特許第6797051号(P6797051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797051
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】座席用仕切具
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20201130BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   B60R5/04 Z
   B60N3/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-49218(P2017-49218)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-150000(P2018-150000A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207653
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智久
(72)【発明者】
【氏名】礒野 登希夫
【審査官】 小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−333834(JP,A)
【文献】 特開2007−129989(JP,A)
【文献】 特開2014−103938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
B60N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料によって形成され、左右の座席の間に設けられる側方仕切本体と、
一端が前記側方仕切本体の第1取付位置に固定され、他端が前方の第1車両内装部材の第2取付位置に固定される第1固定手段と、
一端が前記側方仕切本体の第3取付位置に固定され、他端が後方の第2車両内装部材の第4取付位置に固定される第2固定手段とを備え、
前記側方仕切本体は、その平面部の表面が側方を向くように配置され、前方の第1座席のシートバックと後方の第2座席のシートバックとの間に形成される側方の空間を仕切り、
前記第1取付位置は、前記第2取付位置よりも下方かつ車両後方に位置し、
前記第3取付位置は、前記第4取付位置よりも下方かつ車両前方に位置し、
前記第1および第2固定手段は緊張状態で固定されることを特徴とする座席用仕切具。
【請求項2】
前記第1および第2固定手段が、長さを調節可能な固定部材を備え、前記固定部材は長さを調節して緊張状態に固定されることを特徴とする請求項1に記載の座席用仕切具。
【請求項3】
前記第1車両内装部材が前方の前記第1座席のヘッドレストであり、前記第2車両内装部材が後方の前記第2座席のヘッドレストであることを特徴とする請求項1または2に記載の座席用仕切具。
【請求項4】
前記第1取付位置が、前記側方仕切本体の前記平面部の前記表面内に位置し、
前記第3取付位置が、前記第1取付位置と同じ前記側方仕切本体の前記平面部の前記表面内に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の座席用仕切具。
【請求項5】
前方の前記第1座席と当該第1座席に隣接する第3座席との間の隙間を塞ぐ前方仕切本体と、
前記前方仕切本体と前記側方仕切本体とを取付ける取付手段と、
一端が前記前方仕切本体の第5取付位置に固定され、他端が第3車両内装部材の第6取付位置に固定される第3固定手段とをさらに備え、
前記第5取付位置は、前記第6取付位置よりも下方かつ前記取付手段に近い位置であり、
前記第3固定手段は緊張状態で固定されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の座席用仕切具。
【請求項6】
前記前方仕切本体は、前記側方仕切本体の前記平面部から突設するようにして取り付けられ、前記側方仕切本体側の取付手段は、前記第1取付位置および前記第3取付位置と同じ前記側方仕切本体の前記平面部の前記表面内に設けられることを特徴とする、請求項4に従属する請求項5に記載の座席用仕切具。
【請求項7】
前記第3固定手段が、長さを調節可能な固定部材を備え、前記固定部材は長さを調節して緊張状態に固定されることを特徴とする請求項5または6に記載の座席用仕切具。
【請求項8】
前記第3車両内装部材が前記第3座席のヘッドレストであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の座席用仕切具。
【請求項9】
前記側方仕切本体の上縁に設けた棒状の保形部材を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の座席用仕切具。
【請求項10】
一端が前記側方仕切本体に固定され、他端が車両床部に固定される第4固定手段を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の座席用仕切具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内を仕切る座席用仕切具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネット体の両端に取付けられたフックをそれぞれ、車両のラゲージサイドに形成された掛着環に掛けて、ネット体の上部を固定した、荷室における積荷領域の仕切具が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
車両に犬や猫等のペットを乗せる際には、座席を仕切って、ペットあるいは幼児を収容する収容区画を区画するペット移動防止柵が提案されている(例えば特許文献2)。特許文献2では、網状体で構成される柵が、後方座席のアームレスト内に一端側から巻き取れるように収容され、使用時には柵を引き出して、前側座席のシートバックの裏面側にフックを介して取り外し可能に掛止する構成となっている。
【0004】
車両の荷室の後方部分を左右方向に仕切ることを目的として、横長矩形状に形成された主仕切部に対し、略台形状に形成された副仕切部を主仕切部の長手方向の中心を挟んで左右に複数突設させるパーテーションが提案されている(例えば特許文献3)。
【0005】
一方、従来、後部座席上または後部座席から荷室にかけて、例えばマットを敷いて構成される犬や猫等のペット囲い装置が提案されている。当該ペット囲い装置によれば、車両等の狭い車内空間内でも、ペットがマット上を動き回ることができるので、閉塞感や窮屈感を感じることなく、車両等での移動においてペットにかかるストレスを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−166781号公報
【特許文献2】特開2000−25530号公報
【特許文献3】特許第4447629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ペットが、マットを敷いた後部座席に隣接する、マットを敷いていない座席に乗り移るおそれがある。また、当該座席に人が座った際には、ペットが人に飛び掛かってきたりするおそれがある。このような場合、両座席の間に、特許文献1のように平面構造体からなる仕切具を設けることが考えられる。しかしながら、座席間の場合、積荷領域の場合のラゲージサイドのように、特に仕切具の上部を仕切具がずれないように確実に繋ぎ止めることが容易でない問題がある。
【0008】
特許文献2のペット移動防止柵は、座席間を仕切ることができるものの、アームレストに柵を収容する必要があるため、設置に手間とコストが掛かり、特に、例えば柵を後付する場合等には取付が不便である。また、柵を引き出した場合に、柵の上部を張引する手段がないため、柵の上縁が弛んでしまうおそれがある。
【0009】
特許文献3のパーテーションの副仕切部は、長辺を主仕切部の表面に縫着して固定されているので、不使用時等に、取外すことができない。
【0010】
そこで、本発明は上記した問題点に鑑み、仕切本体がずれないように確実に固定された状態で車両の車室内を仕切ることができる座席用仕切具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するため、座席用仕切具が、可撓性材料で形成される側方仕切本体と、一端が前記側方仕切本体の第1取付位置に固定され、他端が前方の第1車両内装部材の第2取付位置に固定される第1固定手段と、一端が前記側方仕切本体の第3取付位置に固定され、他端が後方の第2車両内装部材の第4取付位置に固定される第2固定手段とを備え、前記第1取付位置は、前記第2取付位置よりも下方かつ車両後方に位置し、前記第3取付位置は、前記第4取付位置よりも下方かつ車両前方に位置し、前記第1固定手段および前記第2固定手段は緊張状態で固定されるものとする。
【0012】
本発明に係る座席用仕切具は、前記第1および第2固定手段が、長さを調節可能な固定部材を備え、前記固定部材は長さを調節して緊張状態に固定されることができる。
【0013】
本発明に係る座席用仕切具は、前記第1車両内装部材が前方の第1座席のヘッドレストであり、前記第2車両内装部材が後方の第2座席のヘッドレストとすることができる。
【0014】
本発明に係る座席用仕切具は、前方の第1座席と当該第1座席に隣接する第3座席との間の隙間を塞ぐ前方仕切本体と、前記前方仕切本体と前記側方仕切本体とを取付ける取付手段と、一端が前記前方仕切本体の第5取付位置に固定され、他端が第3車両内装部材の第6取付位置に固定される第3固定手段とを備え、前記第5取付位置は、前記第6取付位置よりも下方かつ前記取付手段に近い位置であり、前記第3固定手段は緊張状態で固定されることができる。
【0015】
本発明に係る座席用仕切具は、前記第3固定手段が、長さを調節可能な固定部材を備え、前記固定部材は長さを調節して緊張状態に固定されることができる。
【0016】
本発明に係る座席用仕切具は、前記第3車両内装部材が前記第3座席のヘッドレストとすることができる。
【0017】
本発明に係る座席用仕切具は、前記側方仕切本体の上縁に設けた棒状の保形部材を備えることができる。
【0018】
本発明に係る座席用仕切具は、一端が前記側方仕切本体に固定され、他端が車両床部に固定される第4固定手段を備えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、大型犬等の突進等に対しても、座席間に設けた仕切本体が車両前後左右方向にずれることを抑制することができる座席用仕切具を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る座席用仕切具の側方仕切本体の全体図である。
図2】同上、車両の後方から見た座席用仕切具の使用例を示す説明図である。
図3】同上、側方仕切本体の使用状態を示す説明図である。
図4】同上、第1および第3取付位置の説明図である。
図5】同上、側方仕切本体の第1座席への取付状態を示す拡大図である。
図6】同上、側方仕切本体の第2座席への取付状態を示す拡大図である。
図7】同上、固定部材のバックルの平面図である。
図8】同上、側方仕切本体および前方仕切本体の車両床部への取付状態を示す拡大図である。
図9】同上、側方仕切本体の上縁の袋部の説明図である。
図10】同上、前方仕切本体の全体図である。
図11】同上、前方仕切本体の使用状態を示す説明図である。
図12】同上、第5取付位置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の座席用仕切具の実施形態について説明する。
【0022】
本明細書では、「前方」および「後方」は、それぞれ図1および図3に示す車両の前進方向Fおよび後進方向Bを示すものである。当該前進方向Fおよび後進方向Bに直交する図2に示す方向L,Rが「左右方向」および「側方」である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る座席用仕切具1は、平面部7を有する側方仕切本体2を備える。
【0024】
本実施形態に係る座席用仕切具1は、例えば図2に示すように、車両100の後部座席から荷室にかけてマット101を敷く等して犬や猫等のペットの乗車場所を設けた場合に、ペットがマット101を敷いていない座席や、人が座っている座席に進入できないように、座席間を仕切るものである。尚、座席が通常の状態で配置される場合にも、本実施形態に係る座席用仕切具1は使用可能である。
【0025】
そこで、座席用仕切具1は、図3に示すように、一端14が側方仕切本体2の第1取付位置10に固定され、他端15が前方の第1車両内装部材の第2取付位置12に固定される第1固定手段13と、一端24が側方仕切本体2の第3取付位置20に固定され、他端25が後方の第2車両内装部材の第4取付位置22に固定される第2固定手段23とを備える。側方仕切本体2の第1取付位置10は、第1車両内装部材の第2取付位置12よりも下方かつ車両後方に位置し、側方仕切本体2の第3取付位置20は、第2車両内装部材の第4取付位置22よりも下方かつ車両前方に位置する。第1および第2固定手段13,23は緊張状態で固定される。
【0026】
図4を参照して、第1および第3取付位置10,20の前後方向および上下方向の位置について説明する。第1取付位置10の前後方向の位置は、上記のように第2取付位置12よりも後方であればよく、例えば、側方仕切本体2の上縁6の前端の位置a1から上縁6の全長の1/15の位置a2〜1/2の位置c1までの範囲内、または、1/8の位置a3〜1/3の位置a4の範囲内とすることができる。第3取付位置20の前後方向の位置は、上記のよう第4取付位置22よりも前方であればよく、例えば、側方仕切本体2の上縁6の後端の位置b1から上縁6の全長の1/15の位置b2〜1/2の位置c1までの範囲内、または、1/8の位置b3〜1/3の位置b4の範囲内とすることができる。第1および第2取付位置10,20の上下方向の位置は、側方仕切本体2の上縁6の位置が、第2および第4取付位置12,22よりも下方であれば、側方仕切本体2の適切な任意の位置とすることができる。
【0027】
以上のように構成することで、第1および第2固定手段13,23が側面視で前後の斜め上方向S1,S2にそれぞれ延在し、緊張状態に張引されて固定されることで、大型犬等の突進等に対しても、座席間に設けた側方仕切本体2が車両前後左右方向にずれることを抑制することができる。
【0028】
車内には、前方の左右いずれかに配置される第1座席60と、その後方に配置される第2座席70が設けられる。第1および第2座席60,70の各シートバック61,71の上部には、それぞれヘッドレスト62,72が装着されている。当該ヘッドレスト62,72には、ステー63,73が一体に固定される。当該ステー63,73は、シートバック61,71の上部に着脱可能に差し込まれる。上記第1車両内装部材が前方の第1座席60のヘッドレスト62であり、上記第2車両内装部材が後方の第2座席70のヘッドレスト72とすることができる。図5は、第1固定手段13を第1座席60のヘッドレスト62のステー63に固定した様子を示す図である。図6は、第2固定手段23を第2座席70のヘッドレスト72のステー73に固定した様子を示す図である。図5に示すように、第1固定手段13の第1取付位置10は、第1座席60のシートバック61に干渉しないように設けられる。同様に、図6に示すように、第2固定手段23の第3取付位置20は、第2座席70のシートバック71に干渉しないように設けられる。
【0029】
側方仕切本体2の平面部7は、その表面が側方を向くように配置され、第1座席60のシートバック61と第2座席70のシートバック71との間に形成される側方の空間の一部を仕切るようになっている。このように仕切ることによって、ペットが、マット101を敷いた後部座席に隣接する、マット101を敷いていない第2座席70に乗り移ることを防ぐことができる。また、当該第2座席70に人が座った際には、ペットが人に飛び掛かってきたりすることを防ぐことができる。
【0030】
第1および第2固定手段13,23は、長さ調整具27により長さを調節可能な固定部材26を備える。固定部材26が長さが調節可能であることで、様々なタイプの車種の座席に本実施形態に係る座席用仕切具1を使用することができる。固定部材26は長さを調節して緊張状態に固定されることができる。
【0031】
固定部材26は、帯状の第1固定部材28および第2固定部材29で構成される。当該第1および第2固定部材28,29は、例えば可撓性の材料で形成される。第1固定部材28は、一端36にリング状の輪部37を備える。当該輪部37にはステー63,73が挿入されることができる。さらに第1固定部材28の他端46には、図7に示すような例えば硬質材料で形成されるバックル64の雌部47が設けられる。第2固定部材は、一端48にバックル64の雄部49を備え、他端56が側方仕切本体2に接着剤または縫合等により固定される。第1固定手段13の第1固定部材27の輪部37は、第1車両内装部材の第2取付位置12に固定され、第1固定手段27の第2固定部材28の他端56は、側方仕切本体2の第1取付位置10に固定される。第2固定手段23の第1固定部材27の輪部37は、第2車両内装部材の第4取付位置22に固定され、第2固定手段23の第2固定部材28の他端56は、側方仕切本体2の第3取付位置20に固定される。
【0032】
尚、第1固定部材27に長さ調節具29を設けてもよい。また、第1固定部材27にバックル64の雄部49を設け、第2固定部材28にバックル64の雌部47を設けてもよい。
【0033】
図8に示すように、座席用仕切具1は、一端44が側方仕切本体2に固定され、他端45が車両床部42に固定される第4固定手段43を備える。第4固定手段43も、第1および第2固定手段13,23と同様に、長さ調整具29により長さを調節可能な固定部材26を備える。また、第1固定部材27と第2固定部材28とが、バックル64により着脱可能に接続される。第1固定部材27のバックル64とは反対側の他端57には、留め具58が設けられる。当該留め具58を車両床部42に設けられたリング状のフック59に取付けることで、第1固定部材27が車両床部42に固定される。留め具58を設けることにより、リング状のフック59に容易に着脱することができる。第4固定手段43は、例えば側方仕切本体2の中央下部に1つ設けてもよいし、側方仕切本体2の下部の両隅に1つずつ設けるなど複数個設けてもよい。側方仕切本体2の下縁9に、第1固定部材27の大きなずれを抑える抑え部材65を設けてもよい。尚、上記のように車両床部42にフック59を設けてもよいが、第4固定手段43の方法としては、上記方法に限られず、第1固定部材27をシート等の既存の車両内装部材に固定すれば、車両100への加工が必要ないので好ましい。
【0034】
図9に示すように、側方仕切本体2の上縁6には、袋状の袋部66が設けられる。袋部66は、例えば布等を折り返して袋状にし、縫着部67で側方仕切本体部2の平面部7の上端を挟んで縫合することにより形成する。側方仕切本体2の袋部66内には、例えば硬質材料で形成される棒状の保形部材5が挿脱可能に挿入される。保形部材5の材質は特に限定されないが、硬質材料の例として、金属、樹脂および木等が挙げられる。保形部材5の形状も円柱や四角柱等とすることができ特に限定されず、保形部材5の太さも適当な太さに適宜設定可能である。保形部材5を側方仕切本体2の上縁6に配置することで、側方仕切本体2の上縁6が弛む等して形状が崩れるのを防ぐことができる。また、座席用仕切具1を設置した状態では、保持部材5の両端部68,69は、第1座席60のシートバック61の側部75および第2座席70のシートバック71の側部76にそれぞれ当接する。第1および第2固定手段13,23が緊張状態で固定されることで、保持部材5は、シートバック61,71の側部75,76に押し付けられる。よって、保持部材5の支持の効果と、第1および第2固定手段13,23の前後斜め上方向への張引の効果との相乗効果により、側方仕切本体2の状態がより安定に保たれる。
【0035】
側方仕切本体2の形状に関し、図1等においては、第1および第2座席60,70のシートバック61,71をリクライニングしたときの角度を考慮し、左右の縁77,78を側面視で斜めに形成している。ただし、斜めに形成する角度は特に限定されない。また、側方仕切本体2の形状は、座席間を仕切れるものであれば、長方形や正方形、円形、楕円形等としたり、側方仕切本体2の各辺や角の一部または全部に丸みをもたせた形状としてもよい。すなわち、側方仕切本体2の形状は、機能性やデザイン性等を考慮して適宜設定可能である。側方仕切本体2の高さは、第1および第2固定手段13,23を固定する第1および第2内装部材11,21に合わせて適宜設定することができる。座席用仕切具1を設置したままリクライニングの角度を変更しても、必要に応じて固定部材26の長さを調節することで、簡便な調整で継続して座席用仕切具1を使用することができる。
【0036】
側方仕切本体2は、ペットが側方仕切本体2に衝突しても、衝撃を緩和し、怪我することを防ぐため可撓性材料によって形成されることが好ましい。可撓性材料としては、例えば、布、樹脂シートまたはその合成材料などが挙げられる。その中でも特に、ポリエステル製のネット状生地が一例として挙げられる。
【0037】
座席用仕切具1を使用する際には、第4固定手段43のバックル64により側方仕切本体2の下部を車両床部42に固定した後に、第1および第2固定手段13,23のバックル64により側方仕切本体2の上部を固定することで、座席用仕切具1を容易に設置することができる。ただし、第1および第2固定手段13,23により側方仕切本体2の上部を固定した後に、第4固定手段43により側方仕切本体2の下部を固定してもよい。
【0038】
座席用仕切具1を初めてまたは改めて設置する場合には、ヘッドレスト62,72のステー63,73をシートバック61,71から抜いた後に、ステー63,73にリング状の輪部37を嵌めるようにして再度ステー63,73をシートバック61,71に差し込むことで、第1固定部材27をヘッドレスト62,72に容易に取付けることができる。その後、上記方法により、側方仕切本体2をバックル64により固定し、長さ調整具29により、第1、第2および第4固定手段13,23,43が緊張状態になるように調整する。座席用仕切具1を長期間使用しない場合等に第1固定部材27も取外すときは、ステー63,73をシートバック61,71から抜いて、ステー63,73からリング状の輪部37を抜くことで、容易に取外すことができる。
【0039】
図10は、前方の第1座席60と当該第1座席60に隣接する第3座席80との間の隙間を塞ぐ前方仕切本体3を示す。当該前方仕切本体3を設けることで、ペットが前方の第1および第3座席60,80に進入することを防ぐことができる。座席用仕切具1は、側方仕切本体2に加えて前方仕切本体3を備えることができ、前方仕切本体3と側方仕切本体2とを取付ける取付手段4を備える。前方仕切本体3は、側方仕切本体2の平面部7から突設するようにして取付けられる。取付手段4は例えばスライドファスナとすることができる。前方仕切本体3の側縁の一方にはファスナの片側85が設けられ、図1に示すように、側方仕切本体2の平面部7には、ファスナのもう一方の片側86が設けられる。両ファスナ85,86を合わせ、ファスナのスライダ87をスライドさせることによって、前方仕切本体3を側方仕切本体2に容易に装着することができる。前方仕切本体3の不使用時には、逆の操作により、前方仕切本体3を容易に取外すこともできる。スライドファスナ87,88で前方仕切本体3が側方仕切本体2に強固に固定されるので、前方仕切本体3が前後方向へずれることを抑制できる。側方仕切本体2側のスライドファスナ86は、前方仕切本体3を側方仕切本体2に取付ける取付手段4の位置、すなわち側方仕切本体2側のスライドファスナ86の前後方向の位置は、側方仕切本体2の第1取付位置10よりも前方に位置するようにすると、ペットの乗車する場所の空間を広くとれるので好ましい。さらに、スライドファスナ86を、第1座席60のシートバック61のリクライニング角度に合わせて、図1中、上から左斜め下方向に延びるように設けることで、前方仕切本体3がより安定して固定される。
【0040】
前方仕切本体3は平面部8を有し、その形状は、図11に示すように、第1座席60に隣接する第3座席80との間の隙間を塞ぐことができれば特に限定されず、例えば下辺88が上辺89よりも短い台形状とすることができる。前方仕切本体3は、側方仕切本体2について述べた上記材料で形成することができる。ただし、前方仕切本体3の材料を、側方仕切本体2の材料よりも硬質の材料とすると、前方仕切本体3がより安定して固定される。
【0041】
前方仕切本体3の上部片隅には、第3固定手段33が設けられる。第3固定手段33の一端34は前方仕切本体3の第5取付位置30に固定され、他端35が第3車両内装部材の第6取付位置32に固定される。第5取付位置30は、第6取付位置32よりも下方かつ取付手段4に近い位置である。第3固定手段33は緊張状態で固定される。第3固定手段33はさらに、長さ調節具29により長さを調節可能な固定部材26を備え、固定部材26は長さを調節して緊張状態に固定される。第3車両内装部材が第3座席80のヘッドレスト82とすることができる。
【0042】
図12を参照して、第5取付位置30の前後方向および上下方向の位置について説明する。第5取付位置30の前後方向の位置は、上記のように第6取付位置32よりも取付手段4に近い位置であればよく、例えば、前方仕切本体3の上辺89の図中左端の位置d1から上辺89の全長の1/10の位置d2〜1/2の位置c2までの範囲内、または、1/5の位置d3〜1/2の位置c2の範囲内とすることができる。第5取付位置30の上下方向の位置は、前方仕切本体3の上辺89の位置が、第6取付位置32よりも下方であれば、前方仕切本体3の適切な任意の位置とすることができる。
【0043】
第3固定手段33の固定部材26も、第1および第2固定手段13,23と同様に、第1固定部材27および第2固定部材28を備え、第1固定部材27と第2固定部材28とが、バックル64により着脱可能に接続される。第1固定部材27は、バックル64とは反対側にリング状の輪部37を有し、当該輪部37にヘッドレスト82のステー83が挿入される。第3固定手段33の第1固定部材27のステー83への取付および取外しの方法は、第1および第2固定手段13,23の場合と同様である。
【0044】
座席用仕切具1は、一端54が前方仕切本体3に固定され、他端55が車両床部42に固定される、側方仕切本体2の第4固定手段43と同様な構成の、第5固定手段53を備える。第5固定手段53も、第4固定手段43と同様に、長さ調整具29により長さを調節可能な固定部材26を備える。また、第1固定部材27と第2固定部材28とが、バックル64により着脱可能に接続される。第1固定部材27のバックルとは反対側の他端57には、留め具58が設けられる。当該留め具58を車両床部42に設けられたリング状のフック59に取付けることで、第1固定部材27が車両床部42に固定される。留め具58を設けることにより、リング状のフック59に容易に着脱することができる。第5固定手段53は、前方仕切本体3の取付手段4とは反対側の下方隅部に設けることが好ましい。尚、上記のように車両床部42にフック59を設けてもよいが、第5固定手段53の方法としては、上記方法に限られず、第1固定部材27をシート等の既存の車両内装部材に固定すれば、車両100への加工が必要ないので好ましい。
【0045】
以上の構成により、前方仕切本体3は、第3固定手段33が前方仕切本体3から図10中左斜め上方向S3に延在し、緊張状態に張引されて固定され、また安定して固定された側方仕切本体2に取付手段4を用いて強固に固定されることで、側方仕切本体2の場合と同様に、大型犬等の突進等に対しても、車両前後左右方向にずれることが抑制される。
【0046】
このように本実施形態では、座席用仕切具1が、可撓性材料で形成される側方仕切本体2と、一端14が側方仕切本体2の第1取付位置10に固定され、他端15が前方の第1車両内装部材の第2取付位置12に固定される第1固定手段13と、一端24が側方仕切本体2の第3取付位置20に固定され、他端25が後方の第2車両内装部材の第4取付位置22に固定される第2固定手段23とを備え、第1取付位置10は、第2取付位置12よりも下方かつ車両後方に位置し、第3取付位置20は、第4取付位置22よりも下方かつ車両前方に位置し、第1および第2固定手段13,23が緊張状態で固定されることにより、第1および第2固定手段13,23が、側面視で前後の斜め上方向S1,S2にそれぞれ延在し、緊張状態で固定されるので、大型犬の突進等に対しても、座席間に設けた側方仕切本体2が車両前後左右方向にずれることを抑制することができる。
【0047】
第1および第2固定手段13,23が、長さを調節可能な固定部材26を備え、固定部材26が長さを調節して緊張状態に固定されることで、第1および第2固定手段13,23の緊張状態の調整を容易に行うことができる。
【0048】
第1車両内装部材が前方の第1座席60のヘッドレスト62であり、第2車両内装部材が後方の第2座席70のヘッドレスト72であることで、第1および第2固定手段13,23を簡便に取付けおよび取外しすることができる。
【0049】
座席用仕切具1が、前方の第1座席60と当該第1座席60に隣接する第3座席80との間の隙間を塞ぐ前方仕切本体3と、前方仕切本体3と側方仕切本体2とを取付ける取付手段4と、一端34が前方仕切本体3の第5取付位置30に固定され、他端35が第3車両内装部材の第6取付位置32に固定される第3固定手段33とを備え、第5取付位置30が、第6取付位置32よりも下方かつ取付手段4に近い位置であり、第3固定手段が緊張状態で固定されることで、第3固定手段33が、前方仕切本体3から図10中左斜め上方向S3に延在し、緊張状態で固定され、また安定して固定された側方仕切本体2に取付手段4を用いて強固に固定されるので、大型犬等の突進等に対しても、前方仕切本体3が車両前後左右方向にずれることを抑制することができる。
【0050】
第3固定手段33が、長さを調節可能な固定部材26を備え、固定部材26は長さを調節して緊張状態に固定されることで、前方仕切本体3の緊張状態の調整を容易に行うことができる。
【0051】
第3車両内装部材が第3座席80のヘッドレスト82であることで、第3固定手段33を簡便に取付けおよび取外しすることができる。
【0052】
座席用仕切具1が、側方仕切本体2の上縁6に設けた棒状の保形部材5を備えることで、側方仕切本体2の上縁6が弛む等して形状が崩れるのを防ぐことができる。また、保持部材5が、シートバック61,71に当接することで、側方仕切本体2の状態がより安定に保たれる。
【0053】
一端44が側方仕切本体2に固定され、他端45が車両床部42に固定される第4固定手段43を備えることで、側方仕切本体2の固定状態を安定させることができる。
【0054】
尚、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、第1〜第3固定手段13,23,33は、固定部材26がヘッドレスト62,72,82のステー63,73,83を巻くようにして固定するものであってもよい。また、側方仕切本体2の袋部66は、保持部材5が挿入できる構成であればよい。さらに、保持部材5を側方仕切本体2の上縁6に取付けられれば、接着剤で固定する等、袋部66以外の方法を用いてもよい。また、前方仕切本体3と側方仕切本体2とを取付ける取付手段4は、面ファスナやボタン等であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 座席用仕切具
2 側方仕切本体
3 前方仕切本体
4 取付手段
5 保形部材
6 上縁
10 第1取付位置
12 第2取付位置
13 第1固定手段
14 一端
15 他端
20 第3取付位置
22 第4取付位置
23 第2固定手段
24 一端
25 他端
26 固定部材
30 第5取付位置
32 第6取付位置
33 第3固定手段
34 一端
35 他端
42 車両床部
43 第4固定手段
44 一端
45 他端
60 第1座席
62 ヘッドレスト(第1車両内装部材)
70 第2座席
72 ヘッドレスト(第2車両内装部材)
80 第3座席
82 ヘッドレスト(第3車両内装部材)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12