【実施例】
【0031】
本発明は、ここで以下の実施例によって具体的に記載され、これらは本発明の実行可能性を例示することを意図するのみであり、限定すると理解されることを意味しない。
【0032】
実施例1:
ジフェニルヨードニウム-テトラキス(パーフルオロ-t-ブチルオキシ)アルミネート(II)(DPITTA)の調製
【0033】
【化8】
【0034】
全体の反応を、橙色点灯条件を用いてアルゴン雰囲気中および実験室で行った。Li[Al(OC(CF
3)
3)
4](1.5622 g, 1.602 mmol;調製した)を、均一な溶液を与えることなく、35 mlのCH
2Cl
2中にあらかじめ充填した。ヨードニウムクロリド(0.55796 g, 1.762 mmol)を25 mlのCH
2Cl
2(DCM)中に懸濁し、そして弱いアルゴン気流下、反応フラスコに移した。既に混濁した溶液は白色および不透明に変化した。5 h後、追加の20 mlのCH
2Cl
2を加えて反応混合物を希釈し、そして反応物を一晩攪拌した。続いて、反応混合物を分液漏斗に移し、そしてそれぞれ40 mlの水で3回抽出した。有機層をシリカゲルを通してろ過し、そして溶媒をエバポレートし、次いで高真空中で数時間乾燥させた。生成物(1634.8 mg; 82% theor.)を白色固体として得た。
1H-NMR (200 MHz, CD
2Cl
2)δ (ppm): 7.58-7.70 (m, 2H), 7.79-7.89(m, 1H), 7.94-8.03 (m, 2H).
13C-NMR (200 MHz, CD
2Cl
2)δ (ppm): 111.8 (C-I), 121.7(q, C(CF
3), J=291.5 Hz), 134.4 (m), 135.1 (p),135.5 (o).
27Al-NMR (400 MHz, CD
2Cl
2)δ (ppm): 34.7.
TLC: R
f(CH
2Cl
2) = 0.41
ATR-IR:1470, 1449, 1351, 1296, 1273, 1239, 1205, 1165, 966, 831, 735, 724, 673, 548,571, 560, 536 cm
-1.
Mp.:171-174℃(CH
2Cl
2)
【0035】
実施例2:
トリフェニル-スルホニウム-テトラキス(パーフルオロ-t-ブチルオキシ)アルミネート、ジフェニル-(4-フェニルチオ)フェニルスルホニウム-テトラキス(パーフルオロ-t-ブチルオキシ)アルミネートおよびジフェニル-4-[(4-ジフェニルスルホニオ)フェニルチオ]フェニルスルホニウム-テトラキス(パーフルオロ-t-ブチルオキシ)アルミネート(III)(TASTTA)の調製
【0036】
【化9】
【0037】
全体の反応を、橙色点灯条件を用いてアルゴン雰囲気中および実験室で行った。Li[Al(OC(CF
3)
3)
4](1.588 g, 1.626 mmol)をフラスコ中にあらかじめ充填し、そして完全な均一溶液を与えることなく、120 mlのCH
2Cl
2で処理した。トリフェニルスルホニウムクロリドの45 %水溶液(これは、製造業者(Sigma Aldrich)の仕様書によれば、上に示す置換基Rを1:6:10のモル比で有する3つの化合物を含有した)を、シリンジを用いてセプタムを介してフラスコに加えた。自発的に、水層は白色に変化し、そして短時間で固化した。5 h後、15 mlの水を加え、この時点で固体は溶解した。反応物を一晩攪拌した。その後、反応混合物を分液漏斗に移し、そしてそれぞれ40 mlの水で3回抽出した。有機層をシリカゲルを通してろ過し、そして溶媒をエバポレートし、次いで高真空中で数時間乾燥させた。生成物(1490.6 mg; 75 % theor.)を白色固体として得た。
1H-NMR (200 MHz, CD
2Cl
2)δ (ppm): 7.93-7.82 (m, xH),7.80-7.70 (m, 2H), 7.69-7.30 (m, 5H).
広範囲に及ぶ重複のため、正確な分類は可能ではなかった。同じ理由で、相対的な積分のみを与え得る。
27Al-NMR (400 MHz, CD
2Cl
2)δ (ppm): 34.7.
TLC: R
f(CH
2Cl
2) = 0.76および0.42
ATR-IR:1574, 1478, 1450, 1351, 1296, 1274, 1239, 1208, 1167, 1065, 968, 829, 817, 744,725, 682, 559, 536 cm
-1.
Mp.:164-167℃(CH
2Cl
2)
【0038】
実施例3〜6、比較例1〜6
光開始剤としての新規化合物の反応性試験
式(II)、DPITTAおよび式(III)、TASTTAの新規化合物を、カチオン光開始剤としてのそれらの反応性に関して、2つの異なるカチオン重合性モノマー、CEおよびBADGEを用いて光-DSCによって試験し、そして一般的に用いられる開始剤、具体的には(4-オクチルオキシフェニル)-(フェニル)-ヨードニウム-ヘキサフルオロアンチモネート(IOC-8 SBF6)、(4-イソプロピルフェニル)(4'-メチルフェニル)--ヨードニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DAI-PFPB)およびCYRACURE(登録商標)UVI6976(次頁に描いた表現を参照のこと)の反応性と比較した。全体の手順を光保護(橙色光)を用いて行った。
モノマー:
【0039】
【化10】
【0040】
開始剤:
【0041】
【化11】
【0042】
全ての処方物について、エポキシ基に基づいて1 Mol%の開始剤を量り取り、そして完全に溶解するまで磁気攪拌した。その後、10 mgの各反応混合物をアルミニウムDSC皿に量り取った。
【0043】
DSC測定は、窒素雰囲気下、50℃でNETSCH DSC 204 F1 Phoenixで行った;照射は、320-500 nmの波長フィルターを備えたOmnicure 2000水銀灯を用いて行った。UV光強度は、3 W/cm
2に設定した;照射は5分間続けた。全ての測定は3回行い、そして各それぞれのモノマーについての平均値を以下の表に列挙する。
【0044】
表中、t
maxは、最大熱発生に達するまでの時間(秒で)を指定し、従って、ゲル化点およびそれゆえ高い初期強度にいかに速く達するかの尺度として役立つ。ここで、短い時間が望ましい。T
95%は、合計の反応熱の95 %が放出された後の時間(秒で)を指定し、従って、反応速度の尺度を構成する(再度、低い値が望ましい)。最後に、面積は、曲線下面積を指定し、そして重合の間に放出された各処方物1グラム当たりの反応熱(Jで)の尺度である。従って、それは反応変換の尺度を構成し、これは、この場合より高い値を得ることが好ましい理由である。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
よりよい概説のために、3つの反応パラメーターのそれぞれについて上記表1および2に列挙した結果の個々のグラフ表示もまた、
図1〜6に挙げる。すなわち、t
maxの結果を
図1および2に描写し、t
95%の結果を
図3および4に描写し、そして面積の結果を
図5および6に描写する。
【0048】
グラフ表示においてモノマーCEを用いたt
maxの結果を示す
図1から、式(III)の開始剤であるTASTTAが大差で最大熱発生に達するまで最も短い時間を要し、続いて式(II)のDPITTAであることが明確に分かり得る。この観点から、本発明による実施例3および4は、全ての3つの先行技術の開始剤(17秒、37秒、73秒)と比較して、それぞれ16秒および11秒の期間を有するより良好な結果(しばしば大差である)を与える。
【0049】
BADGEモノマーについて同様のパターンが
図2で分かり得る:再度、実施例6のTASTTA開始剤は、この場合、t
maxに達するまで最も短い時間を要し、しかしながら、比較例6のCYRACURE(登録商標)UVI 6976と同等であり(両方とも25秒)、そして実施例5(33秒)のDPITTAの一歩手前である。公知の開始剤、IOC8(38秒)および特にPFPB(84秒)の両方とも、顕著により高い値を示した。
【0050】
両方のモノマーについてのt
95%の結果は、
図3および4において分かり得る。
図3のCEについて、本発明による実施例4のTASTTAは、再度、最も良好なスコア(348秒)を達成し、比較例1(350秒)のIOC8が近接して続き、そして大差で、実施例3(504秒)のDPITTA、比較例3(509秒)のUVI 6976が続き、そして再度、比較例4のPFPBが最後にランキングされる(540秒)。
【0051】
しかしながら、驚くべきことに、
図4における状況は、完全に異なるものである。モノマーとしてBADGEを用いた実施例5のDPITTAは、大差で1番であり(46秒)、続いて実施例6(171秒)のTASTTAである。再度、最も良好な公知の開始剤は、比較例4のIOC8であったが、242秒であり、合計の反応熱の95 %が放出されるまでの時間は5分以上長かった。それらに続いて355秒のPFPB(比較例5)であり、そして大差で後を追うのは比較例6のUVI 6976 (632秒)である。
【0052】
放出された反応熱を示し、そしてそれ自体変換の尺度として役立つ面積、すなわち曲線下面積の結果は、t
95%についての結果と同様である。
図5において分かり得るように、モノマーとしてCEについて、実施例4のTASTTAが依然として先んじており、2つの公知の開始剤IOC8およびUVI 6976ならびにDPITTAが続き、そして再度PFPBが後を追う。しかしながら対照的に
図6において、BADGEを用いた場合、実施例5のDPITTAが大差で先頭に立ち、IOC8、TASTTAおよびPFPBが続き、そして最後にUVI 6976 が大差で後を追う。
【0053】
従って、
図1〜6は、3つの測定したパラメーターのいずれについても、本発明の実施態様がしばしば大差で先頭に立つことを明確に示す。
【0054】
最終的に、
図7および8において、本発明の実施態様の両方とも、それらのDSC曲線(ここで、熱の発生(mW/mgで)は、重合反応速度対時間(秒で)についての尺度として適用される)を用いて、それぞれ類似構造を有する公知の開始剤、すなわちヨードニウム塩(
図7)およびスルホニウム塩(
図8)と個々に比較される。
【0055】
DPITTAが公知のヨードニウムイオン-ベースの開始剤IOC8およびPFPBの両方と共に適用される
図7において、ならびにスルホニウム開始剤TASTTAおよびUVI 6976についての
図8において、類似のパターンが観察され得る:本発明に従って実施される重合は、かなり速く始まり、そしてまた先行技術の開始剤を用いた場合よりもかなり短い時間の後で実質的に完了する。
【0056】
実施例7および8、比較例7〜10
この例のグループ内で、式(II)の新規で開発した光開始剤DPITTAを、再度、2つの他の公知の2官能性モノマーBOBおよびBVCの硬化プロセスの間の光-DSC測定によって、2つの他の公知の開始剤DPI-PFPBおよびDPI-SbF
6と比較した。これらの全てを以下に描く。
モノマー:
【0057】
【化12】
【0058】
開始剤:
【0059】
【化13】
【0060】
各処方物について、重合性基に基づいて1 Mol%の開始剤を量り取り、そして完全に溶解するまで室温で磁気攪拌した。その後、14 mgの各反応混合物をオープンアルミニウム皿に量り取り、そして皿をカバースリップで覆った。
【0061】
DSC測定は、窒素雰囲気下、50℃でNETSCH DSC 204 F1 Phoenixで行い、照射は、320-500 nmの波長フィルターを備えたOmnicure 2000水銀灯によって適用した。UV光強度は、1 W/cm
2に設定し、照射時間は9分であった。全ての測定は3回行い、そして各それぞれのモノマーについての平均値を以下の表3および4に列挙する。
【0062】
実施例3〜6と一致して、t
maxは、最大熱発生に達するまでの時間(秒で)を指定し、従って、ゲル化点およびそれゆえ高い初期強度にいかに速く達するかの尺度として役立ち、ここで、短い時間が望ましく、そしてt
95%は、合計の反応熱の95 %が放出された後の時間(秒で)を指定し、従って、また反応速度の尺度を構成し、ここで、再度、低い値が有利である。さらに、以下の例のグループ内で、光-DSC曲線下面積は、理論上の重合モノマー熱について公知の値に基づいて重合変換C(%で)に変換された。最後に、R
pは、また光-DSC結果から直接外挿された重合速度を指定する。
【0063】
【表3】
【0064】
ジオキセタン樹脂BOBにおいて、新規の開始剤DPITTAは、他の開始剤の両方と比較して、全てのパラメーターにわたって明確に優れた重合性能を示す。72 %を超える変換は、DPI-SbF
6(約68 %)およびDPI-PFPB(約65%)の値よりもそれぞれ6 %および12 %高かった値を達成した。最大ピークもまた、DPITTAを用いて最短時間内で達し、そしてこの開始剤についてのt
95%値は、比較開始剤よりもかなり低い。しかし、DPITTAの利点は、DPI-PFPBおよびDPI-SbF
6についてほぼ2倍高かった重合速度で最も顕著に認識され得る。
【0065】
【表4】
【0066】
ビニルエーテルモノマーBVCを用いて得られた表4中に与えた値は、3つの試験した開始剤の全てにわたって同様または(ほとんど)同一でさえあった。しかしながら、これは、ビニルエーテルのカチオン重合が通常非常に迅速に起こるという事実に起因し得る;これは、ここではいかなる差異もほとんど観察され得ない理由である。
【0067】
図9および10において、本発明の実施例7および8の両方の実施態様は、DSC曲線(ここで、熱の発生(mW/mgで)は、重合反応速度対時間(秒で)についての尺度として適用される)によって、それぞれBOB(
図9)およびBVC(
図10)における構造的に類似の公知のジフェニルヨードニウム開始剤とそれぞれ比較される。
【0068】
DPITTAが公知のヨードニウムイオン-ベースの開始剤DPI-PFPBおよびDPI-SbF
6の両方と共にBOBに共適用される
図9において、ならびにモノマーBVCにおける開始剤についての
図10において、類似のパターンが観察され得る:本発明に従って実施される重合は、かなり速く始まり、そしてまた先行技術の開始剤を用いた場合よりもかなり短い時間の後で実質的に完了する。
【0069】
実施例9:
トリス(4-((4-アセチルフェニル)チオ)フェニル)スルホニウム-テトラキス(パーフルオロ-t-ブチルオキシ)アルミネート(IV)(TAPS-TTA)の調製
【0070】
【化14】
【0071】
上記反応を、橙色点灯条件を用いてアルゴン雰囲気中および実験室で行った。磁気攪拌機を備えたクリンプネックバイアル中、リチウムテトラキス(パーフルオロ-t-ブチルオキシ)アルミネート(77.16 mg, 0.0792 mmol)をあらかじめ充填し、セプタムおよびアルミニウムキャップで密封し、そして攪拌しながら9 mlのジクロロメタンに溶解した。別の容器において、トリス(4-((4-アセチルフェニル)チオ)フェニル)-スルホニウムクロリド(59.63 mg, 0.0796 mmol)を2 mlのジクロロメタンに溶解し、シリンジを用いて反応溶液に滴下し、そして1 mlのCH
2Cl
2で洗浄した。そうすることで、白色沈殿の形成が観察され得た。反応物を一晩攪拌し、次いでTLC(溶媒:CH
2Cl
2)を用いて制御した。反応混合物を後処理のために分液漏斗に移し、そして3 x 5 mlの水で抽出した。有機層の溶媒をローターリーエバポレーターで留去し、そして残渣を冷蔵庫中、4℃で一晩保存し、結晶化させた。続いて、物質を高真空中で4時間乾燥させた。生成物(106 mg, theor. 80 %)を白色固体として得た。
1H-NMR (200 MHz, CDCl
3)δ (ppm): 8.00 (d, 6H, J=8.60 Hz,Ar), 7.59 (d, 6H, J=8.60 Hz, Ar), 7.34 (d, 6H, J=8.56 Hz, Ar), 7.26 (d, 6H,J=9.00 Hz, Ar), 2.62 (s, 9H, C
H3).
TLC (CH
2Cl
2)R
f = 0.15
【0072】
実施例10および11、比較11〜14
ジフェニルヨードニウム光開始剤に類似して、置換トリアリールスルホニウム光開始剤(IV)TAPS-TTAもまた、光-DSCを用いて、公知の先行技術の開始剤、特に工業用途のための高性能光開始剤としてそれぞれ商品名IrgacureGSID-26-1およびIrgacure 290で市販されているTAPS-TFSMおよびTAPS-PFPBと比較した。全ての3つの開始剤は、同じ光吸収特性を有する同じカチオン発色団(「TAPS」)を含み、これは、重合性能に対するアニオンの効果および開始効率をここで直接比較し得る理由である。実施例3〜6と一致して、CEおよびBADGEをモノマーとして用いた。
モノマー:
【0073】
【化15】
【0074】
開始剤:
【0075】
【化16】
【0076】
試験パラメーターは、照射強度を3 W/cm
2に設定したこと以外は、上記実施例7および8で用いたものに対応する。再度、結果を3回行った決定の平均値として以下の表5および6に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
C、t
maxおよびR
pについての結果は、それぞれ同等または(ほとんど)同一であったが、本発明による開始剤TAPS-TTAは、t
95%でその優れた性質を示す:ここで、95%の変換に達するまでの時間はかなり短い;従って、この新規な開始剤は工業用高性能開始剤よりもさらに良好に機能を果たす。
【0079】
【表6】
【0080】
別の比較できる値では、本発明による新規な開始剤は最も高い変換を達成し、従ってこのモノマーを用いた場合でさえ両方の工業用開始剤よりも良好に機能を果たす。
【0081】
図11および12において、全ての3つの開始剤の光-DSC曲線は、それぞれCE(
図11)およびBADGE(
図12)における熱発生に基づいて比較される。両方の場合において、本発明のこの実施態様についての最も強力な熱発生が観察され得た(BADGEにおいてTAPS-PFPBと同等)。
【0082】
実施例12〜17、比較例15〜20
ジフェニルヨードニウム光開始剤は250 nmより下の波長範囲内で最もよく吸収する傾向があるので、増感剤がしばしば添加され、400-500 nmで放射する光源を用いた光開始を可能とする。従って、光-DSC実験設計のために光源として用いたOmnicure S2000ヘリウム中圧ランプに400-500 nmの波長で透過可能なフィルターを備え付けた。2つの光開始剤DPITTAおよびDPI-SbF
6を用いて、BADGEモノマー中に種々の濃度の2つの増感剤、イソプロピルチオキサントン(ITX)およびペリレンを含む感光性処方物を製造した。光-DSC測定を、3 W/cm
3の強度を用いて実施例10および11と同様にして行い、そして結果を以下の表7〜12に示す。
【0083】
最初に、両方の開始剤の処方物を、いかなる増感剤も添加することなく、新しいランプを用いて照射した。結果は表7において見られ得る。
【0084】
【表7】
【0085】
DPI-SbF
6については重合反応が検出され得なかったが、DPITTAは、増感剤を用いなくとも、約45 %の変換を達成した。
【0086】
その後、それぞれ0.05 %および0.10 %のITXを増感剤として添加した。
【0087】
【表8】
【0088】
【表9】
【0089】
本発明に従って分かり得るように、一方ではかなり(実施例13)および中程度に(実施例14)高い重合速度がそれぞれ比較可能なタイミングを用いて達成され得、そして主として、他方では有意により高い変換が達成され得る。
【0090】
次に、
図13および14において、反応熱の発生を比較し、前者の場合は、驚くべきことに、公知の開始剤がより低いITX濃度でより良好に機能を果たすことを示し、しかしながら、増感剤の量を2倍にした場合、DPITTAによる開始はかなり速くかつより強力な速度で起こる。
【0091】
続いて、両方の開始剤を、増感剤として3つの種々の量、特に0.01 %、0.05 %および0.10 %のペリレンと組み合わせ、なぜなら、ペリレンの吸収スペクトルは、Omnicureランプの発光スペクトルとよく対応し、より低い増感剤濃度を可能とするからである。結果を以下の表10〜12および
図15〜17に示す。
【0092】
【表10】
【0093】
【表11】
【0094】
【表12】
【0095】
概して、表10〜12および
図15〜17は、全ての試験パラメーターにわたってDPITTAが公知の開始剤DPI-SbF
6と比較して優れていることを明確に示す。
【0096】
従って、DPITTAもまた、増感剤の存在下、市販の比較の開始剤よりもより良好な結果を達成する。
【0097】
実施例18−適用例「ケミカルアンカー」
ケミカルアンカーは、ねじ、ボルト、ねじ棒などを穴に固定することを可能とする処方物である。2つの選択肢の間での選択がある:短いポットライフを有する速い反応時間または非常に速い硬化を有する不利な非常に長いトップライフに関連した長いポットライフ。従って、ケミカルアンカーの主要部としてのラジカル誘起カチオンフロンタル重合(RICFP)によって硬化され得る処方物の使用は有利であり、長いポットライフに非常に速い硬化を組み合わせる。反応は、(UV)光の照射によって、または熱の局所的付与(例えば、はんだごてまたはホットエアガンを用いて)によって開始され得る。
【0098】
処方物
典型的な処方物は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどのエポキシド樹脂、本発明の開始剤DPITTAなどのカチオン光開始剤、およびベンゾピナコールなどのラジカル熱開始剤からなる。処方物を製造するために、開始剤をできる限り少量のジクロロメタンに溶解し、次いで樹脂と混合する。次いで、ジクロロメタンを真空中、50℃で攪拌下、完全に除去する。
【0099】
【表13】
【0100】
穴の調製
パーカッションドリルを用いて、花崗岩、コンクリートおよび煉瓦に直径14 mmの穴を開けた。次いで、穴を圧縮空気で掃除し、いかなる付着したごみも除去した。岩とエポキシド処方物との間の接着が不十分であり得るので、プライマーを用いて改善し得る。プライマーは、処方物と混合され得るか、あるいは穴に予備的に付与され得る。本願の場合、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランをプライマーとして用いた。
【0101】
方法A:穴を直接予備処理する
予備処理として、50 mlのエタノール(96%)、0.23 mlの3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび1.5 mlの希酢酸(氷酢酸:水1:10)を含有する処方物を調製した。穴をこの溶液で完全に満たし、室温で約1時間作用させた。次いで、岩(コンクリート、花崗岩および煉瓦)をオーブン中、60℃で一晩保持した。翌日、溶液は完全に乾燥した。次いで、このような予備処理を行った穴を「下塗りした」と呼ぶ。
【0102】
方法B:プライマーを反応処方物に加える
開始剤と共に、追加の5重量%の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを上記樹脂処方物に加えた。樹脂の添加後、溶媒を除去し、そして処方物を脱気した。
【0103】
ねじ棒
ねじ棒(直径12mm)を11 cmの長さに切断し、そしてそれらの端部をバリ取りし、岩の中に差し込んだ。穴の大きさ(14 mm)およびねじ棒の直径は、1 mmの環状の間隙を生じる。
【0104】
重合
穴の体積の約半分を反応処方物で満たし、次いでねじ棒を中心に配置した。次いで、流体で満たされかつ8 mmの直径を有する光導波路を介して320〜500 nmのフィルターを備えたUV可視光源を用いて処方物の可視表面を照射することによって反応を開始した。光導波路の出口での照射強度は、3 W/cm
2に設定した。
【0105】
引張強度試験
次いで、得られたサンプルを引張試験機(Zwick Z250)を用いて試験し、ねじ棒と岩との間のポリマーの接着を試験した。このねじ棒に、2つのナットを用いて第2のねじ棒を固定し、次いで第2のねじ棒を引張試験機にクランプした。カウンターベアリングを用いて岩を下方に固定した。
【0106】
試験を10 mm/minの速度で行った。表14は、典型的な最大に必要な力を示す。プライマーを処方物に加えた場合に達成される結果と穴を予備処理することによって達成される結果とに有意な差異がないことに留意すべきである。さらに、煉瓦は、棒を引き抜く試みの間に、常に部分的に破壊された。
【0107】
【表14】
【0108】
要約すれば、上記に示すように、本発明による実施例は、先行技術に対する本発明の優位性を際立って確認し、これは本発明者らの研究の前には予想されなかった。