特許第6797057号(P6797057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797057
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】パラシュート展開装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/19 20060101AFI20201130BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20201130BHJP
   B64D 17/72 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   F15B15/19
   F15B15/14 345Z
   B64D17/72
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-66105(P2017-66105)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-168927(P2018-168927A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】中村 博
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 泰彦
【審査官】 小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−256396(JP,A)
【文献】 特公昭46−036346(JP,B1)
【文献】 特表2010−540331(JP,A)
【文献】 特開平06−337031(JP,A)
【文献】 特開2004−330912(JP,A)
【文献】 特開2007−314050(JP,A)
【文献】 特開平11−078765(JP,A)
【文献】 特開2009−208693(JP,A)
【文献】 特開2003−247509(JP,A)
【文献】 特開2016−011079(JP,A)
【文献】 特開2009−227168(JP,A)
【文献】 特開2007−296868(JP,A)
【文献】 特開平07−179197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14−15/16,15/19
B64D 17/00−17/80
B60R 21/16−21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火薬を収容するカップ状のケースを有し、前記点火薬の燃焼により作動時に作動用ガスを発生する点火器と、
前記点火器により発生された前記作動用ガスにより推進し、端部に凹部が形成され一軸方向に延びたピストンと、を備え、
前記ケースに対して前記凹部が圧入されることにより前記ピストンが前記ケースに保持されていることを特徴とするパイロアクチュエータを用いたパラシュート展開装置であって、
前記ピストンは、前記推進の方向側にピストンヘッドを有しており、
前記ピストンヘッドの前記推進の方向側に配置した状態の前記パラシュートを前記ピストンとともに収納するパラシュート収納容器を備え、
前記ピストンの推進力を用いて前記パラシュートを前記パラシュート収納容器の外方に展開させるパラシュート展開装置
【請求項2】
前記凹部の、軸方向に沿う内壁部の開口側端部に面取りが施されていることを特徴とする請求項1に記載のパラシュート展開装置
【請求項3】
前記凹部の、軸方向に沿う内壁部に排出溝が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパラシュート展開装置
【請求項4】
前記凹部の、軸方向に沿う内壁部に、シボ加工による表面処理部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のパラシュート展開装置
【請求項5】
前記凹部の、軸方向に沿う内壁部において、前記軸方向に交差する方向に突出するリブが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のパラシュート展開装置
【請求項6】
前記リブが複数設けられている場合において、前記リブ同士が離間して環状に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のパラシュート展開装置
【請求項7】
前記ピストンは、前記凹部側に配置された第1部分と、前記凹部側と逆側に配置され前記第1部分と径が異なる第2部分とを有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のパラシュート展開装置
【請求項8】
前記第1部分は、前記第2部分よりも大径であることを特徴とする請求項7に記載のパラシュート展開装置
【請求項9】
前記第2部分はピストンロッドであることを特徴とする請求項7又は8に記載のパラシュート展開装置
【請求項10】
前記ピストンの推進方向を規制する筒状のハウジングをさらに備えることを特徴とする請求項7乃至9の何れか1項に記載のパラシュート展開装置
【請求項11】
前記点火器の前記ケースが前記ハウジング内に配置された状態で前記点火器を保持すると共に、前記ハウジングの一端部に固定されたホルダをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のパラシュート展開装置
【請求項12】
前記ハウジングと前記ホルダとが溶接により接合されていることを特徴とする請求項11に記載のパラシュート展開装置
【請求項13】
前記ハウジングは、その一端部において外側に延出されたフランジ部を有し、
前記ホルダは、前記フランジ部に嵌合される嵌合溝と、前記フランジ部をかしめ固定するためのかしめ鍔とを有することを特徴とする請求項11又は12に記載のパラシュート展開装置
【請求項14】
前記ピストンの前記第1部分の外壁部と前記ハウジングの内壁部との間に空隙が設けられ、前記空隙において前記第1部分の外壁部と前記ハウジングの内壁部との間に第1シール部材が設けられていることを特徴とする請求項10乃至13の何れか1項に記載のパラシュート展開装置
【請求項15】
前記ハウジングの一端部に前記点火器が固定され、前記ハウジングの他端部には前記ピストンの前記第2部分を挿通する孔部を有すると共に前記ピストンの推進時に前記第1部分を係止する係止部が設けられていることを特徴とする請求項10乃至14の何れか1項に記載のパラシュート展開装置
【請求項16】
前記係止部における前記孔部の周壁部と前記ピストンの前記第2部分の外壁部との間に第2シール部材が設けられていることを特徴とする請求項15に記載のパラシュート展開装置
【請求項17】
作動時に前記第1部分が前記係止部に衝突することによって発生する衝撃を緩衝する衝撃緩衝部材が、前記ピストンの前記第1部分と前記係止部との間に設けられていることを特徴とする請求項15又は16に記載のパラシュート展開装置
【請求項18】
前記ピストンの前記第1部分と前記第2部分との間に、前記第1部分よりも小径であって前記第2部分よりも大径である第3部分が形成されており、
前記第3部分の径は前記係止部の前記孔部の径よりも小さく、前記第1部分の径は前記孔部の径よりも大きいことを特徴とする請求項15乃至17の何れか1項に記載のパラシュート展開装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロアクチュエータ、パイロアクチュエータを備える展開装置、パイロアクチュエータを備える伸長装置、伸長装置を備えるエアバッグ装置、およびパイロアクチュエータを備えるボンネット持ち上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼ガス又は燃焼熱により作動するパイロアクチュエータは、例えば航空機においては、安全装置又は射出装置の動力源として用いられている。また、パイロアクチュエータは、その他の用途として、例えば車両用の人員拘束装置、衝突緩和のための歩行者保護用のボンネット持ち上げ装置、およびステアリングホイールを引き込む装置等にも使用されている。このようなパイロアクチュエータとしては、作動によってピストンを押し出すタイプのものが知られている。上記のようなパイロアクチュエータにおいては、用途に応じて出力の制御又は動作不良の防止のために、作動前のピストンが動かないように所定の位置に配置する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ピストンを収容するケーシングに環状溝を形成し、当該環状溝にOリングを設けることが開示されている。このOリングによって、ピストンがケーシングに対して所定位置に固定され、当該ピストンが不慮に変位することが防止される、とのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−247509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、環状溝を形成し、当該環状溝にOリングを設けてピストンを固定するという方法が、部品点数の増加、構造の複雑化および製造工程の複雑化を招来していた。
【0006】
そこで、本発明は、構造が簡単で部品点数を増加させることなくピストンを保持することが可能なパイロアクチュエータ、パイロアクチュエータを備える展開装置、パイロアクチュエータを備える伸長装置、伸長装置を備えるエアバッグ装置、およびパイロアクチュエータを備えるボンネット持ち上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係るパラシュート展開装置は、点火薬を収容するカップ状のケースを有し、前記点火薬の燃焼により作動時に作動用ガスを発生する点火器と、前記点火器により発生された前記作動用ガスにより推進し、端部に凹部が形成され一軸方向に延びたピストンと、を備え、前記ケースに対して前記凹部が圧入されることにより前記ピストンが前記ケースに保持されているパイロアクチュエータを用いたものであって、前記ピストンヘッドの前記推進の方向側に配置した状態の前記パラシュートを前記ピストンとともに収納するパラシュート収納容器を備え、前記ピストンの推進力を用いて前記パラシュートを前記パラシュート収納容器の外方に展開させるものである。
【0008】
上記(1)の構成によれば、点火器のケースに対してピストンの凹部が圧入されることで当該ピストンがケースに保持される。これによって、簡単な構造で且つ部品点数を増加させることなくピストンを所定位置に固定することが可能となる。
【0009】
また、上記の構成によれば、圧入圧力又は圧入深さを変えることによって、ケースの外壁とピストンの凹部の内壁とで形成される燃焼室の体積を変えることができる。これにより、パイロアクチュエータの出力(つまりピストンの推進力)を容易に調整することが可能となる。
【0010】
(2) 上記(1)のパラシュート展開装置においては、前記凹部の、軸方向に沿う内壁部の開口側端部に面取りが施されていることが好ましい。面取りはカット面又はR面であってもよい。
【0011】
上記(2)の構成によれば、ケースにピストンの凹部を圧入する際に当該凹部の内壁部がケースに引っ掛かり難くなる。また、ケースの接触による欠けが生じ難くなる。
【0012】
(3) 上記(1)又は(2)のパラシュート展開装置においては、前記凹部の、軸方向に沿う内壁部に排出溝が設けられていることが好ましい。
【0013】
上記(3)の構成によれば、ケースにピストンの凹部を圧入する際に当該凹部内の空気を排出溝から逃すことができるので、圧入し易くなる。
【0014】
(4) 上記(1)乃至(3)のパラシュート展開装置においては、前記凹部の、軸方向に沿う内壁部に、シボ加工による表面処理部が形成されていてもよい。
【0015】
上記(4)の構成によれば、ケースにピストンの凹部を圧入する際に当該凹部内の空気を、シボ加工により粗面となった表面処理部から逃すことができるので、圧入し易くなる。
【0016】
(5) 上記(1)乃至(4)のパラシュート展開装置においては、前記凹部の、軸方向に沿う内壁部に、前記軸方向に交差する方向に突出するリブが設けられていてもよい。
【0017】
上記(5)の構成によれば、リブによってケースの外壁部と凹部の内壁部との間に空間を形成することができる。これによって、凹部内の空気を上記空間から逃すことができるので、圧入し易くなる。
【0018】
(6) 上記(5)のパラシュート展開装置においては、前記リブは部分的に環状に形成されていることが好ましい。
【0019】
上記(6)の構成によれば、部分的に環状に形成されたリブによってケースの外壁部と凹部の内壁部との間に必要最小限の空間を形成することができる。これによって、圧入の際に凹部内の空気を上記空間から逃すことができるので、圧入し易くなる。
【0020】
(7) 上記(1)乃至(6)のパラシュート展開装置においては、前記ピストンは、前記凹部側に配置された第1部分と、前記凹部側と逆側に配置され前記第1部分と径が異なる第2部分とを有してもよい。
【0021】
上記(7)の構成によれば、ピストンを収容する筒状のハウジングを採用し且つ当該ハウジング内に係止部を設ける場合に、第1部分の径が第2部分の径よりも大きければ、ピストンの推進時に上記第1部分と第2部分との段差の部分を係止部に当接させてピストンがハウジング内から抜け切らないようにすることができる。すなわち、第1部分と第2部分との段差の部分にストッパー機能を持たせることが可能となる。
【0022】
(8) 上記(7)のパラシュート展開装置においては、前記第1部分は、前記第2部分よりも大径であることが好ましい。
【0023】
上記(8)の構成によれば、上述の通り、ピストンがハウジング内から抜け切らないようにすることができる。
【0024】
(9) 上記(7)又は(8)のパラシュート展開装置においては、前記第2部分はピストンロッドであることが好ましい。
【0025】
上記(9)の構成によれば、ピストンの第2部分を細長形状のピストンロッドとすることにより、ピストン全体を軽量化することができる。
【0026】
(10) 上記(7)乃至(9)のパラシュート展開装置は、前記ピストンの推進方向を規制する筒状のハウジングをさらに備えることが好ましい。
【0027】
上記(10)の構成によれば、ハウジングによってピストンの推進方向が規制できるので、パイロアクチュエータの出力方向を一定とすることができる。
【0028】
(11) 上記(10)のパラシュート展開装置は、前記点火器の前記ケースが前記ハウジング内に配置された状態で前記点火器を保持すると共に、前記ハウジングの一端部に固定されたホルダをさらに備えることが好ましい。
【0029】
上記(11)の構成によれば、ホルダによって、ハウジングに対する点火器のケースの位置、より厳密には燃焼室の位置を安定して固定することができる。
【0030】
(12) 上記(11)のパラシュート展開装置においては、前記ハウジングと前記ホルダとが溶接により接合されていることが好ましい。
【0031】
上記(12)の構成によれば、ハウジングをホルダに対して強固に固定することができる。
【0032】
(13) 上記(11)又は(12)のパラシュート展開装置においては、前記ハウジングは、その一端部において外側に延出されたフランジ部を有し、前記ホルダは、前記フランジ部に嵌合される嵌合溝と、前記フランジ部をかしめ固定するためのかしめ鍔とを有してもよい。
【0033】
上記(13)の構成によれば、ハウジングをホルダに対して強固に固定することができる。
【0034】
(14) 上記(10)乃至(13)のパラシュート展開装置においては、前記ピストンの前記第1部分の外壁部と前記ハウジングの内壁部との間に空隙が設けられ、前記空隙において前記第1部分の外壁部と前記ハウジングの内壁部との間に第1シール部材が設けられていることが好ましい。
【0035】
上記(14)の構成によれば、ピストンのハウジング内における推進により当該ハウジング内に生じる圧縮気体が第1部分の外壁部とハウジングの内壁部との隙間から流出することを第1シール部材によって防止することができる。これにより、ピストンの推進力が低下することを回避することができる。
【0036】
(15) 上記(10)乃至(14)のパラシュート展開装置においては、前記ハウジングの一端部に前記点火器が固定され、前記ハウジングの他端部には前記ピストンの前記第2部分を挿通する孔部を有すると共に前記ピストンの推進時に前記第1部分を係止する係止部が設けられていることが好ましい。
【0037】
上記(15)の構成によれば、点火器により発生する燃焼ガス又は燃焼熱によりピストンを推進させることができる。そして、ピストンの第2部分を孔部を介して外方に向けて推進させることができる。また、ピストンの推進時に当該ピストンの第1部分を係止部に当接させてピストンがハウジング内から抜け切らないようにすることができる。
【0038】
(16) 上記(15)のパラシュート展開装置においては、前記係止部における前記孔部の周壁部と前記ピストンの前記第2部分の外壁部との間に第2シール部材が設けられていることが好ましい。
【0039】
上記(16)の構成によれば、ハウジング内に生じる圧縮気体が第2部分の外壁部と孔部の周壁部との隙間から流出することを第2シール部材によって防止することができる。これにより、ピストンの推進力が低下することを回避することができる。
【0040】
(17) 上記(15)又は(16)のパラシュート展開装置においては、作動時に前記第1部分が前記係止部に衝突することによって発生する衝撃を緩衝する衝撃緩衝部材が、前記ピストンの前記第1部分と前記係止部との間に設けられていることが好ましい。
【0041】
上記(17)の構成によれば、作動時にピストンの第1部分が衝撃緩衝部材に当接するので、当該第1部分および係止部に対する衝撃を緩和することができる。
【0042】
(18) 上記(11)乃至(17)のパラシュート展開装置においては、前記ピストンの前記第1部分と前記第2部分との間に、前記第1部分よりも小径であって前記第2部分よりも大径である第3部分が形成されており、前記第3部分の径は前記係止部の前記孔部の径よりも小さく、前記第1部分の径は前記孔部の径よりも大きくてもよい。
【0043】
上記(18)の構成によれば、ピストンの推進時に第1部分を係止部に当接させて当該ピストンがハウジング内から抜け切らないようにすることができる。また、ピストンの第2部分の外壁と孔部の内周壁との隙間が比較的広いため、ピストンの第2部分が孔部の内周壁に接触することなく外方に向けてスムーズに推進することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、構造が簡単で部品点数を増加させることなくピストンを保持することが可能なパイロアクチュエータ、パイロアクチュエータを備える展開装置、パイロアクチュエータを備える伸長装置、伸長装置を備えるエアバッグ装置、およびパイロアクチュエータを備えるボンネット持ち上げ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の一実施形態に係るパイロアクチュエータの構成を示す断面図である。
図2】(a)はピストンの凹部に設けられた排出溝を示す断面図であり、(b)はピストンの凹部に設けられた表面処理部を示す断面図であり、(c)はピストンの凹部に設けられたリブを示す断面図である。
図3】ピストンの変形例を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るパイロアクチュエータを備えたパラシュート展開装置の構成を示す図である。
図5】パラシュート展開装置の変形例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るパイロアクチュエータを備えたエアバッグ装置の作動前の状態を示す断面図である。
図7図6のエアバッグ装置の作動後の状態を示す断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るパイロアクチュエータを備えたボンネット持ち上げ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
<パイロアクチュエータ>
以下、本発明の一実施形態に係るパイロアクチュエータについて、図面を参照しつつ説明する。
【0055】
図1に示すように、本実施形態のパイロアクチュエータ1は、点火器2と、一軸方向に延びるピストン3と、当該ピストン3の推進方向を規制する筒状のハウジング5と、点火器2を保持するホルダ6とを備えている。
【0056】
点火器2は、点火薬(図示略)を収容するカップ状のケース2aを有し、当該点火薬の燃焼により作動時に作動用ガスを発生させるものであり、スクイブと呼ばれることもある。また、点火器2は、インフレータ又はマイクロガスジェネレータに組み込んで使用可能なものでもある。ここで、ケース2aは、例えばステンレス、アルミニウム、銅、鉄等の金属等で形成される。また、点火器2は、通電を行うための一対の端子ピン2bと、当該一対の端子ピン2bに接続されたニクロム線等からなる抵抗体(図示略)とを備えている。なお、上記点火薬としては、点火薬の機能を果すものであればいかなるものでも用いることができるが、一般にZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、ZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が用いられる。
【0057】
ピストン3の材質は、例えば金属、金属合金、樹脂、樹脂および無機繊維(ガラス、炭素繊維等)又は金属の複合材等である。ピストン3は、ハウジング5内に推進可能に設けられ、点火器2側に配置され当該ハウジング5の内径とほぼ同じ外径の第1部分3aと、第1部分3aよりも小径な第2部分3dと、第2部分3dの先端に設けられたピストンヘッド3eとを有している。本実施形態では、第2部分3dはピストンロッドである。ピストンヘッド3eの外径は、用途によって、ハウジング5の外径と同じにしてもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
ハウジング5の材質は、例えば金属、金属合金、樹脂、樹脂および無機繊維(ガラス、炭素繊維等)又は金属の複合材等である。ハウジング5は、ピストンヘッド3e側に、ピストン3の推進時に当該ピストン3の第1部分3aを係止する係止部5aを有している。この係止部5aには、ピストン3の第2部分3dが挿通される孔部5bが設けられている。ピストン3の第2部分3dの一部およびピストンヘッド3eはハウジング5外に配置されている。
【0059】
ピストン3の第1部分3aには、点火器2側において凹部3bが形成されている。点火器2のケース2aに対して凹部3bが圧入されることにより、ピストン3がケース2aに保持され固定されている。これによって、ケース2aと凹部3bとに囲まれた空間に燃焼室4が形成される。
【0060】
ここで、図2(a)に示すように、ピストン3の凹部3bの、軸方向に沿う内壁部に排出溝15が設けられる。これにより、ケース2aに凹部3bを圧入する際に当該凹部3b内の空気を排出溝15から逃すことができるので、圧入し易くなる。同様の観点で、図2(b)に示すように、凹部3bの、軸方向に沿う内壁部にシボ加工により粗面となる表面処理部16を形成してもよいし、図2(c)に示すように、凹部3bの、軸方向に沿う内壁部において当該軸方向に垂直な方向にそれぞれ突出し部分的に環状に並ぶように形成された複数のリブ17を設けてもよい。なお、一変形例として、リブ17は、1つだけ設けられるものであってもよい。また、リブ17を複数形成する場合、凹部3bの内壁部において環状に並ぶように設けられていなくてもよい。また、リブ17は、軸方向に沿う内壁部において当該軸方向に交差する方向に突出するように形成されていてもよい。
【0061】
また、図1および図2(a)〜(c)に示したように、凹部3bの、ピストン3の軸方向に沿う内壁部の開口側端部に面取り3cが設けられている。この面取り3cは、例えばカット面又はR面であってもよい。
【0062】
点火器2は、ケース2aがハウジング5内に配置された状態でホルダ6により保持されている。ハウジング5の一端部(係止部5a側と反対側の端部)は点火器2により閉じられている。ホルダ6はハウジング5の上記一端部に固定されている。詳細には、ハウジング5は、上記一端部において軸方向外側に延出されたフランジ部5cを有している。ホルダ6は、フランジ部5cに嵌合される嵌合溝6bと、フランジ部5cをかしめ固定するためのかしめ鍔6aとを有している。このような構成において、ホルダ6の嵌合溝6bがハウジング5のフランジ部5cに嵌合された状態で当該フランジ部5cがかしめ鍔6aによりかしめ固定されることによって、ハウジング5がホルダ6に固定されている。なお、ハウジング5とホルダ6とを溶接により接合してもよい。ホルダ6は例えば金属、金属合金、樹脂、樹脂および無機繊維(ガラス、炭素繊維等)、金属の複合材、又は熱可塑性樹脂で構成されている。この熱可塑性樹脂としては、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PA6(ナイロン6)、PA66(ナイロン66)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPO(ポリフェニレンオキシド)等の合成樹脂にガラス繊維等を混合したもの等が好ましい。また、ホルダ6は熱硬化性樹脂で常温硬化型若しくは熱硬化型のもので構成されていてもよく、必要に応じて、さらに硬化剤、硬化促進剤等を配合してもよい。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ケイ素樹脂等が挙げられる。
【0063】
ピストン3の第1部分3aの外周部には環状溝7が設けられている。この環状溝7には、環状の第1シール部材8が設けられている。第1シール部材8としては、例えばOリングを採用することができる。このような構成により、ピストン3の第1部分3aの外壁部とハウジング5の内壁部との間が、ピストン3の停止時および推進時において第1シール部材8により塞がれるようになっている。ここで、一変形例として、環状溝7および第1シール部材8は設けられていなくてもよい。
【0064】
一方、係止部5aにおける孔部5bの周壁部には環状溝9が設けられている。この環状溝9には、環状の第2シール部材10が設けられている。第2シール部材10としては、例えばOリングを採用することができる。このような構成により、孔部5bの周壁部とピストン3の第2部分3dの外壁部との間が、ピストン3の停止時および推進時において第2シール部材10により塞がれるようになっている。ここで、一変形例として、環状溝9および第2シール部材10は設けられていなくてもよい。
【0065】
係止部5aの、ピストン3の第1部分3aが推進時に当接する面上に衝撃緩衝部材11が設けられている。衝撃緩衝部材11は、例えばゴム、ゲル又は発泡スチロール等により形成されている。第1部分3aが衝撃緩衝部材11に衝突する際に、当該衝撃緩衝部材11が弾性変形又は塑性変形することによって、第1部分3aおよび係止部5aに対する衝撃力が低減されるようになっている。なお、本実施形態では、衝撃緩衝部材11は環状に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば点状等の他の形状としてもよい。ここで、衝撃緩衝部材11は、ピストン3の第1部分3aの第2部分3d側に固設されていてもよいし、固定されずに、第1部分3aと係止部5aとハウジング5の内壁部とで囲まれた空間内に設けられていてもよい。
【0066】
以上のような構成を有するパイロアクチュエータ1において、所定量の電流が点火器2の端子ピン2bに供給されると、上記抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収容するケース2aを破裂させる。これによって、点火薬の燃焼により生じた熱粒子が燃焼室4に流れ込み、ピストン3を図1の矢印の方向に推進させる。なお、抵抗体に電流が流れてから点火器2が作動するまでの時間は、当該抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
【0067】
以上のように、本実施形態によれば、点火器2のケース2aに対してピストン3の凹部3bが圧入されることで当該ピストン3がケース2aに保持される。これによって、簡単な構造で且つ部品点数を増加させることなくピストン3を所定位置に固定することが可能となる。また、圧入圧力又は圧入深さを変えることによって、ケース2aの外壁と凹部3bの内壁とで形成される燃焼室4の体積を変えることができる。これにより、パイロアクチュエータ1の出力(つまりピストン3の推進力)を容易に調整することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、凹部3bの、ピストン3の軸方向に沿う内壁部の開口側端部に面取り3cが設けられていることによって、ケース2aに凹部3bを圧入する際に当該凹部3bの内壁部がケース2aに引っ掛かり難くなる。また、ケース2aとの接触による凹部3bの開口部の欠けが生じ難くなる。
【0069】
また、本実施形態では、ピストン3の第1部分3aの外壁部とハウジング5の内壁部との間が、ピストン3の停止時および推進時において第1シール部材8により塞がれるようになっている。これにより、ハウジング5内の湿度を一定に保持することができ、点火器2内の点火薬などを外気の湿気から保護することができる。また、ピストン3のハウジング5内における推進により当該ハウジング5内に生じる圧縮気体が第1部分3aの外壁部とハウジング5の内壁部との隙間から流出することを防止することができる。これによって、ピストン3の推進力が低下することを回避することができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、孔部5bの周壁部とピストン3の第2部分3dの外壁部との間が、ピストン3の停止時および推進時において第2シール部材10により塞がれるようになっている。これにより、ハウジング5内の湿度を一定に保持することができ、点火器2内の点火薬などを外気の湿気から保護することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0072】
上記実施形態では、ピストン3の構成要素として、第1部分3aおよび第2部分3dを採用したが、図3に示すようなピストン21を採用してもよい。このピストン21は、第1部分21aと第2部分21bとの間に、第1部分21aの最大径よりも小径であって第2部分21bよりも大径である第3部分21cを有する。第3部分21cの径は、ハウジング20の係止部20aの孔部20bの径よりも小さく、第1部分21aの径は孔部20bの径よりも大きくなっている。なお、第1部分21aは、ハウジング20の内径とほぼ同じ外径を有する本体部21dと、当該本体部21dよりも小径であって点火器のケースに圧入される凹部21eとで構成されている。このような構成によれば、ピストン21の推進時に第1部分21aを係止部20aに当接させて当該ピストン21がハウジング20内から抜け切らないようにすることができる。また、ピストン21の第2部分21bの外壁と孔部20bの内周壁との空間が比較的広いため、第2部分21bが孔部20bの内周壁に接触することなく外方に向けてスムーズに推進することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、ピストン3の推進力の発生源として、点火器2単体を採用することとしたが、これに限定されるものではなく、当該点火器2を備えたディスク型のガス発生器、シリンダー型のガス発生器、およびマイクロガスジェネレータ等の全てのガス発生器をピストン3の推進力の発生源として用いることができる。
【0074】
<パラシュート展開装置>
次に、パイロアクチュエータを備えたパラシュート展開装置について説明する。図4に示すように、パラシュート展開装置50は、パラシュート56、57と、展開前のパラシュート56、57を収納するカップ状のパラシュート収納容器51と、パラシュート収納容器51の内側底部に設けられた支持柱52と、内部に上述のパイロアクチュエータ1と同様のパイロアクチュエータを備え、支持柱52に連結された3つの管部53、54、55とを備えている。管部53内にはパイロアクチュエータ100が設けられ、管部54内にはパイロアクチュエータ101が設けられ、管部55内にはパイロアクチュエータ102が設けられている。管部53、54、55は、例えば傘骨のように配置されている。
【0075】
管部53には、一部が露出した状態で発射体53aが挿入されており、同様に、管部54には、一部が露出した状態で発射体54aが挿入され、管部55には、一部が露出した状態で発射体55aが挿入されている。パラシュート56は、紐58により発射体53aに連結されていると共に紐59により発射体55aに連結されている。また、パラシュート57は、紐60により発射体55aに連結されていると共に紐61により発射体54aに連結されている。
【0076】
このような構成においてパイロアクチュエータ100のピストンの推進により発射体53aが射出され、パイロアクチュエータ101のピストンの推進により発射体54aが射出され、パイロアクチュエータ102のピストンの推進により発射体55aが射出されることで、紐58、59、60、61が射出方向に引っ張られ、パラシュート56、57が展開される。
【0077】
このように、パラシュート展開装置50によれば、パイロアクチュエータ100、101、102を備えているので、上述と同様に、簡単な構造で且つ部品点数を増加させることなくピストンを所定位置に固定することが可能となる。また、圧入圧力又は圧入深さを変えることにより燃焼室の体積を変えることができる。これにより、パイロアクチュエータ100、101、102の出力(つまりピストンの推進力)を容易に調整することが可能となる。したがって、パラシュート56、57の展開力を容易に調整することができる。
【0078】
ここで、以下に説明するように、パラシュート展開装置50の変形例を採用することもできる。図5に示すように、変形例に係るパラシュート展開装置90は、上述のパイロアクチュエータ1と同様のパイロアクチュエータ200とパラシュート86とを備えている。パイロアクチュエータ200は、点火薬(図示略)を収容するカップ状のケース85を有する点火器84と、凹部82および当該凹部82と一体的に形成されたピストンヘッド83を有するピストン81と、ピストン81を収容し当該ピストン81の推進方向を規制する有底筒状のハウジング80とを備えている。
【0079】
パラシュート86は、ピストンヘッド83上に配置された状態でハウジング80内に収納されている。このような構成において、ピストン81の推進によりパラシュート86を直接押し出して展開させることができる。なお、ハウジング80の開口端部は初期状態で蓋87により閉じられており、パラシュート86の押し出しにより上記開口端部から外れるようになっている。
【0080】
<伸長装置およびこれを備えたエアバッグ装置>
次に、パイロアクチュエータを備えた伸長装置および当該伸長装置を備えたエアバッグ装置について説明する。
【0081】
図6に示すように、エアバッグ装置70は、上述のパイロアクチュエータ1とほぼ同様のパイロアクチュエータ300と、エアバッグ62と、当該エアバッグ62内に設けられ、一端がエアバッグ62の内部に接続されて他端がパイロアクチュエータ300のピストン67に接続された伸縮可能な伸長装置63とを備える。なお、エアバッグ装置70はエアバッグ62を収納するエアバッグ収納容器(図示略)を備えてもよい。伸長装置63は、初期状態において収縮した状態でエアバッグ62内に収納され、落下時にエアバッグ62内で伸長するように構成されている。また、伸長装置63は、航空機の一例であるドローン(図示略)の下部に設けられる複数の脚部等として用いることが可能なものであり、ドローンが制御不能に陥った場合等の緊急時に作動して伸長し、外部からの衝撃を吸収するものである。
【0082】
伸長装置63の一端(上端)は、連結部材64によりエアバッグ62の内部に接続されている。伸長装置63は、連結部材64に連結された筒状部材65と、筒状部材65に内挿され、長さ方向にスライド可能な筒状部材66とを備えている。ピストン67は、上記の筒状部材66に内挿され、長さ方向にスライド可能となっている。ピストン67の先端には、ドローン等が着地する等した場合に接地する部分となり、逆止弁付きの外気吸入口68aを有するリング状部材68が設けられている。
【0083】
筒状部材65は、連結部材64側の端部に底部が形成された部材である。筒状部材65の底部の中央には、ピストン67をガスにより図6下方に押し出すためのパイロアクチュエータ300の点火器69が固設されている。筒状部材65、66は、金属、金属合金、プラスチック、又は樹脂で形成されたものであり、テレスコピック構造となるように連結されている。本実施形態では、筒状部材65、66は、例えばゴム又はカーボン等の可撓性材料により形成されることが好ましい。筒状部材65、66は、筒状部材65の内径と筒状部材66の外径とが略一致するように形成されている。そして、筒状部材66が筒状部材65内に収納されることで伸長装置63全体が収縮し、筒状部材66が筒状部材65内から突出することで伸長装置63全体が伸長する。
【0084】
ピストン67は、金属、金属合金、プラスチック、又は樹脂により形成可能である。本実施形態では、ピストン67は、例えばゴム又はカーボン等の可撓性を有する材料により形成されることが好ましい。このように、ピストン67および上述した筒状部材65、66が可撓性材料からなる場合、ピストン67および筒状部材65、66は、ドローンの墜落時又は衝突時の衝撃に対して曲げ変形又は歪み変形する。これによって、衝撃を吸収することができる。なお、ピストン67を炭素繊維のような複合材料で形成してもよい。また、ピストン67は、筒状部材66との間でテレスコピック構造となるように連結されている。また、筒状部材66とピストン67とは、筒状部材66の内径とピストン67の外径とが略一致するように形成されている。そして、ピストン67が筒状部材66内に収納されることで伸長装置63全体が収縮し、ピストン67が筒状部材66内から突出することで伸長装置63全体が伸長する。
【0085】
エアバッグ装置70に用いられるパイロアクチュエータ300のピストン67の構成は次の通りである。すなわち、ピストン67は、先端部に設けられた開口部67aと、開口部67aとエアバッグ62の内部空間62aとをピストン67の内部空間67bを介して連通する孔部67cとを備える。なお、開口部67aには図示しない逆止弁が設けられており、外部から吸入した外気が逆流しないようになっている。
【0086】
リング状部材68の内壁部は連結部材(図示略)を介してピストン67の先端に固定されている。また、リング状部材68の内壁部とピストン67の外壁部との間における空間が外気吸入口68aとなっている。外気吸入口68aは、伸長装置63の伸長時(換言すれば、エアバッグ62の展開時)において当該エアバッグ62の内部空間62aに外気を吸入する。外気吸入口68aには図示しない逆止弁が設けられており、外部から吸入した外気が逆流しないようになっている。また、リング状部材68の外側周囲には、エアバッグ62の一端部が取り付けられている。
【0087】
このような構成において、エアバッグ62は、展開前は、図6に示すように蛇腹状に折り畳まれており、展開後は、図7に示すように略球状に膨張する。エアバッグ62には孔62b(図7参照)が設けられており、エアバッグ62の内部空間62aに導入された外気の一部が必要に応じて外部に流出することができるようになっている。これにより、エアバッグ62の展開後において当該エアバッグ62の姿勢が安定する。また、孔62bの大きさを適切に調整しておけば、エアバッグ62が物に衝突した場合に反発力が大き過ぎて弾んでしまわないように、当該物に対する衝突時の内部空間62aのガス抜きの機能を実現することも可能である。
【0088】
続いて、伸長装置63を備えたエアバッグ装置70の動作について説明する。まず、(1)ドローンに搭載されている加速度センサ(図示略)によって所定以上の加速度(例えば、予め設定した落下していることが想定される加速度)が検出され、又は、(2)ドローンに搭載されている受信部において、操縦装置の送信部の操縦信号を所定時間以上受信不能になっている、等の状態に陥っている場合に、ドローンに搭載されている制御部(CPU、ROM、RAMなどを有したコンピュータ)からパイロアクチュエータ300の点火器69の作動信号が発信され、当該点火器69が作動する。それにより、ピストン67が図6の下方向に推進してエアバッグ62が展開し始める。このとき、内部空間62aは外気に対して負圧になるので、外気吸入口68aから外気が流入し始め、さらにエアバッグ62は展開を行う。そして、エアバッグ62の展開中は、外気に対して負圧状態が続くので、ピストン67が図7に示す位置まで伸び切るまで外気吸入口68aからさらに外気が流入する。
【0089】
ピストン67が伸び切った後は、孔部67cが開放され、開口部67aと内部空間62aとが連通する。これにより、外気が開口部67aから流入し、内部空間67bおよび孔部67cを介して内部空間62aに流入する。同時に、筒状部材66がテレスコピック式に伸長しつつエアバッグ62はさらに展開する。このときも、内部空間62aでは外気に対して負圧状態が続くので、筒状部材66が伸び切るまで外気吸入口68aおよび開口部67aから外気が内部空間62aに流入する。筒状部材66が伸び切った後、エアバッグ62の膨張は完了する。
【0090】
以上のように、エアバッグ装置70によれば、パイロアクチュエータ300を備えているので、上述と同様に、簡単な構造で且つ部品点数を増加させることなくピストン67を所定位置に固定することが可能となる。また、圧入圧力又は圧入深さを変えることにより燃焼室の体積を変えることができる。これにより、パイロアクチュエータ300の出力(つまりピストン67の推進力)を容易に調整することが可能となる。これによって、伸長装置63の伸長速さを調整できるので、エアバッグ62の展開の速さを容易に調整することができる。
【0091】
<ボンネット持ち上げ装置>
次に、パイロアクチュエータを備えたボンネット持ち上げ装置について説明する。図8に示すように、ボンネット持ち上げ装置130は、パイロアクチュエータ400と、車体140のボンネット141のフード部分の下部に接続された接続部材114とを備えている。接続部材114は、回動軸115により回動可能に後述のピストン111の第2部分111bの先端(上端)に設けられている。パイロアクチュエータ400は、上述のパイロアクチュエータ1と同様であるので詳しい説明は省略するが、点火薬(図示略)を収容するカップ状のケース113を有する点火器112と、第1部分111a、第2部分111bおよび凹部111cを有するピストン111と、ピストン111の第2部分111bを推進可能に挿通する孔部110aおよびピストン111の推進方向に対する垂直方向に設けられた複数の孔部110bを有すると共にピストン111の推進方向を規制する筒状のハウジング110とを備えている。
【0092】
このような構成において、車体140の例えばフロントバンパー等に設けられた衝突感知センサにより人間又は動物等の衝突が感知されると、パイロアクチュエータ400において上述と同様の方法によってピストン111が上方向に推進する。これにより、ボンネット141のフード部分が持ち上げられるので、人間等に対する衝撃が緩和される。また、人間等がボンネット141に衝突した際に、当該衝突による反力によりハウジング110内で生じる圧縮気体が孔部110bから流出されることで、人間等に対する衝撃がより緩和されるようになっている。
【0093】
以上のように、ボンネット持ち上げ装置130によれば、パイロアクチュエータ400を備えているので、上述と同様に、簡単な構造で且つ部品点数を増加させることなくピストン111を所定位置に固定することが可能となる。また、圧入圧力又は圧入深さを変えることにより燃焼室の体積を変えることができる。これにより、パイロアクチュエータ400の出力(つまりピストン111の推進力)を容易に調整することが可能となる。これによって、ボンネット141の持ち上げ力又は持ち上げ速さを容易に調整することができる。
【符号の説明】
【0094】
1、100、101、102、200、300、400 パイロアクチュエータ
2、69、84、112 点火器
2a、85、113 ケース
2b 端子ピン
3、21、67、81、111 ピストン
3a、21a、111a 第1部分
3b、21e、82、111c 凹部
3c 面取り
3d、21b、111b 第2部分
3e、83 ピストンヘッド
4 燃焼室
5、20、80、110 ハウジング
5a、20a 係止部
5b、20b、110a、110b 孔部
5c フランジ部
6 ホルダ
6a かしめ鍔
6b 嵌合溝
7、9 環状溝
8 第1シール部材
10 第2シール部材
11 衝撃緩衝部材
15 排出溝
16 表面処理部
17 リブ
21c 第3部分
21d 本体部
50、90 パラシュート展開装置
51 パラシュート収納容器
52 支持柱
53、54、55 管部
53a、54a、55a 発射体
56、57、86 パラシュート
58、59、60、61 紐
62 エアバッグ
62a、67b 内部空間
62b 孔
63 伸長装置
64 連結部材
65、66 筒状部材
67a 開口部
67c 孔部
68 リング状部材
68a 外気吸入口
70 エアバッグ装置
87 蓋
114 接続部材
115 回動軸
130 ボンネット持ち上げ装置
140 車体
141 ボンネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8