(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細
に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の
範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
〔ウェットワイパー〕
本実施形態のウェットワイパーは、布帛と、該布帛に含浸させた除菌液と、を有し、アクリル板に対する静摩擦係数が、0.60以上であり、前記アクリル板に対する動摩擦係数が、0.60以上である。
【0013】
本実施形態のウェットワイパーは、布帛が被払拭表面に密着できる表面構造を持つという構成を有することにより、かきとった汚れを取りこんで離さない(再汚染防止)性能に優れる。被払拭表面に接触するワイパー表面の接触面積が大きいほど摩擦係数も大きくなるが、接触面積が大きいほど、被払拭表面上の汚れの掻き取りが効率的に行われ、掻き取られた汚れもより広い面積に付着することで離し難くなる。
【0014】
ウェットワイパーのアクリル板に対する静摩擦係数は、0.60以上であり、好ましくは0.65以上であり、より好ましくは0.70以上であり、さらに好ましくは0.80以上である。静摩擦係数が0.60以上であることにより、被払拭表面に対する密着性が増し汚れの吸着性能がより向上する。また、ウェットワイパーのアクリル板に対する静摩擦係数は、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.2以下であり、さらに好ましくは1.0以下である。静摩擦係数が1.5以下であることにより、ウェットワイパーで払拭する際に必要以上に引っかからないといった作業性がより向上する傾向にある。静摩擦係数は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0015】
なお、静摩擦係数は、布帛表面に存在する天然繊維割合を増加、及び/又は、布帛密度を増加させることにより増大し、布帛表面に存在する天然繊維割合を減少、及び/又は、布帛密度を減少させることにより減少する。
【0016】
ウェットワイパーのアクリル板に対する動摩擦係数は、0.60以上であり、好ましくは0.65以上であり、より好ましくは0.70以上であり、さらに好ましくは0.80以上である。動摩擦係数が0.60以上であることにより、払拭時の被払拭表面に対する密着性が増し汚れの掻き取り性能がより向上する。また、ウェットワイパーのアクリル板に対する動摩擦係数は、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.2以下であり、さらに好ましくは1.0以下である。動摩擦係数が1.5以下であることにより、ウェットワイパーで払拭する際に必要以上に引っかからないといった作業性がより向上する傾向にある。動摩擦係数は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0017】
なお、動摩擦係数は、布帛表面に存在する天然繊維割合を増加、及び/又は、布帛密度を増加させることにより増大し、布帛表面に存在する天然繊維割合を減少、及び/又は、布帛密度を減少させることにより減少する。
【0018】
ウェットワイパーのアクリル板に対する静摩擦係数と動摩擦係数との比(静摩擦係数/動摩擦係数)は、好ましくは0.80〜1.5であり、より好ましくは0.85〜1.3であり、さらに好ましくは0.90〜1.1である。比(静摩擦係数/動摩擦係数)が0.80以上であることにより、払拭時の掻き取り性能がより向上する傾向にある。また、比(静摩擦係数/動摩擦係数)が1.5以下であることにより、払拭時の作業性がより向上する傾向にある。
【0019】
〔布帛〕
布帛を構成する繊維としては、特に限定されないが、例えば、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、無機繊維が挙げられる。布帛を構成する繊維は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
天然繊維としては、特に限定されないが、例えば、綿、亜麻、パルプ等のセルロース系繊維、キチン、キトサン、羊毛、絹などが挙げられる。このなかでも、パルプ、綿等のセルロース系繊維が好ましい。パルプ、綿等のセルロース系繊維を用いることにより、払拭時の掻き取り性能及び掻き取った汚れを取りこんで離さない(再汚染防止)性能がより向上する傾向にある。
【0021】
合成繊維としては、特に限定されないが、例えば、ビニロン、ビニリデン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル;線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン46等のポリアミド;ポリアクリロニトリル等のアクリル繊維;ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アラミド、ベンゾエート、ポリクラール、ノボロイド、ポリフルオロエチレン等が挙げられる。このなかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステルが好ましい。ポリエステルを用いることにより、布帛の強度がより向上する傾向にある。
【0022】
複合繊維の場合にはポリエチレンテレフタレートと、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリアミド繊維と、の組み合わせなどが挙げられる。本実施形態においては、通気性があり、柔軟性を持たせることができるので、ポリエステル繊維が好ましい。
【0023】
半合成繊維としては、特に限定されないが、例えば、アセテート、トリアセテート、プロミックス等が挙げられる。
【0024】
再生繊維としては、特に限定されないが、例えば、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセル等が挙げられる。
【0025】
無機繊維としては、特に限定はされないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。
【0026】
このなかでも、布帛が、天然繊維と合成繊維とを含むことが好ましい。天然繊維と合成繊維とを含むことにより、布帛の引張強度を維持しながら汚れの掻き取り性能に優れ、掻き取った汚れを取りこんで離さない(再汚染防止)性能がより向上する傾向にある。
【0027】
天然繊維の含有量は、布帛100質量%に対して、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは30〜70質量%であり、さらに好ましくは40〜60質量%である。天然繊維の含有量が20質量%以上であることにより、汚れの掻き取り性能がより向上する傾向にある。また、天然繊維の含有量が80質量%以下であることにより、払拭時の作業性がより向上する傾向にある。
【0028】
合成繊維の含有量は、布帛100質量%に対して、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは30〜70質量%であり、さらに好ましくは40〜60質量%である。合成繊維の含有量が20質量%以上であることにより、ウェットワイパーの強度がより向上する傾向にある。また、合成繊維の含有量が80質量%以下であることにより、払拭時の除菌液の放出がゆるやかになり払拭できる面積が増える傾向にある。
【0029】
布帛の表面に存在する天然繊維は、好ましくは5〜30面積%であり、より好ましくは10〜25面積%であり、さらに好ましくは12〜20面積%である。布帛の表面に存在する天然繊維が5面積%以上であることにより、汚れの掻き取り性能がより向上する傾向にある。また、布帛の表面に存在する天然繊維が30面積%以下であることにより、払拭時の作業性がより向上する傾向にある。なお、布帛の表面に存在する天然繊維の割合は実施例に記載の方法により測定することができる。また、布帛の表面に存在する天然繊維の割合は、スパンレース製法によって不織布とする場合、交絡中の水圧を低くすることや、交絡後の水絞りをきつくすることにより増大し、交絡中の水圧を高くすることにより減少する。
【0030】
布帛の種類としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、編物などが挙げられる。このなかでも、吸水性、柔軟性、及び透湿性の観点から、不織布が好ましい。
【0031】
布帛の形態としては、布帛をシート状に裁断し、Z折をして重ねて、除菌液を含浸させピロー包装したものや布帛をロール状に巻き、除菌液を含浸させたボトル仕様のものが挙げられる。このなかでも、布帛をロール状に巻いた形態のものが好ましい。
【0032】
布帛の密度は、好ましくは0.10〜0.30g/cm
3であり、より好ましくは0.12〜0.25g/cm
3であり、さらに好ましくは0.15〜0.23g/cm
3である。布帛の密度が0.10g/cm
3以上であることにより、汚れの掻き取り性能がより向上する傾向にある。また、布帛の密度が0.30g/cm
3以下であることにより、ウェットワイパーが固くならず払拭時の作業性がより向上する傾向にある。布帛の密度は、例えばスパンレース製法の場合、交絡後の圧搾ロールの圧力を調節することで調節可能である。布帛の密度を0.10〜0.30g/cm
3に調節することで布帛表面の天然繊維の存在量を調節することが可能であり、汚れの掻き取り性能、再汚染防止性能、払拭時の作業性のバランスがより向上する傾向にある。
【0033】
〔除菌液〕
除菌液としては、特に限定されないが、例えば、清浄、殺菌、静菌、消毒、及び除菌等の作用を有する成分(以下、単に「有効成分」ともいう。)を含む溶液が挙げられる。
【0034】
(有効成分)
有効成分としては、特に限定されないが、例えば、第四級アンモニウム塩;2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル、又は2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジブロモ−ジフェニルエーテル等のようなハロゲン化ジフェニルエーテル;フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシイソプロパノール、パラクロロ−メタ−キシレノール(PCMX)等のようなフェノール化合物;2,2’−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2’−メチレンビス(3,4,6−トリクロロフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−クロロ−6−ブロモフェノール)、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルフィド、又はビス(2−ヒドロキシ−5−クロロベンジル)スルフィド等のようなビスフェニル化合物;3,4,4’−トリクロロカルバニリド等のようなハロゲン化カルバニリド;ベンジルアルコール;クロルヘキシジン;グルコン酸クロルヘキシジン;塩酸クロルヘキシジンが挙げられる。有効成分は、ウェットワイパーの用途に応じて適宜選択することができ、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
このなかでも、除菌液は、第四級アンモニウム塩を少なくとも含むことが好ましい。第四級アンモニウム塩は、下記(1)で表されるような四級アンモニウム塩構造を分子内に有していれば、特に限定されるものではないが、例えば、塩化ベンザルコニウム等のハロゲン化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等のハロゲン化ベンゼトニウム;塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩;オクチルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、及びセチルトリメチルアンモニウム塩等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、各々独立して、アルキル基、(CH
2CH
2O)
mH(mは、2〜40の整数を示す)、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基を表し、R
1、R
2、R
3、及びR
4の2つが結合して複素環構造を形成していてもよく、Xは、各々独立して、1価又は2価の陰イオンを表し、nは、1又は2の整数を表す。)
【0036】
このなかでも、殺菌性能の観点から、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩が好ましく、炭素数が8〜18のアルキル基を有するアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩がより好ましく、ラウリルベンジルジメチルアンモニウム塩がさらに好ましい。このような第四級アンモニウム塩は、殺菌効果が高く、また、揮発等による殺菌効果の低下が少ないため、長期間に渡り殺菌効果を持続することができる。
【0037】
第四級アンモニウム塩としては、特に限定されないが、具体的には、下記式(2)、(3)、(4)、及び(5)で示されるが挙げられる。
[R(CH
3)
3N
+]
nX ・・式(2)
[R(CH
3)N
+(CH
2CH
2O)
m'H[(CH
2CH
2O)
m''H]]
nX・・式(3)
[R(CH
3)
2N
+CH
2C
6H
5]
nX ・・式(4)
[RPy
+]
nX ・・式(5)
(式(2)、(3)、(4)、及び(5)中、Rは、各々独立して、アルキル基を表し、Xは、各々独立して、1価又は2価の陰イオンを表し、m’及びm’’は、2〜40の整数を示し、n又は2の整数を表す。また、Pyはピリジンの略である。)
【0038】
Rで表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは8〜18であり、より好ましくは10〜16であり、さらに好ましくは12〜14である。より具体的には、オクチル基、ラウリル基、ミリスチル基、及びセチル基が好ましく、ラウリル基がより好ましい。Rで表されるアルキル基の炭素数が8以上であることにより、除菌液の殺菌力がより向上する傾向にある。また、Rで表されるアルキル基の炭素数が18以下であることにより、有効成分の溶解性がより向上し、有効成分の含有量をより向上させることが可能となるため、ウェットワイパーの殺菌力がより向上する傾向にある。
【0039】
Xで表される陰イオンとしては、特に限定されないが、例えば、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、NO
-、及びSO
42-などが挙げられる。これらのなかでも、電気陰性度が高いCl
-が好ましい。
【0040】
有効成分の含有量は、除菌液100質量%に対して、好ましくは0.010〜30質量%であり、より好ましくは0.10〜5.0質量%であり、さらに好ましくは0.10〜1.0質量%である。有効成分の含有量が0.010質量%以上であることにより、殺菌性能がより向上する傾向にある。また、有効成分の含有量が30質量%以下であることにより、皮膚刺激性がより抑制される傾向にある。
【0041】
(溶媒)
除菌液は、溶媒を含む。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水及び/又は非水溶媒が挙げられる。非水溶媒を用いることにより、有効成分又はその他の成分の溶解性がより向上する傾向にある。
【0042】
非水溶媒としては、特に限定されないが、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、及びジプロピレングリコール等のグリコール類;エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノール等のアルコール類;トリグリセリド、エチルアセテート、アセトン、トリアセチン、及びこれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0043】
溶媒の量は、除菌液の総量100質量%に対して、好ましくは99.99〜70質量%であり、より好ましくは99.9〜95質量%であり、さらに好ましくは99.9〜99質量%である。溶媒の量が70質量%以上であることにより、有効成分の布帛への含浸性能がより向上する傾向にある。また、溶媒の量が99.99質量%以下であることにより、有効成分を効率よくウェットワイパーから放出することができ殺菌性能がより向上する傾向にある。
【0044】
非水溶媒の量は、除菌液の総量100質量%に対して、好ましくは1.0〜80質量%であり、より好ましくは1.0〜30質量%であり、さらに好ましくは1.0〜5.0質量%である。溶媒の量が1質量%以上であることにより、有効成分の布帛への含浸性能がより向上する傾向にある。また、溶媒の量が80質量%以下であることにより、掻き取った汚れを取りこんで離さない(再汚染防止)性能がより向上する傾向にある。
【0045】
(その他の成分)
除菌液は、界面活性剤、低級アルコール、キレート剤、防腐剤、着色料、香料、及び安定剤などを含んでもよい。
【0046】
界面活性剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び両性界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
ノニオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル類;モノオレイン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、デカオレイン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類;モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類;ショ糖ラウリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油類;ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル等のポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール類;モノステアリン酸エチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ステアリルジメチルアミンオキシド等のアルキルジメチルアミンオキシド類などが挙げられる。
【0048】
アニオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類;ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩類;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等のリン酸塩類;N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム等のN−アシルアミノ塩酸類;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩類;ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム等のN−アシルタウリン塩類;テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類;ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなどが挙げられる。
【0049】
低級アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜4の水溶性アルコール類が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール、メトキシイソプロパノール等のモノオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、メチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、ブチンジオール等のジオール類;グリセリン、ブタントリオール、エリスリトール等のポリオール類などが挙げられる。低級アルコールは、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0050】
キレート剤は、金属捕獲作用があれば特に限定されないが、例えば、コンプレキサン、アラニン、エチレンジアミンヒドロキシエチル3酢酸3ナトリウム、エデト酸、エデト酸2ナトリウム、エデト酸2ナトリウムカルシウム、エデト酸3ナトリウム、エデト酸4ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、フィチン酸、ポリリン酸ナトリウム、及びメタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。この中でも、アラニン、エデト酸2ナトリウム、エデト酸2ナトリウムカルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、ポリリン酸ナトリウム、及びメタリン酸ナトリウムが好ましい。キレート剤は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
防腐剤は、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ウンデレン酸、サリチル酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル類及びその塩等の有機酸及びその誘導体;イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、クレゾール、クロロチモール、クロロフェネシン、クロロクレゾール、ジクロロキシレノール、ジクロロベンジルアルコール、チオビスクロロフェノール、チモール、トリクロロカルバニリド、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、ナトリウムフェノキシド、パラクロロフェノール、ハロカルバン、フェニルエチルアルコール、フェニルフェノール、フェニルフェノールナトリウム、フェノキシエタノール、フェノール、フェキサクロロフェン、ベンジルアルコール等のフェノール類;プラトニン、ピオニン、ルミネキス、感光素NK143等の感光素;茶エキス、ヒノキキチオール、リンゴエキス、ポリリジン等の抗菌活性を持つ植物抽出液;グルタラール、クロラミンT、クロルヘキシジン、ジイセチオン酸ジプロモプロパミジン、ジンクピリチオン、トリクロサン、ピリチオンNa、フルフラール、クロラミンTなどが挙げられる。防腐剤は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
ウェットワイパー中の除菌液の含有量は、布帛100質量部に対して、好ましくは50質量部以上であり、より好ましくは100質量部以上であり、さらに好ましくは160質量部以上である。ウェットワイパー中の除菌液の含有量が50質量部以上であることにより、殺菌効果がより向上する傾向にある。また、ウェットワイパー中の除菌液の含有量は、布帛1質量部に対して、好ましくは350質量部以下であり、より好ましくは300質量部以下であり、さらに好ましくは250質量部以下である。ウェットワイパー中の除菌液の含有量が350質量部以下であることにより、清拭後の拭き残りが減少し、布帛を触った際のぬめり感がより抑制される傾向にある。除菌液の含有量は少ない方が、掻き取った汚れを放出しにくく再汚染の観点から好ましい。しかし、除菌液の含有量が少なすぎると払拭時に放出される除菌液量が少なくなるため、汚れを拭き取ることができない。特に摩擦係数が所定値以上であることで払拭時のウェットワイパーと被払拭物の密着度が向上し、除菌液の放出と再吸収を効率的に行うことができ払拭性と再汚染防止とのバランスが優れる傾向にある。
【0053】
布帛に均一に除菌液が含浸されていることが好ましい。布帛に均一に除菌液が含浸されていることを示す指標として、布帛に対する第四級アンモニウム塩の吸着溶解率が挙げられる。「吸着溶解率」とは、除菌液を含浸させた布帛を水に浸漬させた時に、水に溶解した第四級アンモニウム塩の質量を算出し、布帛質量との比率として求めたものである。
【0054】
吸着溶解率は、布帛全体で均一に、好ましくは0.50質量%以上5.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上3.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上2.0質量%以下である。「布帛全体で均一に0.50質量%以上5.0質量%以下」とは、布帛の任意の部分において、吸着溶解率が0.50質量%以上5.0質量%以下であることを意味する。吸着溶解率が布帛全体で均一に0.50質量%以上であることにより、防かび性がより向上する傾向にある。
【0055】
吸着溶解率の最大/最小比率は、好ましくは1.0以上5.0以下であり、より好ましくは1.0以上3.0以下であり、さらに好ましくは1.0以上2.0以下である。「吸着溶解率の最大/最小比率」とは、吸着溶解率の最大値と最小値の比率を意味する。吸着溶解率の最大/最小比率が5.0以下であることにより、除菌液の含浸量がより均一となる。
【0056】
〔ウェットワイパーの製造方法〕
ウェットワイパーの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、布帛を製造する布帛製造工程と、得られた布帛に除菌液を含浸させる含浸工程とを有する方法が挙げられる。
【0057】
〔布帛製造工程〕
布帛製造工程は、布帛を製造する工程であり、布帛の種類に応じて公知の方法を用いることができる。例えば、布帛として不織布を用いる場合の製造方式には、ウェブ形成と繊維間接着の2工程がある。
【0058】
ウェブ形成工程は、天然繊維及び合成繊維等をシート状に並べる工程であり、繊維の配列状態によって工程の具体的態様が異なる。繊維の配列状態には、繊維が縦方向に配列されているパラレルウェブ、パラレルのウェブをクロスに重ねたクロスウェブ、繊維の方向性のないランダムウェブがある。縦方向と横方向の強度が共に強くなりリントの発生が抑えられる点で、クロスウェブまたはランダムウェブが好ましい。クロスウェブを形成するウェブ形成工程を、特にクロスレイと呼ぶ。
【0059】
繊維間接着工程は、ウェブ形成工程において並べた繊維を接着剤で接着したり、繊維の一部に熱を加えて溶融接着したり、ニードルや高圧水流で繊維を絡ませて固定する工程である。繊維間接着方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂接着、熱ロールを用いる熱接着、ニードルを使用するニードルパンチ、高圧のごく細い水流で叩いて繊維を絡ませて布地を作るスパンレース、ステッチボンド、パウダー接着、溶剤接着等の製法を用いることができる。この中でも、スパンレースが、水流によってリントの発生源となる微細な繊維片を除去することができる点から好ましい。
【0060】
〔含浸工程〕
含浸工程は、布帛に除菌液を含浸させる工程である。除菌液の含浸方法としては、除菌液が、特に限定されないが、例えば、ボトル容器にロール状に巻き取られた布帛を、ロール面(円形状になっている面をいう。)がボトル容器の底部に接するように入れ、ロール状に巻き取られた布帛の上方ロール面側より除菌液を投入することにより含浸させる方法;布帛に除菌液を含浸させて、除菌液における溶媒を必要に応じて蒸留などにより一部留去する方法;布帛に除菌液を含浸させて、除菌液における溶媒を必要に応じて蒸留などにより一部留去し、次いで、水を含浸させる方法が挙げられる。なお、留去される溶媒は、ウェットワイパーに残存していてもよい。
【0061】
布帛の全面に均一に含浸されることがより好ましい。「布帛に均一に含浸される」とは布帛表面に除菌液が偏らずに存在することを意味する。布帛に均一に除菌液が含浸されることにより局部的なかびの発生を防止することができる。
【0062】
〔用途〕
本実施形態のウェットワイパーは、種々の払拭対象、被払拭物に用いることができる。
【0063】
払拭対象としては、特に限定されないが、例えば、血液、体液、細菌、真菌(カビを含む)、ウィルス、その他生体物質が挙げられる。本実施形態のウェットワイパーは、血液等の固着物、粘着物を拭き取ることができかつ、被払拭物の再汚染を抑制することができる。
【0064】
被払拭物としては、特に限定されないが、例えば、病院のドアノブ、手すり、ベッド、手術台、モニターのタッチパネル等の器具類;シリンジポンプ、輸液ポンプ、人工透析装置、人工呼吸器等のME機器類;食品工場のベルトコンベア、作業台、ステンレス容器、冷蔵庫、調理器具等の作業用品類;洗面台、便座、家具等の住宅用品類;介護用施設の器具類;さらには人体が挙げられる。
【0065】
このなかでも、本実施形態のウェットワイパーは、医療用であることが好ましい。「医療用」とは、例えば、病院のドアノブ、手すり、ベッド、手術台、モニターのタッチパネル等の器具類;シリンジポンプ、輸液ポンプ、人工透析装置、人工呼吸器等のME機器類;介護用施設の器具類等に使用されるものをいう。医療用途においては、極めて高い清浄性が要求される。本実施形態のウェットワイパーは、払拭後において、布帛の繊維等による被払拭物表面の再汚染を抑制することができる。
【実施例】
【0066】
以下、本実施形態を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本実施形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施形態で用いられる評価方法及び測定方法は下記のとおりである。
【0067】
<静摩擦係数及び動摩擦係数の測定方法>
JIS k 7125に準じて静摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。測定条件は以下の通りとした。なお、サンプルのウェットワイパーは、ウェットの状態のまま測定した。
相手材料 :アクリル板
すべり片全質量 :200g
すべり片面積(接触面積):40cm
2
試験速度 :100mm/min
【0068】
<布帛表面の天然繊維の面積%の測定方法>
布帛断面を走査型電子顕微鏡で撮影し、表面から10μmの深さまでに写る天然繊維を、画像解析にて空隙から分離し、天然繊維の面積%を算出した。
【0069】
<布帛の密度の測定方法>
布帛の目付量(1m
2あたりの質量(g))を測定した。次に布帛の厚み(mm)をダイヤルシックネスゲージにて測定し、下記の式にて布帛の密度を算出した。
布帛の密度(g/cm
3)=(目付量/布帛の厚み)/1000
【0070】
<再汚染防止性能の評価方法>
白色のほうろうバットに牛の凍結乾燥血液を水に溶かした20%水溶液0.5mLを塗布し、5cm×10cmに塗り広げた。6時間25℃にて乾燥した後、16g/cm
2の荷重かけてワイパーで5往復払拭を行った。払拭後、ほうろうバット上に残る血液の拭き残り状況を目視にて観察し、下記評価基準に基づいて再汚染防止性能を評価した。
◎:バットに血液がほとんど拭き残っていない。
○:バットに血液が僅かに拭き残っている。
△:バットに血液が少し拭き残っている。
×:バットに血液がかなり拭き残っている。
【0071】
<ワイパー払拭時の作業性の評価方法>
テーブルマット(ガラス板)をワイパーで払拭する時の作業性についてパネラー10人で下記評価基準により評価をし、○とした人数を作業性の指標とした。
○:ワイパーがテーブルマットに引っかかることなく払拭できる。(良好)
×:ワイパーがテーブルマットに引っかかり払拭が困難である。
【0072】
<吸着溶解率の測定方法>
ボトル容器の上方部から底部までの4ヶ所からそれぞれ試験片を切り取り、水中に30分間浸漬させ、第四級アンモニウム塩を抽出した。その後に、水中に溶解した第四級アンモニウム塩の濃度を高速液体クロマトグラフにて定量した。得られた濃度に基づいて、吸着溶解率を下記計算式より求めた。
(装置構成)
UV検出器:SPD−6AV 検出波長 256nm 島津製作所製
カラム :ODSカラム(CAPCELL PAK UG80型 資生堂製)
移動相 :アセトニトリルと1.3%過塩素酸ナトリウム水溶液の混合物(混合比55/45)
[計算式]
吸着溶解率(%)=試験片中から水に抽出された第四級アンモニウム塩の質量(W1)/試験片不織布の質量(W2)×100
W1=試験片の抽出水溶液中の第四級アンモニウム塩の濃度(質量%)×{抽出水の質量(W4)+試験片不織布中の水の質量(W3)}
【0073】
<吸着溶解率の最大/最小比率>
ロール外側、ロール中央、ロール内側のシートよりそれぞれ上方部から底部までの4ヶ所の試験片における吸着溶解率の最大値と最小値から、各シートにおける吸着溶解率の最大/最小比率を求めた。
ここで、ロール巻き数をn枚とした場合に、ロール外側とは、外側から数えて1枚目を意味し、ロール中央とは、n/2枚目を意味し、ロール内側とは、n枚目のロール巻きの最中心のシートを意味する。
【0074】
<除菌液の調製>
有効成分として50質量%ラウリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド水溶液1.5質量部と精製水98.5質量部をステンレス容器に投入し、15分間、300rpmで撹拌を行い、0.75質量%除菌液を調製した。
【0075】
[実施例1]
目付量55g/m
2のクロスレイ−スパンレース製法で製造した不織布(組成比 ウッドパルプ/ポリエステル=60/40)の表面の天然繊維の面積%と密度を測定した。また、不織布を幅15cmのシート状に裁断し、長さ方向に18cmごとにミシン目を入れて90枚のロール巻きとした。ロール状に巻き取られた不織布をボトル容器にロール状の面が接するように配置し、このロール巻きの質量に対して2.5倍量の除菌液を上方ロール面側から含浸させてウェットワイパーを製造した。
【0076】
ボトル容器に蓋をして、14日間放置後、不織布を取り出して静摩擦係数、動摩擦係数、再汚染防止性能の評価をおこなった。また、別のロールでロール外側(1枚目)、ロール中央(45枚目)、ロール内側(90枚目)より各試験片を切り取り、それぞれの吸着溶解率を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
[実施例2、参考例3、実施例4
、参考例5〜6]
表1に示す繊維構成の不織布ロールを使用した以外は実施例1と同様にしてウェットワイパーを製造し、実施例1と同様に評価を実施した。結果を表1に示す。
【0078】
[比較例1、2]
表1に示す目付量54g/m
2の不織布(組成比 ウッドパルプ/ポリエステル=55
/45)(比較例1)、目付量45g/m
2のレーヨン系不織布(組成比 レーヨン=1
00)(比較例2)を用いた以外は、実施例1と同様にしてウェットワイパーを製造し、
実施例1と同様に評価を実施した。結果を表1に示す。
【表1】