉛の表面に非晶質炭素材が固着した負極活物質の粉末と、カルボキシメチルセルロース(CMC)と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)とを、98:1:1の質量比で混合し、水を添加した。これを混合機(プライミクス製、T.K.ハイビスミックス)を用いて攪拌し、負極合材スラリーを調製した。次に、負極芯体である銅箔上に負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延ローラにより圧延した。こうして、銅箔の両面に負極合材層が形成された負極を作製した。
【0062】
[非水電解質の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(MEC)と、ジメチルカーボネート(DMC)を、30:30:40の体積比で混合した。当該混合溶媒に、LiPO
2F
2を0.05mol/L、LiPF
6を1.2mol/Lの濃度となるように溶解させ、さらにビニレンカーボネートを0.3質量%溶解させた。
【0063】
[電池の作製]
上記正極にアルミニウムリードを、上記負極にニッケルリードをそれぞれ取り付け、ポリエチレン製の微多孔膜をセパレータとして用い、セパレータを介して正極及び負極を渦巻き状に巻回することにより巻回型の電極体を作製した。この電極体を有底円筒形状の電池ケース本体に収容し、上記非水電解質を注入した後、ガスケット及び封口体により電池ケース本体の開口部を封口して、円筒型の非水電解質二次電池(電池A1)を作製した。
【0064】
<実施例2>
リン酸リチウムに代えて、リチウム遷移金属酸化物の総量に対して2質量%のリン酸水素マグネシウム(MgHPO
4)を混合したこと以外は、実施例1と同様にして、正極を作製した。正極を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均粒径が150nmの酸化タングステンの粒子、及び、平均粒径が500nmのリン酸水素マグネシウム(MgHPO
4)の粒子が、リチウム含有遷移金属複合酸化物の表面に付着していることが確認された。上記作製した正極を用いて、実施例1と同様に円筒型の非水電解質二次電池(電池A2)を作製した。
【0065】
<実施例3>
リン酸リチウムに代えて、リチウム遷移金属酸化物の総量に対して2質量%のリン酸水素マンガン(MnHPO
4)を混合したこと以外は、実施例1と同様にして、正極を作製した。正極を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均粒径が150nmの酸化タングステンの粒子、及び、平均粒径が1μmのリン酸水素マンガン(MnHPO
4)の粒子が、リチウム含有遷移金属複合酸化物の表面に付着していることが確認された。上記作製した正極を用いて、実施例1と同様に円筒型の非水電解質二次電池(電池A3)を作製した。
【0066】
<実施例4>
負極活物質を黒鉛粉末に代えたことを以外は実施例3と同様にして、円筒型の非水電解質二次電池(電池A4)を作製した。
【0067】
<実施例5>
ニッケルコバルトマンガン複合酸化物と、炭酸リチウムと、酸化ニオブ(NbO
2)とをらいかい乳鉢を用いて混合した。この混合物における、リチウムと、遷移金属であるニッケルコバルトマンガンと、ニオブとの混合比(モル比)は1.15:1.0:0.005であった。この混合物を空気中において900℃で10時間焼成した後、粉砕することにより、Nbを含むリチウム遷移金属酸化物(正極活物質)を得た。そして、得られたリチウム遷移金属酸化物の元素分析をICP発光分析法により行ったところ、遷移金属全体に対するNi、Co、Mn、Nbの各元素のモル比はそれぞれ46.5、27.5、26.0、0.5であった。
【0068】
次に、得られたリチウム遷移金属酸化物に、当該酸化物のLiを除く金属元素(遷移金属)の総量に対して0.5mol%の酸化ニオブ(NbO
2)、及び当該酸化物の総量に対して2質量%のリン酸水素マンガン(MnHPO
4)を混合して、NbO
2及びMnHPO
4が粒子表面に付着した正極活物質を得た。
【0069】
上記正極活物質を用いて、実施例1と同様に正極を作製した。正極を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均粒径が250nmの酸化ニオブの粒子、及び、平均粒径が1μmのリン酸水素マンガンの粒子が、リチウム含有遷移金属複合酸化物の表面に付着していることが確認された。上記作製した正極を用いて、実施例1と同様に円筒型の非水電解質二次電池(電池A5)を作製した。
【0070】
<実施例6>
実施例3における正極活物質の作製工程において、WO
3とMnHPO
4を混合せずに正極活物質を作製した。次に、正極の作製工程において、リチウム遷移金属酸化物とカーボンブラックと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、91:7:2の質量比で混合した後に、WO
3とMnHPO
4を混合した。上記以外は実施例3と同様にして、正極を作製した。正極を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均粒径が150nmの酸化タングステンの粒子、及び、平均粒径が1μmのリン酸水素マンガン(MnHPO
4)の粒子が、リチウム含有遷移金属複合酸化物が正極極板中に含まれていることが確認されたが、正極活物質表面にWO
3及びMnHPO
4が付着したものは存在しなかった。
【0071】
上記作製した正極を用いて、実施例1と同様に円筒型の非水電解質二次電池(電池A6)を作製した。
【0072】
<比較例1>
正極活物質の作製工程において、タングステン及びリン酸リチウムを添加しなかったこと、並びに、非水電解質の調製工程において、LiPO
2F
2を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、円筒型の非水電解質二次電池(電池B1)を作製した。
【0073】
<比較例2>
正極活物質の作製工程において、タングステン及びリン酸リチウムを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、円筒型の非水電解質二次電池(電池B2)を作製した。
【0074】
<比較例3>
正極活物質の作製工程において、リン酸リチウムを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、円筒型の非水電解質二次電池(電池B3)を作製した。
【0075】
<比較例4>
正極活物質の作製工程において、タングステンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、円筒型の非水電解質二次電池(電池B4)を作製した。
【0076】
<比較例5>
非水電解質の調製工程において、LiPO
2F
2を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、円筒型の非水電解質二次電池(電池B5)を作製した。
【0077】
[低温回生試験]
上記で作製した電池を用いて、25℃の温度条件下、電流値800mAで4.1Vになるまで定電流充電を行い、次いで、4.1Vで電流値が0.1mAになるまで定電圧充電を行った。その後、800mAで2.5Vになるまで定電流放電を行った。この定電流放電を行ったときの放電容量を、各二次電池の定格容量とした。
【0078】
次に、25℃の温度条件下、800mAで2.5Vになるまで定電流放電を行い、再度、定格容量の50%になるまで充電した。その後、電池温度−30℃で、充電終止電圧を2.0Vとしたときに10秒間の充電を行うことが可能な最大電流値から、各二次電池の充電深度(SOC)50%における低温回生値を以下の式より求めた。
低温回生値(SOC50%)=(測定された最大電流値)×充電終止電圧(2.0V)
比較例1の電池B1の低温回生値を基準(100%)として、実施例1〜5の電池A1〜A6及び比較例1〜5電池B1〜B5の低温回生値の比率を算出した。その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果から明らかなように、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、第5族/第6族元素、及びリン酸化合物を含む正極、LiPO
2F
2を含む非水電解質を有する電池A1〜A6は、第5族/第6族元素、リン酸化合物、LiPO
2F
2を含まない電池B1と比較して、低温回生が向上した。第5族/第6族元素、リン酸化合物、LiPO
2F
2のいずれかを含まない電池B2〜B5は、電池B1と比較して、低温回生はほとんど変化しなかった。
【0081】
電池A1〜A6の中では、リン酸化合物としてMgHPO
4、MnHPO
4を用いた電池A2〜A3がより優れた低温回生を示した。また、電池A3と電池A4を比較すると、黒鉛を負極活物質とした電池A4より、黒鉛の表面に非晶質炭素材が固着した負極活物質を用いた電池A3の方がより優れた低温回生を示した。