(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797064
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】写真プロセスを使用して作製されるチップレス無線自動識別(RFID)
(51)【国際特許分類】
H05K 3/06 20060101AFI20201130BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20201130BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
H05K3/06 A
G06K19/077 200
H05K1/09 A
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-86331(P2017-86331)
(22)【出願日】2017年4月25日
(65)【公開番号】特開2017-204632(P2017-204632A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2020年4月14日
(31)【優先権主張番号】15/154,712
(32)【優先日】2016年5月13日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン・エイ・ブッチャー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・エイ・ギブソン
【審査官】
小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/073677(WO,A1)
【文献】
特開2016−062688(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0367620(US,A1)
【文献】
特開昭56−033995(JP,A)
【文献】
特公昭50−009302(JP,B1)
【文献】
特開2010−205927(JP,A)
【文献】
特開2011−131500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/09
H05K 3/02 − 3/06
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線自動識別(RFID)デバイスを形成する方法であって、
感光性化合物を含む層を基板上へコーティングすることであって、前記感光性化合物を含む層は1平方メートル当たり5.0ミリグラム(mg/m2)から150mg/m2の銀濃度を有する、コーティングすることと、
前記感光性化合物を含む層の第1の部分を光パターンへ光源から暴露して、前記感光性化合物を含む層の前記第1の部分を金属層へ変換し、一方で前記感光性化合物を含む層の第2の部分は前記光パターンへ暴露されないままであることと、
前記感光性化合物を含む層の前記第2の部分を除去して、前記金属層を前記基板上に残すことと、および、
RFID回路を前記金属層から形成することであって、前記RFID回路を前記金属層から形成することは、少なくとも1つのアンテナを形成することと、
完成したRFIDトランスポンダを形成すること、を備え、
完成したRFIDトランスポンダを形成した後、少なくとも1つのアンテナは、アンテナの電気伝導性を増大または強化する追加の導電性構造を含まず、前記少なくとも1つのアンテナに対して酸化処理を行わない、方法。
【請求項2】
前記光源からパターン化されたマスクまたはレチクルを介して光を伝送することにより前記光パターンを形成することを、さらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光パターンを、前記感光性化合物を含む層上へ、レーザからのレーザビームを使用して直接的に書き込むことにより、前記光パターンを形成することを、さらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属層から前記少なくとも1つのアンテナを形成することは、送信アンテナおよび受信アンテナのうちの少なくとも1つを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記RFID回路を前記金属層から前記形成することは、マルチ共振器を前記金属層から形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記感光性化合物はハロゲン化銀である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属層は100ナノメートル〜800ナノメートルの厚さを有する銀層である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記感光性化合物を含む層は、50mg/m2から150mg/m2の銀濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記感光性化合物を含む層は、100mg/m2から150mg/m2の銀濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
無線自動識別(RFID)デバイスを形成する方法であって、
ハロゲン化銀を含む層を基板上へコーティングすることであって、前記ハロゲン化銀を含む層は1平方メートル当たり5.0ミリグラム(mg/m2)から150mg/m2の銀濃度を有する、コーティングすることと、
前記ハロゲン化銀を含む層の第1の部分を光パターンへ光源から暴露して、前記ハロゲン化銀を含む層の前記第1の部分を金属層へ変換し、一方で前記ハロゲン化銀を含む層の第2の部分は前記光パターンへ暴露されないままであることと、
前記ハロゲン化銀を含む層の前記第2の部分を除去して、前記金属層を前記基板上に残すことと、および、
RFID回路を形成することであって、前記RFID回路はアンテナおよび前記金属層から形成されるマルチ共振器のうちの少なくとも1つを備える、形成することと、
完成したRFIDトランスポンダを形成すること、を備え、
完成したRFIDトランスポンダを形成した後、少なくとも1つのアンテナは、アンテナの電気伝導性を増大または強化する追加の導電性構造を含まず、前記少なくとも1つのアンテナに対して酸化処理を行わない、方法。
【請求項11】
前記光源からパターン化されたマスクまたはレチクルを介して光を伝送することにより前記光パターンを形成することを、さらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記光パターンを前記ハロゲン化銀上へレーザからのレーザビームを使用して直接的に書き込むことにより、前記光パターンを形成することを、さらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記金属層は、100ナノメートルから800ナノメートルの厚さを有する銀層である、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記ハロゲン化銀を含む層は、50mg/m2から150mg/m2の銀濃度を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ハロゲン化銀を含む層は、100mg/m2から150mg/m2の銀濃度を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記金属層から前記RFID回路を形成することは、さらに、マルチ共振器を形成する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本教示は、一般的に、チップレス無線自動識別(RFID)タグに関し、より具体的には、RFIDタグを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線自動識別(RFID)技術は、在庫追跡、損失防止、および、他の用途においての使用が、ますます一般的になってきている。RFIDシステムは、物体上に置かれる応答器またはタグ、および、タグにより送信される情報を無線で受信する質問器または読取器を含んでよい。RFIDタグは、電池など局所的な電源を含むアクティブタグとして、または、タグ内部でアンテナに電流を誘導する読取器により生成される電磁波により始動するパッシブタグとして、大まかに分類され得る。
【0003】
RFIDは、チップまたは集積回路(IC)の形態であってよい電子回路を含み得る。チップは、読取器と通信されるデータを保存してよい。対照的に、チップレスRFIDタグは、集積回路も離散的なアクティブ電子コンポーネントも有さずに、基板上へ直接的に印刷されてよく、チップ化されたRFIDタグと比較して低価格を実現し得る。
【0004】
チップレスRFIDタグは、質問器の出力を傍受する受信アンテナ、質問器により受信されるデータを広める送信アンテナ、および、受信アンテナと送信アンテナとの間に電気的に結合される複数または一連の共振器(すなわち、マルチ共振器)を含んでよい。使用中、読取器は、無線周波数の広帯域またはスペクトルを出力してよい。マルチ共振器の構成に依存して、無線周波数のうちの1つ以上は、受信アンテナにより傍受されマルチ共振器に共振させる周波数依存のアンテナ負荷を含んでよい。共振は、送信アンテナにより送信され質問器により受信され得る信号を修正する。各RFIDタグは、導電膜をエッチングすることにより符号化されてよく、結果的にマルチ共振器を形成するパターン化された共振構造の特定のセットをもたらす。特定のタグをタグのセットから独自に識別するために、各々の応答器は、高価なプロセスである独自のマルチ共振器の設計を含むよう作製されなければならない。
【0005】
受信アンテナ、送信アンテナ、および、共振器は、1つ以上のパターン化技術を使用して、導電層を、例えば、金属層をパターン化するよう準備されてよい。様々なパターン化技術が、例えば、スタンピング、化学エッチング、機械エッチング、レーザエッチング、金属層の直接的な書込み、蒸着などが、使用されてよい。
【0006】
1つの技術において、金属化されたマイラー層などホイルマスタの一部分は、例えば、レーザアブレーションを使用してエッチングされ、最終的な構造を作製する。しかしながら、金属化層のレーザアブレーションは、比較的に遅いプロセスであり、金属化層のアブレーションに適するレーザは高価である。
【0007】
実際問題として、RFID技術は、光信号と比較して非常に良好な材料に対する浸透特性を有する無線周波数を使用し、バーコードラベルと比較して厳しい環境条件化で機能する。したがって、RFIDタグは、塗料、水、土砂、粉塵、紙、人体、コンクリート、または、タグ付けされた品物自体を通って読み取られてよい。RFIDタグは、在庫、有料道路上の車の自動識別、セキュリティシステム、電子アクセスカード、キーレスエントリなどを管理する際に使用されてよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下に、本教示の1つ以上の実施形態の一部の態様の基本的な理解を提供するために、簡易化された要約を提示する。この要約は、広範な概略ではなく、本教示のキーまたは重要な要素を特定する意図はなく、本開示の範囲を描出しない。むしろ、主な目的は、1つ以上の概念を簡易化された形式で、後に提示される詳細な説明の前置きとして提示することにすぎない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
無線自動識別(RFID)デバイスを形成する方法の1つの実施形態は、感光性化合物を基板上へ施すことを含み、ここで、基板上へ施される感光性化合物は、1平方メートル当たり5.0ミリグラム(mg/m
2)から150mg/m
2の銀濃度を有する。さらに、方法は、感光性化合物の第1の部分を光パターンへ光源から暴露して、感光性化合物の第1の部分を金属層へ変換し、一方で感光性化合物の第2の部分は光パターンへ暴露されないままにすること、感光性化合物の第2の部分を除去して基板上に金属層を残すこと、および、RFID回路を金属層から形成することを含む。
【0010】
無線自動識別(RFID)デバイスを形成する方法の別の実施形態は、ハロゲン化銀を基板上へ施すことを含み、ここで、基板上へ施されるハロゲン化銀は、1平方メートル当たり5.0ミリグラム(mg/m
2)から150mg/m
2の銀濃度を有する。さらに、方法は、ハロゲン化銀の第1の部分を光パターンへ光源から暴露して、ハロゲン化銀の第1の部分を金属層へ変換し、一方でハロゲン化銀の第2の部分は光パターンへ暴露されないままにすること、ハロゲン化銀の第2の部分を除去して基板上に金属層を残すこと、および、RFID回路を形成することであって、RFID回路はアンテナおよび金属層から形成されるマルチ共振器のうちの少なくとも1つを備える、形成することを含む。
【0011】
この明細書に包含され、この明細書の一部を構成する添付の図は、本教示の実施形態を図示し、説明と共に、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本教示の1つの実施形態を使用して形成される、受信アンテナ、送信アンテナ、および、マルチ共振器を含む応答器の一部分の平面図である。
【
図3】
図3は、光源、マスクまたはレチクル、および、本教示の1つの実施形態の間に基板の上面に形成される感光性化合物を有する製造過程の基板の断面である。
【
図4】
図4は、光源から光への感光層の暴露中における製造過程の
図3の構造を描写する。
【
図5】
図5は、本教示の1つの実施形態を使用する形成後のマルチ共振器を描写する断面である。
【
図6】
図6は、本教示の1つの実施形態においてレーザを使用する直接的な書込プロセス中における断面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図の一部の詳細は簡略化されており、厳格な構造的精度、詳細、および、寸法を維持するよりも、本教示の理解を容易にするために描写されていることに、留意されたい。
【0014】
ここで、添付の図に例が図示されている本教示の例示的な実施形態に対する参照が、詳細になされている。可能な限り、同じ参照番号は、図を通して同等または同様の部品を指すために使用される。
【0015】
本明細書において使用される場合、他に明示されない限り、「チップレス」という用語は、トランジスタまたはコイルなど、集積回路も個別の電子コンポーネントも有さないRFID応答器を表す;「共振器」または「共振構造」という用語は、特性周波数に対応する共振が関連付けられた構造を指す;「分光的特徴」という用語は、適用される励起周波数と関連付けられる少なくとも1つの特定共振を指す;「タグ」という用語は、応答器または応答器の組み合わせ、および、応答器が配置される担体または内部に応答器が配置されるデバイス容器を含み得る他の構造を指す。タグは、物品に貼付され得る;「応答器」という用語は、質問器により送信されるような信号を受信し、受信信号に応答して1つ以上の応答信号を送信する、タグなどのデバイスを指す;「エッチング化」という用語は、化学エッチング、機械エッチング、レーザエッチング、または、アブレーションなど、材料の一部分が除去されるプロセスを指す;「セキュリティオーバーレイ」という用語は、手を加えられると、上部にセキュリティオーバーレイが配置される構造を損傷、破壊、または、他の場合においては、修正する層を指す;「一般的なRFID応答器」という用語は、質問器などの送信器により適用される周波数ドメインごとの共振構造が関連付けられたRFID応答器を意味する。
【0016】
図1はRFIDタグの一部である応答器100の一部分を描写する上面図であり、
図2は
図1の2−2に沿った拡大断面である。応答器100は、受信アンテナ102、複数の共振器104A〜104Dを含むマルチ共振器104、および、送信アンテナ106を含み得る。
図1に描写されるように、各共振器104A〜104Dは、各共振器に異なる周波数で共振させる独自の渦巻きパターンを有する。RFIDタグは、簡易化のために描写されない他の構造を含んでよく、一方で描写されている様々な構造が除去または修正されてよいことを、理解されたい。
【0017】
使用の際、質問器は、受信アンテナ102により受信されてよく共振器104A〜104Dのうちの1つ以上に共振させてよい、周波数の広域スペクトルを出力する。共振する共振器104A〜104Dの数および共振器が共振する振幅は、応答信号として送信アンテナ106により質問器へ送信されるアナログ信号へ変換される出力周波数をもたらす。例えば、特定の周波数に限定されることなく、共振器104Aは2.97ギガヘルツ(GHz)で共振してよく、共振器104Bは2.66GHzで共振してよく、共振器104Cは24GHzで共振してよく、共振器104Dは24.3GHzで共振してよい。問い合わせ中に生成され送信アンテナ106により送信されるアナログ信号は、共振器104A〜104Dの独自パターンの結果として、複数のタグの中の特定のタグに特有であるため、質問器は特定のタグを複数のタグから識別し得る。応答器100は、物品上に直接的に、または、物品上へ貼付させるために中間接着裏地上になど、担体108上に配置されてよい。担体108は、上部にRFID応答器が最初に組み立てられる基板であってよく、または、組み立てられた後に上部にRFID応答器が移される担体であってよい。接着裏地を有する担体108により、RFID応答器は、物品上へ容易に貼付(すなわち、タグ付け)されることが出来る。
【0018】
本教示の1つの実施形態は、アンテナ、マルチ共振器、または、RFIDデバイスの別の構造など、RFIDデバイスの1つ以上の構造を形成するために使用される。組立方法が1つ以上のマルチ共振器の構成を参照して以下に記載される一方で、RFID構造の構成が検討される。
【0019】
図3はアセンブリ300を描写し、例えば、RFIDデバイスの一部分を組み立てるための製造ステーションにおけるアセンブリを描写する。
図3において、感光性化合物302が基板304上に覆われている。パターン化されたマスクまたはレチクル(以降、集合的に「マスク」)306は、描写されるように、基板304と光源308との間に置かれてよい。
【0020】
マスク306は、光が通過し得る透明または半透明の第1の領域310、および、光の伝搬を遮断する不透明な第2の領域312を含んでよい。本教示の1つの実施形態に十分な様々なマスク306は、クロムまたは別の材料など不透明な材料でパターン化されるガラスまたはクオーツなど、当技術分野において既知である。
【0021】
感光性化合物302は、光へ暴露されると化学的性質を変化させる材料である。光へ暴露される前に、感光性化合物302は溶媒内で溶け、溶媒を使用して洗い流されてよい。光への暴露は、感光性化合物302の化学的性質を変化させ、それにより、溶媒内で溶けない。1つの実施形態において、感光性化合物302は、例えば、ハロゲン化銀(すなわち、銀塩)などの写真材料である。1つの実施形態において、ハロゲン化銀は、銀およびハロゲンをAgXの形態で含んでよく、例えば、臭化銀(AgBr)、塩化銀(AgCl)、ヨウ化銀(Agl)、および/または、フッ化銀(Ag
xFl
y)を含んでよい。フッ化銀は、次フッ化銀(Ag
2F)、銀(l)フッ化物(AgF)、および、銀(ll)フッ化物(AgF
2)を含む。ハロゲン化銀は、ゼラチン内に浮遊するハロゲン化銀結晶を含んでよい。さらに、ハロゲン化銀層は、例えば、光感受性を変更するために微量元素を含んでよい。写真の技術分野において既知のように、光へ暴露されると、ハロゲン化銀結晶は減少し、とりわけ、金属銀を含む。感光性化合物302は、基板304上へ任意の適切な厚さで施されてよい。
【0022】
1つの実施形態において、ハロゲン化銀化合物、ハロゲン化銀を含む化合物、または、銀を含む別の化合物など、感光性化合物302は、層として基板304上へ施され、それにより、基板304上の感光性化合物302は、特定の範囲内で銀(Ag)濃度を有する。1つの実施形態において、基板304上へ施された感光性化合物302は、1平方メートル当たり約5.0ミリグラム(mg/m
2)から約150mg/m
2、または、約50mg/m
2から約150mg/m
2、または、約100mg/m
2から約150mg/m
2の濃度で銀を含んでよい。一部の実施形態において、感光性化合物は、少なくとも5.0mg/m
2から150mg/m
2の銀濃度を有する。
【0023】
完成構造を形成するために使用される感光性化合物の銀濃度が不十分である場合、完成構造の電気抵抗は、過度に高い可能性があり、または、電気的断線を伴う構造をもたらす可能性がある。したがって、不十分な銀濃度を有する感光性化合物で形成された構造は、導電性の上塗り、下塗り、または、例えば、銅から製造される他の導電性の層など、追加的な導電層が、完成構造の電気伝導性を増大させるために必要であり得る。本教示の1つの実施形態において、感光性化合物302を使用して形成される完成構造は、完成構造の電気伝導性を増大または向上させ得る追加的な導電性の構造を含まない(すなわち、使われない)。この実施形態において、アンテナまたは感光性化合物から形成される他の構造を介する電気経路は、完全に、結果として生じる銀層により提供される。
【0024】
完成構造を形成するために使用される感光性化合物の銀濃度が過度である場合、完成構造は、過度の厚さおよび/または過度の製造コストを有する可能性があり、または、製造の複雑化が処理中に生じる可能性がある。
【0025】
基板304は、例えば、完成したマルチ共振器がRFIDデバイスの組み立て中に移される担体であってよい。別の実施形態において、基板304は、完成したRFIDデバイスの一部分を形成する半導体基板であってよい。
【0026】
光源308は、マスク306を介して感光性化合物302を暴露するのに不十分な光の強度および波長を出力する光源であってよい。例えば、光源308は、約400ナノメートル(nm)から約750nmの波長を出力してよい。感光性化合物302は、50から3200の国際標準化機構(ISO)速度を有してよく、したがって、所与の出力波長に対する光源の強度は、感光膜を所望の暴露期間にわたって暴露するよう選択されてよい。
【0027】
アセンブリ300を
図3に描写されるように置いた後、光源308からの光400は、感光性化合物302の第1の部分上へ、マスク306を介して伝送され、マスク306によりパターン化され、一方で感光性化合物の第2の部分は光へ暴露されないままである。マスク306を介して光400を伝送することにより、感光性化合物302の第1の部分上へ輝く光パターン404を形成する。感光性化合物302の第1の部分を光パターン404へ暴露することにより、感光性化合物302の第1の部分を、金属層402など、少なくとも部分的にパターン化されたマスク306により決定されるパターンを有する金属層402へ削減する。光パターンへ暴露されない感光性化合物302の第2の部分は、削減されないままである。
【0028】
図4は、光源308から感光性化合物302への光400の直接的な伝送を描写することを、理解されたい。反射および屈折技術は、光源308から感光性化合物302への光400の間接的な伝送に対して、感光性化合物302への光源308との間に適用されてよい。
【0029】
図4に描写されるように感光性化合物302を光へ暴露して金属層402を形成した後、残っている暴露されていない感光性化合物302は、溶液内に溶解して洗い流され、
図2の構造と類似していてよい
図5の構造を形成してよい。1つの実施形態において、暴露されていない感光性化合物302は、当技術分野において既知であるような写真現像の従来のプロセスにより除去されてよい。
【0030】
続いて、感光性化合物の第2の部分を洗い流した後、処理が続行してRFID回路を金属層402から形成してよい。金属層402は、例えば、受信アンテナ102(
図1)、送信アンテナ106、マルチ共振器104、または、別のRFID構造として使用されてよい。RFID回路を金属層402から形成した後、金属層402は、約100nmから約800nmの厚さを有してよい。
【0031】
別の実施形態において、
図6に描写されるように、レーザビーム602を出力するレーザ600が光源として感光性化合物を暴露するために使用されてよく、したがって、パターン化されたマスクは必要ない。この実施形態において、レーザ600の走査経路は、したがって、基板304の表面を横断するレーザビーム602は、コントローラ内にプログラム化されてよい(簡易化のため描写されない)。レーザ600が基板304の表面を横断して走査する際、レーザビーム602は感光性化合物302上へ伝送され、それにより、感光性化合物302を光パターンへ暴露して暴露部分を金属層604へ削減する。この実施形態により、マルチ共振器パターンの簡易なカスタマイズが低価格で可能となり、所望のパターンは、マスクの構成を必要とすることなく、コントローラ内にプログラム化される。
【0032】
レーザ600は、例えば、約632.8nmの狭い分布の光波長を、約1.5ミリワット(mW)から約35mWの強度で出力するヘリウムネオン(HeNe)レーザであってよい。
【0033】
したがって、本教示は、例えば、受信アンテナおよび/または送信アンテナなどのアンテナなど、1つ以上のRFID構造を形成するための写真技術の使用を含んでよい。さらに、方法は、マルチ共振器、導電線および/または導電的な相互接続など、他のRFID構造を形成するために使用されてよい。比較的に高価な高性能のレーザを必要とする、RFID構造を形成するための金属化されたマイラー層のレーザアブレーションとは対照的に、本教示は、パターン化されたマスクの使用または比較的に低価格の低性能なレーザを使用する直接的な書込プロセスを介してパターン化される感光層の暴露を含んでよい。
【0034】
本教示の広い範囲を明記する数値範囲およびパラメータは近似しており、特定の例に明記される数値は可能な限り厳密に報告される。しかしながら、任意の数値は、本質的に、各々のテスト測定値において確認される標準偏差から必然的に生じる一定のエラーを包含する。さらに、本明細書に開示される全範囲は、そこに含まれる任意および全てのサブ範囲を包含すると理解される。例えば、「10未満」の範囲は、最小値であるゼロから最大値である10の間の(および、それらの値を含む)任意および全てのサブ範囲、すなわち、ゼロと等しいかゼロより大きい最小値および10と等しいか10より小さい最大値を有する任意および全てのサブ範囲、例えば、1から5を含み得る。ある事例において、パラメータに対して提示されるような数値は、負の値を取り得る。この事例において、「10未満」と示される範囲の例示的な値は、例えば、−1、−2、−3、−10、−20、−30など、負の値を想定し得る。
【0035】
この出願において使用される相対的な位置の用語は、ワークピースの方位に関わらず、ワークピースの従来の平面または作業面と平行な平面に基づく。この出願において使用される「水平な(horizontal)」または「横の(lateral)」という用語は、ワークピースの方位に関わらず、ワークピースの従来の平面または作業面と平行な平面として規定される。「垂直な(vertical)」という用語は、水平に対して直角の方向を指す。「上に(on)」「側に(side)」(「側壁(sidewall)」などにあるような)「より高い(higher)」「より低い(lower)」「上方の(over)」「上部の(top)」、および、「下位の(under)」という用語は、ワークピースの方位に関わらず、ワークピースの上面である従来の平面または作業面に対して規定される。