(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記試算手段は、前記発電部で使用されるガスのコストと、購入する電力のコスト及び前記発電部で発電した電力を売電することによって得られる利益の少なくとも一方と、を比較して、前記需要家における光熱費が少なくなるように補正した前記出力を試算する
請求項1又は請求項2記載の電力制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、機能及び作用が同じ部材及び処理には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を適宜省略する。
【0014】
<第1実施形態>
図1に、本実施形態に係る燃料電池システム1の一例を示す。燃料電池システム1は、燃料電池ユニット10、貯湯ユニット20、バックアップ熱源機30及び分電盤40を含み、燃料電池ユニット10で発電された電力が分電盤40を介して負荷50に供給される。
【0015】
このうち、燃料電池ユニット10には、燃料処理装置11、空気供給装置12、セルスタック13、パワーコンディショナー(Power Conditioning System:PCS)14、熱回収装置15、制御装置16及び操作装置17が含まれる。
【0016】
燃料処理装置11は、ガスに含まれるメタンなどに水を反応させてメタンなどを水素に改質する水蒸気改質法を用いて、ガスから水素を生成する装置である。生成された水素はセルスタック13に供給される。
【0017】
空気供給装置12は、空気を取り込み、空気中に含まれる酸素をセルスタック13に供給する。
【0018】
セルスタック13は、酸化イオン導電性セラミックを用いた電解質を燃料極及び空気極で挟むことで形成された複数のセルを直列に接続した、いわゆるPEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell)型の燃料電池デバイスである。セルの燃料極に燃料処理装置11で生成された水素が供給され、セルの空気極に空気供給装置12から送られた空気に含まれる酸素が供給されると、セルの電気化学反応によりセルスタック13で発電が行われる。
【0019】
なお、セルスタック13で発電された電気は直流であるため、PCS14で交流に変換されてから、分電盤40に供給される。
【0020】
分電盤40は、燃料電池ユニット10で発電された電力を電気事業者が供給する商用電力に連系させる系統連系を行い、燃料電池システム1を有する施設(以降、「需要家」という)内のテレビやエアコンといった電力を消費する機器(以降、「負荷50」という)に系統連系した電力を供給する。また、分電盤40は、燃料電池ユニット10で発電された電力のうち、負荷50で消費されない電力(以降、「余剰電力」という)がある場合、余剰電力を電気事業者の配電網に逆潮流させ、電気事業者に対して売電を行う。
【0021】
したがって、分電盤40は、例えばスマートメーター等の電力計を用いて、負荷50の消費電力、電気事業者からの購入電力及び電気事業者への売電電力を記録する。
【0022】
一方、熱回収装置15は、セルスタック13での発電の際に行われる電気化学反応や図示しないアノードオフガスの燃焼反応によって発生した熱を回収し、回収した熱を貯湯ユニット20に供給する。
【0023】
貯湯ユニット20は、熱回収装置15から供給された熱を用いて、図示しない熱交換器で水を温め、その結果得られた予め定めた温度のお湯を図示しないタンクに貯湯する。そして、貯湯ユニット20は、需要家内に設置された蛇口等の給湯設備へ給湯し、需要家で使用される1日あたりの給湯量Hを日毎に記録する。なお、給湯量Hの記録期間は一例であり、例えば1時間あたりの給湯量H等、日単位以外の期間における給湯量Hを記録するようにしてもよい。
【0024】
需要家でのお湯の使用量が、セルスタック13の発電による熱によって得られるお湯の量より多くなる場合には、バックアップ熱源機30で生成したお湯を貯湯ユニット20の図示しないタンクに貯湯する。
【0025】
なお、上述した燃料電池ユニット10の各処理は、制御装置16によって制御される。また、ここでは熱回収装置15で回収した熱を利用してお湯を生成する例を示したが、例えば熱回収装置15で回収した熱を冷暖房等の空調に用いてもよいし、給湯及び空調の両方に用いてもよい。また、ボイラの予熱など、熱を用いる用途であれば、使途は限定されない。以降では、熱回収装置15で回収した熱を利用してお湯を生成する場合を例にして、本発明の説明を行う。
【0026】
操作パネル171及び報知パネル172を備える操作装置17は、例えば需要家内の部屋等に設置され、制御装置16と接続される。制御装置16は、操作装置17に含まれる操作パネル171を介してユーザが設定した指示を受け付けると、ユーザの指示に従った処理を行うように燃料電池ユニット10の各装置を制御する。すなわち、操作装置17は、開示の技術に係る受付手段の一例である。また、制御装置16は、燃料電池ユニット10内の各装置の動作状況に関する情報(以降、「稼動情報」という)を収集し、収集した稼動情報を操作装置17に通知する。
【0027】
燃料電池ユニット10の稼動情報を受け付けた操作装置17は、受け付けた稼動情報を、例えば液晶モニタ及びスピーカといった出力デバイスを含む報知パネル172を介してユーザに報知する。
【0028】
なお、燃料電池ユニット10における運転モードには、「電主熱従モード」及び「熱主電従モード」と呼ばれる、少なくとも2つの形態が存在する。
【0029】
電主熱従モードとは、負荷50の消費電力、すなわち、需要家における電力需要を分電盤40から取得し、燃料電池ユニット10の定格出力P
Vの範囲内において、取得した電力需要にあわせて発電する発電形態である。例えば、負荷50の消費電力が燃料電池ユニット10の定格出力P
Vより少ない値、例えば0.5kWであれば、電主熱従モードで運転中の燃料電池ユニット10は、負荷50の消費電力に追従して0.5kWの電力を発電する。
【0030】
ここで、燃料電池ユニット10における定格出力P
Vの設定に関して、
図2を用いて説明する。
図2は、燃料電池ユニット10における発電の出力と発電効率との関係の一例を示す図である。なお、燃料電池ユニット10における発電効率とは、ガスから供給される熱量のうち、電力に変換された熱量の割合をいう。
【0031】
火力発電所等で用いられるタービン式発電機の場合、一般的に、出力が大きくなるにつれて発電効率も上昇する傾向が見られる。しかし、燃料電池を用いて発電する燃料電池ユニット10の場合、
図2に示すように、燃料電池ユニット10における出力と発電効率との関係は、縦軸に発電効率、横軸に出力をとった場合、極大値を有するグラフ21によって表される。すなわち、燃料電池ユニット10では、出力が規定値に達するまでは出力が大きくなるにつれて発電効率も上昇するが、出力が規定値を超えると発電効率が低下し始める特性を有する。
【0032】
したがって、多くの場合、発電効率が最高となる出力や、予め定めた効率(目標効率)を上回る範囲内での最高出力を燃料電池ユニット10の定格出力P
Vとして設定するが、定格出力の設定方法に制限はなく、発電効率が最高となる出力とは異なる出力を定格出力P
Vとしてもよい。本実施の形態に係る燃料電池ユニット10では、一例として発電効率が最高となる出力を定格出力P
Vに設定している。
【0033】
なお、燃料電池ユニット10の耐久性能は、例えば、定格出力P
Vで常時出力を行っても、予め定めた期間(例えば、製品保証期間)における故障率が予め定めた値以下となるように設計されることもある。したがって、燃料電池ユニット10の定格出力P
Vとは、燃料電池ユニット10で常時出力することができる最大電力ということもできる。
【0034】
一方、熱主電従モードとは、例えば需要家で使用される単位期間あたり(例えば1日あたり)の給湯量、すなわち、需要家における給湯需要を例えば貯湯ユニット20から取得し、燃料電池ユニット10の定格出力P
Vの範囲内において、取得した給湯需要に対応した量のお湯を生成する熱が得られるような出力で発電する発電形態である。例えば需要家において、1日あたり60℃のお湯を100L使用する場合、燃料電池ユニット10は、当該給湯量をまかなうことができる熱を排出する出力にあわせて発電する。なお、給湯需要は、開示の技術における熱需要の一例である。
【0035】
制御装置16の試算部18は、燃料電池ユニット10が熱主電従モードで発電を行った場合に負荷50に供給することができる電力を試算する。
【0036】
制御装置16は、試算部18が試算した試算結果に基づいて、電主熱従モード又は熱主電従モードの何れの運転モードで発電するか決定し、決定した運転モードに従って燃料電池ユニット10を制御する。
【0037】
なお、制御装置16は、開示の技術に係る電力制御装置の一例であり、制御装置16を除いた燃料電池ユニット10は、熱電供給装置の一例である。そして、燃料電池システム1は、開示の技術に係る熱電供給システムの一例である。また、セルスタック13は、開示の技術に係る発電部の一例であり、熱回収装置15は、開示の技術に係る熱利用部の一例である。
【0038】
上記に説明した燃料電池ユニット10を制御する制御装置16は、例えばコンピュータ100を用いて実現することができる。
【0039】
図3は、コンピュータ100を用いて制御装置16を実現する場合の構成例を示す図である。
【0040】
コンピュータ100は、プログラムを処理するCPU(Central Processing Unit)102、CPU102によるプログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)104、プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)106、コンピュータ100と外部装置等を接続するインターフェースであるI/O108、及びバス110を備える。CPU102は、開示の技術に係る試算手段及び制御手段の一例である。
【0041】
バス110には、CPU102、RAM104、ROM106及びI/O108が接続され、各種データの転送が行われる。
【0042】
また、I/O108には、空気ブロア5、燃料ブロア6、水ポンプ7、PCS14、熱回収装置15、操作装置17及び分電盤40が接続されている。
【0043】
ここで、空気ブロア5は空気を空気供給装置12に送り込む装置であり、燃料ブロア6はガス等の燃料を燃料処理装置11に送り込む装置である。また、水ポンプ7は、燃料処理装置11に水を送り込む装置である。
【0044】
CPU102は、PCS14が検出したセルスタック13の電流に基づいて、空気ブロア5、燃料ブロア6及び水ポンプ7を制御して、燃料電池ユニット10の発電量を制御する。なお、
図1及び
図3では、PCS14と制御装置16とを異なる装置として記載したが、制御装置16とPCS14との機能を一体化させて構成してもよい。
【0045】
なお、I/O108に接続される装置等は一例であり、他の装置等が接続される場合がある。例えば、インターネット等のネットワークに接続し、他の情報端末との間でデータを送受信する通信装置をI/O108に接続してもよい。
【0046】
次に、
図4を参照して、燃料電池システム1の作用について説明する。
図4は、燃料電池システム1が電主熱従モードで負荷50に電力を供給している場合に、CPU102によって実行される電力制御プログラムに基づく電力制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0047】
なお、電力制御プログラムはROM106に予め記憶され、CPU102によって読み出される。
【0048】
まず、ステップS10において、制御装置16は、負荷50の消費電力Pを分電盤40から取得し、例えばRAM104の予め定めた領域に記憶する。
【0049】
ステップS20において、制御装置16は、ステップS10で取得した負荷50の消費電力Pが、燃料電池ユニット10の定格出力P
V以上か否かを判定する。
【0050】
負荷50の消費電力Pが燃料電池ユニット10の定格出力P
V以上である場合、燃料電池ユニット10で常時出力することができる最大電力を燃料電池ユニット10から供給すれば、電気事業者から購入する電力を少なくすることができる。
【0051】
したがって、ステップS80に移行し、ステップS80において制御装置16は、電主熱従モードのまま定格出力P
Vで発電するように燃料電池ユニット10を制御する。この場合、余剰電力は存在しないため、電気事業者の配電網に発電した電力を供給する逆潮流は行われない。そして、
図4に示した電力制御処理を終了する。
【0052】
一方、ステップS20の判定処理が否定判定、すなわち、負荷50の消費電力Pが燃料電池ユニット10の定格出力P
V未満である場合には、ステップS30に移行する。
【0053】
ステップS30において、制御装置16は、需要家において使用される1日あたりの給湯量Hを貯湯ユニット20から取得して、例えばRAM104の予め定めた領域に記憶する。
【0054】
ステップS40において、制御装置16の試算部18は、ステップS30で取得した給湯量Hを用いて、燃料電池ユニット10を熱主電従モードで運転した場合に得られる出力P
Hを試算する。なお、出力P
Hの試算には、公知の計算手法を用いることができる。
【0055】
ステップS50において、制御装置16は、ステップS40で試算部18が試算した、燃料電池ユニット10を熱主電従モードで運転した場合に得られる出力P
Hと、燃料電池ユニット10の定格出力P
Vとを比較して、出力P
Hが定格出力P
Vと等しいか否かを判定する。
【0056】
ステップS50の判定処理が肯定判定の場合、すなわち、出力P
Hが定格出力P
Vと等しい場合、燃料電池ユニット10のセルスタック13から排出される熱を用いて生成したお湯を需要家で無駄なく使用することができ、更に、最も効率よく燃料電池ユニット10で発電された電力で、負荷50の消費電力をまかなうことができる。
【0057】
したがって、ステップS90に移行し、ステップS90において制御装置16は、燃料電池ユニット10の運転モードを電主熱従モードから熱主電従モードに切り替えるように、燃料電池ユニット10を制御する。
【0058】
運転モードが熱主電従モードに切り替えられた燃料電池ユニット10は、需要家の使用する給湯量Hにあわせて定格出力P
Vで発電を行うことになる。この場合、余剰電力が存在するため、制御装置16は分電盤40を制御して、余剰電力を電気事業者の配電網に逆潮流させ、電気事業者に対して売電を行う。そして、
図4に示した電力制御処理を終了する。
【0059】
なお、発電に伴って燃料電池ユニット10から排出される熱のうち、お湯の生成に使用される割合を「熱利用率」とすれば、ステップS90の場合、熱利用率は100%となる。また、燃料電池ユニット10を定格出力P
Vで運転しているため、発電効率が最も高い状態で発電していることになる。また、負荷50の消費電力のうち、燃料電池ユニット10で発電される電力でまかなうことのできる割合を「電力自給率」とすれば、ステップS90の場合、電力自給率は100%ということになる。
【0060】
一方、ステップS50の判定処理が否定判定の場合、すなわち、出力P
Hが定格出力P
Vとは異なる場合、ステップS60に移行する。
【0061】
ステップS60において、制御装置16は、ステップS40で試算部18が試算した、燃料電池ユニット10を熱主電従モードで運転した場合に得られる出力P
Hと、ステップS10で取得した負荷50の消費電力Pとを比較して、出力P
Hが消費電力Pより大きいか否かを判定する。
【0062】
ステップS60の判定処理が肯定判定の場合、すなわち、出力P
Hが消費電力Pより大きい場合、燃料電池ユニット10のセルスタック13から排出される熱を用いて生成したお湯を需要家で無駄なく使用することができ、しかも、燃料電池ユニット10で発電された電力で、負荷50の消費電力をまかなうことができる。
【0063】
したがって、ステップS100に移行し、ステップS100において制御装置16は、燃料電池ユニット10の運転モードを電主熱従モードから熱主電従モードに切り替えるように、燃料電池ユニット10を制御する。
【0064】
運転モードが熱主電従モードに切り替えられた燃料電池ユニット10は、需要家の使用する給湯量Hにあわせて出力P
Hで発電を行うことになる。この場合、余剰電力が存在するため、制御装置16は分電盤40を制御して、余剰電力を電気事業者の配電網に逆潮流させ、電気事業者に対して売電を行う。そして、
図4に示した電力制御処理を終了する。
【0065】
なお、ステップS100の場合もステップS90と同じく、熱利用率が100%で、電力自給率も100%ということになる。
【0066】
一方、ステップS60の判定処理が否定判定の場合、すなわち、出力P
Hが消費電力P以下である場合、燃料電池ユニット10の運転モードを熱主電従モードに切り替えると、需要家で使用する給湯量Hはまかなうことができるが、負荷50の消費電力をまかなうことができないため、電気事業者から商用電力を購入することになる。
【0067】
したがって、ステップS70に移行し、ステップS70において制御装置16は、電主熱従モードでの発電を継続する。この場合、負荷50の消費電力の変化にあわせて燃料電池ユニット10で発電が行われるため、負荷50の消費電力をまかなうことができる。なお、燃料電池ユニット10で発電された電力は負荷50で消費されるため、余剰電力は発生せず、電気事業者の配電網に発電した電力を供給する逆潮流は行われない。
【0068】
以上により、
図4に示した電力制御処理を終了する。なお、制御装置16は、燃料電池システム1が電主熱従モードで発電中の場合には当該電力制御処理を定期的に実行し、負荷50の消費電力Pと、需要家における給湯量Hとを参照して、燃料電池システム1の運転モードを決定する。
【0069】
このように第1実施形態に係る燃料電池システム1によれば、負荷50の消費電力と、試算部18で試算した、熱主電従モードにおける燃料電池ユニット10の出力P
Hとを比較し、燃料電池ユニット10での発電の際に排出される熱を、できるだけ無駄なく利用することで、発電効率及び熱利用率を考慮した燃料電池システム1全体の効率を表す指標である総合効率を向上させることができる。
【0070】
したがって、燃料電池ユニット10を電主熱従モードで常時運転させる場合と比較して、燃料電池システム1における二酸化炭素の排出量を抑制し、環境負荷の低減を実現することができる。
【0071】
<第1実施形態の変形例>
上述したように、燃料電池システム1は、試算部18で試算した熱主電従モードでの出力P
Hが負荷50の消費電力Pより大きい場合、燃料電池システム1から出力される電力が試算部18で試算した出力P
Hとなるように熱主電従モードで燃料電池ユニット10を運転することで、発電の際に排出される熱をできるだけ無駄なく利用する。
【0072】
しかし、需要家の中には、燃料電池システム1における発電効率及び熱利用率に加えて、ガスの料金及び電気料金をあわせた光熱費の低減に関心を寄せる需要家も存在する。
【0073】
この場合、試算部18は、需要家で使用される1日あたりの給湯量Hに基づいて出力P
Hを試算するのではなく、燃料電池システム1で使用されるガスのコストと、電気事業者から購入する電力のコスト及び電気事業者に売電することによって得られる利益の少なくとも一方と、を比較して、需要家が支払う光熱費が少なくなるように補正した出力P
Hを試算するようにしてもよい。
【0074】
以降では、光熱費を考慮した試算部18での処理について説明する。
【0075】
図4のステップS40において、試算部18は、まずステップS30で取得した給湯量Hを用いて、燃料電池ユニット10を熱主電従モードで運転した場合に得られる出力P
Hを試算する。
【0076】
試算部18は、試算した出力P
HがステップS10で取得した負荷50の消費電力Pより大きい場合、例えばROM106に予め記憶された単位容量あたりのガス料金と、電気事業者から電気を購入する際に支払う単位電力あたりの電気料金と、電気事業者に売電する場合に得られる単位電力あたりの売電料金とを取得する。
【0077】
そして、試算部18は、取得したガス料金、電気料金及び売電料金を参照して、消費電力P以上、且つ、定格出力P
V以下の各出力で発電を行った場合に、需要家が支払う光熱費を出力毎に試算し、光熱費が最も少なくなる出力を、補正した出力P
H(以降、「出力P
H1」という)とする。
【0078】
具体的には、
図5に示すように、燃料電池ユニット10における出力と発電効率との関係がグラフ21で示される場合、出力P
Hにおける発電効率はη
Hとなる。
【0079】
仮に、燃料電池ユニット10の出力を出力P
Hから定格出力P
Vまで上昇させた場合、発電に要するガスの使用量は上昇するが、燃料電池ユニット10における発電効率もη
Hからη
Vに上昇するため、単位電力あたりの発電コストは低下する。
【0080】
したがって、単位電力あたりの売電価格から単位電力あたりの発電コストを引いた値が正値になれば、出力P
Hを定格出力P
Vまで上昇させることで、出力P
Hの場合の熱利用率より熱利用率は低下するが発電による利益が得られるため、需要家が支払う光熱費は低下することになる。
【0081】
反対に、燃料電池ユニット10の出力を出力P
Hから負荷50の消費電力Pまで低下させた場合、燃料電池ユニット10の発電効率はη
Hからηに低下するが、発電に要するガスの使用量は減少することになる。
【0082】
したがって、燃料電池ユニット10の出力を出力P
Hから消費電力Pに低下させることよって節約されるガス料金から、燃料電池ユニット10を出力P
Hで発電した場合の余剰電力を売電することによって得られる利益、及び燃料電池ユニット10の出力を出力P
Hから消費電力Pに低下させることよって不足する湯量をバックアップ熱源機30で生成するために用いられる電力の電気料金を引いた値が正値になれば、燃料電池ユニット10を出力P
Hで発電させる場合に比べて、発電の際に燃料電池ユニット10から排出される熱で給湯量Hをまかなうことはできなくなるが燃料電池ユニット10におけるガスの使用量を低減することができるため、需要家が支払う光熱費は低下することになる。
【0083】
このように試算部18は、燃料電池ユニット10での発電の際に排出される熱ができる限り無駄にならず、且つ、需要家が支払う光熱費が少なくなるように、需要家で使用される1日あたりの給湯量Hに基づいて試算した出力P
Hを補正するようにしてもよい。
【0084】
したがって、燃料電池ユニット10を電主熱従モードで常時運転させる場合と比較して、燃料電池システム1における二酸化炭素の排出量を抑制しつつ、需要家が支払う光熱費を低減することができる。
【0085】
<第2実施形態>
第1実施形態に係る燃料電池システム1では、試算部18で試算した熱主電従モードでの出力P
Hが負荷50の消費電力Pより大きい場合に、燃料電池ユニット10の運転モードを電主熱従モードから熱主電従モードに移行させた。
【0086】
しかし、需要家の中には、例えば留守中に、燃料電池ユニット10の運転モードを燃料電池システム1で自律的に変更させたくないといった要望を有する需要家が存在することがある。
【0087】
第2実施形態では、ユーザの指示に従って燃料電池ユニット10の運転モードを固定する燃料電池システム1Aについて説明する。
【0088】
なお、第2実施形態に係る燃料電池システム1Aの構成は、
図1に示した燃料電池システム1の制御装置16が制御装置16Aに置き換えられると共に、制御装置16Aの置き換えに伴い、燃料電池ユニット10が燃料電池ユニット10Aに置き換えられた点以外は第1実施形態に係る燃料電池システム1と同じ構成となるため説明を省略する。
【0089】
また、燃料電池システム1Aにおける制御装置16Aは、第1実施形態に係る制御装置16と同じく、
図3に示すようにコンピュータ100を用いて実現することができる。
【0090】
次に、
図6を参照して、燃料電池システム1Aの作用について説明する。
図6は、燃料電池システム1Aが電主熱従モードで負荷50に電力を供給している場合に、CPU102によって実行される電力制御プログラムに基づく電力制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0091】
図6に示す電力制御処理のフローチャートが、
図4に示した第1実施形態に係る電力制御処理のフローチャートと異なる点は、ステップS55、S65及びS110の各処理が追加された点である。したがって、第1実施形態に係る電力制御処理と異なる処理を中心に、第2実施形態に係る電力制御処理の説明を行う。
【0092】
なお、
図6に示す電力制御プログラムはROM106に予め記憶され、CPU102によって読み出される。
【0093】
まず、燃料電池ユニット10Aにおける操作装置17の操作パネル171に、例えば燃料電池ユニット10Aの運転モードが燃料電池システム1Aの自律的な制御によって電主熱従モードから熱主電従モードに移行する動作(以降、「モード移行」という)の許可及び不許可をユーザに設定させるモード移行設定領域22を設ける。
【0094】
図7は、モード移行設定領域22の一例を示す図である。
図7に示すように、モード移行設定領域22には、モード移行を許可する設定ボタン221と、モード移行を禁止する設定ボタン222が備えられている。
図7の例では、設定ボタン222がユーザによって押下されており、モード移行の禁止が設定されている。
【0095】
図4に示したステップS50の判定処理が肯定判定の場合には、ステップS90に移行して燃料電池ユニット10の運転モードを熱主電従モードに移行させたが、
図6に示したステップS50の判定処理が肯定判定の場合、ステップS55に移行する。
【0096】
ステップS55において、制御装置16Aは、モード移行設定領域22における設定内容を操作装置17から取得し、ユーザがモード移行を許可する設定を行っているか否かを判定する。
【0097】
ステップS55の判定処理が肯定判定の場合には、ユーザがモード移行を許可していることからステップS90に移行し、ステップS90において、制御装置16Aは、燃料電池ユニット10Aの運転モードを電主熱従モードから熱主電従モードに切り替えるように燃料電池ユニット10Aを制御する。運転モードが熱主電従モードに切り替えられた燃料電池ユニット10Aは、需要家の使用する給湯量Hにあわせて定格出力P
Vで発電を行うことになる。
【0098】
一方、ステップS55の判定処理が否定判定の場合には、ユーザがモード移行を許可していないことからステップS110に移行し、ステップS110において、制御装置16Aは、燃料電池ユニット10Aの運転モードを電主熱従モードのままにする。
【0099】
すなわち、燃料電池ユニット10Aの運転モードを電主熱従モードから熱主電従モードに移行することにより、発電の際に排出される熱で需要家が使用する給湯量Hをまかなうだけのお湯が生成され、且つ、電気事業者への売電が可能であったとしても、燃料電池ユニット10Aの運転モードは電主熱従モードに維持される。
【0100】
この場合、負荷50の消費電力の変化にあわせて燃料電池ユニット10Aで発電が行われるため、負荷50の消費電力をまかなうことができる。なお、燃料電池ユニット10Aで発電された電力は負荷50で消費されるため余剰電力は発生しない。したがって逆潮流は行われない。
【0101】
また、
図4に示したステップS60の判定処理が肯定判定の場合には、ステップS100に移行して燃料電池ユニット10の運転モードを熱主電従モードに移行させたが、
図6に示したステップS60の判定処理が肯定判定の場合、ステップS65に移行する。
【0102】
ステップS65において、制御装置16Aは、ステップS55と同様に、モード移行設定領域22における設定内容を操作装置17から取得し、ユーザがモード移行を許可する設定を行っているか否かを判定する。
【0103】
ステップS65の判定処理が肯定判定の場合には、ユーザがモード移行を許可していることからステップS100に移行し、ステップS100において、制御装置16Aは、燃料電池ユニット10Aの運転モードを電主熱従モードから熱主電従モードに切り替えるように燃料電池ユニット10Aを制御する。運転モードが熱主電従モードに切り替えられた燃料電池ユニット10Aは、需要家の使用する給湯量Hにあわせて出力P
Hで発電を行うことになる。
【0104】
一方、ステップS65の判定処理が否定判定の場合には、ユーザがモード移行を許可していないことからステップS110に移行し、ステップS110において、制御装置16Aは、燃料電池ユニット10Aの運転モードを電主熱従モードのままにする。
【0105】
このように第2実施形態に係る燃料電池システム1Aによれば、ユーザが設定した燃料電池ユニット10Aでの運転モードの移行指示に従って、燃料電池ユニット10Aの運転モードを決定する。したがって、ユーザが希望する運転モードと異なる運転モードで燃料電池システム1Aが稼動することを抑制することができる。
【0106】
以上、各実施形態を用いて本発明について説明したが、本発明は各実施形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で処理の順序を変更してもよい。
【0107】
上述した実施形態では、PEFC型の燃料電池デバイスを用いた燃料電池ユニット10を例にして開示の技術を説明したが、燃料電池ユニット10は、その他のタイプの燃料電池デバイスを用いてもよい。
【0108】
例えば、電解質にりん酸水溶液を用いた、PAFC(Phosphoric Acid Fuel Cell)型の燃料電池デバイス、電解質に溶融した炭酸塩を用いた、MCFC(Molten Carbonate Fuel Cell)型の燃料電池デバイスや、セラミックスを用いたSOFC(Solid Oxide Fuel Cell)型の燃料電池デバイスを用いてもよい。
【0109】
MCFC型の燃料電池デバイスは、動作温度が約600℃〜約700℃であり、SOFC型の燃料電池デバイスは、動作温度が約700℃〜約1000℃である。いずれも、発電効率が約40%〜約65%であるため、火力発電所等の発電設備の代替に使用することができる。
【0110】
また、上述した実施形態では、熱電供給システムの一例として、燃料電池を用いて発電及び熱供給を行う燃料電池システムを用いて本発明の説明を行ったが、本発明は、燃料電池を用いない熱電供給システムにも適用することができる。例えば、本発明は、ガスエンジン又はガスタービンを用いて発電及び熱供給を行う熱電供給システムにも適用することができる。
【0111】
なお、セルスタック13での発電の際に排出される熱を利用して給湯を行う熱電供給システムにおいては、発電効率が高い機器のほうが、高出力運転を行っても、貯湯ユニット20がお湯で満たされ(満蓄状態)、発電が継続できなくなるまでの時間が長くなるので、逆潮流に対してより好適である。また、熱電供給システムが熱を外部に放出するラジエータなどの機器を備えている場合、満蓄状態に伴い発電が停止するといった制約がなくなるため、より望ましい。
【0112】
更に、上述した各実施の形態では、一例として制御装置16、16Aにおける電力制御処理をソフトウエアで実現する形態について説明したが、
図4及び
図6に示したフローチャートと同等の処理をハードウエアで処理させるようにしてもよい。この場合、電力制御処理をソフトウエアで実現する場合に比べて、処理の高速化が図られる。
【0113】
また、上述した各実施の形態では、電力制御プログラムがROM106にインストールされている形態を説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る電力制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録した形態で提供することも可能である。例えば、本発明に係る電力制御プログラムを、CD(Compact Disc)−ROM、又はDVD−ROM等の光ディスクに記録した形態で提供してもよいし、USBメモリ及びフラッシュメモリ等の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。また、燃料電池システム1、1Aがインターネットに接続されている場合、インターネットに接続された他の装置から電力制御プログラムをダウンロードして、ROM106に格納するようにしてもよい。