(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797041
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】低雑音増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 3/72 20060101AFI20201130BHJP
H03F 3/19 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
H03F3/72
H03F3/19
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-15920(P2017-15920)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-125681(P2018-125681A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】中原 和彦
【審査官】
竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0309327(US,A1)
【文献】
特開平09−093048(JP,A)
【文献】
特表2013−526169(JP,A)
【文献】
特開平10−261925(JP,A)
【文献】
特開平03−255708(JP,A)
【文献】
特開平11−266132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00−3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が接地されるスイッチング素子と、直流を遮断する直列キャパシタとを含む入力整合回路と、前記入力整合回路に接続される増幅素子と、前記増幅素子に接続される出力整合回路と、を備えた低雑音増幅器であって、
前記直列キャパシタは、一方の端子側が前記増幅素子のゲートに電気的に接続され、他方の端子側が前記スイッチング素子の他端に接続され、
前記スイッチング素子の前記他端は、前記低雑音増幅器の入力端子に接続され、
前記増幅素子への入力電力を通過させるときは、前記スイッチング素子をオフ状態に制御し、前記増幅素子への入力電力を遮断するときは、前記スイッチング素子をオン状態に制御し、
前記スイッチング素子は、オフ状態に制御されるときは前記入力整合回路の並列容量として動作し、オン状態に制御されるときは前記入力整合回路の並列抵抗として動作する
ことを特徴とする低雑音増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波(Radio Frequency:RF)信号の増幅に用いる低雑音増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
RF信号の増幅に用いる低雑音増幅器の実施例が、下記特許文献1に示されている。特許文献1に示される低雑音増幅器では、一端が接地されるPINダイオード(P−Intrinsic−N Diode)と、入力RF信号波長の1/4の長さを有し、当該PINダイオードの他端に接続される線路とからなる直列接続回路を2組備え、当該2組の直列接続回路のそれぞれを、入力整合回路を成す主線路の一端と他端とに接続し、当該一端と他端との間隔が入力RF信号波長の1/4の長さに設定される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−340226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、特許文献1に代表される従来の低雑音増幅器では、入力電力の通過又は遮断を制御するためのスイッチが装荷されたショートスタブを2組有し、且つ、これら2組のショートスタブの主線路における接続点を入力RF信号波長の1/4の長さだけ離間させる必要があった。このため、従来の低雑音増幅器は、回路が大型化し、コストが増大するという課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、入力電力の通過又は遮断を制御するための機能を、ショートスタブを使用せずに構成し、回路の大型化及びコストの増大を抑制した低雑音増幅器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る低雑音増幅器は、直流を遮断する直列キャパシタを含む入力整合回路と、入力整合回路に接続される増幅素子と、増幅素子に接続される出力整合回路と、を備える。低雑音増幅器の入力整合回路は、一方の端子側が増幅素子のゲートに電気的に接続され、他方の端子側には、接地されるスイッチング素子を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、入力電力の通過又は遮断を制御するための機能を、1/4波長線路とその両端にショートスタブを装荷せずに構成でき、回路の大型化及びコストの増大を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係る低雑音増幅器の構成例を示す回路図
【
図2】FET3をオフ動作させたときの
図1の回路の等価回路図
【
図3】FET3をオン動作させたときの
図1の回路の等価回路図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態に係る低雑音増幅器を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、以下の説明における素子間の接続は電気的接続であり、接続される素子の間に他の素子が含まれていてもよい。
【0010】
実施の形態.
図1は、本実施の形態に係る低雑音増幅器100の構成例を示す回路図である。本実施の形態に係る低雑音増幅器100は、
図1に示すように、増幅素子であるFET11を有する。
図1では、FET11が電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)である場合を例示しているが、FET以外の増幅素子を用いてもよい。以下、FET11がFETの場合を想定し、FET11が有する3つの端子を、それぞれゲート、ドレイン及びソースと呼ぶ。なお、ゲートは制御端子、ドレインは第1端子、ソースは第2端子と言い替えてもよい。
【0011】
本実施の形態に係る低雑音増幅器100は、並列接続されたFET3、抵抗4及び並列抵抗5と、直列キャパシタ6及び直列インダクタ7と、インダクタ8、キャパシタ9及び抵抗10で構成されたゲートバイアス回路を兼ねた並列回路と、で構成された入力整合回路30を備える。このように構成された入力整合回路30は、一端側が入力端子1に接続され、他端側がFET11のゲートに接続される。また、抵抗4の一端はFET3のゲートに接続され、抵抗4の他端は、FET3へのゲートバイアス電圧が印加されるゲートバイアス端子21に接続される。また、抵抗10の一端は、インダクタ8とキャパシタ9との接続点に接続され、抵抗10の他端は、FET11へのゲートバイアス電圧が印加されるゲートバイアス端子20に接続される。
【0012】
また、本実施の形態に係る低雑音増幅器100は、一端側がFET11のソースに接続され、他端側が接地されるインダクタ12、抵抗13及びキャパシタ14で構成される回路40を備える。
【0013】
更に、本実施の形態に係る低雑音増幅器100は、FET11のドレインと出力端子間に接続される直列インダクタ15、インダクタ16及びキャパシタ17で構成されたドレインバイアス回路を兼ねた並列回路と、直列キャパシタ18とで構成された出力整合回路50を備える。このように構成された出力整合回路50は、一端側が出力端子2に接続され、他端側がFET11のドレインに接続される。また、インダクタ16とキャパシタ17との接続点は引き出されてFET11へのドレインバイアス電圧が印加されるドレインバイアス端子19に接続される。
【0014】
上記のように、本実施の形態に係る低雑音増幅器100は、直流を遮断する直列キャパシタ6を含み、一方の端子側がFET11のゲートに電気的に接続され、他方の端子側には、接地されるFET3を備えた入力整合回路30と、入力整合回路30に接続されるFET11と、FET11に接続される出力整合回路50と、を備えて構成される。
【0015】
FET3は、スイッチング素子として動作する。なお、後述のように、オフ状態となるときに容量性を示し、オン状態となるときに低抵抗性を示すスイッチング素子であれば、FET以外のスイッチング素子を用いてもよい。
【0016】
図1は、1段の回路構成を示しているが、複数の増幅素子を用いて多段に構成してもよい。なお、多段に構成する場合、又は、次段の入力回路が直流遮断用のキャパシタを有している場合、直列キャパシタ18を省略してもよい。
【0017】
次に、本実施の形態に係る低雑音増幅器100の動作について、
図2及び
図3の回路図を用いて説明する。
図2は、FET3をオフ動作させたときの
図1の回路の等価回路図である。
図3は、FET3をオン動作させたときの
図1の回路の等価回路図である。
【0018】
ゲートバイアス端子21によりFET3をオフさせることで
図2に示すようにFET3は並列容量22として動作し、入力整合回路30の並列容量となり信号が通過するため、低雑音増幅器として動作する。
【0019】
一方、ゲートバイアス端子21によりFET3をオンさせることでFET3は
図3に示すように、並列抵抗23として動作し入力整合回路30への信号を遮断するため入力整合回路30がFET11から見て不整合となり、入力端子1からの入力信号がFET11のゲートに印加されるのを抑止することができる。
【0020】
以上のように、FET3の動作状態を切り替えることにより、低雑音増幅器100の増幅機能の動作及び非動作を切り替えることができる。上述のように、FET3をオフ状態とすることにより、FET11への入力電力を通過させることができる。また、FET3をオン状態とすることにより、FET11への入力電力を遮断することができる。
【0021】
特許文献1に代表される従来の低雑音増幅器では、入力電力の通過又は遮断を制御するためのスイッチが装荷されたショートスタブを2組有し、且つ、これら2組のショートスタブの主線路における接続点を入力RF信号波長の1/4の長さだけ離間させる必要があり、回路が大型化し、コストも増大していた。これに対し、本実施の形態にかかる低雑音増幅器100では、増幅素子であるFET11への入力電力の通過又は遮断を制御するための機能を、1/4波長線路とその両端にショートスタブを装荷せずに構成できるので、回路の大型化及びコストの増大を抑制した低雑音増幅器を構成できるという効果が得られる。
【0022】
なお、本実施の形態に係る低雑音増幅器100は、マイクロ波受信機に用いることができる。最近の技術動向として、低雑音増幅器には、小型化及び低コスト化の要請と共に、入力電力に対する高耐電力化が求められている。低雑音増幅器を高耐電力化する際には、低雑音増幅器の前段に高耐電力スイッチ、リミッタ、サーキュレータといった回路部品が設けられることが多い。低雑音増幅器の増幅系においても、入力電力に耐えられるように、初段のFETのサイズを増加したり、バランス型の構成にしたりして、入力電力に対する耐性を高めているのが現状である。特に、レーダ装置に用いられる低雑音増幅器では、送信系の出力電力の回り込みによって初段のFETが損傷しないように、入力電力を減衰させる必要がある。このような要請に対し、本実施の形態に係る低雑音増幅器100では、FET3をオン状態とすることで入力端子1からの入力電力を遮断することができるので、初段のFETであるFET11の保護が可能となる。
【0023】
また、本実施の形態に係る低雑音増幅器100によれば、増幅素子であるFET11のサイズの増加、及びFET11を含む増幅系の回路構成が複雑化するのを抑止することができるので、低雑音増幅器100の小型化、低損失化、低価格化を図ることができる。
【0024】
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 入力端子、2 出力端子、3,11 FET、4,10,13 抵抗、5,23 並列抵抗、6,18 直列キャパシタ、9,14,17 キャパシタ、7,15 直列インダクタ、8,12,16 インダクタ、19 ドレインバイアス端子、20,21 ゲートバイアス端子、22 並列容量、30 入力整合回路、40 回路、50 出力整合回路、100 低雑音増幅器。