(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁や床に貼設されたタイルでは、経年劣化等によって浮き、剥離、割れのような異常が生じることがある。特に外壁等のタイルでは浮き、剥離、割れによってタイル陶片が剥落すると大きな事故につながるおそれがあることから、これを未然に防止するための取り組みとして、タイルの劣化状況を診断(検査、調査)することが行なわれてきた。
【0003】
タイルの劣化診断方法としては、外観目視法、打音検査法、反発法、赤外線診断法等がある。このうち、打音検査法は、熟練した検査員がテストハンマーでタイル面を叩き、劣化部と健全部の微妙な音の違いを聞き分けることにより、外観では判別しにくいタイルの浮きや剥離の有無を比較的容易に判別できるため多用されている。
【0004】
一方、打音検査法と同様、劣化部と健全部の微妙な音の違いによって劣化部分を特定するものとして、擦過法を用いた劣化診断方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。擦過法は、例えば、直径20mm程度の金属球を検査対象のタイル面に押し付け、タイル面を金属球で擦るように移動させ、その時に発生する音(擦過音)からタイルの浮きや剥離等の劣化部分の有無を判別し、劣化部分の位置を特定するものである。
【0005】
また、この擦過法は、金属球を検査対象面のタイル面に押し付けた状態を維持しつつ移動することによる擦過音を捉える手法であるため、打音検査法と比較し、ロボット等で自動化を図りやすい。すなわち、ロボット等を操作し、マイクロフォンで録音された擦過音を検査員がコンピュータ等で分析することで診断を行うことができるため、検査員の経験や資質といった個人差の影響が少なく、高精度で診断を行うことが可能になる。
【0006】
この擦過法を用いたタイルの劣化診断装置として、本願出願人は、特許文献2に示すような装置を既に提案している。この装置は、擦過部材をタイル面に押し付けつつ移動させて発生する擦過音を擦過音記録手段で捉えてタイルの劣化の有無を診断する装置であって、擦過音記録手段で捉えた擦過音に基づいて、タイルの劣化を表す異常音を抽出する異常音抽出手段と、異常音抽出手段で抽出した異常音のうち、予め設定した所定の閾値以上の周波数成分の異常音を陶片浮きと判定し、所定の閾値未満の周波数成分の異常音を下地浮きと判定する浮きの種別判定手段を備えるものである。この装置によれば、擦過音に基づいてタイルの浮きの種別を容易に識別することができる。
【0007】
一方、本願出願人は、この擦過音(機械打音法)によるタイルの浮きの自動判定システムを搭載した外壁診断システムを既に開発している。この外壁診断システムは、
図6に示すように、建物本体2からケーブル3等で吊下げられた懸垂式の外壁移動装置1からなる。この外壁移動装置1は、昇降動作で外壁タイル面4を移動し、一回の動作で幅1.8m程度の範囲の診断が可能である。外壁移動装置1は、外壁タイル面4を平行往復でスライドしながら診断用ハンマーで擦過して、擦過音、映像、写真を操作用パソコンに転送し、診断状況を画面表示するとともに、記録を保存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、機械打音法の場合、打音ピッチに限界があるため、打音データは1枚のタイルに対して1〜2点しか得られない。特に、
図7(1)、(2)に示される50角や50二丁のような幅100mm以下の小型タイルの場合には、タイル1枚に対して打音1点で浮きを判定することになる。同じ箇所を何回も叩くことが可能な熟練技術者による診断方法と比較すると、信頼性が劣ると言わざるを得ない。このため、劣化診断の信頼性を向上させることのできる技術が求められていた。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、劣化診断の信頼性を向上させたタイルの劣化診断装置およびタイルの劣化診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイルの劣化診断装置は、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するタイルの劣化診断装置であって、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定手段と、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御手段とを備え、所定の範囲のタイルに対する1回目の打音検査において、タイルの浮きと判定されたタイルが有った場合には、制御手段は、その所定の範囲のタイルに対して2回目の打音検査を行うように制御し、浮き判定手段は、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他のタイルの劣化診断装置は、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するタイルの劣化診断装置であって、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定手段と、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御手段とを備え、制御手段は、所定の範囲のタイルに対して2回の打音検査を行うように制御し、浮き判定手段は、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る他のタイルの劣化診断装置は、上述した発明において、浮き判定手段は、1回目の打音検査において浮きと判定されたタイルが、2回目の打音検査においても浮きと判定された場合に、タイルの浮きとして本判定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るタイルの劣化診断方法は、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するタイルの劣化診断方法であって、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定ステップと、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御ステップとを備え、所定の範囲のタイルに対する1回目の打音検査において、タイルの浮きと判定されたタイルが有った場合には、制御ステップは、その所定の範囲のタイルに対して2回目の打音検査を行うように制御し、浮き判定ステップは、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る他のタイルの劣化診断方法は、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するタイルの劣化診断方法であって、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定ステップと、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御ステップとを備え、制御ステップは、所定の範囲のタイルに対して2回の打音検査を行うように制御し、浮き判定ステップは、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る他のタイルの劣化診断方法は、上述した発明において、浮き判定ステップは、1回目の打音検査において浮きと判定されたタイルが、2回目の打音検査においても浮きと判定された場合に、タイルの浮きとして本判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るタイルの劣化診断装置によれば、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するタイルの劣化診断装置であって、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定手段と、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御手段とを備え、所定の範囲のタイルに対する1回目の打音検査において、タイルの浮きと判定されたタイルが有った場合には、制御手段は、その所定の範囲のタイルに対して2回目の打音検査を行うように制御し、浮き判定手段は、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定するので、浮きが疑われるタイルに対して2回目の打音検査を行うことによって浮き判定の精度を高めることができる。これにより、劣化診断の信頼性を向上させることができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る他のタイルの劣化診断装置によれば、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するタイルの劣化診断装置であって、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定手段と、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御手段とを備え、制御手段は、所定の範囲のタイルに対して2回の打音検査を行うように制御し、浮き判定手段は、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定するので、2回の打音検査を行うことによって浮き判定の精度を高めることができる。これにより、劣化診断の信頼性を向上させることができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他のタイルの劣化診断装置によれば、浮き判定手段は、1回目の打音検査において浮きと判定されたタイルが、2回目の打音検査においても浮きと判定された場合に、タイルの浮きとして本判定するので、浮き判定の精度を高めることができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係るタイルの劣化診断方法によれば、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するタイルの劣化診断方法であって、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定ステップと、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御ステップとを備え、所定の範囲のタイルに対する1回目の打音検査において、タイルの浮きと判定されたタイルが有った場合には、制御ステップは、その所定の範囲のタイルに対して2回目の打音検査を行うように制御し、浮き判定ステップは、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定するので、浮きが疑われるタイルに対して2回目の打音検査を行うことによって浮き判定の精度を高めることができる。これにより、劣化診断の信頼性を向上させることができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係る他のタイルの劣化診断方法によれば、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するタイルの劣化診断方法であって、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定ステップと、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御ステップとを備え、制御ステップは、所定の範囲のタイルに対して2回の打音検査を行うように制御し、浮き判定ステップは、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定するので、2回の打音検査を行うことによって浮き判定の精度を高めることができる。これにより、劣化診断の信頼性を向上させることができるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明に係る他のタイルの劣化診断方法によれば、浮き判定ステップは、1回目の打音検査において浮きと判定されたタイルが、2回目の打音検査においても浮きと判定された場合に、タイルの浮きとして本判定するので、浮き判定の精度を高めることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るタイルの劣化診断装置およびタイルの劣化診断方法は、熟練診断者のやり方を真似た機械打音法によりタイルの浮きを判定するものである。以下に、本発明の実施の形態について、
図6に示すような外壁診断システムの外壁移動装置に適用する場合を例にとり、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
(タイルの劣化診断装置)
まず、本発明に係るタイルの劣化診断装置の実施の形態について説明する。
【0026】
図1に示すように、本発明に係るタイルの劣化診断装置100は、診断用ハンマー10(叩き手段)と、打音記録手段12と、浮き判定手段14と、制御手段16とを備えている。このタイルの劣化診断装置100は、建物の外壁面において縦横に複数並べて固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するものである。
【0027】
このタイルの劣化診断装置100は、
図6に示すような外壁診断システムの外壁移動装置1に搭載される。
図6に示すように、外壁診断システムは、建物本体2からケーブル3等で吊下げられた懸垂式の外壁移動装置1からなる。なお、上述したように、外壁移動装置1は、昇降動作で外壁タイル面4を移動し、一回の動作で所定範囲(例えば幅1.8m程度)の範囲の診断が可能である。外壁移動装置1は、外壁タイル面4を平行往復でスライドしながら上記の診断用ハンマー10で擦過して、擦過音(打音)、映像、写真を操作用パソコンに転送し、診断状況を画面表示するとともに、記録を保存する。
【0028】
診断用ハンマー10は、外壁タイル面4を擦過することによって各タイルの表面を叩くためのものである。診断用ハンマー10でタイルを叩くことによって打音を発生させて打音検査を行う。診断用ハンマー10は、タイル面に当接する金属球を備えた従来の擦過棒などにより構成することができる。診断用ハンマー10には、必要に応じてモーター等からなる移動進退機構などを設けることができる。
【0029】
打音記録手段12は、診断用ハンマー10に内蔵またはその近傍に設けられ、図示しないエンコーダによって検出される位置データに対応した位置で発生する打音を捉えて記録するものである。診断用ハンマー10がタイルの並びに沿って所定方向(例えば横方向)に移動することで、打音が発生し、エンコーダによる診断用ハンマー10の位置データとともにこの位置データに対応した位置で発生した打音データが打音記録手段12に記録される。なお、後述するように、記録された打音データをフィルター処理することでタイルの浮きなどの劣化の有無が判定されることとなる。
【0030】
浮き判定手段14は、打音記録手段12に記録された打音データに基づいて、タイルの劣化を表すタイルの浮きを判定するものであり、コンピューターなどを用いて構成される。なお、打音記録手段12に記録された打音データには、一般に、打音の他に、風音、モーターや振動等の機械音、自動車等の外部環境音も含まれている。そこで、この浮き判定手段14は、例えば風音、機械音、外部環境音などのノイズ音を減衰処理するとともに、タイルの打音を強調させる処理を行い、予め設定した所定の条件(例えば周波数特性の条件)を満たす音信号のものをタイルの浮きとして判定する。
【0031】
ここで、タイルの浮きには、陶片浮きと下地浮きがある。陶片浮きとは、モルタル等のタイルの下地からタイル陶片が浮いたり剥離した状態をいい、下地浮きとは、モルタル等のタイルの下地自体が外壁等から浮いたり剥離した状態をいう。本実施の形態では、陶片浮きと下地浮きのいずれかの音信号に該当した場合をタイルの浮きとして判定する。
【0032】
制御手段16は、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御するためのものである。この制御手段16は、所定の範囲のタイルに対する1回目の打音検査において、浮き判定手段14によりタイルの浮きと判定されたタイルが有った場合には、その所定の範囲のタイルに対して2回目の打音検査を行うように制御する。この場合、浮き判定手段14は、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定する。本判定の方法としては、後述する
図5(1)の2回法でもよいし、
図5(2)の1回法でもよい。信頼性の高い2回法を採用する場合には、1回目の打音検査において浮きと判定されたタイルが、2回目の打音検査においても浮きと判定された場合に、タイルの浮きとして本判定することとなる。このように、浮きが疑われるタイルに対して2回目の打音検査を行うことによって浮き判定の精度を高めることができる。これにより、劣化診断の信頼性を向上させることができる。なお、上記の判定結果は、ディスプレイなどの可視化手段に表示してもよい。このようにすればタイルの浮きを容易に把握することが可能となる。
【0033】
次に、上記構成の動作および作用について、50角のタイルが縦横に複数個ずつ並べられた外壁タイル面4の劣化診断を行う場合を例にとり説明する。
【0034】
タイルの劣化診断装置100を搭載した外壁移動装置1を
図6に示すようにケーブル3等で支持し、診断対象面の外壁タイル面4に沿うように配置する。そして、診断用ハンマー10を横方向に往復移動させつつ、その並びの各タイルの表面を叩いて打音検査を行うように制御するものとする。さらに、横方向の往復移動によって上下に隣り合う2段の打音検査が済んだら、診断用ハンマー10を上段または下段にスライド移動させた後、同様の手順で打音検査を行うように制御するものとする。また、発生する打音を打音記録手段12で捉え、捉えた打音に基づいて、各タイルの浮きを浮き判定手段14で判定するものとする。
【0035】
図2は従来のタイルの浮きの判定方法を、
図3は本実施の形態のタイルの浮きの判定方法を示している。図中の複数配列した□はタイルを示し、タイルの中に表示された●印(黒丸印)は浮きと判定されなかった場合を、◎印(二重丸印)は浮きと判定された場合を示している。
【0036】
図2に示すように、従来の打音手順では、タイル一段ごとに、診断用ハンマー10が横方向に平行往復で上段または下段にスライドしながら打音検査するため、タイル1枚に対して常に打音1点での診断になる。なお、
図2において往路は、上段のタイルを左から右に移動する方向、復路は、下段のタイルを右から左に移動する方向となる。
【0037】
これに対し、本実施の形態の打音手順では、
図3(1)に示すように、往路でタイルの浮きの判定がなかった場合には、上記の従来と同じ打音手順をとる。一方、
図3(2)に示すように、往路(1回目の打音検査)でいずれかのタイルに浮きの判定があった場合には、復路は浮きの判定があった同じ段を繰り返し打音検査する(2回目の打音検査)。
図3(2)の例では、上段を往復して打音検査する。
【0038】
そして、
図4に示すように、繰り返しの打音検査の結果、浮き判定手段14は、2回ともタイルの浮きと判定された場合をタイルの浮きとして本判定する。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、タイル1枚に対して打音1回の結果に対して、浮きと判定された段のみを打音2回とすることで、従来の診断方法の2倍の信頼性が得られる。また、タイルの浮きがないと判定された箇所は、従来どおりタイル1枚に対して打音1回で判定されることになるため、診断時間の増加を必要最小限に抑えることが可能である。
【0040】
なお、上記の実施の形態において、タイルの劣化診断装置100は、上記の構成に加えて、浮き判定手段14の処理結果などを可視化するディスプレイやプリンターなどの可視化手段を備えてもよい。この場合、可視化手段は、診断対象のタイルの並びと、タイルの浮きと判定された箇所をグラフィック処理、マッピング処理して可視化してもよい。例えば、浮き判定手段14による判定結果を、
図3のように可視化してもよい。可視化された情報を見ることで、ユーザーはタイルの浮きと判定された箇所の位置を容易に把握することができ、将来のタイルの補修計画の立案に役立てることが可能となる。
【0041】
また、上記の実施の形態においては、1回目の打音検査でタイルの浮きと判定されたタイルが有ったときに、制御手段16が2回目の打音検査を行うように制御する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、制御手段16は単に、所定の範囲のタイルに対して2回の打音検査を行うように制御してもよい。つまり同じ箇所を2回づつ打音検査してもよい。この場合、1回目の打音検査で浮きと判定されたタイルが無い場合でも2回目の打音検査を行うことになる。このため、その分だけ上記の実施の形態よりも打音検査数は増える。しかし、この方法でも、2回の打音検査を行えるので浮き判定の精度を高めることができ、劣化診断の信頼性を向上させることができる。
【0042】
この同じ箇所を2回づつ打音検査する方法としては、例えば以下の(1)〜(4)の方法がある。
【0043】
(1)上下から打音検査を行う方法
この方法は、横方向に往復移動する診断用ハンマー10を、建物の下階から上階に向けて移動させつつ打音検査を行った後、同じ箇所を上階から下階に向けて移動させつつ打音検査を行うものである。この方法によれば、全てのタイルで2回の打音検査が可能になる反面、打音検査に要する時間が2倍に増えることとなる。
【0044】
(2)吊り位置を半分ずらして打音検査を行う方法
この方法は、外壁移動装置1の吊り位置を横方向に半分だけずらして打音検査を行うことで、打音検査を行う範囲を横方向の半分だけ重複させる方法である。この方法によれば、全てのタイルで2回の打音検査が可能になる反面、打音検査に要する時間が2倍に増え、外壁移動装置1の盛替え回数も2倍に増えることとなる。
【0045】
(3)2玉式打音ハンマーを用いて打音検査を行う方法
この方法は、診断用ハンマー10である打音ハンマーを1玉から2玉に変更して打音検査を行う方法である。2本の打音ハンマーを横方向に並べてセットした場合には、横方向の一回の移動によって同じ並びのタイルを2回打音することになる。2本の打音ハンマーを縦方向に並べてセットした場合には、縦方向のタイルの並びに沿って打音ハンマーを縦方向に動かして1行2回打音で検査する方法(繰り返して打音検査する方法ではない)と、横方向のタイルの並びに沿って打音ハンマーを横方向に動かして上下2段のタイルの並びについて2行1回打音で検査する方法が選択可能である。いずれの方法でも、打音検査に要する時間は通常方法(上記の実施の形態)の場合と同じ1行1回打音となる。
【0046】
(4)1駆動2回路で打音検査を行う方法
この方法は、診断用ハンマー10である2つの打音ハンマーを、隣り合う上下のタイルの並びに沿う周回路に沿って移動させるものである。打音ハンマーは、例えば周回路の左右端の上段と下段とに設置するものとし、周回路の1回の駆動で、横方向を上下段で同時に打音検査する。この方法は、打音検査に要する時間は通常方法(上記の実施の形態)の場合と同じ1行1回打音となる。
【0047】
上記の同じ箇所を2回づつ打音検査する場合において、浮き判定手段14でタイルの浮きを判定する方法としては、2回法と1回法を選択可能である。2回法は、
図5(1)に示すように、1回目と2回目の打音検査の少なくとも一方でタイルの浮きと判定されたものを、タイルの浮きとして本判定する方法である。1回法は、
図5(2)に示すように、1回目と2回目の打音検査の両方でタイルの浮きと判定されたものを、タイルの浮きとして本判定する方法である。2回法の方が信頼性の高い判定方法である。信頼性を向上するためには、浮き判定手段14による判定方法として2回法を採用することが望ましい。
【0048】
(タイルの劣化診断方法)
次に、本発明に係るタイルの劣化診断方法の実施の形態について説明する。
【0049】
本実施の形態に係るタイルの劣化診断方法は、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断する方法である。
【0050】
この方法は、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定ステップと、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御ステップとを備えている。浮き判定ステップは上記の浮き判定手段14による処理に相当し、制御ステップは上記の制御手段16による処理に相当する。
【0051】
診断用ハンマー10による打音検査の結果、
図3(2)に示すように、往路(1回目)の打音検査において、浮きと判定されたタイルが有った場合には、制御ステップは、その並びのタイルに対して復路(2回目)の打音検査を行うように制御する。一方、浮き判定ステップは、往路と復路の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定する。例えば
図4に示すように、往路と復路の両方で浮きと判定とされたタイルを、タイルの浮きが有るものとして本判定する。
【0052】
このように、本実施の形態によれば、浮きが疑われるタイルに対して2回目の打音検査を行うことによって浮き判定の精度を高めることができる。これにより、劣化診断の信頼性を向上させることができる。
【0053】
以上説明したように、本発明に係るタイルの劣化診断装置によれば、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するタイルの劣化診断装置であって、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定手段と、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御手段とを備え、所定の範囲のタイルに対する1回目の打音検査において、タイルの浮きと判定されたタイルが有った場合には、制御手段は、その所定の範囲のタイルに対して2回目の打音検査を行うように制御し、浮き判定手段は、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定するので、浮きが疑われるタイルに対して2回目の打音検査を行うことによって浮き判定の精度を高めることができる。これにより、劣化診断の信頼性を向上させることができる。
【0054】
また、本発明に係る他のタイルの劣化診断装置によれば、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するタイルの劣化診断装置であって、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定手段と、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御手段とを備え、制御手段は、所定の範囲のタイルに対して2回の打音検査を行うように制御し、浮き判定手段は、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定するので、2回の打音検査を行うことによって浮き判定の精度を高めることができる。これにより、劣化診断の信頼性を向上させることができる。
【0055】
また、本発明に係る他のタイルの劣化診断装置によれば、浮き判定手段は、1回目の打音検査において浮きと判定されたタイルが、2回目の打音検査においても浮きと判定された場合に、タイルの浮きとして本判定するので、浮き判定の精度を高めることができる。
【0056】
また、本発明に係るタイルの劣化診断方法によれば、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するタイルの劣化診断方法であって、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定ステップと、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御ステップとを備え、所定の範囲のタイルに対する1回目の打音検査において、タイルの浮きと判定されたタイルが有った場合には、制御ステップは、その所定の範囲のタイルに対して2回目の打音検査を行うように制御し、浮き判定ステップは、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定するので、浮きが疑われるタイルに対して2回目の打音検査を行うことによって浮き判定の精度を高めることができる。これにより、劣化診断の信頼性を向上させることができる。
【0057】
また、本発明に係る他のタイルの劣化診断方法によれば、縦横に複数並べられ、躯体表面に固定されたタイルの劣化の有無を、タイルの表面を叩いて発生する打音による打音検査を通じて診断するタイルの劣化診断方法であって、打音に基づいてタイルの劣化を表すタイルの浮きを判定する浮き判定ステップと、複数並べられたタイルのうち所定の範囲のタイルに対する打音検査を制御する制御ステップとを備え、制御ステップは、所定の範囲のタイルに対して2回の打音検査を行うように制御し、浮き判定ステップは、1回目と2回目の打音検査で発生した打音に基づいて、タイルの浮きを本判定するので、2回の打音検査を行うことによって浮き判定の精度を高めることができる。これにより、劣化診断の信頼性を向上させることができる。
【0058】
また、本発明に係る他のタイルの劣化診断方法によれば、浮き判定ステップは、1回目の打音検査において浮きと判定されたタイルが、2回目の打音検査においても浮きと判定された場合に、タイルの浮きとして本判定するので、浮き判定の精度を高めることができる。