(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のパワーコンディショナでは、冷却用ファンの凍結防止のためにシート状ヒーターを取り付ける必要があり、冷却用ファンの凍結によるファンの停止を防ぐためにはコストが増加するという問題があった。
【0006】
この発明は、上記した問題点を解決するためになされたものであり、低コストで凍結による冷却用ファンの停止状態を正常状態に移行させることができるパワーコンディショナを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかるパワーコンディショナは、交流電力と直流電力とを双方向に変換する電力変換素子と、両端を吸気口と排気口とで構成された風路と、風路内に設けられ
、電力変換素子の熱を風路内に放熱する放熱器と、風路内に設けられた第1のファンと、風路内の第1のファンと吸気口との間に設けられ
、放熱器の放熱により暖められた空気を第1のファンに向けて排気する第2のファンと、第1のファンの動作状態と第2のファンの動作状態とから
、第1のファンと第2のファンと電力変換素子とを制御する
制御部と、を備える。制御部は、第1のファンが凍結していると判断した際に、電力変換素子を通常運転時より低い出力電力で運転し、且つ第2のファンを動作させる暖気運転を実施する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低コストで凍結による冷却用ファンの停止状態を正常状態に移行させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1におけるパワーコンディショナ1について、
図1〜
図4を用いて説明する。
図1はパワーコンディショナ1の斜視図、
図2は本実施の形態におけるパワーコンディショナ1における、A−A′方向の断面図である。パワーコンディショナ1は、ダクト4と、放熱器5と、電力変換素子6と、第1のファン7と、第2のファン8と、外気の温度を検出する外気温度検出部となる温度検出センサー9と、吸気口10と、排気口11と、制御部15とから構成される。
パワーコンディショナ1は外装を金属の筐体で構成され、パワーコンディショナ1の底面には脚3が、背面には背面カバー2が取り付けられている。脚3はボルト13にてコンクリート基礎12に固定されている。ダクト4はパワーコンディショナ1の内部に設けられ、パワーコンディショナ1の底面で2つの脚3の間に設けられた吸気口10と、第2の開口部31とを両端とする第1の風路32を構成する。吸気口10は、パワーコンディショナ1の外気をダクト4に取り込む入口であるが、外気に含まれるゴミや低温時の雪などがダクト4内部に進入することを防ぎ、外気のみを取り込むために格子状のカバーを設けている。また背面カバー2は、第2の開口部31と背面カバー2の底面に設けられた排気口11とを両端とする第2の風路33を構成する。
ダクト4にはパワーコンディショナ1の内部に開口している第1の開口部30が設けられている。またダクト4の外部に固定された基板上には電力変換素子6が設けられ、電力変換素子6の一部は第1の開口部30からダクト4側に突出している。電力変換素子6は交流電力と直流電力とを双方向に電力変換するので、電力変換時には熱を発生する。放熱器5は例えばアルミ等の熱伝導率の高い金属で構成され、電力変換素子6の放熱を行うために、ダクト4内部で電力変換素子6が突出している部分に密着して取り付けられている。電力変換時、電力変換素子6にて発生した熱は放熱器5を介して放熱されるので、放熱器5は加熱される。
第2の開口部31には第1のファン7が設けられ、この第1のファン7を動作させることにより、吸気口10から取り入れられた外気は背面カバー2に向けて送風されるので、吸気口10から取り入れた外気は放熱器5を冷却する。ダクト4の内部で放熱器5と吸気口10の間にはサーミスターなどの温度検出センサー9を備え、吸気口10から吸い込まれる外気の温度を計測する。また、吸気口10と第1のファン7との間で、更には第1のファン7より放熱器5に近い位置に、第2のファン8が設けられている。第2のファン8は、放熱器5の上方に配置されており、第2のファン8を駆動することにより、放熱器5を通過した空気を第1のファン7に向けて排気する。
加熱された放熱器5の周囲の空気は放熱器5によって暖められる。この空気は対流によりダクト4内部で放熱器5の上方に移動し、第2のファン8周辺を通過する。この結果、第2のファン8が凍結している場合は、放熱器5で暖められた空気が第2のファン8全体を暖めるので、第2のファン8は解凍され、動作可能状態となる。さらに第2のファン8周辺の暖かい空気は対流により第1のファン7周囲に移動するので、第1のファン7が凍結している場合ファンは暖められて解凍し、第1のファン7は動作可能状態となる。
なお加熱された放熱器5周辺の空気は、対流によりダクト4内部を経由して第1のファン7に向かって移動するが、対流による空気の移動には多くの時間がかかる。この場合、パワーコンディショナ1が使用できない期間が長くなることから、直ぐにパワーコンディショナ1を使用できないという問題が発生する。そこで、実施の形態1においては、第2のファン8を放熱器5の付近に設け、且つ第2のファン8を第1のファン7に向かって排気させるよう設置ことにより、加熱された放熱器5周辺の空気を第1のファン7に当てることができるので、放熱器5から離れて設置されている第1のファン7を高速に解凍させることができる。
なお、
図2においては、放熱器5をダクト4内部の中央付近に設けているが、ダクト4の外部に固定された基板上に設けられた電力変換素子6の位置をできるだけ第1のファン7に近い位置に固定し、放熱器5および第2のファン8も電力変換素子6と同時にダクト4内部で上方に移動させてもよい。この結果、加熱された放熱器5周辺の暖かい空気は短い距離にて第1のファン7に当てることができるので、凍結した第1のファン7をさらに高速で解凍することができる。この結果、低温時にファンが凍結したパワーコンディショナ1を高速に起動することができる。
制御部15は、例えばマイコンなどで構成され、温度検出センサー9により検出されたダクト4内部の温度を基に、第1のファン7および第2のファン8の動作を制御する。なお、温度検出センサー9によって検出される温度は外気温度とほぼ同一であり、制御部15は温度検出センサー9の検出温度を外気温度として利用している。
【0011】
次に、パワーコンディショナ1が運転状態から停止状態に移行した場合における、第1のファン7および第2のファン8の動作について説明する。
パワーコンディショナ1を屋内に設置する場合は特に問題はないが、屋外に設置する場合は、雨や雪が降りかかることを想定する必要がある。ここで雨天や降雪時、屋外に設置されたパワーコンディショナ1は運転中、吸気口10から外気と一緒に雨水や雪を吸い込む。このような湿度の高い外気が放熱器5により暖められると、暖められた外気に含まれる水分は温度の低い第1のファン7および第2のファン8によって冷やされ結露するので、第1のファン7および第2のファン8には水滴が付着する。次にこの状態からパワーコンディショナ1が運転を停止すると、パワーコンディショナ1には排気口11から屋外の風によって押し込まれた外気とともに雨水や雪が浸入するので、第1のファン7や第2のファン8にはさらに水滴が付着する。この後外気の温度が氷点下以下に下がると、第1のファン7と第2のファン8に付着した水滴が凍結するので、第1のファン7および第2のファン8の回転は妨げられる。
【0012】
次に制御部15における第1のファン7、第2のファン8、電力変換素子6の制御方法について
図3を用いて説明する。
図3は本実施の形態における制御部15の入出力信号を示すブロック図である。温度検出センサー9にて検出された外気の温度情報16は、制御部15に出力される。また、第1のファン7および第2のファン8からは、それぞれの動作を表す動作検出信号18および20が制御部15に出力される。動作検出信号18および20は、ファンの動作状態を表す信号で、例えばファンが停止している場合は“0”、ファンが動作している場合は“1”といった1ビットの信号や、複数のビットを用いてファンの回転数の情報などを制御部15に出力する。また制御部15は、第1のファン7および第2のファン8に対して、それぞれのファンの回転を制御する回転制御信号17および19を送出し、第1のファン7および第2のファン8の回転を制御する。
【0013】
次に、第1のファン7の動作状態を判断する方法、およびファンの凍結状態を解消するための暖気運転モードについて説明する。
本願発明において、ダクト4内部の温度情報16が5℃より高い場合は、第1のファン7および第2のファン8が凍結していないと判断する。一方、ダクト4内部の温度情報16が5℃以下の場合、制御部15は第1のファン7および第2のファン8が凍結している可能性があると判断する。このように、外気温度によって第1のファン7の凍結を判断することによって、不必要な暖気運転モードの実施を抑制することが出来る。
次に、温度情報16が5℃以下の場合について説明する。このとき制御部15は、パワーコンディショナ1の出力電力を通常運転時より抑えた暖気運転モードにて動作させるべく電力変換素子6に出力制御信号21を送出する。なお暖気運転モードにてパワーコンディショナ1を通常運転時より出力電力を抑えて運転する理由は、暖気運転時に消費する消費電力を抑えるとともに、第1のファン7および第2のファン8が凍結して動作しない状態で通常運転を行うと、電力変換素子6からの発熱により放熱器5の温度が急激に上昇し、電力変換素子6が動作しなくなる可能性があるためである。
なお、前記説明ではダクト4内部の温度情報16については5℃を閾値として判断を行っているが、仮にこの閾値をさらに低くして0℃とした場合には、パワーコンディショナ1の外気の気温が0℃以上であっても、0℃近い温度では排気口11から侵入する風によって第1のファン7および第2のファン8が凍結する可能性がある。よって第1のファン7および第2のファン8が凍結しない温度を考慮して0℃より高い5℃としている。また、例えば第1のファン7や第2のファン8が動作可能な温度範囲である動作温度範囲に応じて、例えば温度検出センサー9で検出される外気の温度がファンの動作温度範囲より低い場合は、ファンは停止状態となるが、暖気運転モードを実施することによりファンを動作状態に移行することができる。
暖気運転モードにおいて電力変換素子6から発生した熱は、放熱器5を介して放熱器5上部の空気を暖める。その暖まった空気は対流によって上昇して第2のファン8を暖め、凍結状態から通常状態に戻る。このとき制御部15は動作検出信号18から、第2のファン8が通常動作状態であることを検知し、第2のファン8を動作させる。
【0014】
第2のファン8が動作すると、放熱器5で温まった空気は第2のファン8によってダクト4の下流側となる上段に備えた第1のファン7に届く。この結果、第1のファン7が凍結している場合はこの温まった空気によって解凍することができる。制御部15は動作検出信号20から第1のファン7が通常動作状態であることを検知すると、第1のファン7を動作させるとともに第2のファン8を停止し、あわせて電力変換素子6の出力電力を通常運転時に戻したのちパワーコンディショナ1の通常運転を開始する。
【0015】
なお、上記説明において、外気温度検出部として放熱器5や第1のファン7及び第2のファン8とは独立した温度検出センサー9を用いた場合を説明したが、放熱器5や第1のファン7や第2のファン8に内蔵された温度を計測するセンサを用いて外気の温度を計測してもよい。さらにパワーコンディショナ1の外部に温度検出センサーを設けて直接外気温を計測したり、パワーコンディショナ1が外部のネットワークと接続されている場合は、家屋内外に設けられた機器が備える温度情報や、インターネットから外気の温度情報を入手して使用してもよい。
このように構成することにより、新たに外気温度検出部を設置する必要がなくなるので、さらに安価な構成にて第1のファン7および第2のファン8を、凍結状態から正常状態に移行することができる。
【0016】
次に、本発明のパワーコンディショナ1の起動時における制御部15の詳細動作について、
図4を用いて説明する。
図4はパワーコンディショナ1の起動時における制御部15の制御フロー図である。パワーコンディショナ1の運転開始時、制御部15は温度検出センサー9の測定値を検出する(S0)。 この測定値が5℃以上の場合(S1:Yes)、第1のファン7と第2のファン8は凍結していないと判断して電力変換素子6を通常運転する(S9)。温度検出センサー9の測定値が5℃以下の場合(S1:No)、第2のファン8に回転制御信号17を送出し、第2のファン8の動作を試みる(S2)。次に動作検出信号18から第2のファン8の動作状態を確認する(S3)。第2のファン8が動作する場合(S3:Yes)は、続けて回転制御信号19を送出し、第1のファン7を動作させることを試みる(S5)。一方、S3にて第2のファン8が動作しない場合(S3:No)は、第2のファン8が凍結している可能性があると判断し、出力制御信号21を送出して電力変換素子6を通常運転状態より出力電力を抑えた暖気運転状態にする(S4)。この暖気運転によって第2のファン8が解凍して動作するまでS3〜S4の処理を繰り返す。
次に動作検出信号20から第1のファン7の動作を確認する(S6)。第1のファン7が動作する場合(S6:Yes)は、このファンが凍結していないと判断し、この結果第1のファン7および第2のファン8は両方とも凍結していないことが確認できるので、第1のファン7および第2のファン8を停止させ(S8)、暖気運転を停止して通常運転を開始する(S9)。なおS6において、第1のファン7が動作しない場合(S6:No)は、出力制御信号21を送出しでパワーコンディショナ1の暖気運転を実施し(S7)、第1のファン7が解凍するまでS6〜S7の処理を繰り返す。
ここで、本実施の形態では、最初に第2のファン8の動作確認を実施(S3)したが、例えば最初に第1のファン7の動作確認を実施し、第1のファン7の凍結が確認された際に第2のファン8を動作させると共に電力変換素子6を通常運転状態より出力電力を抑えた暖気運転状態にするようにしても良い。このように動作させることにより、第1のファン7は凍結していないが第2のファン8が凍結している場合において、暖気運転を実施することなく通常運転を実施することが出来る。
【0017】
本発明のパワーコンディショナ1では、機器の冷却で使用する安価なファンを用いるので、製品コストの上昇を抑えるとともに、パワーコンディショナ1起動時のみ第2のファン8を回転させるため、僅かな電力にて凍結したファンを解凍して通常動作状態に移行させることができる。
【0018】
なお、
図4の説明において、第2のファン8が動作する状態(例えばS3:Yesの場合)において、第2のファン8の排気が放熱器5に当たるように第1のファンを動作させた後、S5の処理に移る。これにより、吸気口から入り込んだ雪やゴミを吹き飛ばすことができるので、第1の風路32を確保することができる。この結果、放熱器5にて暖められた空気が第1のファン7に到達し、第1のファン7に発生した氷を確実に溶かすことができる。
【0019】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2について、
図5を用いて説明する。
図5はこの実施の形態におけるパワーコンディショナ1のA−A′方向の断面図である。なお
図5中、
図2と同一符号は同一または相当部分を示す。
図5における
図2との差異は、第2のファン8の取り付け位置をダクト4内部で放熱器5の上流側となる下方に設けたもので、それ以外の構成や動作は実施の形態1と同様である。なお、実施の形態2においても実施の形態1と同様に、第2のファン8は、吸気口10と第1のファン7との間で、更には第1のファン7より放熱器5に近い位置に設けられている。
図において、第2のファン8は放熱器5と吸気口10の間であって、放熱器5の直下で、第2のファン8の排気が放熱器5の周囲を通って第1のファン7に当たる位置に設けられている。ここで第2のファン8が凍結した場合は、パワーコンディショナ1の起動時に行う暖気運転の際に発生する放熱器5からの熱放射によって、第2のファン8を解凍させる。その後、第2のファン8が動作すると、吸気口10から吸い込んだ空気が放熱器5の下側から送風される。この結果第2のファン8の排気は放熱器5によって暖められたのち第1のファン7に吹き付けられるので、第1のファン7周辺に暖かい空気が溜まり、第1のファン7上に生成された氷を解かすことができる。この結果、凍結していた第1のファン7も正常に動作可能となるので、パワーコンディショナ1の通常運転を開始することができる。
【0020】
なお、パワーコンディショナ1の運転開始時に第2のファン8が動作可能な場合は、第2のファン8を吸気口10に向けて排気させる。これにより、吸気口10の内から外に向けて噴き出す気流が発生し、吸気口10に詰まった雪やゴミを飛ばすことができる。具体的な動作としては、
図4の制御部15の制御フロー図において、第2のファン8が動作する場合(S3:Yes)に一定時間第2のファン8を吸気口10に向けて排気したのち、第1のファン7を動作(S5)させればよい。また、温度検出センサー9の測定値が5℃以上の場合(S1:Yes)に、一定時間第2のファン8を吸気口10に向けて排気したのち、暖気運転を停止し、電力変換素子を通常運転させてもよい。この処理の結果、吸気口10からの吸気が確保されるので、放熱器5にて暖められた空気が第1のファン7に到達し、第1のファン7に発生した氷を確実に溶かすことができる。