特許第6797067号(P6797067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797067
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】鋳物砂の再生方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 5/00 20060101AFI20201130BHJP
   B07B 4/08 20060101ALI20201130BHJP
   B07B 9/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   B22C5/00 A
   B07B4/08 B
   B07B9/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-88620(P2017-88620)
(22)【出願日】2017年4月27日
(65)【公開番号】特開2018-183812(P2018-183812A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2019年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100158540
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 博生
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100187768
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】盛武 克己
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−068026(JP,A)
【文献】 特開昭60−216950(JP,A)
【文献】 特開2014−024097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 5/00
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み鋳物砂の再生方法であって、
少なくとも砂及びゴムチップを混合した補助可燃物を用意する工程と、
上記鋳物砂と上記補助可燃物とを混合する工程と、
上記混合工程で得られた混合物を焼成する工程と
を有する鋳物砂の再生方法。
【請求項2】
上記焼成工程後の砂を研磨する工程と、
上記研磨工程後の砂を分級する工程と
をさらに有する請求項1に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項3】
上記分級工程が、
空気流により上記研磨工程後の砂を流動させ、集塵装置によりこの砂に含まれる微粉体を取り除く工程と、
ふるいにより上記研磨工程後の砂に含まれる異物を取り除く工程と
を有する請求項2に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項4】
上記焼成工程の前に、上記補助可燃物を燃焼させる初期加熱工程
をさらに有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項5】
上記焼成工程における焼成温度が400℃以上900℃以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項6】
上記混合工程における鋳物砂と補助可燃物との混合比率が、質量基準で1:1以上9:1以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項7】
上記補助可燃物における砂及びゴムチップの混合比率が、質量基準で4:1以上49:1以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の鋳物砂の再生方法。
【請求項8】
上記補助可燃物が、使用済み人工芝から分離して得られる砂及びゴムチップの混合物である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の鋳物砂の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物砂の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一度使用された鋳物砂が再生されるときには、鋳物砂に付着した付着物が除去される必要がある。従来、鋳物砂の再生方法としては、例えば、ロータリーキルン等の焙焼炉を用い、砂を流動させつつ上部又は下部からバーナーで加熱することにより、砂の付着物を燃焼させて砂から付着物を除去する方法が知られている。
【0003】
従来の鋳物砂の再生方法を用いた場合、焙焼炉の熱効率が低いため、焙焼炉の初期加熱時に膨大な燃料を必要とし、採算性が良くない。また、鋳物砂が焼成される際には、鋳物砂に付着している可燃性の粘結剤やその炭化物が可燃物となって燃焼するが、鋳物砂に付着している可燃物の量は鋳物砂の状態によって大きく異なる。可燃物の付着量が少ない鋳物砂が焼成されると、焼成温度が低下してしまい、焼成が不十分となるおそれがある。このため、鋳物砂だけを用いて安定的にかつ効率の良く焼成することは困難である。
【0004】
そこで、可燃物の含有量が少ない又は無い鋳物砂が用いられる場合に、コークス粉、炭素系ダストの粉等の粒状可燃物を鋳物砂に添加し、この鋳物砂を焼成することで焼成効率を向上させた鋳物砂の再生方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1の鋳物砂の再生方法では、鋳物砂における可燃物の含有量の確認が必要である。このため、この再生方法では、鋳物砂における可燃物の含有量を確認し、可燃物の含有量が少ないときに鋳物砂に燃料を添加する手順が必要となるが、大量の鋳物砂が再生される際にはこの手順を採用することは極めて困難であり、作業効率が非常に悪くなる。
【0006】
また、例えば、鋳物砂と粒状可燃物とを特定の割合で混合させた混合物を焙焼炉で焼成する方法が考えられるが、鋳物砂における可燃物の含有量が十分である場合は、燃料過多となって焙焼炉内の温度が急激に上昇してしまう懸念がある。焙焼炉内の温度が急激に上昇すると、鋳物砂が安定的に焼成されないばかりでなく、焙焼炉が損傷するおそれ、煙や臭気が発生するおそれ、及び急激な燃焼で一時的に酸素が欠乏することによる燃焼不良が起こるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−216950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、鋳物砂を焼成する際の加熱不足や急激な温度上昇を抑制できる鋳物砂の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、使用済み鋳物砂の再生方法であって、少なくとも砂及びゴムチップを混合した補助可燃物を用意する工程と、上記鋳物砂と上記補助可燃物とを混合する工程と、上記混合工程で得られた混合物を焼成する工程とを有する。
【0010】
当該再生方法は、使用済み鋳物砂に対して砂及びゴムチップを含む補助可燃物を混合し、この混合物を焼成する。鋳物砂における可燃物の含有量が少ない場合は、補助可燃物に含まれるゴムチップが燃焼することで焼成温度の低下を抑制する。また、鋳物砂における可燃物の含有量が多い場合は、補助可燃物に含まれる砂が急激な温度上昇を抑制する。このため、当該再生方法は、鋳物砂における可燃物の含有量の多少によらず、鋳物砂を焼成する際の加熱不足や急激な温度上昇を抑制できる。
【0011】
当該再生方法は、上記焼成工程後の砂を研磨する工程と、上記研磨工程後の砂を分級する工程とをさらに有するとよい。これにより、当該再生方法は、焼成工程後の砂表面の付着物を適切に取り除いた後に、純良な状態に再生された砂を取り出すことができる。
【0012】
上記分級工程が、空気流により上記研磨工程後の砂を流動させ、集塵装置によりこの砂に含まれる微粉体を取り除く工程と、ふるいにより上記研磨工程後の砂に含まれる異物を取り除く工程とを有するとよい。これにより、当該再生方法は、研磨工程後の砂に紛れ込んでいる微粉体及び異物を適切に取り除くことができる。
【0013】
当該再生方法は、上記焼成工程の前に、上記補助可燃物を燃焼させる初期加熱工程をさらに有するとよい。これにより、当該再生方法は、初期加熱時に焼成に適した温度まで焼成対象を短時間で加熱することができる。
【0014】
上記焼成工程における焼成温度が400℃以上900℃以下であるとよい。これにより、当該再生方法は、鋳物砂の付着物、ゴムチップ、ゴミ及び不純物を適切な温度で燃焼させることができる。
【0015】
上記混合工程における鋳物砂と補助可燃物との混合比率が、質量基準で1:1以上9:1以下であるとよい。これにより、当該再生方法は、鋳物砂を焼成する際の温度を焼成に適した温度とすることができる。
【0016】
上記補助可燃物における砂及びゴムチップの混合比率が、質量基準で4:1以上49:1以下であるとよい。これにより、当該再生方法は、鋳物砂を焼成する際の加熱不足や急激な温度上昇を適切に抑制できる。
【0017】
上記補助可燃物が、使用済み人工芝から分離して得られる砂及びゴムチップの混合物であるとよい。人工芝に充填された砂及びゴムチップは、人工芝を新しいものに張り替える際に廃棄される。当該再生方法は、補助可燃物として人工芝から分離して得られる砂及びゴムチップの混合物を用いるので、鋳物砂を再生するとともに、人工芝に含まれている砂も再生することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、鋳物砂を焼成する際の加熱不足や急激な温度上昇を抑制できる鋳物砂の再生方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の再生方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の第2実施形態の再生方法の一部を示すフローチャートである。
図3図2の分級工程S4の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る鋳物砂の再生方法の実施形態について図を参照しつつ詳説する。
【0021】
[第1実施形態]
当該再生方法は、使用済み鋳物砂を再利用可能に再生する。図1に示すように、当該再生方法は、少なくとも砂及びゴムチップを混合した補助可燃物を用意する用意工程S1と、鋳物砂と補助可燃物とを混合する混合工程S2と、混合工程S2で得られた混合物を焼成する焼成工程S3とを有している。
【0022】
<用意工程S1>
用意工程S1では、少なくとも砂及びゴムチップを混合した補助可燃物を用意する。補助可燃物は、後段の焼成工程S3における焼成を補助する可燃物であり、少なくとも砂及びゴムチップを含んだ混合物である。
【0023】
補助可燃物に含まれる砂は、例えば、川砂、海砂、山砂、粘土等から得られる天然砂であっても、人工砂であってもよく、特に限定されない。また、砂は、サンゴ、貝殻等の石灰質の化石片を含んでいてもよい。砂の材料としては、例えば、ケイ砂、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド、アルミナサンド、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ、ムライト系人工粒子等を用いることができ、これらの再生砂が用いられてもよいし、これらを2種以上組み合わせたものが用いられてもよい。砂は、再利用の観点から、鋳物砂と同質の砂が用いられると好ましい。また、砂の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、50μm以上2000μmであればよく、好ましくは200μm以上1500μm以下であればよく、より好ましくは300μm以上1200μm以下であればよい。砂の形状は、球形状であってもよいし、非球形状であってもよい。
【0024】
補助可燃物に含まれるゴムチップは、ゴムを粒子化したものであれば特に限定されないが、例えば天然ゴム、合成ゴム等の加硫ゴムや、熱可塑性エラストマーが用いられる。合成ゴムとしては、例えばイソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン等が挙げられ、熱可塑性エラストマーとしては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系、塩化ビニル系、ウレタン系のものが挙げられるが、これらのうちの1種が用いられてもよいし、これらを2種以上組み合わせたものが用いられてもよい。また、ゴムチップの平均粒子径は、特に限定されないが、例えば100μm以上3000μm以下であればよく、好ましくは500μm以上2000μm以下であればよく、より好ましくは800μm以上1500μm以下であればよい。ゴムチップの形状は、一般的にゴムチップの製造方法によって決まるものであり、粒子化されていれば特に限定されない。なお、砂及びゴムチップの平均粒子径は、例えばレーザ回折式の粒度分布測定装置によって測定される粒度分布により求められる体積平均粒子径(D50)である。
【0025】
補助可燃物における砂及びゴムチップの混合比率の下限は、質量基準で、4:1であり、5:1であると好ましく、17:3であるとより好ましい。砂及びゴムチップの混合比率が上記下限未満であると、砂の量が不足して後段の焼成工程S3における急激な温度上昇を抑制できないおそれがある。一方、補助可燃物における砂及びゴムチップの混合比率の上限は、質量基準で、49:1であり、24:1であると好ましく、19:1であるとより好ましい。砂及びゴムチップの混合比率が上記上限を超えると、可燃物であるゴムチップの量が不足して後段の焼成工程S3における加熱不足を抑制できないおそれがある。
【0026】
補助可燃物は、特に限定されないが、使用済み人工芝から分離して得られる砂及びゴムチップの混合物であるとよい。人工芝に充填された砂及びゴムチップは、人工芝を新しいものに張り替える際に廃棄されるが、当該再生方法における補助可燃物として利用されれば、鋳物砂とともに人工芝に含まれている砂も同時に再生することができる。
【0027】
使用済み人工芝から分離して得られる砂及びゴムチップの混合物が補助可燃物として用いられる際には、補助可燃物におけるゴムチップの量が過剰となっている場合がある。この場合は、必要に応じて混合物からゴムチップの一部が取り出されることにより、補助可燃物における砂及びゴムチップの混合比率が調整されてもよい。つまり、当該再生方法が、補助可燃物からゴムチップの一部を取り出す工程をさらに有していてもよい。補助可燃物からゴムチップの一部を取り出す方法としては、特に限定されないが、例えば風選や遠心分離等の方法を用いることができる。また、補助可燃物から取り出されるゴムチップの量は、後段の焼成工程S3における焼成の条件に応じて適宜に選択されるため特に限定されないが、例えば補助可燃物におけるゴムチップの全体含有量に対して、5質量%以上80質量%であるとよく、20質量%以上60質量%であると好ましい。取り出されたゴムチップは、別途燃料として利用されるとよい。
【0028】
<混合工程S2>
混合工程S2では、鋳物砂と補助可燃物とを混合する。混合工程S2で得られる混合物は、焼成工程S3における焼成温度が焼成に適した温度となるように混合比率が調整される。
【0029】
鋳物砂と補助可燃物との混合比率の下限は、質量基準で、1:1であり、5:4であると好ましく、3:2であるとより好ましい。鋳物砂と補助可燃物との混合比率が上記下限未満であると、補助可燃物の量が過剰となり、焼成工程S3における焼成温度が上昇し過ぎるおそれがある。一方、鋳物砂と補助可燃物との混合比率の上限は、質量基準で、9:1であり、17:3であると好ましく、4:1であるとより好ましい。鋳物砂と補助可燃物との混合比率が上記上限を超えると、補助可燃物の量が不足して焼成工程S3における焼成温度が低下するおそれがある。
【0030】
混合物全体に対するゴムチップの含有量の下限は、2質量%であり、3質量%であると好ましく、4質量%であるとより好ましい。ゴムチップの含有量が上記下限未満であると、ゴムチップの量が不足して焼成工程S3における焼成温度が低下するおそれがある。一方、混合物全体に対するゴムチップの含有量の上限は、15質量%であり、12質量%であると好ましく、10質量%であるとより好ましい。ゴムチップの含有量が上記上限を超えると、ゴムチップの量が過剰となり、焼成工程S3における焼成温度が上昇し過ぎるおそれがある。
【0031】
なお、用意した補助可燃物に含まれているゴムチップの量が不足している場合には、混合工程S2において燃料がさらに混合されてもよい。つまり、混合工程S2が、鋳物砂と補助可燃物と燃料とを混合する工程であってもよい。
【0032】
<焼成工程S3>
焼成工程S3では、混合工程S2で得られた混合物を焙焼炉内に随時投入しつつ焼成する。この混合物の焼成には、例えばロータリーキルンやトンネルキルン等の焙焼炉が用いられる。
【0033】
鋳物砂に付着した可燃性の粘結剤やその炭化物は、燃料の役割を果たすので焼成が効率良く進行する。また同時に、混合物中のゴムチップも燃料の役割を果たすので、鋳物砂における可燃物の含有量が少ない場合であっても、混合物は高温で焼成される。これにより、鋳物砂の付着物、ゴムチップ、ゴミ及び不純物は十分に燃焼する。
【0034】
一方、鋳物砂における可燃物の含有量が十分な場合には、焙焼炉内に投入される燃料が過剰となる。ところが、混合物中には補助可燃物に含まれていた砂が存在しており、この砂は可燃性のものではなく過度な燃焼を抑える作用を奏するものであるので、焙焼炉内の急激な温度上昇は抑制される。
【0035】
焙焼炉内の焼成温度の下限は、400℃であり、500℃であると好ましく、600℃であるとより好ましい。焼成温度が上記下限未満であると、鋳物砂の付着物、ゴムチップ、ゴミ及び不純物が十分に燃焼しないおそれがある。一方、焼成温度の上限は、900℃であり、850℃であると好ましく、800℃であるとより好ましい。焼成温度が上記上限を超えると、焙焼炉に負荷がかかる上に、加熱コストが増大するおそれがある。
【0036】
(利点)
当該再生方法は、混合工程S2において鋳物砂と補助可燃物とを混合する。鋳物砂における可燃物の含有量が少ない場合には、補助可燃物のゴムチップが燃料の役割を果たすので、焼成工程S3における焼成温度が低下し難い。また、鋳物砂における可燃物の含有量が十分な場合には、補助可燃物の砂が過度な燃焼を抑える作用を奏するので、焼成工程S3における焙焼炉内の急激な温度上昇が抑制される。このため、当該再生方法は、鋳物砂における可燃物の含有量の多少によらず、鋳物砂を焼成する際の加熱不足や急激な温度上昇を抑制できる。そして、当該再生方法は、焙焼炉内の急激な温度上昇を抑制するので、焙焼炉の損傷を防止し、煙や臭気の発生を抑制し、急激な燃焼で焙焼炉内の酸素が一時的に欠乏することによる燃焼不良を抑制することができ、さらには、焼成後の鋳物砂における品質のばらつきを抑制できる。
【0037】
当該再生方法は、使用済み鋳物砂における可燃物の含有量を逐一確認する必要がなく、焼成前において鋳物砂に対して補助可燃物を混合することで、手間をかけずに効率よく鋳物砂を再生できる。また、当該再生方法は、補助可燃物が使用済み人工芝から分離して得られる砂及びゴムチップの混合物であれば、鋳物砂とともに人工芝に含まれている砂も同時に再生することができるので、使用済み鋳物砂から鋳物砂を回収する作業と使用済み人工芝から砂を回収する作業とを別々に実行する場合に比べて、作業効率を向上させることができる。
【0038】
[第2実施形態]
当該再生方法は、第1実施形態の再生方法と同様に、少なくとも砂及びゴムチップを混合した補助可燃物を用意する用意工程S1と、鋳物砂と補助可燃物とを混合する混合工程S2と、混合工程S2で得られた混合物を焼成する焼成工程S3とを有しているが、図2に示すように、焼成工程S3後の砂を研磨する研磨工程S4と、研磨工程S4後の砂を分級する分級工程S5とをさらに有している。用意工程S1、混合工程S2及び焼成工程S3については、第1実施形態と同じであるので説明を省略し、焼成工程S3に続く研磨工程S4及び分級工程S5について説明する。
【0039】
<研磨工程S4>
研磨工程S4では、焼成後の砂を研磨して砂表面に残存する付着物を削り取る。研磨工程S4における研磨方法としては、特に限定されないが、例えばロータリーリクレーマー、サンドフレッシャー、サンドシャイナー等を用いた研磨を挙げることができる。なお、研磨工程S4における研磨時間等の研磨条件は、焼成後の砂表面への付着物の付着状態により適宜に選択される。
【0040】
<分級工程S5>
分級工程S5では、研磨工程S4後の砂を分級する。図3に示すように、分級工程S5は、空気流により焼成後の砂を流動させ、集塵装置によりこの砂に含まれる微粉体を取り除く集塵工程S5−1と、ふるいにより焼成後の砂に含まれる異物を取り除くふるい工程S5−2とを有している。
【0041】
(集塵工程S5−1)
集塵工程S5−1では、空気流により研磨後の砂を流動させ、研磨後の砂に含まれている削りカス、塵及び微粉等の微粉体を駆動状態の集塵装置で除去する。これにより、研磨後の砂から微小な残留物が取り除かれる。
【0042】
(ふるい工程S5−2)
ふるい工程S5−2では、ふるいを用いて砂の粒子径を分級することで、研磨後の砂に含まれる異物を取り除く。これにより、研磨後の砂から大きな残留物が取り除かれるとともに、適切な粒子径の砂が選択的に取り出される。
【0043】
なお、分級工程S5は、上述の集塵工程S5−1及びふるい工程S5−2を有するものに限定されない。例えば、分級工程S5が、集塵工程S5−1又はふるい工程S5−2のいずれか一方を有するものであってもよいし、ふるい工程S5−2を実行した後に集塵工程S5−1を実行するものであってもよい。また、分級工程S5は、研磨後の砂を分級する工程であれば他の工程であってもよい。
【0044】
(利点)
当該再生方法は、研磨工程S4と、分級工程S5とをさらに有しているので、焼成後の砂の表面を研磨することにより、砂表面に付着している有機分やゴミ等を適切に取り除くことができ、純良な状態に再生された砂を適切に回収することができる。このため、当該再生方法は、より新砂に近いゴミや塵の少ない綺麗な状態の砂を再生することができ、再生後の鋳物砂から新たな鋳型を造形した場合には、新砂から造型した鋳型とほぼ同等の強度を有する鋳型を得ることができる。
【0045】
[その他の実施形態]
本発明の鋳物砂の再生方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0046】
上記実施形態では、混合工程S2で得られた混合物を焼成する焼成工程S3について説明したが、焼成工程S3の前に、補助可燃物を燃焼させる初期加熱工程をさらに有していてもよい。焙焼炉の初期加熱時には、焙焼炉内の温度をできるだけ短時間で焼成に適した温度まで上昇させる必要がある。そこで、混合工程S2で得られた混合物を焙焼炉に投入する前に、燃えやすいゴムチップを含んでいる補助可燃物を焙焼炉に投入することで、初期加熱を短時間で効率良く行うことができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
[No.1〜No.5の評価]
まず、使用済み人工芝から砂及びゴムチップを分離した。分離物における砂及びゴムチップの質量比率は4:1であった。得られた分離物の一部については、そのまま補助可燃物として用い、他の一部については、ゴムチップのみを取り出し、これを補助可燃物として用いた。
【0049】
次に、使用済みの砂鋳型から鋳物砂を回収し、表1に示す質量比率で、回収した鋳物砂と補助可燃物とを混合した。なお、No.3は、補助可燃物を用いなかった例であり、No.4及びNo.5は、ゴムチップのみを補助可燃物として用いた例である。
【0050】
次に、処理能力10t/hの焙焼炉に、上述の混合物を5t/hの割合で投入し、1時間かけて焼成した。焙焼炉における焼成温度の範囲(定常的に焼成が行われている際の最低温度から最高温度までの範囲)を表1に示す。なお、No.4及びNo.5は、時間とともに昇温を続け、1時間以内に900℃を超えたため、危険と判断して混合物の投入を停止した。このため、No.4及びNo.5については、焼成が完了せず、鋳物砂を再生できなかった。
【0051】
また、焙焼炉において混合物を焼成している最中に排煙の評価を行った。排煙評価としては、視覚による目視評価と嗅覚による臭気評価とを実施した。この排煙評価は、5名のパネラーにより行われ、各パネラーの評価について最多のものを採用して導出した。目視評価は、焙焼炉の煙突から有色の煙が見られない場合の評価をAとし、有色の煙が見られた場合の評価をBとした。また、臭気評価は、焙焼炉の煙突から臭気が出ていると感じらない場合の評価をAとし、臭気が出ていると感じられる場合の評価をBとした。これらの結果を表1に示す。
【0052】
最後に、再生後の砂を再利用した物品の強度を知るために、No.1〜No.3の再生後の砂を用いた試験片について、曲げ強度の評価を行った。試験片は以下の手順により用意した。まず、150℃に加熱した再生後の砂7kgと、ノボラック型フェノール樹脂(旭有機材工業社製のSP610)175gとをワールミキサー(遠州鉄工株式会社製)内に入れて40秒間混練し、さらにヘキサメチレンテトラミン26.3gと水105gとを含む水溶液をワールミキサー内の混練物に追加した。続いてブロワーで送風しながら混練物の塊が崩れるまで混練を継続し、さらにステアリン酸カルシウム7gをワールミキサー内へ追加し、さらに5秒間混練してレジンコーテッドサンドを得た。このレジンコーテッドサンドを用いてJIS−K6910で規定される試験片を作製した。曲げ強度の評価は、JACT試験法SM−1(曲げ強さ試験法)に準拠して行った。測定された曲げ強度を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、No.1及びNo.2は、焼成時の焼成温度が安定し、目視評価及び臭気評価が良好であることが確認された。また、No.1及びNo.2は、再生後の砂を用いた試験片の曲げ強度の評価において試験片が高い強度を示すことが確認された。
【0055】
No.3は、補助可燃物を用いなかった例である。No.3は、No.1及びNo.2と比較して、焼成時の焼成温度の安定性が悪いことが確認された。また、No.3は、No.1及びNo.2と比較して、曲げ強度の評価における試験片の強度が低いことが確認された。
【0056】
No.4及びNo.5は、ゴムチップのみを含有し、砂を含有していない補助可燃物を用いた例である。No.4及びNo.5は、焼成時に焙焼炉内の温度が急激に上昇して1時間以内に900℃を超え、黒煙及びゴム臭の発生が確認された。また、No.4は、No.5と比較して、焼成時に900℃を超えるまでの時間が短かった。これらのことから、No.4及びNo.5は、焼成時に焙焼炉が損傷するおそれや、排ガスの問題が生じるおそれがあることが分かった。また、混合物におけるゴムチップの割合が多すぎると、焼成時の昇温速度が増大するとともに、安定的に焼成できないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の鋳物砂の再生方法は、使用済み鋳物砂における可燃物の含有量の多少によらず、鋳物砂を焼成する際の加熱不足や急激な温度上昇を抑制することができる。このため、本発明は、安定的にかつ効率よく大量の鋳物砂を再生することができる。
図1
図2
図3