特許第6796891号(P6796891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6796891レトルト食品及びレトルト食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6796891
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】レトルト食品及びレトルト食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/00 20060101AFI20201130BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20201130BHJP
【FI】
   A23L3/00 101C
   A23L19/00 101
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-76450(P2020-76450)
(22)【出願日】2020年4月23日
【審査請求日】2020年7月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503061795
【氏名又は名称】株式会社わびすけ
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】山田 順子
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−290159(JP,A)
【文献】 特開2007−202527(JP,A)
【文献】 特開2016−154498(JP,A)
【文献】 特開2006−124316(JP,A)
【文献】 特開2009−050192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理されただし汁及び略型崩れしない状態の多数の生鮮なハナビラタケの子実体が加熱可能な包装体に密封されたレトルト食品であって、
前記だし汁は、原水を複数の濾過装置で濾過した超純水の処理水を抽出手段に収納しかつ該抽出手段に被抽出物を投入して前記処理水を加熱することにより抽出したエキスであるレトルト食品。
【請求項2】
前記だし汁エキスは水溶性カルシウムを含有していることを特徴とする請求項1に記載のレトルト食品。
【請求項3】
前記原水は水道水であって、前記濾過装置の濾過手段には、少なくともイオン交換樹脂膜又はアニオン交換樹脂膜のいずれかを含んでいることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のレトルト食品。
【請求項4】
加熱処理されただし汁及びハナビラタケが包装体に密封されたレトルト食品であって、
前記だし汁は、水道水を複数の濾過手段を有する濾過装置を通して得られた超純水の処理水を抽出手段に収納しかつ生のイワシと乾燥済みコンブと鰹節を該抽出手段に入れて煮込んで得たスープであり、一方、前記ハナビラタケは、水道水又は濾過した処理水のいずれかで綺麗に洗浄し、かつ、略型崩れしない状態の多数の生鮮なハナビラタケの子実体とを可撓性の袋に真空状態で入れたものであることを特徴とするレトルト食品。
【請求項5】
原水を複数の濾過装置によって濾過して不純物を取り除き、超純水の処理水を生成する処理水生成工程と、前記処理水を抽出手段に収納しかつ該抽出手段に被抽出物を投入して前記処理水を加熱することによって該被抽出物から前記処理水内にエキスを抽出して加熱処理のだし汁を生成するエキス抽出工程と、前記だし汁に略型崩れしない状態の多数の生鮮なハナビラタケの子実体を加えて加熱可能な包装体に密封する包装工程と、前記包装体をレトルト処理するレトルト処理工程とからなるレトルト食品の製造方法。
【請求項6】
前記処理水生成工程で用いられる前記濾過装置の濾過手段は、少なくともイオン交換樹脂膜又はアニオン交換樹脂膜のいずれかを用いて濾過することを特徴とする請求項5に記載のレトルト食品の製造方法。
【請求項7】
前記処理水生成工程で用いられる前記濾過装置は、イオン交換樹脂膜を含む純水製造システムと、紫外線殺菌器又は限外濾過膜装置のいずれかを含む超純水製造システムを組み合わせたものが用いられることを特徴とする請求項5に記載のレトルト食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハナビラタケを用いたレトルト食品及びレトルト食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハナビラタケの子実体を含有する食品としては、ハナビラタケおよびホンシメジを加熱処理し、粉末状等に加工した食品等が知られている(特許文献1)。
しかしながら、これらの食品は、ハナビラタケを細かく粉砕してしまうものであるため、ハナビラタケの栄養素は摂取できるとしても、ハナビラタケの子実体の味や食感等を楽しめるものではなかった。
【0003】
また、ハナビラタケの子実体の味や食感等を楽しめるものではないものの、ハナビラタケとガゴメ昆布とをそれぞれ粉末状態にし、前者と後者の最適な混合割合を検討した上で、例えばそれらの粒径をそれぞれ74μm以下とし、混合する比率が、前記ハナビラタケ粉末の質量を1としたときに前記ガゴメ昆布粉末の質量が0.67〜1.5の割合である水溶性粉末食品が提案されている。この水溶性粉末食品は、水に対して容易に溶解して溶け残りが発生しないハナビラタケ粉末を用いた水溶性粉末食品であり、しかも、ハナビラタケ粉末を用いたこの種の水溶性粉末食品は、健康食品として、広く利用されるようになってきている。
【0004】
付言すると、ハナビラタケには、大量のβグルカンが含まれていることが明らかとなり、抗腫瘍効果、感染症効果、免疫賦活効果、血糖調節効果、抗高脂血症効果、抗アレルギー効果、抗高血圧効果などがあるとの研究報告がなされている(特許文献3)。
【0005】
そこで、近年、市場に於いて、袋詰めや容器に収納された水溶性粉末食品が販売されるに至っている。一般の需要者は、前記水溶性粉末食品を購入し、色々な料理にハナビラタケの粉末(商品の中には、ハナビラタケの粉末にウコン等の粉末を混ぜたものもある)入れて、栄養素を摂取している。
【0006】
しかしながら、上記のような研究報告がなされ、また水溶性粉末食品が市場に流通しているにも関わらず、市場では、美味しくて栄養があるスープと共に、ハナビラタケ子実体がセットとして販売されていないので、普通一般の家庭では、気軽に、例えば「おでん」の如く、鍋ものにしてその味や食感を楽しむことができないのが実情である。そこで、現在、例えば「おでん」の如くハナビラタケ子実体を食することができるレトルト食品及びレトルト食品の製造方法の出現が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−202527号公報
【特許文献2】特開2016−154498号公報
【特許文献3】特開2006−124316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、普通一般の家庭に於いて、例えば鍋ものにして、ハナビラタケやだし汁の栄養素を効率よく摂取でき、かつ、ハナビラタケ子実体の味や食感を楽しむことができる安全かつ品質の良いレトルト食品及びレトルト食品の製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
【0010】
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のレトルト食品は、加熱処理されただし汁及び略型崩れしない状態の多数の生鮮なハナビラタケの子実体が加熱可能な包装体に密封されたレトルト食品であって、前記だし汁は、原水を複数の濾過装置で濾過した超純水の処理水を抽出手段に収納しかつ該抽出手段に被抽出物を投入して前記処理水を加熱することにより抽出したエキスであることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載のレトルト食品の前記だし汁エキスは水溶性カルシウムを含有していることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載のレトルト食品の前記原水は水道水であって、前記濾過装置の濾過手段には、少なくともイオン交換樹脂膜又はアニオン交換樹脂膜のいずれかを含んでいることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載のレトルト食品は、加熱処理されただし汁及びハナビラタケが包装体に密封されたレトルト食品であって、前記だし汁は、水道水を複数の濾過手段を有する濾過装置を通して得られた超純水の処理水を抽出手段に収納しかつ生のイワシと乾燥済みコンブと鰹節を該抽出手段に入れて煮込んで得たスープであり、一方、前記ハナビラタケは、水道水又は濾過した処理水のいずれかで綺麗に洗浄し、かつ、略型崩れしない状態の多数の生鮮なハナビラタケの子実体とを可撓性の袋に真空状態で入れたものであることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載のレトルト食品の製造方法は原水を複数の濾過装置によって濾過して不純物を取り除き、超純水の処理水を生成する処理水生成工程と、前記処理水を抽出手段に収納しかつ該抽出手段に被抽出物を投入して前記処理水を加熱することによって該被抽出物から前記処理水内にエキスを抽出して加熱処理のだし汁を生成するエキス抽出工程と、前記だし汁に略型崩れしない状態の多数の生鮮なハナビラタケの子実体を加えて加熱可能な包装体に密封する包装工程と、前記包装体をレトルト処理するレトルト処理工程とからなることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載のレトルト食品の製造方法の前記処理水生成工程で用いられる前記濾過装置の濾過手段は、少なくともイオン交換樹脂膜又はアニオン交換樹脂膜のいずれかを用いて濾過することを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載のレトルト食品の製造方法の前記処理水生成工程で用いられる前記濾過装置は、イオン交換樹脂膜を含む純水製造システムと、紫外線殺菌器又は限外濾過膜装置のいずれかを含む超純水製造システムを組み合わせたものが用いられることを特徴とする。
【0018】
実施形態では、レトルト食品は、だし汁及びハナビラタケが包装体に密封されたレトルト食品であって、前記だし汁は、水道水を複数の濾過手段を有する濾過装置を通して得られた超純水の処理水に、生のイワシと乾燥済みコンブと鰹節を入れて煮込んで得たスープであり、一方、前記ハナビラタケは、水道水又は濾過した処理水のいずれかで綺麗に洗浄し、かつ、略型崩れしない状態の多数の「生鮮なハナビラタケの子実体」とを可撓性の袋に真空状態で入れ、その後に加熱処理したものであり、該実施形態に於いて、生鮮なハナビラタケの子実体は、処理水のいずれかで綺麗に洗浄した後、加熱処理の前に、紫外線放射手段及び紫外線を放射する反射部材を備えた殺菌容器で所要時間殺菌するのが最も望ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1及び請求項5に記載の各発明においては、複数の濾過装置で不純物を取り除いた超純水の処理水を用いているので、安全かつ品質の良いだし汁を用いることができる。また、ハナビラタケの子実体をだし汁に入れた状態でレトルト処理されているので、だし汁に溶け出している栄養素及びハナビラタケの栄養素を、普通の一般の家庭で、例えば鍋ものにして、手軽に摂取することができる。
(2)また、ハナビラタケの子実体を含んでいるため、ハナビラタケの食感や味を楽しむことができる。
(3)請求項2に記載の発明においては、前記(1)〜(2)と同様の作用効果を得られるとともに、カルシウム等の栄養素を効率よく摂取することができる。
(4)請求項3、請求項6及び請求項7に記載の各発明においては、前記(1)〜(2)と同様の作用効果を得られるとともに、純度の高い処理水を生成することができる。
したがって、効率よく被抽出物からエキスを抽出することができる。
(5)請求項4に記載の発明は、レトルト食品には、だし汁は、水道水を複数の濾過手段を有する濾過装置を通して得られた超純水の処理水に、生のイワシ(例えばカタクチイワシ)と乾燥済みコンブと鰹節を入れて煮込んで得たスープであり、一方、前記ハナビラタケは、加熱処理しないで水道水を濾過した処理水で綺麗に洗浄し、かつ、略型崩れしない状態の多数のハナビラタケの子実体を、それぞれ一緒に包装体に密封したものも含まれるので、本発明の主たる課題(安全かつ品質の良いだし汁をこと、及びだし汁に溶け出している栄養素及びハナビラタケの栄養素を手軽に摂取することができること)を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1乃至図8は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態を示すレトルト食品の説明図。
図2】濾過装置の説明図。
図3】抽出手段の説明図。
図4】だし汁及びハナビラタケを包装体に収納する状態を示す説明図。
図5】レトルト処理の説明図。
図6】第1の実施形態を示すレトルト食品の製造方法の工程図。
図7】加熱処理する前に殺菌容器で生鮮なハナビラタケの子実体を殺菌する際の説明図。
図8】殺菌容器で所要時間ハナビラタケの子実体を殺菌する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至図8に示す本発明を実施するための第1の形態において、1はハナビラタケ2の新鮮な子実体を有するレトルト食品である。
図1は、このレトルト食品1で、だし汁3及びハナビラタケ2の子実体が加熱可能な包装体4に密封されている。
【0022】
このハナビラタケ2は、例えば、通気性の良い固形培地を作成し、この固形培地にハナビラタケの菌糸を接種して培養する等の方法により栽培されたものを用いることが望ましく、固定培地から収穫してから時間があまり経過していない新鮮なものを用いることが望ましい。ところで、本発明においてハナビラタケ2とは、ハナビラタケ2の子実体を指すものである。
【0023】
だし汁3は、水道水や井戸水、天然水等の原水aを濾過装置5(ここでは、濾過装置5は上位概念で、RO膜、イオン交換樹脂膜、アニオン交換樹脂膜、活性炭、紫外線殺菌器等の濾過手段は、その下位概念である)で濾過した処理水6と、前記処理水6を用いて被抽出物7から抽出手段8により抽出したエキスを含むものである。すなわち、処理水6を用いて被抽出物7を抽出手段8により煮出してだし汁としたものである。
【0024】
被抽出物7としては少なくともイワシ、鰹節又は乾燥済みの昆布のいずれかが用いられ、好ましくは、生鮮イワシ(例えばカタクチイワシ)、鰹節、昆布(例えばガゴメコンブ、日高産のコンブ等)、しいたけ及び無臭ニンニク等が用いられている。これらの被抽出物7からエキスを抽出する際に、後述する処理を行った処理水6(例えば、超純水c)を用いることで、エキスが溶け出しやすくなり、本実施形態においては、エキスとして水溶性カルシウム、ビタミン、ミネラル成分、タンパク質、ペプチド、アミノ酸等の様々な栄養素が効率よく抽出されている。ところで、ペプチドとは、2〜50個程度のアミノ酸がペプチド結合したものであり、タンパク質に比べて体内への吸収率も高いものである。
包装体4は、一般的なレトルト食品に用いられるもので、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムにアルミ等の金属箔やプラスチックを積層したフィルムを溶着して袋状とし、食品を密封したもの等が用いられる。
【0025】
ここで、図2は、処理水(例えば超純水)6を得るための濾過装置5の全体構成を示す概略説明図である。この図2に於いて、図面左側の上側には、原水aの一例として、水道水を供給する蛇口9が描かれている。蛇口9には、周知の如く、水栓9aが回転自在に設けられている。
【0026】
また所定角度で曲がっている排出管(例えばエルボ)10を有している。この排出管10の下向きの排出口部には、取り外し可能にオス接続筒11が設けられている。オス接続筒11の内周壁には、図示しない弾性リングが設けられている。実施形態では、オス接続筒11は固定手段としての複数個のオネジ12を介して前記排出管10に外嵌合状態で固着されている。ここでは、オス接続筒11の具体的構成の説明を割愛するが、このオス接続筒11の小径の下端部にはリング状のパッキン13が鍔状に設けられている。
【0027】
同様に図面左側の下側には、前記オス接続筒11に着脱自在に外嵌合する大径のメス接続具14が描かれている。このメス接続具14は、上端部に外筒に相当する把持部15aと、この把持部15aの内側に一体的に設けられ、かつ、その一部又は全部が弾性変形復帰可能な内筒部15bとから成る嵌合部15を有している。
【0028】
一方、メス接続具14は、前記嵌合部15に接続する筒状下端部を有し、この筒状下端部には、水道水供給用のホース16の一端部16aが接続している。そして、前記ホース16の他端部16bは、濾過装置5に接続している。
【0029】
濾過装置5は、濾過手段として、例えば中空状の浄水器本体に活性炭、サンゴ、麦飯石等を内部に有する濾過筒を内装したものであっても良いが、好ましくは、少なくともイオン交換樹脂膜(陽イオン交換樹脂膜)又はアニオン交換樹脂膜(陰イオン交換樹脂膜)のいずれかを有し、かつ、カートリッジ式の濾過用モジュールを用いる。
【0030】
実施形態では、最も好ましい濾過装置5の一例として、「純水製造システム17」と「超純水製造システム21」を組み合わせたものが用いられる。もちろん、濾過装置5は前者のみであっても良いが、この場合には、後述の紫外線殺菌器22を適宜箇所に設けるのが望ましい。
【0031】
周知の如く、純水製造システム17は、電解質はもちろんのこと、それ以外に原水aに溶解している有機物、生菌、微粒子、シリカ等を除去することを目的としている。一方、超純水製造システム21は、半導体産業とともに生まれた処理水の概念であるが、前記純水製造システム17で得られた「純水b」の中に含まれている不純物を可能な限り除去し、かつ、溶存酸素を徹底的に除去するために用いられている。
【0032】
しかして、まず純水製造システム17は、例えばRO膜(逆浸透膜装置)18、脱気塔19、イオン交換装置20などを有している。実施形態では、原水aとして一般の家庭や工場に供給されている水道水を使用しているので、RO膜18に先立って濁度成分を除去するための凝集槽や二層式の濾過層は必要でない。また原水aとして湖水や井戸水を利用するものではないから、圧送ポンプ等も必要でない。
【0033】
さて、単数、又は複数のRO膜18は、水道水の圧力を利用し又は高圧プンプからの液圧を利用して塩分等を除去し、純度の高い水を得ることができる。また、脱気塔19はRO膜18で除去されなかった二酸化炭素や溶存酸素を除去することができる。さらに、脱気塔19を通過した透過水中に残留する微量のイオン類はイオン交換樹脂(イオン交換樹脂膜又はアニオン交換樹脂膜)等を有するイオン交換装置20で除去され、高純度の「純水b」となる。なお、前記純水bは、図示しない純水槽に一次的に貯留される。
【0034】
次に超純水製造システム21は、少なくとも紫外線殺菌器22、超純水カートリッジ(限外濾過膜装置)23等を有している。好ましくは、紫外線殺菌器22と超純水カートリッジの間に、純水製造システム17で用いたイオン交換装置(図示しない)を介在させる。
【0035】
図示しない純水槽に純水bを貯留する場合には、図示しないポンプを介して紫外線殺菌器22に前記純水bを圧送する。また紫外線殺菌器には、純水bに含まれている菌類を殺菌するので、好ましくは図示しないマイクロウェーブ発生装置及び加熱装置を加味する。
超純水カートリッジ23は、前述したように、前記紫外線殺菌器22(実施形態によっては、熱交換器)を通過した透明水に含まれている不純物(粒粒子、溶存酸素)を可能な限り除去し、これにより「超純水c」を得ることができる。このような処理水6の一例としての超純水cは、だし汁3を作る際、鍋、釜などの抽出手段8に所要量入れられる。
【0036】
図3は、抽出手段8を示すもので、抽出手段8としては、本実施形態においては、鍋等により処理水6を収納し、この処理水6内に被抽出物7を投入して処理水6を加熱し、煮出す手段が用いられている。その他の抽出手段8としては、処理水6に被抽出物7を投入し所定時間放置してエキスを抽出する、容器に投入した被抽出物7に所定温度の処理水6をかける、処理水6と被抽出物7を容器に収納して蒸す、湯煎する等が考えられる。
【0037】
なお、抽出手段8によりエキスが抽出された被抽出物7(いわゆるだし殻)は、だし汁3から濾過等により除去され、レトルト食品1には水溶性のエキスが溶け出しただし汁3のみが用いられる。
【0038】
包装体4は、一般的なレトルト食品に用いられるもので、前述のようにプラスチックフィルム等を積層し、溶着したもの等が用いられる。
【0039】
図4は、この包装体4にだし汁3等を収納する状態を示した図で、この包装体4にだし汁3を入れ、さらに新鮮な生のハナビラタケ2を、食感を感じることができる所定の大きさ、例えば一口大等に加工して投入して密封する。
【0040】
このようにだし汁3及びハナビラタケ2を投入して包装体4を密封した後に、図5に示すようにレトルト処理を行う。このハナビラタケ2を投入する際のだし汁3の温度は任意の温度とすることができる。レトルト処理は、公知のレトルト処理方法を用いて処理される。付言すると、だし汁3及びハナビラタケ2を収納し、密封した包装体4を加熱装置に投入し、所定温度で所定時間加熱する。なお、この加熱時に加圧は処理を行うことで、大気圧下よりも高温での処理が可能となる。
【0041】
ハナビラタケ2を投入した後、レトルト処理を行うため、このレトルト処理時にハナビラタケ2を加熱することができ、ハナビラタケ2からも栄養素がだし汁3内に抽出される。
【0042】
すなわち、レトルト処理を行うことにより、生のハナビラタケ2にも加熱処理がなされるとともに、ハナビラタケ2のβ1.3グルカン、食物繊維、ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の栄養素がだし汁3に溶け出し、レトルト食品1を食する際に、だし汁3やハナビラタケ2の栄養素をもれなく摂取することができる。
【0043】
なお、このレトルト食品1を食する際には、湯煎等によりだし汁3やハナビラタケ2が収納された包装体4を所定時間加熱し、温めて食することが望ましい。
【0044】
ところで、本発明のレトルト食品1を製造するレトルト食品の製造方法24は、図6に示すように、原水aを濾過装置5によって濾過して不純物を取り除き、処理水6を生成する処理水生成工程25と、前記処理水6を用いて被抽出物7から前記処理水6内にエキスを抽出し、だし汁3を生成するエキス抽出工程26と、前記だし汁3に生のハナビラタケ(子実体)2を加えて加熱可能な包装体4に密封する包装工程27と、前記だし汁3及びハナビラタケ2が密封された前記包装体4をレトルト処理するレトルト処理工程28とで構成される。
【0045】
処理水生成工程25では、その一例として、前述した「純水製造システム17」と「超純水製造システム21」を組み合わせた濾過装置5を用いて、原水aを濾過して処理水6が生成される。
【0046】
エキス抽出工程26は、前述した抽出手段8により、イワシ等の被抽出物7からエキスを抽出する工程である。この工程では、鍋の抽出手段8に処理水6を入れた状態で、イワシ等の被抽出物7を煮出してエキスを抽出する。
【0047】
包装工程27では、だし汁3及び収穫した新鮮な生のハナビラタケ2を包装体4に収納し、密封する。具体的には、一対の方形状又は矩形状の積層フィルムの3辺を溶着し、開口した袋状に形成した包装体4に前述のだし汁3と一口大等した生のハナビラタケを収納した後、開口部を溶着して密封する。この時、包装体4の内部に空気等の気体が残存しないように密封することが望ましい。
【0048】
なお、包装体4として、このような積層フィルムを溶着して袋状にしたものだけでなく、瓶や缶等を包装体4として用いて、瓶詰めや缶詰のように包装してもよい。
【0049】
レトルト処理工程28では、だし汁3及びハナビラタケ2を密封した包装体4を加熱装置等のレトルト処理装置に入れて加圧・加熱を行い、レトルト処理をする。このレトルト処理装置は、公知の装置を用いることができる。
【0050】
次に、図7は加熱処理する前に殺菌容器31で生鮮なハナビラタケ2の子実体を殺菌する際の説明図、図8は前記殺菌容器31で所要時間ハナビラタケの子実体2を殺菌する説明図である。
【0051】
殺菌容器31は、実施形態では、箱型の上端開口の容器本体31aと、前記上端開口を自在に開閉する所定形状の蓋体31bとから成る。容器本体31aは生鮮なハナビラタケ2の子実体を所望量入れることができる大きさと深さを有する。なお、殺菌容器31の形態は特に問わない。
【0052】
一方、蓋体31bは、容器本体31aの上端部の周縁から食み出る大きさで扁平状のものである。しかして、蓋体31bの内壁面には矩形状の反射部材32が固定的に設けられ、この反射部材32略中央部には、水平方向に単数又は複数の紫外線放射手段の一例としての紫外線LED33が取り外し可能に取り付けられている。紫外線放射手段33は電源に接続し、図示しないスイッチが設けられている。
【0053】
好ましい実施形態では、殺菌容器31で鮮なハナビラタケ2の子実体を殺菌する前、水道水又は濾過装置5の一部又は全部で濾過して得た処理水(純粋b又は超純水c)で洗浄する。そして、処理水(b又はc)で洗浄した生鮮なハナビラタケ2の子実体を、図7で示すように処理水(b又はc)と共に容器本体31aの上端開口から投入する。その後、上端開口を蓋体31bで閉じ、紫外線LED33を照射する。
【0054】
ここでの反射部材32は、素材や物質如何を問わず、また反射板、反射シート、鏡面仕上げ部分、再帰反射シート、乱反射シート等の用語の如何を問わず、光学的現象を発現させるものが含まれる。また反射部材は、例えば一側内面を凹凸面とし、入射する紫外線を下方方向へ拡散させる態様のものも含まれるので、効率良く、短時間で殺菌することができる。
【0055】
したがって、本発明のレトルト食品は、水道水を複数の濾過手段を有する濾過装置を通して得られた純粋又は超純水のいずれかの処理水に、生のイワシと乾燥済みコンブと鰹節を入れて煮込んで得た「だし汁」と、水道水又は濾過した処理水のいずれかで綺麗に洗浄し、かつ、略型崩れしない状態の多数の「生鮮なハナビラタケの子実体」とを、可撓性の袋に真空状態で入れ、その後に加熱処理したものも含まれる。
【0056】
付言すると、本発明のレトルト食品には、だし汁は、原水としての水道水を複数の濾過手段を有する濾過装置を通して得られた純粋又は超純水のいずれかの処理水に、生のイワシ(例えばカタクチイワシ)と乾燥済みコンブ(例えば名産地のコンブ)と鰹節を入れて煮込んで得たスープであり、一方、前記ハナビラタケは、好ましくは水道水を濾過した処理水で綺麗に洗浄し、かつ、紫外線放射手段を有する殺菌容器で殺菌した略型崩れしない状態の多数の生鮮なハナビラタケの子実体を、それぞれ一緒に包装体に密封したものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明はハナビラタケを用いたレトルト食品を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0058】
1:レトルト食品、 2:ハナビラタケ、
3:だし汁、 4:包装体、
5:濾過装置、 6:処理水、
7:被抽出物、 8:抽出手段、
9:蛇口、 10:排出管、
11:オス接続筒、 12:オネジ、
13:パッキン、 14:メス接続具、
15:嵌合部、 16:ホース、
17:純水製造システム、 18:RO膜、
19:脱気塔、 20:イオン交換装置、
21:超純水製造システム、 22:紫外線殺菌器、
23:超純水カートリッジ(限外濾過膜装置)、
24:レトルト食品の製造方法、
25:処理水生成工程、 26:エキス抽出工程、
27:包装工程、 28:レトルト処理工程、
31:殺菌容器、 33:紫外線放射手段、
a:原水、 b:純水、
c:超純水。
【要約】
【課題】 ハナビラタケやだし汁の栄養素を効率よく摂取できかつハナビラタケ子実体の味や食感を楽しむことができるレトルト食品及びレトルト食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 だし汁及びハナビラタケが加熱可能な包装体に密封されたレトルト食品であって、だし汁は、原水を濾過装置で濾過した処理水と、処理水を用いて被抽出物から抽出手段により抽出したエキスを含むことを特徴とする。
【選択図】 図1
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図8