特許第6796816号(P6796816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6796816電解水生成装置および電解水生成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796816
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】電解水生成装置および電解水生成システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
   C02F1/461 Z
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-190307(P2019-190307)
(22)【出願日】2019年10月17日
(62)【分割の表示】特願2018-100662(P2018-100662)の分割
【原出願日】2018年5月25日
(65)【公開番号】特開2020-6374(P2020-6374A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】長田 実
(72)【発明者】
【氏名】黒田 真未
(72)【発明者】
【氏名】前川 哲也
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−175384(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/156668(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/168475(WO,A1)
【文献】 特開2014−217820(JP,A)
【文献】 特開2012−041572(JP,A)
【文献】 特開2018−020279(JP,A)
【文献】 特開2014−133910(JP,A)
【文献】 特開2006−322053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46−1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に設けられた陽イオン交換膜と、を備え、
前記陽極と前記陽イオン交換膜とが互いに接触するように配置されている一方で、前記陽極と前記陽イオン交換膜との間に水の流れが生じる隙間が設けられ、
前記隙間は、前記陽イオン交換膜が有する複数の膜孔のうちの隣接する膜孔同士を連通するように設けられる、電解水生成装置。
【請求項2】
前記隙間は、前記陽極に対向する前記陽イオン交換膜の表面に形成された溝または切欠きを含む、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に設けられた陽イオン交換膜と、を備え、
前記陽イオン交換膜と前記陰極とは互いに接触するように配置されている一方で、前記陽イオン交換膜と前記陰極との間に水の流れが生じる隙間が設けられ、
前記隙間は、前記陽イオン交換膜が有する複数の膜孔のうちの隣接する膜孔同士を連通するように設けられる、電解水生成装置。
【請求項4】
前記隙間は、前記陰極に対向する前記陽イオン交換膜の表面に形成された溝または切欠きを含む、請求項3に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電解水生成装置と、
前記電解水生成装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記陽極と前記陰極との間に電圧を間欠的に印加する、電解水生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電解水生成装置および電解水生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電解水生成システムの開発が行われている。従来の電解水生成システムは、水が流れる流路と、流路に接続された電解水生成装置とを備えている。電解水生成装置は、陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた陽イオン交換膜を備えている。電解水生成装置は、制御部に制御されることにより、流路を流れる水から電解水を生成する生成状態および電解水を生成しない非生成状態のいずれかに切替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−136333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の電解水生成装置には、陽極と陽イオン交換膜とが接触するように設けられ、かつ、陽イオン交換膜と陰極とが接触するように設けられているものがある。このような従来の電解水生成装置においては、陽イオン交換膜が不織布である。そのため、陽極と陽イオン交換膜との間、および、陽イオン交換膜と陰極との間の少なくともいずれか一方に水が流れない密閉された隙間(図示できないほど小さい)が存在する場合がある。
【0005】
この場合、陽極の近傍で発生した気体、たとえば、酸素またはオゾンが陽極と陽イオン交換膜との間の水が流れない密閉された隙間で滞留することがある。また、陰極の近傍で発生した気体、たとえば、水素が陽イオン交換膜と陰極との間の水が流れない密閉された隙間で滞留することがある。これらの場合、滞留する気体が陽極と陰極との間で絶縁物として機能する。そのため、陽極と陰極との間に印加される電圧を一定値に維持していると、電解水の濃度が徐々に低下していく。したがって、陽極と陰極との間に印加される電圧を予め定められた基準電圧よりも徐々に大きくしていかなければ、所望の濃度の電解水を利用し続けることができない。
【0006】
本開示は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本開示の目的は、陽極と陰極との間に印加される電圧を基準電圧よりも大きくする程度を低減しながら、所望の濃度の電解水を利用し続けることができる電解水生成装置および電解水生成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の第1の態様に係る電解水生成装置は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に設けられた陽イオン交換膜と、を備え、前記陽極と前記陽イオン交換膜とが互いに接触するように配置されている一方で、前記陽極と前記陽イオン交換膜との間に水の流れが生じる隙間が設けられ、前記隙間は、前記陽イオン交換膜が有する複数の膜孔のうちの隣接する膜孔同士を連通するように設けられる。
【0008】
本開示の第2の態様に係る電解水生成装置は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に設けられた陽イオン交換膜と、を備え、前記陽イオン交換膜と前記陰極とは互いに接触するように配置されている一方で、前記陽イオン交換膜と前記陰極との間に水の流れが生じる隙間が設けられ、前記隙間は、前記陽イオン交換膜が有する複数の膜孔のうちの隣接する膜孔同士を連通するように設けられる。
【0009】
本開示の第3の態様に係る電解水生成システムは、第1または第2の態様の電解水生成装置と、前記電解水生成装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記陽極と前記陰極との間に電圧を間欠的に印加する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の電解水生成装置および電解水生成システムによれば、陽極と陰極との間に印加される電圧を基準電圧よりも大きくする程度を低減しながら、所望の濃度の電解水を利用し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1の電解水生成システムの外観斜視図である。
図2】実施の形態1の電解水生成装置の縦断面図である。
図3】実施の形態1の電解水生成装置の積層構造の分解斜視図である。
図4】実施の形態1の電解水生成装置の積層構造の拡大縦断面図である。
図5】実施の形態1の電解水生成装置の化学的作用を説明するための第1の図である。
図6】実施の形態1の電解水生成装置の化学的作用を説明するための第2の図である。
図7】実施の形態1の電解水生成装置の化学的作用を説明するための第3の図である。
図8】実施の形態1の電解水生成装置の他の例の陰極の斜視図である。
図9】実施の形態1の電解水生成システムの制御態様を説明するためのタイミングチャートである。
図10】実施の形態2の電解水生成システムの概略図である。
図11】実施の形態2の他の例の電解水生成システムの概略図である。
図12】実施の形態2の電解水生成システムの間欠運転動作および連続運転動作のそれぞれにおける、陽極と陰極との間に印加される電圧と、電圧が印加される時間との関係を示すグラフである。
図13】実施の形態2の電解水生成システムの間欠運転動作および連続運転動作のそれぞれにおける、生成されるオゾンの濃度と、陽極と陰極との間に電圧が印加される時間との関係を示すグラフである。
図14】実施の形態2の電解水生成システムの電解水生成装置の陽イオン交換膜の化学式である。
図15】実施の形態2の電解水生成装置の内部で生じる化学的作用を説明するための第1の図である。
図16】実施の形態2の電解水生成装置の内部で生じる化学的作用を説明するための第2の図である。
図17】実施の形態2の電解水生成装置の内部で生じる化学的作用を説明するための第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、各実施の形態の電解水生成システムおよびそれに用いられている電解水生成装置を説明する。以下の複数の実施の形態においては、同一の参照符号が付された部分同士は、図面上における形状に多少の相違があっても、特段の記載がない限り、互いに同一の機能を有するものとする。
【0013】
(実施の形態1)
図1図9を用いて、実施の形態1の電解水生成システム1000を説明する。
【0014】
(システムの構造)
図1に示されるように、電解水生成システム1000は、水が流れる流路を備えている。電解水生成システム1000に設けられた流路は、幹流路15、上流側の第1の枝流路10A、下流側の第1の枝流路20A、および上流側の第2の枝流路10B、下流側の第2の枝流路20Bによって構成されている。幹流路15は、ポンプPによって送り出された原水を受け入れる。第1の枝流路10Aおよび第2の枝流路10Bは、それぞれ、幹流路15から分岐している。
【0015】
第1の枝流路10A,20Aは、上流側の第1の枝流路10Aと下流側の第1の枝流路20Aとを含んでいる。上流側の第1の枝流路10Aと下流側の第1の枝流路20Aとの間に、第1の電解水生成装置100Aが接続されている。第2の枝流路10B,20Bは、上流側の第2の枝流路10Bと下流側の第2の枝流路20Bとを含んでいる。上流側の第2の枝流路10Bと下流側の第2の枝流路20Bとの間に、第2の電解水生成装置100Bが接続されている。幹流路15、上流側の第1の枝流路10A、下流側の第1の枝流路20A、上流側の第2の枝流路10B、および下流側の第2の枝流路20Bは、それぞれ、アクリル樹脂製の中空の角筒である。
【0016】
電解水生成システム1000は、幹流路15と上流側の第1の枝流路10Aとの分岐部であって、かつ、幹流路15と上流側の第2の枝流路10Bとの分岐部に流路変更機構Vを備えている。本実施の形態においては、流路変更機構Vは、流路切替弁として機能する三方弁である。本実施の形態の電解水生成システム1000においては、幹流路15を流れる原水が、流路変更機構Vを経由して、上流側の第1の枝流路10Aおよび上流側の第2の枝流路10Bのいずれかに流れ込む。
【0017】
上流側の第1の枝流路10Aに流れ込んだ原水は、第1の電解水生成装置100Aに流れ込む。第1の電解水生成装置100Aに流れ込んだ原水は、第1の電解水生成装置100Aを通過すると、電解水に変化して、下流側の第1の枝流路20Aへ流れ込む。
【0018】
上流側の第2の枝流路10Bに流れ込んだ原水は、第2の電解水生成装置100Bに流れ込む。第2の電解水生成装置100Bに流れ込んだ原水は、第2の電解水生成装置100Bを通過すると、電解水に変化して、下流側の第2の枝流路20Bへ流れ込む。
【0019】
(制御部)
図1に示されるように、電解水生成システム1000は、制御部CA,CB,CC,CDを備えている。制御部CAは、第1の電解水生成装置100Aを制御する。制御部CBは、第2の電解水生成装置100Bを制御する。制御部CCは、流路変更機構Vを制御する。制御部CDは、ポンプPを制御する。本実施の形態においては、制御部CA,CB,CC,CDは、別個の部品として描かれているが、一体的に形成された1つの部品からなる1つの制御部であってもよい。
【0020】
電解水生成システム1000は、操作者が操作する入力部Iを備えている。入力部Iは、操作者の操作に基づいて、制御部CA,CB,CC,CDのそれぞれへ指令信号を送信する。制御部CAおよび制御部CBのそれぞれは、センサS、メモリM、およびプロセッサPR等を有している。制御部CA,CBは、プロセッサPRがメモリMに記憶されたプログラムを用いて、交流電力ACから直流電力DCを生成する。それにより、制御部CA,CBは、第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bのそれぞれ内の陽極1A(図2参照)および陰極1C(図2参照)に直流電圧を印加する。図示されていないが、制御部CCおよび制御部CDのそれぞれも、センサ、メモリ、およびプロセッサ等を有している。
【0021】
制御部CA,CBは、それぞれ、陽極1Aと陰極1Cとの間で流れる電流を、抵抗器(r)を経由して受け取る。それにより、制御部CA,CBは、それぞれ、センサSによって検出された陽極1Aと陰極1Cとの間で流れる電流の値の情報に基づいて、陽極1Aと陰極1Cとの間に印加される電圧の値を制御する。具体的には、制御部CA,CBは、それぞれ、陽極1Aと陰極1Cとの間で流れる電流の値が所定値になるように、陽極1Aと陰極1Cとの間に印加される電圧の値を制御する。電解水の濃度、たとえば、オゾン水の濃度は、陽極1Aと陰極1Cとの間で流れる電流の値に比例すると推定される。したがって、利用できる電解水の濃度をほぼ一定値に維持するために、制御部CA,CBは、それぞれ、陽極1Aと陰極1Cとの間で流れる電流の値をほぼ一定値に維持するように陽極1Aと陰極1Cとの間に印加される電圧を変化させる。
【0022】
たとえば、第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bのいずれか一方を使用し続けると、センサSによって検出された電流の値が所定値よりも低くなる場合がある。この場合、使用し続けられている制御部CAおよび制御部CBのいずれか一方は、陽極1Aと陰極1Cとの間で流れる電流の値が所定値まで増加するように、陽極1Aと陰極1Cとの間に印加される電圧の値を増加させる制御を実行する。
【0023】
制御部CAは、入力部Iから受信した指令信号に基づいて、第1の電解水生成装置100Aを制御する。制御部CBは、入力部Iから受信した指令信号に基づいて、第2の電解水生成装置100Bを制御する。制御部CCは、入力部Iから受信した指令信号に基づいて、流路変更機構Vを制御する。制御部CDは、入力部Iから受信した指令信号に基づいて、ポンプPを制御する。
【0024】
制御部CA,CB,CC,CDは、満水状態または電気的接続等の異常事態が発生した場合に、第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bを停止する。制御部CA,CB,CC,CDは、異常事態が発生しなければ、その後の通常行われる処理を実行する。
【0025】
(流路変更機構)
図1に示される流路変更機構Vは、制御部CCに制御されることによって、幹流路15から上流側の第1の枝流路10Aへ原水を導く第1の状態および幹流路15から上流側の第2の枝流路10Bへ原水を導く第2の状態のいずれかを選択的に形成する。流路変更機構Vは、本実施の形態においては、1つの三方弁、すなわち流路切替弁であるが、上流側の第1の枝流路10Aおよび上流側の第2の枝流路10Bにそれぞれ設けられた2つの開閉弁であってもよい。この場合、制御部CCは、2つの開閉弁の開閉動作が流路切替弁の流路切替動作と同じになるように、2つの切替弁の開閉動作を制御する。
【0026】
(電解水生成装置の構造)
図2に示される実施の形態1の第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bを説明する。第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bは、いずれも、複数の電解水生成装置の一例として示されている。したがって、3以上の電解水生成装置のいずれか1つが選択的にかつ順次電解水を生成する生成状態に制御されてもよい。
【0027】
第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bは、いずれも、電解水としてオゾン水を生成するオゾン水生成装置として機能する。本実施の形態においては、第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bは、同一の構造を有しているが、互いに異なる構造を有していてもよい。
【0028】
第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bは、いずれも、ハウジング101とハウジング101内に設けられた積層構造1とを備えている。ハウジング101は、電極ケース102と電極ケース102の上方の開口を塞ぐ電極ケース蓋103とを有している。
【0029】
(電極ケース)
図2に示されるように、第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bの電極ケース102は同一構造を有している。電極ケース102は、アクリル樹脂製である。電極ケース102は、上面が開口している容器構造を有している。
【0030】
第1の電解水生成装置100Aの電極ケース102の対向する2つの側面に上流側の第1の枝流路10Aおよび下流側の第1の枝流路20Aがそれぞれ接続されている。第2の電解水生成装置100Bの電極ケース102の対向する2つの側面に上流側の第2の枝流路10Bおよび下流側の第2の枝流路20Bがそれぞれ接続されている。電極ケース102の内部に積層構造1を支持するリブ(図示しない)を有している。
【0031】
電極ケース102は、その底面に2つの貫通孔104,105を有している。給電用シャフト106,107は、それぞれ、2つの貫通孔104,105を経由して、電極ケース102の外部へ延びている。また、第1の電解水生成装置100Aの給電用シャフト106,107の先端から延びる配線(図示せず)が制御部CAに電気的に接続されている。第2の電解水生成装置100Bの給電用シャフト106,107から延びる配線が制御部CBに電気的に接続されている。
【0032】
(積層構造)
図2および図3に示されるように、第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bのそれぞれは、同一の積層構造1を内包している。積層構造1は、給電体1S、陽極1A、陽イオン交換膜5、および陰極1Cを備えている。給電体1Sの一方の主表面上には、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、陽極1Aが形成されている。給電体1Sは、ボロンドープ型の導電性ダイヤモンド材料である。陽極1Aの上に陽イオン交換膜5が積層されている。陽イオン交換膜5の上に陰極1Cが積層されている。
【0033】
図2に示されるように、上流側の第1の枝流路10Aが第1の電解水生成装置100Aの上流側の流入口に接続されている。上流側の第1の枝流路20Aが第1の電解水生成装置100Aの下流側の流出口に接続されている。第1の電解水生成装置100Aは、上流側の第1の枝流路10Aを流れる原水から第1の電解水を生成する第1の生成状態および第1の電解水を生成しない第1の非生成状態のいずれかに切替えられる。
【0034】
図2に示されるように、第2の枝流路10Bが第2の電解水生成装置100Bの上流側の流入口に接続されている。第2の枝流路20Bが第2の電解水生成装置100Bの下流側の流出口に接続されている。第2の電解水生成装置100Bは、第2の枝流路10Bを流れる原水から第2の電解水を生成する第2の生成状態および第2の電解水を生成しない第2の非生成状態のいずれかに切替えられる。
【0035】
図2から分かるように、積層構造1は、原水を電気分解して電解水としてのオゾン水を生成する。積層構造1は、10mm×50mm×1.2mmの薄肉板状をなしている。積層構造1は、後に詳細に述べられるように、陰極1Cおよび陽イオン交換膜5を貫通して、その底面に陽極1Aの表面が露出する穴部、より具体的には、溝部またはスリットを有している。
【0036】
図2の断面図から推測されるように、陰極1Cの陰極孔1CTHとしてのスリットと陽イオン交換膜5の膜孔5THとしてのスリットとが平面視において重畳するように、陰極1Cと陽イオン交換膜5とが配置されている。そのため、積層構造1の前述の穴部は、陰極1Cの上側の流路から陽極1Aの上面まで連通している。
【0037】
本実施の形態の第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bのそれぞれにおいては、陽極1Aと陽イオン交換膜5とが接触しており、かつ、陽イオン交換膜5と陰極1Cとが接触している。しかしながら、陽極1Aと陽イオン交換膜5とが距離を置いて設けられていてもよい。また、陽イオン交換膜5と陰極1Cとが距離を置いて設けられていてもよい。
【0038】
(給電体)
図2および図3に示される給電体1Sは、積層構造1の陽極1Aに正の電荷を付与する。給電体1Sは、10mm×50mm×0.5mmの薄肉板状をなしている。給電体1Sの一つの縁部の延出部が、シャフト取付片1SAを構成している。給電体1Sは、チタンからなる。給電体1Sの表面上にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、陽極1Aが形成される。給電体1Sは電極ケース102に支持される。シャフト取付片1SAから引き出された給電用シャフト106は、制御部CAまたは制御部CBに電気的に接続される。
【0039】
(陽極)
図2および図3に示される陽極1Aは、制御部CA,CBからの正の電荷を受けて電解水としてのオゾンの気泡を生成する。陽極1Aは、10mm×50mm×3μmの薄肉板状をなしている。陽極1Aは、ボロンドープ型の導電性ダイヤモンド膜である。
【0040】
(陽イオン交換膜)
図2および図3に示される陽イオン交換膜5は、陽極1Aと陰極1Cとに挟まれた状態で保持されている。正の電荷は、陽極1Aから陰極1Cへ移動する。陽イオン交換膜5は、10mm×50mm×0.2mmの薄肉板状をなしている。陽イオン交換膜5は、その上面からその下面へ貫通するスリットの膜孔5THを有している。
【0041】
スリット状の膜孔5THの長手方向は陰極1Cの長手方向と直交する方向である。スリット状の膜孔5THの寸法は7mm×1mm×0.5mmである。膜孔5THは、図とは異なるが、陽イオン交換膜5の10か所の位置に設けられる。隣接する膜孔5TH同士を連結する隙間C1または隙間C2を構成する溝または切欠きが設けられている。この溝または切欠きは、製造工程において必然的に形成されるくぼみであってもよい。
【0042】
(陰極)
図2および図3に示される陰極1Cは、陽イオン交換膜5を通過した正の電荷を受けて水素の気泡を生成する。陰極1Cは、10mm×50mm×0.5mmの薄肉板状をなしている。陰極1Cの一つの縁部の延部が、シャフト取付片1SCを構成する。陰極1Cは、陰極1Cの上面から陰極1Cの下面へ貫通するスリット状の陰極孔1CTHを有している。陰極孔1CTHの長手方向は陰極1Cの長手方向と直交する方向である。
【0043】
スリット状の陰極孔1CTHの寸法は、7mm×1mm×0.5mmである。図面とは異なるが、陰極孔1CTHは、陰極1Cの10か所の位置に設けられている。陰極孔1CTHの内周面には樹脂製のコーティング材料である高電気抵抗材料Rが塗布されている。高電気抵抗材料Rは陰極1Cよりも電気抵抗が大きい。陰極1Cは、ステンレス製である。陰極1Cのシャフト取付片1SCから引き出された給電用シャフト107は、制御部CAまたは制御部CBに電気的に接続される。
【0044】
(化学的作用)
図4に示されるように、第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bのそれぞれにおいて、陽極1Aと陰極1Cとに電圧が印加されておらず、かつ、原水が流れていないときには、化学的作用はほとんど生じていない。
【0045】
図5に示されるように、陽極1Aと陰極1Cとに電圧が印加されると、次のような化学的作用が生じる
陽極1A側 3HO→O+6H+6e
2HO→O+4H+4e
陰極1C側 2HO+2e→H+2OH
つまり、第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bのそれぞれにおいては、陽極1Aの近傍で酸素とオゾンが発生し、陰極1Cの近傍で水素が発生する。陽極1Aの近傍でオゾンが発生するか否かは、陽極1Aと陰極1Cとの間に印加される電圧に依存する。本実施の形態においては、陽極1Aと陽イオン交換膜5との界面でオゾンが発生する程度の電圧が陽極1Aと陰極1Cとの間に印加されるものとする。ただし、陽極1Aと陽イオン交換膜5との界面でオゾンが発生しない程度の電圧が陽極1Aと陰極1Cとの間に印加されてもよい。なお、オゾンを生成するための電極としては、二酸化鉛電極、ダイヤモンド電極、白金電極、または酸化タンタル電極などが用いられ得る。
【0046】
図6に示されるように、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されていない状態で、原水が陽イオン交換膜5に供給され続けると、陽イオン交換膜5は、原水の中に含まれる金属陽イオン(M)を取り込み、水素イオン(H)を原水中に放出する。水素イオン(H+)同士が結合すると、水素(H)が生成される。金属陽イオン(M)は、たとえば、カルシウムイオン(Ca2+)またはナトリウムイオン(Na)等である。
【0047】
その後、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されると、陽極1Aと陽イオン交換膜5との界面の近傍では、2HO+2e+M2+→H+M(OH)という化学反応が生じる。つまり、原水の中に含まれる金属陽イオン(たとえば、Ca2+またはNa)が陽極1Aの近傍で水酸化物イオン(OH)と結合し、金属水酸化物M(OH)が生成される。
【0048】
たとえば、金属陽イオン(M2+)がカルシウムイオン(Ca2+)である場合、水中の炭酸イオン(CO2−)とカルシウムイオン(Ca2+)とが結合する。そのため、図6に二点鎖線で示されるように、スケール(CaCO)が陰極1Cと陽イオン交換膜5との界面の近傍の膜孔5THおよび陰極孔1CTHの内周面に付着することがある。しかしながら、本実施の形態の第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bによれば、後述される高電気抵抗材料Rの存在により、スケール(CaCO)の膜孔5THおよび陰極孔1CTHの内周面への付着が抑制されている。その結果、膜孔5THおよび陰極孔1CTHがスケールによって狭められることに起因したオゾン生成効率の低下が抑制されている。
【0049】
(隙間)
図7から理解されるように、陽極1Aと陽イオン交換膜5とは互いに接触している。これは、電解水の生成効率を高めるために、陽極1Aから陽イオン交換膜5への正の電荷の移動の効率を高めることが好ましいからである。したがって、陽極1Aと陽イオン交換膜5との接触面同士の間の水が流れないわずかの空間でオゾンの気泡が滞留するおそれがある。そのため、本実施の形態においては、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に水の流れが生じるように、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に隙間C1が設けられている。その結果、陽極1Aの接触面と陽イオン交換膜5の接触面との間に存在するオゾンが、陽極1Aおよび陽イオン交換膜5のそれぞれの接触面に平行な方向に隙間C1を通過する水の流れに起因したサイフォン作用によって、水の中へ自然に混入される。したがって、オゾンが陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に滞留することが抑制される。以上のことから、電解水生成のために必要な陽極1Aと陰極1Cとの間に印加される電圧の増加を抑制することができる。
【0050】
図7から理解されるように、陽イオン交換膜5と陰極1Cとは互いに接触している。これは、電解水の生成効率を高めるために、陽イオン交換膜5から陰極1Cへの正の電荷の移動の効率を高めることが好ましいからである。したがって、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの接触面同士の間の水が流れないわずかの空間で水素の気泡が滞留するおそれがある。そのため、本実施の形態においては、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に水の流れが生じるように、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に隙間C2が設けられている。それにより、陽イオン交換膜5の接触面と陰極1Cの接触面との間に存在する水素が、陽イオン交換膜5および陰極1Cのそれぞれの接触面に平行な方向に隙間C2を通過する水の流れに起因したサイフォン作用によって、水の中へ自然に混入される。そのため、水素が陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に滞留することが抑制される。その結果、電解水生成のために必要な陽極1Aと陰極1Cとの間に印加される電圧の増加を抑制することができる。
【0051】
図7に示されるように、隙間C1は、陽極1Aに対向する陽イオン交換膜5の表面に設けられた溝または切欠きである。ただし、隙間C1は、陽イオン交換膜5に対向する陽極1Aの表面に形成された溝または切欠きであってもよい。また、隙間C1は、陽極1Aに対向する陽イオン交換膜5の表面に形成された溝または切欠きおよび陽イオン交換膜5に対向する陽極1Aの表面に形成された溝または切欠きの双方であってもよい。隙間C1は、製造時に陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に自然に形成されたものであってもよい。
【0052】
隙間C1は、図面で描かれているような大きな溝または切欠きとは異なり、実際には、陽イオン交換膜5を構成する不織布に形成された多数の細かな切欠きまたは溝である。隙間C1の位置および大きさは、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に水の流れが生じ、かつ、陽極1Aと陽イオン交換膜5とが接触する部分を有していれば、いかなるものであってもよい。
【0053】
図7に示されるように、隙間C2は、陰極1Cに対向する陽イオン交換膜5の表面に設けられた溝または切欠きである。ただし、隙間C2は、陽イオン交換膜5に対向する陰極1Cの表面に形成された溝または切欠きであってもよい。また、隙間C2は、陰極1Cに対向する陽イオン交換膜5の表面に形成された溝または切欠きおよび陽イオン交換膜5に対向する陰極1Cの表面に形成された溝または切欠きの双方であってもよい。隙間C2は、製造時に陰極1Cと陽イオン交換膜5との間に自然に形成されたものであってもよい。
【0054】
隙間C2は、図面で描かれているような大きな溝または切欠きとは異なり、実際には、陽イオン交換膜5を構成する不織布に形成された多数の細かな切欠きまたは溝である。隙間C2の位置および大きさは、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に水の流れが生じ、かつ、陽イオン交換膜5と陰極1Cとが接触する部分を有していれば、いかなるものであってもよい。
【0055】
図7に示されるように、陽極1Aおよび陰極1Cは、それぞれ、平板状をなしている。平板状の陽極1A、陽イオン交換膜5、および平板状の陰極1Cは、この順番で積層された積層構造1を形成している。陽イオン交換膜5は、陽イオン交換膜5の厚さ方向に貫通する複数の膜孔5THを有している。陰極1Cは、陰極1Cの厚さ方向に貫通し、複数の膜孔5THにそれぞれ連通する複数の陰極孔1CTHを有している。したがって、陽イオン交換膜5側の陽極1Aの表面、複数の膜孔5THの内面、および複数の陰極孔1CTHの内面は、それぞれが底面および周面からなる複数の穴部を構成している。
【0056】
図7に示されるように、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間の隙間C1は、積層構造1に形成された複数の穴部のうちの隣接する穴部同士を連通させている。そのため、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に存在するオゾンを効率的に水の流れの中へ混入させることができる。陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間の隙間C2は、積層構造1に形成された複数の穴部のうちの隣接する穴部同士を連通させる。そのため、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に存在する水素を効率的に水の中へ入り込ませることができる。
【0057】
(高電気抵抗材料)
図4図8から分かるように、陰極孔1CTHの内周面は、陰極1Cの電気抵抗値よりも高い電気抵抗値を有する高電気抵抗材料Rによって覆われている。そのため、陰極孔1CTHの内周面が水の中に含まれる陽イオンを引き寄せる力が弱まる。それにより、陰極孔1CTH内に陽イオンが滞留することが抑制される。そのため、陰極孔1CTHの内周面に滞留した陽イオンと水の中に含まれる陰イオンとの結合が抑制される。その結果、陽イオンと陰イオンとの結合に起因したスケールの発生が抑制される。したがって、陰極孔1CTH内でスケールが滞留することに起因した電解水の生成能力の低下を抑制することができる。
【0058】
本実施の形態は、高電気抵抗材料Rは、陰極1Cを構成するステンレスの陰極孔1CTHの内周面が加熱または化学反応によって変化させられたものであってもよい。陰極孔1CTHの内周面の全体が高電気抵抗材料Rによって覆われていることが好ましい。高電気抵抗材料Rは、絶縁材料であることが好ましい。
【0059】
陰極1Cと陽イオン交換膜5との接触面のうち陰極孔1CTHの内周面の周囲の部分、たとえば、陰極1Cの下面の一部および上面も高電気抵抗材料Rによって覆われていてもよい。ただし、陰極1Cと陽イオン交換膜5とがいずれかの位置で接触しているため、陽イオン交換膜5から陰極1Cへの陽イオンの伝達が可能である。これによれば、スケールの発生をより確実に抑制することができる。複数の陰極孔1CTHのそれぞれの内周面の全体が、高電気抵抗材料Rによって覆われていることが好ましい。これによれば、電解水の生成効率を高めながら、スケールの発生をより確実に抑制することができる。
【0060】
高電気抵抗材料Rは、陰極1Cに塗布されたコーティング材料である。そのため、陰極1Cの内周面への高電気抵抗材料Rの付着を容易に行うことができる。高電気抵抗材料Rは、絶縁材料であれば、スケールの発生をより確実に抑制することができる。
【0061】
本実施の形態においては、陰極1Cは、ステンレス材料で形成され、高電気抵抗材料Rは、フッ素樹脂材料で形成されている。そのため、陰極1Cとコーティング材料との付着強度の値および必要なコーティング材料の電気抵抗の値の双方を所望の大きさに設定することができる。
【0062】
(他の例の陰極および高電気抵抗材料)
図8に示されるように、第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bは、他の例の陰極1Cを含んでいてもよい。他の例の陰極1Cは、枠形状を有している。枠形状を有する他の例の陰極1Cの下面は、陽イオン交換膜5の上面に接するように設けられている。この場合、陽イオン交換膜5の隙間C1および隙間C2を設けなくてもよい。
【0063】
高電気抵抗材料Rは、枠形状の陰極1Cの内周面を覆うように枠形状の陰極1C内に嵌め込まれている。高電気抵抗材料Rは、格子窓のような構造を有している。具体的には、高電気抵抗材料Rは、板状部材の外形を有しており、複数の膜孔5THにそれぞれ連通する複数の連通孔RTHを有している。高電気抵抗材料Rは、陰極の電気抵抗値よりも高い電気抵抗値を有する。
【0064】
これによれば、枠形状を有する陰極1Cの内周面と陽イオン交換膜5の複数の膜孔5THのそれぞれの内周面とが高電気抵抗材料Rによって絶縁されている。したがって、膜孔5THの近傍でのスケールの発生のおそれを低下させることができる。なお、膜孔5THの下方の水に露出した陽極1Aの上面で発生したオゾンは、複数の連通孔RTHを通過して陰極1Cの上方を流れる水に混入される。
【0065】
(システムの切替制御)
図9に示されるように、制御部CDが、ポンプPを駆動(ON)することによって、幹流路15に原水が送り込まれる。流路変更機構Vは、制御部CCによって、第1の状態および第2の状態のいずれかに選択的に切り替えられている。本実施の形態においては、第1の状態は、流路変更機構Vが幹流路15から上流側の第1の枝流路10Aへ原水を導く状態である。また、第2の状態は、流路変更機構Vが幹流路15から上流側の第2の枝流路10Bへ原水を導く状態である。
【0066】
まず、制御部CCは、流路変更機構Vを閉じられた状態から前述の第1の状態へ切り替える。それにより、原水が幹流路15から上流側の第1の枝流路10Aへ導かれる。その後、原水は、第1の電解水生成装置100Aに供給される。
【0067】
次に、制御部CAは、流路変更機構Vが前述の第1の状態になっている期間のいずれかにおいて、第1の電解水生成装置100Aが電解水を生成する制御を実行する。つまり、第1の電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧を印加する。第1の電解水生成装置100Aにおいては、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加(ON)されることにより、電解水が生成される。
【0068】
また、制御部CBは、流路変更機構Vが前述の第1の状態になっているときには、第2の電解水生成装置100Bが電解水を生成しない制御を実行する。つまり、第2の電解水生成装置100Bの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されない。言い換えると、第2の電解水生成装置100Bは、停止(OFF)状態である。
【0069】
その後、制御部CDは、ポンプPを停止する制御を実行し、かつ、制御部CCは、流路変更機構Vを閉じる状態に切り替える。このとき、第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bのそれぞれにおいては、制御部CA,CBは、それぞれ、陰極1Cと陽極1Aとの間に電圧を印加しない。
【0070】
次に、制御部CDがポンプPを駆動する制御を実行している状態で、制御部CCは、流路変更機構Vを前述の第2の状態に切り替える。それにより、原水が幹流路15から上流側の第2の枝流路10Bへ導かれる。その後、原水は、第2の電解水生成装置100Bに供給される。
【0071】
制御部CAは、流路変更機構Vが前述の第2の状態になっているときには、第1の電解水生成装置100Aが電解水を生成しない制御を実行する。つまり、第1の電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されない。言い換えると、第1の電解水生成装置100Aは、停止(OFF)状態である。
【0072】
また、制御部CBは、流路変更機構Vが前述の第2の状態になっている期間のいずれかにおいて、第2の電解水生成装置100Bが電解水を生成する制御を実行する。つまり、第2の電解水生成装置100Bの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧を印加する。第2の電解水生成装置100Bにおいては、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加(ON)されることにより、電解水が生成される。
【0073】
一般に、第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bを連続して使用し続けると、電解水のpHの増加に起因したスケールの陰極1C等へ付着が生じる。スケールには、カルシウムスケール、マグネシウムスケール、および硬度成分スケールと言われるものがある。これらのスケールの一例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、およびリン酸カルシウム、または、鉄塩スケール(鉄錆)と言われるスケールの一例としての水酸化鉄および酸化鉄等が含まれる。
【0074】
スケールが発生すると、陽極1Aと陰極1Cとの間で流れる電流の値が低下するため、制御部CAまたはCBは、陽極1Aと陰極1Cとの間に印加される電圧の値を増加させる制御を実行する。したがって、第1の電解水生成装置100Aまたは第2の電解水生成装置100Bを連続して使用し続けると、第1の電解水生成装置100Aまたは第2の電解水生成装置100Bの電解水の生成の効率が低下する。
【0075】
以上のことから、スケールの発生を抑制するためには、第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bのそれぞれを連続して利用する時間を短くすることが考えられる。そのため、電解水を生成する電解水生成装置と電解水を生成しない電解水生成装置とを時間分割して切り替えている。これによれば、1つの電解水生成装置を使用する時間を短くしながら、電解水生成システム1000全体としては、電解水を継続的に生成することができる。その結果、所望の濃度の電解水を得るために陽極1Aと陰極1Cとの間に印加する電圧の増加を抑制しながら、電解水の生成能力を維持することができる。
【0076】
(システムの間欠運転制御)
図9に示されるように、第1の電解水生成装置100Aの制御部CAおよび第2の電解水生成装置100Bの制御部CBは、いずれも、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧を間欠的に印加する。そのため、陽極1Aと陰極1Cとの間の電圧の印加が停止されている間に、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に滞留しているオゾンが水の中に流れ出し、かつ、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に滞留している水素が水の中に流れ出す。その結果、オゾンが陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に滞留することが抑制され、かつ、水素が陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に滞留することが抑制される。
【0077】
図9に示されるように、制御部CA,CB,CC,CDは、ポンプPおよび流路変更機構Vを制御する。それにより、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されている期間にだけでなく、電圧の印加が停止されている期間の一部においても、電解水生成装置100A,100Bへ原水が導かれる。より具体的には、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧を印加している期間に加えて、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧を印加している期間の前後の所定期間においても、電解水生成装置100A,100Bへ原水が導かれる。そのため、オゾンが陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に滞留することがより確実に抑制され、かつ、水素が陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に滞留することがより確実に抑制される。ただし、制御部CDは、電圧の印加のオン/オフと同期して、幹流路15に原水を送り出すようにポンプPのオン/オフを制御してもよい。
【0078】
(電解水生成システムの動作)
操作者は、入力部Iを操作し、指令信号を入力部Iから制御部CA,CB,CC,CBへ送信する。それにより、まず、ポンプPが駆動し、第1の電解水生成装置100Aに原水が送り込まれる。その後、第1の電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加される。これにより、第1の電解水生成装置100A内で電解水が生成される。本実施の形態の場合、第1の電解水生成装置100A内の陽イオン交換膜5と陽極1Aとの界面の近傍でオゾンの気泡が生成される。また、第1の電解水生成装置100A内の陽イオン交換膜5と陰極1Cとの界面の近傍で水素が発生する。オゾンの気泡および水素の気泡は原水に溶解する。その結果、電解水としてオゾン水が生成される。
【0079】
オゾンの気泡は、第1の電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加される状態で、時間が経過するにつれて、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間の不可避の隙間に滞留する。不可避の隙間は、図示できないほど小さい。このオゾンの気泡は、陽極1Aと陰極1Cとの間で絶縁物として機能してしまう。しかしながら、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間の不可避の隙間に滞留するオゾンは、隙間C1を流れる水の流れに起因したサイフォン作用によって、水の中へ吸引され、第1の電解水生成装置100Aから下流側の第1の枝流路20Aへ流れ出る。
【0080】
また、水素の気泡が、第1の電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加される状態で、時間が経過するにつれて、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間の不可避の隙間に滞留する。不可避の隙間は、図示できないほど小さい。この水素の気泡は、陽極1Aと陰極1Cとの間で絶縁物として機能してしまう。しかしながら、陰極1Cと陽イオン交換膜5との不可避の隙間に滞留する水素は、隙間C2を流れる水の流れに起因したサイフォン作用によって、水の中へ吸引され、第1の電解水生成装置100Aから下流側の第1の枝流路20Aへ流れ出る。
【0081】
また、上記の場合、水酸化物イオン濃度が増加する。その結果、第1の電解水生成装置100Aの積層構造1の膜孔5TH、陰極孔1CTH(または連通孔RTH)および陽極1Aの表面によって構成される穴部、すなわちスリット内において、水酸化物塩(スケール)が一次的に滞留する。本実施の形態においては、陰極孔1CTHの内周面が高抵抗材料Rによって覆われている。そのため、発生したスケールは、陰極孔1CTHに付着することなく、電解水の中へ混入され、第1の電解水生成装置100Aから下流側の第1の枝流路20Aへ電解水とともに流れ出る。
【0082】
第1の電解水生成装置100Aに原水が送り込まれている場合には、第2の電解水生成装置100Bに原水が送り込まれない。そのため、第2の電解水生成装置100Bの陽イオン交換膜5に原水中に含まれる金属陽イオンの蓄積が抑制される。たとえば、第2の電解水生成装置100Bの陽イオン交換膜5の水素イオン(H)と原水中のカルシウムイオン(Ca2+)との交換が抑制される。
【0083】
第1の電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されてから所定時間が経過すると、第1の電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間の電圧の印加が停止される。これにより、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間でのオゾンの発生および陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間での水素の発生が停止される。その後、所定時間だけポンプPは駆動され続ける。その結果、第1の電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧の印加が停止された状態で、原水が第1の電解水生成装置100Aに送り込まれる。これにより、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に滞留しているオゾンの気泡のほとんどは、原水の中へ流れ出た後、第1の電解水生成装置100Aから原水とともにほぼ完全に排出される。また、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に滞留している水素の気泡のほとんどは、原水の中へ流れ出た後、第1の電解水生成装置100Aから原水とともにほぼ完全に排出される。
【0084】
第1の電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧の印加が停止されてから所定時間が経過すると、ポンプPが停止される。それにより、原水は、第1の電解水生成装置100Aへ送り込まれなくなる。これにより、第1の電解水生成装置100Aから水酸化物イオン(OH)が完全に排出される。その結果、第1の電解水生成装置100Aの内部のアルカリ性が緩和される。したがって、第1の電解水生成装置100A内のスケールの発生が抑制される。
【0085】
その後、制御CDがポンプPを駆動する制御を実行し続けている状態で、制御部CCが流路変更機構Vを切替る制御を実行することにより、第1の電解水生成装置100Aに送り込まれていた原水が第2の電解水生成装置100Bへ送り込まれる。その後、第2の電解水生成装置100Bの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加される。
【0086】
これにより、第2の電解水生成装置100B内で電解水が生成される。本実施の形態の場合、陽イオン交換膜5と陽極1Aとの界面の近傍でオゾンの気泡が生成される。オゾンの気泡は原水に溶解する。その結果、オゾン水が生成される。
【0087】
オゾンの気泡は、第2の電解水生成装置100Bの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加される状態で、時間が経過するにつれて、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間の不可避の隙間に滞留する。なお、不可避の隙間は、図示できないほど小さい。このオゾンの気泡は、陽極1Aと陰極1Cとの間で絶縁物として機能してしまう。しかしながら、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間の不可避の隙間に滞留するオゾンは、隙間C1を流れる水の流れに起因したサイフォン作用によって、水の中へ吸引され、第2の電解水生成装置100Bから下流側の第2の枝流路20Bへ流れ出る。
【0088】
また、第2の電解水生成装置100Bの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加される状態で、時間が経過するにつれて、水素の気泡が、第2の電解水生成装置100Bの陰極1Cと陽イオン交換膜5との不可避の隙間に滞留する。なお、不可避の隙間は、図示できないほど小さい。この水素の気泡は、陽極1Aと陰極1Cとの間で絶縁物として機能してしまう。しかしながら、陰極1Cと陽イオン交換膜5との不可避の隙間に滞留する水素は、隙間C2を流れる水の流れに起因したサイフォン作用によって、水の中へ吸引され、第2の電解水生成装置100Bから下流側の第2の枝流路20Bへ流れ出る。
【0089】
また、上記の場合、第2の電解水生成装置100Bの積層構造1の穴部、すなわちスリット内において、水酸化物イオン濃度が増加する結果として、水酸化物塩(スケール)が滞留する。
【0090】
第2の電解水生成装置100Bに原水が送り込まれている場合には、第1の電解水生成装置100Aに原水が送り込まれない。そのため、第1の電解水生成装置100Aの陽イオン交換膜5に原水中に含まれる金属陽イオンの蓄積が抑制される。たとえば、第1の電解水生成装置100Aの陽イオン交換膜5の水素イオン(H)と原水中のカルシウムイオン(Ca2+)との交換が抑制される。
【0091】
第2の電解水生成装置100Bの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されてから所定時間が経過すると、第2の電解水生成装置100Bの陽極1Aと陰極1Cとの間の電圧の印加が停止される。これにより、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間でのオゾンの発生および陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間の水素の発生が停止する。その後、所定時間だけポンプPは駆動され続ける。その結果、第2の電解水生成装置100Bの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧の印加が停止された状態で、原水が第2の電解水生成装置100Bに送り込まれる。
【0092】
これにより、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に滞留しているオゾンの気泡のほとんどは、原水の中へ流れ出た後、第2の電解水生成装置100Bから原水とともにほぼ完全に排出される。また、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に滞留している水素の気泡のほとんどは、原水の中へ流れ出た後、第2の電解水生成装置100Bから原水とともにほぼ完全に排出される。
【0093】
第2の電解水生成装置100Bの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧の印加が停止されてから所定時間が経過すると、ポンプPが停止される。それにより、原水は、第2の電解水生成装置100Bへ送り込まれなくなる。これにより、第2の電解水生成装置100Bから水酸化物イオン(OH)が排出される。その結果、第2の電解水生成装置100Bの内部のアルカリ性が緩和される。また、第2の電解水生成装置100B内のスケールの発生が抑制される。
【0094】
その後、制御CDがポンプPを駆動する制御を実行し続けている状態で、制御部CCが流路変更機構Vを切替る制御を実行することにより、第2の電解水生成装置100Bに送り込まれていた原水が第1の電解水生成装置100Aへ再び送り込まれる。その後、第1の電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が再び印加される。
【0095】
上記のような本実施の形態の電解水生成システム1000は、通常の水を使用せず、殺菌用のオゾン水のみを使用する場所、たとえば、トイレの便器の洗浄水のために使用される。
【0096】
(実施の形態2)
本実施の形態の電解水生成システム1000は、実施の形態1の電解水生成システム1000とほぼ同様である。以下、本実施の形態の電解水生成システム1000と実施の形態1の電解水生成システム1000とが異なっている点を主に説明する。なお、本実施の形態の電解水生成装置100Aは、実施の形態1の第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bと同一であるものとする。
【0097】
しかしながら、本実施の形態の電解水生成装置100Aは、実施の形態1の第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bとは異なるものであってもよい。たとえば、電解水生成装置100Aは、白金製の金網からなる陽極の外側にイオン交換膜および金網製の陰極がそれぞれこの順番で圧接によって巻き付けられたものであってもよい。
【0098】
図10に示されるように、電解水生成システム1000は、幹流路15、上流側の第1の枝流路10A、下流側の第1の枝流路20A、電解水生成装置100A、上流側の第2の枝流路10B、および下流側の第2の枝流路20Bを備えている。電解水生成システム1000は、流路変更機構Vを備えている。流路変更機構Vは、開閉弁V1および開閉弁V2を備えている。本実施の形態においては、開閉弁V1は、上流側の第1の枝流路10Aに設けられている。開閉弁V2は、上流側の第2の枝流路10Bに設けられている。ただし、開閉弁V1および開閉弁V2の代わりに、実施の形態1の流路切替弁としての三方弁が幹流路15と上流側の第1の枝流路10Aおよび上流側の第2の枝流路10Bのそれぞれとの分岐部に設けられていてもよい。
【0099】
図10に示されるように、幹流路15は、原水を受け入れる。上流側の第1の枝流路10Aは、幹流路15から分岐している。電解水生成装置100Aは、陽極1A、陰極1C、および陽極1Aと陰極1Cとの間に設けられた陽イオン交換膜5を含んでいる。電解水生成装置100Aは、上流側の第1の枝流路10Aおよび下流側の第1の枝流路20Aに接続されている。
【0100】
電解水生成装置100Aは、上流側の第1の枝流路10Aを流れる原水から電解水を生成する生成状態および電解水を生成しない非生成状態のいずれかに切替えられる。上流側の第2の枝流路10Bは、幹流路15から分岐し、幹流路15を流れる原水を下流へ導く。開閉弁V1,V2は、制御部Cによって、第1の状態および第2の状態のいずれか一方に変化する。第1の状態は、開閉弁V1が開かれ、かつ、開閉弁V2が閉じられている状態であり、原水が幹流路15から上流側の第1の枝流路10Aへ導かれる状態である。第2の状態は、開閉弁V1が閉じられ、かつ、開閉弁V2が開かれている状態であり、原水が幹流路15から上流側の第2の枝流路10Bへ導かれる状態である。
【0101】
上記の構成によれば、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されていないときに、陽イオン交換膜5に原水が供給されないように、開閉弁V1,V2を前述の第2の状態に切替えることができる。つまり、制御部Cは、開閉弁V1を閉状態にし、開閉弁V2を開状態にする。それにより、電解水生成装置A内の陽イオン交換膜5が原水の中に含まれる不可避の陽イオンを取り込んでしまうことを抑制することができる。
【0102】
そのため、電解水生成装置100Aが電解水を生成しているときに、すなわち、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されたときに、陽イオン交換膜5に取り込まれた陽イオンが電解水へ放出されることが抑制される。その結果、陽イオン交換膜5から電解水への陽イオンの放出に起因したスケールの生成が抑制される。また、電解水生成装置100Aが電解水を生成していないときに、第2の枝流路20Bから電解水ではない水を取り出すことができる。したがって、電解水生成装置100Aが電解水を生成していないときに、スケールの生成を抑制しながら、電解水ではない水、たとえば、オゾン水ではない水を利用することができる。
【0103】
図10に示されるように、電解水生成システム1000は、浄化装置200を備えている。浄化装置200は、上流側の第2の枝流路10Bと下流側の第2の枝流路20Bとの間に接続され、第2の枝流路10B,20Bを流れる原水を浄化水として下流の幹流路15へ流出させる。そのため、電解水生成装置100Aが電解水を生成しないときに、原水ではなく、浄化水を利用することができる。なお、浄化装置200は設けられていなくてもよい。
【0104】
上記のような本実施の形態の電解水生成システム1000は、家庭の台所で使用する水道水のために用いることができる。この場合、キッチンシンクの内面をオゾン水で殺菌洗浄することができる一方、オゾンを含まない水道水を食器等の洗浄に利用することができる。
【0105】
(他の例の電解水生成システム)
図11に示されるように、実施の形態2の他の例の電解水生成システム1000は、浄化装置200を備えている。浄化装置200は、幹流路15に接続されている。浄化装置200は、幹流路15を流れる原水を浄化水として下流の幹流路15へ流出させる。なお、浄化装置200は設けられていなくてもよい。
【0106】
他の例の電解水生成システム1000においては、電解水生成装置100Aは、原水の代わりに浄化水から電解水を生成する。そのため、電解水生成装置100Aの内部に異物が入り込むおそれを低減することができる。また、電解水生成装置100Aが電解水を生成しないときに、原水ではなく、浄化水を利用することができる。
【0107】
図12および図13を用いて、オゾンの生成効率を比較する。図12および図13は、オゾンを生成している延べ時間が同一である条件の下で、1つの電解水生成装置において連続してオゾンを生成する場合と間欠的にオゾンを生成する場合とのオゾン水の生成能力の低下の態様を比較するためのグラフである。連続的にオゾン水を生成することは、電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間に連続して電圧を印加することを意味する。間欠的にオゾン水を生成することは、電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間に間欠的に印加することを意味する。
【0108】
図12は、電極(1A,1C)がOFFのときに、ポンプPがONの状態であってかつ開閉弁V1を開状態にした場合の電解水生成装置100Aにおける時間と電圧との関係を示している。また、図12は、電極(1A,1C)がOFFのときに、ポンプPがOFFの状態であるかまたはポンプPがONの状態であってかつ開閉弁V1を閉状態にした場合の電解水生成装置100Aにおける時間と電圧との関係も示している。図13は、電極(1A,1C)がOFFのときに、ポンプPがONの状態であってかつ開閉弁V1を開状態にした場合の電解水生成装置100Aにおける時間とオゾンの生成量との関係を示している。また、図13は、電極(1A,1C)がOFFのときに、ポンプPがOFFの状態であるかまたはポンプPがONの状態であってかつ開閉弁V1を閉状態にした場合の電解水生成装置100Aにおける時間とオゾンの生成量との関係も示している。
【0109】
図12および図13において、「電極(1A,1C)がOFFのとき」とは、電解水生成装置100Aの陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されていない状態を意味する。図12および図13において、「ポンプPがONの状態」とは、ポンプPが駆動されることにより、幹流路15に原水が流れている状態である。「開閉弁V1が開状態である」とは、開閉弁V1が開かれることにより、電解水生成装置100Aに原水が流れ込んでいる状態である。「開閉弁V1が閉状態である」とは、開閉弁V1が閉じられることにより、電解水生成装置100Aに原水が流れ込んでいない状態である。
【0110】
図12においては、電極(1A,1C)がOFFのときに開閉弁V1を開状態にした場合、電極(1A,1C)がOFFのときに開閉弁V1を閉状態にした場合に比較して、より短い時間で陽極1Aと陰極1Cとの間に印加される電圧が増加している。図12から、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されていないときに、電解水生成装置100Aへの原水の供給を停止すると、所望の濃度のオゾンを生成するために必要な陽極1Aと陰極1Cとの間に印加する電圧の増加を抑制できることが分かる。これは、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されていないときの陰極1Cの近傍でのスケールの発生が抑制されるためである。
【0111】
図13においては、電極(1A,1C)がOFFのときに開閉弁V1を開状態にした場合、電極がOFFのときに開閉弁V1を閉状態にした場合に比較して、より短い時間で電解水生成装置100Aの下流で得られるオゾンの濃度が低下している。言い換えると、図13から、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されていないときに、電解水生成装置100Aに原水の供給を停止すると、オゾンの濃度の低下を抑制することができることが分かる。これは、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されていないときの陰極1Cの近傍でのスケールの発生が抑制されるためである。
【0112】
図14に示されるように、他の例の電解水生成装置100Aの陽イオン交換膜5は、スルホン酸基(−SOH)を有している。図15に示されるように、陽イオン交換膜5は、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加されていないと、水の中の金属陽イオン(Ca2+,Na)を受け入れ、水素イオン(H)を水へ放出する。つまり、陽イオンが置換される。
【0113】
図15に示されるように、他の例の第1の電解水生成装置100Aにおいては、陽極1A、陽イオン交換膜5、および陰極1Cは、積層構造ではなく、互いに離れて配置されていてもよい。また、陽極1Aおよび陰極1Cは、平板状ではなく、メッシュ状をなしている。他の例の第1の電解水生成装置100Aにおいて、オゾンの発生はなく、水素と酸素とが水中に生成されてもよい。
【0114】
図16に示されるように、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加された直後においては、陽極1Aの近傍で水(HO)が水酸基(OH)と水素イオン(H)とに分解される。その結果、陽イオン交換膜5は、水素イオン(H)を取り込み、水中に金属陽イオン(Ca2+,Na)を放出する。また、陰極1Cの近傍で水素(H)が発生する。そのため、図16に示される状態では、水中の金属陽イオン(Ca2+,Na)の濃度が増加し、水のpHが上昇する。
【0115】
図17に示されるように、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧が印加された状態が継続されると、水中への金属陽イオン(Ca2+,Na)の放出は停止する。図17に示される状態では、水中の金属陽イオン(Ca2+,Na)の濃度が低下し、水のpHが低下する。
【0116】
図14図17に示される他の例の電解水生成装置100Aを用いる場合においても、実施の形態1の第1の電解水生成装置100Aおよび第2の電解水生成装置100Bと同様に、スケールの発生を抑制することができる。具体的には、前述の本実施の形態1と同様に、流れている水に含まれる陽イオン交換膜5の金属陽イオン(Ca2+,Na)の取り込みに起因したスケールの発生を抑制することができる。
【0117】
以下、実施の形態の電解水生成装置100A,100Bおよび電解水生成システム1000の特徴的構成およびそれにより得られる効果を説明する。
【0118】
(1) 電解水生成装置100A,100Bは、陽極1A、陽イオン交換膜5、および陰極1Cを備えている。陽極1Aと陽イオン交換膜5とは互いに接触するように配置されている一方で、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に水の流れが生じる隙間C1が存在する。これによれば、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に存在するオゾンが、陽極1Aと陽イオン交換膜5との隙間C1を通過する水の流れに起因したサイフォン作用によって、水の中へ自然に混入される。そのため、オゾンが陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に滞留することが抑制される。その結果、電解水の生成のために必要な陽極1Aと陰極1Cとの間に印加される電圧の増加を抑制することができる。
【0119】
(2) 隙間C1は、陽極1Aに対向する陽イオン交換膜5の表面に形成された溝または切欠きを含んでいてもよい。これによれば、隙間C1を容易に形成することができる。
【0120】
(3) 電解水生成装置100A,100Bは、陽極1Aと、陽イオン交換膜5と、陰極1Cとを備えている。陽イオン交換膜5と陰極1Cとは互いに接触するように配置されている一方で、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に水の流れが生じる隙間C2が存在する。これによれば、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に存在する水素が、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの隙間C2を通過する水の流れに起因したサイフォン作用によって、水の中へ自然に混入される。そのため、水素が陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に滞留することが抑制される。その結果、電解水生成のために必要な陽極1Aと陰極1Cとの間に印加される電圧の増加を抑制することができる。
【0121】
(4) 隙間C2は、陰極1Cに対向する陽イオン交換膜5の表面に形成された溝または切欠きを含んでいてもよい。これによれば、隙間C2を容易に形成することができる。
【0122】
(5) 電解水生成システム1000は、前述の(1)〜(4)のいずれかに記載の電解水生成装置100A,100Bと、電解水生成装置100A,100Bを制御する制御部CA,CB,CC,CDと、を備えている。制御部CA,CB,CC,CDは、陽極1Aと陰極1Cとの間に電圧を間欠的に印加する。これによれば、陽極1Aと陰極1Cとの間の電圧の印加が停止されている間に、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に滞留しているオゾンが電解水生成装置100A,100Bに供給された水の中に流れ出す。そのため、オゾンが陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に滞留することが抑制される。また、陽極1Aと陰極1Cとの間の電圧の印加が停止されている間に、陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に滞留している水素が電解水生成装置100A,100Bに供給された水の中に流れ出す。そのため、水素が陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に滞留することが抑制される。
【0123】
(6) 電解水生成システム1000は、電解水生成装置100A,100Bへ水を導く流路(15,10A,10B)を備えていてもよい。電解水生成システム1000は、流路(15,10A,10B)へ水を送り出すポンプPと、流路(15,10A,10B)から電解水生成装置100A,100Bへ水を間欠的に導くように切り替えられる流路変更機構Vを備えていてもよい。制御部CA,CB,CC,CDは、ポンプPおよび流路変更機構Vを制御する。それにより、電圧が印加されている期間にだけでなく、電圧の印加が停止されている期間の一部においても、流路(15,10A,10B)から電解水生成装置100A,100Bへ水が導かれる。これによれば、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間に滞留するオゾンおよび陽イオン交換膜5と陰極1Cとの間に滞留する水素のほとんどを電解水生成装置100A,100Bから下流の流路(20A,20B)へ流すことができる。
【0124】
(7) 電解水生成システム1000は、原水を受け入れる幹流路15と、幹流路15から分岐した第1の枝流路10A,20Aと、幹流路15から分岐した第2の枝流路10B,20Bと、を含んでいる。
【0125】
電解水生成システム1000は、電解水生成装置100Aを含んでいる。電解水生成装置100Aは、第1の陽極1A、第1の陰極1C、および第1の陽極1Aと第1の陰極1Cとの間に設けられた第1の陽イオン交換膜5を含んでいる。第1の電解水生成装置100Aは、第1の枝流路10A,20Aに接続され、第1の枝流路10A,20Aを流れる原水から第1の電解水を生成する第1の生成状態および第1の電解水を生成しない第1の非生成状態のいずれかに切替えられる。
【0126】
電解水生成システム1000は、第2の電解水生成装置100Bを含んでいる。電解水生成装置100Bは、第2の陽極1A、第2の陰極1C、および第2の陽極1Aと第2の陰極1Cとの間に設けられた第2の陽イオン交換膜5を含んでいる。第2の電解水生成装置100Bは、第2の枝流路10B,20Bに接続され、第2の枝流路10B,20Bを流れる原水から第2の電解水を生成する第2の生成状態および第2の電解水を生成しない第2の非生成状態のいずれかに切替えられる。
【0127】
流路変更機構V,V1,V2は、幹流路15から第1の枝流路10A,20Aへ原水を導く第1の状態および幹流路15から第2の枝流路10B,20Bへ原水を導く第2の状態のいずれかを選択的に形成し得る。
【0128】
上記した電解水生成装置100Aを連続して使用し続けると、陽極1Aと陽イオン交換膜5との間で多数のオゾンの気泡が滞留し、また、陰極1Cと陽イオン交換膜5との間で多数の水素の気泡が滞留する。オゾンの気泡および水素の気泡は、局所的な絶縁部を形成する。そのため、原水の電気分解の能力が低下する。つまり、陽極1Aと陰極1Cとの間に印加される電圧が増加したり、水のpHの増加に起因したスケールの陰極1Cへの付着が生じたりする。その結果、電解水の生成能力が低下する。そのため、1つの電解水生成装置100A,100Bを連続して利用する時間を短くするか、1つの電解水生成装置100A,100Bの連続した使用を断念せざるを得ない。しかしながら、上記の構成によれば、電解水を生成する電解水生成装置と電解水を生成しない電解水生成装置とを時間分割して切り替えることにより、1つの電解水生成装置を使用する時間を短くしながら、電解水を連続して生成することができる。その結果、電解水の生成能力を向上させることができる。
【0129】
(8) 第1の電解水生成装置100A、第2の電解水生成装置100B、および流路変更機構Vを制御する制御部CA,CB,CC,CDをさらに備えていてもよい。制御部CA,CB,CC,CDは、流路変更機構Vを第1の状態にする制御を実行している期間のうちの少なくとも一部の期間において、第2の電解水生成装置100Bを第2の生成状態にする制御を実行する。また、制御部CA,CB,CC,CDは、流路変更機構Vを第1の状態にする制御を実行しているときには、第2の電解水生成装置100Bを第2の非生成状態にする制御を実行する。制御部CA,CB,CC,CDは、流路変更機構Vを第2の状態にする制御を実行しているときには、第1の電解水生成装置100Aを第1の非生成状態にする制御を実行する。また、制御部CA,CB,CC,CDは、流路変更機構Vを第2の状態にする制御を実行している期間のうちの少なくともいずれか一部の期間において、第2の電解水生成装置100Bを第2の生成状態にする制御を実行する。
【0130】
上記の構成によれば、制御部CA,CBにより、自動的にスケールの生成を抑制することができる。
【符号の説明】
【0131】
1A 陽極(第1の陽極、第2の陽極、電極)
1C 陰極(第1の陰極、第2の陰極、電極)
1CTH 陰極孔
5 陽イオン交換膜
10A 上流側の第1の枝流路(流路)
10B 上流側の第2の枝流路(流路)
15 幹流路(流路)
20A 下流側の第1の枝流路(流路)
20B 下流側の第2の枝流路(流路)
100A 第1の電解水生成装置(電解水生成装置)
100B 第2の電解水生成装置
1000 電解水生成システム
C1,C2 隙間(溝または切欠き)
C,CA,CB,CC,CD 制御部
P ポンプ
V,V1,V2 流路変更機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17