特許第6796963号(P6796963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796963
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】半田付け装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/08 20060101AFI20201130BHJP
   B23K 3/06 20060101ALI20201130BHJP
   B23K 3/04 20060101ALI20201130BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20201130BHJP
   B23K 1/002 20060101ALI20201130BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20201130BHJP
   B23K 101/42 20060101ALN20201130BHJP
【FI】
   B23K1/08 320B
   B23K3/06 C
   B23K3/04 Y
   B23K1/00 A
   B23K1/002
   H05K3/34 506K
   B23K101:42
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-139122(P2016-139122)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-8297(P2018-8297A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中原 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】堀 陽平
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−253667(JP,A)
【文献】 特開2005−296961(JP,A)
【文献】 特開平06−057346(JP,A)
【文献】 特開平10−141869(JP,A)
【文献】 特開2015−196892(JP,A)
【文献】 特開平11−135931(JP,A)
【文献】 特開平07−336039(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/039526(WO,A1)
【文献】 特開2003−311398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/08
B23K 1/00 − 1/002
B23K 3/04 − 3/06
H05K 3/34
B23K 101/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田槽に収容された半田材料を加熱して溶融させる第1加熱手段と、
前記第1加熱手段により溶融された半田材料を噴流させ、かつ噴流口より半田材料を噴出させて対象物に接触させる噴流手段と
を備え、前記対象物に半田付けを行う半田付け装置において、
前記噴流口の近傍に設けられ、かつ前記噴流手段により噴流される半田材料を誘導加熱により加熱する第2加熱手段と、
前記噴流口より噴出される半田材料の温度を検出する温度検出手段と、
前記噴流口より噴出される半田材料の噴出高さを検出する高さ検出手段と、
前記高さ検出手段により検出された噴出高さが予め決められた高さ目標値に近似するように前記噴流手段の出力を調整する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、予め決められた目標温度に対する前記温度検出手段により検出された検出温度の偏差、並びに前記高さ検出手段により検出された噴出高さにより必要加熱量を算出し、算出した必要加熱量から出力電流値を算出して、前記第2加熱手段に前記出力電流値の大きさの電流が流れるよう該第2加熱手段の出力を調整することを特徴とする半田付け装置。
【請求項2】
前記第2加熱手段は、絶縁材料から構成される絶縁体に囲繞された態様で前記半田槽に収容された半田材料に浸漬されて配設されたことを特徴とする請求項1に記載の半田付け装置。
【請求項3】
前記絶縁体は、
一の絶縁材料から構成され、かつ前記第2加熱手段を収容する絶縁ケースと、
前記絶縁ケースとは異なる他の絶縁材料から構成され、前記絶縁ケースの内部に充填される絶縁材と
を備えて構成されたことを特徴とする請求項2に記載の半田付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付け装置に関し、より詳細には、半田材料を昇温溶融して液状にし、液状の半田材料を対象物に接触させて半田付けを行う半田付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半田材料を昇温溶融して液状にし、液状の半田材料を対象物である基板に接触させて半田付けを行う半田付け装置として次のようなものが知られている。
【0003】
例えば、半田材料を非導電体からなる半田槽に収容し、該半田槽の外側に配置された電磁誘導加熱器にて該半田材料を誘導加熱して昇温溶融させる半田付け装置である。このような半田付け装置は、溶融した半田材料を噴流手段により噴流させて基板に接触させることにより、半田付けを行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−053527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、電源基板に用いられるプリント基板では、大電流化に伴い、導体パターンの厚銅化や部品の大型化、プリント基板上に大型のヒートシンクを搭載する等の傾向がある。このようなプリント基板では、基板の熱容量が大きくなってしまい、半田付けでは多くの熱量の供給が必要とされる。そこで、半田付け装置では、基板に接触させる半田材料の温度を高くして対応することとなる。
【0006】
しかしながら、上述した従来の半田付け装置は、半田槽に収容された半田材料の全てを半田付けに好適な温度にまで加熱しているので、加熱量が過大なものになってしまう。しかも、大熱容量の基板に対応すべく半田材料の温度を高くする場合には、半田材料の全てを加熱して昇温しなければならず、温度調整に時間を要してしまい、容易に調整することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、加熱量が過大になることを抑制しつつ、半田材料を好適な温度に容易に調整することができる半田付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る半田付け装置は、半田槽に収容された半田材料を加熱して溶融させる第1加熱手段と、前記第1加熱手段により溶融された半田材料を噴流させ、かつ噴流口より半田材料を噴出させて対象物に接触させる噴流手段とを備え、前記対象物に半田付けを行う半田付け装置において、前記噴流口の近傍に設けられ、かつ前記噴流手段により噴流される半田材料を誘導加熱により加熱する第2加熱手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記半田付け装置において、前記第2加熱手段は、絶縁材料から構成された絶縁体に囲繞された態様で前記半田槽に収容された半田材料に浸漬されて配設されたことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記半田付け装置において、前記絶縁体は、一の絶縁材料から構成され、かつ前記第2加熱手段を収容する絶縁ケースと、前記絶縁ケースとは異なる他の絶縁材料から構成され、前記絶縁ケースの内部に充填される絶縁材とを備えて構成されたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記半田付け装置において、前記噴流口より噴出される半田材料の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段により検出された検出温度が予め決められた目標温度に近似するよう前記第2加熱手段の出力を調整する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記半田付け装置において、前記制御手段は、前記噴流口より噴出される半田材料の噴出高さをパラメータとして前記第2加熱手段の出力を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、噴流口の近傍に設けられた第2加熱手段が、第1加熱手段により加熱されるとともに噴流手段により噴流された溶融状態の半田材料を誘導加熱により加熱するので、半田槽に収容された半田材料の全てを半田付けに好適な温度にまで加熱する必要がない。しかも、噴流口に向けて噴流される溶融状態の半田材料を誘導加熱により加熱するので、温度調整に要する時間の短縮化を図ることができる。従って、加熱量が過大になることを抑制しつつ、半田材料を好適な温度に容易に調整することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態1である半田付け装置を模式的に示す説明図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1である半田付け装置の特徴的な制御系を示すブロック図である。
図3図3は、図2に示した制御部が実施する温度調整処理の処理内容を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施の形態2である半田付け装置を模式的に示す説明図である。
図5図5は、本発明の実施の形態2である半田付け装置の特徴的な制御系を示すブロック図である。
図6図6は、プロペラ回転数と噴出高さとの関係を示す図表である。
図7図7は、噴出高さと必要加熱量との関係を示す図表である。
図8図8は、電流値と必要加熱量との関係を示す図表である。
図9図9は、図5に示した制御部が実施する回転数調整処理の処理内容を示すフローチャートである。
図10図10は、図5に示した制御部が実施する温度調整処理の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る半田付け装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1である半田付け装置を模式的に示す説明図であり、図2は、本発明の実施の形態1である半田付け装置の特徴的な制御系を示すブロック図である。ここで例示する半田付け装置は、半田槽10、加熱ユニット20、導入流路30、温度検出センサS1及び制御部40を備えて構成されている。
【0017】
半田槽10は、上面が開放された箱状の形態を成すものである。この半田槽10は、SUS316や鋳鉄等の金属材により構成されており、内部に半田材料(例えば鉛フリー半田)を収容するものである。かかる半田槽10には、噴流部11及びヒータプレート(第1加熱手段)12が設けられている。
【0018】
噴流部11は、半田槽10の上端より上方に突出する態様で設けられた筒状のものである。この噴流部11は、上方に向かうに連れて横断面積が漸次小さくなる態様で構成されており、上面開口が噴流口11aを形成している。
【0019】
ヒータプレート12は、半田槽10の側面及び下面に取り付けられている。このヒータプレート12は、駆動指令が与えられて通電状態になることにより発熱し、半田槽10に収容された半田材料を例えば220℃程度に加熱して溶融状態で保持するものである。
【0020】
加熱ユニット20は、ユニット本体21を備えている。ユニット本体21は、角筒状の形態を成すものであり、上壁部21a、下壁部21b、内周壁部21c及び外周壁部21dが例えばポリイミド等の耐熱樹脂製やセラミックス等の絶縁材料から構成された絶縁ケースである。
【0021】
尚、上壁部21a、下壁部21b及び外周壁部21dのいずれか1つ又は全部をフェライト等の磁性材としてもよく、これにより加熱性能の向上と、発熱を噴流部11に集中させることができる。また上壁部21aをフェライト等の磁性材とすれば、装置外への磁束の漏れを抑制することができる。
【0022】
このようなユニット本体21は、内周壁部21cにより形成される中空部22が噴流部11に連通する態様で、すなわち中空部22の上面開口が噴流口11aに連通する態様で設置されている。つまり、ユニット本体21は、半田槽10に収容された半田材料に浸漬されて配設されている。換言すると、噴流部11は、ユニット本体21に取り付けられることにより、上述したように半田槽10の上端より上方に突出する態様で設けられている。
【0023】
かかるユニット本体21の内部には、誘導加熱コイル(第2加熱手段)23が耐熱セメント24とともに設けられている。誘導加熱コイル23は、円筒状の銅パイプから構成されるもので、ユニット本体21の各壁部21a等から離隔しつつ内周壁部21cを巻回する態様で設けられている。
【0024】
このような誘導加熱コイル23は、インバータ25に電気的に接続されており、該インバータ25より特定の周波数(例えば25kHz)の電圧が印加される場合に、ユニット本体21の中空部22を通過する流体を誘導加熱する加熱手段である。ここで、インバータ25は、図示せぬ商用電源から与えられる交流を特定の周波数の交流として誘導加熱コイル23に与えるものである。
【0025】
また誘導加熱コイル23は、中空部分23aに冷却水が通過する水冷式のものである。耐熱セメント24は、ユニット本体21の内部に充填された絶縁材である。
【0026】
導入流路30は、例えばSUS304、SUS316等のステンレス材や鋳物等で構成される直方状のものであり、上面に形成された吐出口31が上記ユニット本体21の中空部22の下面開口に連続する態様で半田槽10の内部に設けられている。このような導入流路30の内部には、プロペラ32が設けられている。
【0027】
プロペラ32は、上下方向に沿って延在する回転棒33を通じてモータ34に連係されており、モータ34が駆動する場合に回転棒33の中心軸回りに回転するものである。
【0028】
このプロペラ32は、回転することにより、導入流路30の下面に形成された導入口35より溶融された状態の半田材料を導入して該導入流路30を通過させ、その後に吐出口31より上記ユニット本体21の中空部22に吐出して該中空部22を上方に向けて噴流させて上記噴流口11aより噴出させることにより、対象物である基板1に半田材料を接触させる噴流手段である。
【0029】
このことにより、上記誘導加熱コイル23は、噴流口11aの近傍に設けられ、かつプロペラ32により噴流されて中空部22を通過する溶融状態の半田材料を誘導加熱により例えば250℃程度に加熱する加熱手段である。
【0030】
温度検出センサS1は、噴流口11aを通過する半田材料の温度を検出する温度検出手段である。この温度検出センサS1は、噴流口11aを通過する半田材料の温度を検出した場合、その検出温度を信号として制御部40に送出するものである。
【0031】
制御部40は、メモリ49に記憶されたプログラムやデータにしたがって半田付け装置の動作を統括的に制御するものであり、入力処理部41、算出処理部42及び出力処理部43を備えている。尚、制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現してもよい。
【0032】
入力処理部41は、温度検出センサS1から送出される信号(検出温度)を入力するものである。算出処理部42は、加熱量算出部42a及び電流値算出部42bを有している。
【0033】
加熱量算出部42aは、メモリ49に記憶された目標温度を読み出して、目標温度と入力処理部41を通じて入力した検出温度との偏差から所定の関係式により必要加熱量を算出するものである。尚、目標温度は、図示せぬ入力手段を通じて入力された温度をメモリ49で記憶したものである。
【0034】
電流値算出部42bは、加熱量算出部42aを通じて算出された必要加熱量から所定の関係式により出力する電流値を算出するものである。
【0035】
出力処理部43は、所定の電流値の電流が誘導加熱コイル23に流れるようインバータ25に対して指令を出力するものである。
【0036】
以上のような構成を有する半田付け装置においては、次のようにして基板1に半田材料を接触させて半田付けを行うことができる。
【0037】
半田付け装置においては、ヒータプレート12が通電状態になることにより、半田槽10に収容された半田材料が例えば220℃程度に加熱されて溶融される。このようにして半田槽10に収容された半田材料が全て溶融した後、プロペラ32が回転することにより、溶融した半田材料は、導入口35を通じて導入流路30に導入されて噴流し、導入流路30を通過した後にユニット本体21の中空部22を上方に向けて噴流する。
【0038】
そして、誘導加熱コイル23が例えば25kHz程度の電圧が印加されて例えば150A程度の電流が流れることにより、中空部22を通過する半田材料を例えば250℃程度に誘導加熱する。この結果、噴流口11aより噴出された半田材料を基板1に接触させて半田付けを行うことができる。
【0039】
このような半田付けを行う場合において、半田付け装置の制御部40は次のような温度調整処理を実施する。
【0040】
図3は、図2に示した制御部40が実施する温度調整処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0041】
この温度調整処理において制御部40は、入力処理部41を通じて温度検出センサS1より送出された検出温度を入力した場合(ステップS101:Yes)、加熱量算出部42aを通じてメモリ49より目標温度を読み出す(ステップS102)。
【0042】
目標温度を読み出した制御部40は、加熱量算出部42aを通じて目標温度と入力処理部41を通じて入力した検出温度との偏差から所定の関係式により必要加熱量を算出する(ステップS103)。
【0043】
その後、制御部40は、電流値算出部42bを通じて、加熱量算出部42aで算出された必要加熱量から所定の関係式により出力する電流値を算出する(ステップS104)。
【0044】
このようにして出力する電流値を算出した制御部40は、出力処理部43を通じて、該電流値の大きさの電流が誘導加熱コイル23に流れるようインバータ25に対して指令を出力し(ステップS105)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0045】
これによれば、噴流口11aを通過する半田材料の温度を目標温度に近似させることができる。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態1である半田付け装置によれば、噴流口11aの近傍に設けられた誘導加熱コイル23が、ヒータプレート12により加熱されるとともにプロペラ32により噴流された溶融状態の半田材料を誘導加熱により加熱するので、半田槽10に収容された半田材料の全てを半田付けに好適な温度(例えば250℃程度)にまで加熱する必要がない。しかも、噴流口11aに向けて噴流される溶融状態の半田材料を誘導加熱により加熱するので、温度調整に要する時間の短縮化を図ることができる。従って、加熱量が過大になることを抑制しつつ、半田材料を好適な温度に容易に調整することができる。
【0047】
上記半田付け装置によれば、誘導加熱コイル23を収容するユニット本体21が半田槽10に収容された半田材料に浸漬されて配設されているので、装置全体の小型化を図ることができる。
【0048】
上記半田付け装置によれば、誘導加熱コイル23が一の絶縁材料により構成されるユニット本体21の内部に他の絶縁材料により構成される耐熱セメント24とともに収容されており、該耐熱セメント24がユニット本体21の内部に充填されているので、誘導加熱コイル23の加熱及び冷却等に基づく熱ストレスに対しても良好な絶縁性を保持することができる。これにより、使用寿命の長大化を図ることができる。
【0049】
上記半田付け装置によれば、制御部40が、温度検出センサS1により検出された検出温度が予め決められた目標温度に近似するよう誘導加熱コイル23の出力を調整するので、噴流口11aより噴出される半田材料を早期に目標温度に近似するよう調整することができる。
【0050】
<実施の形態2>
図4は、本発明の実施の形態2である半田付け装置を模式的に示す説明図であり、図5は、本発明の実施の形態2である半田付け装置の特徴的な制御系を示すブロック図である。尚、上述した実施の形態1の半田付け装置と同様の構成を有するものには同一の符号を付して重複した説明を適宜省略する。
【0051】
ここで例示する半田付け装置は、半田槽10、加熱ユニット20、導入流路30、温度検出センサS1、高さ検出センサS2、速度制御インバータ36及び制御部50を備えて構成されている。
【0052】
高さ検出センサS2は、例えばレーザー光等を用いて噴流口11aより噴出される半田材料の噴出高さを検出する高さ検出手段である。この高さ検出センサS2は、半田材料の噴出高さを検出した場合、その高さ検出値を信号として制御部50に送出するものである。
【0053】
速度制御インバータ36は、図示せぬ商用電源から与えられる交流を特定の周波数の交流としてモータ34に与えるものである。
【0054】
制御部50は、メモリ59に記憶されたプログラムやデータにしたがって半田付け装置の動作を統括的に制御するものであり、入力処理部51、算出処理部52及び出力処理部53を備えている。尚、制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現してもよい。
【0055】
入力処理部51は、温度検出センサS1や高さ検出センサS2から送出される信号(検出温度や高さ検出値)、あるいは入力手段2を通じて入力された信号(目標温度や高さ目標値)を入力するものである。ここで入力手段2は、利用者が直接操作入力するものである。この入力手段2により入力されて与えられた信号(目標温度や高さ目標値)はメモリ59に記憶される。
【0056】
算出処理部52は、回転数算出部52a、加熱量算出部52b及び電流値算出部52cを有している。回転数算出部52aは、メモリ59に記憶された高さ目標値から下記関係式(1)に基づき回転数初期値を算出するものである。
【0057】
関係式(1)
h=a・n−b(h:噴出高さ、n:プロペラ回転数、a,b:定数)
【0058】
この関係式(1)は、図6に示すようなプロペラ回転数と噴出高さとの関数を示している。
【0059】
また回転数算出部52aは、入力処理部51を通じて入力した高さ検出値から上記関係式(1)に基づき回転数を算出するものである。
【0060】
加熱量算出部52bは、メモリ59に記憶された目標温度を読み出して、目標温度と入力処理部51を通じて入力した検出温度との偏差から下記関係式(2)により必要加熱量を算出するものである。
【0061】
関係式(2)
Q=c・ΔT√h(Q:必要加熱量、ΔT:目標温度−検出温度、h:噴出高さ、c:定数)
【0062】
この関係式(2)は、図7に示すように噴出高さと必要加熱量との関数を示している。
【0063】
電流値算出部52cは、加熱量算出部52bを通じて算出された必要加熱量から下記関係式(3)により出力する電流値を算出するものである。
【0064】
関係式(3)
Q=k・I(I:電流値、k:定数)
【0065】
この関係式(3)は、図8に示すように電流値と必要加熱量との関数を示している。
【0066】
出力処理部53は、上記関係式(1)により算出された回転数にてプロペラ32が回転するように速度制御インバータ36に対して指令を出力するものである。また出力処理部53は、上記関係式(3)により算出された電流値が誘導加熱コイル23に流れるようインバータ25に対して指令を出力するものである。
【0067】
以上のような構成を有する半田付け装置においては、次のようにして基板1に半田材料を接触させて半田付けを行うことができる。
【0068】
半田付け装置においては、ヒータプレート12が通電状態になることにより、半田槽10に収容された半田材料が例えば220℃程度に加熱されて溶融される。このようにして半田槽10に収容された半田材料が全て溶融した後、プロペラ32を回転させる。ここでプロペラ32の回転数初期値は、制御部50が回転数算出部52aを通じてメモリ59に記憶された高さ目標値から上記関係式(1)により算出される。
【0069】
このようにして回転数初期値にてプロペラ32を回転させることにより、溶融した半田材料は、導入口35を通じて導入流路30に導入されて噴流し、導入流路30を通過した後にユニット本体21の中空部22を上方に向けて噴流する。
【0070】
そして、誘導加熱コイル23が例えば25kHz程度の電圧が印加されて例えば150A程度の電流が流れることにより、中空部22を通過する半田材料を例えば250℃程度に誘導加熱する。この結果、噴流口11aより噴出された半田材料を基板1に接触させて半田付けを行うことができる。
【0071】
このような半田付けを行う場合において、半田付け装置の制御部50は次のような回転数調整処理及び温度調整処理を実施する。
【0072】
図9は、図5に示した制御部50が実施する回転数調整処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0073】
この回転数調整処理において制御部50は、入力処理部51を通じて高さ検出センサS2より送出された高さ検出値を入力した場合(ステップS201:Yes)、回転数算出部52aを通じて上記関係式(1)により回転数を算出する(ステップS202)。
【0074】
このようにして回転数を算出した制御部50は、出力処理部53を通じて、プロペラ32が算出した回転数で回転するよう速度制御インバータ36に対して指令を出力し(ステップS203)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0075】
これによれば、噴流口11aからの半田材料の噴出高さを高さ目標値に近似させることができる。
【0076】
図10は、図5に示した制御部50が実施する温度調整処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0077】
この温度調整処理において制御部50は、入力処理部51を通じて、温度検出センサS1より送出された検出温度を入力するとともに高さ検出センサS2より送出された高さ検出値を入力した場合(ステップS211:Yes,ステップS212:Yes)、加熱量算出部52bを通じてメモリ59より目標温度を読み出す(ステップS213)。
【0078】
目標温度を読み出した制御部50は、加熱量算出部52bを通じて目標温度と入力処理部51を通じて入力した検出温度との偏差(ΔT)を求め、入力処理部51を通じて入力した高さ検出値と、上記関係式(2)とにより必要加熱量を算出する(ステップS214)。
【0079】
その後、制御部50は、電流値算出部52cを通じて、加熱量算出部52bで算出された必要加熱量から上記関係式(3)により出力する電流値を算出する(ステップS215)。
【0080】
このようにして出力する電流値を算出した制御部50は、出力処理部53を通じて、該電流値の大きさの電流が誘導加熱コイル23に流れるようインバータ25に対して指令を出力し(ステップS216)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
【0081】
これによれば、噴流口11aを通過する半田材料の温度を目標温度に近似させることができる。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態2である半田付け装置によれば、噴流口11aの近傍に設けられた誘導加熱コイル23が、ヒータプレート12により加熱されるとともにプロペラ32により噴流された溶融状態の半田材料を誘導加熱により加熱するので、半田槽10に収容された半田材料の全てを半田付けに好適な温度(例えば250℃程度)にまで加熱する必要がない。しかも、噴流口11aに向けて噴流される溶融状態の半田材料を誘導加熱により加熱するので温度調整に要する時間の短縮化を図ることができる。従って、加熱量が過大になることを抑制しつつ、半田材料を好適な温度に容易に調整することができる。
【0083】
上記半田付け装置によれば、誘導加熱コイル23を収容するユニット本体21が半田槽10に収容された半田材料に浸漬されて配設されているので、装置全体の小型化を図ることができる。
【0084】
上記半田付け装置によれば、誘導加熱コイル23が一の絶縁材料により構成されるユニット本体21の内部に他の絶縁材料により構成される耐熱セメント24とともに収容されており、該耐熱セメント24がユニット本体21の内部に充填されているので、誘導加熱コイル23の加熱及び冷却等に基づく熱ストレスに対しても良好な絶縁性を保持することができる。これにより、使用寿命の長大化を図ることができる。
【0085】
上記半田付け装置によれば、制御部50が、温度検出センサS1により検出された検出温度だけでなく、高さ検出センサS2により検出された高さ検出値もパラメータとして誘導加熱コイル23の出力を調整するので、噴流口11aより噴出される半田材料を早期かつ高精度に目標温度に近似するよう調整することができる。
【0086】
以上、本発明の好適な実施の形態1及び2について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0087】
上述した実施の形態1及び2では、ヒータプレート12により半田槽10に収容された半田材料を加熱していたが、本発明においては、半田槽の外側に設けられた誘導加熱装置にて誘導加熱により半田材料を加熱してもよい。
【0088】
上述した実施の形態2では、高さ検出センサS2により噴出高さを検出していたが、本発明においては、プロペラ(噴流手段)の回転数を検出することにより半田材料の噴出高さを演算してもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 半田槽
11 噴流部
11a 噴流口
12 ヒータプレート
20 加熱ユニット
21 ユニット本体
22 中空部
23 誘導加熱コイル
24 耐熱セメント
25 インバータ
30 導入流路
32 プロペラ
34 モータ
40 制御部
41 入力処理部
42 算出処理部
43 出力処理部
49 メモリ
S1 温度検出センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10