(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本明細書中、数値範囲を現す「〜」は、その上限及び下限としてそれぞれ記載されている数値を含む範囲を表す。また、「〜」で表される数値範囲において上限値のみ単位が記載されている場合は、下限値も同じ単位であることを意味する。
本明細書において組成物中の各成分の比率又は量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の比率又は量を意味する。
【0012】
《A重油組成物》
本発明のA重油組成物は、基材と、減圧蒸留装置から留出する留分であって、前記留分の全質量に対して、0.5質量%〜2.0質量%のアスファルテン分を有し、沸点範囲が380℃〜700℃である残炭調整材と、を含み、10%残留炭素分が組成物の全質量に対して0.20質量%以上である。
本発明のA重油組成物は、スラッジ分散剤に変えて、特定の残炭調整材を用いることで、スラッジの発生を抑制し得る。
【0013】
<残炭調整材>
本発明のA重油組成物において、残炭調整材は、減圧蒸留装置から留出する留分であり、沸点範囲が380℃〜700℃であり、好ましくは390℃〜680℃である。
沸点範囲が上記範囲である留分を残炭調整材として使用すると、長期貯蔵時においてもスラッジの発生を抑制することが可能となる。
【0014】
減圧蒸留装置から留出する沸点範囲が380℃〜700℃の留分は、原油を減圧蒸留装置で減圧蒸留することによって得ることができ、上記減圧蒸留装置は、特に制限はなく、公知公用の装置を適用することができる。
【0015】
上記残炭調整材が含有する留分を調整するために用いる原油種としては、特に制限はなく、ザコム原油、アッパーザクム原油、マーバン原油、ベリー原油等が挙げられる。
【0016】
残炭調整材の含有量としては、A重油組成物の全質量に対して、0.2質量%〜1.0質量%が好ましく、より好ましくは0.3質量%〜0.8質量%である。
残炭調整材の含有量が上記範囲にあると、長期貯蔵時においてもスラッジの発生を抑制する傾向がある。
【0017】
残炭調整材において、飽和炭化水素分は、残炭調整材の全質量に対して、30質量%〜55質量%が好ましく、より好ましくは35質量%〜55質量%である。
【0018】
残炭調整材において、芳香族炭化水素分は、残炭調整材の全質量に対して、35質量%〜55質量%が好ましく、より好ましくは35質量%〜50質量%である。
【0019】
残炭調整材において、残炭調整材の全質量に対して、レジン分は3質量%〜15質量%が好ましく、より好ましくは4質量%〜12質量%である。
【0020】
残炭調整材において、アスファルテン分は、残炭調整材の全質量に対して、0.5質量%〜2.0質量%であり、好ましくは0.8質量%〜1.7質量%である。
本明細書において、アスファルテン分とは、数平均分子量(Mn)が100〜10,000であり、窒素、酸素等を含み、かつ、極性が高い物質を意味する。
【0021】
飽和炭化水素分、芳香族炭化水素分、レジン分及びアスファルテン分が上記範囲内であると、アスファルテン分が、A重油組成物中でスラッジ化することを防止することが可能となる。
なお、飽和炭化水素分、芳香族炭化水素分、レジン分及びアスファルテン分の含有量は、石油学会法JPI−5S−22−83「アスファルトのカラムクロマトグラフィー法による組成分析法」で測定した値を意味する。
【0022】
残炭調整材におけるアスファルテン分の平均構造パラメータ芳香環数(RN)は、50以下が好ましく、より好ましくは30〜48、更に好ましくは35〜45である。
【0023】
本発明のA重油組成物が、基材として、後述する低硫黄分の基材を含む場合、アスファルテン分の平均構造パラメータ芳香環数(RN)が50以下であると、流動性向上剤の添加効果を損なわずに、低温流動性能を更に向上することが可能となる。
なお、アスファルテン分の平均構造パラメータ芳香環数(RN)は、
1H−NMRスペクトル及び
13C−NMRスペクトルを、核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)装置により測定される値である。
【0024】
具体的な測定条件は以下のとおりである。
(
1H−NMRスペクトル)
試料濃度:10mg/0.5mL
測定溶媒:CDCl
3
NMR試料管:5mmΦ
測定パルス:sungle pulse
パルス幅:45deg(6.05μsec)
パルス待ち時間:5秒
積算回数:8スキャン
【0025】
(
13C−NMRスペクトル)
試料濃度:100mg/0.5mL
測定溶媒:CDCl
3
NMR試料管:5mmΦ
測定パルス:sungle pulse dec
パルス幅:45deg(4.57μsec)
パルス待ち時間:8秒
積算回数:5120スキャン
【0026】
残炭調整材中のアスファルテン分において、好ましくは、平均構造パラメータ芳香族炭素(CA)が350以下、かつ、脂肪族炭素(CP)が160以下であり、より好ましくは芳香族炭素(CA)が290〜340、かつ、脂肪族炭素(CP)が130〜155であり、更に好ましくは芳香族炭素(CA)が300〜330、かつ、脂肪族炭素(CP)が135〜150である。
本発明のA重油組成物が、基材として、後述する低硫黄分の基材を含む場合、残炭調整材中のアスファルテン分の平均構造パラメータ芳香族炭素(CA)が350以下、かつ、脂肪族炭素(CP)が160以下ならば、流動性向上剤の添加効果が損なわれずに、低温流動性能をより向上することが可能である。
なお、アスファルテン分の平均構造パラメータの芳香族炭素(CA)及び脂肪族炭素(CP)は、
1H−NMRスペクトル及び
13C−NMRスペクトルを、核磁気共鳴装置(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)により測定される値である。
1H−NMRスペクトル及び
13C−NMRスペクトルの測定条件は、既述のアスファルテン分の平均構造パラメータ芳香環数(RN)における
1H−NMRスペクトル及び
13C−NMRスペクトルの測定条件と同様である。
【0027】
残炭調整材におけるアスファルテンの数平均分子量(Mn)は、100〜10,000であることが好ましく、1,000〜8,500であることがより好ましい。
アスファルテンの数平均分子量(Mn)は、蒸気圧式分子量測定法により求めることができる。
【0028】
<10%残留炭素分>
A重油組成物は、10%残留炭素分が組成物の全質量に対して0.20質量%以上である。10%残留炭素分が組成物の全質量に対して0.20質量%未満であると、税法上(軽油引取税)の観点からA重油として製造販売することができない。
なお、10%残留炭素分は、JIS K 2270−1(2009)「原油及び石油製品−残留炭素分の求め方−第 1 部:コンラドソン法」に準じて測定して求めることができる。
【0029】
<基材>
本発明のA重油組成物は、基材を含む。
本発明のA重油組成物を構成する基材としては、脱硫軽油が好ましく、硫黄分が、脱硫軽油の全質量に対して、10質量ppm以下である脱硫軽油がより好ましい。
なお、本明細書において、「低硫黄分の基材」とは、硫黄分が、脱硫軽油の全質量に対して、10質量ppm以下である脱硫軽油を示す。
【0030】
本発明のA重油組成物が、基材として脱硫軽油を含み、かつ、脱硫軽油の硫黄分が、脱硫軽油の全質量に対して10質量ppm以下である場合、硫黄分10質量ppm以下である脱硫軽油の含有量は、A重油組成物の全容量に対して、好ましくは40容量%以上であり、より好ましくは50容量%である。
基材が、硫黄分10質量ppm以下の脱硫軽油を40容量%以上含むと、硫黄分が500質量ppm〜2000質量ppm程度の比較的硫黄分の多い、従来の軽油を用いた場合と同等の低温流動性能を確保することが可能となる。
なお、硫黄分は、JIS K 2541−6(2003)「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」に準じて測定した値を意味する。
【0031】
本発明のA重油組成物は、基材として、上記脱硫軽油以外に、灯油、脱硫灯油、間脱軽質軽油、間脱重質軽油、直脱軽質軽油、直脱重質軽油、直留軽油、分解軽油、及び減圧軽油から選ばれた少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0032】
常圧蒸留残油は、原油を常圧蒸留してLPG、ナフサ、灯油および直留軽油を留出させたときの残留油である。
減圧蒸留残油は、上記常圧蒸留残油をさらに減圧蒸留して減圧軽油を留出させたときの残留油である。
また、上記減圧蒸留残油には、高粘度の潤滑油に適した重質留分とアスファルト留分とが混在しており、潤滑油に適した重質留分が溶剤抽出油である。
脱硫減圧軽油は、軽質脱硫減圧軽油と重質脱硫減圧軽油の総称であって、軽質脱硫減圧軽油は上記減圧軽油を間接脱硫処理して得られる軽油留分のうち軽質なものである。また、重質脱硫減圧軽油は上記減圧軽油を間接脱硫処理して得られる軽油留分のうち重質なものである。
接触分解軽油は、流動接触分解装置又は残油流動接触分解装置から生成する150℃〜380℃の留分である。
直接脱硫軽油は、上記常圧蒸留残油、減圧蒸留残油又はこれらの混合物を水素化脱硫して得られる軽質な留分である。
【0033】
本発明のA重油組成物は、必要に応じて各種の添加剤を適宜配合することができる。
添加剤としては、低温流動性向上剤、セタン価向上剤、界面活性剤、防錆剤、清浄剤、潤滑性向上剤、識別剤等が挙げられる。
添加剤は、1種単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
[A重油組成物の性状]
本発明のA重油組成物の性状について、以下に説明する。
【0035】
本発明のA重油組成物において、10容量%留出温度(T10)は、好ましくは140℃〜240℃であり、より好ましくは150℃〜230℃であり、更に好ましくは160℃〜220℃である。
本発明のA重油組成物において、50容量%留出温度(T50)は、好ましくは230℃〜330℃であり、より好ましくは240℃〜320℃であり、更に好ましくは250℃〜310℃である。
本発明のA重油組成物において、90容量%留出温度(T90)は、好ましくは300℃〜380℃であり、より好ましくは305℃〜375℃であり、更に好ましくは310〜370℃である。
T10、T50及びT90が上記範囲にあることにより、燃焼異常を防止することが可能となる。
なお、T10、T50及びT90は、JIS K 2254(1998)「石油製品−蒸留試験方法」に準じて測定した値を意味する。
【0036】
本発明のA重油組成物において、セタン指数は、好ましくは35〜55であり、より好ましくは38〜54、更に好ましくは40〜53である。セタン指数が上記範囲内であれば、燃焼性の向上の観点から好ましい。
なお、セタン指数は、ASTM D4737−90「Standard Test Method for Calculated Cetane Index by Four Variable Equation」に規定されている指数を意味する。
セタン指数は、15℃における密度並びに蒸留の10%、50%及び90%の各留出温度から計算により求められる値である。また、セタン指数は、セタン価との相関が良好であるため、セタン価の代わりに用いられることが多い。
【0037】
本発明のA重油組成物において、15℃における密度は、好ましくは0.80g/cm
3〜0.88g/cm
3であり、より好ましくは0.8g/cm
3〜0.87g/cm
3である。
15℃における密度が上記範囲内にあることにより、A重油組成物に対して、体積当たりの発熱量を十分に付与することが可能となり、工業炉、ボイラー等における使用時の燃焼の不均一性、失火等を抑制することが可能となる。
なお、15℃における密度は、JIS K 2249(2011)「原油及び石油製品−密度試験方法」に準じて測定した値を意味する。
【0038】
本発明のA重油組成物において、50℃における動粘度は、好ましくは2.3mm
2/s〜3.8mm
2/sであり、より好ましくは2.3mm
2/s〜3.7mm
2/sであり、更に好ましくは2.4mm
2/s〜3.5mm
2/sである。
50℃における動粘度が上記範囲内にあることにより、燃焼の不均一性及び失火を抑制することが可能となり、A重油組成物を安定して供給することが可能となる。
なお、50℃における動粘度は、JIS K 2283(2000)「原油及び石油製品−動粘度試験方法」に準じて測定した値を意味する。
【0039】
本発明のA重油組成物において、引火点は、好ましくは60℃〜90℃、より好ましくは65℃〜88℃、更に好ましくは70℃〜87℃である。
引火点が上記範囲内であると、A重油組成物を容易に取り扱うことが可能となる。
なお、引火点は、JIS K 2265−3(2007)「原油及び石油製品−引火点試験方法」に準じて測定した値を意味する。
【0040】
本発明のA重油組成物において、硫黄分は、A重油組成物の全質量に対して、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
硫黄分が、2.0質量%以下であることにより、工業炉、ボイラー等で燃焼した際に排出される。硫黄酸化物(SOx)量を低減するとともに、煙道腐食を抑制することが可能となる。
なお、硫黄分は、JIS K 2541−6(2003)「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」に準じて測定した値を意味する。
【0041】
本発明のA重油組成物において、窒素分は、A重油組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.03質量%以下である。
窒素分が、0.1質量%以下であることにより、工業炉、ボイラー等で燃焼した際に排出される硫黄酸化物(SOx)量を低減するとともに、煙道腐食を抑制することが可能となる。
なお、窒素分は、JIS K 2609(1998)「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に記載の化学発光法に準じて測定した値を意味する。
【0042】
本発明のA重油組成物において、水分は、A重油組成物の全質量に対して0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。
本発明のA重油組成物において、水分が0.1質量%以下であることにより、燃料の不均一性、失火等を抑制することがき、金属腐食、冬季のフィルター目詰まりを抑制することが可能となる。
なお、水分は、JIS K 2275(1996)「原油及び石油製品−水分試験方法」に記載のカールフィッシャー式電量滴定法に準じて測定した値を意味する。
【0043】
本発明のA重油組成物において、反応は、中性であることが好ましい。
なお、本明細書において、「反応」の語は、A重油組成物中に含まれる水溶性の酸又は塩基の有無を判断する反応試験を指し、試験結果が酸性又はアルカリ性を示す場合、A重油組成物は、水溶性の酸又は塩基を含むことを意味する。試験結果が中性を示す場合、A重油組成物は、水溶性の酸又は塩基を含まないことを意味する。
具体的には、試料に水を加え、加温して振り混ぜ、水相に酸及び塩基を抽出し、指示薬としてメチルオレンジ又はフェノールフタレインを用いて、抽出した水相の酸性、中性又はアルカリ性を判定することによって、試料中に含まれる酸及び塩基の有無を判断する。
本発明のA重油組成物において、反応が中性であることにより、燃料タンクや燃料配管においてA重油組成物が優れた貯蔵安定性を発揮することが可能となる。
なお、上記反応は、JIS K 2252(1998)「石油製品−反応試験方法」に準じて確認することができる。
【0044】
本発明のA重油組成物において、芳香族炭化水素分は、A重油組成物の全容量に対して、25容量%〜45容量%であることが好ましく、30容量%〜40容量%であることがより好ましい。
芳香族炭化水素分が上記範囲にあれば、スラッジの発生を抑制できる観点から好ましい。
なお、芳香族炭化水素分は、石油学会法JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準じて測定した値を意味する。
【0045】
[A重油組成物の製造方法]
本発明のA重油組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、以下のように製造することができる。
硫黄分が、脱硫軽油の全質量に対して、10質量ppm以下である脱硫軽油を、A重油組成物の全容量に対して40容量%以上と、残炭調整材と、を混合し、必要に応じて、分解軽油と、残炭調整材とを混合して、A重油組成物を製造することができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。
【0047】
(実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例9)
表1に示す性状の残炭調整材1及び2並びにその他の残炭調整材3及び4と、基材(市販溶剤1及び市販溶剤2、並びに、表3に示す性状の脱硫軽油及び分解軽油)と、を用い、表4及び表5に示す性状のA重油組成物を調製した。
なお、表4並びに表5に示す実施例1〜7及び比較例1〜9のA重油組成物の性状は、既述の方法に準拠して測定を行った。
【0048】
【表1】
【0049】
表1中、残炭調整材1は、減圧蒸留装置から留出する沸点範囲が400℃〜680℃の留分であり、本発明に係る残炭調整材に属するものである。
表1中、残炭調整材2は、減圧蒸留装置から留出する沸点範囲が420℃〜660℃の留分であり、本発明に係る残炭調整材に属するものである。
【0050】
表1中、その他の残炭調整材3は、減圧蒸留装置から留出する減圧残油に、流動接触分解装置から留出する分解軽油、及び常圧蒸留装置から留出する軽油留分を、配合した沸点範囲が210℃〜770℃の留分である。
【0051】
表1中、その他の残炭調整材4は、流動接触分解装置から留出する残渣油、及びスラリーオイルであり、沸点範囲は210℃〜680℃の留分である。
なお、その他の残炭調整材3及びその他の残炭調整材4は、本発明に係る残炭調整材に属するものではない。
【0052】
残炭調整材及びその他の残炭調整材におけるアスファルテンの数平均分子量(Mn)は、VPO法(蒸気圧式分子量測定法、Vapor Pressure Osomometry)により求めた。その結果を表1に示す。
数平均分子量(Mn)の測定条件は以下のとおりである。
試料濃度:100mg/ml
溶媒:ベンゼン
試験温度:40℃
【0053】
表1中の残炭調整材及びその他の残炭調整材のアスファルテンの性状において、芳香環数(RN)、芳香族炭素(CA)及び脂肪族炭素(CP)は、NMR装置を用いて、表2に示す測定条件で測定した値である。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例1〜4及び比較例1〜5において、基材として、イソパラフィン分に富む市販溶剤1(イソパラフィン系溶剤)及び、芳香族分に富む市販溶剤2(芳香族油(C10アロマ留分))を、表4に示す混合比となるように配合して、A重油組成物を調製した。
また、実施例5〜7及び比較例6〜9において、表3に示す性状の脱硫軽油及び分解軽油を、表5に示す混合比で配合してA重油組成物を調製した。
実施例1〜7及び比較例1〜9のA重油組成物の性状を表4及び表5に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
表4及び表5中、引火点(PM)とは、ペンスキーマルテンス密閉式引火点であることを示す。
また、表3〜表5中「−」とは、当該成分を含まないことを示す。
【0060】
[評価]
<貯蔵安定性(スラッジ量の変化量)>
(貯蔵試験)
ホウ珪酸ガラス製の110mL瓶に、上記で調製したA重油組成物100mLを入れ、遮光した。遮光した瓶を、43.3℃のオイルバスに設置し、2週間放置した。2週間経過したA重油組成物を「貯蔵試験後の試料」とし、以下の方法でスラッジ量を評価した。
【0061】
(スラッジ量の測定)
メンブランフィルター(孔径1.2μm)の重量を0.1mgの桁まで求めた後、吸引ろ過装置にメンブランフィルターをセットし、貯蔵試験後の試料100mLをろ過した。メンブランフィルター上に液体が見えなくなった後、メンブランフィルターの縁に油状のものが確認できなくなるまで、n−ヘプタンで洗浄した。その後、メンブランフィルターを減圧乾燥させ、乾燥後のメンブランフィルターの重量を測定し、乾燥後のメンブランフィルターの重量からフィルターの重量を引き、スラッジ量(以下、「試験後のスラッジ量」ともいう。)を求めた。
また、上記貯蔵試験後の試料を、貯蔵試験を行っていないA重油組成物に変えた以外は、上記と同様の方法で、スラッジ量(以下、「試験前のスラッジ量」ともいう。)を求めた。
【0062】
スラッジ量の変化量(Δ)は、下記の式に従って算出した。その結果を表6及び表7に示す。
スラッジ量の変化量(Δ)=試験後のスラッジ量(mg)−試験前のスラッジ量(mg)
スラッジ量の変化量(Δ)が1.0未満であれば、スラッジの発生を抑制し、貯蔵安定性に優れると判断する。
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】
表6及び表7に示すように、基材と、特定の残炭調整材と、を含み、10%残留炭素分が組成物の全質量に対して0.20質量%以上である実施例1〜実施例7のA重油組成物は、貯蔵試験の前後で、スラッジ量の変化量が小さいことがわかる。一方、その他の残炭調整材を含む比較例1〜9のA重油組成物では、貯蔵試験後にスラッジが多く発生することが分かった。
以上より、本発明のA重油組成物は、スラッジの発生を抑制することができ、優れた貯蔵安定性を有する。