特許第6796989号(P6796989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796989
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】内燃機関用点火装置
(51)【国際特許分類】
   F02P 3/00 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
   F02P3/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-204661(P2016-204661)
(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公開番号】特開2018-66305(P2018-66305A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】591104000
【氏名又は名称】株式会社エッチ・ケー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100081385
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 修治
(72)【発明者】
【氏名】井出 潤
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 定男
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−218995(JP,A)
【文献】 特開2014−175177(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/122004(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/115269(WO,A1)
【文献】 特開2001−041136(JP,A)
【文献】 特開2015−200275(JP,A)
【文献】 特開平11−201009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流遮断式点火装置を内蔵する点火コイルユニットを用い、
電流遮断式点火装置が点火コイルの1次電流を遮断して当該点火コイルの1次側に大きな送起電力である高電圧を発生させることにより、当該点火コイルの2次側に発生する更に大きな高電圧により、点火プラグの電極間に高電圧の火花放電を発生させてその電極間に火炎核を発生させるととともに、該火花放電に続く小電圧の保温放電を発生させて上記火炎核を成長させる内燃機関用点火装置であって、
火花放電用補助コンデンサを有し、該火花放電用補助コンデンサに蓄積した高圧のコンデンサ電圧を火花放電用補助電圧として、火花放電中の点火コイルユニットにおける点火コイルの1次側に付加する火花放電用補助回路と、
1個又は複数個の保温放電用補助コンデンサを有し、該保温放電用補助コンデンサに蓄積したコンデンサ電圧を保温放電用補助電圧として、保温放電中の点火コイルユニットにおける点火コイルの1次側に付加する保温放電用補助回路と、
火花放電用補助回路と保温放電用補助回路を制御する放電制御回路とを有して構成され 、
放電制御回路は、内燃機関の運転状況に応じて、火花放電用補助電圧の付加の有無、火花放電用補助電圧の電圧の設定、保温放電用補助電圧の付加の有無、保温放電用補助電圧の電圧の設定、保温放電用補助電圧の付加の回数を含む制御対象項目の少なくとも1つを制御可能にするものとされ、
更に、
前記点火コイルユニットの電流遮断式点火装置による高電圧の発生タイミングを放電タイミングとして検出するトリガ回路を有し、
放電制御回路は、トリガ回路により検出された放電タイミングに基づき、火花放電用補助回路による火花放電用補助電圧の出力素子と、保温放電用補助回路による保温放電用補助電圧の出力素子を出力動作させる内燃機関用点火装置。
【請求項2】
前記放電制御回路は、前記制御対象項目の目標値を外部から伝達され、当該制御対象項目を制御する請求項1に記載の内燃機関用点火装置。
【請求項3】
前記放電制御回路は、内燃機関の運転状況を伝達され、この運転状況に基づいて前記制御対象項目の目標値を演算し、当該制御対象項目を制御する請求項1に記載の内燃機関用点火装置。
【請求項4】
複数の気筒のそれぞれに点火コイルユニットを設け、各気筒の点火コイルユニットに共用される各単一の火花放電用補助回路と保温放電用補助回路とを有してなる請求項1乃至のいずれかに記載の内燃機関用点火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関用点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関用点火装置として、特許文献1に記載の如く、内燃機関の各気筒毎に電流遮断式点火装置を内蔵する点火コイルユニットを設けたものがある。
【0003】
電流遮断式点火装置は、点火コイルの1次電流を遮断して当該点火コイルの1次側に大きな送起電力である高電圧を発生させることにより、当該点火コイルの2次側に発生する更に大きな高電圧により、点火プラグの電極間に高電圧の火花放電を発生させてその電極間に火炎核を発生させるととともに、該火花放電に続く小電圧の保温放電を発生させて上記火炎核を成長させる。電流遮断式点火装置の上述の火花放電によって点火プラグの電極間に発生し、或いは成長する火炎核が熱源になって、当該気筒の燃焼室内で当該点火プラグの周辺に存在する混合気に着火せしめるものである。
【0004】
しかるに、特許文献1に記載の内燃機関用点火装置では、点火コイルユニットの外部に、火花放電用補助回路としてのCDI点火装置を配置している。CDI点火装置は、火花放電用補助コンデンサを有し、電流遮断式点火装置が点火コイルの1次電流を遮断して当該点火コイルの2次側に高電圧を発生させるタイミングに合わせて、上記火花放電用補助コンデンサに蓄積した高圧のコンデンサ電圧を火花放電用補助電圧として、火花放電中の点火コイルユニットにおける点火コイルの1次側に付加する。
【0005】
特許文献1に記載の内燃機関用点火装置では、電流遮断式点火装置の作動によって点火コイルの1次側に発生する高電圧に、CDI点火装置の火花放電用補助コンデンサに蓄積した高圧のコンデンサ電圧を火花放電用補助電圧として重ね合わせるように付加し、点火コイルの2次側に一層大きな2次側高電圧を発生させる。従って、点火コイルの電極間には、電流遮断式点火装置による火花放電に加えて、CDI点火装置の容量放電を重ね合わせた大きな点火エネルギを放出させるものになる。これにより、点火コイルの電極間に通常の火花放電に比して一層高電圧の放電を発生させ、その電極間における火炎核発生の初期の段階の成長を促し、当該点火プラグの周辺に存在する混合気に対する着火性を向上させようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-41136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の内燃機関用点火装置は、電流遮断式点火装置による火花放電にCDI点火装置による容量放電を付加した複合誘電方式を採用したものである。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の複合放電方式は、電流遮断式点火装置による火花放電に唯1回の容量放電を付加するものであり、点火プラグの電極間における点火エネルギの放出総量の増大化、熱供給の継続化に限界がある。
【0009】
また、内燃機関用点火装置にあっては、点火プラグの電極間における点火エネルギの放出総量を増大化し、熱供給の継続化を図る場合にも、点火プラグの電極の消耗を低減させることが望まれる。
【0010】
本発明の課題は、内燃機関用点火装置において、点火プラグによる混合気の着火性能を向上させることにある。
【0011】
本発明の他の課題は、内燃機関用点火装置において、点火プラグの電極の消耗を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、電流遮断式点火装置を内蔵する点火コイルユニットを用い、電流遮断式点火装置が点火コイルの1次電流を遮断して当該点火コイルの1次側に大きな送起電力である高電圧を発生させることにより、当該点火コイルの2次側に発生する更に大きな高電圧により、点火プラグの電極間に高電圧の火花放電を発生させてその電極間に火炎核を発生させるととともに、該火花放電に続く小電圧の保温放電を発生させて上記火炎核を成長させる内燃機関用点火装置であって、火花放電用補助コンデンサを有し、該火花放電用補助コンデンサに蓄積した高圧のコンデンサ電圧を火花放電用補助電圧として、火花放電中の点火コイルユニットにおける点火コイルの1次側に付加する火花放電用補助回路と、1個又は複数個の保温放電用補助コンデンサを有し、該保温放電用補助コンデンサに蓄積したコンデンサ電圧を保温放電用補助電圧として、保温放電中の点火コイルユニットにおける点火コイルの1次側に付加する保温放電用補助回路と、火花放電用補助回路と保温放電用補助回路を制御する放電制御回路とを有して構成され、放電制御回路は、内燃機関の運転状況に応じて、火花放電用補助電圧の付加の有無、火花放電用補助電圧の電圧の設定、保温放電用補助電圧の付加の有無、保温放電用補助電圧の電圧の設定、保温放電用補助電圧の付加の回数を含む制御対象項目の少なくとも1つを制御可能にするものとされ、更に、前記点火コイルユニットの電流遮断式点火装置による高電圧の発生タイミングを放電タイミングとして検出するトリガ回路を有し、放電制御回路は、トリガ回路により検出された放電タイミングに基づき、火花放電用補助回路による火花放電用補助電圧の出力素子と、保温放電用補助回路による保温放電用補助電圧の出力素子を出力動作させるようにしたものである。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記放電制御回路は、前記制御対象項目の目標値を外部から伝達され、当該制御対象項目を制御するようにしたものである。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記放電制御回路は、内燃機関の運転状況を伝達され、この運転状況に基づいて前記制御対象項目の目標値を演算し、当該制御対象項目を制御するようにしたものである。
【0016】
請求項に係る発明は、請求項1乃至のいずれかに係る発明において更に、複数の気筒のそれぞれに点火コイルユニットを設け、各気筒の点火コイルユニットに共用される各単一の火花放電用補助回路と保温放電用補助回路とを有してなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
(請求項1)
(a)内燃機関用点火装置は、電流遮断式点火装置による火花放電中に、火花放電用補助回路による容量放電を付加するだけでなく、電流遮断式点火装置による保温放電中にも、保温放電用補助回路による容量放電を付加するものになる。
【0018】
電流遮断式点火装置による火花放電中に、火花放電用補助回路による容量放電を付加することによって、点火プラグの電極間における火炎核発生の初期の段階の成長を促し、当該点火プラグによる着火性を向上するとともに、電流遮断式点火装置による保温放電中にも、保温放電用補助回路による容量放電を付加することによって、火花放電乃至保温放電において放電が継続している火炎核成長の段階においても点火プラグの電極間に高い温度を発生させて混合気を温め続け、当該点火プラグによる着火性を一層向上するものになる。
【0019】
即ち、点火プラグにおける火花放電乃至保温放電の過程で、当該点火プラグの電極間における点火エネルギの放出総量の増大化、熱供給の継続化を実現し、当該点火プラグによる混合気の着火性能を向上できるものになる。
【0020】
(b)放電制御回路は、上述(a)において、内燃機関の運転状況に応じて、火花放電用補助電圧の付加の有無、火花放電用補助電圧の電圧の設定、保温放電用補助電圧の付加の有無、保温放電用補助電圧の電圧の設定、保温放電用補助電圧の付加の回数を含む制御対象項目の少なくとも1つを制御する。
【0021】
即ち、内燃機関の低中速回転域でのトルク性能の向上、内燃機関のアクセル操作に対する回転数の応答性能の向上、ターボ車における高過給圧下での確実な点火、チューニングエンジンの始動性向上やアイドリング安定化等を図るときには、放電制御回路によって、上述(a)の、火花放電用補助回路による容量放電の付加や、保温放電用補助回路による容量放電の付加を、それらの内燃機関の運転状況に応じて積極的に強化し、点火プラグによる混合気の着火性能を確実に向上できる。
【0022】
他方、内燃機関において、点火プラグによる混合気の着火性能を格別に向上させる必要がない運転状況では、放電制御回路によって、上述(a)の、火花放電用補助回路による容量放電の付加や、保温放電用補助回路による容量放電の付加を、制限乃至は休止させる。これにより、火花放電用補助回路による容量放電の付加や、保温放電用補助回路による容量放電の付加に起因する、点火プラグの電極の消耗を低減できる。
(c)内燃機関用点火装置は、点火コイルユニットの電流遮断式点火装置による高電圧の発生タイミングを放電タイミングとして検出するトリガ回路を有する。そして、放電制御回路は、トリガ回路により検出された放電タイミングに基づき、火花放電用補助回路による火花放電用補助電圧の出力素子と、保温放電用補助回路による保温放電用補助電圧の出力素子を出力動作させることにより、上述(a)の、火花放電用補助回路による容量放電の付加、及び保温放電用補助回路による容量放電の付加を実行するものになる。
【0023】
(請求項2)
(d)放電制御回路は、上述(b)の制御動作において、前記制御対象項目の目標値を外部から伝達され、当該制御対象項目を制御できる。
【0024】
(請求項3)
(e)放電制御回路は、上述(b)の制御動作において、内燃機関の運転状況を伝達され、この運転状況に基づいて前記制御対象項目の目標値を演算し、当該制御対象項目を制御できる。
【0026】
(請求項
(f)内燃機関用点火装置は、複数の気筒のそれぞれに点火コイルユニットを設け、各気筒の点火コイルユニットに共用される各単一の火花放電用補助回路と保温放電用補助回路とを有する。従って、各単一の火花放電用補助回路及び保温放電用補助回路により全気筒の点火コイルユニットに対応するものとなり、部品点数を少なくでき、また複数の火花放電用補助回路や保温放電用補助回路を各気筒の点火コイルユニット毎に設ける場合に比して待機中の無駄電力消費をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は内燃機関用点火装置を示す模式図である。
図2図2は電流遮断式点火装置によって点火コイルの1次側に発生させた電圧波形を示す模式図である。
図3図3は火花放電用補助回路と保温放電用補助回路が点火コイルの1次側に付加した火花放電用補助電圧と保温放電用補助電圧の各電圧波形を示す模式図である。
図4図4は火花放電用補助回路と保温放電用補助回路とを具備した実施例1のマルチスパーク回路を示す模式図である。
図5図5は火花放電用補助回路と保温放電用補助回路とを具備した実施例2のマルチスパーク回路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施例1)(図1乃至図4
(点火コイルユニット10)
本実施形態の内燃機関用点火装置100は、図1に示す如く、電流遮断式点火装置11と点火コイル12を内蔵する点火コイルユニット10を有する。点火コイルユニット10は、電流遮断式点火装置11と点火コイル12の他に、バッテリ13、点火プラグ14を付帯して備える。
【0029】
点火コイルユニット10は、内燃機関が有する気筒(単気筒機関であれば1個の気筒、複数気筒機関であれば各気筒)に対応配置され、エンジンコントロールユニット(ECU)1により例えばトランジスタからなる電流遮断式点火装置11をオン(導通状態)/オフ(非導通状態)制御する。
【0030】
即ち、電流遮断式点火装置11は通常オフ状態にある。そして、内燃機関のある気筒に対応する点火コイルユニット10における火花放電のタイミングが近づくと、エンジンコントロールユニット1は電流遮断式点火装置11をオフ状態からオン状態に切換え、この電流遮断式点火装置11を閉角度(ドエル角度)Cの間、オン状態に保持する。次に、エンジンコントロールユニット1が電流遮断式点火装置11をオフすると、電流遮断式点火装置11は点火コイル12の1次電流を遮断して当該点火コイル12の1次側に大きな逆起電力である1次高電圧を発生させ、当該点火コイル12の2次側には更に大きな2次高電圧を発生させる。
【0031】
ここで、点火コイルユニット10の電流遮断式点火装置11が点火コイル12の1次側に発生させる電圧波形を模式的に示せば、図2(横軸に時間、縦軸に電圧)の通りになる。図2においてVAは電流遮断式点火装置11のオフの瞬間に点火コイル12の1次側に発生する大電圧VAを示し、この大電圧VAによって点火コイル12に蓄積される高密度のエネルギは点火プラグ14に伝わって当該点火プラグ14の電極間に火花放電Aに相当する大電圧を発生させ、その電極間に火炎核を発生させる。VBは電流遮断式点火装置11のオフによる大電圧VAの発生に引き続いて点火コイル12の1次側に生ずる小電圧VBを示し、この小電圧VBによって点火コイル12に蓄積されるエネルギは点火プラグ14に伝わって当該点火プラグ14の電極間に上述の火花放電Aに相当する大電圧に続き、かつ該火花放電Aに相当する大電圧に比して保温放電Bに相当する小電圧(グロー放電ともいう)を発生させ、上記火炎核を成長させる。
【0032】
尚、図2において、Cは、点火コイル12に通電している時間であって、前述の閉角度(ドエル角度)と呼ばれる。この閉角度Cにおける通電によって、点火コイル12にエネルギが蓄積され、この通電がオフされるタイミングで点火コイル12の1次側に逆起電力である1次高電圧(大電圧VA)が発生する。
【0033】
(マルチスパーク回路20)
内燃機関用点火装置100は、点火コイルユニット10の外部にマルチスパーク回路20を配置している。マルチスパーク回路20は、点火コイルユニット10における点火コイル12の1次側に接続され、電流遮断式点火装置11が点火コイル12の1次電流を遮断し、該点火コイル12に高電圧が発生するタイミングを放電タイミングとして検出し、この放電タイミングに合わせて、図3に示す如く、点火コイル12の1次側に火花放電用補助電圧EAと保温放電用補助電圧EB(本実施形態ではEB1乃至EB3)を付加する。
【0034】
マルチスパーク回路20は、図4に示す如く、トリガ回路30と、放電制御回路40と、火花放電用補助電圧EAを出力する火花放電用補助回路50と、保温放電用補助電圧EBを出力する保温放電用補助回路60とを有する。
【0035】
本実施例では、内燃機関が複数の気筒を有するものとする。これに伴い、本実施例の内燃機関用点火装置100では、複数の気筒のそれぞれに点火コイルユニット10を配置し、それらの点火コイルユニット10に共通となる単一のマルチスパーク回路20を有するものとしている。マルチスパーク回路20は、各気筒の点火コイルユニット10に対応するトリガ回路30を有し、各気筒の点火コイルユニット10に共通となる放電制御回路40を有する。また、マルチスパーク回路20は、各気筒の点火コイルユニット10に共用される各単一の火花放電用補助回路50と保温放電用補助回路60とを有して構成される。
【0036】
マルチスパーク回路20は、各気筒の点火コイルユニット10における点火コイル12の1次側(点火出力1…点火出力N)にそれぞれ接続される通電線15と、それらの通電線15の点火コイル12に接続される側に対する反対側端を互いに接続する単一の通電線16と、火花放電用補助回路50における火花放電用補助コンデンサ52の出力端を通電線16に接続する通電線17と、保温放電用補助回路60における保温放電用補助コンデンサ62の出力端を通電線16に接続する通電線18とを備える。
【0037】
(トリガ回路30)
トリガ回路30は、各気筒の点火コイルユニット10毎に対応するように設けられ、各点火コイルユニット10における点火コイル12の1次側に通電線15を介して直に接続され、電流遮断式点火装置11が点火コイル12の1次電流を遮断し、該点火コイル12に高電圧が発生するタイミングを放電タイミングとして検出し、この検出結果を各信号線31によって放電制御回路40に伝達する。
【0038】
(放電制御回路40)
放電制御回路40(CPU)は、各通電線15に介装されている各主出力素子41と信号線41Lによって接続される。放電制御回路40は、各トリガ回路30が対応する点火コイルユニット10の放電タイミングを検出したと同時に、それらの各主出力素子41を一定時間継続してON(導通状態)させる。
【0039】
放電制御回路40は、通電線17に介装されている火花放電用補助電圧EAの出力素子42と信号線42Lによって接続される。放電制御回路40は、各トリガ回路30が各点火コイルユニット10の放電タイミングを検出したことに応じて主出力素子41をONさせたと同時、又は出力素子41のオン後の一定時間経過後に、CPU内部の演算回路及びデータにて設定されるタイミングで出力素子42をオン(導通状態)させる。
【0040】
これにより、放電制御回路40は、火花放電用補助回路50の火花放電用補助コンデンサ52が蓄積していたコンデンサ電圧を火花放電用補助電圧EAとして、火花放電中の点火コイルユニット10における点火コイル12の1次側に付加させる。
【0041】
放電制御回路40は、通電線18に介装されている保温放電用補助電圧EBの出力素子43と信号線43Lによって接続される。放電制御回路40は、各トリガ回路30が各点火コイルユニット10の放電タイミングを検出したことに応じて主出力素子41、出力素子42をオンさせた後、該出力素子42のオン後の一定期間経過後に、CPU内部の演算回路及びデータにて設定されるタイミングで出力素子43をオン(導通状態)させる。
【0042】
尚、本実施形態において、放電制御回路40は、保温放電用補助回路60が有する複数個の保温放電用補助コンデンサ62−1、62−2…の出力端を通電線16に接続する複数本の通電線18−1、18−2…のそれぞれに、複数個の出力素子43−1、43−2…のそれぞれを備え、それらの各出力素子43−1、43−2…を順にオン(導通状態)させる。
【0043】
これにより、放電制御回路40は、保温放電用補助回路60の各保温放電用補助コンデンサ62(62−1、62−2…)が蓄積していたコンデンサ電圧を保温放電用補助電圧EB(EB−1、EB−2…)として、保温放電中の点火コイルユニット10における点火コイル12の1次側に順に複数回付加させる。
【0044】
(火花放電用補助回路50)
火花放電用補助回路50は、DC/DCコンバータ回路51と火花放電用補助コンデンサ52を有し、DC/DCコンバータ回路51によって火花放電用補助コンデンサ52に蓄積した高電圧のコンデンサ電圧を火花放電用補助電圧EAとして、点火コイルユニット10における電流遮断式点火装置11の作動によって火花放電中の当該点火コイルユニット10における点火コイル12の1次側に発生している1次高電圧の大電圧VAに、重ね合わせるように付加する。
【0045】
DC/DCコンバータ回路51は、DC/DC制御用IC51A(スイッチング周波数は例えば100KHz、火花放電領域の出力電圧は例えば400Vとして、放電制御回路40にて電圧の変更を可能とする)、スイッチング用FET51B、電流制御のための電流検出回路51C、電圧制御のための電圧検出回路51Dを有して構成される。DC/DCコンバータ回路51は、点火用電源101にて供給される例えば12V電圧を、例えばDC400Vに昇圧する。
【0046】
火花放電用補助コンデンサ52は、1つのコンデンサからなり、整流ダイオード52Aを伴なう。点火放電用補助コンデンサ52は、例えば0.5乃至1.0μFの容量を有し、DC/DCコンバータ回路51の出力電圧をチャージする。
【0047】
(保温放電用補助回路60)
保温放電用補助回路60は、DC/DCコンバータ回路61と複数個の保温放電用補助コンデンサ62(62−1、62−2…)を有する(但し、保温放電用補助回路60は、唯1個の保温放電用補助コンデンサ62のみを有するものでも良い)。保温放電用補助回路60は、DC/DCコンバータ回路61によって保温放電用補助コンデンサ62(1個又は複数個のコンデンサ62−1、62−2…)に蓄積したコンデンサ電圧を保温放電用補助電圧EB(EB−1、EB−2…)として、点火コイルユニット10における電流遮断式点火装置11の作動によって保温放電中の当該点火コイルユニット10における点火コイル12の1次側に発生している1次高電圧の小電圧VBに、重ね合わせるように順に付加する。
【0048】
DC/DCコンバータ回路61は、DC/DC制御用IC61A(スイッチング周波数は例えば100KHz、保温放電領域の出力電圧は例えば100乃至200Vとして、放電制御回路40にて電圧の変更を可能とする)、スイッチング用FET61B、電流制御のための電流検出回路61C、電圧制御のための電圧検出回路61Dを有して構成される。DC/DCコンバータ回路61は、点火用電源101にて供給される例えば12V電圧を、例えばDC100乃至200V に昇圧する。
【0049】
放電制御回路40は、制御電圧可変回路44を介して、DC/DCコンバータ回路61の出力電圧を変更可能にする。
【0050】
保温放電用補助コンデンサ62は、前述の通り、複数個のコンデンサ62−1、62−2…からなり、整流ダイオード62Aを伴なう。各保温放電用補助コンデンサ62(62−1、62−2…)は、例えば0.1乃至0.5μFの容量を有し、DC/DCコンバータ回路61の出力電圧をチャージする。
【0051】
従って、内燃機関用点火装置100による点火動作は以下の如くになされる。
(1)各気筒の点火コイルユニット10毎に対応するトリガ回路30が、当該点火コイルユニット10の電流遮断式点火装置11が点火コイル12の1次電流を遮断し、該点火コイル12に高電圧が発生するタイミングを放電タイミングとして検出する。各トリガ回路30のこの検出結果が放電制御回路40に伝達される。
【0052】
このとき、各気筒の点火コイルユニット10にあっては、電流遮断式点火装置11が点火コイル12の1次電流を遮断して当該点火コイル12の1次側に大きな逆起電力である高電圧を発生させることにより、当該点火コイル12の2次側に更に大きな高電圧を発生させ、点火プラグ14の電極間に火花放電Aに相当する大電圧を発生させてその電極間に火炎核を発生させるとともに、該火花放電Aに相当する大電圧に続き、かつ該火花放電Aに相当する大電圧に比して保温放電Bに相当する小電圧を発生させて上記火炎核を成長させるものとしている。
【0053】
(2)放電制御回路40は、各トリガ回路30が対応する点火コイルユニット10の放電タイミングを検出したと同時に、当該点火コイルユニット10における点火コイル12の1次側に接続されている通電線15に介装されている主出力素子41を一定時間継続してオン(導通状態)させる。
【0054】
主出力素子41は、当該点火コイルユニット10における点火コイル12が点火プラグ14の電極間に上述(1)の火花放電Aに相当する大電圧、更には保温放電Bに相当する小電圧を発生させる一定時間だけ、継続してオン(導通状態)される。
【0055】
(3)放電制御回路40は、上述(2)による主出力素子41のオンと同時、又は該主出力素子41のオン後の一定時間経過後に、通電線17に介装されている出力素子42をオン(導通状態)させる
【0056】
出力素子42がオン(導通状態)されることにより、火花放電用補助回路50の火花放電用補助コンデンサ52が蓄積していたコンデンサ電圧が火花放電用補助電圧EAとして、上述(1)で火花放電中の点火コイルユニット10における点火コイル12の1次側に生じている1次高電圧(大電圧VA)に重ね合わせる如くに付加される(図3)。
【0057】
(4)放電制御回路40は、上述(2)による出力素子42のオン後の一定時間経過後に、複数本の各通電線18(18−1、18−2…)のそれぞれに介装されている各出力素子43(43−1、43−2…)を順にオン(導通状態)させる。各出力素子(43−1、43−2…)が順にオン(導通状態)されたとき、保温放電用補助回路60の複数個の各保温放電用補助コンデンサ62−1、62−2…のそれぞれが蓄積していたコンデンサ電圧が保温放電用補助電圧EB−1、EB−2…として、上述(1)で保温放電中の点火コイルユニット10における点火コイル12の1次側に生じている前述の1次高電圧(小電圧VB)に重ね合わされる如くに付加される(図3)。
【0058】
従って、内燃機関用点火装置100によれば、マルチスパーク回路20の存在によって、下記(a)の作用効果を奏する。
(a)内燃機関用点火装置100は、電流遮断式点火装置11による火花放電中に、火花放電用補助回路50による容量放電を付加するだけでなく、電流遮断式点火装置11による保温放電中にも、保温放電用補助回路60による複数回の容量放電を付加するものになる。
【0059】
電流遮断式点火装置11による火花放電中に、火花放電用補助回路50による容量放電を付加することによって、点火プラグ14の電極間における火炎核発生の初期の段階の成長を促し、当該点火プラグ14による着火性を向上するとともに、電流遮断式点火装置11による保温放電中にも、保温放電用補助回路60による複数回の容量放電を付加することによって、火花放電乃至保温放電において放電が継続している火炎核成長の段階においても点火プラグ14の電極間に高い温度を発生させて混合気を温め続け、当該点火プラグ14による着火性を一層向上するものになる。
【0060】
即ち、点火プラグ14における火花放電乃至保温放電の過程で、当該点火プラグ14の電極間における点火エネルギの放出総量の増大化、熱供給の継続化を実現し、当該点火プラグ14による混合気の着火性能を向上できるものになる。
【0061】
尚、保温放電用補助回路60は唯1個の保温放電用補助コンデンサ62のみを有するものでも良く、その場合には、内燃機関用点火装置100の点火動作について説明した上述(4)で、保温放電用補助回路60の1個の保温放電用補助コンデンサ62(コンデンサ62−1)が蓄積していたコンデンサ電圧が保温放電用補助電圧EB(EB−1)として、上述(1)で保温放電中の点火コイルユニット10における点火コイル12の1次側に生じている前述の1次高電圧(小電圧VB)に重ね合わされる如くに付加される。
【0062】
しかるに、内燃機関用点火装置100は、点火プラグ14における火花放電乃至保温放電の過程で、マルチスパーク回路20の存在により、当該点火プラグ14の電極間における点火エネルギの放出総量を増大化し、かつ熱供給を継続化するものであるため、結果として、点火プラグ14の電極が通常より大きな放電エネルギによって激しく攻撃され、通常より消耗するおそれがある。そこで、内燃機関用点火装置100にあっては、点火プラグ14の電極の消耗を低減するため、以下の構成を具備する。
【0063】
即ち、放電制御回路40は、火花放電用補助回路50と保温放電用補助回路60を制御するに際し、内燃機関の運転状況に応じて、火花放電用補助電圧EAの付加の有無、火花放電用補助電圧EAの電圧の設定、保温放電用補助電圧EBの付加の有無、保温放電用補助電圧EBの電圧の設定、保温放電用補助電圧EBの付加の回数を含む制御対象項目の少なくとも1つを制御する。
【0064】
放電補助回路40は、上記制御対象項目の目標値を外部コントローラ110から伝達され、当該制御対象項目を制御する。即ち、外部コントローラ110は、例えば、
i.内燃機関を搭載した車両の例えばレース走行時に、前述(a)の、火花放電用補助回路50による容量放電の付加や、保温放電用補助回路60による容量放電の付加を積極的に強化するように、それらの火花放電用補助回路50、及び保温放電用補助回路60を制御する。
ii.内燃機関を搭載した車両の例えば一般走行時には、前述(a)の、火花放電用補助回路50による容量放電の付加や、保温放電用補助回路60による容量放電の付加を、制限乃至は休止させるように、それらの火花放電用補助回路50、及び保温放電用補助回路60を制御する。
【0065】
従って、内燃機関用点火装置100によれば、前述(a)の作用効果に加え、下記(b)乃至(e)の作用効果を奏する。
【0066】
(b)放電制御回路40は、前述(a)において、外部コントローラ110が伝達してくる内燃機関の運転状況に応じて、火花放電用補助電圧EAの付加の有無、火花放電用補助電圧EAの電圧の設定、保温放電用補助電圧EBの付加の有無、保温放電用補助電圧EBの電圧の設定、保温放電用補助電圧EBの付加の回数を含む制御対象項目の少なくとも1つを制御する。
【0067】
即ち、外部コントローラ110が伝達してくる車両の例えばレース走行時には、内燃機関の低中速回転域でのトルク性能の向上、内燃機関のアクセル操作に対する回転数の応答性能の向上、ターボ車における高過給圧下での確実な点火、チューニングエンジンの始動性向上やアイドリング安定化等を図るように、放電制御回路40によって、前述(a)の、火花放電用補助回路50による容量放電の付加や、保温放電用補助回路60による容量放電の付加を、それらの内燃機関の運転状況に応じて積極的に強化し、点火プラグ14による混合気の着火性能を確実に向上できる。
【0068】
他方、外部コントローラ110が伝達してくる車両の例えば一般走行時におけるように、内燃機関において、点火プラグ14による混合気の着火性能を格別に向上させる必要がない運転状況では、放電制御回路40によって、前述(a)の、火花放電用補助回路50による容量放電の付加や、保温放電用補助回路60による容量放電の付加を、制限乃至は休止させる。これにより、火花放電用補助回路50による容量放電の付加や、保温放電用補助回路60による容量放電の付加に起因する、点火プラグ14の電極の消耗を低減できる。
【0069】
(c)放電制御回路40は、上述(b)の制御動作において、前記制御対象項目の目標値を外部から伝達され、当該制御対象項目を制御できる。
【0070】
(d)内燃機関用点火装置100は、点火コイルユニット10の電流遮断式点火装置11による高電圧の発生タイミングを放電タイミングとして検出するトリガ回路30を有する。そして、放電制御回路40は、トリガ回路30により検出された放電タイミングに基づき、火花放電用補助回路50による火花放電用補助電圧EAの出力素子42と、保温放電用補助回路60による保温放電用補助電圧EBの出力素子43を出力動作させることにより、前述(a)の、火花放電用補助回路50による容量放電の付加、及び保温放電用補助回路60による容量放電の付加を実行するものになる。
【0071】
(e)内燃機関用点火装置100は、複数の気筒のそれぞれに点火コイルユニット10を設け、各気筒の点火コイルユニット10に共用される各単一の火花放電用補助回路50と保温放電用補助回路60とを有する。従って、各単一の火花放電用補助回路50及び保温放電用補助回路60により全気筒の点火コイルユニット10に対応するものとなり、部品点数を少なくでき、また複数の火花放電用補助回路50や保温放電用補助回路60を各気筒の点火コイルユニット10毎に設ける場合に比して待機中の無駄電力消費をなくすことができる。
【0072】
(実施例2)(図5
実施例2の内燃機関用点火装置100が実施例1の内燃機関用点火装置100(図4)と異なる点は、放電制御回路40が、内燃機関の運転状況を伝達され、この運転状況に基づいて前記制御対象項目の目標値を演算し、当該制御対象項目を制御するものとしたことにある。
【0073】
即ち、放電制御回路40は、例えば各気筒の点火コイルユニット10から伝達される放電タイミングに基づいて演算した内燃機関のエンジン回転数に基づき、又は内燃機関に設けた吸気負圧センサ、内燃機関が搭載された車両のアクセルセンサや車速センサ等の運転状況検出手段120の検出信号を得て、CPU内部に内蔵する演算回路及びデータ(それらのエンジン回転数及び/又は各種センサの検出値に対し、火花放電用補助電圧EAの付加の有無、火花放電用補助電圧EAの電圧の設定、保温放電用補助電圧EBの付加の有無、保温放電用補助電圧EBの電圧の設定、保温放電用補助電圧EBの付加の回数を予め定めてなるマップデータ等)に基づいて、上述(b)の制御動作を行なう。
【0074】
従って、実施例2に係る内燃機関用点火装置100においても、実施例1の内燃機関用点火装置100における前述(a)乃至(e)と同様の作用効果を奏する。
【0075】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明は単気筒内燃機関用点火装置においても適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、内燃機関用点火装置において、点火プラグによる混合気の着火性能を向上させることができる。
【0077】
また、本発明によれば、内燃機関用点火装置において、点火プラグの電極の消耗を低減させることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 点火コイルユニット
11 電流遮断式点火装置
12 点火コイル
14 点火プラグ
30 トリガ回路
40 放電制御回路
41 主出力素子
42 出力素子
43 出力素子
50 火花放電用補助回路
60 保温放電用補助回路
100 内燃機関用点火装置
110 外部コントローラ
120 運転状況検出手段
EA 火花放電用補助電圧
EB(EB−1、EB−2…) 保温放電用補助電圧
図1
図2
図3
図4
図5