特許第6796946号(P6796946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796946
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】田植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20201130BHJP
   A01B 49/04 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   A01C11/02 341
   A01B49/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-90978(P2016-90978)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-195840(P2017-195840A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 祐介
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−213443(JP,A)
【文献】 特許第4484755(JP,B2)
【文献】 特開2015−213444(JP,A)
【文献】 特開2013−176331(JP,A)
【文献】 特許第3440947(JP,B2)
【文献】 特許第3090837(JP,B2)
【文献】 国際公開第2003/086044(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/00−11/04
A01B 49/00−49/06
A01B 63/00−63/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整地装置と、前記整地装置を上下動可能に支持する支持リンク機構と、前記整地装置の高さを調節する高さ調節装置とを備える田植機において、
前記高さ調節装置は、駆動源と、前記駆動源の駆動によって回動される回動部材と、前記回動部材によって下方から支持されるとともに、当該回動部材による回動に伴って前記支持リンク機構を介して前記整地装置を上下動する被支持部材と、を備え、
前記回動部材によって前記被支持部材が支持されている状態で、前記被支持部材の上方への移動が許容されており、
前記高さ調節装置は、前記回動部材の回動に関わらず前記整地装置の高さを維持する固定手段を備える
ことを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記被支持部材は、前記整地装置を上下動する支持リンク機構のうち、最も被支持部材に近い位置にあるリンク支軸を中心とした円弧状にガイドされる
請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記駆動源の出力軸と、前記回動部材の回動軸と、前記リンク支軸の回動軸とは、互いに平行となるように配置される
請求項2に記載の田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整地装置を備えた田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、整地装置の高さを電動式に調節する構成を有する機構が開示されている。ここでは、圃場に落ちている石等に起因する整地装置の上昇を検出して苗載台を上昇させるとともに、電動駆動源から整地装置の上下動までのリンク機構の中に退避回動アームを含むことで、整地装置が大きく上昇した際に起こり得る調節機構の破損を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−176331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
整地装置の高さを電動式で調節可能とする技術は、整地装置の大きな重量、それに伴う作業者の負担を軽減するという観点から望まれていることであるといえる。そして、電動式の高さ調節機構においても整地装置の突き上げによる破損を防止するための機構を備えることが望ましい。
【0005】
一方で、整地装置の配置位置におけるスペース的余裕を考慮すると、高さ調節機構をコンパクトに構成するという要望もある。以上のように、整地装置の電動式高さ調節機構においては、整地装置への急激な突き上げによる破損を防止しつつ、シンプルかつ部品点数の少ない構造が求められているといえる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
整地装置と、前記整地装置を上下動可能に支持する支持リンク機構と、前記整地装置の高さを調節する高さ調節装置とを備える田植機において、前記高さ調節装置は、駆動源と、前記駆動源の駆動によって回動される回動部材と、前記回動部材によって下方から支持されるとともに、当該回動部材による回動に伴って前記支持リンク機構を介して前記整地装置を上下動する被支持部材と、を備え、前記回動部材によって前記被支持部材が支持されている状態で、前記被支持部材の上方への移動が許容されており、前記高さ調節装置は、前記回動部材の回動に関わらず前記整地装置の高さを維持する固定手段を備える。
【0007】
前記被支持部材は、前記整地装置を上下動する支持リンク機構のうち、最も被支持部材に近い位置にあるリンク支軸を中心とした円弧状にガイドされる。
【0008】
前記駆動源の出力軸と、前記回動部材の回動軸と、前記リンク支軸の回動軸とは、互いに平行となるように配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、整地装置の高さ調節機構において、整地装置への急激な突き上げによる破損を防止しつつ、シンプルかつ部品点数の少ない構造を提供できる。また、高さ調節装置の機能に支障をきたした場合でも、整地装置を収納した状態で固定して、植え付け作業を継続して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】田植機の全体構成を示す側面図。
図2】植付部に設けられるフロート及び整地装置を示す平面図。
図3】整地装置の全体構成を示す斜視図。
図4】整地装置の高さ調節装置の内部構造を示す斜視図。
図5】整地装置の高さ調節装置の内部構造を示す側面図。
図6】整地装置の高さ調節装置による収納の様子を示す図。
図7】伝動ケースの内部構造を示す図。
図8】伝動ケースの入力軸の傾斜を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、田植機の全体構成を示す図である。図1に示すように、田植機1は、エンジン2、動力伝達部3、植付部4及び昇降部5を備える。植付部4は、昇降部5を介して機体に連結される。昇降部5の作動を制御することによって植付部4を上下方向に自動昇降可能である。植付部4には、動力伝達部3を介してエンジン2からの動力が伝達されることで植付部4が駆動される。田植機1は、エンジン2の駆動によって走行しながら、植付部4によって圃場に苗を植え付ける。
【0012】
エンジン2からの駆動力は、動力伝達部3においてトランスミッション6を介して、PTO軸7に伝達される。PTO軸7はトランスミッション6から後方に突出して設けられる。PTO軸7からユニバーサルジョイントを介して植付センターケース8に動力が伝達されて、植付部4が駆動される。また、トランスミッション6から後方に向けて駆動軸9が設けられ、駆動軸9からリアアクスルケース10に駆動力が伝達される。リアアクスルケース10からさらに後方に整地駆動軸11が延出され、整地駆動軸11からユニバーサルジョイントを介して後述する整地装置30に駆動力が伝達される。
【0013】
植付部4は、植付アーム12、植付爪13、苗載台14、フロート15、整地装置30等を備える。植付爪13は、植付アーム12に取り付けられている。植付アーム12は、植付センターケース8から伝達される動力によって回転する。植付爪13には、苗載台14から苗が供給される。そして、植付アーム12による回転運動に伴って、植付爪13が圃場内に挿入され、所定の植深さ(植付爪13の爪出量)となるように苗が植え付けられる。なお、本実施形態では、ロータリ式の植付爪を採用しているが、クランク式のものを用いても良い。
【0014】
図2は、田植機の植付部の構成を示す図である。図2に示すように、植付部4は、左右方向に配置される複数のフロート(本実施形態は6条植えの田植機を示しており、中央2条分を整地するセンターフロート15A、その側方に配置され、側方2条分を整地する二つのサイドフロート15B)を備える。各フロート15A・15Bは、植付部4の下部に位置する植付フレーム51に取り付けられる。より具体的には、各フロートの前端は植付フレーム16に対して上下方向に揺動可能に支持され、各フロートの後端は植付フレーム51に設けられる回動支軸17にリンク機構18を介して昇降可能に取り付けられる。
【0015】
フロート15の前方には、枕地整地用の整地装置30が配置される。駆動軸9からの動力の一部がリアアクスルケース10を介して整地駆動軸11に分岐され、整地駆動軸11からユニバーサルジョイントを介して整地伝動軸31に伝達される。そして、整地伝動軸31からユニバーサルジョイント32、入力軸33及び伝動ケース34を介して、両側方に向けて延出される駆動軸35に伝達される。各駆動軸35には、複数のロータ36が固定され、駆動軸35の回転駆動によってロータ36が回転して圃場が整地される構成である。
【0016】
整地装置30は、中央が前方に配置され、中央から両側方に向かうに従ってそれぞれ前方から後方に向けて傾斜するように配置される。つまり、中央に配置される伝動ケース34が駆動軸35及びロータ36よりも前方に位置するように設けられており、上面視ハの字状に配置されている。このような構成によって、整地装置30の中央部の後方にスペースを確保し、そのスペースを利用してセンターフロート15Aを前方に寄せて配置することを可能としている。
【0017】
ここで、中央に配置されるセンターフロート15Aは、圃場接地面を検知するセンシングフロートとして利用されている。具体的には、田面の凹凸に応じて上下揺動するセンターフロート15Aの角度から植付部高さ(圃場と植付部4との距離)が決定されている。本実施形態では、整地装置30の構成を利用して、センターフロート15Aを前方に配置することで、センターフロート15Aによるセンシング精度を向上している。
【0018】
次に、図3から図5を参照して、整地装置30の全体構成及び支持構造について説明する。図3は、整地装置の全体構成を示す前方斜視図である。図4は、整地装置の高さ調節装置の内部構造を示す拡大後方斜視図である。図5は、整地装置の高さ調節装置の構造を示す拡大側面図であり、田植機の右から見た側面図である。
【0019】
整地装置30は、支持リンク機構40を介して、植付部4の苗載台フレーム50に取り付けられる。支持リンク機構40は、整地装置30を植付部4に対して上下動(回動)可能に支持する。つまり、整地装置30(伝動ケース34、駆動軸35及び整地ロータ36)は、支持リンク機構40の昇降に応じて植付部4に対する高さを変更可能である。
【0020】
支持リンク機構40は、整地装置30の延出方向(機体左右方向)に沿って設けられるリンク支軸41、リンク支軸41の両端に固定されるリンク42、リンク42と整地装置30を接続するとともに、整地装置30を支持する支持アーム43、及び、支持アーム43の下端と苗載台フレーム50を接続する補助リンク44を備える。
【0021】
リンク支軸41は、両端部においてアーム45を介して苗載台フレーム50に回動自在に支持される。このように、支持リンク機構40では、リンク支軸41の回動に伴って、リンク42が回動して支持アーム43が上下動することで整地装置30の苗載台フレーム50(植付部4)に対する高さを変更可能である。
【0022】
リンク支軸41の中途部の機体右寄りには、リンク支軸41を回動する電動式の高さ調節装置60が設けられる。高さ調節装置60を作動させることで、リンク支軸41を回動させて整地装置30の高さを調節可能である。また、高さ調節装置60は、苗載台フレーム50に支持されている。
【0023】
苗載台フレーム50は、角パイプ構造を有する植付フレーム51と、植付フレーム51の両側端部から上方に向けて設けられるサイドフレーム52と、サイドフレーム52の上下中途部に渡されるローリングアーム53と、サイドフレーム52の上端に渡されるピンホルダ54と、を備える。
【0024】
植付フレーム51の両側部には、支持リンク機構40の補助リンク44が固定されるブラケット57が設けられる。ローリングアーム53の両側部には、支持リンク機構40のアーム45が固定されるブラケット58が設けられる。また、ローリングアーム53上に、高さ調節装置60を固定するためのブラケット59が設けられる。そして、ブラケット57に補助リンク44が固定され、ブラケット58にアーム45が固定され、ブラケット59に高さ調節装置60が固定されることで、支持リンク機構40及び整地装置30が苗載台フレーム50に支持される。
【0025】
高さ調節装置60は、カバー70内に、回動ブラケット61、ガイドピン62、支持フレーム63、ガイド孔64、セクタギア65、電動モータ66、及び、ポテンショメータ67等を備える。
【0026】
回動ブラケット61は、リンク支軸41に固定されており、リンク支軸41の径方向に突出する部材である。回動ブラケット61の回動に伴ってリンク支軸41が回動される。回動ブラケット61の先端には、側方(リンク支軸41の軸方向)に向けて突出するガイドピン62が設けられる。リンク支軸41は、支持リンク機構40のうち、最もガイドピン62に近い位置にあるリンク部材である。リンク支軸41に加わる整地装置30の重量は、回動ブラケット61を介してガイドピン62に伝達される。
【0027】
支持フレーム63は、ブラケット59を介してローリングアーム53に固定される平板状の部材である。支持フレーム63は、リンク支軸41の径方向に沿って設けられる。支持フレーム63には、カバー70、電動モータ66、及び、ポテンショメータ67が固定されるとともに、セクタギア65が回動可能に設けられる。支持フレーム63の中途部には、ガイドピン62が挿通されるガイド孔64が形成される。ガイド孔64は、リンク支軸41を中心とした円弧状に形成されている。
【0028】
セクタギア65は、支持フレーム63に回動可能に支持される回動部材である。セクタギア65は扇型のギアであり、その上面でガイドピン62を直接支持する支持部材として機能する。言い換えれば、被支持部材となるガイドピン62に掛かる重量がセクタギア65によって下方から支持されており、ひいてはガイドピン62が設けられる回動ブラケット61に掛かる荷重、つまり、回動ブラケット61に固定されたリンク支軸41に対して加えられる整地装置30の重量が、ガイドピン62を介してセクタギア65によって下方から支持される構成である。
【0029】
電動モータ66は、セクタギア65を回動駆動する電動駆動源であり、その出力軸にセクタギア65のギアと歯合する出力ギア(ともに不図示)を有する。電動モータ66の出力軸は、リンク支軸41の軸方向と平行となるように配置されている。すなわち、電動モータ66の出力方向は機体左右方向に設定され、その出力軸の方向は、セクタギア65の回動軸の方向、及び、リンク支軸41の回動軸の方向と同じ方向となるように配置される。このように、各部材の出力方向を平行に配置することで、部材を配置した際の厚みを抑えることが可能となり、高さ調節装置60をコンパクトに収めることが可能となる。これにより、配管、配線等で混雑している苗載台14の裏側の空間において、高さ調節装置60を設置する際のスペースを大きく取る必要がなくなり、苗載台14の裏側におけるレイアウトの自由度を向上することが可能である。
【0030】
セクタギア65の半径は、電動モータ66の出力ギアの半径よりも大きく設定される。このことから、電動モータ66の出力がセクタギア65によって減速されて伝達される。そして、その出力先であるガイドピン62の作用位置は、セクタギア65の回動支点と異なる位置に設定されている。ガイドピン62の位置は、電動モータ66の出力点に対してセクタギア65の回動支点よりも内側に配置されている。また、セクタギア65の回動支点とガイドピン62との距離は、ガイドピン62の回転半径(リンク支軸41とガイドピン62との距離)よりも小さくなるように設定されていることから、セクタギア65からガイドピン62への動力の伝達も減速されることとなる。このように、電動モータ66からリンク支軸41への伝達経路において二段階の減速を経ることで、電動モータ66の出力を効率的にリンク支軸41へ伝達することを可能にしている。
【0031】
そして、そのような構成において、ポテンショメータ67は、セクタギア65の回動軸の回転角度を検出することで、より正確な検出値を得ることが可能であるとともに、検出値を用いて電動モータ66の出力を制御する際により正確な制御が可能となる。
【0032】
カバー70は、高さ調節装置60を覆う外装であり、特に、電動モータ66を含む電気系統を保護する保護部材である。図5に示すように、カバー70の一部であって、回動ブラケット61が配置される側と反対側が切り欠かれており、その切り欠きを通じてガイド孔64及びガイド孔64内のガイドピン62の位置を目視することが可能であり、整地装置30の高さ調節に際する初期設定及び不具合の確認等を容易にしている。
【0033】
図4及び図6に示すように、支持フレーム63に固定用孔68が形成される。そして、回動ブラケット61の固定用孔68に対応する位置に固定用孔68と連通可能な固定用孔69が形成される。具体的には、固定用孔68は、ガイドピン62に対して、回動ブラケット61の回動中心であるリンク支軸41寄りに設けられるとともに、ガイドピン62が最上位置に移動した位置に対応する位置に設けられる。固定用孔69は、リンク支軸41と固定用孔68との距離と同じ距離となるように、回動ブラケット61に設けられる。そして、ガイドピン62が最上位置に移動した際に、これら固定用孔68・69を通じて固定ピンを挿通することで回動ブラケット61をその位置で固定することが可能である。
【0034】
このように、固定用孔68・69を利用することで、回動ブラケット61が最上となる位置に維持することが可能となる。つまり、整地装置30を最上位置にして収納した状態を維持することができる。これにより、高さ調節装置60の機能に支障をきたした場合でも、整地装置30を収納した状態での植え付け作業を継続することが可能である。なお、このとき、電動モータ66に不具合がある場合は手動で整地装置30を持ち上げることも可能である。
【0035】
以上のように、高さ調節装置60は、電動モータ66によってセクタギア65を駆動して、ガイドピン62をガイド孔64に沿って円弧状に上下動させることで、回動ブラケット61(リンク支軸41)を回動させて整地装置30の高さを調節するものである。その際、整地装置30の自重を受けるガイドピン62は、セクタギア65によって下方から支持されていることにより、上方への移動が許容された状態となる。つまり、高さ調節装置60によって所定の高さに調節された整地装置30に対して地面からの反力が加わり上方への突き上げが発生した場合に、ガイドピン62の上方への移動が許容されていることから、整地装置30及び支持リンク機構40に突発的に掛かる大きな外力を上方へ逃がすことが可能である。このように、電動式の高さ調節装置60を備えた整地装置30において、地面からの過大な反力を受けたときに、整地装置30の本体の破損を防止することが可能である。そして、本実施形態の高さ調節装置60では、スプリング、リンク機構等を用いてガイドピン62の上方への移動を許容するものではないため、シンプルかつ部品点数の少ない構造で整地装置30の突き上げ回避機構を備えることが可能である。
【0036】
次に、図7及び図8を参照して、整地装置30の伝動ケース34内の構造及び入力軸33について説明する。
【0037】
図7に示すように、整地伝動ケース34内には、入力軸33、アイドラ軸80及び駆動軸35が配置される。入力軸33の端部には、傘歯車81が固定される。この傘歯車81は、アイドラ軸80の中途部に固定される傘歯車82と噛み合う。アイドラ軸80の両端部には、テーパ歯車83が配置される。テーパ歯車83は、駆動軸35の端部に設けられる平歯車84と噛み合う。なお、平歯車84はテーパ歯車でも良い。
【0038】
このように、整地装置30の駆動系においては、整地伝動ケース34を中央に配置して、それを基点に左右両側方の駆動軸35を後方に傾斜させている。そこで、整地伝動ケース34では、入力軸33を中心として側方に駆動軸35が配置され、入力軸33と駆動軸35の間にアイドラ軸80を配置することによって、両側方に駆動軸35の回転方向を同一方向にしている。
【0039】
アイドラ軸80は、入力軸33の後方に配置され、アイドラ軸80は駆動軸35に対して後方側から噛み合っている。このように、アイドラ軸80を配置することにより、入力軸33の位置を後方に寄せることができる。これにより、整地伝動ケース34をコンパクトに構成でき、不整地区間を小さくできる。
【0040】
すなわち、図7に示すように、整地伝動ケース34内において、左右に配置される駆動軸35の中心軸の交点Qが入力軸33の中途部に位置する。このため、交点Qよりも後ろ側で入力軸33の傘歯車81とアイドラ軸80の傘歯車82とが噛み合うこととなり、整地伝動ケース34の前後方向の大きさをコンパクトにできる。また、アイドラ軸80を入力軸33及び駆動軸35・35の後方にオフセットさせて配置することで、整地伝動ケース34の左右方向の幅が大きくなることを防いでいる。このように、整地伝動ケース34は、前後方向の幅を小さくしつつ、左右方向の幅も小さくなるように構成されている。
【0041】
図8に示すように、入力軸33は、水平方向に対して上方に傾斜して設けられている。入力軸33への動力の伝達は、ユニバーサルジョイント32を介して行われるが、整地装置30に対してその動力の取り出し元となるリアアクスルケース10は上方に配置されている。そのため、ユニバーサルジョイント32の作動角が大きくなりすぎてしまうと、ユニバーサルジョイント32の寿命が短くなるという課題が含まれる。しかし、本実施形態のように入力軸33を前高後低に設けて上方に傾倒させることで、ユニバーサルジョイント32の折れ角を小さくして負荷を減らすことで、寿命を延ばすことが可能となる。
【0042】
また、伝動ケース34内の動力伝達構造においては、入力軸33を傾斜させるに留まり、入力軸33以外を水平に配置することで、同一平面上にロータ36の駆動軸を有することとなる。これにより、入力軸33から伝達される動力を効率的にロータ36に伝達することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1:田植機、30:整地装置、40:支持リンク機構、41:リンク支軸、50:苗載台フレーム、60:高さ調節装置、61:回動ブラケット、62:ガイドピン(被支持部材)、63:支持フレーム、64:ガイド孔、65:セクタギア(回動部材)、66:電動モータ(電動駆動源)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8