(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。
【0014】
≪実施形態の概要≫
[1]本実施形態の一つの例に係る積層鉄心の製造方法は、帯状の金属板に第1のパイロット孔を第1のパンチで形成する第1の工程と、第1のパイロット孔に第1のパイロットピンを挿通して金属板を位置決めした状態で、金属板のうち所定部位を第2のパンチで加工すると共に、金属板のうち第2のパンチにより加工された加工済部位を金属板に圧入する第2の工程と、第2の工程の後で且つ金属板に他の加工が行われる前に、第3のパンチで金属板に第2のパイロット孔を形成する第3の工程と、第3の工程の後に、第2のパイロット孔に第2のパイロットピンを挿通して金属板を位置決めした状態で、加工済部位を含む領域を第4のパンチで打ち抜いて第1の打抜部材を形成する第4の工程とを含む。
【0015】
本実施形態の一つの例に係る積層鉄心の製造方法では、第2の工程において、加工済部位は、金属板の面内における外方に向けて金属板を押し拡げながら、被加工位置に圧入される。そのため、加工済部位と金属板とは人手では簡単に外れない程度にしっかりと嵌まり合うが、金属板に歪みが生ずることがある。しかしながら、本実施形態の一つの例に係る積層鉄心の製造方法では、第2の工程の後で且つ金属板に他の加工が行われる前の第3の工程において、第1のパイロット孔とは異なる第2のパイロット孔を金属板に形成している。そのため、歪みにより変形した後の金属板に第2のパイロット孔が形成されるので、第2のパイロット孔の位置が変位しないか、第2のパイロット孔の変位量がごく僅かである。従って、第4の工程において、第2のパイロット孔に第2のパイロットピンを挿通して金属板を位置決めすることができるので、第4のパンチで金属板が打ち抜かれることにより形成される第1の打抜部材を設計に沿った形状とすることができる。その結果、金属板の加工工程と加工済部位の被加工位置への圧入工程とを経ても精度よく積層鉄心を形成することが可能となる。
【0016】
[2]上記第1項の方法において、第3の工程では、金属板のうち第1のパイロット孔と一致する位置で、第1のパイロット孔よりも大きな外形を有する第2のパイロット孔を第3のパンチにより形成してもよい。この場合、第2のパイロット孔が第1のパイロット孔に対して重なるように形成される。そのため、第2のパイロット孔を形成するための領域を金属板から別途確保する必要がなくなる。従って、より幅狭の金属板を利用することができるので、歩留まり向上を図ることが可能となる。その結果、積層鉄心の製造コストを低減できる。特に、アンコイラーから送り出される1つのコイル材の全長は例えば数100m〜数10000m程度の場合もあるので、金属板が幅狭となることにより、歩留まり向上と低コスト化とが極めて効果的に達成される。
【0017】
[3]上記第1項又は第2項の方法は、第1の工程の後で且つ第2の工程の前に、固定子積層鉄心のスロットに対応する金属板の領域を第5のパンチで打ち抜いて、スロット対応孔を金属板に形成する第5の工程と、第3の工程の後で且つ第4の工程の前に、第2のパイロット孔に第3のパイロットピンを挿通して金属板を位置決めした状態で、固定子積層鉄心の中心に位置し且つ回転子が配置される中心孔に対応する金属板の領域を第6のパンチで打ち抜いて、中心対応孔を金属板に形成する第6の工程とをさらに含んでもよい。ところで、固定子積層鉄心の中心孔に回転子が配置されることで電動機が構成される。固定子積層鉄心の中心孔の内周面と回転子の外周面とのギャップ(いわゆるエアギャップ)は、電動機の特性に関わる重要なパラメータである。第3項に係る方法によれば、第2のパイロット孔に第3のパイロットピンが挿通されることにより金属板が位置決めされた状態で、固定子積層鉄心の中心孔に対応する中心対応孔が金属板に形成される。そのため、固定子積層鉄心の中心孔を設計に沿った形状とすることができる。従って、電動機において重要なパラメータであるエアギャップを極めて精度よく形成することができるので、電動機の性能向上を図ることが可能となる。
【0018】
[4]上記第3項の方法は、第2の工程の前に、金属板に貫通孔を第7のパンチで形成する第7の工程と、第7の工程の後で且つ第2の工程の前に、回転子積層鉄心となる第2の打抜部材を、回転可能なダイホルダが保持するダイを介して第8のパンチで金属板から打ち抜いて、金属板から既に打ち抜かれた他の第2の打抜部材に対して積層する第8の工程とをさらに含み、第8の工程では、複数の第2の打抜部材が積層される際に、貫通孔に挿通された第4のパイロットピンがダイホルダの係合孔と係合することで、ダイホルダの回転を制止してもよい。ところで、ダイホルダは、第2の打抜部材の転積を目的として回転可能に構成されている。しかしながら、第2の打抜部材同士を積層する際にダイホルダが回転してしまうと、転積角度のずれが生じてしまうので、適切に転積することができない。そこで、第4項に係る方法によれば、複数の第2の打抜部材が積層される際に、第4のパイロットピンがダイホルダの係合孔に係合しており、ダイホルダの回転が静止されている。そのため、転積角度のずれが生じなくなるので、第2の打抜部材同士を適切に積層することができる。しかも、第4のパイロットピンは、金属板に形成された貫通孔に挿通されつつ、ダイホルダの係合孔に係合される。そのため、金属板を避けるように第4のパイロットピンを配置する必要がなくなるので、第4のパイロットピン及びダイホルダを含む積層鉄心の製造装置を全体としてコンパクト化することが可能となる。
【0019】
[5]上記第1項〜第4項のいずれか一項の方法において、第1の打抜部材は、金属板の幅方向でピッチをずらした複数列においてそれぞれ形成されてもよい。このような、いわゆる複数列取り加工の場合には、金属板の加工工程と加工済部位の被加工位置への圧入工程によって金属板にいっそう大きな歪みが生ずる。そのため、第1のパイロット孔の位置が大きく変位してしまいうる。しかしながら、第5項に係る方法においても、歪みにより変形した後の金属板に第2のパイロット孔が形成され、当該第2のパイロット孔に第2のパイロットピンが挿通された状態でその後の金属板の加工が行われる。そのため、金属板がいっそう変形しやすい複数列取り加工に際しても、精度よく積層鉄心を形成することが可能となる。
【0020】
[6]本実施形態の他の例に係る積層鉄心の製造装置は、帯状の金属板を間欠的に順次送り出すように構成された送出部と、第1〜第4のパンチと、第1及び第2のパイロットピンと、第1〜第4のパンチ及び第1及び第2のパイロットピンを駆動させる駆動部と、制御部とを備える。制御部は、送出部及び駆動部を制御して、金属板を間欠的に順次送り出しつつ、金属板に第1のパンチで第1のパイロット孔を形成させる第1の処理と、第1のパイロット孔に第1のパイロットピンを挿通させて金属板を位置決めした状態で、金属板のうち所定部位を第2のパンチで加工すると共に、金属板のうち第2のパンチにより加工された加工済部位を金属板に圧入させる第2の処理と、第2の処理の後で且つ金属板に他の加工が行われる前に、第3のパンチで金属板に第2のパイロット孔を形成する第3の処理と、第3の処理の後に、第2のパイロット孔に第2のパイロットピンを挿通させて金属板が位置決めされた状態で、加工済部位を含む領域を第4のパンチで打ち抜いて第1の打抜部材を形成する第4の処理とを実行する。本実施形態の他の例に係る積層鉄心の製造装置は、上記第1項に係る方法と同様の作用効果を奏する。
【0021】
[7]上記第6項に記載の装置において、制御部は、第3の処理において、金属板のうち第1のパイロット孔と一致する位置で、第1のパイロット孔よりも大きな外形を有する第2のパイロット孔を第3のパンチにより形成させてもよい。この場合、上記第2項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
【0022】
[8]上記第6項又は第7項に記載の装置は、第3のパイロットピンと、第5及び第6のパンチとをさらに備え、制御部は、駆動部を制御して、第1の処理の後で且つ第2の処理の前に、固定子積層鉄心のスロットに対応する金属板の領域を第5のパンチで打ち抜いて、スロット対応孔を金属板に形成する第5の処理と、第3の処理の後で且つ第4の処理の前に、第2のパイロット孔に第3のパイロットピンを挿通させて金属板が位置決めされた状態で、固定子積層鉄心の中心に位置し且つ回転子が配置される中心孔に対応する金属板の領域を第6のパンチで打ち抜いて、中心対応孔を金属板に形成する第6の処理とをさらに実行してもよい。この場合、上記第3項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
【0023】
[9]上記第8項に記載の装置は、第7及び第8のパンチと、第4のパイロットピンと、第4のパイロットピンと係合可能な係合孔を有する回転可能なダイホルダとをさらに備え、制御部は、駆動部を制御して、第2の処理の前に、金属板に貫通孔を第7のパンチで形成する第7の処理と、第7の処理の後で且つ第2の処理の前に、回転子積層鉄心となる第2の打抜部材をダイホルダが保持するダイを介して第8のパンチで金属板から打ち抜いて、第4のパイロットピンを貫通孔に挿通させつつ係合孔に係合させることによりダイホルダの回転を制止させた状態で、金属板から既に打ち抜かれた他の第2の打抜部材に対して積層させる第8の処理とをさらに実行してもよい。この場合、上記第4項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
【0024】
[10]上記第6項〜第9項のいずれか一項の装置において、第1の打抜部材は、金属板の幅方向でピッチをずらした複数列においてそれぞれ形成されてもよい。この場合、上記第5項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
【0025】
≪実施形態の例示≫
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0026】
[固定子積層鉄心の構成]
まず、
図1及び
図2を参照して、固定子積層鉄心1の構成について説明する。固定子積層鉄心1は、固定子(ステータ)の一部である。固定子は、固定子積層鉄心1に巻線が取り付けられたものである。固定子が回転子(ロータ)と組み合わされることにより、電動機(モータ)が構成される。固定子積層鉄心1は、
図1に示されるように、円筒形状を呈している。すなわち、固定子積層鉄心1の中央部分には、中心軸Ax1に沿って延びる貫通孔1a(中心孔)が設けられている。貫通孔1a内には、回転子が配置可能である。
【0027】
固定子積層鉄心1は、複数の打抜部材W1(第1の打抜部材)が積み重ねられた積層体である。打抜部材W1は、後述する電磁鋼板ES(金属板)が所定形状に打ち抜かれた板状体である。固定子積層鉄心1は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W1同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材W1を積層することをいう。転積は、主に固定子積層鉄心1の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0028】
固定子積層鉄心1は、ヨーク部11と、複数のティース部12と、複数のカシメ部13を有する。ヨーク部11は、円環状を呈しており、中心軸Ax1を囲むように延びている。ヨーク部11の径方向における幅、内径、外径及び厚さはそれぞれ、モータの用途及び性能に応じて種々の大きさに設定しうる。
【0029】
各ティース部12は、ヨーク部11の内縁から中心軸Ax1側に向かうようにヨーク部11の径方向に沿って延びている。すなわち、各ティース部12は、ヨーク部11の内縁から中心軸Ax1側に向けて突出している。固定子積層鉄心1においては、12個のティース部12がヨーク部11に一体的に形成されている。各ティース部12は、ヨーク部11の周方向において、略等間隔で並んでいる。隣り合うティース部12の間には、巻線(図示せず)を配置するための空間であるスロット14が画定されている。
【0030】
カシメ部13は、ヨーク部11及び各ティース部12にそれぞれ設けられている。本実施形態において、積層方向において隣り合う打抜部材W1同士は、カシメ部13によって締結されている。具体的には、カシメ部13は、
図2に示されるように、固定子積層鉄心1の最下層以外をなす打抜部材W1に形成されたカシメ13aと、固定子積層鉄心1の最下層をなす打抜部材W1に形成された貫通孔13bとを有する。カシメ13aは、打抜部材W1の表面側に形成された凹部と、打抜部材W1の裏面側に形成された凸部とで構成されている。一の打抜部材W1のカシメ13aの凹部は、当該一の打抜部材W1の表面側に隣り合う他の打抜部材W1のカシメ13aの凸部と接合される。一の打抜部材W1のカシメ13aの凸部は、当該一の打抜部材W1の裏面側において隣り合う更に他の打抜部材W1のカシメ13aの凹部と接合される。貫通孔13bには、固定子積層鉄心1の最下層に隣接する打抜部材W1のカシメ13aの凸部が接合される。貫通孔13bは、固定子積層鉄心1を連続して製造する際、既に製造された固定子積層鉄心1に対し、続いて形成された打抜部材W1がカシメ13aによって締結されるのを防ぐ機能を有する。
【0031】
複数の打抜部材W1同士は、カシメ部13に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W1同士は、例えば、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材W1に仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材W1を締結して積層体を得た後、仮カシメを当該積層体から除去することによって、固定子積層鉄心1を得てもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材W1を一時的に一体化させるのに使用され且つ製品(固定子積層鉄心1)を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0032】
ここで、
図3を参照して、打抜部材W1についてさらに詳しく説明する。中心軸Ax1方向から見た打抜部材W1の形状は、中心軸Ax1方向から見た固定子積層鉄心1の形状と略同一である。そのため、打抜部材W1も、中心軸Ax1方向から見て円環状を呈している。打抜部材W1の中央部分には、貫通孔W1aが設けられている。
【0033】
打抜部材W1は、ヨーク部W11と、複数のティース部W12とを有する。ヨーク部W11及び各ティース部W12にはそれぞれ、カシメ部13が設けられている。ヨーク部W11は、円環状を呈しており、中心軸Ax1囲むように延びている。ヨーク部W11には、複数の切断線CLが設けられている。
図2に示される打抜部材W1においては、ヨーク部W11に12本の切断線CLが設けられている。
【0034】
各切断線CLは、ヨーク部W11を横断するようにヨーク部W11の径方向に沿って延びている。各切断線CLは、ヨーク部W11の周方向において、略等間隔で並んでいる。各切断線CLは、例えば、電磁鋼板ESを切り曲げ加工又は打ち抜き加工した後、切り曲げ部位又は打ち抜き部位(加工済部位)をプッシュバックして、被加工板の元の位置(被加工位置)に圧入することにより、形成されてもよい。電磁鋼板ESが切り曲げ加工又は打抜き加工されると、加工済部位が塑性変形して若干延びるので、加工済部位が被加工位置へ圧入されると、加工済部位と電磁鋼板ESとは、人手では簡単に外れない程度にしっかりと嵌まり合う。
【0035】
切断線CLの形状は、
図1及び
図2に示されるような凹凸状に限定されず、ヨーク部W11の外周縁と内周縁との間を横断していれば、直線状、曲線状、クランク状、弧状、円弧状等の種々の形状であってもよい。切断線CLの形状が直線状である場合には、ヨーク部W11の径方向に沿って延びていてもよいし、ヨーク部W11の径方向に対して所定の角度傾斜した状態で延びていてもよい。切断線CLの形状が直線状である場合には、小さな力でヨーク部W11を切断線CLにおいて個片化しやすい傾向にある。
【0036】
各ティース部W12は、ヨーク部W11の内縁から中心軸Ax1側に向かうようにヨーク部W11の径方向に沿って延びている。すなわち、各ティース部W12は、ヨーク部W11の内縁から中心軸Ax1側に向けて突出している。本実施形態においては、12個のティース部W12がヨーク部W11に一体的に形成されている。
【0037】
各ティース部W12は、ヨーク部W11の周方向において、略等間隔で並んでいる。各ティース部W12はそれぞれ、ヨーク部W11の周方向において、隣り合う切断線CLの間に位置している。隣り合うティース部W12の間には、巻線を配置するための空間であるスロットW14が画定されている。
【0038】
打抜部材W1が切断線CLにおいて個片化された場合、一つの打抜部材W1から複数の板片W15(
図2では12個の板片W15)が得られる。換言すれば、打抜部材W1は、複数の板片W15が組み合わされた組物であるともいえる。一つの板片W15は、一つのヨーク片部W11aと、一つのティース部W12とで構成されている。ヨーク片部W11aは、ヨーク部W11が切断線CLで分離されたときのヨーク部W11の一部分である。従って、打抜部材W1は、中心軸Ax1の周方向において隣り合う板片W15が、ヨーク片部W11aの端部(切断線CL)において仮接続されることにより一体化されたものである。
【0039】
図1に戻って、固定子積層鉄心1は、上述のとおり複数の打抜部材W1が積層されたものである。より詳しくは、複数の打抜部材W1は、ヨーク部W11同士、ティース部W12同士及び切断線CL同士が互いに重なり合うように積層されている。そのため、固定子積層鉄心1に所定の力を付与して固定子積層鉄心1を切断線CLにおいて個片化すると、一つの固定子積層鉄心1から、複数の鉄心片15(
図1では12個の鉄心片15)が得られる。換言すれば、固定子積層鉄心1も、複数の鉄心片15が組み合わされた組物であるともいえる。一つの鉄心片15は、一つのヨーク片部11aと、一つのティース部12とで構成されている。ヨーク片部11aは、ヨーク部11が切断線CLで分離されたときのヨーク部11の一部分である。従って、固定子積層鉄心1は、中心軸Ax1の周方向において隣り合う鉄心片15がヨーク片部12aの端部(切断線CL)において仮接続されることにより一体化されたものである。
【0040】
[回転子積層鉄心の構成]
続いて、
図4を参照して、回転子積層鉄心2の構成について説明する。回転子積層鉄心2は、回転子(ロータ)の一部である。回転子は、回転子積層鉄心2に端面板及びシャフト(共に図示せず)が取り付けられてなる。回転子積層鉄心2は、円筒形状を呈している。すなわち、回転子積層鉄心2の中央部分には、中心軸Ax2に沿って延びる貫通孔2a(中心孔)が設けられている。貫通孔2a内には、シャフトが配置可能である。
【0041】
回転子積層鉄心2は、複数の打抜部材W2(第2の打抜部材)が積み重ねられた積層体である。打抜部材W2は、後述する電磁鋼板ES(金属板)が所定形状に打ち抜かれた板状体である。回転子積層鉄心2は、固定子積層鉄心1と同様に、いわゆる転積によって構成されていてもよい。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0042】
回転子積層鉄心2は、複数のカシメ部23を有する。カシメ部23は、カシメ部13と同様、図示しないカシメ及び貫通孔で構成されており、隣り合う打抜部材W2同士を締結する機能を有する。複数の打抜部材W2同士は、カシメ部23に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W2同士は、例えば、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材W2に仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材W2を締結して積層体を得た後、仮カシメを当該積層体から除去することによって、回転子積層鉄心2を得てもよい。
【0043】
回転子積層鉄心2には、中心軸Ax2(積層方向)に沿って延びると共に積層体20を貫通する少なくとも一つの磁石挿入孔(図示せず)が設けられていてもよい。磁石挿入孔内には、永久磁石(図示せず)が配置された状態で、樹脂材料が充填されていてもよい。樹脂材料は、永久磁石を磁石挿入孔内において固定する機能と、上下方向で隣り合う打抜部材W2同士を接合する機能とを有する。
【0044】
[積層鉄心の製造装置]
続いて、
図5を参照して、固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2の製造装置100について説明する。
【0045】
製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板ES(被加工板)から固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120(送出部)と、打抜装置130と、コントローラ140(制御部)とを備える。
【0046】
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板ESであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板ESを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラ140からの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板ESを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
【0047】
コイル材111を構成する電磁鋼板ESの長さは、例えば500m〜10000m程度であってもよい。電磁鋼板ESの厚さは、例えば0.1mm〜0.5mm程度であってもよい。電磁鋼板ESの厚さは、より優れた磁気的特性を有する固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2を得る観点から、例えば0.1mm〜0.3mm程度であってもよい。電磁鋼板ESの幅は、例えば50mm〜500mm程度であってもよい。
【0048】
打抜装置130は、コントローラ140からの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板Wを順次打ち抜き加工して打抜部材W1,W2をそれぞれ形成する機能と、打ち抜き加工によって得られた打抜部材W1を順次積層して固定子積層鉄心1を製造する機能と、打抜部材W2を順次積層して回転子積層鉄心2を製造する機能とを有する。
【0049】
コントローラ140は、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120及び打抜装置130をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、送出装置120及び打抜装置130に送信する。
【0050】
[打抜装置の詳細]
ここで、
図5〜
図9を参照して、打抜装置130についてより詳しく説明する。本実施形態では、打抜装置130は、電磁鋼板ESのうち幅方向において異なる列で打抜部材W1,W2を形成する。具体的には、打抜装置130は、第1列L1(
図10〜
図12参照)において打抜部材
1W1,
1W2を形成すると共に、第2列P2(
図10〜
図12参照)において打抜部材
2W1,
2W2を形成する。なお、本明細書において、符号の左肩に付した上付き数字「
1」は、当該符号が付された要素が第1列L1に関わることを示し、符号の左肩に付した上付き数字「
2」は、当該符号が付された要素が第2列L2に関わることを示す。
【0051】
打抜装置130は、
図5〜
図7に示されるように、ベース131と、下型132と、ダイプレート133と、ストリッパ134と、上型135と、天板136と、プレス機137(駆動部)と、吊り具138と、パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12と、パイロットピン
1B1〜
1B13,
2B1〜
2B13とを有する。ベース131は、床面上に設置されており、ベース131に載置された下型132を支持する。
【0052】
下型132は、下型132に載置されたダイプレート133を保持する。下型132に
は、電磁鋼板ESから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材W1,W2、廃材等)が排出される排出孔
1C1〜
1C12,
2C1〜
2C12が、パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0053】
ダイプレート133は、パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12と共に、打抜部材W1,W2を成形する機能を有する。ダイプレート133には、パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12に対応する位置にダイ
1D1〜
1D12,
2D1〜
2D12がそれぞれ設けられている。各ダイ
1D1〜
1D12,
2D1〜
2D12には、上下方向に延びると共に対応する排出孔
1C1〜
1C12,
2C1〜
2C12と連通するダイ孔(貫通孔)が設けられている。各貫通孔の大きさは、対応するパンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12の先端部が挿通可能で且つ当該先端部よりも僅かに小さな程度に設定されている。
【0054】
ダイ
1D5,
1D12,
2D5,
2D12は、
図8及び
図9に示されるように、円筒状を呈するダイホルダ133aの内壁面に保持されている。ダイホルダ133aは、鉛直方向に沿って延びる中心軸周りに回転可能となるよう、ダイプレート133に対して取り付けられている。ダイホルダ133aには駆動機構133bが接続されている。駆動機構133bは、コントローラ140からの指示信号に基づいて、ダイホルダ133aの中心軸周りにダイホルダ133aを回転させる。そのため、打ち抜かれた打抜部材W1,W2がシリンダ132b上に積み重ねされた後に、ダイホルダ133aが所定角度回転することで、続く打抜部材W1,W2が直前の打抜部材W1,W2に対して転積される。駆動機構133bは、例えば、回転モータ及び歯車の組み合わせ等によって構成されていてもよい。
【0055】
ダイプレート133には、
図6及び
図7に示されるように、パイロットピン
1B1〜
1B13,
2B1〜
2B13に対応する位置にパイロット孔
1E1〜
1E13,
2E1〜
2E13がそれぞれ設けられている。このうちパイロット孔
1E3,
1E12,
2E4,
2E12は、
図8及び
図9に示されるように、ダイホルダ133aに設けられている。例えば、ダイ
1D5を保持するダイホルダ133aには、当該ダイホルダ133aの外周縁に沿って並ぶように複数のパイロット孔
1E3が当該ダイホルダ133aの上面に設けられている。パイロット孔
1E12,
2E4,
2E12についても同様である。パイロット孔
1E3,
1E12,
2E4,
2E12の数及び位置は、打抜部材W1,W2の転積角度に応じて適宜設定してもよい。例えば、転積角度が120°である場合には、ダイホルダ133aの上面側に3つのパイロット孔が設けられており、これら3つのパイロット孔がダイホルダ133aの中心軸の周方向において略120°おきに配置されていてもよい。
【0056】
ストリッパ134は、パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12で電磁鋼板ESを打ち抜く際に、電磁鋼板ESをダイプレート133との間で挟持する機能と、パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12に食いついた電磁鋼板ESをパンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12から取り除く機能とを有する。
【0057】
ストリッパ134には、
図6及び
図7に示されるように、パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12に対応する位置に、上下方向に延びる貫通孔がそれぞれ設けられている。各貫通孔はそれぞれ、ストリッパ134がダイプレート133に近接したときに、対応するダイ
1D1〜
1D12,
2D1〜
2D12のダイ孔と連通する。各貫通孔内にはそれぞれ、パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12の下部が挿通されている。パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12の当該下部はそれぞれ、各貫通孔内においてスライド可能である。
【0058】
ストリッパ134には、パイロットピン
1B1〜
1B13,
2B1〜
2B13に対応する位置に、上下方向に延びる貫通孔がそれぞれ設けられている。各貫通孔はそれぞれ、ストリッパ134がダイプレート133に近接したときに、対応するパイロット孔
1E1〜
1E13,
2E1〜
2E13と連通する。各貫通孔内にはそれぞれ、パイロットピン
1B1〜
1B13,
2B1〜
2B13の下部が挿通されている。パイロットピン
1B1〜
1B13,
2B1〜
2B13の当該下部はそれぞれ、各貫通孔内においてスライド可能である。
【0059】
上型135は、ストリッパ134の上方に位置している。上型135には、パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12及びパイロットピン
1B1〜
1B13,
2B1〜
2B13の基部(上部)が固定されている。そのため、上型135は、パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12及びパイロットピン
1B1〜
1B13,
2B1〜
2B13を保持している。
【0060】
天板136は、上型135の上方に位置している。天板136は、上型135を保持している。プレス機137は、天板136の上方に位置している。プレス機137のピストンは、天板136に接続されており、コントローラ140からの指示信号に基づいて動作する。プレス機137が動作すると、ピストンが伸縮して、ストリッパ134、上型135、天板136、吊り具138、パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12及びパイロットピン
1B1〜
1B13,
2B1〜
2B13(以下、これらをまとめて可動部150という。)が全体的に上下動する。
【0061】
吊り具138は、ストリッパ134を上型135に吊り下げて保持する機能を有する。吊り具138の下端側は、ストリッパ134に固定されている。吊り具138の上端側は、上型135に対して上下動可能に取り付けられている。
【0062】
パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12は、対応するダイ
1D1〜
1D12,
2D1〜
2D12と共にパンチ部を構成している。各パンチ部は、電磁鋼板ESを所定形状に打ち抜く機能を有する。パンチ
1A1〜
1A12は、打抜装置130の上流側(送出装置120側)から下流側に向けて概ねこの順に並ぶように配置されている。パンチ
2A1〜
2A12は、打抜装置130の上流側(送出装置120側)から下流側に向けて概ねこの順に並ぶように配置されている。パンチ
2A1〜
2A12はそれぞれ、電磁鋼板ESの幅方向においてパンチ
1A1〜
1A12とおおよそ並ぶように配置されている。
【0063】
パイロットピン
1B1,
1B2,
1B4〜
1B13,
2B1〜
2B3,
2B5〜
2B13は、パンチ
1A1〜
1A12,
2A1〜
2A12によって電磁鋼板ESが打ち抜かれる際に電磁鋼板ESをダイプレート133に押さえつける機能を有する。パイロットピン
1B3,
1B12,
2B4,
2B12は、パイロット孔
1E3,
1E12,
2E4,
2E12と係合して、ダイホルダ133aの回転を制止する機能を有する。パイロットピン
1B1〜
1B13は、打抜装置130の上流側(送出装置120側)から下流側に向けて概ねこの順に並ぶように配置されている。パイロットピン
2B1〜
2B13は、打抜装置130の上流側(送出装置120側)から下流側に向けて概ねこの順に並ぶように配置されている。パイロットピン
2B1〜
2B13はそれぞれ、電磁鋼板ESの幅方向においてパイロットピン
1B1〜
1B13とおおよそ並ぶように配置されている。
【0064】
排出孔
1C5,
2C5,
1C12,
2C12内には、
図8に示されるように、駆動機構132aと、シリンダ132bと、ステージ132cと、プッシャ132dとが配置されている。駆動機構132aは、コントローラ140からの指示信号に基づいて、シリンダ132bを駆動する。具体的には、駆動機構132aは、シリンダ132bを上下方向に移動させる。駆動機構132aは、例えば、リニアアクチュエータによって構成されていてもよい。
【0065】
シリンダ132bは、パンチ
1A5,
2A5,
1A12,
2A12によって電磁鋼板ESから打ち抜かれた打抜部材
1W2,
2W2,
1W1,
2W1を弾性的に支持する機能を有する。これにより、打ち抜かれた打抜部材
1W2,
2W2,
1W1,
2W1が下方に落下することが防止される。
【0066】
シリンダ132bは、コントローラ140が駆動機構132aに指示することにより、上下方向に移動可能である。具体的には、シリンダ132bは、シリンダ132b上に打抜部材W1,W2が積み重ねられるごとに間欠的に下方に移動する。シリンダ132b上において打抜部材W1,W2が所定枚数まで積層され、固定子積層鉄心1又は回転子積層鉄心2が形成されると、
図9に示されるように、シリンダ132bの表面がステージ132cの表面と同一高さとなる位置へとシリンダ132bが移動する。
【0067】
シリンダ132b上において打抜部材W1,W2が積み重ねられる場合には、
図8に示されるように、パイロット孔
1E3,
1E12,
2E4,
2E12内にパイロットピン
1B3,
1B12,
2B4,
2B12の先端が挿入される。これにより、パイロットピン
1B3,
1B12,
2B4,
2B12の先端がパイロット孔
1E3,
1E12,
2E4,
2E12と係合されるので、ダイホルダ133aの回転が制止される。一方、それ以外の場合には、
図9に示されるように、パイロットピン
1B3,
1B12,
2B4,
2B12は電磁鋼板ESよりも上方に待機している。そのため、パイロットピン
1B3,
1B12,
2B4,
2B12の先端は、パイロット孔
1E3,
1E12,
2E4,
2E12と係合されない。従って、このときダイホルダ133aは、ダイプレート133に対して回転可能である。
【0068】
ステージ132cには、シリンダ132bが通過可能な孔132eが設けられている。プッシャ132dは、コントローラ140からの指示信号に基づいて、ステージ132cの表面上において水平方向に移動可能に構成されている。シリンダ132bの表面がステージ132cの表面と同一高さとなる位置にシリンダ132bが移動した状態で、プッシャ132dは、固定子積層鉄心1又は回転子積層鉄心2をシリンダ132bからステージ132cに払い出す。ステージ132cに払い出された固定子積層鉄心1又は回転子積層鉄心2は、図示しないコンベア等により後続の工程に搬送され、固定子又は回転子が製造される。
【0069】
[積層鉄心の製造方法]
続いて、固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2の製造方法について説明する。まず、
図6及び
図10〜
図12を参照して、電磁鋼板ESのうち第1列L1において打抜部材
1W1,
1W2をそれぞれ打ち抜き、一組の固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2を製造する方法について説明する。
【0070】
電磁鋼板ESが送出装置120によって打抜装置130に送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ
1A1に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150をダイプレート133に向けて下方に押し出す。ストリッパ134がダイプレート133に到達してこれらで電磁鋼板ESが挟持された後も、プレス機137が可動部150を下方に向けて押し出す。
【0071】
このとき、ストリッパ134は移動しないが、パンチ
1A1〜
1A12及びパイロットピン
1B1〜
1B13の先端部はストリッパ134の貫通孔内を移動して、ダイプレート133のうち対応するダイ
1D1〜
1D12及びパイロット孔
1E1〜
1E13に到達する。そのため、電磁鋼板ESがパンチ
1A1(第1のパンチ、第7のパンチ)によって所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、電磁鋼板ESの幅方向に並ぶ一対の貫通孔
1R1a,
1R1bが電磁鋼板ESに形成される(第1の工程;第7の工程;第1の処理;第7の処理;
図6及び
図10の位置
1P1参照)。貫通孔
1R1a(第1のパイロット孔)は、電磁鋼板ESの側縁近傍に位置している。貫通孔
1R1b(貫通孔)は、電磁鋼板ESの中央近傍に位置している。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔
1C1から排出される。その後、プレス機137が動作して可動部150を上昇させる。
【0072】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ
1A2に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESがパンチ
1A2によって打ち抜かれ、複数の貫通孔
1R2が電磁鋼板ESに形成される(
図6及び
図10の位置
1P2参照)。本実施形態では、矩形状を呈する12個の貫通孔
1R2が全体として円形状を呈するように並んでいる。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔
1C2から排出される。
【0073】
このとき同時に、必要に応じて、電磁鋼板ESがパンチ
1A3によって打ち抜かれ、複数の貫通孔
1R3が電磁鋼板Wに形成されてもよい(
図6及び
図10の位置
1P3参照)。本実施形態では、複数の貫通孔
1R2によって囲まれる領域の内側において、円形状を呈する8個の貫通孔
1R3が全体として円形状を呈するように並んでいる。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔
1C3から排出される。各貫通孔
1R3は、回転子積層鉄心2の打抜部材W2におけるカシメ部23の貫通孔に対応する。なお、カシメ部23におけるカシメを形成する場合には、パンチ
1A3による電磁鋼板ESの打ち抜きが行われない。
【0074】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ
1A4に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESがパンチ
1A4によって打ち抜かれ、一つの貫通孔
1R4及び複数の加工部
1R5が電磁鋼板ESに形成される(
図6及び
図10の位置
1P5参照)。貫通孔
1R4は、円形状を呈しており、回転子積層鉄心2の打抜部材W2における貫通孔2aに対応する。加工部
1R5は、回転子積層鉄心2の打抜部材W2におけるカシメ部23のカシメに対応する。本実施形態では、貫通孔
1R4を囲む8個の加工部
1R5が円形状を呈するように並んでいる。パンチ
1A4による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔
1R1a内にはパイロットピン
1B1,
1B2が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされる(
図6及び
図10の位置
1P4,
1P6参照)。
【0075】
位置
1P3において既に貫通孔
1R3が電磁鋼板ESに形成されている場合には、パンチ
1A4のうち加工部
1R5を形成するための部分が貫通孔
1R3を通過して空振りするので、加工部
1R5が電磁鋼板ESに形成されない。すなわち、貫通孔
1R3及び加工部
1R5の一方が択一的に電磁鋼板ESに形成される。
【0076】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ
1A5(第8のパンチ)に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESがパンチ
1A5によって打ち抜かれ、複数のカシメ部23を有する打抜部材
1W2が排出孔
1C5内においてシリンダ132b上に積み重ねられる(第8の工程;第8の処理;
図6及び
図10の位置
1P7参照)。以上の工程が繰り返されることにより、シリンダ132b上において複数の打抜部材
1W2がカシメ部23によって接合されつつ積層され、回転子積層鉄心2が形成される。パンチ
1A5による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔
1R1a内にはパイロットピン
1B2,
1B4(第4のパイロットピン)が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされる(
図6及び
図10の位置
1P6,
1P9参照)。同じく、パンチ
1A5による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、パイロットピン
1B3(第4のパイロットピン)が貫通孔
2R1b(後述する)を通過して、パイロット孔
1E3内にパイロットピン
1B3の先端が挿入されることにより、ダイ
1D5を保持するダイホルダ133aの回転が静止される(
図6及び
図10の位置
1P8参照)。なお、電磁鋼板ESのうち打抜部材
1W2が打ち抜かれた後の領域には、貫通孔
1R6が形成される。
【0077】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ
1A6(第5のパンチ)に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESがパンチ
1A6によって打ち抜かれ、複数の貫通孔
1R7(スロット対応孔)が電磁鋼板ESに形成される(第5の工程;第5の処理;
図6、
図10及び
図11の位置
1P11参照)。本実施形態では、略扇形状を呈する12個の貫通孔
1R7が全体として円形状を呈するように並んでいる。貫通孔
1R7は、固定子積層鉄心1の打抜部材W1におけるスロットW14に対応する。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔
1C6から排出される。パンチ
1A6による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔
1R1a内にはパイロットピン
1B5,
1B6が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされる(
図6、
図10及び
図11の位置
1P10,
1P12参照)。
【0078】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ
1A7(第2のパンチ)に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESのうち貫通孔
1R2,
1R6同士の間にそれぞれ加工部
1R8(加工済部位)が形成される(第2の工程;第2の処理;
図6及び
図11の位置
1P13参照)。加工部
1R8は、貫通孔
1R2,
1R7を繋ぐ切断線CLに沿って電磁鋼板ESを切り曲げ加工又は打ち抜き加工した後、当該加工済部位を電磁鋼板ESに圧入加工(プッシュバック加工)して得られる。パンチ
1A7による電磁鋼板ESの加工の際、貫通孔
1R1a内にはパイロットピン
1B6,
1B7(第1のパイロットピン)が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされる(
図6及び
図11の位置
1P12,
1P14参照)。
【0079】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ
1A8(第3のパンチ)に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESのうち貫通孔
1R1a,
1R1bと一致する位置がパンチ
1A8によって打ち抜かれ、複数の貫通孔
1R9a,
1R9b(第2のパイロット孔)が電磁鋼板ESに形成される(第3の工程;第3の処理;
図6及び
図11の位置
1P5参照)。本実施形態では、貫通孔
1R9aは、貫通孔
1R1aと一致する位置においてパンチ
1A8により打ち抜かれ、貫通孔
1R1aよりも大きな外形を有している。貫通孔
1R9bは、貫通孔
1R1bと一致する位置においてパンチ
1A8により打ち抜かれ、貫通孔
1R1bよりも大きな外形を有している。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔
1C8から排出される。
【0080】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ
1A9に到達すると、必要に応じてコントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESがパンチ
1A9によって打ち抜かれ、複数の貫通孔
1R10が電磁鋼板ESに形成される(
図6及び
図11の位置
1P16参照)。本実施形態では、隣り合う貫通孔
1R7の間に貫通孔
1R10が一つずつ位置しており、これらの貫通孔
1R10が全体として円形状を呈するように並んでいる。また、隣り合う加工部
1R8の間に貫通孔
1R10が二つずつ位置しており、これらの貫通孔
1R10が全体として円形状を呈するように並んでいる。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔
1C9から排出される。各貫通孔
1R10は、固定子積層鉄心1の打抜部材W1におけるカシメ部13の貫通孔13bに対応する。なお、カシメ部13におけるカシメ13aを形成する場合には、パンチ
1A9による電磁鋼板ESの打ち抜きが行われない。
【0081】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ
1A10(第6のパンチ)に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESのうち打抜部材
1W2が打ち抜かれた領域と一致する位置がパンチ
1A10によって打ち抜かれ、円形状を呈する一つの貫通孔
1R11(中心対応孔)が電磁鋼板ESに形成される(第6の工程;第6の処理;
図6、
図11及び
図12の位置
1P18参照)。本実施形態では、貫通孔
1R11は、貫通孔
1R6と一致する位置においてパンチ
1A10により打ち抜かれ、貫通孔
1R6よりも大きな外形を有している。貫通孔
1R11は、各貫通孔
1R7のうち貫通孔
1R6の中心側の一部と重なり合っている。そのため、貫通孔
1R11は、各貫通孔
1R7と連通する。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔
1C10から排出される。各貫通孔
1R11は、固定子積層鉄心1の打抜部材W1における貫通孔W1aに対応する。パンチ
1A10による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔
1R9a内にはパイロットピン
1B8,
1B9(第3のパイロットピン)が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされる(
図6及び
図12の位置
1P17,
1P19参照)。
【0082】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ
1A11に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESがパンチ
1A11によって加工され、複数の加工部
1R12が電磁鋼板ESに形成される(
図6及び
図12の位置
1P20参照)。本実施形態では、隣り合う貫通孔
1R7の間に加工部
1R12が一つずつ位置しており、これらの加工部
1R12が全体として円形状を呈するように並んでいる。また、隣り合う加工部
1R8の間に加工部
1R12が二つずつ位置しており、これらの加工部
1R12が全体として円形状を呈するように並んでいる。各加工部
1R12は、固定子積層鉄心1の打抜部材W1におけるカシメ部13のカシメ13aに対応する。パンチ
1A11による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔
1R9a内にはパイロットピン
1B9,
1B10が挿通されることにより、電磁鋼板ESが位置決めされる(
図6及び
図12の位置
1P19,
1P21参照)。
【0083】
位置
1P16において既に貫通孔
1R10が電磁鋼板ESに形成されている場合には、パンチ
1A11が貫通孔
1R10を通過して空振りするので、加工部
1R12が電磁鋼板ESに形成されない。すなわち、貫通孔
1R10及び加工部
1R12の一方が択一的に電磁鋼板ESに形成される。
【0084】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位がパンチ
1A12(第4のパンチ)に到達すると、コントローラ140がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部150を昇降させる。これにより、電磁鋼板ESのうち加工部
1R8を含む領域がパンチ
1A12によって打ち抜かれ、打抜部材
1W1が排出孔
1C12内においてシリンダ132b上に積み重ねられる(第4の工程;第4の処理;
図6及び
図12の位置
1P23参照)。以上の工程が繰り返されることにより、シリンダ132b上において複数の打抜部材
1W1がカシメ部13によって接合されつつ積層され、固定子積層鉄心1が形成される。パンチ
1A12による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔
1R9a内にはパイロットピン
1B11,
1B13(第2のパイロットピン)が挿通される貫通孔
1R11は、各貫通孔
1R7(
図6及び
図12の位置
1P22,
1P25参照)。また、パンチ
1A12による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、
図8に示されるように、パイロットピン
1B12(第2のパイロットピン)が貫通孔
2R9b(後述する)を通過し、パイロット孔
1E12内にパイロットピン
1B12の先端が挿入されることにより、ダイ
1D12を保持するダイホルダ133aの回転が静止される(
図6及び
図12の位置
1P24参照)。
【0085】
一方、第1列L1に関して上述したのと同様に、第2列L2においても、貫通孔
2R1a,
2R1b,
2R2〜
2R4,
2R6,
2R7,
2R9a,
2R9b,
2R10,
2R11及び加工部
2R5,
2R8,
2R12が電磁鋼板ESに形成され、その過程で打抜部材
2W1,
2W2が形成される(
図7及び
図10〜
図12参照)。そのため、以下では第2列L2での固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2の詳細な説明は省略する。
【0086】
[作用]
以上のような本実施形態では、パンチ
1A7により電磁鋼板ESを加工して、電磁鋼板ESのうち貫通孔
1R2,
1R6同士の間にそれぞれ加工部
1R8を形成している。加工部
1R8を形成する過程で電磁鋼板ESに切り曲げ加工又は打ち抜き加工とプッシュバック加工とが行われるので、加工部
1R8は、電磁鋼板ESの面内における外方に向けて自身を押し拡げながら、被加工位置に圧入される。そのため、加工部
1R8と電磁鋼板ESとは人手では簡単に外れない程度にしっかりと嵌まり合うが、電磁鋼板ESに歪みが生ずることがある。しかしながら、本実施形態では、加工部
1R8を形成した後で且つ電磁鋼板ESに他の加工が行われる前に、貫通孔
1R1aとは異なる他の貫通孔
1R9aを電磁鋼板ESに形成している。すなわち、歪みにより変形した後の電磁鋼板ESに、貫通孔
1R9aが形成される。そのため、貫通孔
1R9aの位置が変位しないか、貫通孔
1R9aの変位量がごく僅かである。従って、その後の工程において、貫通孔
1R9aにパイロットピン
1B8〜
1B11,
1B13を挿通して電磁鋼板ESを位置決めすることができるので、パンチ
1A12で電磁鋼板ESが打ち抜かれることにより形成される打抜部材
1W1を設計に沿った形状とすることができる。その結果、電磁鋼板ESの切り曲げ加工又は打ち抜き加工とプッシュバック加工とを経ても精度よく固定子積層鉄心1を形成することが可能となる。
【0087】
本実施形態では、貫通孔
1R9aは、貫通孔
1R1aと一致する位置においてパンチ
1A8により打ち抜かれ、貫通孔
1R1aよりも大きな外形を有している。すなわち、貫通孔
1R9aが貫通孔
1R1aに対して重なるように形成される。そのため、貫通孔
1R9aを形成するための領域を電磁鋼板ESから別途確保する必要がなくなる。従って、より幅狭の電磁鋼板ESを利用することができるので、歩留まり向上を図ることが可能となる。その結果、固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2の製造コストを低減できる。特に、アンコイラー110から送り出される1つのコイル材111の全長は例えば数100m〜数10000m程度の場合もあるので、電磁鋼板ESが幅狭となることにより、歩留まり向上と低コスト化とが極めて効果的に達成される。
【0088】
本実施形態では、電磁鋼板ESに貫通孔
1R9aを形成した後に、貫通孔
1R9a内にパイロットピン
1B8,
1B9を挿通して電磁鋼板ESを位置決めした状態で、貫通孔
1R11を電磁鋼板ESに形成している。そのため、固定子積層鉄心1の貫通孔1aを設計に沿った形状とすることができる。従って、電動機において重要なパラメータであるエアギャップを極めて精度よく形成することができるので、電動機の性能向上を図ることが可能となる。
【0089】
本実施形態では、パイロットピン
1B3を貫通孔
2R1bに挿通し、パイロット孔
1E3内にパイロットピン
1B3の先端を挿入した状態で、回転子積層鉄心2となる打抜部材
1W2を電磁鋼板ESからパンチ
1A5で打ち抜いている。すなわち、打抜部材
1W2が積層される際に、パイロットピン
1B3がパイロット孔
1E3に係合しており、ダイ
1D5を保持するダイホルダ133aの回転が制止されている。そのため、転積角度のずれが生ずることなく、打抜部材
1W2同士を適切に積層することができる。しかも、パイロットピン
1B3は、電磁鋼板ESに形成された貫通孔
2R1bに挿通されつつパイロット孔
1E3に係合される。そのため、電磁鋼板ESを避けるようにパイロットピン
1B3を配置する必要がなくなるので、パイロットピン
1B3及びシリンダ132bを含む製造装置100を全体としてコンパクト化することが可能となる。
【0090】
本実施形態では、打抜部材
1W1,
1W2と打抜部材
2W1,
2W2とが複数列においてそれぞれ形成される。このような、いわゆる複数列取り加工の場合には、電磁鋼板ESの切り曲げ加工又は打ち抜き加工とプッシュバック加工によって電磁鋼板ESにいっそう大きな歪みが生ずる。そのため、貫通孔
1R1aの位置が大きく変位してしまいうる。しかしながら、本実施形態では、上記のとおり、歪みにより変形した後の電磁鋼板ESに貫通孔
1R9aが形成され、貫通孔
1R9aにパイロットピン
1B8〜
1B11,
1B13が挿通されて電磁鋼板ESが位置決めされた状態でその後の電磁鋼板ESの加工が行われる。そのため、電磁鋼板ESがいっそう変形しやすい複数列取り加工に際しても、精度よく固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2を形成することが可能となる。
【0091】
なお、第2列L2において固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2を製造する際にも、上記と同様の作用効果を奏する。
【0092】
[他の実施形態]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。例えば、貫通孔
1R1a,
1R1bは、製造装置100とは異なる他の装置によって予め電磁鋼板ESに形成されていてもよい。
【0093】
上記の実施形態では、貫通孔
1R9aが貫通孔
1R1aに対して重なるように貫通孔
1R9aを電磁鋼板ESに形成したが、貫通孔
1R1aとは異なる位置に貫通孔
1R9aを形成してもよい。
【0094】
上記の実施形態では、一つの電磁鋼板ESから固定子積層鉄心1及び回転子積層鉄心2を製造する方法について説明したが、一つの電磁鋼板ESから固定子積層鉄心1のみを製造してもよいし、一つの電磁鋼板ESから回転子積層鉄心2のみを製造してもよい。
【0095】
上記の実施形態では、回転子積層鉄心2の製造に際して、パイロットピン
1B3を貫通孔
2R1bに挿通しつつパイロット孔
1E3内にパイロットピン
1B3の先端を挿入していたが、固定子積層鉄心1の製造に際しても同様にパイロットピンによりダイホルダ133aの回転を制止してもよい。また、パイロットピン
1B3が電磁鋼板ES及びダイプレート133の外側を通ってパイロット孔
1E3内に挿入されてもよい。転積を行わない場合には、ダイホルダ133aが回転機能を有していなくてもよい。
【0096】
上記の実施形態では、電磁鋼板ESを2列取り加工する場合について説明したが、3列以上の複数列取り加工の場合にも本発明を適用することができる。