(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797035
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】磁気センサ及び磁気センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01R 35/00 20060101AFI20201130BHJP
G01R 33/07 20060101ALI20201130BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20201130BHJP
G01R 31/54 20200101ALI20201130BHJP
G01R 15/20 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
G01R35/00 M
G01R33/07
G01R31/52
G01R31/54
G01R15/20 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-6526(P2017-6526)
(22)【出願日】2017年1月18日
(65)【公開番号】特開2017-161505(P2017-161505A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-44661(P2016-44661)
(32)【優先日】2016年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】深井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】有山 稔
【審査官】
青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−289037(JP,A)
【文献】
特開2005−265751(JP,A)
【文献】
特開2013−012000(JP,A)
【文献】
特開2007−011709(JP,A)
【文献】
特開2015−079307(JP,A)
【文献】
米国特許第08990594(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 35/00
G01R 15/20
G01R 31/50−31/56
G01R 33/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
判別回路の入力端子に接続される出力端子がプルアップ抵抗で外部電源端子と接続された磁気センサであって、
前記磁気センサは、磁気センサ素子と、前記磁気センサ素子の出力電圧が入力される判定回路と、前記判定回路の信号を前記磁気センサの出力端子に出力する出力制御回路と、を備え、
前記出力制御回路は、
前記磁気センサの出力端子と接地端子の間に直列接続された第1、第2、第3の抵抗と、
ゲートが前記判定回路の出力端子に接続され、ドレインが前記第2の抵抗と前記第3の抵抗の接点に接続され、ソースが接地端子に接続された第1のMOSトランジスタと、
反転入力端子が基準電圧回路の出力端子に接続され、非反転入力端子が前記第1の抵抗と前記第2の抵抗の接点に接続されたアンプと、
ゲートが前記アンプの出力端子に接続され、ドレインが前記磁気センサの出力端子に接続され、ソースは接地端子に接続された第2のMOSトランジスタと、
を備えたことを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
判別回路の入力端子に接続される出力端子がプルアップ抵抗で外部電源端子と接続された磁気センサであって、
前記磁気センサは、磁気センサ素子と、前記磁気センサ素子の出力電圧が入力される判定回路と、前記判定回路の信号を前記磁気センサの出力端子に出力する出力制御回路と、を備え、
前記出力制御回路は、
前記磁気センサの出力端子と接地端子の間に直列接続された第1、第2の抵抗と、
制御端子が前記判定回路の出力端子に接続され、第一入力端子が第一基準電圧回路に接続され、第二入力端子が第二基準電圧回路に接続されたスイッチと、
反転入力端子が前記スイッチの出力端子に接続され、非反転入力端子が前記第1の抵抗と前記第2の抵抗の接点に接続されたアンプと、
前記アンプの出力端子がゲートに接続され、ドレインが前記磁気センサの出力端子に接続され、ソースが接地端子に接続されたMOSトランジスタと、
を備えたことを特徴とする磁気センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の磁気センサと、
入力端子に前記磁気センサの出力端子が接続される判別回路と、
前記磁気センサの出力端子と外部電源端子の間に接続されるプルアップ抵抗と、
備えたことを特徴とする磁気センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサに関し、より詳しくは出力端子を外部でプルアップする構成の磁気センサ及び磁気センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサ装置は、磁束密度を電気信号に変換する磁気検出素子を備え、磁性体が設けられた被検出部材との相対距離の変化に応じて変化する磁束密度が予め設定された磁束密度閾値との大小を電気的に判定し、2レベルの電圧の検出信号を出力する。磁気センサを用いるスイッチングシステム、特に自動車の分野においては、自動車の利用者に安全を提供するため、機能安全(ISO26262)の観点からシステムを構築することが要求される。例えば、磁気センサ素子自体の故障や、システム内の信号伝達経路の故障により、誤ったスイッチング動作が行われてしまう懸念を払拭させることが要求される。
【0003】
図4は、従来の磁気センサ装置である。磁気センサ50は、磁気センサを含む信号処理回路51と、トランジスタ52と、定電流回路53と、抵抗54で構成される。判別回路59は、磁気センサ50とGNDが共通に接続され、端子INが磁気センサ50の端子OUTと接続されている。更に、磁気センサ50の端子INは、プルアップ抵抗58によって電圧VDDにプルアップされている。
【0004】
磁気センサ50は、電圧VDDより所定値だけ低い高レベル値と電圧GNDより所定値だけ高い低レベル値の2値を端子OUTに出力する。判別回路59は、入力電圧レベルがそれら2値の近傍以外の電圧である場合に異常と判定する異常検出機能を有する。
【0005】
このように電圧VDDや電圧GNDと等価でない所定の電圧レベルを正常と判断するよう構成することで、入力端子の断線など異常を容易に検出する事が出来る。例えば、磁気センサ50の端子OUTと判別回路59の端子INの間の配線が断線しオープンになった場合は、判別回路59の入力レベルが電圧VDDとなるため異常と判定される。また、磁気センサ50の端子OUTと判別回路59の端子INの間の配線が電圧GNDに短絡した場合は、判別回路59の入力レベルが電圧GNDとなるため異常と判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−165944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の回路構成の場合、正常時の判別回路59の入力電圧レベルは、抵抗54と定電流回路53とトランジスタ52及びプルアップ抵抗58により決まる。従って、プルアップ抵抗58は、製造ばらつきにより抵抗値がばらつくため、入力電圧レベルが変動してしまい、判別回路59が誤判定をしてしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明の磁気センサは、出力制御回路を、出力端子に接続された分圧回路と、分圧回路の電圧と基準電圧が等しくなるように磁気センサの出力端子に接続されたMOSトランジスタのゲート電圧を制御するアンプを備えた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の磁気センサによれば、磁気センサの出力電圧は、基準電圧と分圧回路の分圧比によって決定されるので、プルアップ抵抗の抵抗値ばらつきに左右されないという効果がある。従って、判別回路は磁気センサ装置の配線の断線や短絡などの異常を正確に判定する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の磁気センサの第一実施形態を示す回路図である。
【
図2】本発明の磁気センサの第二実施形態を示す回路図である。
【
図3】本発明の磁気センサの第三実施形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の磁気センサの第一実施形態を示す回路図である。
磁気センサ装置は、磁気センサ1と、プルアップ抵抗18と、判別回路19で構成される。
【0012】
第一実施形態の磁気センサ1は、磁気センサ素子3と、磁気判定回路4と、出力制御回路10で構成される。出力制御回路10は、MOSスイッチ5と、出力ドライブ素子6と、アンプ7と、基準電圧回路8と、分圧回路である抵抗R1、R2、R3とで構成される。
【0013】
磁気センサ1は、出力端子OUTが判別回路19の入力端子とプルアップ抵抗18を介して外部電源端子VPUに接続される。磁気センサ素子3は、入力端子が電源端子VDD及びGNDに接続され、出力端子が磁気判定回路4の入力端子に接続される。出力ドライブ素子6は、例えばNチャネルMOSFETで構成され、ドレインは出力端子OUTに接続され、ソースは接地端子GNDに接続されている。抵抗R1は、一端が出力端子OUTに接続され、他端(ノードN1)が抵抗R2の一端に接続されている。抵抗R2は、他端(ノードN2)が抵抗R3の一端に接続されている。抵抗R3は、他端が接地端子GNDに接続されている。アンプ7は、出力端子が出力ドライブ素子6のゲートに接続され、反転入力端子は基準電圧回路8の出力端子に接続され、非反転入力端子はノードN1に接続されている。MOSスイッチ5は、例えばNチャネルMOSFETで構成され、ゲートは磁気判定回路4の出力端子に接続され、ドレインはノードN2に接続され、ソースは接地端子GNDに接続される。
【0014】
判別回路19は、磁気センサ1が出力する磁束密度に応じた高レベル値と低レベル値を区別する機能に加え、異常検出機能を有する。異常検出機能は、入力される電圧が高レベル値と低レベル値の近傍である場合に磁気センサ装置が正常であると判定し、入力される電圧がそれ以外の電圧領域である場合に磁気センサ装置が異常であると判定する、
磁気センサ素子3は、電圧VDDを電源とし、磁気センサ素子へ入力される磁束密度に応じた電気信号を出力する。磁気センサ素子3は、例えばホール素子を用いる事ができる。磁気判定回路4は、磁気センサ素子3の出力する電気信号と、予め設定された閾値信号とを比較し、磁気判定結果を電圧VDDと電圧GNDの2値電圧で出力制御回路10に出力する。
【0015】
磁気判定回路4の出力が電圧GNDの場合、MOSスイッチ5はオフ状態であり、ノードN2は抵抗R3によって接地端子GNDと接続されている。
一方、磁気判定回路4の出力が電圧VDDの場合、MOSスイッチ5はオン状態であり、ノードN2は接地端子GNDと接続されている。
【0016】
出力端子OUTと接地端子GNDの間には、分圧回路と電気的に並列に出力ドライブ素子6が接続される。出力ドライブ素子6は、NチャネルMOSFETであり、ゲート電圧を制御することで、出力端子OUTと接地端子GNDの間にドレイン電流を流すことができる。また、アンプ7は、ノードN1が非反転入力端子に接続され、基準電圧回路8が反転入力端子に接続され、出力端子が出力ドライブ素子6のゲート端子に接続されているため、ノードN1の電圧を基準電圧回路8の基準電圧に等しくなるように出力ドライブ素子6を制御する。
【0017】
磁気センサ1の出力端子OUTの出力電圧をVOUTとし、基準電圧回路8の基準電圧をVREFとすると、出力電圧VOUTは、磁気判定結果の場合分けにより2つの式で表わされる。
VOUT=(1+R1/R2)×VREF ・・・(1)
VOUT={1+R1/(R2+R3)}×VREF ・・・(2)
式1は、磁気判定回路4の出力が電圧VDDの場合の出力電圧VOUTを表わす。式2は、磁気判定回路4の出力が電圧GNDの場合の出力電圧VOUTを表わす。
【0018】
このように、磁気センサ1の出力電圧VOUTは、プルアップ抵抗18の抵抗値に依存しないため、プルアップ抵抗18のばらつきに対して影響を受けることがない。したがってプルアップ抵抗値を柔軟に設定できるため、さらなる効果として、プルアップ抵抗値を大きくすることで磁気センサシステムの省電力化も可能となる。
【0019】
以下に、第一実施形態の磁気センサを実現する具体的な抵抗値の例を示す。
外部電源VPUを5.0V、基準電圧VREFを0.3Vとした場合の、式1の出力電圧VOUTが4.5V、式2の出力電圧VOUTが0.5Vとなるような回路定数を求める。式1および式2から、R1:R2:R3の比率は7:0.5:10に設定すればよいことがわかる。
【0020】
さらに具体的には、プルアップ抵抗18の抵抗値を限定しないためには、抵抗R1からR3の抵抗値は大きいほど望ましい。RPUをプルアップ抵抗18の抵抗値とすると、その許容値は式3より求められる。
RPU>(VPU−VOUT(1))/{VOUT(1)/(R1+R2+R3)}・・・(3)
例えば、R1=700kΩ、R2=50kΩ、R3=1MΩとすると、プルアップ抵抗18の抵抗値RPUは、194kΩ未満であれば動作可能となる。
より現実的に出力ドライバ素子のドレイン電流許容範囲を考慮すれば、プルアップ抵抗18の抵抗値は数十Ω以上であることが望ましい。
【0021】
以上説明したように、第一実施形態の磁気センサ1によれば、判別回路19の入力電圧が基準電圧と分圧回路の分圧比によって決定されるので、プルアップ抵抗18の抵抗値ばらつきに左右されずに、配線の断線や短絡などの異常を正確に判定する事が出来る。
なお、判別回路19の求める入力電圧に応じて、出力電圧VOUTを調整できるよう分圧回路の抵抗をトリミング手段可能な構成にしてもよい。
【0022】
図2は、本発明の磁気センサの第二実施形態を示す回路図である。
磁気センサ100は、磁気センサ素子3と、磁気判定回路4と、出力制御回路20で構成される。出力制御回路20は、出力ドライブ素子6と、アンプ7と、分圧回路である抵抗R1、R2、基準電圧回路81と、基準電圧回路82と、MOSスイッチ90ととで構成される。
【0023】
磁気センサ100と、判別回路19と、プルアップ抵抗18は、第一実施形態と同様に接続され、同様の動作をする。さらに、磁気センサ素子3と、磁気判定回路4と、出力ドライブ素子6と、アンプ7は、第一実施形態と同様に接続され、同様の動作をするため、説明を省略する。
【0024】
MOSスイッチ90は、例えばCMOSトランジスタで構成され、基準電圧回路81あるいは基準電圧回路82を択一的に選択してアンプ7の反転入力端子に接続する。MOSスイッチ90は、制御端子を備え、制御端子には磁気判定回路4の出力する2値電圧が入力される。
【0025】
磁気判定回路4の出力が電圧GNDの場合、MOSスイッチ90は基準電圧回路81を選択し、基準電圧回路81の出力端子をアンプ7の反転入力端子に接続する。
一方、磁気判定回路4の出力が電圧VDDの場合、MOSスイッチ90は基準電圧回路82を選択し、基準電圧回路82の出力端子をアンプ7の反転入力端子に接続する。
【0026】
基準電圧回路81が生成する基準電圧をVREF1とし、基準電圧回路82が生成する基準電圧をVREF2とする。基準電圧VREF1と基準電圧VREF2は、互いに値が異なる基準電圧である。
【0027】
磁気センサ100の出力端子OUTの出力電圧をVOUTとすると、出力電圧VOUTは、磁気判定結果の場合分けにより2つの式で表わされる。
VOUT=(1+R1/R2)×VREF1・・・(4)
VOUT=(1+R1/R2)×VREF2・・・(5)
式4は、磁気判定回路4の出力が電圧GNDの場合の出力電圧VOUTを表わす。式5は磁気判定回路4の出力が電圧VDDの場合の出力電圧VOUTを表わす。
【0028】
以下に第二実施形態の磁気センサを実現する具体的な数値例を示す。
外部電源VPUを5.0Vとし、式4の出力電圧VOUTが4.5V、式5の出力電圧VOUTが0.5Vとなるような回路定数を求める。基準電圧VREF1が3.0Vとなるように基準電圧回路81を設定する場合、式4より、R1:R2の比率は0.5:1に設定すれば良いことがわかる。また、基準電圧VREF2は、式4および式5から、0.33Vに設定すればよいことがわかる。
【0029】
図3は、本発明の磁気センサの第三実施形態を示す回路図である。
基準電圧回路は、第二実施形態と異なり、抵抗91と抵抗92と抵抗93で構成される。また磁気センサ200は、外部電源VPUが接続されるVDD2端子を備え、VDD2端子は抵抗93の一端とアンプ7の反転入力端子に接続される。抵抗93は、MOSスイッチ90によって抵抗91と抵抗92のいずれかに接続される。そして、それらの抵抗は、電圧VPUを抵抗分圧することで基準電圧が得られる。
【0030】
磁気判定回路4の出力が電圧VDDの場合、MOSスイッチ90は抵抗91を選択して抵抗93と直列接続する。磁気判定回路4の出力が電圧GNDの場合、MOSスイッチ90は抵抗92を選択して抵抗93と直列接続する。
【0031】
外部電源VPUと抵抗93と抵抗91とで生成される基準電圧をVREF1とし、外部電源VPUと抵抗93と抵抗92とで生成される基準電圧をVREF2とする。基準電圧VREF1と基準電圧VREF2は、互いに値が異なる基準電圧である。
磁気センサ200の出力端子OUTの出力電圧をVOUTとすると、出力電圧VOUTは第二実施形態の磁気センサと同様に式4と式5で表される。
【0032】
以下に第三実施形態の磁気センサを実現する具体的な数値例を示す。
外部電源VPUを5.0Vとし、式4の出力電圧VOUTが4.5V、式5の出力電圧VOUTが0.5Vとなるような回路定数を求める。式4の出力電圧VOUTと式5の出力電圧VOUTの比は、9:1であるから、基準電圧VREF1と基準電圧VREF2の比も9:1となるように設定する。基準電圧VREF1が3.0V、基準電圧VREF2が0.33Vとすると、式4よりR1:R2の比率は0.5:1に設定すれば良いことがわかる。さらに、抵抗91と抵抗92と抵抗93は、抵抗91が300kΩ、抵抗92が14kΩ、抵抗93が200kΩとすることで第三実施形態を実現することができる。
【0033】
以上説明したように、本発明の磁気センサによれば、判別回路19の入力電圧が基準電圧と分圧回路の分圧比によって決定されるので、プルアップ抵抗18の抵抗値ばらつきに左右されずに、配線の断線や短絡などの異常を正確に判定する事が出来る。
【符号の説明】
【0034】
1、100、200 磁気センサ
3 磁気センサ素子
4 磁気判定回路
5、90 MOSスイッチ
6 出力ドライブ素子
7 アンプ
8、81、82 基準電圧回路
19 判別回路