(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
マットレス、敷ふとん、敷パッドなどの寝具に用いられる合成樹脂発泡体からなるクッション体は、その嵩高い構造から、保管スペースや輸送上で問題になることがある。
本願出願人は、先に、多孔質帯状弾性シート(1)を、巻取軸(3)と剛体(4)とで挟持・圧縮させながら、該巻取軸(3)に巻き取ることで略円柱状体とし、限られた場所での保管や輸送を可能とし、取扱性を向上する方法を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
また、近年、合成樹脂発泡体からなるクッション体を梱包するに際し、
図1に示すような圧縮巻取り装置10が多用されてきている。
図1は、従来公知の圧縮巻取り装置10の一例を模式的に説明するための図であり、装置10は、少なくとも、搬送ベルト60、少なくとも1対(図中では1対)の圧縮ロール40,40、概略円筒状体501の外周面を構成するように、その母線方向に沿って間隔をあけて配設された複数本(図中では8本)の送りロール50,50,…50を有する。
【0004】
従来、このような圧縮巻取り装置10では、
まず、クッション体2は、搬送ベルト60上に載せられ、圧縮ロール40,40間で圧縮された後、
送りロール50,50,…50で構成された概略円筒状体501の内部空間sに圧縮されたまま挿入され、そこで、各送りロール50の矢印の方向(図中では反時計回り)への回転に伴い、該回転とは逆回りに巻回し、渦巻状に巻き取られるものであり、
通常、その渦巻状体が緩まないうちに、袋(不図示)に梱包されている。
【0005】
ところが、上記のような装置10では、クッション体2が、合成樹脂発泡体からなるクッション体の場合には、円滑に巻回せず、送りロール50と送りロール50との間に挟まってしまうことがあった。この現象は、軟質ポリウレタンフォームのように柔軟性があり、滑性の小さい合成樹脂発泡体に多く見られ、さらに、低反発弾性の発泡体の場合、より発生しやすいものであった。
送りロール50と送りロール50との間隔は固定されていることが多く、一度挟まってしまったクッション体は、圧縮された状態で詰まるため、クッション体を切らないと送りロール間から外すことができないケースが多い。また、挟まれたままのクッション体の千切れ片を完全に除去するのに大きな労力を要し、作業性の面で問題があった。
【0006】
他方、合成樹脂発泡体からなるクッション体は、袋詰めされると、発泡体の製造時に添加された触媒などに起因する臭気が袋内に留まりやすく、袋を開封したエンドユーザー(消費者)等に強い不快感を抱かせる問題もあった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の圧縮梱包方法は、
i)合成樹脂発泡体からなるクッション体(以下、単に「クッション体」とも言う)の片面又は両面を不織布製シートで覆った状態のまま圧縮した後、
ii)この圧縮体を、複数本の送りロールが母線方向に間隔をあけて配設されて構成された概略円筒状体の内部空間に移送し、該複数本の送りロールの回転により巻回させることで渦巻状に巻き取り、次いで、
iii)その渦巻状のまま、該内部空間の一方の開口端に設置された筒部材の外側端部にセットされた袋に梱包する方法である。
上記i)の圧縮やii)の巻き取りについては、例えば、前述の
図1に例示するような従来公知の圧縮巻取り装置10を用いて行えばよいが、本発明では、例えば、
図2,3に示すように、クッション体2の片面又は両面を、後述するような特定の不織布製シート3で覆ってから圧縮する。
【0013】
図2は、本発明の方法において、クッション体2の両面を、2枚の不織布製シート3,3で覆う一例を説明する概略斜視図である。
図中、符号xはクッション体2の幅、符号yは同長さ、符号zは同高さ(厚み)を、それぞれ示す。
【0014】
i)圧縮
本発明の方法では、前述の従来方法、すなわち、
図1中の搬送ベルト60の上に、クッション体2をそのまま載置する方法と異なり、例えば、
図2に示すようにクッション体2の片面又は両面を(
図2中では両面)不織布製シート3で覆った状態のまま、搬送ベルト60上に載置し、1ないし複数対の圧縮ロール40,40で圧縮する。
【0015】
本発明では、
図3(A)に示すように、片面を1枚の不織布製シート3で覆ったクッション体2を、長さy方向に沿って該シート3ごと2つ折りにしてから、前記搬送ベルト60上に載置することもできる。
図3(A)は、クッション体2を1枚の不織布製シート3の上に置き、幅x方向の中央位置で該シート3ごとクッション体2を2つ折りにすることで、クッション体2の両面を該シート3で覆う状態の他の例を示しているが、2つ折りにしたクッション体2の片面(
図3(B)参照)又は両面(
図3(C)参照)を不織布製シート3で覆ったものを、搬送ベルト60上に載置してもよい。
さらに、本発明では、クッション体の物性によっては、クッション体2を、内3つ折りや外3つ折りにして、その片面又は両面を1ないし2枚の不織布製シートで覆うこともできる。
中でも、
図3(A)に示すような1枚の不織布製シート3で、クッション体2の両面を覆った状態が、作業性の面、巻き取り後のサイズの面などから好ましい。
【0016】
ii)巻き取り
次に、不織布製シート3で片面又は両面を覆われたまま圧縮されたクッション体2を、
図1に示したような概略円筒状体501の内部空間sに挿入し、複数本の送りロール50,50,…50を回転させることで、それら回転とは逆方向に巻回させ、
図4に示すような渦巻状に巻き取る。以下、この不織布製シート3と共に渦巻状に巻き取られた態様を「略円柱状体7」と称することがある。
なお、
図1では、図示していないが、各送りロール50の表面に、
図5に示すような爪状の突起81を少なくとも1つ設けることで(
図5では2つ)、クッション体2の追従性や巻回性を高めてもよい。
【0017】
このように、本発明では、クッション体2が、合成樹脂発泡体であっても、不織布製シート3で片面又は両面を覆われたまま、渦巻状に巻き取る工程に入るので、この不織布の滑り性により、送りロール50への追従性が十分に得られる。この結果、圧縮後のクッション体2は、概略円筒状体501の内部空間s内にて良好に巻回するので、これら送りロール50同士の間に挟まることがない。
【0018】
図4は、本発明の方法において、i)圧縮、ii)巻き取り後の略円柱状体7の一例を説明する概略斜視図であり、図中、符号dは略円柱状体7の直径、符号hは同高さを、それぞれ示す。
高さhは、通常、クッション体2の幅xとほぼ等しくなるが、例えば、
図3(A)〜(C)に示すように2つ折りにしてから圧縮する場合には、約x/2となる。
【0019】
iii)梱包
本発明では、
図4に示すような渦巻状のまま袋(
図4では、非図示)に梱包する。梱包後の袋の口は、渦巻状体の緩みを防止する点、衛生面などから、熱ラミネートなどにより密封することが好ましい。
図1では、図示していないが、圧縮巻取り装置10は、巻き取り後の略円柱状体7を内部空間sから押し出すためのピストン部材や、該ピストン部材により押し出された略円柱状体7を受け止める筒部材(
図6中、点線で示した符号51)を有している。
図6に示すように、上記の梱包用の袋71は、この筒部材51の外側端部に、袋71の開口部をセットする。
なお、筒部材51および袋71の径を変えることで、渦巻状の略円柱状体7の径dをさらに圧縮することもできる。
【0020】
このように、本発明では、まず、前記したような圧縮の際に、合成樹脂発泡体の気泡内部に留まっている臭気を押し出すことができるので、袋71に梱包する際には、ある程度の臭気が抜けた状態とすることができる。
さらに、クッション体2は、特定の不織布製シート3で覆われたまま袋71に梱包されるので、残留する臭気を、袋71内で保管ないし輸送される間に、不織布製シート3に吸着させることでき、この結果、袋71を開封したエンドユーザー等に不快感を抱かせる問題をも回避できる。
【0021】
以上のようにして得られた略円柱状体7のサイズは、特に限定されないが、圧縮率≪「(圧縮前のクッション体2の体積)−(袋71への梱包後の略円柱状体7の体積)」/「圧縮前のクッション体2の体積」≫が50〜80%となるサイズが好ましく、より好ましくは、袋71への梱包後の直径dが200〜450mm程度、高さhが400〜2000mm程度である。
【0022】
<不織布製シート>
以上のようなシート3をなす不織布は、合成繊維のモノフィラメントまたはマルチフィラメントからなり、かつ、目付量が10〜30g/m
2のものを用いる。また、不織布厚みとしては、0.05〜0.40mm程度が好ましい。
目付量が小さすぎると、強度不足となり、巻き取り途中で破れてしまうことがある。また、目付量が大きすぎると、コシ(不織布自体の形状記憶性)が強く、梱包作業性が低下してクッション体を良好に覆うことができないうえ、輸送時の軽量化の点からも好ましくない。
【0023】
合成繊維のモノフィラメント(単繊維からなる構造)またはマルチフィラメント(数十本の単繊維を撚り合わせた構造)としては、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどが挙げられ、中でも、強度、コスト等の面で、ポリプロピレンが好ましい。
シート3をなす不織布として、綿などの天然繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維を用いた場合には、強度が低く、巻き取り途中で破れてしまうことがある。
【0024】
不織布製シート3の幅と長さは、i)圧縮やii)巻き取り時に生じるクッション体2とのズレを補うことができるサイズが好ましく、具体的には、クッション体2の幅x(
図3(B),(C)に示す例では、約x/2)と長さyより、それぞれ1〜6cm程度大きいサイズとすればよい。
【0025】
このような不織布のJIS L1913に準拠する引張強さは、タテ(MD)が30N/5cm以上、ヨコ(CD)が10N/5cm以上であり、伸び率は、タテ(MD)が25%以上、ヨコ(CD)が20%以上の各範囲であると、送りロールの回転に対する追従性がより一層良好となり、巻き取り途中で破れることがなくなるので、好ましい。
【0026】
なお、シート3が、不織布でなく、例えば合成樹脂フィルムからなる場合、巻き取り工程において、クッション体との摩擦抵抗が低すぎて、該フィルムのみが送りロールの回転に追従し巻回し、フィルムの材質によっては、強度が低く、巻き取り途中で破れてしまうことがある。
あるいは、シート3が、織布や編布からなる場合は、裁断時にホツレが生じやすいうえ、引っ張られる方向によっては強度が低い場合がある。
【0027】
本発明では、上記したような構成(モノフィラメント、マルチフィラメント、目付量など)、素材、物性(引張強さ、伸び率など)の不織布であれば、良好な消臭効果を有するが、より良好な消臭機能を付与することもできる。
消臭機能の付与については、合成樹脂発泡体の消臭効果が得られれば消臭剤の種類は限定されず、例えば、活性炭、シリカゲル、カテキンなどが挙げられ、これらの消臭剤を不織布へ付与する方法も特に限定されず、例えば、塗布、噴霧、抄き込み、含浸などが採用できる。
【0028】
また、
図2,
図3(C)に示すように、2枚の不織布製シート3,3を用いる場合には、各不織布製シートは、構成、素材、物性、消臭機能などにおいて、同一でも異なっていてもよい。
【0029】
<クッション体>
マットレス、敷ふとん、敷パッドなどの寝具に用いられる合成樹脂発泡体からなるクッション体であれば、素材やサイズについては、特に限定されない。素材としては、例えば、軟質ポリウレタンフォーム、軟質ポリエチレンフォーム等が挙げられる。
本発明の圧縮梱包方法は、特に、軟質ポリウレタンフォームのように柔軟性があり、滑性の少ない合成樹脂発泡体に好ましく利用できる。
上記軟質ポリウレタンフォームとしては、低密度、高密度、高反発弾性、低反発弾性のポリウレタンフォーム等があり、中でも、低反発弾性ポリウレタンフォームに好ましく適用され得る。
【0030】
<袋>
図4に示すような略円柱状体7を梱包するための、
図6に示すような袋71については、特に限定されず、例えば、厚みが0.05〜0.10mm程度のポリオレフィンフィルムを好適に用いることができる。
上記ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【実施例】
【0031】
[シートの種類と巻き取り性の検討]
実施例1〜4、比較例1〜7、参考例1
図3(A)に示すように、幅xが970mm、長さyが1950mm、厚みzが50mmの低反発弾性ポリウレタンフォームからなるクッション体2を2つ折りにし、その両面を、それぞれ表1に示す実施例1〜4および比較例1〜7のシート(目付量は、全て14g/m
2)で覆い、その覆った状態のまま、
図1に示すような圧縮巻取り装置10にて、圧縮と巻き取りを行った。
なお、シートを使用しないものを参考例1とし、実施例1〜4の不織布は、全て合成繊維のマルチフィラメントからなる。
シートの種類に対する巻き取り性を検討した結果について、表1に併せて示す。
【0032】
【表1】
【0033】
[シートの目付量と巻き取り性の検討]
実施例5〜8、比較例8,9
ポリプロピレンの不織布の目付量を、表2に示すとおりに変更した以外は、実施例2と同様に、圧縮と巻き取りを行った。
シートの目付量に対する巻き取り性を検討した結果について、表2に併せて示す。
【0034】
【表2】
【0035】
また、実施例3のポリエステルの不織布、実施例4のポリウレタンの不織布においても、同様の検討を行ったところ、目付量に対する巻き取り性の検討結果は、表2と同様であった。
【0036】
[臭気についての検討]
○常温臭気試験
試験片を、ポリエステル製の臭気袋に入れ、常温(20±2℃)下、24時間経過後に、該臭気袋内の臭いについて、臭気判定士8名が、表3に示すような6段階臭気強度表示法に従って評価し、8名の平均値を臭気強度として算出する。
【0037】
【表3】
【0038】
実施例9
実施例2の圧縮、巻き取り後に得られた、
図4に示すような直径dが230mm、高さhが500mmの略円柱状体7を、厚み0.08mmのポリエチレンフィルム製の袋に梱包し、袋の口を熱ラミネートで封止した。
1ヶ月後に開梱し、クッション体2から150×100×10mmの試験片を採取し、上記のような常温臭気試験にて、臭気強度を評価したところ、結果は、0.9であった。
【0039】
比較例10
製造直後の低反発弾性ポリウレタンフォームからなるクッション体(幅xが970mm、長さyが1950mm、厚みzが50mm)の両面を、
図2に示すように、実施例2で用いた不織布製シート2枚で覆い、そのまま圧縮・巻き取りを行わず、厚み0.08mmのポリエチレンフィルム製の袋に梱包し、袋の口を熱ラミネートで封止した。
1ヶ月後に開梱し、実施例9と同様の常温臭気試験にて、臭気強度を評価したところ、結果は、1.8であった。
【0040】
比較例11
製造直後の低反発弾性ポリウレタンフォームからなるクッション体(幅xが970mm、長さyが1950mm、厚みzが50mm)を、そのまま圧縮・巻き取りを行わず、厚み0.08mmのポリエチレンフィルム製の袋に梱包し、袋の口を熱ラミネートで封止した。
1ヶ月後に開梱し、実施例9と同様の常温臭気試験にて、臭気強度を評価したところ、結果は、2.8であった。