特許第6797021号(P6797021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6797021被覆ガラス物品及びそれから作製されるディスプレイアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797021
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】被覆ガラス物品及びそれから作製されるディスプレイアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/34 20060101AFI20201130BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   C03C17/34 Z
   G09F9/00 313
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-548259(P2016-548259)
(86)(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公表番号】特表2017-509572(P2017-509572A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】GB2015050361
(87)【国際公開番号】WO2015121632
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】61/938,290
(32)【優先日】2014年2月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】スリカンス バラナシ
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−248871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、前記ガラス基板上に形成される被覆とを備える、被覆ガラス物品であって、前記被覆は、
任意に、前記ガラス基板の主要表面上に成膜されるシリコン酸化物の基層と、
前記任意の基層上に成膜されるチタン、ニオブ、またはクロム酸化物の第1の被覆層と、
前記第1の被覆層上に成膜されるシリコン酸化物の第2の被覆層と、
前記第2の被覆層上に成膜されるスズ酸化物の第3の被覆層とを含み、
前記被覆ガラス物品は、40%〜55%のTvis及び40%以上60%未満のRfを示す、前記被覆ガラス物品。
【請求項2】
10nm〜30nmの厚さで成膜されるシリコン酸化物の前記基層を含む、請求項1に記載の前記被覆ガラス物品。
【請求項3】
前記基層は、10nm〜30nmの厚さで成膜される、請求項2に記載の前記被覆ガラス物品。
【請求項4】
前記第1の被覆層は、30nm〜40nmの厚さで成膜される、請求項1に記載の前記被覆ガラス物品。
【請求項5】
前記第2の被覆層は、70nm〜100nmの厚さで成膜される、請求項1に記載の前記被覆ガラス物品。
【請求項6】
前記第3の被覆層は、60nm〜90nmの厚さで成膜される、請求項1に記載の前記被覆ガラス物品。
【請求項7】
前記被覆ガラス物品は、44%〜56%のRgを示す、請求項1に記載の前記被覆ガラス物品。
【請求項8】
前記被覆ガラス物品は、CIELAB色座標系に従って、a*=+5〜12及びb*=−5〜+5の範囲内の透過色、a*=−12〜−8及びb*=−6〜+10の範囲内の反射フィルム面の色を示す、請求項1に記載の前記被覆ガラス物品。
【請求項9】
前記被覆が前記シリコン酸化物の基層を含み、
前記基層と前記ガラス基板との間に成膜される色抑制被覆をさらに含む、請求項1に記載の前記被覆ガラス物品。
【請求項10】
前記第1の被覆層は、2.1以上の屈折率を有し、前記第2の被覆層は、1.6以下の屈折率を有し、前記第3の被覆層は、1.6を超える屈折率を有する、請求項1に記載の前記被覆ガラス物品。
【請求項11】
化学蒸着によって前記被覆の前記層のそれぞれを順次に成膜することを含む、請求項1に記載の被覆ガラス物品を作製する方法。
【請求項12】
請求項1に記載の被覆ガラス物品の周囲に載置される骨組部材からなる、ビデオディスプレイアセンブリ。
【請求項13】
請求項1に記載の被覆ガラス物品の後方にビデオディスプレイを載置して、前記ビデオディスプレイが動作中に、それが前記被覆ガラス物品を通して見えるようにし、かつ前記ビデオディスプレイが動作していないときに、それが前記被覆ガラス物品によって隠されるようにすることを含む、ビデオディスプレイアセンブリを作製する方法。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、35 U.S.C.119(e)の下、第61/938,290号が付与され、かつ2014年2月11日に出願の仮出願の利益を主張しており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、同様の可視光透過率及び反射率特性を有する被覆ガラス物品に関する。本発明はまた、被覆ガラス物品を備えるディスプレイアセンブリ、及びそのようなビデオディスプレイアセンブリを作製する方法に関する。
【0003】
フラットスクリーンビデオディスプレイは、現在、公共及び商業施設ならびに自宅における多くの場所で見られる。そのようなビデオディスプレイは、ディスプレイが動作していないときにあまり目立たないことが望ましいことがわかっている。この目標を達成する一方法は、ビデオディスプレイに鏡などの室内に一般的に見られ得る物体の外観を与えることによって、それを隠すことである。そのような用途に好適であることがわかっている既知の製品は、Pilkington Mirroview(商標)としてPilkington North America,Inc.によって販売される。この製品は、ガラス上の層シリコン、シリコン層上のシリカ層、及びシリカ上の酸化スズの層から形成される被覆積層が備わった透明ガラス基板を含み、約20%の可視光透過率及び70〜75%のフィルム面反射率を提供する。
【0004】
しかしながら、例えば、空間を照射する比較的高レベルの自然光があり、ビデオディスプレイが動作中である場合などのある特定の条件下では、この製品によるビデオ画像の品質は、望まれているほど明るくないか、または鮮明ではない。したがって、ディスプレイが使用されていないときにビデオディスプレイを隠すための鏡状の外観を有し、かつディスプレイが使用中であり、高レベルの自然光を有する領域内で利用されるときに、ディスプレイからのビデオ画像が明るくかつ鮮明になることを可能にする、被覆ガラス物品を提供することが有利であり得る。加えて、被覆ガラス物品を備えるディスプレイアセンブリもまた望ましくあり得る。
【発明の概要】
【0005】
本発明によると、被覆ガラス物品は、ガラス基板と、ガラス基板上に形成される被覆とを備える。被覆は、ガラス基板の主要表面上に成膜されるシリコン酸化物の任意の基層、任意の基層上に成膜されるチタン、ニオブ、またはクロム酸化物の第1の被覆層、第1の被覆層上に成膜されるシリコン酸化物の第2の被覆層、及び第2の被覆層上に成膜される第3の被覆層を含む。本発明の被覆ガラス物品は、40%〜55%のTvis及び40%〜60%のRfを示す。
【0006】
また、被覆ガラス物品を備えるディスプレイアセンブリと、そのようなビデオディスプレイアセンブリを作製する方法も提供される。本発明の方法によると、ビデオディスプレイは、ビデオディスプレイが動作中に、それが被覆ガラス物品を通して見えるように、かつビデオディスプレイが動作していないときに、それが被覆ガラス物品によって隠されるように、本発明の被覆ガラス物品の後方に載置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の上記ならびに他の利点は、添付の図面を考慮したとき、以下の発明を実施するための形態から当業者には容易に明らかになるであろう。
【0008】
図1】本発明に従った被覆ガラス物品の断面図である。
図2】本発明に従ったディスプレイアセンブリの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ビデオディスプレイが使用されていないときに、鏡状の外観を有することによって、ビデオディスプレイを隠すことができるが、従来可能であったよりも広域の周囲条件のスペクトル下で表示されるときに、改善されたビデオ画像品質を提供することができる、被覆ガラス物品を有することが望ましいことがわかっている。
【0010】
本発明の被覆された反射ガラスは、所定の反射率を有する。より具体的には、被覆反射ガラス物品は、所定のレベルの可視光透過率、ならびに所定のレベルのフィルム面反射率、及びある特定の実施形態では、ガラス面反射率を有し、所定のレベルは概して、互いに同様である。
【0011】
本発明によると、40%〜55%の可視光透過率及び40%〜60%のフィルム面反射率(C光源)を示す被覆ガラス物品は、ガラスの後方に隠されたビデオディスプレイが使用されていないときに、心地良い鏡状の外観を提供するだけでなく、この目的で使用される既知の反射ガラスを用いた場合よりも、ある特定の環境光条件下で測定できるほどにより明るく、かつより鮮明である画像を提供するという目標を達成することがわかっている。被覆ガラス物品はまた、44%〜56%のガラス面反射率(C光源)を有してもよい。
【0012】
さらに、上記の特性は、以下の構造の多層膜積層が成膜されるガラス基板によって、本発明に従って達成され得ることもわかっている。
ガラス基板の主要表面上に成膜される、好ましくは10nm〜30nmの厚さを有するシリコン酸化物の任意の基層、
シリコン酸化物の基層上に成膜される、好ましくは30nm〜40nmの厚さを有するチタン、ニオブ、またはクロム酸化物の第1の被覆層、
チタン、ニオブ、またはクロム酸化物の層上に成膜される、好ましくは70nm〜100nmの厚さを有するシリコン酸化物の第2の被覆層、ならびに
第2の被覆層上に成膜される、好ましくは60nm〜90nmの厚さを有する、スズ酸化物の第3の層。
【0013】
本発明の被覆ガラス物品は、好ましくは、ビデオディスプレイに垂直な角度で隠されたビデオディスプレイを見る観察者に対して中間色を有し、ビデオディスプレイが被覆ガラス表面に対して非垂直角度で表示されるときに、反射色の改善された中立性を望ましくは示す。
【0014】
本発明の被覆された反射ガラスは、所定の反射率を有する。より具体的には、本発明の実施形態は、所定のレベルの可視光透過率、ならびに所定のレベルのフィルム面反射率、及び好ましくはガラス面反射率も有する反射被覆ガラス物品を提供し、所定のレベルは概して、互いに同様である。
【0015】
幅広い種類の方法のいずれか1つによって反射性になったガラスシートは既知である。しかしながら、薄膜被覆の当業者が異なる多くの層の被覆積層を使用し、かつそれらの層の組成を変化させて、新しい効果をもたらす方法を用いて実験し始めたのは、ごく最近のことである。Pilkington North America,Inc.による1つのそのような革新は、Pilkington MirroView(商標)として販売される製品である。Pilkington MirroView(商標)は、約20%の可視光透過率(Tvis)、約70%〜75%のフィルム面反射率(Rf)、及び約55%〜60%のガラス面反射率(Rg)を有する多層熱分解フィルム積層を有する。本明細書で使用される場合、可視光透過率またはTvisは、特定の厚さのガラスシートを通過するスペクトルの可視部分における垂直入射光の量を意味する。フィルム面反射率またはRfは、(この場合)多層被覆積層が成膜されているガラスシートの表面によって反射される可視光の量を意味する。ガラス面反射率またはRgは、被覆されておらず、被覆表面の反対側にあるガラスシートの表面によって反射される可視光の量を意味する。
【0016】
被覆ガラス物品の被覆表面が部屋の内部に面している上記のTvis及びRfの組み合わせは、後方から照射されていないときに鏡状の外観を有する製品を生成する。しかしながら、後方から照射されているとき、例えばビデオディスプレイからの可視光により、ビデオ画像が室内の視聴者によって被覆ガラス物品を通して見られることが可能になる。理解されるように、Pilkington MirroView(商標)製品が非常に人気がある一方で、約20%であるそのTvisは非常に低く、それを通して表示され得るビデオ画像の明るさが望まれているよりも多少暗いと一部によって知覚されることを意味する。ビデオ画像のある特定の詳細も同様に、わずかに不明瞭であり、したがってビデオ画像の「鮮明さ」を低減する可能性がある。
【0017】
本明細書で使用される「明るさ」は、典型的には、輝度の観点からビデオディスプレイに関して表現される。輝度は、どれほどの光量が特定の画角から表面を見るヒトの眼によって検出されるかを示す。輝度は、カンデラ毎平方メートル(cd/m)で測定され得る。ビデオ画像品質に関連した本明細書で使用される「鮮明さ」は、知覚された画像の焦点に直接関連する。鮮明さは、解像度及び尖鋭度からなる。ビデオ画像の解像度は概して、単位面積当たりのピクセル数によって決定される。尖鋭度は、ヒトの視覚系の性質により、より高い尖鋭度を有する画像をより鮮明に見えるようにする画像のエッジコントラストである。Pilkington MirroView(商標)製品を使用した低下した品質のビデオ画像の知覚は、ビデオディスプレイが位置する部屋が比較的高レベルの環境光を有するときに強調されることがわかっている。
【0018】
Pilkington MirroView(商標)製品の約70%のRf及び20%のTvisとは対照的に、TvisのレベルとRfのレベルとの間でより良好なバランスを有することは、被覆ガラス基板を通して表示されるビデオ画像の品質を改善すると同時に、ビデオディスプレイが動作していないときに、十分なレベルの隠蔽及び心地良い鏡状の外観を維持することができることがわかっている。
【0019】
製造可能で費用効率の高い被覆が、TvisとRfとの間のより良好なバランスの目標を満たすと同時に、上記の隠蔽及び鏡状の外観の要件を満たすように構築され得るかを決定するために、多層薄膜被覆積層の予測実施例を生成するために、コンピュータモデリングを利用した。
【0020】
コンピュータモデリングのこれらの予測実施例の結果は、表1に見られ、以下のフィルム積層を透明なガラス基板上でモデリングした。

P1 ガラス/15nm SiO/32nm TiO/90nm SiO/75nm SnO
P2 ガラス/35nm TiO/90nm SiO/75nm SnO
P3 ガラス/15nm SiO/35nm TiO/90nm SiO/75nm SnO
P4 ガラス/15nmSiO/35nm Nb/90nm SiO/75nm SnO
P5 ガラス/35nm Cr/90nm SiO/75nm SnO
P6 ガラス/15nm SiO/35nm Cr/90nm SiO/75nm SnO
P7 ガラス/15nm SiO/35nm Cr2O/90nm SiO/75nm SnO
P8 ガラス/35nm Nb/90nm SiO/75nm SnO
P9 ガラス/15nm SiO/35nm Nb/90nm SiO/75nm SnO

【表1】

【0021】
予測実施例P2、P5、及びP8は、任意の基層が提供されるときに、本発明の被覆ガラス物品の光学特性に対してごくわずかな影響しか及ぼさないことを示す。
【0022】
コンピュータモデリングを基礎として、オンライン被覆試験を実施した。オンライン試験で透明なガラス上に利用したフィルム積層、及び被覆ガラス物品の測定された特性を示す実施例が、表2に見られる。オンライン被覆試験中の条件は、1237°Fのコータ温度、約6%の槽H、及び339インチ毎分のライン速度を含んだ。ガラスの厚さは0.231インチであった。典型的なコータ流量は、測定された特定のコータに応じて438slm〜647slmに及んだ。
【0023】
これらの実施例において、以下の被覆ガラス物品を生成した。
実施例1 ガラス/15nm SiO/32nm TiO/90nm SiO/75nm SnO
実施例2〜13 ガラス/15nm SiO/35nm TiO/90nm SiO/75nm SnO

【表2】

【0024】
本発明によると、好ましくは透明なソーダ石灰シリカガラスであり、かつ好ましくは3mm〜6mmの厚さであるガラスである、ガラスシートの主要表面上に成膜されるフィルム積層は、ガラスシートの主要表面上に成膜される、好ましくは10nm〜30nmの厚さのシリコン酸化物の基層、基層上に成膜される、好ましくは30nm〜40nmの厚さのチタン、ニオブ、またはクロム酸化物の第1の被覆層、第1の被覆層上に成膜される、好ましくは70nm〜100nmの厚さのシリコン酸化物の第2の被覆層、及び第2の被覆層上に成膜される、好ましくは60nm〜90nmの厚さのスズ酸化物の第3の被覆層を有してもよい。
【0025】
ある特定の好ましい実施形態では、フィルム積層の層の厚さは、シリコン酸化物の基層に対して15nm〜25nm、チタン、ニオブ、またはクロム酸化物の第1の被覆層に対して32nm〜37nm、シリコン酸化物の第2の被覆層に対して80nm〜95nm、及びスズ酸化物の第3の被覆層に対して70nm〜80nmの範囲内である。さらにより好ましくは、フィルム積層の層の厚さは、基層に対して15nm〜20nm、第1の被覆層に対して34nm〜36nm、第2の被覆層に対して87nm〜92nm、及び第3の被覆層に対して73nm〜77nmの範囲内である。
【0026】
本発明の実施形態において、第1の被覆層は、2.1以上の屈折率を有し、第2の被覆層は、1.6以下の屈折率を有し、第3の被覆層は、1.6を超える屈折率を有する。
【0027】
ある特定の実施形態では、被覆ガラス物品は、CIELAB色座標系に従って、a*=+5〜12、b*=−5〜+5の範囲内の透過色(Tvis)、及びa*=−2〜−8、b*=−6〜+10の範囲内の反射フィルム面の色(Rf)を示し、好ましくはまた、ガラス面反射色(Rg)は、a*=−15〜−8、b*=−6〜+10の範囲内である。
【0028】
図1は、被覆ガラス物品10のある特定の実施形態を示す。
【0029】
図1に示されるように、被覆ガラス物品10は、ガラス基板12を備える。ガラス基板12は、当該技術分野において既知の従来のガラス組成のいずれかであってもよい。ある特定の実施形態では、ガラス基板12の組成は、被覆ガラス物品10がある特定の明確なスペクトル特性を示すことを可能にするように選択される。ガラス基板12は、実質的に透明であり、可視光に対して透過性であってもよい。好ましくは、ガラス基板12は、ソーダ石灰シリカガラスである。本実施形態では、基板12は、フロートガラスリボンであってもよい。しかしながら、ガラス基板は、例えば、ホウケイ酸塩組成などの別の組成を有してもよい。また、ガラス基板の透明また吸収特性は、被覆ガラス物品の実施形態の間で異なってもよい。例えば、着色ガラス基板が被覆ガラス物品に利用されてもよい。加えて、ガラス基板の厚さは、実施形態の間で異なってもよい。
【0030】
被覆14は、ガラス基板12上に成膜される。被覆14は、任意のベース被覆層16、第1の被覆層18、第2の被覆層20、及び第3の被覆層22を含む。ある特定の実施形態では、被覆14は、上記の層16〜22からなる。層16〜22は、任意の好適な方法によって成膜され得るが、好ましくは大気化学蒸着(APCVD)によって成膜される。例えば、ソルゲル被覆技術またはスパッタ被覆技術など、他の既知の成膜方法が、被覆層のうちの1つ以上を成膜するのに好適である。基板12がフロートガラスリボンである実施形態では、被覆14は好ましくは、フロートガラスプロセスの加熱領域において適用される。ベース被覆層16は、ガラス基板12の第1の主要表面24上に、好ましくは直接成膜される。ガラス基板の第2の主要表面26は、被覆されていなくてもよい。
【0031】
加えて、本発明のある特定の実施形態では、特定の用途に応じて他の任意の層が被覆積層に追加されてもよい。例えば、シリコン酸化物の基層の成膜の前に、色抑制層が主要ガラス表面上に成膜されてもよい。
【0032】
本発明に従ったフィルム積層の層のために選択される材料は、それらの光学特性、例えば屈折率だけではなく、それらの物理的及び化学的特性によっても選択される。
【0033】
被覆ガラス物品のTvisは、40%〜50%、好ましくは45%〜47%である一方で、Rfは、40%〜60%、好ましくは50%〜60%、及びより好ましくは50%〜55%である。加えて、ある特定の実施形態では、被覆ガラス物品によって示されるRgは、44%〜56%、及び好ましくは49%〜51%である。特に、Tvis及びRfがこのような好ましい範囲内であるとき、被覆ガラスシートを通して表示されるビデオディスプレイの画像は、そのような画像が既知の反射ガラスを通して表示されるよりも広い範囲の環境光条件下で、測定できるほどにより明るく、かつより鮮明であることがわかっている。
【0034】
多層フィルム被覆積層の層は、任意の好適な方法によって成膜され得るが、フロートガラス製造プロセス中に、好ましくは化学蒸着、より好ましくは大気圧化学蒸着(APCVD)によって成膜される。多層フィルム積層の層のそれぞれの成膜速度は、費用効率の高い方法でのフィルム積層の生成を可能にするのに十分な任意の成膜速度であってもよい。
【0035】
シリコン酸化物の任意の基層は、好ましくは、第1の被覆層を形成する材料及び第1の被覆層が成膜される方法に応じて、第1の被覆層の成膜を強化するのに有益であり得るある特定の実施形態で提供される。これは、第1の被覆層がチタン酸化物から形成されるある特定の実施形態の場合と同じであり得る。提供される場合、任意の基層は、本発明の被覆ガラス物品の光学特性にごくわずかな影響しか及ぼさない。
【0036】
シリコン酸化物の層を形成するために利用され得る前駆体物質は、シランまたはSiのリン化合物を含み得るが、好ましくはシランであり、より好ましくはモノシランである。チタン、ニオブ、またはクロム酸化物の層を形成するために利用され得る前駆体物質は、チタンハロゲン化合物、チタンアルコキシド、及びチタンアミン、ニオブハロゲン化合物及びニオブアルコキシド、クロムオキシハロゲン化合物及びクロムアルコキシドを含む。好ましいチタン化合物はTiCl4を含み、好ましいニオブ化合物はNbCl5を含み、好ましいクロム化合物はCrOCl2を含む。スズ酸化物の層を形成するために利用され得る前駆体物質は、無機スズハロゲン化合物を含むが、好ましくは三塩化モノブチルスズ(MBTC)などの有機スズであり、より好ましくは、スズ前駆体は二塩化ジメチルスズ(DMT)である。
【0037】
フロートガラス操作は、特許請求された発明の方法を実施するための手段として利用される。フロートガラス操作の1つの特定の実施例が、以下に記載される。フロートガラス装置は、より具体的には、溶融ガラスが溶融炉から、連続ガラスリボンが周知のフロートプロセスに従って形成されるフロート槽部分まで送達される管部分を備える。ガラスリボンは、槽部分から隣接するアニーリングレア及び冷却部分を通って前進する。連続ガラスリボンは、所望の被覆が本発明に従って成膜される基板として作用する。
【0038】
フロート槽部分は、溶融スズの槽が含まれる底部分、屋根、両側壁、及び端壁を含む。屋根、側壁、及び端壁は合わせて、溶融スズの酸化を防止するために非酸化性大気が維持される筐体を画定する。
【0039】
加えて、本願の特許請求された発明の方法によって金属酸化物被覆を適用する前に、基板上にさらなる被覆を適用するために、槽部分内のガス分配器ビームが採用されてもよい。
【0040】
動作中、溶融ガラスは、制御された量で、調整ツイールの下のチャネルに沿って、スズ槽の表面上まで下方に流動する。スズ槽上で、溶融ガラスは、重力及び表面張力の影響下、ならびにある特定の機械的影響下で横方向に広がり、リボンを形成するために槽にわたって前進させられる。リボンは、リフトアウトロール上で除去され、その後、整列ロールうえでアニーリングレア及び冷却部分を通して運搬される。特許請求された発明の被覆の適用は、フロート槽部分内で、またはさらに生産ラインに沿って、例えば、フロート槽とアニーリングレアとの間の間隙内もしくはアニーリングレア内で行われてもよい。
【0041】
概して、窒素、または窒素が大部分を占める水素及び窒素の混合物である、好適な非酸化性大気が、スズ槽の酸化を防止するために槽筐体内で維持される。雰囲気ガスは、分配マニホールドに動作可能に連結される導管に通される。非酸化性ガスは、通常の損失を補い、かつ周囲の大気圧よりも約0.001〜約0.01気圧高いわずかに陽性の気圧を維持するのに十分な速度で導入されて、外部雰囲気の侵入を防止する。特許請求された発明の目的で、上記の圧力範囲は、標準大気圧を構成すると見なされる。概して、槽及び筐体内で600℃〜750℃の所望の温度状況を維持するための熱は、筐体内のラジエントヒータによって提供されてもよい。レア内の雰囲気は、冷却部分が包囲されず、ガラスリボンが周囲の雰囲気に開放されているため、典型的には大気である。周囲空気は、冷却部分内で、例えば、ファンによってガラスリボンに対して方向付けられてもよい。ヒータはまた、ガラスリボンの温度を、それがアニーリングレアを通して運搬されるときに所定の状況に従って徐々に低下させるために、アニーリングレア内で提供されてもよい。
【0042】
ガス分配器ビームは概して、ガラスリボン基板上に種々の被覆を成膜するためにフロート槽内に位置付けられるが、フロート槽の下流に位置付けられてもよい。
【0043】
ガス分配器ビームは、本発明のプロセスを実施するために採用され得る反応器の一形態である。
【0044】
本発明に従った前駆体物質を供給するのに好適な分配器ビームのための従来の構成は、概して、離間した内壁及び外壁によって形成され、かつ少なくとも2つの包囲された空洞を画定する、逆転した概してチャネル形状の枠組みである。好適な熱交換媒体は、分配器ビームを所望の温度で維持するために、包囲された空洞を通して循環される。好ましい分配器ビームは、Hofer et al.の米国特許第4,504,526号に開示され、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
前駆体ガス混合物は、流体冷却型供給導管を通して供給される。供給導管は、分配器ビームに沿って延在し、供給導管に沿って離間したドロップラインにガスを通す。供給導管は、枠組みによって担持される排気管内の送達チャンバに至る。ドロップラインに通される前駆体ガスは、送達チャンバから、それらがガラスの表面に沿って流動するガラスに通じている蒸気空間を画定する被覆チャンバに向かう通路を通して排出される。
【0046】
分配器ビームにわたって前駆体物質の流動を均一にして、物質が分配器ビーム全体にわたって滑らかで、層流で、均一な流動でガラスに対して排出されることを確実にするために、バッフルプレートが送達チャンバ内に提供されてもよい。使用済みの前駆体物質は回収され、分配器ビームの側面に沿った排出チャンバを通して除去される。
【0047】
化学蒸着に使用される種々の形態の分配器ビームが本方法に好適であり、従来技術において既知である。1つのそのような代替の分配器ビーム構成は概して、前駆体ガス混合物をガス供給管を通して導入し、それは、冷却管を通して循環される冷却流体によって冷却される。ガス供給管は、細長い開口を通ってガス流量制限器内へと通じる。ガラス流量制限器は、正弦波の形態で長手方向に圧着され、互いに隣接した関係で垂直に載置され、分配器の長さに沿って延在する、複数の金属片を備える。隣接する圧着された金属片は、それらの間に複数の垂直チャネルを画定するために、「位相を異にして」配列される。これらの垂直チャネルは、ガス供給管の断面積と比較して小さい断面積を有し、ガスが分配器の長さに沿って実質的に一定の圧力でガス流量制限器から放出されるようにする。
【0048】
被覆ガスは、ガス流量制限器から、概して入口脚部、被覆される高温ガラス基板に通じている被覆チャンバ、及び使用済みの被覆ガスがガラスから引き出される出口脚部を備える実質的にU字形の誘導チャネルの入口側に放出される。被覆チャネルを画定するブロックの丸角は、被覆されるガラス表面にわたってガラス表面に平行な被覆の均一な層流を促進する。
【0049】
Tvis、Rf、及びRgの間でよりバランスのとれた関係を有することが、驚くべきことに、本明細書の別の個所で考察されるPilkington MirroView(商標)製品のように、Rfが有意により高い場合よりも視覚的に心地良い鏡状の外観を生成することがわかっている。ビデオディスプレイが動作中であるかどうかを視聴者によって知覚される反射色は、反射鏡のビデオ画像の外観の受容性に関与することが理解されるであろう。概して、中間色が好ましい。被覆物品の反射色は、本発明に従っており、概して、本願ですでに考察されたように中間からわずかに青みがかった色として知覚される。
【0050】
本発明に従った反射被覆ガラス物品は、種々の用途に使用され得ることが理解されるであろう。
【0051】
図2を参照すると、ある特定の実施形態では、被覆ガラス物品10は、ディスプレイアセンブリ40で利用される。好ましくは、ディスプレイアセンブリ40は、例えば壁などの載置部材42に取り付けられる。例えばフラットスクリーンビデオディスプレイなどのディスプレイもまた、載置部材42及び/またはディスプレイアセンブリ40に取り付けられてもよい。ディスプレイは、載置部材42とディスプレイアセンブリ40との間に提供される。有利に、この位置で、ディスプレイは、ディスプレイが使用中ではないときにディスプレイアセンブリ40の被覆ガラス物品10の反射率及び鏡状の外観によって隠され、ディスプレイが使用中であるときに、ディスプレイ画像は、被覆ガラス物品10を通して見ることができ、ディスプレイアセンブリ40を通して見えるディスプレイ画像の品質は、環境光条件の広域スペクトル下で明るく、かつ鮮明である。
【0052】
したがって、本発明の実施形態では、ビデオディスプレイアセンブリを作製する方法が提供され、ビデオディスプレイは、本発明の被覆ガラス物品の後方に載置され、ビデオディスプレイが動作中であるときに、それが被覆ガラス物品を通して見えるようにし、かつビデオディスプレイが動作していないときに、それが被覆ガラス物品によって隠されるようにする。
【0053】
ディスプレイアセンブリ40はまた、骨組部材44を備える。被覆ガラス物品10は、骨組部材44内に提供され、かつ好ましくはそれに固定される。骨組部材44内で、被覆ガラス物品10は、被覆14が載置部材42から外に離れて面することができるように位置付けられる。他の実施形態(図示せず)では、被覆ガラス物品は、被覆が載置部材に面するように骨組部材内に位置付けられる。
【0054】
骨組部材44は、木材、金属、プラスチック、または別の適切に硬質な材料から形成され得る。図2に示されるようなある特定の実施形態では、骨組部材44は、実質的に正方形である外側表面46を有する。本実施形態では、骨組部材44は、4つのレール48を備え、各レール48は、対のレールに取り付けられ、取り付けられる対のレールと垂直な関係で提供される。しかしながら、他の実施形態(図示せず)では、骨組部材は、別の幾何学的形状を有する外側表面を有してもよく、及び/または4つよりも多いもしくは少ないレールを備えてもよい。
【0055】
特許法の定めに従って、本発明は、その好ましい実施形態を表すと見なされるものにおいて記載されてきた。しかしながら、本発明が、その精神または範囲から逸脱することなく、具体的に例示及び説明されるものとは別様に実施され得ることに留意されたい。
図1
図2