(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱・搬入工程に代えて、前記真空乾燥室内に前記ワークを搬入するとともに該真空乾燥室内において所定温度に加熱する加熱工程を、前記高真空引き工程の前段階において実行することを特徴とする請求項1記載のアルミニウム材のろう付け方法。
前記ろう付け処理工程における所定の低真空領域は、3kPa〜68kPaの範囲内の気圧であることを特徴とする請求項1又は2記載の何れかのアルミニウム材のろう付け方法。
前記ろう付け処理工程において、前記ガス流入ボックスの上方から該ガス流入ボックス内に向かって流入される高純度不活性ガスとしてのアルゴンガスを流入させるとともに、該ろう付け室には前記高純度不活性ガスとしての窒素ガスを流入させ、上記窒素ガスとアルゴンガスとの流量比率は、5:4以上に該アルゴンガス流量が高いことを特徴とする請求項5記載のアルミニウム材のろう付け方法。
前記真空乾燥室内には、該真空乾燥室内に搬入されたワークの上方から前記高純度不活性ガスを分散して放出するとともに前記第1ガス導入管に接続された第1のガス放出ノズルが配置され、前記第1ガス排出手段は、上記ワークの下方から該真空乾燥室内の気体を排出する第1の排気管を備えてなり、
前記ろう付け室内には、該ろう付け室内に搬入されたワークの上方から前記高純度不活性ガスを分散して放出するとともに前記第2ガス導入管に接続された第2のガス放出ノズルが配置され、前記第2ガス排出手段は、上記ワークの下方から該ろう付け室内の気体を排出する第2の排気管を備えてなることを特徴とする請求項7又は8記載の何れかのアルミニウム材のろう付け処理装置。
前記第1のガス放出ノズルから放出される前記高純度不活性ガスは窒素ガスであり、前記第2のガス放出ノズルから放出される前記高純度不活性ガスはアルゴンガスであることを特徴とする請求項9記載のアルミニウム材のろう付け処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたろう付け方法では、ろう付けする際、すなわち、ろう材が溶融して母材と母材との間に至る際、上記母材等に含まれるMgやZnの蒸発量は少なくなく、製品に求められる強度や耐食性を満たさない。特に、軽量化を目的として薄肉化が進む自動車用熱交換器や放熱器等の機器の分野において、上記特許文献1に開示されたろう付け方法では、上記母材等に含まれたMg等の残留量が少なくなり、
要求される強度や耐食性を満たさない。また、上記特許文献2に開示されたろう付け方法では、加熱時の圧力を大気圧付近に設定することにより、真空炉が不要となるとの記載があるが、これにはろう材の流動性の観点から疑義があり、機械的強度に対する信頼性への不安を払拭できない。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来のろう付け方法がそれぞれ有する課題を解決するために提案されたものであって、フラックスを使用しないろう付け方法であって、母材やろう材に含有したMgやZnの蒸発を抑制することにより母材の強度や耐食性を維持することができると同時に、ろう材の流動性を高め機械的強度をも満足することができる新規なアルミニウム材のろう付け方法及びろう付け用処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明は、ろう付け処理装置内においてなされるアルミニウム材のろう付け方法であ
り、それぞれMg又はZnの少なくとも何れかを含有するアルミニウム合金を素材とする一方の母材と他方の母材とを、フラックスを使用することなく、Mg又はZnの少なくとも何れかが含有されてなるろう材により互いに接合するアルミニウム材(以下、上記一方の母材及び他方の母材と上記ろう材との組み合わせ体を、ワークと言う。)のろう付け方法であって、上記ろう付け処理装置は、間にシールドドアにより開閉される開口を介して互いに連通してなる真空乾燥室とろう付け室とを備えてなり、上記ワークを予め所定温度に加熱して真空乾燥室内に搬入する加熱・搬入工程と、上記加熱・搬入工程の後に、上記真空乾燥室内を高真空領域まで真空引きする高真空引き工程と、この高真空引き工程後に、99.999%以上の純度の高純度不活性ガスを上記真空乾燥室内に流入させながら、上記真空乾燥室内の気圧を低真空領域まで復圧させる復圧工程と、
を備えてなる真空乾燥工程と、上記真空乾燥工程中において、上記ろう付け室内の気圧を中真空領域まで真空引きし、その後に該ろう付け室内に上記高純度不活性ガスを流入させながら該ろう付け室の気体を排気することにより、該ろう付け室内の気圧を低真空領域の範囲内において復圧させるろう付け室準備工程と、
上記真空乾燥室における復圧工程と、上記ろう付け室準備工程後に、上記シールドドアの開閉中にワークをろう付け室内に搬送し、上記ろう付け室内に上記高純度不活性ガスを流入させるとともに該ろう付け室内の気体を排気しながら、該ろう付け室内を所定の低真空領域中で該ろう付け室の温度を上記ろう材の溶融温度まで昇温させることにより、上記ワークにろう付けを行うろう付け処理工程と、を備えてなり、上記ろう付け処理工程においては、上記ワークを、耐熱性素材により成形され上方が開放されてなるとともに底板には複数のガス排出用開口が形成されたガス流入ボックス内に配置し、又は、上記ワークを、上記複数のガス排出用開口が形成されたトレー上に配置するとともに、上方が開放された側板を備えたガス流入ボックスにより取り囲み、上記ガス流入ボックスの上方から前記高純度不活性ガスを、該ガス流入ボックス内に向かって分散させ該ガス流入ボックス内に万遍なく流入させるとともに、このガス流入ボックスの底板又はトレーに形成された複数のガス排出用開口の下側からろう付け室内の気体を外部に排気することを特徴とするものである。
【0009】
この第1の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法では、上記真空乾燥室において、真空乾燥工程が行われ、次いで、上記ろう付け室において、ろう付け室準備工程及びろう付け処理工程が行われる。そして、上記真空乾燥工程は、先ず、上記ワークを予め所定温度に加熱して真空乾燥室内に搬入する加熱・搬入工程が行われる。そして、上記所定温度に加熱されたワークが、真空乾燥室内に搬入されると、次いで、該真空乾燥室内を高真空領域まで真空引きする高真空引き工程がなされる。この高真空引き工程により、酸素分だけでなく上記ワークに付着した水分の蒸発も更に促進され、酸素分と共に蒸発した水分は真空乾燥室外に排気される。また、上記ろう付け室にて行われる上記ろう付け処理工程では、該ろう付け室内に上記高純度不活性ガスを流入させるとともに該ろう付け室内の気体を排気しながら、該ろう付け室内を所定の低真空領域中で該ろう付け室の温度を上記ろう材の溶融温度まで昇温させる。したがって、ろう付け室内は、上記高純度不活性ガスが大量に占める炉内雰囲気となり、こうした高純度不活性ガス雰囲気内において、上記ろう材は溶融し、上記ワークである一方の母材と他方の母材とがろう付けされる。また、この第1の発明では、前記高純度不活性ガスは、ワークが内部に配置された上記ガス流入ボックスの上方から該ガス流入ボックス内に万遍なく流入し、このガス流入ボックスの底板又はトレーに形成されたガス排出用開口を通過して真空乾燥室又はろう付け室内から外部に排出される。
【0010】
したがって、この第1の発明にアルミニウム材のろう付け方法よれば、上記真空乾燥室内で行われるろう付け準備工程により、該真空乾燥室内のワークや該真空乾燥室に存在する酸素分及び水分等の酸化促進成分は真空乾燥室外にほぼ完全に排出されるとともに、ろう付け処理工程においては、上記高純度不活性ガス雰囲気中において、上記低真空領域中で該ろう付け室の温度を上記ろう材の溶融温度まで昇温することから、ワークの表面に形成されている酸化被膜(Al2O3)は、ろう材にMgを含有している場合には、このMgと反応して酸化Mg(MgO)となりワークの表面から剥がれるために、該ろう材の流動性は促進され、上記酸化被膜(Al2O3)を間に介することなく直接各母材に付着することとなり、また、上記ろう付け処理工程においては、低真空領域中で行われることから、ワークやろう材に含まれたMgやZnの飛散量を格段に低減させることができ(後述する実施例参照)、上記母材の強度や耐食性を維持することができ、ひいては、上記ワークの機械的強度をも十分満足させることができる。また、この第1の発明によれば、上記真空乾燥室内又はろう付け室全体に高純度不活性ガスが拡散されてしまうことはなく、ワークを囲むガス流入ボックス内において高純度の状態を維持させることが可能となるとともに、使用する高純度不活性ガスの流量を抑制することが可能となり、ろう付け処理コストを低減することができる。加えて、この第1の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法によれば、真空乾燥室又はろう付け室内の酸素分及び水分等の酸化促進成分は、該真空乾燥室又はろう付け室内部で拡散することなく外部に効果的に排出することができることから、より一層ろう材の流動性を向上させることができ、該ろう材を介して強固にワークを接合することが可能となる。
【0011】
なお、上記真空乾燥室外でワークに行われる加熱は、例えば、電気ヒータ等を内部に備えた加熱装置を使用することができ、予めワークを加熱する加熱温度は、上記高真空引き工程において、真空準備室内に搬入されたワークに付着した水分が蒸発する温度以上であって摂氏150度以下であることが好ましい。なお、上記加熱温度が、摂氏150度を超える場合には、ワークが再酸化することとなることから好ましくない。また、上記ろう付け処理工程にて使用される高純度不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の何れか又は複数の高純度不活性ガスを混合して使用しても良い。
【0012】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け方法は、上記第1の発明において、前記加熱・搬入工程に代えて、前記真空乾燥室内に前記ワークを搬入するとともに該真空乾燥室内において所定温度に加熱する加熱工程を、前記高真空引き工程の前段階において実行することを特徴とするものである。
【0013】
すなわち、この発明に係るアルミニウム材のろう付け方法は、ワークを加熱するタイミングとして、上記第1の発明アルミニウム材のろう付け方法のように、真空可能室外にて予め加熱するものであっても、この第2の発明アルミニウム材のろう付け方法のように、真空乾燥室内ワークを搬入した後において加熱するものであっても良く、何れの方法であっても、母材やろう材に含有したMgやZnの蒸発を抑制することにより母材の強度や耐食性を維持することができると同時に、ろう材の流動性を高め機械的強度をも満足することができる。
【0014】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け方法は、上記第1又は第2の発明の何れかの発明において、前記ろう付け処理工程における所定の低真空領域は、3kPa〜68kPaの範囲内の気圧であることを特徴とするものである。
【0015】
この第3の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法は、上記低真空領域であっても更にろう付け室内の気圧が、上記3kPa〜68kPaの範囲内の気圧としたものである。このように、3kPa〜68kPaの範囲内の気圧でろう付け処理工程を行うことにより、母材やろう材に含有したMgやZnの蒸発を抑制することにより母材の強度や耐食性を維持することができるばかりではなく、後述する実施例からも明らかな通り、更にろう材の流動性を高めることが可能となる。
【0016】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け方法は、上記第2の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法において、前記加熱工程を実行する前工程において、前記真空乾燥室内の気圧を中真空領域まで真空引きする第1次真空引き工程と、この第1次真空引き工程の後に該真空乾燥室内に前記高純度不活性ガスを流入させながら該真空乾燥室内の気体を外部に排気することにより該真空乾燥室内の気圧を前記低真空領域の範囲内において復圧する第1次復圧工程と、が実行されるとともに、上記加熱工程では、該真空乾燥室内を前記ワーク又は該真空乾燥室内の水分が蒸発する温度以上で摂氏150度以下の所定温度となるまで加熱することを特徴とするものである。
【0017】
この第4の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法は、上記第1次復圧工程が実行されることから、上記加熱工程が実行される前段階においても、真空乾燥室内を上記高純度不活性ガス雰囲気中とすることができるとともに、該加熱工程では、該真空乾燥室内を前記ワーク又は該真空乾燥室内の水分が蒸発する温度以上で摂氏150度以下の所定温度となるまで加熱することから、より一層ろう材の流動性を高めることができる。
【0018】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け方法は、上記第1の発明において、前記真空乾燥工程において、前記真空乾燥室内に流入される高純度不活性ガスは窒素ガスであり、前記ろう付け処理工程において、前記ガス流入ボックスの上方から該ガス流入ボックス内に向かって流入される高純度不活性ガスはアルゴンガスであることを特徴とするものである。
【0019】
この第5の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法によれば、ガス流入ボックスの上方から該ガス流入ボックス内に向かって流入される高純度不活性ガスはアルゴンガスであり、該アルゴンガスがガス流入ボックス内の多くを占め、このように、ろう付け処理工程はアルゴンガスが多く占める雰囲気中で行われることから、よりろう材の流動性をより高めることが可能となる。
【0020】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け方法は、上記第5の発明において、前記ろう付け処理工程において、前記ガス流入ボックスの上方から該ガス流入ボックス内に向かって流入される高純度不活性ガスとしてのアルゴンガスを流入させるとともに、該ろう付け室には前記高純度不活性ガスとしての窒素ガスを流入させ、上記窒素ガスとアルゴンガスとの流量比率は、5:4以上に該アルゴンガス流量が高いことを特徴とするものである。
【0021】
この第6の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法よれば、上記窒素ガスとアルゴンガスとの流量比率は、5:4以上に該アルゴンガス流量が高いことから、より一層ろう材の流動性を向上させることができ、ワークの機械的強度を十分満足させることができる。
【0022】
また、第7の発明(請求項7記載の発明)は、前記
第1の発明(請求項1記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け方法を実施するために使用されるアルミニウム材のろう付け用処理装置であって、間にシールドドアにより開閉される開口を介して互いに連通してなる真空乾燥室とろう付け室とを備え、上記真空乾燥室には、該真空乾燥室内を高真空領域まで真空引きする高真空引き手段と、該真空乾燥室内の圧力を検出する第1圧力検出手段と、該真空乾燥室に接続され99.999%以上の純度の高純度不活性ガスを該真空乾燥室内に導入する第1ガス導入管と、この第1ガス導入管の中途部に配置された第1ガス導入弁と、
該真空乾燥室内の気体を排出する第1ガス排出手段と、がそれぞれ配置され、上記ろう付け室には、該ろう付け室内を中真空領域まで真空引きする中真空引き手段と、該ろう付け室内の圧力を検出する第2圧力検出手段と、該ろう付け室に接続され上記高純度不活性ガスを該ろう付け室内に導入する第2ガス導入管と、この第2ガス導入管の中途部に配置された第2ガス導入弁と、該ろう付け室内の温度を加熱する加熱手段と、該ろう付け室内の温度を検出する温度検出手段と、該ろう付け室内の気体を排出する
第2ガス排出手段と、上記ろう付け室内に配置され、耐熱性素材により成形され上方が開放されてなるとともに底板には複数のガス排出用開口が形成され、上記ワークが内部に配置されるガス流入ボックス、又は、上記複数のガス排出用開口が形成され上記ワークが配置されるトレー及び上方が開放された側板を備えたガス流入ボックスと、が配置され、上記高真空引き手段、第1圧力検出手段、第1ガス導入弁、中真空引き手段、第2圧力検出手段、加熱手段、温度検出手段並びに
第1ガス排出手段は、それぞれ制御手段に接続されてなるとともに、上記制御手段による上記高真空引き手段と第1圧力検出手段との制御により、上記真空乾燥室内を高真空領域まで真空引きした後に、上記第1ガス導入弁と
第1ガス排出手段との制御により、該真空乾燥室内に99.999%以上の純度の高純度不活性ガスを流入させながら、上記真空乾燥室内の気圧を低真空領域まで復圧させるとともに、該制御手段による第2ガス導入弁と
第2ガス排出手段と第2圧力検出手段と加熱手段と温度検出手段との制御により、上記ろう付け室内に上記高純度不活性ガスを流入させるとともに該ろう付け室内の気体を排気しながら、該ろう付け室内を所定の低真空領域で該ろう付け室の温度を上記ろう材の溶融温度まで昇温させることにより、上記ガス流入ボックス又は上記トレー及び上方が開放された側板を備えたガス流入ボックス内に配置されたワークにろう付けを行うことを特徴とするものである。
【0023】
また、第8の発明(請求項8記載の発明)は、前記
第2の発明(請求項2記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け方法を実施するために使用されるアルミニウム材のろう付け用処理装置であって、間にシールドドアにより開閉される開口を介して互いに連通してなる真空乾燥室とろう付け室とを備え、上記真空乾燥室には、該真空乾燥室を加熱する第1の加熱手段と、該真空乾燥室内の温度を検出する第1の温度検出手段と、該真空乾燥室内を高真空領域まで真空引きする高真空引き手段と、該真空乾燥室内の圧力を検出する第1圧力検出手段と、該真空乾燥室に接続され99.999%以上の純度の高純度不活性ガスを該真空乾燥室内に導入する第1ガス導入管と、この第1ガス導入管の中途部に配置された第1ガス導入弁と、該真空乾燥室内の気体を排出する第1ガス排出手段と、がそれぞれ配置され、上記ろう付け室には、該ろう付け室内を中真空領域まで真空引きする中真空引き手段と、該ろう付け室内の圧力を検出する第2圧力検出手段と、該ろう付け室に接続され上記高純度不活性ガスを該ろう付け室内に導入する第2ガス導入管と、この第2ガス導入管の中途部に配置された第2ガス導入弁と、該ろう付け室内の温度を加熱する第2の加熱手段と、該ろう付け室内の温度を検出する第2の温度検出手段と、該ろう付け室内の気体を排出する第2ガス排出手段と、上記ろう付け室内に配置され、耐熱性素材により成形され上方が開放されてなるとともに底板には複数のガス排出用開口が形成され、上記ワークが内部に配置されるガス流入ボックス、又は、上記複数のガス排出用開口が形成され上記ワークが配置されるトレー及び上方が開放された側板を備えたガス流入ボックスと、がそれぞれ配置され、上記第1の加熱手段、第1の温度検出手段、高真空引き手段、第1圧力検出手段、第1ガス導入弁、第1ガス排出手段、中真空引き手段、第2圧力検出手段、第2の加熱手段、第2の温度検出手段並びに第2ガス排出手段は、それぞれ制御手段に接続されてなるとともに、上記制御手段による上記第1の加熱手段と第1の温度検出手段との制御により、上記真空乾燥室内を所定温度に加熱し、その後に、上記高真空引き手段と第1圧力検出手段との制御により、上記真空乾燥室内を高真空領域まで真空引きした後に、上記第1ガス導入弁と第1ガス排出手段と第1圧力検出手段との制御により、該真空乾燥室内に99.999%以上の純度の高純度不活性ガスを流入させながら、上記真空乾燥室内の気圧を低真空領域まで復圧させるとともに、該制御手段による第2ガス導入弁と第2ガス排出手段と第2圧力検出手段と第2の加熱手段と第2の温度検出手段との制御により、上記ろう付け室内に上記高純度不活性ガスを流入させるとともに該ろう付け室内の気体を排気しながら、該ろう付け室内を所定の低真空領域中で該ろう付け室の温度を上記ろう材の溶融温度まで昇温させることにより、上記ガス流入ボックス又は上記トレー及び上方が開放された側板を備えたガス流入ボックス内に配置されたワークにろう付けを行うことを特徴とするものである。
【0024】
上記第7の発明に係るアルミニウム材のろう付け処理装置よれば、上記第1の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法と同じ作用効果を実現することができ、上記第8の発明に係るアルミニウム材のろう付け処理装置よれば、上記第2の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法と同じ作用効果を実現することができる。
【0025】
また、第9の発明(請求項9記載の発明)アルミニウム材のろう付け処理装置は、上記第7又は第8の発明の何れかにおいて、前記真空乾燥室内には、該真空乾燥室内に搬入されたワークの上方から前記高純度不活性ガスを分散して放出するとともに前記第1ガス導入管に接続された第1のガス放出ノズルが配置され、前記第1ガス排出手段は、上記ワークの下方から該真空乾燥室内の気体を排出する第1の排気管を備えてなり、前記ろう付け室内には、該ろう付け室内に搬入されたワークの上方から前記高純度不活性ガスを分散して放出するとともに前記第2ガス導入管に接続された第2のガス放出ノズルが配置され、前記第2ガス排出手段は、上記ワークの下方から該ろう付け室内の気体を排出する第2の排気管を備えてなることを特徴とするものである。
【0026】
この第9の発明に係るろう付け処理装置によれば、第4の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法と同じ作用効果を実現することができる。
【0027】
また、第10の発明(請求項10記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け処理装置は、上記第9の発明において、前記第1のガス放出ノズルから放出される前記高純度不活性ガスは窒素ガスであり、前記第2のガス放出ノズルから放出される前記高純度不活性ガスはアルゴンガスであることを特徴とするものである。
【0028】
また、第11の発明(請求項11記載の発明)は、上記第10の発明において、前記ろう付け室には、前記第2のガス放出ノズルから放出されるアルゴンガスの流量を計測するとともに前記制御手段に接続されてなるアルゴンガス流量計と、窒素ガスを該ろう付け室内に流入する窒素ガス導入管と、この窒素ガス導入管の中途部に配置されてなるとともに前記制御手段に接続され該制御手段により制御される窒素ガス導入弁及び該窒素ガスの流量を計測する窒素ガス流量計と、を備え、前記窒素ガス導入管からろう付け室内に流入する窒素ガスと前記第2のガス放出ノズルから放出されるアルゴンガスとの流量比率は、5:4以上に該アルゴンガス流量が高いことを特徴とするものである。
【0029】
上記第10の発明に係るアルミニウム材のろう付け処理装置によれば、上記第5の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法と同じ作用効果を実現することができ、上記第11の発明に係るアルミニウム材のろう付け処理装置によれば、上記第6の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法と同じ作用効果を実現することができる。
【発明の効果】
【0030】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)及び第2の発明(請求項2記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け方法によれば、上記真空乾燥室内で行われるろう付け準備工程により、該真空乾燥室内のワークや該真空乾燥室に存在する酸素分及び水分等の酸化促進成分は真空乾燥室外にほぼ完全に排出されるとともに、ろう付け処理工程においては、上記高純度不活性ガス雰囲気中において、上記低真空領域中で該ろう付け室の温度を上記ろう材の溶融温度まで昇温することから、ワークの表面に形成されている酸化被膜(Al2O3)は、ろう材にMgを含有している場合には、このMgと反応して酸化Mg(MgO)となりワークの表面から剥がれるために、該ろう材の流動性は促進され、上記酸化被膜(Al2O3)を間に介することなく直接各母材に付着することとなり、また、上記ろう付け処理工程においては、低真空領域中で行われることから、ワークやろう材に含まれたMgやZnの飛散量を格段に低減させることができ、上記母材の強度や耐食性を維持することができ、ひいては、上記ワークの機械的強度をも十分満足させることができる。なお、上記並びに上記第
7の発明(請求項
7記載の発明)及び第
8の発明(請求項
8記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け処理装置による場合であっても、それぞれ上記効果を実現することができる。
【0031】
また、この第1の発明によれば、上記真空乾燥室内又はろう付け室全体に高純度不活性ガスが拡散されてしまうことはなく、ワークを囲むガス流入ボックス内において高純度の状態を維持させることが可能となるとともに、使用する高純度不活性ガスの流量を抑制することが可能となり、ろう付け処理コストを低減することができる。加えて、この第1の発明に係るアルミニウム材のろう付け方法によれば、真空乾燥室又はろう付け室内の酸素分及び水分等の酸化促進成分は、該真空乾燥室又はろう付け室内部で拡散することなく外部に効果的に排出することができることから、より一層ろう材の流動性を向上させることができ、該ろう材を介して強固にワークを接合することが可能となる。
【0032】
また、上記第3の発明(請求項3記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け方法によれば、母材やろう材に含有したMgやZnの蒸発を抑制することにより母材の強度や耐食性を維持することができるばかりではなく、後述する実施例からも明らかな通り、更にろう材の流動性を高めることが可能となる。
【0033】
また、上記第4の発明(請求項4記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け方法や第9の発明(請求項9記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け処理装置によれば、それぞれより一層ろう材の流動性を高めることができる。
【0034】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け方法や第10の発明(請求項10記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け処理装置によれば、アルゴンガスがガス流入ボックス内の多くを占めることから、よりろう材の流動性をより高めることが可能となり、更に、第6の発明(請求項6記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け方法や第11の発明(請求項11記載の発明)に係るアルミニウム材のろう付け処理装置によれば、より一層ろう材の流動性を向上させることができ、ワークの機械的強度を十分満足させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための最良の形態に係るろう付け用処理装置について図面を参照しながら詳細に、次いで、上記ろう付け用処理装置を使用したアルミニウム材のろう付け方法について説明する。
【0037】
この実施の形態に係るろう付け用処理装置1は、
図1に示すように、真空乾燥室2と、この真空乾燥室2の下流側に配置されたろう付け室3と、このろう付け室3の下流側に配置された真空冷却室4と、を内部に備えている。また、これら真空乾燥室2、ろう付け室3及び真空冷却室4を備えたろう付け用処理装置1全体は、外形形状が水平方向に長さを有する円筒状に成形されてなるものである。そして、上記真空乾燥室2には、図示しない搬入側開口が形成され、この搬入側開口は、搬入側シールドドア5により閉塞されている。この搬入側シールドドア5は、後述する搬入側シールドドア用開閉装置の駆動により上記搬入側開口を開閉するものであり、後述するワークは該搬入側シールドドア用開閉装置の駆動によって開放された上記搬入側開口から、この真空乾燥室2内にワークを搬入できるように構成されている。また、この真空乾燥室2と上記ろう付け室3とは、円盤状に成形された仕切り板7により仕切られてなるとともに、該仕切り板7には図示しない開口が形成され、この開口は、第1の中間シールドドア8により閉塞されている。この第1の中間シールドドア8は、後述する第1の中間シールドドア開閉装置の駆動により上記開口を開閉するものである。また、上記ろう付け室3と上記真空冷却室4とは、円盤状に成形された仕切り板9により仕切られてなるとともに、この仕切り板9には図示しない開口が形成されてなるとともに、この開口は第2の中間シールドドア11により閉塞されている。この第2の中間シールドドア11は、後述する第2の中間シールドドア開閉装置の駆動により上記それぞれの開口を開閉するものである。また、上記真空冷却室4の下流側には図示しない搬出側開口が形成され、この搬出側開口は、搬出側シールドドア12により閉塞されている。上記搬出側シールドドア12は、後述する搬出側シールドドア開閉装置の駆動により上記搬出側開口を開閉するものである。
【0038】
以下、上記真空乾燥室2の構造に関して説明する。この真空乾燥室2は、
図2又は
図3に示すように、内部にグラファイト断熱材により成形された上流側断熱室13が設けられている。この上流側断熱室13は、
図3に示すように、該真空乾燥室2を内側に形成している炉郭円筒板2aの内周に形成された支持部材14,14により支持されている。また、この上流側断熱室13の上流側には、上流側の内部開口13aが形成され、該上流側の内部開口13aは、
図2に示す第1の内部断熱ドア16により閉塞されている。この第1の内部断熱ドア16は、後述する第1の内部断熱ドア開閉装置により上記第1の内部開口を開閉するものである。また、上記上流側断熱室13の下流側には、下流側の内部開口13bが形成され、該下流側の内部開口13bは、
図2に示す第2の内部断熱ドア17により閉塞されている。この第2の内部断熱ドア17は、後述する第2の内部断熱ドア開閉装置により上記第2の内部開口を開閉するものである。
【0039】
また、上記上流側断熱室13内には、ワークが載置されるトレー20及び該ワークを取り囲むガス流入ボックス21を、それぞれ下側から支持する左右のローラーレール22,23が配置されている。これら左右のローラーレール22,23は、下端が上記炉郭円筒板2aの内周面に固定されて立設された左右のレール支持部材24,25に支持されている。上記トレー20は、耐熱性素材により平板状に成形されてなるものであり、後述する6つの貫通穴20dが穿設されている。なお、これら左右のローラーレール22,23上に支持される上記トレー20、ガス流入ボックス21は、それぞれ後で詳細に説明する。また、この上流側断熱室13外には、第1の内部搬送用モータが配置され、上記ワーク等を支持する上記トレー20は、この第1の内部搬送用モータの駆動による上記左右のローラーレール22,23の回転駆動により、上流側断熱室13内に搬入されるとともに、上記ろう付け室3内に設けられた後述する下流側断熱室側に搬出される。
【0040】
また、この真空乾燥室2には、
図2に示すように、該真空乾燥室2内を真空にする第1の真空排気口26が形成されている。この第1の真空排気口26は、図示しない第1高真空排気系の駆動により、該真空乾燥室2内の気体が外部に排出される部位である。なお、この第1の高真空排気系は、本発明を構成する高真空引き手段である。この第1高真空排気系は、大気圧から初期段階まで真空引きする油回転真空ポンプ(RP)と、上記初期段階から中間段階まで真空引きするメカニカルブースタ真空ポンプ(MBP)と、この中間段階から高真空に真空引きする油拡散ポンプ(DP)及びこの油拡散ポンプ内を予備的に真空引きする保持ポンプ(HP)とから構成されてなるものである。また、この真空乾燥室2には、真空乾燥室2内の圧力を計測する第1真空計(ないし圧力計)27が配置されている。なお、この第1真空計27は、本発明を構成する第1圧力検出手段である。この第1真空計(ないし圧力計)27は、低真空を計測するブルドン管真空計、中真空を計測するピラニー真空計、高真空を計測するペニング真空計からなるものである。また、この真空乾燥室2には、後述するように、該真空乾燥室2内を高真空引きした後に該真空乾燥室2内の気圧を所定の低真空領域まで復圧する際に、本発明を構成する不活性ガスである99.999%以上の高純度窒素ガスを真空乾燥室2内に導入するガス導入管33が配置されている。なお、このガス導入管33は、本発明を構成する第1ガス導入管である。このガス導入管33の基端は、図示しない窒素ガス供給タンクに接続されている。そして、上記ガス導入管33の中途部には、該ガス導入管33の流路を開閉する第1窒素ガス導入
弁35が配置されている。なお、上記第1窒素ガス導入弁35は、本発明を構成する第1ガス導入弁である。そして、上記ガス導入管33の中途部は、分岐管33a、33bにより分岐しており、これらの分岐管33a,33bの中途部は、この真空乾燥室2内に挿入されてなるとともに、それぞれの先端は、上記上流側断熱室13内に臨んでいるとともに該先端には、上記窒素ガスをワークの上方から放出する窒素ガス放出ノズル36に接続されている。この窒素ガス放出ノズル36の下面には、図示しない多数の開口が形成され、これら多数の開口から後述するワークに向かって窒素ガスが放出される。なお、上記窒素ガス放出ノズルは、本発明を構成する第1のガス放出ノズルである。
【0041】
また、上記上流側断熱室13内であって、内部に搬入されるワークの上方には、上方第1ヒータ39が配置され、上記ワークの下方には、下方第1ヒータ40がそれぞれ配置されている。この実施の形態において、上記上方第1ヒータ39及び下方第1ヒータ40は、本発明を構成する第1加熱手段の重要な要素であり、それぞれ特殊金属ヒータから構成されている。そして、上記上方第1ヒータ39は、
図3に示すように、この真空乾燥室2内から上記上流断熱室13内に亘って挿入された左右の電極棒41,42により支持されており、また、上記下方第1ヒータ40は、真空乾燥室2内から上記上流断熱室13内に亘って挿入された左右の電極棒43,44により支持されている。上記それぞれの電極棒41・・・44は、それぞれ図示しない外部のヒータ用電気配線と真空加熱室内のヒータを結び通電を兼用する支持棒となっている。これらの電極棒41・・・44を通った電気により上方第1ヒータ39及び下方第1ヒータ40がそれぞれ発熱し、上記上流側断熱室13内の温度が上昇させられる。また、この真空乾燥室2には、上記上流側断熱室13内の温度を測定する第1温度計(熱電対)45が配置されている。なお、この第1温度計45は、本発明を構成する第1温度検出手段である。
【0042】
また、上記真空乾燥室2には、
図3に示すように、上記上流側断熱室13内からガスを外部に排出する上流側ガス排出機構48が設けられている。この上流側ガス排出機構48は、本発明を構成する第1のガス排出手段であり、上端が上記トレー20の直下に位置してなるとともに、該トレー20に穿設されたそれぞれの貫通穴20dに対応した部位に位置してなり、下端側はそれぞれこの真空乾燥室2の外部に位置してなる排気管49と、これらの排気管49の下端がそれぞれ接続されてなる水平管50と、この水平管50に管路53を介して接続され排気用真空ポンプとなる第1ポンプ54と、を備えている。なお、上記各排気管49は本発明を構成する第1の排気管である。また、上記管路53の中途部には排気されるガスの流路を開閉する第1排気弁55が配置されている。したがって、上記第1ポンプ54の駆動により、上記トレー20上であってワークが内部に配置されたガス流入ボックス21内に存在するガスは、上記それぞれの排気管49、水平管50、管路53をそれぞれ通過して外部に排気される。
【0043】
次に、上記ろう付け室3の構造について説明する。このろう付け室3は、後述するように、上記真空乾燥室2から搬送されてきたワークをろう付け処理するものである。そして、このろう付け室3には、内部に先に説明した上流側断熱室13とほぼ同じ構成からなる下流側断熱室63が設けられ、該下流側断熱室63は、
図5に示すように、支持部材61,61により支持されている。また、上流側断熱室13の上流側には、上流側の内部開口63aが形成され、該上流側の内部開口63aは、
図4に示す第3の内部断熱ドア64により閉塞されている。この第3の内部断熱ドア64は、後述する第3の内部断熱ドア開閉装置により上記上流側の内部開口63aを開閉するものである。また、上記下流側断熱室63の下流側には、下流側の内部開口63bが形成され、該下流側の内部開口63bは、第4の内部断熱ドア65により閉塞されている。この第4の内部断熱ドア65は、後述する第4の内部断熱ドア開閉装置により上記下流側の内部開口63bを開閉するものである。また、上記下流側断熱室63内には、ワークが載置されるトレー20及びガス流入ボックス21等を下側がら支持する左右のローラーレール66,67が配置されている。また、この下流側断熱室63外には、図示しない第2の内部搬送用モータが配置され、上記ワーク等を支持する上記トレー20は、この第2の内部搬送用モータの駆動による上記左右のローラーレール66,67の回転駆動により、下流側断熱室63内に搬入されるとともに、後述する真空冷却室4方向に搬出される。また、上記ろう付け室3には、
図4に示すように、第2の真空排気口68が形成され、図示しない中真空排気系の駆動により、該ろう付け室3内の気体が外部に排出される。この中真空排気系は、本発明を構成する中真空引き手段であり、上記油回転真空ポンプ(RP)と、上記メカニカルブースタ真空ポンプ(MBP)から構成されてなるものである。また、このろう付け室3には、該ろう付け室3内の圧力を計測する第2真空計(ないし圧力計)69が配置されている。この第2真空計(ないし圧力計)69は、中低真空を計測するピラニー真空計及びブルドン管真空計からなるものである。なお、上記第2の真空計69は、本発明を構成する第2圧力検出手段である。
【0044】
また、上記ろう付け室3には、後述するように、不活性ガスである99.999%以上の高純度窒素ガスを該ろう付け3内に導入する第2窒素ガス導入管70が配置されている。なお、この第2窒素ガス導入管70は、本発明を構成する窒素ガス導入管である。この第2窒素ガス導入管70の基端は、上記ガス導入管33と同じように、図示しない窒素ガス供給タンクに接続されている。そして、この窒素ガス導入管70の流路には、該流路を開閉する第2窒素ガス導入弁71と窒素ガスの流量を計測する窒素ガス流量計72が配置されている。なお、この第2窒素ガス導入弁71は、本発明を構成する窒素ガス導入弁である。また、このろう付け室3には、不活性ガスである99.999%以上の高純度アルゴンガスを該ろう付け室3内に導入するアルゴンガス導入管73が配置されている。なお、このアルゴンガス導入管73は、本発明を構成する第2ガス導入管である。このアルゴンガス導入管73の基端は、図示しないアルゴンガス供給タンクに接続されている。そして、上記アルゴンガス導入管73の中途部には、アルゴンガスの流量を計測するアルゴンガス流量計74と、該アルゴンガス導入管73の流路を開閉するアルゴンガス導入弁75が配置されている。なお、このアルゴンガス導入弁75は、本発明を構成する第2ガス導入弁である。そして、上記アルゴンガス導入管73の中途部は、分岐管73a、73bにより分岐しており、これらの分岐管73a,73bの中途部は、このろう付け室3内に挿入されてなるとともに、それぞれの先端は、上記下流側断熱室63内に臨んでいるとともに該先端には、上記アルゴンガスをワークの上方から放出するアルゴンガス放出ノズル76に接続されている。このアルゴンガス放出ノズル76の下面には、図示しない多数の小径穴が形成され、これら多数の小径穴から後述するワークに向かってアルゴンガスが放出される。
【0045】
また、上記下流側断熱室63内であって、内部に搬入されるワークの上方には、上方第2ヒータ79が配置され、上記ワークの下方には、下方第2ヒータ80がそれぞれ配置されている。この実施の形態において、上記上方第2ヒータ79及び下方第2ヒータ80は、それぞれ本発明を構成する第2加熱手段の重要な要素であり、本実施の形態では特殊な金属ヒータから構成されている。そして、上記上方第2ヒータ79は、
図5に示すように、このろう付け室3内から上記下流側断熱室63内に亘って挿入された左右の電極棒81,82により支持されており、また、上記下方第2ヒータ80は、ろう付け室3内から上記下流断熱室63内に亘って挿入された左右の電極棒83,84により支持されている。上記それぞれの電極棒81・・・84は、図示しない外部ヒータ用電気配線と真空加熱室2内のヒータを結び通電を兼用する支持棒となっている。これらの電極棒81・・・84を通った電気により上記上方第2ヒータ79及び下方第2ヒータ80がそれぞれ発熱し、上記下流側断熱室63内の温度が上昇させられる。また、このろう付け室3には、上記下流側断熱室63内の温度を測定する第2温度計(熱電対)85が配置されている。なお、上記第2温度計85は、本発明を構成する第2温度検出手段である。
【0046】
また、上記ろう付け室3には、
図5に示すように、上記下流側断熱室63内からガスを外部に排出する下流側ガス排出機構88が設けられている。この下流側ガス排出機構88は、本発明を構成する第2のガス排出手段である。そして、この下流側ガス排出機構88は、上端が上記トレー20の直下に位置してなるとともに、該トレー20に穿設されたそれぞれの貫通穴20dに対応した部位に位置してなり、下端側はそれぞれこのろう付け室3の外部に位置してなる排気管89と、これらの排気管89の下端がそれぞれ接続されてなる水平管90と、この水平管90内に流入したガスが流入する排気ダクト91と、上記ガスに含有された(後述する)Mg及びZnを捕捉する捕捉装置92と、この捕捉装置92に管路93を介して接続され排気用真空ポンプとなる第2ポンプ94とを備えている。なお、上記各排気管89は、本発明を構成する第2の排気管である。そして、上記排気ダクト91内及び捕捉装置92内には、上記Mg及びZnを捕捉するトラップフィルター91a,92aが収容されており、また、上記管路93の中途部には排気されるガスの流路を開閉する第2排気弁95が配置されている。したがって、上記第2ポンプ94の駆動により、上記トレー20上であってワークが内部に配置されたガス流入ボックス21内に存在するガスは、上記それぞれの排気管89、水平管90、排気ダクト91、捕捉装置92、管路93をそれぞれ通過して外部に排気されるとともに、該排気ダクト91と捕捉装置92を通過する際、ガスに含まれたMg及びZnは上記トラップフィルター91a,92aにより捕捉される。
【0047】
次に、上記真空冷却室4の構造を説明する。この真空冷却室4は、後述するように、上記ろう付け室3内にてろう付け処理されたワークを冷却するものであり、上記第2の中間シールドドア11の開放により移動してきたトレー20が載置される左右のローラーレール(符号は省略する。)が設けられている。また、この真空冷却室4内には、図示しない第3の内部搬送用モータが配置され、ワーク等を支持する上記トレー20は、この第3の内部搬送用モータの駆動による上記左右のローラーレールの回転駆動により、この真空冷却室4内に搬出されるとともに、上記ろう付け用処理装置1内から外部に搬出される。また、この真空冷却室4には、
図1に示すように、該真空冷却室4内を真空にする第
3の真空排気口106が形成されている。この第
3の真空排気口106は、図示しない第2高真空排気系の駆動により、該真空冷却室4内の気体が外部に排出される部位である。この第2高真空排気系は、油回転真空ポンプ(RP)と、メカニカルブースタ真空ポンプ(MBP)と、油拡散ポンプ(DP)及び保持ポンプ(HP)とから構成されている。また、この真空冷却室4には、該真空冷却室4内の圧力を計測する図示しない第3真空計(ないし圧力計)が配置されている。この第3真空計(ないし圧力計)は、上記ブルドン管真空計、ピラニー真空計、及びペニング真空計からなるものである。また、この真空冷却室4には、後述するように、該真空冷却室4内を高真空引きした後に該真空冷却室4内の気圧を復圧する際に窒素ガスを導入するガス導入管107が配置され、このガス導入管107の流路には、図示しない第3窒素ガス導入弁が配置されている。
【0048】
また、この真空冷却室4内には、冷却ファン110が配置され、この冷却ファン110は、その回転駆動軸110aが該真空冷却室4上に配置されたファンモータ111に接続されている。なお、上記冷却ファン110の近傍には、上記ワークを冷却するための熱交換器112が設けられている。なお、この熱交換器112は、真空冷却室4外に設けられた水等の図示しない冷却媒体に接続されており、後述するように真空冷却室4内に導入されワークに当たり温められた窒素ガスと接触することにより該窒素ガスを冷却してワークを冷却するものである。
【0049】
なお、上述したろう付け用処理装置1の上流側には、
図1に示すように、搬入側台車120が配置され、また、該ろう付け用処理装置1の下流側には、搬出側台車121が配置されている。上記搬出側台車120は、上面に上記トレー20が載置される炉床ローラ(符号は省略する。)を備えてなるとともに、上記トレー20を上記真空乾燥室2内に搬入するための図示しない台車用搬入シリンダを備えている。また、上記搬出側台車121は、上記真空冷却室4内で冷却されたトレー20上のワークが載置される炉床ローラ(符号は省略する。)を備えているとともに、該真空冷却室4内から搬出された上記トレー20を上記炉床ローラ上に引き出す図示しない台車用搬出シリンダを備えている。
【0050】
そして、上述したろう付け用処理装置1は、
図6に示すように、以下に説明する各装置や計器又は弁等に接続された中央演算処理装置(CPU)125を備えている。なお、この中央演算処理装置(CPU)は、本発明を構成する制御手段である。そして、この中央演算処理装置125は、演算用、入力用、表示用等の各種のプログラムが記憶されたROM126と、設定される圧力、温度、時間等の数値を記憶するROM127に接続されてなるとともに、第1タイマ128a、第2タイマ128b、第3タイマ128c、第4タイマ128d、第5タイマ128eに接続されている。また、この中央演算処理装置125には、後述するそれぞれの真空計や温度計等の数値が入力可能であるとともに、圧力状態や温度状態等を表示する制御盤(表示・操作部)131に接続されている。すなわち、この制御盤131は、
図7に示すように、先に説明した第1真空計27により計測された上記真空乾燥室2内の圧力を表示する第1の圧力表示部131aと、上記真空乾燥室2内の圧力を所定の圧力に設定する際に押圧される第1の圧力入力部131bと、第1温度計45により計測された上記上流側断熱室13内の温度を表示する第1の温度表示部131cと、該上流側断熱室13内の温度を所定の温度に設定する第1の温度入力部131dと、をそれぞれ備えている。また、上記第1の温度表示部131cの下方には、上記第1タイマ128aの設定時間を入力する第1のタイマ入力部131eが設けられている。また、この第1のタイマ入力部131eの下方には、上記第1真空計27により計測された真空乾燥室2内の圧力と、上記第1温度計45により計測された上流側断熱室13内の温度とのそれぞれを記録する第1記録部131fが配置されている。なお、上記第1の圧力入力部131b、第1の温度入力部131d、第1のタイマ入力部131eは、それぞれ作業者が押圧することにより、上記ROM126に記憶された所定のプログラムにより、図示しない入力画面がテンキーと共に表示され、それぞれの数値を設定できるように構成され、これら入力されたそれぞれの数値は、上記RAM127に記憶されるように構成されている。また、上記制御盤131には、先に説明した第2真空計69により計測された上記ろう付け室3内の圧力を表示する第2の圧力表示部131gと、上記ろう付け室3内の圧力を所定の圧力に設定する際に押圧される第2の圧力入力部131hと、上記第2温度計85により計測された上記下流側断熱室63内の温度を表示する第2の温度表示部131iと、該下流側断熱室63内の温度を所定の温度に設定する第2の温度入力部131jとを備えている。また、上記第2の温度入力部131jの下方には、上記第3タイマ128cの設定時間を入力する第3のタイマ入力部131kが設けられている。また、上記第2の温度表示部131iの下方には、上記第4タイマ128dの設定時間を入力する第4のタイマ入力部131lが設けられている。上記第3のタイマ入力部131k及び第4タイマ入力部131lは、それぞれ作業者が押圧することにより、上記ROM126に記憶された所定のプログラムにより、図示しない入力画面がテンキーと共に表示され、それぞれの数値を設定できるように構成され、これら入力されたそれぞれの数値は、上記RAM127に記憶されるように構成されている。また、この第4のタイマ入力部131lの下方には、上記第2真空計69により計測されたろう付け室3内の圧力と、上記第2温度計85により計測された下流側断熱室63内の温度とのそれぞれを記録する第2記録部131mが配置されている。なお、上記第2の圧力入力部131h、第2の温度入力部131jは、それぞれ作業者が押圧することにより、上記ROM126に記憶された所定のプログラムにより、図示しない入力画面がテンキーと共に表示され、それぞれの数値を設定できるように構成され、これら入力されたそれぞれの数値は、上記RAM127に記憶されている。また、上記制御盤131には、真空冷却室4内の気圧又は圧力を計測する図示しない第3真空計により計測された圧力を表示する第3の圧力表示部131nと、上記真空冷却室4内の圧力を所定の圧力に設定する際に押圧される第3の圧力入力部131oと、上記第2タイマ128bの設定時間を入力する第2のタイマ入力部131pと、上記第5タイマ128eの設定時間を入力する第5のタイマ入力部131qとが設けられている。なお、上記第3の圧力入力部131o及び第2のタイマ入力部131p並びに第5のタイマ入力部131qは、それぞれ作業者が押圧することにより、上記ROM126に記憶された所定のプログラムにより、図示しない入力画面がテンキーと共に表示され、それぞれの数値を設定できるように構成され、これら入力されたそれぞれの数値は、上記RAM127に記憶されるように構成されている。また、第5のタイマ入力部131qの下方には、上記第3真空計により計測された真空冷却室4内の圧力を記録する第3記録部131rが配置されている。
【0051】
また、上記中央演算処理装置(CPU)125には、
図6に示すように、前記真空乾燥室2に配置され又は接続された搬入側シールドドア開閉装置、第1の内部断熱ドア開閉装置、第1真空計、第1温度計、第1高真空排気系、(上方及び下方)第1ヒータ、第1窒素ガス導入弁、第1ポンプ、第1排気弁、第1の内部搬送用モータ及び第2の内部断熱ドア開閉装置(それぞれ符号は省略する。)が接続されている。また、上記中央演算処理装置(CPU)125には、前記ろう付け室3に配置され又は接続された第3の内部断熱ドア開閉装置、第2真空計、第2温度計、中真空排気系、(上方及び下方)第2ヒータ、第2窒素ガス導入弁、第2ポンプ、アルゴンガス導入弁、第2排気弁、第2の内部搬送用モータ及び第4の内部断熱ドア開閉装置(それぞれ符号は省略する。)が接続されている。また、上記中央演算処理装置(CPU)125には、前記真空冷却室4に配置され又は接続された第3真空計、第2高真空排気系、第3窒素ガス導入弁、ファンモータ、第3の内部搬送モータ、搬出側シールドドア開閉装置 (それぞれ符号は省略する。)が接続されている。なお、この実施の形態では、上記中央演算処理装置(CPU)125には、上記搬入側台車120に設けられた図示しない台車用搬入シリンダや、上記搬出側台車121に設けられた図示しない台車用搬出シリンダも接続されている。
【0052】
また、上述した実施の形態に係るろう付け用処理装置1によりろう付け処理されるワークが載置されるトレー20、ガス流入ボックス21等について説明する。これらトレー20及びガス流入ボックス21は、何れも耐熱性素材であるC/Cグラファイトを素材としてなるものである。そして、上記トレー20は、
図8に示すように、長方形状に成形されてなる主板部20aと、この主板部20aの左端中央に形成されてなる一方の小型板部20bと、上記主板部20aの右端中央に形成されてなる他方の小型板部20cとを備えている。そして、上記主板部20aには、先に説明した6つの貫通穴20dが穿設されている。なお、上記貫通穴20dは、本発明を構成するガス排出用開口である。また、上記一方の小型板部20b及び他方の小型板部20cには、それぞれ長方形状の係止穴20e,20fが形成されている。これら係止穴20e,20fは、作業者が上記搬入側台車120上や上記搬出側台車121上に作業者がこのトレー20を載置する際に手指を挿通する部位であるとともに、先に説明した台車用搬入シリンダや台車用搬出シリンダの先端が係止される部位である。また、上記ガス流入ボックス21は、上記トレー20上に載置されるとともに、該トレー20上に載置されたワークを取り囲むものである。すなわち、このガス流入ボックス21は、長方形状に成形され互いに対向する正面板21a及び背面板21bと、左側板21c及び右側板21dとを備え、これら正面板21a、背面板21b、左側板21c及び右側板21dの上端には、内側に突出した枠状の内フランジ部21eが形成されている。なお、上記ろう付け用処理装置1を用いてワークをろう付け処理する際において、上述したように、それぞれのワークを上記トレー20上に直接載置する方法以外に、該トレー20上にワークを載置する載置板が形成されC/Cグラファイトを素材としてなる図示しないワークバスケットを上下方向に複数段積みして用いても良い。このワークバスケットは、各ワークが載置される長方形状の載置板と、この載置板の四方から起立した側板からなるものであり、これら載置板及び側板には多数の開口が形成されてなるものである。こうしたワークバスケットを使用する場合には、多数のワークを一度にろう付け処理することができる。
【0053】
以下、上述した本実施の形態に係るろう付け用処理装置1によりワークをろう付けする工程(ろう付け方法)を、
図9ないし
図12に示すフローチャートを参照しながら、それぞれ各工程順に詳細に説明する。なお、これらのフローチャートにおいて、先に説明した台車用搬入シリンダ及び台車用搬出シリンダ、搬入側シールドドア開閉装置、第1及び第2の中間シールドドア開閉装置、上記第1ないし第4の内部断熱ドア開閉装置、並びに上記第1ないし第4の内部搬送用モータの動作のタイミングは、それぞれ
図9ないし
図12に示すフローチャートには含めない。また、上記ろう付け用処理装置1は、上記真空乾燥室2、ろう付け室3、真空冷却室4は、それぞれ同時に所定の工程が行われる。すなわち、真空乾燥室2にワークが搬入され該真空乾燥室2内で各種の工程が行われている際において、ろう付け室3や真空冷却室4においても所定の工程が進行され、上記ワークは順次上記真空乾燥室2、ろう付け室3、真空冷却室4を通過して外部に搬出される。
【0054】
そこで先ず、ワークが上記真空乾燥室2内に搬入される工程から説明する。上記ワークは、作業者により、上記搬入側台車120上に上記トレー20を載置し、このトレー20上にろう付けすべき複数のワークを載置するとともに、該トレー20上に上記ガス流入ボックス21を載置し、該ガス流入ボックス21により上記ワークを取り囲む。なお、上記トレー20上に載置されるワークは、油分や粉末ろう材又は塵埃若しくは粘着性接着剤などの異物が残存又は付着していないか否か、また、湿度が高い雰囲気に放置されていたものではないかをそれぞれ確認する。そして、上記搬入側シールドドア用開閉装置の駆動により上記搬入側シールドドア5を開放するとともに、上記第1の内部断熱ドア開閉装置の駆動により第1の内部断熱ドア16を開放し、また、上記台車用搬入シリンダを駆動させることにより、上記トレー20、ガス流入ボックス21及びワーク(以下、これらを単にワークと言う。)を上記真空乾燥室2内に搬入し、再び上記第1の内部断熱ドア開閉装置の駆動により第1の内部断熱ドア16を閉塞するとともに、上記搬入側シールドドア用開閉装置の駆動により上記搬入側シールドドア5を閉塞する。すなわち、制御手段である上記中央演算処理装置(CPU)125が上記搬入側シールドドア開閉装置と上記第1の内部断熱ドアとを駆動させ、上記搬入側シールドドア5と第1の内部断熱ドア16のそれぞれの開閉を行う(ステップSt1)。なお、このように、搬入側シールドドア5が開放される際には、上記第1の中間シールドドア8は閉塞されているとともに、真空乾燥室2内の気圧は、5kPaとされている(後述するステップSt17〜19参照)。また、こうしたステップSt1が実行される際には、上記ろう付け室3の気圧も5kPaとされている(ステップSt42)。また、上記真空冷却室4からは既に冷却されたワークが搬出されており、上記第2の中間シールドドア11及び搬出側シールドドア12は閉塞され(後述するステップSt44、ステップSt53参照)、該真空冷却室4内は大気圧とされている。これらろう付け室3や真空冷却室4の工程に関しては後述する。
【0055】
そして、上記ステップSt1が終了すると、次いで、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記第1高真空排気系の駆動が開始され(ステップSt2)、上記真空乾燥室2内の気体は上記第1の真空排気口26から外部に放出される。この第1高真空排気系の駆動の開始により、真空乾燥室2内の気圧は徐々に低下する。次いで、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記真空乾燥室2内の気圧が中真空領域(例えば、5Pa)に達した(本発明を構成する第1次真空引き工程がされた)か否かが判別され(ステップSt3)、上記気圧に達したと判別された場合には、それまで駆動していた第1高真空排気系の駆動は停止され、上記第1ヒータ(上方第1ヒータ39と下方第2ヒータ40と)がON動作されるとともに、他方、上記第1窒素ガス導入弁35が開放され、また上記第1ポンプ54の駆動が開始され且つ第1排気弁55が開放される(ステップSt4)。すなわち、このステップSt4の動作により、上記真空乾燥室2内には、図示しない窒素ガス供給タンクに接続された上記窒素ガス放出ノズル36から高純度窒素ガスが流入するとともに、上記第1ポンプ54の駆動が開始され且つ第1排気弁55が開放されることから、上記窒素ガス放出ノズル36から流入した窒素ガスは、ワークの上方からワークに向かって下方に流れる。なお、このステップSt4では、それぞれ上記中央演算処理装置(CPU)125による上記第1窒素ガス導入弁35と第1排気弁55又は上記第1ポンプ54の流量制御により、上記窒素ガス放出ノズル36から流入する窒素ガスの流入量よりも少ない量のガスが上記第1ポンプ54の駆動による排気が開始され、したがって、それまで5Paとされていた真空乾燥室2内の圧力は徐々に復圧される(本発明を構成する第1次復圧工程)。
【0056】
そして、ステップSt5では、上記ステップSt4により徐々に復圧された真空乾燥室2内の気圧が所定の気圧(例えば、15kPa)に復圧されたか否かが上記中央演算処理装置(CPU)125により判別され、(例えば、15kPaに)復圧されたと判別された場合には、上記中央演算処理装置(CPU)125による上記第1窒素ガス導入弁35と第1排気弁55又は上記第1ポンプ54の流量制御により、15kPaを保持する(ステップSt6)。こうした気圧が保持されている中において、上記中央演算処理装置(CPU)125は、次に、上記上流側断熱室13内の温度が上記第1温度計45により所定温度(例えば、摂氏100度)に達したか否かを判別し(ステップSt7)、所定温度(摂氏100度)に達したと判別された場合には、上記第1タイマ128aをON動作させるとともに、第1温度計45と上記第1ヒータ(上方第1ヒータ39及び下方第1ヒータ40)とを温度制御することにより、ステップSt8において上流側断熱室13内の温度を保持する(本発明を構成する加熱工程)。こうした温度が保持されている間、上流側断熱室13内では、上述したように、高純度窒素ガスがワークの上方から上記ガス流入ボックス21内に継続的に流入されているとともに上記トレー20に形成された各貫通穴20aを通過し真空乾燥室2外に排気され続けていることから、上流側断熱室13内やワークに付着している酸素分及び水等の酸化性不純物は、上記真空乾燥室2内から外部に放出される。次いで、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記第1タイマ128aにより所定時間が経過したか否かが判別され(ステップSt9)、所定時間が経過したと判別した場合には、ステップSt10に移行する。このステップSt10では、上記第1タイマ128aはOFF動作され、上記第1窒素ガス導入弁35は閉塞され、上記第1ポンプ54の駆動が停止されるとともに、上記第1排気弁55は閉塞される。また、上記第1高真空排気系の駆動も再開される。そして、上記第1真空計27により真空乾燥室2内の気圧が高真空(例えば、0.01Pa)に到達したか否かが上記中央演算処理装置(CPU)125により判別され(ステップSt11)、該気圧に到達したと判別された場合には、次いで、ステップSt12において、上記第1高真空排気系の制御により該気圧を保持し(本発明を構成する高真空引き工程を実行し)、次いで、上記第1タイマ128aはON動作される(ステップSt13)。
【0057】
そして、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記第1タイマ128aにより所定時間が経過したか否かが判別され(ステップSt14)、所定時間が経過したと判別された場合には、ステップSt15に移行し、上記第1タイマ128aをOFF動作させるとともに、上記第1高真空排気系の駆動を停止し、ステップSt16に移行する。つまり、上記ステップSt14により、上記真空乾燥室2内は、上記高真空(例えば、0.01Paの気圧)で所定時間維持されることにより、上記ワークの表面や該真空乾燥室2内における酸素分及び水分等の酸化性不純物は完全に真空乾燥室2外に排出されワークは十分乾燥される。そして、上記ステップSt16では、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記第1窒素ガス導入弁35は開放され、上記第1ポンプ54の駆動が開始されるとともに、上記第1排気弁55は開放される。したがって、このステップSt16により、上記真空乾燥室2内は、再び上記高純度窒素ガスにより復圧される(本発明を構成するろう付け準備工程)。次いで、ステップSt17では、上記真空乾燥室2内の気圧が5kPaに到達したか否かが判別され、該気圧に復圧された(本発明を構成する復圧工程)と判別された場合には、ステップSt18に移行する。このステップSt18では、上記第1窒素ガス導入弁35は閉塞され、上記第1ポンプ54の駆動が停止されるとともに、上記第1排気弁55は閉塞され、上記真空乾燥室2内におけるろう付け準備工程が終了し、ステップSt19に移行する。
【0058】
このステップSt19では、上記第2の内部断熱ドア17と第1の中間シールドドア8がそれぞれ開放され、また、上記ろう付け室3内に配置された第3の内部断熱ドア64が開放されるとともに、上記第1の内部搬送用モータ及び第2の内部搬送用モータがそれぞれ駆動することにより、上記真空乾燥室2内で乾燥されたワークは、上記ろう付け室3内に移動し、このワークの移動が終了すると、上記第2の内部断熱ドア17と第1の中間シールドドア8がそれぞれ閉塞され、また、上記ろう付け室3内に配置された第3の内部断熱ドア64も閉塞される。すなわち、ステップSt19では、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記第2の内部断熱ドア17と第1の中間シールドドア8と第3の内部断熱ドア64とがそれぞれ開閉動作され、こうした開閉動作中にワークの移動・搬送がされる。なお、上記真空乾燥室2内からろう付け室3内にワークを搬送するために、上記第1の中間シールドドア8が開放されるが、この際における真空乾燥室2内の気圧は5kPaとされ(ステップSt17〜19)、また、上記ろう付け室3内の気圧は、5kPaとされている(後述するステップSt42参照)。一方、上記真空冷却室4内の気圧は、後述するワークの搬出に伴う搬出側シールドドア12の開閉動作により大気圧とされている。そこで、以下に説明するステップSt20(
図10参照)に先立ち、上記中央演算処理装置(CPU)125は、上記第2高真空排気系及び第3真空計をそれぞれ制御することにより、上記真空冷却室4内の気圧を高真空領域まで真空引きし、この状態を所定時間保持し、その後にガス導入管107から窒素ガスを真空冷却室4内に流入させることにより、ろう付け室3内の気圧と同じ気圧である5kPaまで復圧させ、この気圧まで復圧したと判別された場合には、以下に説明するステップSt20以下の動作がなされる。
【0059】
このステップSt20では、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記第4の内部断熱ドア65と第2の中間シールドドア11とをそれぞれ開放され、ろう付け室3と真空冷却室4とが連通される。この際、第1の中間シールドドア8と第3の内部断熱ドア64と搬出側シールドドア12は、何れも閉塞されている。そして、これら第4の内部断熱ドア65と第2の中間シールドドア11とがそれぞれ開放されると、次いで、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記第2高真空排気系と中真空排気系の駆動がそれぞれ開始される(ステップSt21)。したがって、ろう付け室3と真空冷却室4との内部気圧は徐々に低下する。次いで、ステップSt22では、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記内部気圧が所定の高真空領域(例えば、0.01Pa)に達したか否かが判別され、内部気圧が該高真空となったと判別された場合には、上記第2タイマ128bがON動作され(ステップSt23)、次いで、所定時間経過したか否かが判別される(ステップSt24)。ステップSt24にて、上記中央演算処理装置(CPU)125が所定時間が経過したと判別した場合には、次いで、上記第2タイマ128bがOFF動作され、また上記第4の内部断熱ドア65と第2の中間シールドドア11とがそれぞれ閉塞され、ステップSt26に移行する。なお、このステップSt26では、上記ろう付け室3内の制御が開始されるとともに、真空冷却室4では、
図12に示すステップSt43が開始される。上記ステップSt26では、
図10に示すように、上記中央演算処理装置(CPU)125により、中真空排気系の駆動は停止され、上記第2窒素ガス導入弁71が開放されるとともに、上記第2ポンプ94の駆動が開始される。これら第2窒素ガス導入弁71の開放と、上記第2ポンプ94の駆動開始により、ろう付け室3内は徐々に復圧される。そして、ステップSt27では、上記ろう付け室3内の気圧が、5kPaに達したか否かが判別され、5kPaに達したと判別された場合には、ステップSt28において、該気圧の保持制御がされるとともに、第2の内部断熱ドア17、第1の中間シールドドア8及び第3の内部断熱ドア64が開閉動作がなされる。これら第2の内部断熱ドア17、第1の中間シールドドア8及び第3の内部断熱ドア64の開閉動作中に、上記第1の内部搬送用モータ及び第2の内部搬送用モータがそれぞれ駆動し、それまで上記真空準備室2(上流側断熱室13)内にあったワークは、下流側断熱室63内に移送される。
【0060】
そして、上述したように、ワークがろう付け室3(下流側断熱室63内)に搬送されると、次いで、上記中央演算処理装置(CPU)125により、第2ポンプ94の駆動が停止されるとともに第2排気弁95は閉塞される一方、上記アルゴンガス導入弁75が開放される。この結果、それまで5kPaの気圧であったろう付け室3内の気圧は徐々に復圧される。そして、ステップSt30において、上記ろう付け室3内の気圧が所定の低真空領域(例えば、30kPa)に達したか否かが判別され、該気圧に達したと判別された場合には、ステップSt31に移行する。このステップSt31では、それまで停止していた第2ポンプ94の駆動が再開され、また、第2排気弁95が開放され、さらに、先に説明した窒素ガス流量計72とアルゴンガス流量計74とによるそれぞれの計測結果に基づき、窒素ガスとアルゴンガスの流量比が所定の比率となるように調整される。また、このステップSt31では、30kPaの気圧が保持制御されるとともに、第2ヒータ(上方第2ヒータ79及び下方第2ヒータ80)がON動作される。この第2ヒータのON動作により、下流側断熱室63内は徐々に昇温し、ステップSt32では、上記中央演算処理装置(CPU)125により、予熱温度(例えば、摂氏400度〜摂氏550度)に達したか否かが判別され、該予熱温度に達したと判別された場合には、上記第3タイマ128cがON動作される(ステップSt33)。次いで、上記中央演算処理装置(CPU)により、所定時間が経過したか否かが判別され(ステップSt34)、所定時間が経過したと判別された場合には、ステップSt35において、上記第3タイマ128cがOFF動作されるとともに、第2ヒータ(上方第2ヒータ79及び下方第2ヒータ80)の出力を上げることにより昇温制御される。次いで、ステップSt36では、上記中央演算処理装置(CPU)125により、下流側断熱室63内の温度が、使用したろう材の溶融温度(ろう付け温度)に達したか否かが、第2温度計85による計測結果を介して判別され、該ろう付け温度に達したと判別された場合には、次いで、ステップSt37に移行し、上記第4タイマ128dがON動作されるとともに、上記ろう付け温度の保持制御がされる(本発明を構成するろう付け処理工程)。すなわち、上記ろう付け室3(下流側断熱室63)内のワークは、上記低真空領域内の気圧にてろう付け処理される。
【0061】
次いで、ステップSt38では、上記中央演算処理装置(CPU)125により、第4タイマ128dがOFF動作されるとともに、上記第2ヒータ(上方第2ヒータ79及び下方第2ヒータ80)はOFF動作される。この上記第2ヒータのOFF動作により、上記ろう付け室3(下流側断熱室63)内の温度は徐々に低下するとともに上記ワークの温度も低下する。次いで、ステップSt40では、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記ろう付け室3内の温度が所定温度迄低下したか否かが判別され、所定温度迄低下したと判別された場合には、ステップSt41において、上記第2窒素ガス導入弁71及び上記アルゴンガス導入弁75がそれぞれ閉塞される。このように上記第2窒素ガス導入弁71及び上記アルゴンガス導入弁75がそれぞれ閉塞されると、上記未だ第2ポンプ94の駆動は継続しているとともに第2排気弁95は開放されていることから、徐々にろう付け室3内の気圧は低下する。次いで、ステップSt42では、ろう付け室3内の気圧が所定の
低真空領域(例えば、5kPa)に達したか否かが判別され、この所定の気圧に達したと判別された場合には、このろう付け室3における動作は終了する。
【0062】
次に、上記真空冷却室4の動作について、
図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、この真空冷却室4では、先に説明したように、ステップSt25の実行により上記第2の中間シールドドア11は閉塞され、また、上記搬出側シールドドア12も閉塞されており、且つ、上記第2高真空排気系は駆動を継続していることから該真空冷却室4内の気圧は高真空領域(0.01Pa)とされている。そこで、ステップSt43では、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記第2高真空排気系の駆動を停止するとともに、図示しない第3窒素ガス導入弁を開放する。こうした第3窒素ガス導入弁の開放により、上記ガス導入管107から窒素ガスが真空冷却室4内に流入する。したがって、真空冷却室4内の気圧は高真空領域から徐々に復圧される。次いで、ステップSt44では、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記真空冷却室4内の気圧が、ろう付け処理工程が終了した時点(ステップSt42参照)におけるろう付け室3内の気圧(5kPa)と同じ気圧である5kPaに達したか否かが上記第3真空計の計測結果に基づいて判別される。そして、真空冷却室4内の気圧が上記ろう付け室3内の気圧(5kPa)と同じ気圧となったと判別された場合には、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記第3窒素ガス導入弁は閉塞されるとともに該気圧(5kPa)の保持制御がされる(ステップSt45)。こうした制御が行われると、次いで、上記第4の内部断熱ドア65と上記第2の中間シールドドア11の開閉動作が行われ(ステップSt46)、この開閉動作中にろう付け室3内のワークは真空冷却室4内に移送される。すなわち、先ず、第4の内部断熱ドア65と上記第2の中間シールドドア11の双方の駆動により各開口が開放されるとともに、該ろう付け室3内に配置された第2の内部搬送用モータと真空冷却室4内に配置された第3の内部搬送用モータとがそれぞれ駆動され、ろう付け室3内のワークが真空冷却室4内に移送されると、次いで、第2の内部搬送用モータと真空冷却室4内に配置された第3の内部搬送用モータのそれぞれ駆動が停止され、上記第4の内部断熱ドア65は第4の内部断熱ドア開閉装置の駆動により開口が閉塞され、上記第2の中間シールドドア11は第2の中間シールドドア開閉装置の駆動により開口が閉塞される。
【0063】
そして、上述した工程を経ることにより、ワークが真空冷却室4内に移送されると、ステップSt47において、上記中央演算処理装置(CPU)125により、再び上記第3窒素ガス導入弁が開放され、上記ガス導入管107から高純度窒素ガスが真空冷却室4内に導入される。次いで、上記中央演算処理装置(CPU)125により、この真空冷却室4内の気圧が所定気圧(例えば、68kPa)に達したか否かが判別され(ステップSt48)、上記所定気圧に達したと判別された場合には、ステップSt49に移行する。このステップSt49では、上記第3窒素ガス導入弁が閉塞され、上記ファンモータ111の駆動が開始され、また、上記第5タイマ128eはON動作される。このファンモータ111の駆動により、内部に導入された上記窒素ガスは真空冷却室4内で拡散されるとともに上記ワークと接触し、また、拡散された窒素ガスは上記熱交換器112と接触し冷却される。こうした作用により、上記ワークは上記第5タイマ128eによる設定時間(冷却時間)内において徐々に冷却される。次いで、ステップSt50では、上記中央演算処理装置(CPU)125により、第5タイマ128eによる所定時間が経過したことが判別されると、該第5タイマ128eがOFF動作されるとともに、上記ファンモータ110の駆動が停止され(ステップSt51)、次いで、ステップSt52において、上記第3窒素ガス導入弁が開放される(ステップSt52)。こうした第3窒素ガス導入弁の開放により真空冷却室4内の気圧は徐々に高まり、ステップSt53では、該真空冷却室4内の気圧が大気圧に達したか否かが判別される。上記中央演算処理装置(CPU)125により、真空冷却室4内の気圧が大気圧に達したと判別された場合には、上記第3窒素ガス導入弁は閉塞され(ステップSt54)、次いで、上記搬出側シールドドア12は開閉される(ステップSt55)。すなわち、上記搬出側シールドドア開閉装置の駆動により、上記搬出側シールドドア12は開放されるとともに、上記第3の内部搬送用モータの駆動により、ワークは下流側(真空冷却室4の外側)に搬送される。なお、この際、上記中央演算処理装置(CPU)125により、上記搬出側台車121に設けられた台車用搬出シリンダの駆動も開始され、これら上記第3の内部搬送用モータの駆動と台車用搬出シリンダとの駆動により、真空冷却室4内のワークは所定の温度に冷却された状態で上記搬出側台車121上に搬出される。こうしたワークの搬出が完了すると、上記搬出側シールドドア開閉装置置駆動により、それまで解放されていた上記搬出側シールドドア12は閉塞される。
【0064】
なお、上記工程では、真空乾燥室2内において一旦中真空領域(例えば、5Pa)まで真空引きした(ステップSt3)後に所定の気圧(例えば、15kPa)まで復圧し(ステップSt5)させ、その後に上記上流側断熱室13内の温度が所定温度(例えば、摂氏100度)まで昇温した(ステップSt7)が、本発明では、このように真空乾燥室2内において中真空領域まで真空引きし所定の気圧まで復圧させることなく、上記ろう付け用処理装置1外において、予めワークを所定温度(例えば、摂氏80度前後)に加熱し、この加熱されたワークを上記真空乾燥室2内に搬入し(本発明を構成する加熱・搬入工程を実行し)、その上で上記ステップSt10以降を実行しても良い。なお、この場合において、上記ステップSt10は、第1高真空排気系のみの駆動を開始し、上記第1タイマのOFF動作その他は行われない。そして、このようにろう付け用処理装置1外において、予めワークを所定温度に加熱し、この加熱されたワークを上記真空乾燥室2内に搬入し(本発明を構成する加熱・搬入工程を実行し)、その上で真空乾燥室2内の気圧を高真空領域まで真空引きし、その後に先に説明したそれぞれの工程を実行してろう付け処理した場合であっても、後述する作用効果と同じ作用効果を実現することができる。
【実施例】
【0065】
本発明者らは、先に説明した方法によりすき間充填試験を行った。このすき間充填試験は、軽金属溶接構造協会のLWS T8801として規格された方法であり、発明者らは、
図13に示すように、75mm×50mmに成形された長方形状のベース母材(水平材)Pの上面に垂直に起立させたブレージングシート(心材とろう材を熱間圧延工程でクラッド圧延(圧着)した板)Bの
図13中右端から5mmの位置に2mmの径のステンレス製のスペーサSを挟むことにより、上記ベース母材Pの上面とブレージングシートBの下面との間に一定のクリアランスを設定するとともに、上記ベース母材PとブレージングシートBを図示しない二つの固定用細線により該ブレージングシートBの起立状態を保持させることにより、先に説明したろう付け方法を実施し、上記ブレージングシートBを構成するろう材が上記すき間に充填された長さ(すき間充填長さ)を測定した。なお、上記ベース母材Pは、本発明を構成する一方の母材であり、上記ブレージングシートBは、本発明を構成する他方の母材及びろう材である。また、このすき間充填試験では、上記ベース母材Pは、JIS規格(アルミニウムろう付け用材料の企画:JIS H 4000−1999)に基づく「1050」と「3003」との二種類とした。また、上記ブレージングシートは上記JIS規格に基づく「BAS−231」を用いた。そして、上記すき間充填試験におけるろう付け条件中、(先に説明したステップSt36に対応する)ろう付け温度は摂氏595度とし、(先に説明したステップSt37〜39に対応する)ろう付け温度の保持時間は3分とした。そして、上記ろう付け条件の下、(ステップSt30に対応する圧力として)低真空領域内である圧力(気圧)として、68kPa、51kPa、22kPa及び3kPaの4種類の条件に設定した。またさらに、本発明を構成する高純度不活性ガスとして、(ステップSt31に対応する)アルゴンガスと(ステップSt26に対応する)窒素ガスの流量の比率を、それぞれ1:0、4:5、1:2にそれぞれ変更し、上記すき間充填試験を行った。
【0066】
図14は、上記すき間充填試験に基づくすき間充填長さを記載した実験結果表である。この実験結果表からも明らかなように、上記実験では、良好なすき間充填長さ(ろう材の流動性)は、窒素ガスの流量に対するアルゴンガスの流量比率が高くなる程、それぞれ良好となることが確認された。例えば、アルゴンガスと窒素ガスとのそれぞれの流量の比率が1:2である場合には、ろう付け室3内の圧力を68kPaとした場合も、51kPaとした場合も、3kPaとした場合も、それぞれ上記すき間充填長さは35mに満たない結果であった。逆に、窒素ガスの流量に対してアルゴンガスの流量比率を上げた場合には、上記何れの圧力による場合であってもそれぞれ概ね良好であり、とりわけ窒素ガスを使用することなくアルゴンガスのみを流入させながらろう付け処理した場合には、極めて良好なすき間長さ(ろう材の流動性)を得ることができた。
【0067】
さらに本発明者らは、JIS規格(アルミニウムろう付け用材料の企画:JIS H 4000−1999)に基づくアルミニウム合金「A7075」を試料として、上述したろう付け方法と同様の加熱処理(上記ステップSt36参照)を所定時間(ステップSt37〜39参照)に亘って行うとともに、該加熱処理を行う際のろう付け室3内の気圧(ステップSt30参照)を、8kPa、22kPa、30kPa、36kPa、51kPa及び68kPaの計6種類にそれぞれ変更し、それぞれの試料に含有するMg成分とZn成分を測定した。なお、上記加熱温度は、ろう付け温度と同等の温度とし、また、上記加熱時間は、3分間とした。また、上記それぞれの試料に含有するMg成分とZn成分のEPMAによる濃度分布測定は、試料表面から150μm迄の深さで200μmの幅とした範囲内と、試料表面から1,000μm迄の深さで900μmの幅とした範囲内と、の2つの範囲でそれぞれ測定した。
【0068】
図15は、MgとZnの残留量を示す実験結果表である。なお、この
図15に示す「成分%」は、上記各測定範囲内におけるMgやZnの濃度の平均値である。この実験結果表からも明らかなように、上記ろう付け方法によれば、処理圧力が8kPa〜68kPaの範囲ではあるが、低真空領域内で加熱することにより、MgやZnの残留量は概ね良好であった。特に、処理圧力が22kPa〜68kPaの範囲では、Mg及びZnの残留量はより一層良好であることが判明し、また、ワークの機械的強度及び耐腐食性を良好なものとすることができることが確認された。
【0069】
以上の実施例の説明からも明らかなように、先に説明した実施の形態に係るアルミニウム材のろう付け方法や上記アルミニウム材のろう付け用処理装置1によれば、予めワーク(上記)を所定温度に加熱する加熱工程が、上記真空乾燥室2内で行われても、該真空乾燥室2外で行われる場合であっても、上記真空乾燥室2内で行われるろう付け準備工程により、該真空乾燥室2内のワークや該真空乾燥室2に存在する酸素分及び水分等の酸化促進成分は真空乾燥室外にほぼ完全に排出されるとともに、ろう付け処理工程においては、上記高純度不活性ガス雰囲気中において、上記低真空領域中で該ろう付け室の温度を上記ろう材の溶融温度まで昇温することから、ワークの表面に形成されている酸化被膜(Al2O3)は、ろう材にMgを含有している場合には、このMgと反応して酸化Mg(MgO)となりワークの表面から剥がれるために、従来の発明に比べて該ろう材の流動性は促進され、上記酸化被膜(Al2O3)を間に介することなく直接各母材に付着することとなり、また、上記ろう付け処理工程においては、上記実施例の説明からも明らかなように、低真空領域中で行われることから、ワークやろう材に含まれたMgやZnの飛散量を低減させることができ、上記母材の強度や耐食性を維持することができ、ひいては、上記ワークの機械的強度を十分満足させることができる。
【0070】
特に、ろう付け室3(下流側断熱室63)内にて行われるろう付け処理工程は、先に説明したように、例えば30kPa等(実施例では、3kPa〜68kPa)の低真空領域の気圧で行われることから、ワークである母材やろう材に含有したMgやZnの蒸発を抑制することにより母材の強度や耐食性を維持することができるばかりではなく、ろう材の流動性を相当程度高めることが可能となる。また、上記アルミニウム材のろう付け方法では、上述した通り、ステップSt3にて第1次真空引き工程がされた後に、ステップSt4において、真空乾燥室2内に前記高純度不活性ガスを流入させながら該真空乾燥室2内の気体を外部に排気することにより該真空乾燥室2内の気圧を前記低真空領域の範囲(例えば、15kPa:ステップSt5,6参照)内において復圧する第1次復圧工程が実行
されるとともに、上記加熱工程(ステップSt7,8)では、該真空乾燥室2内を前記ワーク又は該真空乾燥室内の水分が蒸発する温度以上で摂氏150度以下の所定温度(例えば、摂氏100度)となるまで加熱することから、より一層ろう材の流動性を高めることができる。
【0071】
さらに、上記ろう付け処理されるワークは、
図8に示すトレー20上に載置し、上記ガス流入ボックス21により取り囲まれた状態とされ、前記ろう付け処理工程では、上記ガス流入ボックス21の上方から前記高純度不活性ガスを該ガス流入ボックス21内に向かって分散させ該ガス流入ボックス21内に万遍なく流入させるとともに、上記トレー20に形成された複数のガス排出用開口である複数の貫通穴20dの下側からろう付け室3内の気体を外部に排気していることから、上記ろう付け室3全体に高純度不活性ガスが拡散されてしまうことはなく、ワークを囲むガス流入ボックス21内において高純度の状態を維持させることが可能となるとともに、使用する高純度不活性ガスの流量を抑制することが可能となり、ろう付け処理コストを低減することができる。加えて、上記実施の形態に係るアルミニウム材のろう付け方法(及び上記ろう付け用処理装置1)によれば、真空乾燥室2又はろう付け室3内の酸素分及び水分等の酸化促進成分は、該真空乾燥室2又はろう付け室3内部で拡散することなく外部に効果的に排出することができることから、より一層ろう材の流動性を向上させることができ、該ろう材を介して強固にワークを接合することが可能となる。
【0072】
さらにまた、上記実施の形態に係るアルミニウム材のろう付け方法(及び上記ろう付け用処理装置1)によれば、上記ガス流入ボックス21の上方から該ガス流入ボックス21内に向かって流入される高純度不活性ガスはアルゴンガスであり、該アルゴンガスがガス流入ボックス21内の多くを占める雰囲気中でろう付け処理が行われることから、よりろう材の流動性をより高めることが可能となる。特に、上記ろう付け方法やろう付け用処理装置1では、上記ろう付け処理工程において、前記ガス流入ボックス21の上方から該ガス流入ボックス21内に向かって流入される高純度不活性ガスとしてのアルゴンガスを流入させるとともに、該ろう付け室3には窒素ガスを流入させ、上記窒素ガスとアルゴンガスとの流量比率は、該アルゴンガス流量が高いことから、更に一層ろう材の流動性をより高めることが可能となる。
【0073】
なお、上記実施の形態に係るアルミニウム材のろう付け方法やアルミニウム材のろう付け用処理装置1では、複数の貫通穴20dが形成されたトレー20上にワークを配置し、このワークを上記ガス流入ボックス21により取り囲んだ状態でろう付け処理したものを説明したが、本発明では、上記トレー20を使用することなく、上記貫通穴が複数形成された底板部を備え上方は開放された図示しないガス流入ボックスを使用しても良い。また、上記ワークは、上記トレー20又は上記底板部上に直接的に配置し又は載置する方法以外に、複数の開口が形成された図示しないバスケット上にワークを載置して上記ろう付け方法を実施し、さらには、こうしたバスケットを複数段に亘って積み重ねて上記ろう付け方法を実施しても良い。このように、複数段に亘ってバスケットを積み重ね、これらのバスケットにそれぞれ上記ワークを載置することにより、上述したアルミニウム材のろう付け方法を実施することにより、一度に多数のワークにろう付け処理することができる。