(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラは、前記停止処理を実行した後、前記操作部の前記巻下操作方向への操作量が所定の操作量基準値未満になった場合には、前記停止処理を解除する、請求項1又は2に記載の電動ウインチ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、従来の油圧式ウインチ装置に対して新規なウインチ装置として、電動モータでウインチドラムを駆動する電動ウインチ装置が開発されている。この電動ウインチ装置においても吊荷の巻下げ時にワイヤーロープの乱巻が発生する問題点がある。特に、吊荷を巻き下げて当該吊荷が着床したときにワイヤーロープに弛みが生じて乱巻が発生するという現象が発見されており、この吊荷の着床時に生じるワイヤーロープの乱巻を防止するための技術が求められている。
【0007】
前記特許文献1の技術は、ウインチドラムの巻下げ操作の起動時に生じる乱巻を防止する技術であり、この技術で吊荷の着床時の乱巻の発生を防止することは難しい。また、当該特許文献1の乱巻防止のための技術は油圧式ウインチ装置における油圧モータの制御を前提としており、当該技術をそもそも電動ウインチ装置に適用することは不可能である。
【0008】
本発明は、吊荷を巻き下げて着床したときに発生するワイヤーロープの乱巻を防止可能な電動ウインチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による電動ウインチ装置は、建設機械に搭載される電動ウインチ装置であって、吊荷を吊り下げるワイヤーロープが巻回されたウインチドラムと、前記ウインチドラムを、前記吊荷を巻き上げる回転方向である巻上方向又は前記吊荷を巻き下げる回転方向である巻下方向へ回転させる電動モータと、基準位置から前記吊荷の巻上げを指示するための操作方向である巻上操作方向と前記吊荷の巻下げを指示するための操作方向である巻下操作方向とに操作可能な操作部と、前記ワイヤーロープの張力の指標値である張力指標値を計測する計測部と、前記操作部の操作に応じた前記ウインチドラムの前記巻上方向又は前記巻下方向への回転が行われるように前記電動モータの作動を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記計測部により計測された前記張力指標値に基づいて所定期間における前記ワイヤーロープの張力の平均値を導出し、前記操作部が前記巻下操作方向に操作された状態で、導出した前記ワイヤーロープの張力の平均値が所定の張力基準値以下になった場合に前記電動モータの作動を停止させる停止処理を実行する。
【0010】
この電動ウインチ装置では、操作部が巻下操作方向に操作されて吊荷が巻き下げられている過程で吊荷が着床し、所定期間におけるワイヤーロープの張力の平均値が張力基準値以下になった場合に、電動モータの作動が停止されてウインチドラムの巻下方向への回転が停止される。このため、この吊荷の着床によるワイヤーロープの張力低下に起因したワイヤーロープの弛みを抑制できる。その結果、当該電動ウインチ装置では、吊荷が着床したときに発生するワイヤーロープの乱巻を防止することができる。
【0011】
前記電動ウインチ装置において、前記ワイヤーロープには、前記吊荷を吊るすフックが接続され、前記張力基準値は、前記フックの荷重未満の所定の値に設定されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、吊荷の着床時のワイヤーロープの乱巻防止のための電動モータの停止処理を確実に実行することができる。すなわち、所定期間におけるワイヤーロープの張力の平均値がフックの荷重未満の値になる場合は、吊荷が着床し、さらにその吊荷を吊るすフックまで着床した状態であるため、当該構成によれば、吊荷が着床したときの乱巻防止のための電動モータの停止処理を確実に実行できる。
【0013】
前記電動ウインチ装置において、前記計測部は、前記電動モータに供給される電流の値を前記張力指標値として逐次計測する電流計であり、前記コントローラは、前記電流計により計測された電流値に基づいて前記電動モータが前記ウインチドラムに付与するトルクを算出するとともに、その算出したトルクの前記所定期間における平均値を前記ワイヤーロープの張力の平均値に相当する値として算出す
る。
【0014】
この構成によれば、ワイヤーロープの張力の平均値に相当する値を良好な精度で算出することができ、その算出値に基づく電動モータの停止制御の精度を向上できる。具体的には、従来、クレーン等の建設機械では、例えば、ブーム等の起伏部材の姿勢を保持する起伏ロープ等の部材に荷重計を取り付けてその部材に加わる荷重を計測したり、起伏部材を起伏ロープを介して起伏させる起伏ドラムに荷重計を取り付けて起伏ドラムに加わる荷重を計測したりして、その計測した荷重値から吊荷を吊るワイヤーロープの張力を推測するような手法がとられている。この手法では、ワイヤーロープの張力を直接的に計測していないため、得られる張力の推測値の精度が低くなる。これに対し、本構成でコントローラが算出するトルクは、従来のクレーンで得られる荷重値からのワイヤーロープの推測値に比べて、ワイヤーロープの張力値をより直接的に表す値となる。このため、コントローラが、このトルクの所定期間における平均値をワイヤーロープの張力の平均値に相当する値として算出し、その平均値に基づいてワイヤーロープの乱巻防止のための電動モータの停止制御を行うことで、当該停止制御の精度を向上できる。
【0015】
前記電動ウインチ装置において、前記コントローラは、前記停止処理を実行した後、前記操作部の前記巻下操作方向への操作量が所定の操作量基準値未満になった場合には、前記停止処理を解除してもよい。
【0016】
この構成によれば、電動モータの停止処理が実行されてウインチドラムの巻下方向への回転が停止された後、操作者が操作部を基準位置側へ戻してその操作部の巻下操作方向への操作量を操作量基準値未満にすることで、電動モータの停止処理を解除して再び電動モータにウインチドラムを巻下方向に回転させてワイヤーロープの繰り出し等を行わせることができる。
【0017】
前記電動ウインチ装置は、前記停止処理の実行を指示するための停止入力を入力可能な入力装置をさらに備え、前記コントローラは、前記入力装置が前記停止入力を受けた場合には前記停止処理を実行し、前記入力装置が前記停止入力を受けていない場合には前記停止処理を実行しなくてもよい。
【0018】
この構成によれば、操作者が入力装置に停止入力を入力しないことにより、ワイヤーロープの乱巻防止のための電動モータの停止処理を解除することができる。これにより、例えば建設機械による作業の種類等が電動モータの停止処理を働かせたくないようなものである場合に、操作者がその電動モータの停止処理を自らの意思で解除することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吊荷を巻き下げて当該吊荷が着床したときに発生するワイヤーロープの乱巻を防止可能な電動ウインチ装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、本発明の一実施形態による電動ウインチ装置の構成が示されている。本実施形態による電動ウインチ装置は、建設機械としてのクレーンに設けられ、吊荷4の巻上又は巻下を行う。
【0022】
前記クレーンは、図略のクレーン本体に起伏可能となるように設けられたブーム1を備えている。ブーム1の先端からは、ワイヤーロープ2を介してフック3が吊り下げられている。吊荷4はフック3によって吊られる。本実施形態による電動ウインチ装置は、図略のクレーン本体に設置されている。当該電動ウインチ装置は、ウインチドラム5を回転させることで、ワイヤーロープ2を介して吊荷4の巻上又は巻下を行う。
【0023】
本実施形態による電動ウインチ装置は、ウインチドラム5と、ブレーキ6と、減速機7と、電動モータ8と、インバータ9と、電源10と、回生抵抗11と、コントローラ12と、操作レバー装置13と、荷重計15と、ドラム回転計16と、ブーム角度計17と、電流計18と、入力装置20と、を備える。
【0024】
ウインチドラム5には、ワイヤーロープ2が巻回されている。ウインチドラム5は、減速機7を介して電動モータ8の回転軸8aと接続されている。ウインチドラム5は、電動モータ8のトルクにより回転する。また、ウインチドラム5は、回転軸5aを有しており、この回転軸5aには、ウインチドラム5の回転を制御するためのブレーキ6が接続されている。
【0025】
ブレーキ6は、メカニカルブレーキであり、コントローラ12による制御を受けて、ウインチドラム5の回転を制動する制動状態と、ウインチドラム5の制動を解放する解放状態とに切り換えられる。ブレーキ6としては、例えば、バンド式或いは湿式ディスク式のブレーキが採用できる。
【0026】
ウインチドラム5は、一方の回転方向である巻上方向に回転することによりワイヤーロープ2を巻き取り、それによって吊荷4を巻き上げる。また、ウインチドラム5は、巻上方向と逆の巻下方向に回転することによりワイヤーロープ2を繰り出し、それによって吊荷4を巻き下げる。
【0027】
電動モータ8は、例えば、三相モータである。電動モータ8は、インバータ9に電気的に接続され、そのインバータ9は電源10に電気的に接続されている。すなわち、電動モータ8は、インバータ9を介して電源10に電気的に接続されている。電動モータ8は、インバータ9による制御の下、電源10から供給される電力により駆動され、ウインチドラム5を巻下又は巻上駆動する。電動モータ8のトルクは、回転軸8a、減速機7、及び回転軸5aを介してウインチドラム5に伝達され、ウインチドラム5が巻上又は巻下駆動される。
【0028】
インバータ9は、例えば、U,V,W相のそれぞれにつき2つのスイッチング素子が割り当てられた合計6個のスイッチング素子を含む三相インバータで構成されている。インバータ9は、コントローラ12から入力される制御信号にしたがって電動モータ8を駆動させる。
【0029】
減速機7は、電動モータ8の回転軸8aの回転力を所定の減速比で減速してウインチドラム5の回転軸5aへ伝える。
【0030】
電源10は、例えば、クレーンに搭載されるバッテリである。或いは、電源10は、クレーンに搭載されたプラグイン端子を介して接続された外部電源であってもよい。
【0031】
回生抵抗11は、インバータ9に電気的に接続されている。この回生抵抗11は、電源10が回生しきれない余剰電力を消費し、電力調整を行う。本実施形態では、この回生抵抗11の機能により電動モータ8に回生ブレーキが掛けられるようになっている。
【0032】
コントローラ12は、例えば、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータで構成される。コントローラ12は、操作レバー装置13の後述する操作レバー13aの操作量に応じた回転速度で電動モータ8が作動するようにインバータ9を制御する。また、コントローラ12は、操作レバー13aが中立位置にあるときにはブレーキ6を制動状態にし、操作レバー13aが中立位置から巻下操作方向または巻上操作方向へ操作されたことに応じてブレーキ6を解放状態にする。
【0033】
また、コントローラ12には、荷重計15、ドラム回転計16、ブーム角度計17及び電流計18等のセンサが接続されている。コントローラ12は、荷重計15、ドラム回転計16及びブーム角度計17の計測値にしたがって、吊荷4の状態を把握する。
【0034】
また、コントローラ12は、インバータ9が電動モータ8に供給する電流の計測値を電流計18から取得し、その取得した電流の計測値からウインチドラム5に発生するトルクを計算する。
【0035】
操作レバー装置13は、吊荷4の巻上げ及び巻下げを指示するための装置である。操作レバー装置13は、ウインチドラム5を吊荷4の巻上方向へ回転させるための操作又はウインチドラム5を吊荷4の巻下方向へ回転させるための操作が入力される操作レバー13aを有する。操作レバー13aは、本発明における操作部の一例である。操作レバー13aは、例えば、中立位置を中心に前後或いは左右に傾倒可能に構成されている。中立位置は、本発明における操作レバーの基準位置の一例である。操作レバー13aの中立位置から一方向への操作方向が吊荷4の巻下げを指示するための巻下操作方向であり、操作レバー13aの中立位置から巻下操作方向と反対の操作方向が吊荷4の巻上げを指示するための巻上操作方向である。
【0036】
操作レバー装置13は、操作レバー13aが中立位置から巻下操作方向に傾倒操作されると、その操作レバー13aの中立位置からの傾倒量(操作量)を表す信号をコントローラ12へ出力する。また、操作レバー装置13は、操作レバー13aが中立位置から巻上操作方向に傾倒操作されると、その操作レバー13aの中立位置からの傾倒量(操作量)を表す信号をコントローラ12へ出力する。なお、巻下操作方向への操作レバー13aの操作量をマイナスの値とし、巻上操作方向への操作レバー13aの操作量をプラスの値とすることで、操作レバー13aの操作方向が巻下操作方向と巻上操作方向のいずれであるかの区別が可能となっている。
【0037】
荷重計15は、例えば、ブーム1の起伏姿勢を保持する起伏ロープに取り付けられたり、起伏ロープを介してブーム1を起伏させる図略の起伏ドラムに取り付けられる。この荷重計15は、起伏ロープに加わる荷重や起伏ロープから起伏ドラムに加わる荷重を計測する。この荷重計15による荷重の計測値は、吊荷4が停止している状態でのワイヤーロープ2の張力や吊荷4及びフック3の重量を推測するために用いられる。コントローラ12は、荷重計15による計測値を逐次取得し、取得した計測値から所定の演算式を用いてワイヤーロープ2の張力と吊荷4及びフック3の重量を算出する。
【0038】
ドラム回転計16は、ウインチドラム5の単位時間当たりの回転数を逐次検出し、検出した回転数のデータをコントローラ12へ逐次出力する。
【0039】
ブーム角度計17は、ブーム1の起伏角度を逐次検出し、検出した起伏角度のデータをコントローラ12へ逐次出力する。
【0040】
電流計18は、インバータ9と電動モータ8とをそれらの間で繋ぐ電力線に設けられている。電流計18は、インバータ9から電動モータ8に供給される電流の値を逐次計測し、計測した電流値のデータをコントローラ12へ逐次出力する。電流計18は本発明における計測部の一例であり、この電流計18により計測される電流値は本発明における張力指標値の一例である。
【0041】
入力装置20は、電動ウインチ装置の作動モードを入力可能な装置である。この入力装置20は、例えば、運転室内に設置されたタッチパネル式やその他の方式の入力装置である。電動ウインチ装置の作動モードとしては、クレーンにおいて通常のクレーン作業(吊作業)を行うための通常作業モード、吊荷4の巻下げを目的とせずにウインチドラム5からワイヤーロープ2を繰り出させるための繰り出しモード、吊荷4のフリーフォールを行うためのフリーフォールモードなどが設定されている。入力装置20は、これらの複数の作動モードのうちいずれか1つの作動モードを選択的に入力可能に構成されている。
【0042】
入力装置20への繰り出しモード以外の作動モードの入力、すなわち通常作業モードやフリーフォールモードなどの入力は、本発明において吊荷4の着床時の電動モータ8の停止処理の実行を指示するための停止入力の一例である。そして、入力装置20が通常作業モードやフリーフォールモードなどの入力を受けていない場合、換言すれば入力装置20が繰り出しモードの入力を受けている場合は、本発明において入力装置20が停止入力を受けていない場合の一例である。
【0043】
操作者は、設定された複数の作動モードから所望の作動モードを選択し、その選択した作動モードを入力装置20に入力する。入力装置20は、入力された作動モードを示す信号をコントローラ12へ出力する。コントローラ12は、入力装置20から入力された信号が示す作動モードに応じた電動モータ8の制御を行う。コントローラ12は、入力装置20が繰り出しモード以外の作動モードの入力を受けている場合、すなわち入力装置20からコントローラ12に入力される信号が繰り出しモード以外の作動モードを示している場合には、電動モータ8の停止処理を実行する。また、コントローラ12は、入力装置20からコントローラ12に入力される信号が繰り出しモードを示している場合には、電動モータ8の停止処理を実行しない。従って、本実施形態では、電動ウインチ装置の作動モードと電動モータ8の停止処理の実行と非実行とが関連付けられている。
【0044】
図2は、
図1に示した電動ウインチ装置のコントローラ12の内部構成を示すブロック図である。コントローラ12は、速度制御部121、電流制御部122、速度計算部123、及びウインチ制御部124を備える。コントローラ12は、操作レバー13aの操作量に応じた回転速度で電動モータ8を作動させる電動モータ8の速度制御を行えるようになっている。
【0045】
速度制御部121は、速度計算部123から入力される電動モータ8の回転速度と、ウインチ制御部124から入力される速度指令値との偏差が0になるようにトルク指令を生成する。本実施形態では、電動モータ8がウインチドラム5を巻下方向に回転させている場合の電動モータ8の回転速度をマイナスで表し、電動モータ8がウインチドラム5を巻上方向に回転させている場合の電動モータ8の回転速度をプラスで表すことで、電動モータ8の回転速度が巻上方向に対応する回転速度と巻下方向に対応する回転速度のいずれであるかを区別できるようになっている。また、これに合わせて、巻下方向の速度指令値をマイナスで表し、巻上方向の速度指令値をプラスで表すことで、速度指令値が巻下方向と巻上方向のいずれの方向の指令値であるかを区別できるようになっている。
【0046】
電流制御部122は、速度制御部121から入力されたトルク指令から目標電流値を決定し、決定した目標電流値と、電流計18により計測された電流値との偏差が0になるように制御信号を生成する。そして、電流制御部122は、生成した制御信号をインバータ9へ出力する。
【0047】
ここで、制御信号は、例えばU,V,W相の制御信号で構成され、それぞれ、インバータ9を構成するU,V,W相のスイッチング素子の制御端子に入力される。スイッチング素子の制御端子としては、例えば、トランジスタのゲートやベースが該当する。
【0048】
速度計算部123は、エンコーダ81から逐次入力される電動モータ8のロータの位置情報を微分することで、電動モータ8の回転速度を算出する。
【0049】
ウインチ制御部124は、例えば、操作レバー13aの操作量と速度指令値との関係が予め規定された速度指令マップを用いて、操作レバー装置13から入力される信号が表す操作レバー13aの操作量に応じた速度指令値を決定し、その決定した速度指令値を速度制御部121へ出力する。ここで、ウインチ制御部124は、例えば、操作レバー13aが中立位置にある場合には速度指令値を0に設定し、操作レバー13aの中立位置から巻下操作方向への傾倒量(操作量)が増大するにつれて速度指令値をマイナスの方向に増大させ、操作レバー13aの中立位置から巻上方向への傾倒量(操作量)が増大するにつれて速度指令値をプラスの方向に増大させる。
【0050】
また、ウインチ制御部124は、操作レバー13aが中立位置にある時、すなわち操作レバー装置13から入力される信号が表す操作レバー13aの操作量が0である時には、ブレーキ6に制動状態になることを指示するためのブレーキ制御信号をブレーキ6へ出力する。また、ウインチ制御部124は、操作レバー13aが中立位置から巻下操作方向または巻上操作方向へ操作された時、すなわち操作レバー装置13から入力される信号が表す操作レバー13aの操作量の絶対値が0から増加した時には、ブレーキ6に解放状態になることを指示するためのブレーキ制御信号をブレーキ6へ出力する。
【0051】
更に、ウインチ制御部124は、荷重計15、ドラム回転計16及びブーム角度計17から入力される計測値にしたがって、吊荷4の状態を把握する。
【0052】
エンコーダ81(モータ回転計の一例)は、例えば、ロータリーエンコーダである。エンコーダ81は、電動モータ8のロータの基準位置からの回転量を位置情報として逐次計測し、その計測した回転量からなる位置情報を速度計算部123へ逐次出力する。
【0053】
以上が、コントローラ12の基本構成であるが、本実施形態では、吊荷4の巻下げの過程で吊荷4が着床した場合にウインチドラム5の巻下方向への回転を停止させるための電動モータ8の停止処理を行う。
【0054】
具体的に、コントローラ12は、電流計18が計測した電流値から電動モータ8がウインチドラム5に付与するトルクをワイヤーロープ2の張力に相当する値として算出するとともに、所定期間(所定時間長さ)における当該トルクの平均値を所定期間におけるワイヤーロープ2の張力の平均値に相当する値として算出しており、操作レバー13aが巻下操作方向に操作された状態でこの算出した平均値が所定の基準張力値以下になった場合に、インバータ9に電動モータ8の作動を停止させる停止処理を実行する。
【0055】
コントローラ12は、電動モータ8からウインチドラム5に付与されるトルクを、例えば、下記のように算出する。電流計18が、U,V,W相のそれぞれの電流値を計測するとすれば、ウインチ制御部124は、電流計18から入力されるU,V,W相の電流値をd軸、q軸の電流値に変換し、q軸の電流値に所定の変換係数を乗じた値をワイヤーロープ2の張力に応じたトルクとして算出する。この場合、電流計18は本発明における計測部の一例に該当する。変換係数は、q軸の電流値をウインチドラム5にかかるトルクに変換するための係数である。当該変換係数としては、減速機7の減速比及び減速機7の機械的な影響を考慮した値が採用される。
【0056】
図3は、本実施形態による電動ウインチ装置の乱巻防止のための制御のフローチャートである。以下、この
図3を参照して、本実施形態による電動ウインチ装置で行われる吊荷4の着床時のワイヤーロープ2の乱巻防止のための制御について説明する。
【0057】
まず、コントローラ12は、電動ウインチ装置の作動モードとして繰り出しモードが選択されているか否かを判断する(
図3のステップS1)。具体的には、コントローラ12は、入力装置20から当該コントローラ12に繰り出しモードの指令が入力されている場合に、電動ウインチ装置の作動モードとして繰り出しモードが選択されていると判断する。一方、コントローラ12は、入力装置20から当該コントローラ12に繰り出しモード以外の作動モードの指令が入力されている場合には、電動ウインチ装置の作動モードとして繰り出しモードが選択されていないと判断する。
【0058】
コントローラ12は、電動ウインチ装置の作動モードとして繰り出しモードが選択されていない、すなわち繰り出しモード以外の作動モードが選択されていると判断した場合には、次に、操作レバー13aの中立位置から巻下方向への操作量が所定の操作量基準値以上であるか否かを判断する(ステップS2)。一方、コントローラ12は、電動ウインチ装置の作動モードとして繰り出しモードが選択されていると判断した場合には、ウインチドラム5の巻下方向への回転を停止させるための電動モータ8の停止処理の解除(後述)を行う(ステップS6)。これは、クレーンの状態や作業内容等により、電動モータ8の停止処理を実行させずにウインチドラム5からワイヤーロープ2を繰り出させたい場合に、操作者が繰り出しモードを選択して電動モータ8の停止処理の機能を解除し、ワイヤーロープ2の繰り出しを行えるようにするものである。
【0059】
前記ステップS2の判断では、コントローラ12は、操作レバー装置13から入力される信号が示す操作レバー13aの操作量を読み取り、その操作量が操作量基準値以上であるか否かを判断する。コントローラ12は、操作レバー13aの操作量が操作量基準値以上であると判断した場合には、次に、所定期間におけるワイヤーロープ2の張力の平均値が所定の張力基準値以下であるか否かを判断する(ステップS3)。一方、コントローラ12は、操作レバー13aの操作量が操作量基準値以上ではないと判断した場合には、ウインチドラム5の巻下方向への回転を停止させるための電動モータ8の停止処理の解除(後述)を行う(ステップS6)。これは、操作レバー13aの巻下操作方向への操作量が操作量基準値未満の僅かな量である場合には、電動モータ8の停止処理を実行せず、そのような操作に対応したウインチドラム5の僅かな巻下方向の回転は許容する趣旨である。
【0060】
図5には記載していないが、コントローラ12は、前記したように、電流計18により計測された電流値に基づいて電動モータ8がウインチドラム5に付与するトルクをワイヤーロープ2の張力に相当する値として逐次算出するとともに、所定期間における前記トルクの平均値を当該所定期間におけるワイヤーロープ2の張力の平均値に相当する値として算出している。前記ステップS3では、この算出したトルクの平均値、すなわちワイヤーロープ2の張力の平均値が張力基準値以下であるか否かを判断する。張力基準値は、フック3の荷重未満の所定の値に設定されている。この判断に、ワイヤーロープ2の張力の平均値に相当するトルクの平均値を用いるのは、瞬間的な振動やノイズ、風によるあおり等の原因で負荷が瞬間的に変動する場合があるので、そのような場合に電動モータ8の停止処理が実行される可能性を除外するためである。
【0061】
コントローラ12は、前記トルクの平均値、すなわちワイヤーロープ2の張力の平均値が張力基準値以下である場合には、ウインチドラム5の巻下方向の回転を停止させるための電動モータ8の停止処理を開始する(ステップS4)。一方、前記トルクの平均値、すなわちワイヤーロープ2の張力の平均値が張力基準値以下でない場合には、コントローラ12は、前記ステップS2以降の処理を再度実行する。
【0062】
電動モータ8の停止処理では、コントローラ12は、操作レバー13aが巻下操作方向に操作された状態、すなわち操作レバー装置13からマイナスの操作量を示す信号が入力された状態で、当該コントローラ12のウインチ制御部124が速度制御部121へ速度指令値として0を入力する。これにより、電動モータ8の回転速度を0にさせる電動モータ8の速度制御が行われる。これにより、操作レバー13aが巻下操作方向に操作されているにも関わらず、電動モータ8の作動が停止される。
【0063】
次に、コントローラ12は、操作レバー13aがまだ巻下操作中であるか否かを判断する(ステップS5)。具体的には、コントローラ12は、操作レバー装置13から入力される信号が示す操作レバー13aの巻下操作方向への操作量が操作量基準値以上であるか否かを判断する。コントローラ12は、操作レバー13aの巻下方向への操作量が操作量基準値以上である場合、すなわち操作レバー13aが巻下操作中である場合には、このステップS5の処理を繰り返し実行する。一方、コントローラ12は、操作レバー13aの巻下方向への操作量が操作量基準値未満である場合、すなわち操作レバー13aが巻下操作中ではない場合には、電動モータ8の停止処理の解除を行う(ステップS6)。
【0064】
この停止処理の解除は、ウインチ制御部124が速度制御部121へ入力する速度指令値を操作レバー13aの中立位置からの操作量に応じた値とすることによって行われ。電動モータ8の停止処理が解除された結果、電動モータ8の回転速度を操作レバー13aの操作量に応じた速度にさせる電動モータ8の速度制御が実行されるようになる。そして、ステップS6の処理の後、前記ステップS1以降の処理が繰り返し行われる。
【0065】
以上のようにして吊荷4の着床時における乱巻防止のための制御が行われるが、次に、吊荷4の巻下操作の過程でこのような制御が行われる本実施形態の電動ウインチ装置の挙動について
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、比較例としての電動ウインチ装置の挙動を示す波形図であり、具体的には、吊荷4の巻下操作の過程で吊荷4が着床するときに乱巻防止が行われない場合の電動ウインチ装置の挙動を示す波形図である。
図5は、吊荷の巻下操作の過程で吊荷が着床するときに乱巻防止のための制御が行われる本実施形態の電動ウインチ装置の挙動を示す波形図である。
【0066】
図4及び
図5において、(A)欄は操作レバー13aの操作量の時間的な推移を示す波形図であり、(B)欄は速度指令値の時間的な推移を示す波形図であり、(C)欄は所定期間におけるワイヤーロープ2の張力の平均値の時間的な推移を示す波形図であり、(D)欄はブレーキ6の状態を示す波形図であり、(E)欄は吊荷4の巻下時のウインチドラム5の回転速度の時間的な推移を示す波形図であり、(F)欄は上下方向におけるフック3の位置の時間的な推移を示す波形図である。
【0067】
巻下操作の開始前、すなわち時刻t0以前は、吊荷4は停止状態にある。このとき、操作レバー13aは中立位置にあるとともに、ブレーキ6は制動状態になっており、吊荷4の速度は0である。
【0068】
この状態から、時刻t0において、操作レバー13aが中立位置から巻下操作方向へ操作され、それに応じて、コントローラ12は、ブレーキ6を制動状態から解放状態にする。また、操作レバー13aが巻下操作方向に操作されることによって、操作レバー13aの操作量はマイナス方向に変化する。これに応じて、コントローラ12は、電動モータ8の回転速度が操作レバー13aの操作量に応じた回転速度になるように電動モータ8の速度制御を開始する。これにより、インバータ9は、必要なトルクを発生させるための電流を電動モータ8へ出力する。そして、ウインチドラム5には、電動モータ8のトルクに減速機7の減速比及び減速機7の機械的な摩擦などの影響が加味されたトルクが付与される。これにより、時刻t0において、ウインチドラム5の巻下方向への回転が開始され、操作レバー13aの中立位置から巻下操作方向への操作量に応じた吊荷4の巻下げが開始されるとともに、フック3の位置の低下が開始される。
【0069】
以降、コントローラ12は、吊荷4の降下中、すなわちウインチドラム5の回転中は、インバータ9が電動モータ8に供給している電流値、すなわち電流計18による計測値からウインチドラム5に発生するトルクをワイヤーロープ2の張力に相当する値として算出するとともに、所定期間におけるトルクの平均値をその所定期間におけるワイヤーロープ2の張力の平均値として算出する。
【0070】
そして、時刻t1では、吊荷4の降下速度が目標値に到達する。その後、この到達した目標値の降下速度を維持したまま吊荷4の巻下げが継続される。
【0071】
時刻t2では、吊荷4が着床する。すなわち、吊荷4が地面に到達し、吊荷4の下端が地面に接触する。このとき、吊荷4の速度が0になる。また、このとき、ワイヤーロープ2に加わる張力から吊荷4の荷重分が抜け、その結果、ワイヤーロープ2の張力が急激に低下する。この状態で吊荷4の巻下げが継続され、時刻t3においてフック3が地面に着床する。なお、フック3は、地面に限らず、吊荷4上に着床してもよい。このフック3の着床により、ワイヤーロープ2にフック3の荷重が掛からなくなるため、ワイヤーロープ2の張力が再度急激に低下する。
【0072】
通常は、操作者が、吊荷4が着床する前に操作レバー13aの巻下操作方向への操作量を低下させて吊荷4の降下を低速状態にしてから吊荷4及びフック3を着床させるため、この場合にはワイヤーロープ2の張力の低下は前記のような急激なものとはならない。しかし、例えば、操作者がよそ見をして操作レバー13aの巻下操作方向への操作量を低下させなかったり、操作レバー装置13のディテント機構により操作レバー13aが巻下操作方向に操作された状態で位置止めされていたりして、吊荷4及びフック3が低速状態にされずに着床した場合には、ワイヤーロープ2の張力が前記のように急激に低下する。
【0073】
この際、
図4に示す比較例では、速度指令値が操作レバー13aの巻下方向への操作量に応じた値で一定に維持され、その速度指令値に応じてウインチドラム5の巻下方向への回転速度が維持される。その結果、ワイヤーロープ2に弛みが生じてウインチドラム5においてワイヤーロープ2の乱巻が発生する。
【0074】
これに対し、
図5に示す本実施形態では、ワイヤーロープ2の張力の平均値がフック3の荷重未満の所定値である張力基準値以下になった時点で、ウインチ制御部124が、操作レバー13aが巻下操作方向へ操作されているにも関わらず、速度制御部121へ出力する速度指令値を0にする。その結果、ウインチドラム5の回転速度が0になり、ワイヤーロープ2の弛みが抑制されてウインチドラム5におけるワイヤーロープ2の乱巻の発生が防止される。
【0075】
[本実施形態の電動ウインチ装置により得られる効果]
本実施形態の電動ウインチ装置では、吊荷4の巻下げ時に操作レバー13aが巻下操作方向に操作された状態で所定期間におけるワイヤーロープ2の張力の平均値が張力基準値以下になった場合に、コントローラ12がウインチドラム5の巻下方向への回転が停止するようにインバータ9に電動モータ8の作動を停止させる制御を行うため、吊荷4及びフック3が着床してワイヤーロープ2の張力が低下したときにウインチドラム5の巻下方向への回転を停止させてワイヤーロープ2の弛みを抑制できる。このため、当該電動ウインチ装置では、吊荷4及びフック3が着床したときに発生するワイヤーロープ2の乱巻を防止することができる。
【0076】
また、本実施形態の電動ウインチ装置では、電動モータ8の停止処理を実行するか否かを決定するための判断基準である張力基準値がフック3の荷重未満の所定の値に設定されているため、吊荷4の着床時のワイヤーロープ2の乱巻防止のための電動モータ8の停止処理を確実に実行することができる。具体的に、所定期間におけるワイヤーロープ2の張力の平均値がフック3の荷重未満の値になる場合は、吊荷4が着床し、さらにフック3まで着床した状態である。このため、ワイヤーロープ2の張力の平均値が前記のような値に設定された張力基準値以下になった場合に電動モータ8の停止処理を実行することで、吊荷4の着床時の乱巻を防止するための電動モータ8の停止処理を確実に実行することができる。
【0077】
また、本実施形態の電動ウインチ装置では、コントローラ12が、電流計18により計測された電動モータ8に供給される電流の値に基づいて、電動モータ8がウインチドラム5に付与するトルクをワイヤーロープ2の張力に相当する値として算出する。このため、ワイヤーロープ2の張力に相当する値を良好な精度で算出することができ、その算出値に基づいてワイヤーロープ2の乱巻防止のための電動モータ8の停止制御の精度を向上できる。
【0078】
具体的に、従来のクレーンでは、例えば、吊荷を先端から吊るすブーム等の起伏部材を起伏ロープにて起伏させるための起伏ドラムに設けた荷重計で起伏ロープから起伏ドラムにかかる荷重を計測したり、吊荷の巻上げ及び巻下げ用のウインチドラムの回転軸に設けたロードセル等によって回転軸にかかる荷重を計測したりして、その計測した荷重値からワイヤーロープ2に加わる張力を間接的に推測する手法がとられている。この手法では、ワイヤーロープ2の張力を直接的に計測していないため、得られる張力の推測値の精度が低くなる。これに対し、本実施形態でコントローラ12がワイヤーロープ2の張力に相当する値として算出するトルクは、前記のように従来のクレーンで得られる荷重値からのワイヤーロープ2の張力の推測値に比べて、ワイヤーロープ2の張力値をより直接的に表す値となる。このため、前記したようにワイヤーロープ2の乱巻防止のための本実施形態による電動モータ8の停止制御の精度を向上できる。
【0079】
また、本実施形態の電動ウインチ装置では、コントローラ12が、ウインチドラム5の巻下方向への回転を停止させるための電動モータ8の停止処理を実行した後、操作レバー13aの巻下操作方向への操作量が操作量基準値未満になった場合に、インバータ9による電動モータ8の停止処理を解除する。このため、電動モータ8の停止処理が実行されてウインチドラム5の巻下方向への回転が停止された後、操作者が操作レバー13aを中立位置側へ戻して当該操作レバー13aの巻下操作方向への操作量を操作量基準値未満にすることで、電動モータ8の停止処理を解除することができ、その後、再び電動モータ8にウインチドラム5を巻下方向に回転させてワイヤーロープ2の繰り出し等を行わせることができる。
【0080】
また、本実施形態の電動ウインチ装置では、操作者が入力装置20に停止入力に相当する通常作業モードやフリーフォールモードの入力を行っていない場合、例えば繰り出しモードを入力した場合には、ワイヤーロープ2の乱巻防止のための電動モータ8の停止処理を解除(キャンセル)することができる。これにより、例えばクレーンによる作業の種類等が電動モータ8の停止処理を実行させたくないようなものである場合に、操作者がその電動モータ8の停止処理を自らの意思で解除することができる。
【0081】
[変形例]
前記実施形態では、電動ウインチ装置がクレーンに搭載される例を示したが、クレーン以外の建設機械であっても吊荷の巻上げ及び巻下げを行う機能を有する建設機械であれば、そのような建設機械に対して本発明による電動ウインチ装置が適用されてもよい。
【0082】
また、本発明における入力装置は、前記したようなものに必ずしも限定されない。例えば、入力装置は、電動ウインチ装置の作動モードの選択とは関係なく、ワイヤーロープ2の乱巻防止のための電動モータ8の停止処理の実行を指示するための停止入力を入力するための機能のみを備えたものであってもよい。この場合、コントローラ12は、入力装置が作動モードとは関係のない停止入力を受けた場合に電動モータ8の停止処理を実行し、入力装置が前記停止入力を受けていない場合には電動モータ8の停止処理を実行しないようになっていてもよい。
【0083】
また、入力装置は、停止入力と、電動モータ8の停止処理の実行の禁止を指示するための禁止入力とを入力可能に構成されていて、当該入力装置が停止入力を受けた場合にはコントローラ12が前記のように電動モータ8の停止処理を実行し、当該入力装置が禁止入力を受けた場合にはコントローラ12が電動モータ8の停止処理を実行しないようになっていてもよい。なお、入力装置が禁止入力を受けた場合は、本発明において入力装置が停止入力を受けていない場合の一例である。
【0084】
また、入力装置はタッチパネル式のものでなくてもよく、例えば押しボタンや操作スイッチ等で電動ウインチ装置の作動モードを選択したり、電動モータ8の停止処理の実行と非実行を切り換えたりするものであってもよい。
【0085】
例えば、ワイヤーロープ2で吊ったバイブロハンマやクラムシェル等を使用して行う土木作業では、操作レバー13aの操作量に関わらず、ワイヤーロープ2の張力が激しく変動する。この場合には、所定期間におけるワイヤーロープ2の張力に相当する値の平均値が頻繁に張力基準値以下になってそのたびに電動モータ8が停止すると煩わしい。このため、このような土木作業のときには電動モータ8の停止処理の実行を指示するための停止入力を入力装置20に入力しないことにより、電動モータ8の停止処理が実行されないようにすることができる。
【0086】
また、前記実施形態では、電動モータ8に供給される電流値を計測してその電流値から電動モータ8がウインチドラム5に付与するトルクを算出したが、
参考例として、ウインチドラム5に付与されるトルクの導出方法はこのようなものに必ずしも限定されない。例えば、電動モータ8にトルクメータを設けて、そのトルクメータで電動モータ8がウインチドラム5に付与するトルクを計測するようにしてもよい。この場合のトルクメータ
は計測部の
参考例であり、トルクメータによって計測されるトルク
は張力指標値の
参考例である。
【0087】
また、電源10からインバータ9に印加される電流値を電流計で計測してその計測した電流値から電動モータ8がウインチドラム5に付与するトルクを算出することも可能である。この場合の電流計
は計測部の
他の参考例であり、その電流計によって計測される電流値
は張力指標値の
他の参考例である。
【0088】
また、電流計18は、インバータ9に内蔵されているものであったり、電動モータ8に内蔵されているものであってもよい。
【0089】
また、前記実施形態では、電源10が回生しきれない余剰電力を回生抵抗11で消費して電力調整を行うようにしたが、その代わりに、キャパシタンスに余剰電力を充電したり、他の電気機器を作動させるのに当該余剰電力を使用してもよい。
【0090】
また、乱巻防止のための電動モータ8の停止処理を解除する条件として、電動ウインチ装置の作動モードが繰り出しモードである場合や、操作レバー13aの巻下方向への操作量が操作量基準値以上ではない場合以外に他の条件を付加してもよい。例えば、巻下操作方向に操作された操作レバー13aを中立位置側へ戻す当該操作レバー13aの操作量の変化速度が所定値以上であることを、電動モータ8の停止処理の解除条件として付加してもよい。
【0091】
また、吊荷の巻上げ/巻下げを指示するために操作される本発明の操作部は、必ずしも操作レバーに限定されない。例えば、操作部は、基準位置から押し操作可能な操作ボタンや、基準位置から回動操作可能な操作ダイヤル、その他のものであってもよい。