【実施例1】
【0027】
本発明の第1の実施の形態に係るハーネスについて、
図1乃至
図3を用いて詳細に説明する。
図1は、実施例1に係るハーネスの前面図である。
図1に示すように、実施例1に係るハーネス1は、一対の背面ベルト2,2と、一対の前面ベルト3,3と、連結ベルト4と、一対の環状ベルト5,5を備える。このうち、一対の背面ベルト2,2は、一端2a,2aが要救助者50(
図6参照)の胸部51の左右前面にそれぞれ配置されるとともに他端2b,2bが両肩部52,52及び背部53に架け渡されて両大腿部54,54の高さにそれぞれ到達する。
また、一対の前面ベルト3,3は、上端3a,3aが背面ベルト2,2の一端2a,2aに接続具6,6を介してそれぞれ接続されるとともに下端3b,3bが両大腿部54,54の高さにそれぞれ到達する。
【0028】
次に、連結ベルト4は、前面ベルト3,3の上端3a,3a同士を第1のジョイント7を介して分離可能に連結する。なお、連結ベルト4の左右端4a,4aは、それぞれ折り曲げられてループ部が形成されている。左右端4a,4aの各切断端は、プラスチック製のアジャスターバックル13によって、連結ベルト4と重なってそれぞれ挟持される。このアジャスターバックル13は、略長方形の枠体13aと、この枠体13aの短辺を二分割する直線状の連結枠13bからなる。
そして、環状ベルト5,5は、両大腿部54,54にそれぞれ巻回され、他端2b,2bと下端3b,3bが互いに異なる位置で接続されている。
【0029】
背面ベルト2,2、前面ベルト3,3、連結ベルト4及び環状ベルト5,5は、いずれも合成繊維製であって、法上で規定された安全帯の規格を満たすものである。
また、接続具6は、金属製のバックルであって、アジャスターバックル13と同様の構成をなす。
さらに、第1のジョイント7は、プラスチック製のワンタッチジョイントであって、ジョイント本体7aと、ジョイント本体7aの一方の端面に開口する差込口に差し込んでロックされる差込プレート7bと、差込プレート7bのロックを解除する解除レバー7cからなる。
【0030】
加えて、ハーネス1は、一対の背面ベルト2,2の途中にそれぞれ取り付けられる一対の肩吊具9,9と、一対の環状ベルト5,5の途中にそれぞれ取り付けられる一対の脚吊具10,10と、一対の肩吊具9,9と一対の他端2b,2bの間において間隔を空けて取り付けられ、一対の背面ベルト2,2を重ねて1本の重複ベルト2Aとして保持する一対の保持手段11,11を備える。
【0031】
より詳細には、背面ベルト2は、一端2aがループ状に形成されて、一端2aの切断端は背面ベルト2に縫着されている。そして、一端2aは、そのループの内部に接続具6の一の長辺を通した状態で、接続具6と接続されている。また、他端2bもループ状に形成されて、その切断端は背面ベルト2に縫着されている。さらに他端2bは、そのループの内部に、アジャスターバックル14,14によって挟まれた部分の環状ベルト5を挿通した状態(
図3(b)参照)で、環状ベルト5に対してスライド不能にこの環状ベルト5と接続されている。
【0032】
また、前面ベルト3は、1本のベルト素材が二つ折りにされてなり、上方の折れ曲がり部分が上端3aである。この上端3aは、その内部に接続具6の他の長辺を挿通することで、接続具6と接続されている。なお、連結ベルト4の左右端4a,4aは、そのループ部内に前面ベルト3,3を挿通することで、この前面ベルト3,3と接続されている。このとき、左右端4a,4aは、それぞれ接続具6,6とアジャスターバックル14,14の間に配置されることにより、前面ベルト3,3に沿って移動不能となっている。
そして、前面ベルト3の下方は2枚のベルト素材が分離した状態で重なり合い、そのうちの一方が下端3bとなっている。この下端3bは脚吊具10寄りの環状ベルト5に縫着されることで、環状ベルト5に対して直交しつつ環状ベルト5と接続されている。
加えて、下端3bと環状ベルト5の間には、これらに対して傾斜して架け渡される補強ベルト3cが備えられている。補強ベルト3cの両端が前面ベルト3と環状ベルト5に対して縫着されていることにより、下端3bと環状ベルト5との接続が強化されている。なお、前面ベルト3を構成する2枚のベルト素材のうちの他方は、補強ベルト3cの直上において、図示しない環状のゴムベルトによって前面ベルト3の下端3bと重ねて挟持される。
【0033】
さらに、保持手段11,11は、それぞれ略五角形状をなす、例えばプラスチック製の板材11aからなり、板材11aの中心点を中心としておよそ120度おきに、背面ベルト2,2と重複ベルト2Aをそれぞれ通過させる3個の挿通孔11bが設けられる。
そして、上方の保持手段11の3個の挿通孔11bには、背面ベルト2,2と重複ベルト2Aが挿通される。すなわち、上方の保持手段11は、背面ベルト2,2が要救助者50(
図6参照)の体軸に対して互いに対称的に傾斜して配置され、1本の重複ベルト2Aが体軸に沿って配置されることにより、背面ベルト2,2の途中に取り付けられる。
また、下方の保持手段11は、上方の保持手段11と上下を逆転させて背面ベルト2,2の途中に取り付けられる。
【0034】
次に、肩吊具の構成について、
図2を用いながらより詳細に説明する。
図2は、実施例1に係るハーネスを構成する形成手段と、肩吊具の斜視図である。なお、
図1で示した構成要素については、
図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図2に示すように、背面ベルト2は、その一箇所に上方ループ部L
1を形成するために背面ベルト2に設けられる形成手段12を備える。そのため、肩吊具9は、上方ループ部L
1に挿通される第1の環状部材である。
具体的には、形成手段12は、例えばプラスチック製のバックルであって、略長方形の枠体12aと、この枠体12aの短辺同士を連結する連結枠12bと、外側上方に突出するように枠体12aの短辺に形成される半円状の摘み部12cからなる。
また、肩吊具9は、金属製のD環であって、その直線部9aは筒状をなす例えばプラスチック製のローラー9bとともに上方ループ部L
1に挿通される。よって、肩吊具9の湾曲部は、直線部9aを中心として略180度の範囲内で回動可能である。
【0035】
続いて、環状ベルトの構成について、
図3を用いながらより詳細に説明する。
図3(a)は実施例1に係るハーネスを構成する環状ベルトの斜視図であり、
図3(b)は環状ベルトに取り付けられるアジャスターバックルの斜視図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素については、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3(a)に示すように、環状ベルト5は、第2のジョイント8と、この第2のジョイント8に隣接する脚吊具10と、3個のアジャスターバックル14,14,14´を備える。このうち、背面ベルト2の他端2bを挟んで配置される2個のアジャスターバックル14,14は、第2のジョイント8及び脚吊具10に対し、環状ベルト5の半周程度の間隔を空けて配置される。また、環状ベルト5には、脚吊具10寄りに前面ベルト3の下端3bが接続される。なお、背面ベルト2の他端2bのループ状に形成された内部には環状ベルト5が挿通されているため、他端2bは2個のアジャスターバックル14,14を超えて移動することができない。
【0036】
そして、第2のジョイント8は、環状ベルト5を分離可能に連結する例えば金属製のワンタッチジョイントであって、ジョイント本体8aと、ジョイント本体8aの一方の端面に開口する差込口に差し込んでロックされる差込プレート8bと、差込プレート8bのロックを解除する解除レバー8cを備える。
また、ジョイント本体8aの他方の端面寄りには、環状ベルト5が分離され折り曲げられて形成される一対の分離端5a,5bのうち、一方の分離端5aが係止される柱状の係止部8dが設けられる。さらに、分離端5aの切断端は、アジャスターバックル14と同一形状のアジャスターバックル14´により、環状ベルト5と重ねて挟持される。すなわち、係止部8dとアジャスターバックル14´は、環状ベルト5の全周の長さを調整する長さ調整手段として機能するものである。
これに対し、他方の分離端5bは、下方ループ部L
2が形成され、分離端5bの切断端は、環状ベルト5に縫着されている。なお、環状ベルト5の分離端5bの縫着部分は
図3中の死角に位置しているため、
図3中には示されていない。
脚吊具10は、下方ループ部L
2に挿通される第2の環状部材であって、具体的には、その一部を開閉可能とするヒンジ構造を備えた金属製の楕円環である。
【0037】
次に、
図3(b)に示すように、アジャスターバックル14は、例えばプラスチック製であって、両端が直角に屈曲した枠体14a,14aと、この枠体14a,14aを連結する直線状の連結枠14bからなる。
図3(b)中において矢印で示すように、環状ベルト5を枠体14aのうち一方の角部と連結枠14bとの隙間S
1に挿通した後、枠体14aの他方の角部と連結枠14bとの隙間S
2に挿通することで、アジャスターバックル14は環状ベルト5の任意の箇所に取り外し可能、かつ環状ベルト5に沿って移動可能に固定される。
【0038】
実施例1に係るハーネス1を要救助者50に装着するには、まず、連結ベルト4のジョイント本体7aと差込プレート7bを、解除レバー7cを操作して分離させておき、一対の背面ベルト2,2をそれぞれ両肩部52,52(
図6参照)に掛け、さらに両大腿部54,54をそれぞれ一対の環状ベルト5,5内に挿入する。このとき、要救助者50が両膝を曲げて両大腿部54,54を上昇させることが困難な場合には、ジョイント本体8aから差込プレート8bを引き抜いて第2のジョイント8,8をそれぞれ分離した後、環状ベルト5,5を両大腿部54,54に巻回し、さらにジョイント本体8aに差込プレート8bを差し込んで第2のジョイント8,8をそれぞれ連結すると良い。
そして、最後に第1のジョイント7の差込プレート7bをジョイント本体7aに差し込む。そうした後、一対の肩吊具9,9と一対の脚吊具10,10にそれぞれロープRをフックF(
図6参照)を介して係止すれば、要救助者50を吊り下げ可能となる。なお、吊り下げられた際には、要救助者50の姿勢をやや後傾した座位に維持することができる。
【0039】
そして、肩吊具9が胸部51(
図6参照)に位置して固定されるように、予め形成手段12(
図1,2を参照)の位置を調整しておくのであるが、要救助者50の身長によっては、形成手段12の摘み部12cを摘まんでその位置を微調整することができる。また、環状ベルト5の全周の長さも、アジャスターバックル14の配置を移動させることで、両大腿部54の太さに応じて、適宜微調整することができる。
【0040】
したがって、実施例1に係るハーネス1によれば、装着時に必ず操作するジョイントは第1のジョイント7であるから、わずかな手順で装着可能である。また、環状ベルト5は、必要に応じて第2のジョイント8において分離可能である。この場合、大腿部54を持ち上げなくてもこの大腿部54に環状ベルト5を巻回することができるので、身体を自在に動かせない要救助者50に対しても簡単かつ素早くハーネス1を装着することができる。
さらに、ハーネス1によれば、肩吊具9,9と脚吊具10,10という合計4箇所において、要救助者50を吊り上げることができるので、一点のみで吊り下げる場合と比較して要救助者50の体を揺らさず安定的に保持できる。そのため、要救助者50が感じる揺れによる恐怖感を軽減可能である。加えて、合計4箇所で吊り下げると、要救助者50の荷重を分散できるため、環状ベルト5,5と脚吊具10,10に係止した各ロープRを高強度とすることで、安全性も向上させることができる。
【0041】
さらに、ハーネス1によれば、肩吊具9が形成手段12によって背面ベルト2の一箇所にスライド移動不能に取り付けられるため、ハーネス1を装着時にロープR(
図6を参照)を肩吊具9へ容易に係止することができる。また、肩吊具9が不用意に背面ベルト2に沿って移動すると、ロープRの係止作業が遅れるばかりか、他の部材に衝突するおそれがある。しかし、形成手段12が設けられることにより、意図した以外に肩吊具9は背面ベルト2に沿ってスライド移動しないため、実際にはそのようなおそれはない。
さらに、ハーネス1によれば、脚吊具10が下方ループ部L
2に挿通されて環状ベルト5に沿って移動することが防止されるため、ハーネス1を装着時にロープRを脚吊具10へ容易に係止することができる。また、金属製の脚吊具10の重みで環状ベルト5が捩じれるおそれが考えられるが、環状ベルト5には背面ベルト2の他端2bと前面ベルト3の下端3bが互いに異なる位置で接続されるため、実際にはそのようなおそれはない。
【0042】
加えて、ハーネス1によれば、第2のジョイント8の係止部8dとアジャスターバックル14が、環状ベルト5の全周の長さを調整する長さ調整手段として機能することから、大腿部54の太さに応じ、適切な余裕を持った状態で環状ベルト5を巻回できる。さらに、前面ベルト3においても上端3aから下端3bまでの長さを調節できるとともに、連結ベルト4においてもアジャスターバックル13,13の取付位置を変更することにより第1のジョイント7から左右端4a,4aまでの長さをそれぞれ調節できる。よって、ハーネス1は、体格の異なる全ての要救助者50に対して適用可能である。
さらに、折り曲げられた分離端5aの切断端は、アジャスターバックル14´により環状ベルト5と重ねて挟持されるため(
図3を参照)、分離端5aの切断端が係止部8dから抜け落ちたり、分離端5aの切断端が揺動して装着作業の邪魔になったりすることを抑制できる。
【0043】
そして、ハーネス1によれば、吊り下げられた際には、要救助者50の姿勢をやや後傾した座位に維持することができるから、自然に顔が上向きとなる。したがって、吊り下げ時に要救助者50が常に下方を向いておらず、要救助者50が感じる不安感を軽減できる。
しかし、仮に要救助者50がパニックに陥った場合であっても、脚吊具10,10と環状ベルト5,5が設けられることによって、両大腿部54,54を直接吊り下げることが可能なので、両脚部の不要な動きを抑制することができ、救助時の安全性を確保できる。
【実施例2】
【0044】
本発明の第2の実施の形態に係る救命胴衣について、
図4乃至
図6を用いて詳細に説明する。
図4は、実施例1に係るハーネスと、実施例2に係る救命胴衣の前面図である。
図5は、実施例1に係るハーネスと、実施例2に係る救命胴衣の背面図である。なお、
図1乃至
図3で示した構成要素については、
図4及び
図5においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図4及び
図5に示すように、実施例2に係る救命胴衣15は、実施例1に係るハーネス1が取り付けられる救命胴衣であって、一対の前身頃16,16と、後身頃17を備える。前身頃16,16は、それぞれ浮体(図示せず)と、この浮体を被覆する被覆布16a,16aと、前身頃16,16同士を連結する線ファスナー16b,16bを備える。後身頃17は、浮体(図示せず)と、この浮体を被覆する被覆布17aを備える。よって、救命胴衣15は、要救助者50(
図6参照)を衝撃から防護したり、要救助者50が溺れることを防止したりすることができる。
【0045】
また、救命胴衣15は、頭部を防護するために、前身頃16,16の上方に固定される留め金具16k,16kに例えば金属フック(図示せず)を介して着脱可能に取り付けられる頭部カバー31(
図6参照)と、頚部をその後側から支持かつ防護するために、前身頃17,17の上端同士の間に例えば面ファスナー等(図示せず)を介して着脱可能に取り付けられる短冊状の頚部支持体32を備えている。なお、頭部カバー31と頚部支持体32はいずれも、クッション材と、このクッション材を収容する収容体からなる。
さらに、前身頃16,16は、その表面に前面ベルト3,3を固定する前面固定手段18,18がそれぞれ設けられ(
図4,6を参照)、後身頃17は、その表面に重複ベルト2Aを固定する背面固定手段19が設けられる(
図5を参照)。
加えて、前身頃16,16には、その表面に背面ベルト2,2を固定する上方固定手段28,28が、前面固定手段18,18の上方で、かつ肩吊具9,9の下方に配置されるようにそれぞれ設けられる。
【0046】
詳細には、
図4に示すように、前面固定手段18は、例えば前身頃16の被覆布16aに固定される前面保持部20と、この前面保持部20の下方に配置されるように前面ベルト3に取り付けられる前面ストッパー23からなる。
前面保持部20は、例えば被覆布16aに縫着される前面縫着部21と、この前面縫着部21を挟んで両側に設けられ互いに係着する前面ファスナー22a,22aを備え、前面ベルト3を前身頃16に対して上下方向に沿って移動可能に保持するとともに、前面ストッパー23を係止可能である。
具体的には、前面保持部20は、例えば合成繊維製の細長形状をなす基材を備え、前面ファスナー22a,22aは、この基材に縫着される面ファスナーである。また、前面ストッパー23は、アジャスターバックル14と同様の構成をなすバックルである。
【0047】
また、上方固定手段28は、前身頃16の被覆布16aに縫着される上方縫着部29と、この上方縫着部29を挟んで両側に設けられ互いに係着する上方ファスナー30a,30aを備え、背面ベルト2を前身頃16に対して上下方向に沿って移動可能に保持するとともに、肩吊具9及び形成手段12を係止可能である。なお、上方縫着部29及び上方ファスナー30a,30aは、それぞれ前面保持部20及び前面ファスナー22a,22aと同様な材料及び構成からなる。
【0048】
次に、
図5に示すように、背面固定手段19は、例えば後身頃17の被覆布17aに固定される背面保持部24と、この背面保持部24の下方に配置されるように重複ベルト2Aに取り付けられる背面ストッパー27からなる。
背面保持部24は、被覆布17aに縫着される背面縫着部25と、この背面縫着部25を挟んで両側に設けられ互いに係着する背面ファスナー26a,26aを備え、重複ベルト2Aを後身頃17に対して移動可能に保持するとともに、背面ストッパー27を係止可能である。
具体的には、背面保持部24は、前面保持部20と同様に、例えば合成繊維製の細長形状をなす基材を備え、背面ファスナー26a,26aは、この基材に縫着される面ファスナーである。また、背面ストッパー27は、アジャスターバックル14と同様の構成をなすバックルである。
【0049】
上記構成の救命胴衣15においては、ハーネス1と救命胴衣15が、前面固定手段18,18と背面固定手段19を介して一体的に形成される。そのため、前述した方法により要救助者50にハーネス1を装着して、前身頃16,16の線ファスナー16b,16b同士を係合すると、救命胴衣15も同時に装着される。
また、要救助者50が肩吊具9,9及び脚吊具10,10を介してそれぞれ吊り下げロープRで吊り下げられるとき、前面ベルト3,3と重複ベルト2Aはそれぞれ前面固定手段18,18と背面固定手段19に対して上方にスライド移動する場合がある。しかし、前面固定手段18において、前面ストッパー23は前面保持部20の下方に配置されるように前面ベルト3に取り付けられているから、前面ベルト3が上方へスライド移動すると前面ストッパー23が前面保持部20に係止される。よって、前面ベルト3が上方へ過剰にスライド移動することが防止される。なお、
図4では、前面ストッパー23と同一構造のストッパー(符号なし)が前面保持部20を挟むように前面縫着部21の上方において前面ベルト3に取り付けられているため、前面ベルト3が下方へ過剰にスライド移動することも防止される。ただし、このストッパーは省略されても良い。
背面固定手段19においても、背面ストッパー27は背面保持部24の下方に配置されるように重複ベルト2Aに取り付けられているから、重複ベルト2Aが上方へスライド移動すると背面ストッパー27が背面保持部24に係止される。よって、重複ベルト2Aが上方へ過剰にスライド移動することが防止される。
【0050】
さらに、救命胴衣15においては、形成手段12の摘み部12c(
図2を参照)を摘まんでその位置を微調整することができる。そのため、吊り下げ時の荷重のバランスによっては、肩吊具9が腹部側の下方へ過剰にスライド移動するおそれがある。しかし、このような場合であっても、上方固定手段28(
図4,6を参照)は肩吊具9の下方に配置されるように前身頃16の被覆布16aに取り付けられているから、肩吊具9が上方固定手段28に係止され、下方へ過剰にスライド移動することが防止される。
【0051】
次に、ハーネス1と救命胴衣15の使用状態について、
図6を用いて説明する。
図6は、実施例1に係るハーネスと、実施例2に係る救命胴衣の使用状態を示す斜視図である。なお、
図1乃至
図5で示した構成要素については、
図6においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、形成手段12やアジャスターバックル13,14、頚部支持体32等の図示も省略する。
図6に示すように、実施例1に係るハーネス1が取り付けられた救命胴衣15は、ハーネス1の肩吊具9,9および脚吊具10,10のそれぞれにロープRの先端に連結されたフックFが係止され、4点で吊られる状態となる。ただし、本図では、1つの脚吊具10のみにロープR及びフックFが係止された状態を示しており、残りの肩吊具9と脚吊具10については、ロープR等の図示を省略している。
すると、救命胴衣15の前面固定手段18,18と背面固定手段19(
図5参照)により、ハーネス1の前面ベルト3と重複ベルト2A(
図5参照)が上方へ過剰にスライド移動することが防止されるため、吊り上げられる際に環状ベルト5,5が要救助者50の股関節部に上昇することが防止される。さらに、脚吊具10,10が設けられることで、常に両大腿部54,54をロープR,Rで吊り上げることが可能となる。よって、要救助者50の姿勢がやや後傾した座位に維持される。
【0052】
以上説明したように、ハーネス1が取り付けられた救命胴衣15によれば、ハーネス1を装着すると、救命胴衣15も同時に装着されることになるから、迅速な救助が可能になる。
また、要救助者50を上空から吊り上げられる際に、ハーネス1の背面ベルト2,2及び前面ベルト3,3が要救助者50の身体に直接接触しないから、要救助者50の体が締め付けられることがなく、要救助者50に与える負荷を軽減することができる。また、環状ベルト5,5についても、救命胴衣15の前面固定手段18,18と背面固定手段19により、環状ベルト5,5が要救助者50の股関節部に上昇することが防止されるため、要救助者50に与える負荷を軽減することができる。
加えて、ハーネス1の肩吊具9,9および脚吊具10,10の4点で吊られて、要救助者50の姿勢がやや後傾した座位に維持されるため、不安定な姿勢で吊り上げられることがなく、要救助者50に安心感を与えることができる。
特に、上方固定手段28により、肩吊具9が下方へ過剰にスライド移動することを防止できるので、要救助者50の頭部が大きく後傾せず、要救助者50に不快感や頚部の痛み等を感じさせないようにすることが可能である。
【0053】
なお、本発明に係るハーネス及び救命胴衣は、実施例に示すものに限定されない。例えば、連結ベルト4は、第1のジョイント7を介して、一端2a,2a同士を分離可能に連結しても良い。また、前面固定手段18,18として、前面保持部20と前面ストッパー23の代わりに、前面ベルト3,3が直接前身頃16,16の被覆布16a,16aにそれぞれ縫着されても良い。背面固定手段19についても、背面保持部24と背面ストッパー27の代わりに、重複ベルト2Aが直接後身頃17の被覆布17aにそれぞれ縫着されても良い。さらに、前面ストッパー23及び背面ストッパー27は、それぞれ前面保持部20の上方及び背面保持部24の上方に追加されても良い。なお、本発明に係るハーネス及び救命胴衣は、災害時や事故時の要救助者のほか、高所や立坑等で危険作業に従事する作業従事者に対して適用されても良い。