(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797073
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】運転制御装置及び発電設備
(51)【国際特許分類】
H02B 1/40 20060101AFI20201130BHJP
H02H 7/06 20060101ALI20201130BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
H02B1/40 A
H02H7/06 Z
H02H9/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-93214(P2017-93214)
(22)【出願日】2017年5月9日
(65)【公開番号】特開2018-191453(P2018-191453A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】富尾 剛至
【審査官】
太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−195655(JP,A)
【文献】
特開2002−204531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/40− 1/44
H02H 7/06
H02H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側端子が電力系統に対して接続される主幹ブレーカと、前記主幹ブレーカの二次側端子に対して接続されている複数の分岐ブレーカとを備え、前記主幹ブレーカの前記二次側端子及び複数の前記分岐ブレーカの間の単相3線式の電気経路内の所定の接続部位で発電装置がU相及びV相に接続されている受電設備において、前記発電装置の運転を制御する運転制御装置であって、
前記主幹ブレーカの前記二次側端子及び複数の前記分岐ブレーカの間の前記電気経路のうち、前記発電装置が接続される前記接続部位と複数の前記分岐ブレーカとの間の部分のU相を流れるU相電流又はV相を流れるV相電流が第1の設定値以上になると前記発電装置の出力電流を低下させ、前記U相電流又は前記V相電流が前記第1の設定値より大きい第2の設定値以上になると前記発電装置の出力電流をゼロにさせる電流制御部を備える運転制御装置。
【請求項2】
前記主幹ブレーカの前記一次側端子に接続される電力線のU相及びV相を流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記電流制御部は、前記電流検出部で検出される電流と前記発電装置の出力電流との和から前記U相電流及び前記V相電流を決定する請求項1に記載の運転制御装置。
【請求項3】
前記主幹ブレーカの前記二次側端子及び複数の前記分岐ブレーカの間の前記電気経路のうち、前記発電装置が接続される前記接続部位と複数の前記分岐ブレーカとの間の部分のU相を流れる前記U相電流及びV相を流れる前記V相電流を検出するための電流検出部を備える請求項1に記載の運転制御装置。
【請求項4】
前記発電装置は、前記主幹ブレーカの前記二次側端子に接続される請求項1〜3の何れか一項に記載の運転制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の運転制御装置と、前記発電装置とを備える発電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置の運転を制御する運転制御装置及び発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、家屋等の需要家施設に燃料電池などの発電装置15を設置し、需要家施設内の電力負荷の少なくとも一部をその発電装置15の発電電力で賄うことが行われている。
図4は、特許文献1に記載のシステムを模式的に記載した回路図である。図示するように、電力系統から引き込まれた引込線1に対して電力量計2が接続され、その電力量計2に接続される電力線3が主幹ブレーカ4に接続されている。このような単相3線式の受電設備では、電力線3は、電圧線であるU相線及びV相線と、中性線であるN相線との合計3本の電力線3u,3n,3vで構成されている。主幹ブレーカ4に3P2E型のものが用いられていれば、U相の電力線3u及びV相の電力線3vでの過電流の継続が防止される。即ち、U相の電力線3u又はV相の電力線3vを流れる電流が例えば遮断容量である30Aを超えると、所定の時間が経過するまでの間に主幹ブレーカ4が電力線3を強制的に遮断する。
【0003】
図4に示す例では、U相の電力線3uには100V負荷である電力負荷16uが接続され、V相の電力線3vには100V負荷である電力負荷16vが接続されている。加えて、発電装置15が、配線13(13u,13n,13v)を介して電力線3(3u,3n,3v)に接続されている。この例では、電力負荷16uの消費電力は0Wであり、電力負荷16vの消費電力は3500Wである。この場合、発電装置15は1000W(200V)の発電を行っているため、U相の配線13u及びV相の配線13vのそれぞれには5Aの電流が流れる。尚、図中では発電装置15の出力電流にはマイナスの符号を付けている。そして、主幹ブレーカ4のU相に流れる電流は−5Aとなり、主幹ブレーカ4のV相に流れる電流は30Aとなる。よって、3500Wの消費電力のうち、1000Wが発電装置15から供給される電力によって賄われ、2500Wが電力系統から供給される電力によって賄われた計算になる。
【0004】
このように、
図4に示す例では、U相の電力線3uを流れる電流の大きさは5Aであり、V相の電力線3vを流れる電流の大きさは30Aであるため、主幹ブレーカ4の遮断容量が30Aであれば主幹ブレーカ4は遮断作動することはない。ところが、
図4に示す例では、N相の電力線3nを流れる電流の大きさは35Aになっている。つまり、発電装置15が発電運転を行っている場合、電力負荷16u及び電力負荷16vの負荷状態によっては、主幹ブレーカ4を流れる各相の電流のうち、U相線及びV相線を流れる電流が過電流ではなくても、N相線(中性線)を流れる電流が過電流になることがある。ところが、主幹ブレーカ4に3P2E型のものが用いられている場合には、N相線の過電流に基づいて遮断する機能が無いため、U相線及びV相線での過電流の継続は防止されるが、N相線での過電流の継続は防止されないという課題がある。また、既に設置されている3P2E型の主幹ブレーカを、N相線での過電流の継続も防止できる3P3E型の主幹ブレーカに交換することは、コストが高くなる点に課題がある。
【0005】
そのような課題に鑑みて、特許文献1に記載の発明では、主幹ブレーカ4が過電流防止の対象としていないN相線(中性線)を流れる電流を直接測定することで、或いは、U相線及びV相線を流れる電流の測定結果を利用してN相線(中性線)を流れる電流を演算することで、N相線での過電流が継続されないような対策を行っている。具体的には、U相線及びV相線の検出電流値を利用してN相線を流れる電流値を演算し、演算した電流値が第1の設定値以上になると発電装置15の出力を低下させ、また演算した電流値が第1の設定値より大きい第2の設定値以上になると発電装置15の出力を停止させている。
【0006】
このように、特許文献1に記載の発明では、N相線(中性線)を流れる電流が過電流になっているか否かに着目しており、そのN相線(中性線)を流れる電流値を知ることが前提となっている。
【0007】
特許文献1には、発電装置15が電力系統に対してどのような回路構成で連系されているのかが具体的に記載されていないが、その点について以下に考察する。
図5は、分電盤11の内部構造を概略的に示した図である。
図5に示すように、電力系統から引き込まれた引込線1に対して電力量計2が接続され、その電力量計2に接続される電力線3が分電盤11に引き込まれている。分電盤11では、電力線3の上流側(電力系統側)から見て、配線用遮断器としての主幹ブレーカ4と漏電遮断器5と複数の分岐ブレーカ12とが順に設置される。このような単相3線式の受電設備の場合、電力線3は、電圧線であるU相線及びV相線と、中性線であるN相線との合計3本の電力線3u,3n,3vで構成されている。主幹ブレーカ4の一次側(上流側)に接続される電力線3としての電気ケーブルはビス9によって一次側端子4aに留められ、主幹ブレーカ4の二次側(下流側)に接続される電力線3としての電気ケーブルはビス10によって二次側端子4bに留められている。
【0008】
図5に例示する分電盤11では、主幹ブレーカ4と漏電遮断器5とを接続する電力線3には電気ケーブルが用いられ、漏電遮断器5と各分岐ブレーカ12とを接続する電力線3には電気ケーブル及び銅バー6u,6n,6vが用いられている。このように、U相及びN相及びV相の各相の電力線3u,3n,3vに対応した3本の銅バー6u,6n,6vが設置され、それら銅バー6u,6n,6vから各分岐ブレーカ12(12a,12b,12c,12d)へと電力線3が分岐される。
図5に示す例の銅バー6u,6n,6vでは、ビス孔7の箇所で渡りバーをビス8によって固定する構成になっている。
【0009】
図5に示すように、銅バー6u,6n,6v上に他の渡りバーなどを接続するためのビス孔7が残っていれば、そのビス孔7の箇所を利用して発電装置15に専用のブレーカを追加で接続して、その専用ブレーカを介して発電装置15を需要家施設に引き込まれた電力線3に連系することもできる。このような方法で発電装置15を接続すれば、
図4に示したような回路構成になると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4540248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
尚、
図5に示したような銅バー6u,6n,6v上に他の配線などを接続するビス孔7などが残っていない場合や、そもそも主幹ブレーカ4や漏電遮断器5と分岐ブレーカ12との間の電力線3が銅バーなどの形態で露出していない場合には、発電装置15に専用のブレーカを設置できないという問題がある。そのような場合、発電装置15に専用のブレーカの設置方法としては、以下の2通りの方法が考えられる。
【0012】
一つ目の方法は、
図6に示すように、主幹ブレーカ4の一次側(上流側)に発電装置15に専用のブレーカ14を接続する方法である。即ち、電力線3が主幹ブレーカ4の一次側でビス9などによって固定されているので、そのビス9を用いて発電装置15に専用のブレーカ14に接続された配線13(13u,13n,13v)も共に固定できる。但し、このようなブレーカ14の設置方法を採用した場合、主幹ブレーカ4よりも上流側(電力系統側)での工事になるため、電力系統を管理する電力会社等によって電力系統の停電を行ってもらう必要があるという問題がある。また、主幹ブレーカ4を遮断作動させても、ブレーカ14が遮断作動していなければ発電装置15は電力系統に連系されたままになってしまうという問題がある。
【0013】
二つ目の方法は、
図7に示すように、主幹ブレーカ4の二次側(下流側)に発電装置15に専用のブレーカ14を接続する方法である。即ち、電力線3が主幹ブレーカ4の二次側でビス10などによって固定されているので、そのビス10を用いて発電装置15に専用のブレーカ14に接続された配線13(13u,13n,13v)も共に固定できる。但し、このようなブレーカ14の設置方法を採用した場合、主幹ブレーカ4にはその遮断容量を超える電流が流れていないにも関わらず、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12の間の電気経路のうち、発電装置15が接続される接続部位(
図7では二次側端子4b)と複数の分岐ブレーカ12との間の部分にはその遮断容量を超える電流が流れ続ける可能性がある。
【0014】
図8及び
図9は、単相3線式の受電設備に流れる電流を模式的に示す図である。具体的には、
図8は発電装置15が発電を行っていない状態であり、
図9は発電装置15が1000W(200V)の発電を行っている状態である。尚、図中では発電装置15の出力電流にはマイナスの符号を付けている。
【0015】
図8に示すように、U相の電力線3uに接続された100V負荷である電力負荷16aは2500Wの電力を消費しており、同じくU相の電力線3uに接続された100V負荷である電力負荷16bは3000Wの電力を消費している。この場合、分岐ブレーカ12aのU相及びN相には25Aの電流が流れ、分岐ブレーカ12bのU相及びN相には30Aの電流が流れる。そして、全ての消費電力(5500W)が電力系統から受電する電力で賄われるため、主幹ブレーカ4のU相及びN相には55Aの電流が流れる。よって、上述のように主幹ブレーカ4の遮断容量が50Aであれば、所定の時間が経過するまでの間に主幹ブレーカ4は遮断作動する。
【0016】
図9の場合も、電力負荷16aは2500Wの電力を消費しており、電力負荷16bは3000Wの電力を消費している点で同じである。加えて、発電装置15が1000W(200V)の発電を行っているため、発電装置15からは、U相の配線13uを介して5Aの電流が供給され、V相の配線13vを介して5Aの電流が供給される。つまり、電力負荷16a及び電力負荷16bで必要な電力である5500Wのうち、1000Wが発電装置15の発電電力で賄われ、残りの4500Wが受電されて電力量計2で計測される。そして、U相の電力負荷16a及び電力負荷16bに供給される電流(55A)のうち、5A分が発電装置15から供給された電流によって賄われることで、主幹ブレーカ4のU相には50Aの電流が流れる。
【0017】
図9の場合、主幹ブレーカ4のU相及びV相を流れる電流は遮断容量である50A以下であるので、遮断作動しない。ところが、主幹ブレーカ4の二次側(下流側)のU相線、即ち、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12の間の電気経路のうち、発電装置15が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカ12との間の部分のU相線には、発電装置15から供給された電流(5A)も含めて、合計で55Aの電流が流れている。加えて、主幹ブレーカ4では監視されない中性線のN相線でも55Aの電流が流れている。
【0018】
このように、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12の間の電気経路内の所定の接続部位で発電装置15が接続されている場合には、その接続部位から分岐ブレーカ12に至る間の電気経路で流れる過電流が放置される可能性がある。
【0019】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、主幹ブレーカの二次側から分岐ブレーカに至る間の電気経路に過電流が継続して流れることを防止できる運転制御装置及び発電設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するための本発明に係る運転制御装置の特徴構成は、一次側端子が電力系統に対して接続される主幹ブレーカと、前記主幹ブレーカの二次側端子に対して接続されている複数の分岐ブレーカとを備え、前記主幹ブレーカの前記二次側端子及び複数の前記分岐ブレーカの間の単相3線式の電気経路内の所定の接続部位で発電装置がU相及びV相に接続されている受電設備において、前記発電装置の運転を制御する運転制御装置であって、
前記主幹ブレーカの前記二次側端子及び複数の前記分岐ブレーカの間の前記電気経路のうち、前記発電装置が接続される前記接続部位と複数の前記分岐ブレーカとの間の部分のU相を流れるU相電流又はV相を流れるV相電流が第1の設定値以上になると前記発電装置の出力電流を低下させ、前記U相電流又は前記V相電流が前記第1の設定値より大きい第2の設定値以上になると前記発電装置の出力電流をゼロにさせる電流制御部を備える点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、電流制御部は、主幹ブレーカの二次側端子及び複数の分岐ブレーカの間の電気経路のうち、発電装置が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカとの間の部分のU相を流れるU相電流又はV相を流れるV相電流が第1の設定値以上になると発電装置の出力電流を低下させる。つまり、発電装置のU相及びV相の出力電流が低下することで、主幹ブレーカの二次側端子及び複数の分岐ブレーカの間の電気経路のうち、発電装置が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカとの間の部分のU相を流れるU相電流及びV相を流れるV相電流が小さくなる。その結果、主幹ブレーカの二次側から分岐ブレーカに至る間の電気経路に大電流が流れ続けることを回避できる。
【0022】
但し、上述したように発電装置の出力電流を低下させたとしても、分岐ブレーカの二次側に接続される電力負荷での消費電力が大きくなると、電力系統から供給される電流自体が大きくなるため、電力系統から供給される電流と発電装置の出力電流との合計、即ち、主幹ブレーカの二次側端子及び複数の分岐ブレーカの間の電気経路のうち、発電装置が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカとの間の部分のU相を流れるU相電流又はV相を流れるV相電流が非常に大きくなる可能性もある。
そこで本特徴構成では、電流制御部は、主幹ブレーカの二次側端子及び複数の分岐ブレーカの間の電気経路のうち、発電装置が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカとの間の部分のU相を流れるU相電流又はV相を流れるV相電流が、上記第1の設定値より大きい第2の設定値以上になると発電装置の出力電流をゼロにさせる。つまり、発電装置のU相及びV相の出力電流をゼロにすることで、主幹ブレーカの二次側端子及び複数の分岐ブレーカの間の電気経路のうち、発電装置が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカとの間の部分のU相を流れるU相電流及びV相電流は、電力系統から主幹ブレーカを経由して供給される電流のみになる。その結果、主幹ブレーカの動作が正常であれば、主幹ブレーカの二次側から分岐ブレーカに至る間の電気経路に大電流が流れ続けることを回避できる。
【0023】
本発明に係る運転制御装置の別の特徴構成は、前記主幹ブレーカの前記一次側端子に接続される電力線のU相及びV相を流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記電流制御部は、前記電流検出部で検出される電流と前記発電装置の出力電流との和から前記U相電流及び前記V相電流を決定する点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、電流検出部は、主幹ブレーカの一次側端子に接続される電力線のU相及びV相を流れる電流を検出する。例えば、受電設備での合計の電力使用量を検出するための検出器や、受電設備から電力系統への逆潮流電力を検出するための検出器として使用するために、主幹ブレーカの一次側端子に接続される電力線のU相及びV相を流れる電流を検出するための検出器が設けられていれば、その検出器を本特徴構成の電流検出部として利用できる。
【0025】
本発明に係る運転制御装置の更に別の特徴構成は、前記主幹ブレーカの前記二次側端子及び複数の前記分岐ブレーカの間の前記電気経路のうち、前記発電装置が接続される前記接続部位と複数の前記分岐ブレーカとの間の部分のU相を流れる前記U相電流及びV相を流れる前記V相電流を検出するための電流検出部を備える点にある。
【0026】
上記特徴構成によれば、主幹ブレーカの二次側端子及び複数の分岐ブレーカの間の電気経路のうち、発電装置が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカとの間の部分のU相を流れるU相電流及びV相を流れるV相電流を検出するための電流検出部を用いることで、主幹ブレーカの二次側から分岐ブレーカに至る間の電気経路を流れる電流を直接検出できる。
【0027】
本発明に係る運転制御装置の更に別の特徴構成は、前記発電装置は、前記主幹ブレーカの前記二次側端子に接続される点にある。
【0028】
上記特徴構成によれば、発電装置を主幹ブレーカの二次側端子に対して追加で接続すればよいので、主幹ブレーカの二次側端子及び複数の分岐ブレーカの間の電気経路に用いられている電気ケーブルなどに切断や加工などの変更を加える必要がない。
【0029】
上記目的を達成するための本発明に係る発電設備の特徴構成は、上記運転制御装置と、前記発電装置とを備える点にある。
【0030】
上記特徴構成によれば、主幹ブレーカの二次側から分岐ブレーカに至る間の電気経路に過電流が継続して流れることを防止できる発電設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態の運転制御装置及び発電設備が設けられる分散型発電システムを概略的に示す図である。
【
図2】電流制御部が行う電流制限処理を説明するフローチャートである。
【
図3】第2実施形態の運転制御装置及び発電設備が設けられる分散型発電システムを概略的に示す図である。
【
図6】分散型発電システムを概略的に示す図である。
【
図7】分散型発電システムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の第1実施形態に係る運転制御装置について説明する。
図1は、第1実施形態の運転制御装置及び発電設備が設けられる分散型発電システムを概略的に示す図である。図示する分散型発電システムは、一次側端子4aが電力系統に対して接続される主幹ブレーカ4と、主幹ブレーカ4の二次側端子4bに対して接続されている複数の分岐ブレーカ12(12a,12b,12c,12d)とを備え、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12の間の単相3線式の電気経路内の所定の接続部位で発電装置15がU相及びV相に接続されている受電設備である。また、
図1には、受電設備の一部である分電盤11の内部構造も概略的に示している。
【0033】
図1に示すように、電力系統から引き込まれた引込線1に対して電力量計2が接続され、その電力量計2に接続される電力線3が分電盤11に引き込まれている。分電盤11では、電力線3の上流側(電力系統側)から見て、配線用遮断器としての主幹ブレーカ4と漏電遮断器5と複数の分岐ブレーカ12とが順に設置される。単相3線式の受電設備の場合、電力線3は、電圧線であるU相線及びV相線と、中性線であるN相線との合計3本の電力線3u,3n,3vで構成されている。
【0034】
主幹ブレーカ4の一次側(上流側)に接続される電力線3はビス9によって一次側端子4aに留められ、主幹ブレーカ4の二次側(下流側)に接続される電力線3はビス10によって二次側端子4bに留められている。主幹ブレーカ4には3P2E型のものが用いられているので、U相及びV相での過電流の継続が防止される。即ち、主幹ブレーカ4のU相又はV相を流れる電流が例えば遮断容量である30Aを超えると、所定の時間が経過するまでの間に主幹ブレーカ4が電力線3を強制的に遮断する。
【0035】
電力量計2と主幹ブレーカ4との間の電力線3には電気ケーブルが用いられている。主幹ブレーカ4と漏電遮断器5とを接続する電力線3には電気ケーブルが用いられ、漏電遮断器5と各分岐ブレーカ12とを接続する電力線3には電気ケーブル及び銅バー6u,6n,6vが用いられている。
【0036】
図1に例示する分電盤11では、U相及びN相及びV相の各相の電力線3u,3n,3vに対応した3本の銅バー6u,6n,6vが設けられ、銅バー6u,6n,6vでは、ビス孔7の箇所で渡りバーをビス8によって固定する構成になっている。
【0037】
発電装置15は、主幹ブレーカ4の二次側端子4bに接続されている。具体的には、発電装置15に接続される配線13がブレーカ14に接続され、そのブレーカ14に接続される配線13が主幹ブレーカ4の二次側端子4bに接続されている。ブレーカ14は分電盤11の内部に設置されている。配線13には電気ケーブルが用いられており、その電気ケーブルは主幹ブレーカ4の二次側端子4bにビス10で留められる。
【0038】
本実施形態において、発電装置15の運転を制御する運転制御装置は、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12(12a,12b,12c,12d)の間の電気経路のうち、発電装置15が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカ12との間の部分のU相を流れるU相電流又はV相を流れるV相電流が第1の設定値以上になると発電装置15の出力電流を低下させ、U相電流又はV相電流が第1の設定値より大きい第2の設定値以上になると発電装置15の出力電流をゼロにさせる電流制御部20を備える。
【0039】
更に、本実施形態では、発電装置15の運転を制御する運転制御装置は、主幹ブレーカ4の一次側端子4aに接続される電力線3のU相及びV相を流れる電流を検出する電流検出部18(18u、18v)を備える。電流検出部18は、例えば、計器用変流器(カレントトランス)を用いて実現できる。具体的には、主幹ブレーカ4の一次側端子4aに接続される電力線3には電気ケーブルが用いられており、電流検出部18は、主幹ブレーカ4の一次側端子4aに接続される電力線3を実現する電気ケーブルに流れる電流を検出する。その電流検出部18の検出結果は電流制御部20に伝達される。また、電流制御部20には、発電装置15の発電制御部15bから、発電装置15の出力電流(U相線である配線13uへの出力電流及びV相線である配線13vへの出力電流)も伝達される。そして、電流制御部20は、電流検出部18で検出される電流と発電装置15の出力電流との和からU相電流及びV相電流を決定する。
【0040】
発電装置15は、燃料電池や、エンジンとそのエンジンによって駆動される発電機などの様々な装置によって実現される発電部15cと、そのような発電部15cで発生した電力を所望の電圧、周波数、位相の電力に変換するインバータなどの電力変換部15aと、発電部15c及び電力変換部15aの動作を制御する発電制御部15bとを有する。発電制御部15bは、所定の目標出力電流を決定し、その目標出力電流が電力変換部15aから配線13を経由してブレーカ14及び主幹ブレーカ4の方へ出力されるように、発電部15c及び電力変換部15aの動作を制御する。
【0041】
以上のように、発電装置15の出力電流は、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12(12a,12b,12c,12d)の間の電気経路のうち、発電装置15が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカ12との間の部分を流れる。また、同じ部分には、主幹ブレーカ4を経由して電力系統から供給される電流も流れる。そのため、主幹ブレーカ4はその遮断容量よりも大きい電流が流れ続けると遮断作動するが、主幹ブレーカ4にその遮断容量を超える電流が流れていないにも関わらず、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12の間の電気経路のうち、発電装置15が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカ12との間の部分には、その遮断容量を超える電流(発電装置15からの電流と電力系統からの電流との合計の電流)が流れ続ける可能性がある。つまり、本実施形態の場合、主幹ブレーカ4の遮断容量と、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び分岐ブレーカ12の間の電気経路に用いられている電気ケーブル及び銅バーの許容電流とは同じ又は近い値になっているため、その電気ケーブル及び銅バーには許容電流を超える電流が流れ続ける可能性がある。
【0042】
従って、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12の間の電気経路のうち、発電装置15が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカ12との間の部分に流れる電流を、その許容電流以下に抑制したいならば、必要に応じて発電装置15の出力電流を抑制すればよい。このような考えの下で行われるのが、以下に説明する電流制限処理である。
【0043】
図2は、電流制御部20が行う電流制限処理を説明するフローチャートである。
発電装置15が運転している間、電流検出部18は、主幹ブレーカ4の一次側端子4aに接続される電力線3のU相及びV相を流れる電流を検出し、その検出結果は電流制御部20に伝達される。また、電流制御部20には、発電装置15の発電制御部15bから、発電装置15の出力電流(U相線である配線13uへの出力電流及びV相線である配線13vへの出力電流)も伝達される。工程#10において電流制御部20は、電流検出部18で検出される電流と発電装置15の出力電流との和からU相電流及びV相電流を決定し、その電流が第1の設定値以上であるか否かを判定する。電流制御部20は、予め第1の設定値を記憶している。例えば、第1の設定値は主幹ブレーカ4の遮断容量と同じ又は近い値である50Aなどである。
そして、電流制御部20は、上記電流が第1の設定値以上であれば(工程#10において「Yes」)工程#11に移行し、上記電流が第1の設定値よりも小さければ(工程#10において「No」)工程#10を繰り返す。
【0044】
工程#11において電流制御部20は、タイマー計時を開始する。次に、工程#12において電流制御部20は、電流検出部18で検出される電流と発電装置15の出力電流との和から決定される上記U相電流又は上記V相電流が、上記第1の設定値よりも大きい第2の設定値以上であるか否かを判定する。電流制御部20は、予め第2の設定値を記憶している。例えば、第2設定値は60Aなどの値である。
そして、電流制御部20は、上記電流が第2の設定値以上であれば工程#17に移行し、上記電流が第2の設定値よりも小さければ工程#13に移行する。
【0045】
工程#13において電流制御部20は、電流検出部18で検出される電流と発電装置15の出力電流との和から決定される上記U相電流又は上記V相電流が、上記第1の設定値以上であるか否かを再び判定する。そして、電流制御部20は、U相電流又はV相電流が第1の設定値以上であれば、工程#15に移行して発電装置15の出力電流を低下させる。発電装置15では、発電制御部15bがその出力電流の低下指令を受け付けて、電力変換部15aの動作及び発電部15cの動作を制御することで、発電装置15の出力電流の低下が行われる。電流制御部20は、発電装置15に対する出力電流の低下指令を、例えば、正規の出力電流の75%や50%にするように割合で指令する場合や、1A低下や2A低下などの低下幅で指令する場合などの様々な方法で行うことができる。尚、電流制御部20は、工程#13の時点でU相電流及びV相電流が第1の設定値よりも小さくなっていれば、工程#14に移行してタイマー計時をキャンセルすると共に元の出力電流に戻す。
【0046】
このように、電流制限処理により発電装置15のU相及びV相の出力電流が低下することで、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12の間の電気経路のうち、発電装置15が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカ12との間の部分のU相を流れるU相電流及びV相電流が小さくなる。その結果、主幹ブレーカ4の二次側から分岐ブレーカ12に至る間の電気経路に大電流が流れ続けることを回避できる。
【0047】
加えて、電流制御部20は、発電装置15の出力電流を既に低下させた後もその低下後の出力電流を維持しつつタイマー計時を継続し(工程#16→工程#12→工程#13→工程#15→工程#16)、発電装置15の出力電流を低下させている期間が所定期間に到達した場合には工程#17に移行する。
【0048】
工程#17において電流制御部20は、電流検出部18で検出される電流と発電装置15の出力電流との和から決定されるU相電流又はV相電流が第2の設定値以上であることに基づいて、即ち、過電流が流れているという判定に基づいて、発電装置15の出力電流をゼロにさせる。このように、発電装置15のU相及びV相の出力電流をゼロにすることで、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12の間の電気経路のうち、発電装置15が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカ12との間の部分のU相を流れるU相電流及びV相を流れるV相電流は、電力系統から主幹ブレーカ4を経由して供給される電流のみになる。その結果、主幹ブレーカ4の動作が正常であれば、主幹ブレーカ4の二次側から分岐ブレーカ12に至る間の電気経路に大電流が流れ続けることを回避できる。
【0049】
尚、上記説明では、運転制御装置が電流検出部18と電流制御部20とを備える例を説明したが、上記運転制御装置(電流検出部18及び電流制御部20)と発電装置15とを備える発電設備を構築してもよい。
【0050】
<第2実施形態>
第2実施形態の運転制御装置は、電流検出部による電流の検出箇所が上記実施形態と異なっている。以下に第2実施形態の運転制御装置について説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0051】
図3は、第2実施形態の運転制御装置及び発電設備が設けられる分散型発電システムを概略的に示す図である。
本実施形態では、発電装置15の運転を制御する運転制御装置は、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12(12a,12b,12c,12d)の間の電気経路のうち、発電装置15が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカ12との間の部分のU相を流れるU相電流及びV相を流れるV相電流を検出するための電流検出部19(19u,19v)を備える。つまり、電流検出部19は、発電装置15からの電流と電力系統からの電流との合計の電流を検出している。そして、電流制御部20は、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12の間の電気経路のうち、発電装置15が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカ12との間の部分のU相を流れるU相電流又はV相を流れるV相電流が第1の設定値以上になると発電装置15の出力電流を低下させ、U相電流又はV相電流が第1の設定値より大きい第2の設定値以上になると発電装置15の出力電流をゼロにさせる電流制限処理を行う。
【0052】
このように、本実施形態では、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12の間の電気経路のうち、発電装置15が接続される接続部位と複数の分岐ブレーカ12との間の部分のU相を流れるU相電流及びV相を流れるV相電流を検出するための電流検出部19を用いることで、主幹ブレーカ4の二次側から分岐ブレーカ12に至る間の電気経路を流れる電流を直接検出できる。
【0053】
また、本実施形態でも、上記運転制御装置(電流検出部19及び電流制御部20)と発電装置15とを備える発電設備を構築してもよい。
【0054】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、本発明の運転制御装置及び発電設備の構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、発電装置15が主幹ブレーカ4の二次側端子4bに接続される例を説明したが、主幹ブレーカ4の二次側端子4b及び複数の分岐ブレーカ12の間の電気経路の途中の別の部分に発電装置15を接続してもよい。一例を挙げると、発電装置15を漏電遮断器5の一次側端子や二次側端子などに接続することもできる。
また、上記実施形態では電流の値などについて具体的な数値を挙げて説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり、適宜変更可能である。
【0055】
<2>
上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、主幹ブレーカの二次側から分岐ブレーカに至る間の電気経路に過電流が継続して流れることを防止できる運転制御装置及び発電設備に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
4 主幹ブレーカ
4a 一次側端子
4b 二次側端子
12(12a,12b,12c,12d) 分岐ブレーカ
15 発電装置
16 電流制御部
18 電流検出部
18u 電流検出部
18v 電流検出部
19 電流検出部
19u 電流検出部
19v 電流検出部
20 電流制御部