(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797062
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】成形天井及びその取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
B60R13/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-76670(P2017-76670)
(22)【出願日】2017年4月7日
(65)【公開番号】特開2018-176895(P2018-176895A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 正昭
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−207675(JP,A)
【文献】
特開2001−163123(JP,A)
【文献】
特開平11−301366(JP,A)
【文献】
特開2000−095037(JP,A)
【文献】
特開平11−048872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボデーを構成する複数のボデーパネルのうち前記車両ボデーの天井部を構成するルーフパネルの車室側に裏面を向けた状態で配置され、前記ボデーパネルとピラーガーニッシュとの間に配置される挟まれ部位を外縁部に有する成形天井であって、
前記挟まれ部位の裏側には、前記挟まれ部位から外側に張り出した張出片が裏側に折り返されてなる重なり部が固定されている。
【請求項2】
請求項1に記載の成形天井において、
前記重なり部には、前記張出片の一部を裏側に膨出させてなる隆起部が設けられている。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成形天井において、
前記張出片のうち折返方向の外側を向く面又は折返方向の内側を向く面には、前記張出片の幅方向に延びる1対のVノッチが設けられている。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1の請求項に記載の成形天井を前記車両ボデーに取り付けた成形天井の取付構造であって、
前記重なり部が前記ボデーパネルに当接して、前記挟まれ部位が前記ピラーガーニッシュに押し当てられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボデーの天井部を構成するルーフパネルの車室側に裏面を向けた状態で配置される成形天井及びその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の成形天井として、車両ボデーを構成するボデーパネル(例えば、ルーフパネル、ルーフサイドインナーパネル、ピラーインナーパネル等)と内装部材であるピラーガーニッシュとの間に配置される挟まれ部位を外縁部に備えるものが知られている。このような成形天井においては、ボデーパネル側に取り付けたスペーサーに挟まれ部位を当接させることによって、挟まれ部位をピラーガーニッシュに押し当てることが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4032337号(段落[0011]、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の成形天井では、スペーサーの取り付け位置が挟まれ部位に対してずれていると、ボデーパネルと成形天井の間を所定間隔以上に保つことが困難となる。その結果、挟まれ部位とピラーガーニッシュとの間に隙間が発生するという問題が起こり得た。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ピラーガーニッシュとの間に隙間が形成されることを抑制可能な成形天井及びその取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、車両ボデーを構成する複数のボデーパネルのうち前記車両ボデーの天井部を構成するルーフパネルの車室側に裏面を向けた状態で配置され、前記ボデーパネルとピラーガーニッシュとの間に配置される挟まれ部位を外縁部に有する成形天井であって、前記挟まれ部位の裏側には、前記挟まれ部位から外側に張り出した張出片が裏側に折り返されてなる重なり部が固定されている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の成形天井において、前記重なり部には、前記張出片の一部を裏側に膨出させてなる隆起部が設けられている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の成形天井において、前記張出片のうち折返方向の外側を向く面又は折返方向の内側を向く面には、前記張出片の幅方向に延びる1対のVノッチが設けられている。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のうち何れか1の請求項に記載の成形天井を前記車両ボデーに取り付けた成形天井の取付構造であって、前記重なり部が前記ボデーパネルに当接して、前記挟まれ部位が前記ピラーガーニッシュに押し当てられている。
【発明の効果】
【0010】
[請求項1,4の発明]
本発明に係る成形天井では、重なり部をスペーサーとしてボデーパネルに当接させることにより、挟まれ部位をピラーガーニッシュに押し当てることが可能となる。そして、本発明では、重なり部が挟まれ部位と一体に形成されているので、成形天井が車両ボデーに取り付けられたときにスペーサーが挟まれ部位に対してずれて配置されることがなくなる。その結果、挟まれ部位とボデーパネルとの間の間隔が担保されやすくなり、挟まれ部位をピラーガーニッシュに押し当て易くなる。これにより、ピラーガーニッシュとの間に隙間が形成されることを抑制可能となる。
【0011】
[請求項2の発明]
本発明では、隆起部の高さを異ならせることで、重なり部の厚みを容易に変更することが可能となる。これにより、ボデーパネルとピラーガーニッシュの間隔に対応した厚みを有する重なり部を容易に形成することが可能となる。
【0012】
[請求項3の発明]
本発明によれば、張出片の折り返しが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る成形天井を車室側から見た斜視図
【
図5】ルーフパネルに取り付けられた成形天井の(A)側断面図、(B)ヒレ部周辺の側断面図
【
図6】第2実施形態に係る成形天井における(A)ヒレ部の側断面図、(B)張出片の側断面図
【
図7】ルーフパネルに取り付けられた成形天井の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1に示されるように、本実施形態に係る成形天井10は、車両90の車両ボデー70に取り付けられる。具体的には、車両ボデー70は、ルーフパネル71、ルーフサイドインナーパネル72、ルーフサイドアウターパネル73、ピラーインナーパネル74、ピラーアウターパネル75等の複数のボデーパネル70Pを備えてなる(
図5(A),5(B)参照)。成形天井10は、ルーフパネル71に取り付けられて、車両90における車室91の天井部を構成する。なお、以下では、成形天井10において、車室91を向く側を表側と呼び、ルーフパネル71を向く側を裏側と呼ぶことにする。
【0015】
図2に示されるように、成形天井10は、平面視長方形状をなしている。詳細には、成形天井10は、ルーフパネル71の形状に対応させて中央部が裏側へ緩やかに膨出する形状に形成されている。なお、成形天井10は、シート材をプレス成形してなる。
【0016】
成形天井10の前端寄り部分には、ルームミラー92が挿通されるミラー挿通孔12、ルームランプ93が挿通されるランプ挿通孔13及びサンバイザー94が挿通されるサンバイザー挿通孔14が設けられている(ルームミラー92、ルームランプ93及びサンバイザー94については、
図1を参照)。また、成形天井10の側縁部には、アシストグリップ95(
図1参照)が挿通されるグリップ挿通孔15が複数形成されている。
【0017】
図2及び
図3(A)に示されるように、成形天井10の側縁部には、外側側方に突出するヒレ部21が設けられている。ヒレ部21は、車両90の内装部材であるピラーガーニッシュ81(
図1参照)と略等幅に形成されている。ヒレ部21は、本発明の「挟まれ部位」を構成し、後述するように、成形天井10がルーフパネル71に取り付けられたときに、ボデーパネル70P(
図5(B)の例では、ルーフサイドインナーパネル72)とピラーガーニッシュ81の間に配置される。
【0018】
図3(A)及び
図3(B)に示されるように、ヒレ部21の裏面には、重なり部22が固定されている。重なり部22は、ヒレ部21から更に外側側方に張り出した張出片25を、張出片25の表側が裏側を向くように内側へ折り返してなる(
図4(A)及び
図4(B)参照)。なお、重なり部22の固定は、接着剤や両面テープ等によって行われる。
【0019】
詳細には、
図4(A)及び
図4(B)に示されるように、張出片25の基端部における裏面には、張出片25の折り返しを容易にするためのVノッチ26が形成されている。Vノッチ26は、張出片25の幅方向に延在し、張出片25の張出方向に対をなして並べられている。なお、張出片25は、成形天井10の製造過程において、プレス成形後のシート材のうちトリミングで除去される部分が一部残されることによって形成される。
【0020】
本実施形態に係る成形天井10の構成に関する説明は以上である。次に、成形天井10のルーフパネル71への取り付けについて説明する。
【0021】
成形天井10をルーフパネル71に取り付けるには、成形天井10の裏面をルーフパネル71に向けた状態で、各種挿通孔12,13,14,15に挿通させたルームミラー92、ルームランプ93、サンバイザー94及びアシストグリップ95をルーフパネル71に固定する。すると、ルーフパネル71とルームミラー92、ルームランプ93等の部品とに成形天井10が挟まれて、成形天井10がルーフパネル71に固定される(
図5(A)参照)。
【0022】
本実施形態では、成形天井10がルーフパネル71に固定されると、
図5(B)に示されるように、ヒレ部21がボデーパネル70P(ルーフサイドインナーパネル72)とピラーガーニッシュ81の間に配置される。ヒレ部21の裏面に固定された重なり部22は、ボデーパネル70P(ルーフサイドインナーパネル72)に下方から当接する。その結果、ヒレ部21とボデーパネル70P(ルーフサイドインナーパネル72)との間が所定間隔以上に保たれ、ヒレ部21がピラーガーニッシュ81に押し当てられる。
【0023】
このように、本実施形態の成形天井10では、重なり部22をスペーサーとしてボデーパネル70P(ルーフサイドインナーパネル72)に当接させることにより、ヒレ部21をピラーガーニッシュ81に押し当てることが可能となる。そして、本実施形態では、重なり部22がヒレ部21と一体に形成されているので、成形天井10がルーフパネル71に取り付けられたときにスペーサーがヒレ部21に対してずれて配置されることがなくなる。その結果、ヒレ部21とボデーパネル70P(ルーフサイドインナーパネル72)との間の間隔が担保されやすくなり、ヒレ部21をピラーガーニッシュ81に押し当て易くなる。これにより、ピラーガーニッシュ81との間に隙間が形成されることを抑制可能となる。
【0024】
[第2実施形態]
図6(A)に示されるように、本実施形態の成形天井10Vは、重なり部22に裏側へ突出する隆起部23を備えた構成を有し、その他の構成については上記第1実施形態と同じになっている。隆起部23は、張出片25の一部を膨出させてなる。具体的には、
図6(B)に示されるように、張出片25が折り返される前に、張出片25の一部を表側に膨出させておく。そして、張出片25が折り返されると、隆起部23を有する重なり部22がヒレ部21の裏側に形成される。
【0025】
図7に示されるように、成形天井10Vがルーフパネル71に取り付けられると、重なり部22の隆起部23がボデーパネル70P(ルーフサイドインナーパネル72)に下方から当接する。その結果、上記第1実施形態と同様に、ヒレ部21とボデーパネル70P(ルーフサイドインナーパネル72)との間が所定間隔以上に保たれ、ヒレ部21がピラーガーニッシュ81に押し当てられる。
【0026】
本実施形態の成形天井10Vによれば、隆起部23の高さを異ならせることで、重なり部22の厚みを容易に変更することが可能となる。これにより、ボデーパネル70P(ルーフサイドインナーパネル72)とピラーガーニッシュ81の間隔に対応した厚みを有する重なり部22を容易に形成することが可能となる。
【0027】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0028】
(1)Vノッチ26は、1つだけであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0029】
(2)Vノッチ26は、張出片25の表側の面に形成されてもよい。
【0030】
(3)隆起部23は、張出片25の一部を厚肉にすることで形成されてもよい。
【0031】
(4)上記実施形態では、成形天井10の両側部の2箇所ずつにヒレ部21を備えて、そのヒレ部21がセンターピラーとリアピラーのピラーガーニッシュ81に押し当てられる構成を例示したが、成形天井10の両側部の1箇所ずつにヒレ部21を備えて、そのヒレ部21がセンターピラー又はリアピラーのピラーガーニッシュ81に押し当てられる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 成形天井
21 ヒレ部(挟まれ部位)
22 重なり部
23 隆起部
25 張出片
70 車両ボデー
70P ボデーパネル
71 ルーフパネル
81 ピラーガーニッシュ
90 車両
91 車室