特許第6796935号(P6796935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796935
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】棒状成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/27 20060101AFI20201130BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20201130BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20201130BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20201130BHJP
   B29K 77/00 20060101ALN20201130BHJP
   B29K 81/00 20060101ALN20201130BHJP
   B29K 105/06 20060101ALN20201130BHJP
   B29L 1/00 20060101ALN20201130BHJP
【FI】
   B29C45/27
   C08K7/02
   C08L101/00
   C08J5/04CER
   C08J5/04CEZ
   B29K77:00
   B29K81:00
   B29K105:06
   B29L1:00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-30887(P2016-30887)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2017-24388(P2017-24388A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-143074(P2015-143074)
(32)【優先日】2015年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501041528
【氏名又は名称】ダイセルポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】高坂 繁行
(72)【発明者】
【氏名】島田 隆広
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−136214(JP,A)
【文献】 特開平08−142218(JP,A)
【文献】 特開2008−208257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状充填剤を含む熱可塑性樹脂組成物を金型内に射出成形する工程を有している棒状成形体の製造方法であって、
繊維状充填剤を含む熱可塑性樹脂組成物が、繊維状充填材の束に樹脂を含浸させたものを6〜30mmの範囲で切断した樹脂含浸繊維束を含んでいるものであり、
前記棒状成形体が、外径が均一な部分を含む、幅方向の断面形状が円形または多角形のものであり、
前記棒状成形体の寸法と金型に熱可塑性樹脂を射出するときのゲートの寸法が、下記式(I)〜(IV)の関係を満たしている、棒状成形体の製造方法。
8≦D≦L (I)
1≦L/D≦20 (II)
S/10≦SG≦S (III)
D/10≦NG≦4 (IV)
[式中の記号の意味は、次の通りである。
S:棒状成形体の断面積(mm2)であり、前記棒状成形体が均一外径のときは前記均一外径部分の断面積であり、前記棒状成形体が頭部とねじ山を有するボルトであるときは、前記ネジ山部分の断面積である。
D:棒状成形体の断面形状が円形のときの直径(mm)、または棒状成形体の断面形状が多角形のときの内接円の直径(mm)
L:棒状成形体の長さ(mm)
SG:ゲート総面積(mm2
NG:ゲート数]
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル、PPS、スチレン系樹脂から選ばれるものであり、繊維状充填材が、ガラス繊維、炭素繊維、有機繊維、金属繊維、無機繊維(ガラス繊維を除く)から選ばれるものである、請求項1記載の棒状成形体の製造方法。
【請求項3】
前記棒状成形体に含有されている繊維の重量平均繊維長が0.8mm以上である、請求項1または2記載の棒状成形体の製造方法。
【請求項4】
前記棒状成形体が、幅方向の断面が円形であり、周面にねじ山を有しているものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の棒状成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製のボルトは軽量化の点で有利であるが、金属と比べると強度の点で十分ではないため、樹脂に繊維状充填材を配合することで強度が高められている。
樹脂製のボルトのような棒状成形体中に繊維状充填材を配合して強度を高めようとするときは、繊維が長さ方向に配向された状態で含有されていることが重要になる。
しかし、通常の射出成形法を適用したときは、棒状成形体の表層部分は繊維が長さ方向に配向されるが、中心部はランダムに存在するため、全体としての配向度が低く、十分な強度を付与することができない。
【0003】
特許文献1、2には、特定の固定型と可動型の組み合わせからなる金型を使用して射出成形することで、繊維が軸方向と平行に配向された樹脂製ボルトとその製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−293534号公報
【特許文献2】特開平7−293535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、長軸方向への繊維状充填材の配向度が高い棒状成形体が得られる棒状成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、繊維状充填剤を含む熱可塑性樹脂組成物を金型内に射出成形する工程を有している棒状成形体の製造方法であって、
前記棒状成形体が、外径が均一な部分を含む、幅方向の断面形状が円形または多角形のものであり、
前記棒状成形体の寸法と金型に熱可塑性樹脂を射出するときのゲートの寸法が、下記式(I)〜(IV)の関係を満たしており、前記棒状成形体中に含まれている繊維の重量繊維長(Iw)が0.5mm以上である、棒状成形体の製造方法。
8≦D≦L (I)
1≦L/D≦20 (II)
S/10≦SG≦S (III)
D/10≦NG≦4 (IV)
[式中の記号の意味は、次の通りである。
S:棒状成形体の断面積(mm2
D:棒状成形体の断面形状が円形のときの直径(mm)、または棒状成形体の断面形状が多角形のときの内接円の直径(mm)
L:棒状成形体の長さ(mm)
SG:ゲート総面積(mm2
NG:ゲート数]
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、長軸方向への繊維状充填材の配向度が高く、曲げ強度が高い棒状成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は本発明の製造方法で得られる棒状成形体の斜視図、(b)は(a)の一底面図。
図2】(a)は本発明の製造方法で得られる別実施形態の棒状成形体の斜視図、(b)は(a)の一底面図。
図3】(a)は本発明の製造方法で得られるさらに別実施形態の棒状成形体の斜視図、(b)は(a)の一底面図。
図4】(a)〜(c)は、本発明の製造方法で使用する、金型内のキャビティに通じるゲートの平面図。
図5】(a)は、本発明の製造方法により得られる長ねじボルトの斜視図、(b)は、本発明の製造方法により得られる全ねじ六角ボルトの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の棒状成形体の製造方法により製造することができる棒状成形体は、外径が均一な部分を含んでおり、幅方向の断面形状が円形、楕円形、多角形などのものであり、多角形は正多角形でもよいし、正多角形でなくてもよい。
棒状成形体は、長さ方向全体の外径が均一なものでもよいし、一部に外径の大きな部分または外径の小さな部分を含んでいるものでもよい。前記の外径の大きな部分または外径の小さな部分は、棒状成形体の一端部または両端部にあってもよいし、棒状成形体の中間部分にあってもよい。
【0010】
<繊維状充填材を含む熱可塑性樹脂組成物>
本発明の製造方法で使用する熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と繊維状充填材、および必要に応じて公知の樹脂用添加剤を含有するものである。
熱可塑性樹脂は特に制限されるものではなく、用途に応じて選択することができるものであり、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプレンなどのポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、PBTなどのポリエステル、PPS、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、および各種ポリマーアロイなどから選択することができる。
【0011】
繊維状充填材は特に制限されるものではなく、用途に応じて選択することができるものであり、ガラス繊維、炭素繊維、無機繊維(ガラス繊維を除く)、有機繊維、金属繊維などから選択することができる。
繊維状充填材の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して10〜60質量部が好ましい。
【0012】
公知の添加剤としては、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、可塑剤、軟化剤、分散剤、安定化剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などの酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤など)、アンチブロッキング剤、結晶核成長剤、充填剤(シリカやタルクなどの粒状充填剤など)、滑剤などを挙げることができる。
【0013】
本発明で用いる繊維状充填剤を含む樹脂組成物は、繊維状充填材の束に熱可塑性樹脂を含浸させたものを6〜50mmの範囲で切断した樹脂含浸繊維束を含むものが好ましい。
前記樹脂含浸繊維束は、繊維状充填材を長さ方向に揃えた状態で束ね、前記繊維状充填材の束に熱可塑性樹脂を溶融させた状態で含浸させ一体化した後に6〜30mmの長さに切断したものが好ましい。
前記樹脂含浸繊維束に含まれる繊維状充填材の長さは、樹脂含浸繊維束の長さと同一である。
前記樹脂含浸繊維束の直径は、0.8〜3mmの範囲であることが好ましい。
【0014】
樹脂含浸繊維束に含まれる繊維状充填材は、繊維径(単糸径)6〜30μmのものを使用することができる。
繊維束を構成する繊維の本数は、繊維の種類により繊維径が異なるため、繊維の種類に応じて選択することができる。
例えば、繊維状充填材としてガラス繊維(繊維径17μm)を使用したとき、100〜30000本が好ましく、より好ましくは500〜20000本、さらに好ましくは1000〜10000本程度である。
また例えば、繊維状充填材として炭素繊維(繊維径7μm)を使用したとき、1000〜40000本が好ましく、より好ましくは5000〜35000本、さらに好ましくは10000〜30000本程度である。
【0015】
樹脂含浸繊維束は、ダイスを用いた周知の製造方法により製造することができ、例えば、特開平6−313050号公報の段落番号7、特開2007−176227号公報の段落番号23のほか、特公平6−2344号公報(樹脂被覆長繊維束の製造方法並びに成形方法)、特開平6−114832号公報(繊維強化熱可塑性樹脂構造体およびその製造法)、特開平6−293023号公報(長繊維強化熱可塑性樹脂組成物の製造方法)、特開平7−205317号公報(繊維束の取り出し方法および長繊維強化樹脂構造物の製造方法)、特開平7−216104号公報(長繊維強化樹脂構造物の製造方法)、特開平7−251437号公報(長繊維強化熱可塑性複合材料の製造方法および製造装置)、特開平8−118490号公報(クロスヘッドダイおよび長繊維強化樹脂構造物の製造方法)等に記載の製造方法を適用することができる。
また樹脂含浸繊維束としては、ダイセルポリマー(株)から販売されている、各種熱可塑性樹脂と、ガラス繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維、アラミド繊維などの繊維状充填材を含むプラストロン(登録商標)シリーズを使用することもできる。
【0016】
<棒状成形体の製造方法>
本発明の棒状成形体の製造方法は、繊維状充填材を含む熱可塑性樹脂組成物(上記の樹脂含浸繊維束)を使用して、公知の射出成形法を適用して製造するとき、前記棒状成形体の寸法と金型に熱可塑性樹脂を射出するときのゲートの寸法が、下記式(I)〜(IV)の関係を満たすようにする。
【0017】
8≦D≦L (I)
1≦L/D≦20 (II)
S/10≦SG≦S (III)
D/10≦NG≦4 (IV)
[式中の記号の意味は、次の通りである。
S:棒状成形体の断面積(mm2であり、前記棒状成形体が均一外径のときは前記均一外径部分の断面積であり、前記棒状成形体が頭部とねじ山を有するボルトであるときは、前記ネジ山部分の断面積である。
D:棒状成形体の断面形状が円形のときの直径(mm)、または棒状成形体の断面形状が多角形のときの内接円の直径(mm)
L:棒状成形体の長さ(mm)
SG:ゲート総面積(mm2
NG:ゲート数]
【0018】
上記式中のS、D、Lについて説明する。
本発明の製造方法で得られる棒状成形体は、図1図3に示すように外径が均一のもののほか、図5(b)に示すように一部に外径の大きな部分を含んでいるものであり、幅方向の断面形状は円形(図1図5)または多角形(図2図3))のものである。
幅方向の断面形状が多角形のときは、正三角形(図2)、正方形(図3)、正五角形、正六角形、正八角形などである。
【0019】
図1(a)、(b)に示す棒状成形体1は、長さLの円柱であり、底面2、3は円形で、直径Dである。
図2(a)、(b)に示す棒状成形体11は、長さLの三角柱であり、底面12、13は正三角形で、内接円の直径がDである。
図3(a)、(b)に示す棒状成形体21は、長さLの四角柱であり、底面22、23は正四角形で、内接円の直径がDである。
【0020】
上記式中のSG、NGについて説明する。
図4(a)〜(c)は、金型内のキャビティに通じる部分に2つのゲート31、32、3つのゲート31〜33、4つのゲート31〜34を有している状態が示されている。
SGは、複数のゲートの合計面積である。
NGは1〜4であり、図4では、NGは2、3または4である。
ゲートの形状は特に制限されるものではないが、円形または楕円形が好ましいが、円形がより好ましい。
ゲートの配置状態は、ゲート同士が間隔をおいて配置されていればよい。
図4(a)に示すようにゲートが2つのときは、中心Oを通る同一直線(直径)上に2つの円形ゲート31、32の中心が位置するように配置されていることが好ましい。
また2つの円形ゲート31、32は、中心Oからの半径がrであるとき、0.1r〜0.9rの範囲に形成されていることが好ましい。
【0021】
図4(b)に示すようにゲートが3つのときは、中心Oを基点として、3つの円形ゲートの中心と中心Oを結ぶ3本の線の長さが同一であり、中心Oと3本の線の角度が同一(120ー)になるように配置されていることが好ましい。
また3つの円形ゲート31〜33は、中心Oからの半径がrであるとき、0.1r〜0.9rの範囲に形成されていることが好ましい。
【0022】
図4(c)に示すようにゲートが4つのときは、中心Oを基点として、4つの円形ゲートの中心と中心Oを結ぶ4本の線の長さが同一であり、中心Oと4本の線の角度が同一(90)になるように配置されていることが好ましい。
また4つの円形ゲート31〜34は、中心Oからの半径がrであるとき、0.1r〜0.9rの範囲に形成されていることが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法では、上記式(I)〜(IV)を満たしていれば、射出成形時における射出圧力、射出速度、保持圧力、背圧、金型温度などは、繊維状充填材を含む公知の熱可塑性樹脂組成物を使用するときと同条件で実施することができる。
【0024】
本発明の製造方法を適用することによって、棒状成形体の長さ方向への繊維状充填材の配向度を高めることができる。
ここで「配向度」は、棒状成形体に含まれている繊維状充填材中、長さ方向に配向されている繊維状充填材の割合(質量%)であり、本発明においては、前記配向度は棒状成形体の曲げ強度で評価する。
同寸法の棒状成形体であれば、長さ方向に配向されている繊維状充填材量が多いほど、曲げ強度が大きくなる。
【0025】
また本発明の製造方法を適用することによって、含有されている繊維の重量繊維長(Iw)が0.5mm以上、好ましくは0.8mm以上である棒状成形体を得ることができる。棒状成形体内部に残存する繊維長が短くなると長さ方向に配向し難くなるため、曲げ強度が小さくなる。
【0026】
<ボルトの製造方法>
上記した本発明の棒状成形体の製造方法を適用することで、一部に外径の大きな部分を含んでいる、図5(a)に示すような長ねじボルト、図5(b)に示すような全ねじ六角ボルトなどのボルトのほか、木ねじなどを製造することができる。
図5(a)に示す長ねじボルト40は、周面の全体にねじ山41を有しており、内部には繊維状充填材が長軸方向に配向された状態で含有されている。なお、Dは底面42の直径である。
図5(b)に示す全ねじ六角ボルト45は、頭部47の下から周面の全体にねじ山46を有しており、少なくともねじ山46が形成されている内部には、繊維状充填材が状軸方向に配向された状態で含有されている。なお、Dは底面48の直径である。
【実施例】
【0027】
(1)重量繊維長(重量平均繊維長)
実施例および比較例で得た棒状成形体について、特開2013−121988号公報の段落番号0063に記載の下記の方法により測定した。
棒状成形品から約3gの試料を切出し、650℃で加熱して灰化させて繊維を取り出した。取り出した繊維の一部(500本)から重量平均繊維長を求めた。計算式は、特開2006−274061号公報の〔0044〕、〔0045〕を使用した。
【0028】
(2)曲げ強度
実施例および比較例で得た棒状成形体について、下記条件にて曲げ強度を測定した。
測定機器:オートグラフAG2000((株)島津製作所製)
試験速度:2mm/min
支点間距離:40mm
【0029】
実施例1、比較例1〜5
実施例1、比較例1、2は、熱可塑性樹脂組成物として、ポリアミドMXD6を50質量%とガラス長繊維50質量%からなる樹脂含浸繊維束(プラストロンMXD−GF50−02;直径2.8mm、長さ9mmの円柱形状;ダイセルポリマー(株))を使用した。
プラストロンMXD−GF50−02の長さと含有されているガラス繊維長さは同じである。
比較例3〜5は、熱可塑性樹脂組成物として、ポリアミドMXD50質量%とガラス短繊維50質量%からなる円柱状ペレット(プラストロンMXD−SGF50;直径2.0mm、長さ4mmの円柱形状;ダイセルポリマー(株))を使用した。
【0030】
実施例1、比較例1〜5の各組成物を使用して、次の条件で射出成形して、直径(D)12mm、長さ(L)80mmの丸棒を得た。得られた丸棒の残存繊維長と曲げ強度を測定した。結果を表1に示す。〇は式(I)〜式(IV)を満たしていること、・は式(I)〜式(IV)を満たしていないことを示している。
(射出成形条件)
射出成形機:日本製鋼所のJ150EII
シリンダー温度:280℃
背圧:2MPa
金型温度:160℃
【0031】
【表1】
【0032】
実施例1と比較例1は、同じ組成物を使用したが、比較例1が式(III)を満たしていないため、残存繊維長が短くなっており、この残存繊維長の違いが配向度の違いになり、曲げ強度の違いになったものと認められる。
実施例1と比較例2は、比較例2の方が残存繊維長は長いが、比較例2が式(IV)を満たしていないことが配向度の違いになり、曲げ強度の違いになったものと認められる。
比較例3〜5は、短繊維を使用しているため、残存繊維長が短く、配向度が低くなったため、曲げ強度も小さくなっている。
【0033】
実施例2、比較例6、7
実施例2、比較例6、7は、熱可塑性樹脂組成物として、ポリアミドMXD6を60質量%と炭素長繊維40質量%からなる樹脂含浸繊維束(プラストロンPAX−GF40−02;直径2.2mm、長さ9mmの円柱形状;ダイセルポリマー(株))を使用した。
プラストロンPAX−GF40−02の長さと含有されている炭素繊維長さは同じである。
【0034】
実施例2、比較例6、7の各組成物を使用して、下記の条件で射出成形して、直径(D)12mm、長さ(L)80mmの丸棒を得た。得られた丸棒の残存繊維長と曲げ強度を測定した。結果を表2に示す。〇は式(I)〜式(IV)を満たしていること、・は式(I)〜式(IV)を満たしていないことを示している。
(射出成形条件)
射出成形機:日本製鋼所のJ150EII
シリンダー温度:280℃
背圧:2MPa
金型温度:160℃
【0035】
【表2】
【0036】
実施例2と比較例6は、同じ組成物を使用したが、比較例6が式(III)を満たしていないため、残存繊維長が短くなっており、この残存繊維長の違いが配向度の違いになり、曲げ強度の違いになったものと認められる。
実施例2と比較例7は、比較例7の方が残存繊維長は長いが、比較例7が式(IV)を満たしていないことが配向度の違いになり、曲げ強度の違いになったものと認められる。
【0037】
実施例3、比較例8、9
実施例3、比較例8、9は、熱可塑性樹脂組成物として、PPS50質量%とガラス長繊維50質量%からなる樹脂含浸繊維束(プラストロンPPS−GF40−01;直径2.2mm、長さ9mmの円柱形状;ダイセルポリマー(株))を使用した。
プラストロンPPS−GF40−01の長さと含有されている炭素繊維長さは同じである。
【0038】
実施例3、比較例8、9の各組成物を使用して、下記の条件で射出成形して、直径(D)12mm、長さ(L)80mmの丸棒を得た。得られた丸棒の残存繊維長と曲げ強度を測定した。結果を表3に示す。〇は式(I)〜式(IV)を満たしていること、・は式(I)〜式(IV)を満たしていないことを示している。
(射出成形条件)
射出成形機:日本製鋼所のJ150EII
シリンダー温度:320℃
背圧:2MPa
金型温度:170℃
【0039】
【表3】
【0040】
実施例3と比較例8は、同じ組成物を使用したが、比較例8が式(III)を満たしていないため、残存繊維長が短くなっており、この残存繊維長の違いが配向度の違いになり、曲げ強度の違いになったものと認められる。
実施例3と比較例9は、比較例9の方が残存繊維長は長いが、比較例9が式(IV)を満たしていないことが配向度の違いになり、曲げ強度の違いになったものと認められる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の棒状成形体の製造方法で得られた棒状成形体は、各種ピン、各種木ねじ(皿頭または丸頭)、長ねじボルト、六角ボルト、全ねじ六角ボルトなどのボルトとして使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1、11、21 棒状成形体
31、32 ゲート
40、45 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5