(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水系樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂およびオキサゾリン基含有ポリマーから選ばれるいずれ少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の粘着剤層付偏光フィルム。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、ケン化度が96モル%以上、平均重合度が2000以上であることを特徴とする請求項3のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
前記水系樹脂組成物は、前記水系樹脂100重量部に対して、前記化合物(a)を0.2〜20重量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
前記粘着剤組成物は、前記ヒドロキシル基を有するベースポリマー100重量部に対して、前記メルカプト基含有シランカップリング剤を0.01〜5重量部含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
前記ヒドロキシル基と反応しない架橋剤(b)を、前記ヒドロキシル基を有するベースポリマー100重量部に対して、0.01〜2重量部含有することを特徴とする請求項10または11記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の粘着剤層付偏光フィルム10、11、12を、
図1乃至
図3を参照しながら説明する。粘着剤層付偏光フィルム10、11、12は、偏光子1、水系樹脂を含有するアンカーコート層2および粘着剤層3を、この順で有する。本発明の粘着剤層付偏光フィルム10、11では、
図1、2に示すように、偏光子1に、水系樹脂を含有する水系樹脂組成物から形成されたアンカーコート層2を、直接、設けることができる。また、
図2、
図3に示すように、偏光子1の片側または両側には保護フィルム5、5´を設けることができる。
図2では、粘着剤層付偏光フィルム10において、偏光子1のアンカーコート層2を設ける側とは反対側に、保護フィルム5を有する場合が例示されている。また、
図3では、粘着剤層付偏光フィルム10において、偏光子1の両側に保護フィルム5、5´を有しており、保護フィルム5´の側にアンカーコート層2が設けられている場合が例示されている。なお、
図2、
図3では図示していないが、偏光子1と保護フィルム5とは接着剤層、粘着剤層、下塗り層(プライマー層)などの介在層を介して積層されている。また図示していないが、保護フィルム5、5´に易接着層を設けたり活性化処理を施したりして、当該易接着層と接着剤層を積層することができる。
【0030】
また、本発明の粘着剤層付偏光フィルム10、11は、
図1乃至
図3に示すように、粘着剤層3にはセパレータ4を設けることができる。なお、
図2、
図3のように、粘着剤層付偏光フィルム11が保護フィルム5を有する場合には、保護フィルム5に表面保護フィルムを設けることができる。
【0031】
<偏光子>
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的には2〜25μmである。
【0032】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0033】
前記偏光子としては、厚み15μm以下の薄型の偏光子を用いることができる。偏光子の厚みは薄型化および熱衝撃によるクラック耐性の観点から12μmであるのが好ましく、さらには10μm以下、さらには8μm以下、さらには7μm以下、さらには6μm以下であるのが好ましい。一方、偏光子の厚みは2μm以上、さらには3μm以上であるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため熱衝撃に対する耐久性に優れる。
【0034】
厚み15μm以下の薄型の偏光子としては、代表的には、
特許第4751486号明細書、
特許第4751481号明細書、
特許第4815544号明細書、
特許第5048120号明細書、
特許第5587517号明細書、
国際公開第2014/077599号パンフレット、
国際公開第2014/077636号パンフレット、
等に記載されている薄型偏光膜(偏光子)またはこれらに記載の製造方法から得られる薄型偏光膜(偏光子)を挙げることができる。
【0035】
前記偏光子は、単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が、次式
P>−(10
0.929T−42.4−1)×100(ただし、T<42.3)および
P≧99.9(ただし、T≧42.3)の条件を満足するように構成されたことが好ましい。前記条件を満足するように構成された偏光膜は、一義的には、大型表示素子を用いた液晶テレビ用のディスプレイとして求められる性能を有する。具体的にはコントラスト比1000:1以上かつ最大輝度500cd/m
2以上である。他の用途としては、例えば有機EL表示装置の視認側に貼り合される。
【0036】
前記薄型偏光膜としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、特許第4751486号明細書、特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。これら薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
【0037】
<保護フィルム>
前記保護フィルムを構成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または上記ポリマーのブレンド物なども上記保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。これら保護フィルムは、通常、接着剤層により、偏光子に貼り合わせられる。また、前記保護フィルムは、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いて、これらを偏光子に塗布し、硬化させることにより形成すことができる。
【0038】
前記保護フィルムとしては、位相差フィルムを用いることができる。位相差フィルムとしては、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有するものが挙げられる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。保護フィルムとして位相差フィルムを用いる場合には、当該位相差フィルムが偏光子保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0039】
位相差フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムを一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルムが挙げられる。上記延伸の温度、延伸倍率等は、位相差値、フィルムの材料、厚みにより適宜に設定される。
【0040】
前記保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より3〜200μmであるのが好ましく、さらには3〜100μmであるのが好ましい。特に、前記保護フィルム(予めフィルムが形成されている場合)の厚みは、搬送性の点から10〜60μmが好ましく、さらには10〜45μmが好ましい。一方、前記保護フィルム(塗布、硬化により形成する場合)の厚みは搬送性の点から、3〜25μmが好ましく、さらには3〜20μmが好ましい。前記保護フィルムは、複数枚または複数層で用いることもできる。
【0041】
前記保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0042】
<介在層>
前記保護フィルムと偏光子は接着剤層、粘着剤層、下塗り層(プライマー層)などの介在層を介して積層される。この際、介在層により両者を空気間隙なく積層することが望ましい。
【0043】
接着剤層は接着剤により形成される。接着剤の種類は特に制限されず、種々のものを用いることができる。前記接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されず、接着剤としては、水系、溶剤系、ホットメルト系、活性エネルギー線硬化型等の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤または活性エネルギー線硬化型接着剤が好適である。
【0044】
水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。水系接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。
【0045】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線、紫外線(ラジカル硬化型、カチオン硬化型)等の活性エネルギー線により硬化が進行する接着剤であり、例えば、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、例えば、光ラジカル硬化型接着剤を用いることができる。光ラジカル硬化型の活性エネルギー線硬化型接着剤を、紫外線硬化型として用いる場合には、当該接着剤は、ラジカル重合性化合物および光重合開始剤を含有する。
【0046】
また、前記接着剤の塗工は、水系接着剤等を用いる場合には、最終的に形成される接着剤層の厚みが30〜300nmになるように行うのが好ましい。前記接着剤層の厚さは、さらに好ましくは60〜250nmである。一方、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合には、前記接着剤層の厚みは、0.1〜200μmになるよう行うのが好ましい。より好ましくは、0.5〜50μm、さらに好ましくは0.5〜10μmである。
【0047】
なお、偏光子と保護フィルムの積層にあたって、保護フィルムと接着剤層の間には、易接着層を設けることができる。
【0048】
<アンカーコート層>
アンカーコート層は、水系樹脂を含有する。アンカーコート層は、例えば、水系樹脂を含有する水系樹脂組成物を、偏光子に塗布することにより形成することができる。前記水系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびオキサゾリン基含有ポリマーから選ばれるいずれ少なくとも1つを用いることができる。これらのなかでも、
図1、
図2のように、偏光子に直接アンカーコート層を形成する場合には、貫通クラックの発生を抑制する観点から前記水系樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。一方、
図3のように、保護フィルムにアンカーコート層を形成する場合には、保護フィルムに対する塗膜形成性や濡れ性の観点から前記水系樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、オキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
【0049】
前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコールが挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。また、ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物が挙げられる。前記共重合性を有する単量体がエチレンの場合には、エチレン−ビニルアルコール共重合体が得られる。また、前記共重合性を有する単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸およびそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は一種を単独で又は二種以上を併用することができる。前記アンカーコート層の結晶融解熱量を30mj/mg以上に制御して、耐湿熱性や耐水性を満足させる観点から、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコールが好ましい。
【0050】
前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、例えば、95モル%以上のものを用いることができるが、耐湿熱性や耐水性を満足させる観点からは、ケン化度は96モル%以上が好ましく、99モル%以上が好ましく、さらには99.5モル%以上が好ましい。ケン化度は、ケン化によりビニルアルコール単位に変換され得る単位の中で、実際にビニルアルコール単位にケン化されている単位の割合を表したものであり、残基はビニルエステル単位である。ケン化度は、ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0051】
前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、例えば、500以上のものを用いることができるが、前記アンカーコート層の耐湿熱性や耐水性を満足させる観点からは、平均重合度は、1000以上が好ましく、さらには1500以上が好ましく、さらには2000以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度はJIS−K6726に準じて測定される。
【0052】
また前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、前記ポリビニルアルコールまたはその共重合体の側鎖に親水性の官能基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることができる。前記親水性の官能基としては、例えば、アセトアセチル基、カルボニル基等が挙げられる。その他、ポリビニルアルコール系樹脂をアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールを用いることができる。
【0053】
ポリウレタン系樹脂としては、ポリウレタン系樹脂のエマルションを用いることができる。また、ポリウレタンの樹脂エマルションとしては、乳化剤を用いず、自己乳化したものを用いることができる。
【0054】
ポリウレタン系樹脂としては、例えば、高分子ポリオールとイソシアネート化合物の重付加反応により得られる一液型のものを用いることができる。前記一液型のポリウレタン系樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂等を用いることができる。前記ポリウレタン系樹脂としては、水酸基が残存しているものが好ましい。具体的には、例えば、ラッカータイプのポリウレタン系樹脂が挙げられる。前記ポリウレタン系樹脂は溶剤や水を乾燥除去させるだけで皮膜形成できる。
【0055】
ポリエーテル系ポリウレタン樹脂は、一般にポリエーテルポリオールとイソシアネート化合物の重付加反応により得られる。ポリエーテルポリオールは、多価アルコールの1種または2種以上にアルキレンオキサイドを開環重合により付加して得られるものである。ポリエステル系ポリウレタン樹脂は、一般にポリエステルポリオールとイソシアネート化合物の重付加反応により得られる。ポリエステルルポリオールは、多価アルコールと多塩基酸を重縮合して得られるものである。また、ポリエーテルポリオールまたはポリエーテルポリオール等の高分子ポリオールは、数平均分子量が400〜3000であるのが好ましく、500〜2000であるのがより好ましい。ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等の高分子ポリオールは1種を単独に用いてもよく、2種以上を使用した共重合体でもよい。
【0056】
イソシアネート化合物としては、通常、ポリウレタンに使用されている芳香族、芳香脂肪族、脂肪族、または脂環族等のイソシアネートが適宜使用できる。また、イソシアネート化合物として、上記イソシアネート化合物のアダクト体、二量体、三量体、およびこれらの重合体等を使用してもよい。さらに、イソシアネート化合物は、上記イソシアネートの一部をウレタン化、ウレチジオン化、カルボジイミド化等した変性イソシアネートも使用可能である。
【0057】
前記ポリウレタン系樹脂を水に分散する場合は、当該樹脂を、乳化剤を用いて強制的に乳化分散して調整する方法が知られている。また前記樹脂中に、水分散性親水基のアニオン基、カチオン基またはノニオン基を導入して自己乳化物としたもの等を用いることができる。またイオン高分子錯体を用いることができる。
【0058】
ポリウレタンの樹脂エマルションとしては、乳化剤を用いず、自己乳化した、旭電化工業株式会社製のアデカボンタイターHUXシリーズ等を例示できる。また、水系ウレタン樹脂の具体例として,第一工業製薬社製のスーパーフレックスシリーズ、三井化学ポリウレタン(株)製のタケラックW−6020等が挙げられる。
【0059】
エポキシ系樹脂としては、エポキシ系樹脂のエマルションを用いることができる。前記エポキシ系樹脂を水に分散する場合は、当該樹脂を、乳化剤を用いて強制的に乳化分散して調整する方法が知られている。エポキシ系樹脂としては、例えば、(株)ADEKA製のアデカレジン EMシリーズ、(株)ダイセル製のセロキサイド2021P等が挙げられる。
【0060】
オキサゾリン基含有ポリマーとしては、例えば、アクリル骨格またはスチレン骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有するポリマーが挙げられる。前記のなかでもアクリル骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル系ポリマーが好ましい。
【0061】
オキサゾリン基としては、例えば、2−オキサゾリン基、3−オキサゾリン基、4−オキサゾリン基などが挙げられ、これらの中でも、2−オキサゾリン基が好ましい。2−オキサゾリン基としては、一般に、下記一般式(1)で表される。
【0062】
【化1】
(式中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、フェニル基、又は、置換フェニル基を示す。)
【0063】
また、前記オキサゾリン基含有ポリマーは、オキサゾリン基以外に、ポリオキシアルキレン基を有していてもよい。
【0064】
オキサゾリン基含有ポリマーは、その数平均分子量が5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、通常、1,000,000以下が好ましい。数平均分子量が5,000より低いと、アンカー層の強度が不足して凝集破壊を起こし、投錨力を向上できない場合がある。数平均分子量が1,000,000より高いと、作業性に劣る場合がある。また、オキサゾリン基含有ポリマーは、そのオキサゾリン価が、例えば、1,500gsolid/eq.以下であることが好ましく、1,200g solid/eq.以下であることがより好ましい。オキサゾリン価が1,500g solid/eq.より大きいと、分子中に含まれるオキサゾリン基の量が少なくなり、投錨力を向上できない場合がある。
【0065】
オキサゾリン基含有ポリマーは、オキサゾリン基が、粘着剤組成物に含まれているヒドロキシル基と比較的低温で反応するため、オキサゾリン基含有ポリマーをアンカーコート層に含ませれば、粘着剤層中の官能基などと反応し、強固に密着することができる。
【0066】
オキサゾリン基含有ポリマーとしては、具体的には、(株)日本触媒製のエポクロスWS−300、エポクロスWS−500、エポクロスWS−700などのオキサゾリン基含有アクリル系ポリマー、例えば、(株)日本触媒製のエポクロスK−1000シリーズ、エポクロスK−2000シリーズなどのオキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマーなどが挙げられ、1種単独で、又は、2種以上を併用して用いることができる。
【0067】
本発明のアンカーコート層は、前記水系樹脂を主成分として含有する水系樹脂組成物から形成されるが、前記水系樹脂組成物には、ヒドロキシル基と反応可能な第一級のアルコールを分子末端に少なくとも一つ有する化合物(a)を含有する。前記化合物(a)をアンカーコート層中に導入することにより、上記のように、粘着剤層を形成する粘着剤組成物中のメルカプト基含有シランカップリング剤およびヒドロキシル基を有するベースポリマーとの反応が進んで、前記アンカーコート層と粘着剤層との投錨力を向上することができる。
【0068】
前記水系樹脂は、前記化合物(a)の有するヒドロキシル基と反応可能な第一級のアルコールとの反応性を有する官能基を有しないものが好ましく、前記例示の水系樹脂のなかでもポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、特に、未変性のポリビニルアルコール樹脂が好ましく用いられる。または、未変性のポリビニルアルコール樹脂を用いる場合には、当該変性に係る前記親水性の官能基は、前記化合物(a)の有するヒドロキシル基と反応可能な第一級のアルコールとの関係において、粘着剤組成物中のメルカプト基含有シランカップリング剤が有する官能基(シラノール基)よりも反応性の低いものが好ましい。
【0069】
前記化合物(a)は、水系樹脂100重量部に対して、例えば、0.2重量部以上20重量部以下の割合で配合するのが好ましい。前記化合物(a)の割合を0.2重量部以上とすることが前記投錨力を向上させるうえで好ましい。前記化合物(a)の割合は1重量部以上であるのが好ましく、さらには3重量部以上であるのが好ましい。一方、前記化合物(a)の割合が多くなると耐水性や外観性(偏光フィルムにおいてムラとして確認される外観性)が悪化するため、前記化合物(a)の割合は20重量部以下であるのが好ましく、さらには10重量部以下であるのが好ましく、より好ましくは7重量部以下である。前記化合物(a)の割合は、粘着剤組成物に用いられる、ヒドロキシル基を有するベースポリマー、メルカプト基含有シランカップリング剤の種類により決定される。
【0070】
前記アンカーコート層または水系樹脂組成物(固形分)中の水系樹脂の割合は、80重量%以上であるのが好ましく、さらには90重量%以上、さらには95重量%以上であるのが好ましい。
【0071】
前記化合物(a)としては、分子末端に第一級のアルコールを少なくとも1つ有する化合物を好適に用いることができる。当該化合物としては、例えば、メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素とホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹
脂が挙げられる。これらのなかでも、メチロール基を有するアミノ−ホルムアルデヒド樹脂、なかでもメチロールメラミンが好適である。
【0072】
また前記化合物(a)以外のヒドロキシル基と反応可能な官能基を有する化合物を用いることができる。例えば、分子末端にアミノ基を有する化合物が挙げられる。当該化合物としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;ヒドラジン;アジピン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのジカルボン酸ジヒドラジド;エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジンなどの水溶性ジヒドラジン等が挙げられる。これらのなかでも、ヒドラジンが好適である。分子末端にアミノ基を有する化合物は、例えば、粘着剤組成物のベースポリマーがヒドロキシル基を有する場合(ベースポリマーが(メタ)アクリル系ポリマーの場合には、モノマー単位として、ヒドロキシル基含有モノマーを含有すること)に好適である。
【0073】
さらには、前記化合物(a)以外のヒドロキシル基と反応可能な官能基を有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物が挙げられる。これらのなかでもアミノ−ホルムアルデヒド樹脂や水溶性ジヒドラジンが好ましい。
【0074】
前記前記化合物(a)以外のヒドロキシル基と反応可能な官能基を有する化合物は、耐水性向上や弾性率制御の観点から用いることができるが、その割合は、前記水系樹脂100重量部に対して、20重量部以下、10重量部以下、さらには5重量部以下であるのが好ましい。
【0075】
前記水系樹脂組成物は、前記水系樹脂を溶媒に溶解させた溶液として調製される。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドN−メチルピロリドン、が挙げられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、溶剤として水を用いた水溶液として用いるのが好ましい。前記水系樹脂組成物(例えば水溶液)における、前記水系樹脂の濃度は、特に制限はないが、塗工性や放置安定性等を考慮すれば、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0076】
なお、前記水系樹脂組成物(例えば水溶液)には、前記化合物(a)以外のものが添加されていてもよい。例えば、界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。さらに各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。
【0077】
アンカーコート層の厚さは0.05μmであるのが好ましく、さらには0.2μm以上であるのが好ましく、前記アンカーコート層の厚さは0.5μm以上であるのが好ましく、さらには0.7μm以上であるのが好ましい。特に、前記水系樹脂として、ポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合には、前記アンカーコート層の厚さは0.2μm以上であるのが好ましく、当該厚さのアンカーコート層により、熱衝撃によるクラックの発生を抑制することができる。一方、アンカーコート層が厚くなりすぎると光学信頼性と耐水性が低下するため、アンカーコート層の厚さは6μm以下であるのが好ましく、さらには5μm以下、さらには3μm以下、さらには2μm以下であるのが好ましい。
【0078】
前記アンカーコート層は、前記水系樹脂組成物を、偏光子の他の片面(保護フィルムを有しない面)に、塗布して乾燥することにより形成することができる。前記水系樹脂組成物の塗布は、乾燥後の厚み(好ましくは0.2μm以上6μm以下)になるように行なう。塗布操作は特に制限されず、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等各種手段を採用できる。
【0079】
<粘着剤層>
粘着剤層は、ヒドロキシル基を有するベースポリマー、およびメルカプト基含有シランカップリング剤を含有する粘着剤組成物から形成されたものである。粘着剤層の形成には、ヒドロキシル基を有する適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。これら粘着剤に応じて各種のベースポリマーを用いることができる。
【0080】
なお、前記粘着剤層または粘着剤組成物(固形分)中の前記ヒドロキシル基を有するベースポリマーの割合は、80重量%以上であるのが好ましく、さらには90重量%以上、さらには95重量%以上であるのが好ましい。
【0081】
これら粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとしてアクリル系粘着剤が好ましく使用される。アクリル系粘着剤のベースポリマーとしては(メタ)アクリル系ポリマーが用いられる。(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0082】
(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜18のものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。
【0083】
本発明で用いる(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてヒドロキシル基含有モノマーを含有するものが好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつヒドロキシル基を有する。ヒドロキシル基含有モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル等の、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどが挙げられる。
【0084】
(メタ)アクリル系ポリマーは、全構成モノマーの重量比率において、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、(メタ)アクリル系ポリマー中の前記ヒドロキシル基含有モノマーの割合は、全構成モノマーの重量比率において、0.01〜15%が好ましく、さらには0.03〜10%が好ましく、さらには0.05〜7%であるのが好ましい。
【0085】
また前記(メタ)アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。
【0086】
前記共重合モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。
【0087】
また、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミドやN−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミドやN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー、なども改質目的のモノマー例として挙げられる。
【0088】
さらに改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。さらには、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテル等が挙げられる。
【0089】
さらに、上記以外の共重合可能なモノマーとして、ケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどが挙げられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0090】
また、共重合モノマーとしては、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物等の(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する多官能性モノマーや、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどの骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどを用いることもできる。
【0091】
(メタ)アクリル系ポリマー中の前記共重合モノマー(ヒドロキシル基含有モノマー以外)の割合は、特に制限されないが、全構成モノマーの重量比率において、0〜20%程度、0.1〜15%程度、さらには0.1〜10%程度であるのが好ましい。
【0092】
これら共重合モノマー(ヒドロキシル基含有モノマー以外)の中でも、接着性、耐久性の点から、カルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。共重合モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーを含有する場合、その割合は、0.05〜10重量%が好ましく、0.1〜8重量%がより好ましく、さらには0.2〜6重量%が好ましい。
【0093】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、重量平均分子量が50万〜300万の範囲のものが用いられる。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は70万〜270万であるものを用いることが好ましい。さらには80万〜250万であることが好ましい。重量平均分子量が50万よりも小さいと、耐熱性の点で好ましくない。また、重量平均分子量が300万よりも大きくなると、塗工するための粘度に調整するために多量の希釈溶剤が必要となり、コストアップとなることから好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0094】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0095】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0096】
さらに、本発明の粘着剤組成物は、前記ヒドロキシル基を有するベースポリマー(例えば、(メタ)アクリル系ポリマー)に加えて、メルカプト基含有シランカップリング剤を含有する。前記メルカプト基含有シランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、β−メルカプトメチルフェニルエチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、6−メルカプトヘキシルトリメトキシシラン、10−メルカプトデシルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有する化合物等を挙げることができる。
【0097】
また、メルカプト基含有シランカップリング剤として、分子内に2個以上のアルコキシシリル基を有するオリゴマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤が好ましい。具体的には、例えば、信越化学工業(株)製のX−41−1805、X−41−1818、X−41−1810などが挙げられる。これらのメルカプト基含有シランカップリング剤は、揮発しにくく、アルコキシシリル基を複数有することから耐久性向上に効果的であり好ましい。ここで、オリゴマー型とは、モノマーの2量体以上100量体未満程度の重合体を指すものであり、オリゴマー型シランカップリング剤の重量平均分子量としては、300〜30000程度が好ましい。
【0098】
前記オリゴマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤のアルコキシシリル基の数は、分子内に2個以上であればよく、その数は限定されない。前記オリゴマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤のアルコキシ基の量は、シランカップリング剤中、10〜60重量%であることが好ましく、20〜50重量%であることがより好ましく、20〜40重量%であることがさらに好ましい。
【0099】
アルコキシ基の種類は限定されないが、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の炭素数1〜6のアルコキシ基を挙げることができる。これらの中でも、メトキシ、エトキシが好ましく、メトキシがより好ましい。また、一分子中、メトキシとエトキシの両方を含むことも好ましい。
【0100】
前記メルカプト基含有シランカップリング剤のメルカプト基の含有量は、例えば、メルカプト基(−SH)の場合、メルカプト当量1000g/mol以下であることが好ましく、800g/mol以下であることがより好ましく、500g/mol以下であることがより好ましい。また、メルカプト当量の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、200g/mol以上であることが好ましい。
【0101】
前記メルカプト基含有シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記前記ヒドロキシル基を有するベースポリマー(例えば、(メタ)アクリル系ポリマー)100重量部に対し、0.001〜5重量部が好ましく、0.01〜3重量部がより好ましく、0.02〜2重量部がさらに好ましく、0.05〜1重量部が特に好ましい。
【0102】
また、本発明の粘着剤組成物には、前記メルカプト基含有シランカップリング剤以外のシランカップリング剤も添加することができる。その他のカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤等を挙げることができる。
【0103】
前記メルカプト基含有シランカップリング剤以外のシランカップリング剤は、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができ、その使用量は特に限定されるものではないが、例えば、被着体に対する密着性の観点から、粘着剤組成物の100重量部に対して、3重量部以下の範囲で用いることができ、さらには2重量部以下、さらには1重量部以下の範囲で用いることができる。メルカプト基以外のシランカップリング剤を使用することで、密着性を向上することが可能である。しかし、メルカプト基以外のシランカップリング剤はリワーク性も付与することが可能なため、添加量が多いと密着性は悪くなる傾向がある。
【0104】
さらに、本発明の粘着剤組成物には、架橋剤を含有することができる。前記架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。架橋剤は、全体としての含有量が、前記ヒドロキシル基を有するベースポリマー100重量部に対し、2重量部以下であることが好ましく、さらには1.5重量部以下が好ましく、さらには1重量部以下が好ましい。
【0105】
本発明の粘着剤組成物では、前記架橋剤として、ヒドロキシル基と反応しない架橋剤(b)を含有することが好ましい。前記ヒドロキシル基と反応しない架橋剤(b)は、イソシアネート系架橋剤を併用することもできるが、イソシアネート系架橋剤を含有していない態様において好適である。本発明の粘着剤組成物がイソシアネート系架橋剤を含有していない場合には、ポットライフに関する取扱い面での問題がなくなる。ヒドロキシル基と反応しない架橋剤(b)は、粘着剤層の形成後に所定のゲル分率に到達するまでのエージングが特に必要ではなく、粘着剤層を形成した初期の段階からのゲル分率80%以上の硬いものを作製することができる。さらには、粘着剤層中ではヒドロキシル基と反応しない架橋剤(b)による架橋を進めているため、ベースポリマーが有するヒドロキシル基は、メルカプト基含有シランカップリング剤のシラノール基と効率よく反応することができ、粘着剤層のゲル分率を初期の段階から80%以上に硬くすることができると考えられる。
【0106】
前記架橋剤(b)は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記ヒドロキシル基を有するベースポリマー100重量部に対し、前記架橋剤(b)0.01〜2重量部であることが好ましく、さらには0.04〜1.5重量部が好ましく、さらには0.05〜1重量部が好ましく、さらには0.4〜0.6重量部であることがより好ましい。加工性、リワーク性、架橋安定性、剥離性などの調整の為に、この範囲内で適宜選択される。
【0107】
前記架橋剤(b)としては、過酸化物を好ましく用いることができる。
【0108】
なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0109】
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘着剤組成物を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0110】
過酸化物としては、加熱または光照射によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃〜160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃〜140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0111】
用いることができる過酸化物としては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などが挙げられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)などが好ましく用いられる。
【0112】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0113】
前記架橋剤(b)以外の架橋剤としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤などが挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0114】
前記架橋剤(b)以外の架橋剤の使用量は、粘着剤層を形成した初期の段階からのゲル分率80%以上の硬いものを作製することができるように制御することが好ましい。例えば、前記架橋剤(b)以外の架橋剤は、粘着剤組成物100重量部に対して2重量部以下の範囲で用いることができ、さらには1重量部以下、さらには0.5重量部以下の範囲で含むことができる。特に、架橋剤(b)以外の架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いる場合には、その使用量をエージングが必要のないような範囲に制御される。イソシアネート系架橋剤は、フィルム等の被着体への投錨力を確保する点から好ましく、また、粘着剤層が硬くなり、偏光フィルムの寸法変化を抑制する点からも好ましい。さらには、特に、イソシアネート系架橋剤とヒドロキシル基と反応しない架橋剤(b)とを併用することは、より一層強力な投錨力が得られるため好ましい。
【0115】
さらに本発明の粘着剤組成物には、アルカリ金属塩、ポリエーテル変性シリコーン化合物、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、例えば、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのポリエーテル化合物、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。
【0116】
前記粘着剤組成物により、粘着剤層を形成するが、粘着剤層の形成にあたっては、架橋剤全体の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮することが好ましい。
【0117】
使用する架橋剤によって架橋処理温度や架橋処理時間は、調整が可能である。架橋処理温度は170℃以下であることが好ましい。
【0118】
また、かかる架橋処理は、粘着剤層の乾燥工程時の温度で行ってもよいし、乾燥工程後に別途架橋処理工程を設けて行ってもよい。
【0119】
また、架橋処理時間に関しては、生産性や作業性を考慮して設定することができるが、通常0.2〜20分間程度であり、0.5〜10分間程度であることが好ましい。
【0120】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレータなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を形成した後に
図1、2の態様ではアンカーコート層に転写する方法、または
図1、2の態様ではアンカーコート層に前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を偏光フィルムに形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0121】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の粘着剤組成物を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤組成物を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を加熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。
【0122】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜10分、特に好ましくは、10秒〜5分である。
【0123】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0124】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは、2〜50μm、より好ましくは2〜40μmであり、さらに好ましくは、5〜35μmである。
【0125】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0126】
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などを挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0127】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0128】
前記セパレータの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0129】
なお、上記の粘着剤層付偏光フィルムの作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着剤層付偏光フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0130】
<表面保護フィルム>
粘着剤層付偏光フィルムには、表面保護フィルムを設けることができる。表面保護フィルムは、通常、基材フィルムおよび粘着剤層を有し、当該粘着剤層を介して偏光子を保護する。
【0131】
表面保護フィルムの基材フィルムとしては、検査性や管理性などの観点から、等方性を有する又は等方性に近いフィルム材料が選択される。そのフィルム材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂のような透明なポリマーが挙げられる。これらのなかでもポリエステル系樹脂が好ましい。基材フィルムは、1種または2種以上のフィルム材料のラミネート体として用いることもでき、また前記フィルムの延伸物を用いることもできる。基材フィルムの厚さは、一般的には、500μm以下、好ましくは10〜200μmである。
【0132】
表面保護フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとする粘着剤を適宜に選択して用いることができる。透明性、耐候性、耐熱性などの観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤層の厚さ(乾燥膜厚)は、必要とされる粘着力に応じて決定される。通常1〜100μm程度、好ましくは5〜50μmである。
【0133】
なお、表面保護フィルムには、基材フィルムにおける粘着剤層を設けた面の反対面に、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性材料により、剥離処理層を設けることができる。
【0134】
<他の光学層>
本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4などの波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置などの形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の粘着剤層付偏光フィルムに更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光フィルムまたは半透過型偏光フィルム、偏光フィルムに更に位相差板が積層されてなる楕円偏光フィルムまたは円偏光フィルム、偏光フィルムに更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光フィルム、あるいは偏光フィルムに更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光フィルムが好ましい。
【0135】
粘着剤層付偏光フィルムに上記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置などの製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業などに優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着剤層などの適宜な接着手段を用いうる。上記の粘着剤層付偏光フィルムやその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0136】
本発明の粘着剤層付偏光フィルムまたは光学フィルムは液晶表示装置などの各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着剤層付偏光フィルムまたは光学フィルム、及び必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による、粘着剤層付偏光フィルムまたは光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばIPS型、VA型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0137】
液晶セルの片側又は両側に粘着剤層付偏光フィルムまたは光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による粘着剤層付偏光フィルムまたは光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に粘着剤層付偏光フィルムまたは光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0138】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RHである。
【0139】
<(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量の測定>
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000H
XL+GMH
XL+GMH
XL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0140】
<偏光子の作製>
吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.0重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
以上により、厚み5μmの偏光子を含む光学フィルム積層体を得た。
【0141】
(保護フィルムの作製)
保護フィルム:厚み40μmのラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂フィルムの易接着処理面にコロナ処理を施して用いた。
【0142】
(保護フィルムに適用する接着剤の作製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)40重量部とアクリロイルモルホリン(ACMO)60重量部と光開始剤「IRGACURE 819」(BASF社製)3重量部を混合し、紫外線硬化型接着剤を調製した。
【0143】
<片保護偏光フィルムの作製>
上記光学フィルム積層体の偏光膜の表面に、上記紫外線硬化型接着剤を硬化後の接着剤層の厚みが0.5μmとなるように塗布しながら、上記保護フィルムを貼合せたのち、活性エネルギー線として、紫外線を照射し、接着剤を硬化させた。紫外線照射は、ガリウム封入メタルハライドランプ、照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製のLight HAMMER10、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm
2、積算照射量1000/mJ/cm
2(波長380〜440nm)を使用し、紫外線の照度は、Solatell社製のSola−Checkシステムを使用して測定した。次いで、非晶性PET基材を剥離し、薄型偏光膜を用いた片保護偏光フィルムAを作製した。得られた片保護偏光フィルムの光学特性は、透過率42.8%、偏光度99.99%であった。
【0144】
<アンカーコート層の形成材:ポリビニルアルコール系樹脂組成物>
重合度2500、ケン化度99.7モル%のポリビニルアルコール樹脂100部と、メチロールメラミン(DIC社製、商品名「ウォーターゾル:S−695」)5部とを純水に溶解し、固形分濃度4重量%の水溶液を調製した。
【0145】
<アクリル系ポリマーの調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル1部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度30%に調整した、重量平均分子量140万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
【0146】
(粘着剤組成物の調製)
上記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、オリゴマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤(アルコキシ基量:30重量%,メルカプト当量:450g/mol,信越化学工業(株)製のX−41−1810)0.2部およびジベンゾイルパーオキサイド0.42部を配合して、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0147】
(粘着剤層の形成)
次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の表面に均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、セパレータフィルムの表面に厚さ20μmの粘着剤層を形成した。
【0148】
実施例1
<アンカーコート層付の片保護偏光フィルムを作製>
上記片保護偏光フィルムの偏光膜(偏光子)の面(保護フィルムが設けられていない偏光子面)に、25℃に調整した上記ポリビニルアルコール系樹脂組成物をワイヤーバーコーターで乾燥後の厚みが1μmになるように塗布した後、90℃で20秒間熱風乾燥して、アンカーコート層付の片保護偏光フィルムを作製した。
【0149】
<粘着剤層付偏光フィルムの作製>
次いで、片保護偏光フィルムに形成したアンカーコート層に、上記離型シート(セパレータ)の剥離処理面に形成した粘着剤層を貼り合わせて、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0150】
実施例2〜11、比較例1〜6
実施例1において、アンカーコート層に配合する水系樹脂の種類、メチロールメラミンの配合量(配合部は水系樹脂100部に対する値である)、粘着剤組成物中のシランカップリング剤、架橋剤の種類と配合量(配合部はアクリル系ポリマー100部に対する値である)を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、アンカーコート層付の片保護偏光フィルムおよび粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0151】
上記実施例および比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムについて下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0152】
<初期ゲル分率の測定>
作製して1分間以内のセパレータフィルムの剥離処理面に形成した粘着剤層から約0.1gを掻きとったものをサンプル1とした。前記サンプル1を0.2μm径を有するテフロン(登録商標)フィルム(商品名「NTF1122」,日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、これをサンプル2とした。下記試験に供する前のサンプル2の重量を測定し、これを重量Aとした。なお、前記重量Aは、サンプル1(粘着剤層)と、テフロン(登録商標)フィルムと、凧糸との総重量である。また、前記テフロン(登録商標)フィルムと凧糸との総重量を重量Bとした。次に、前記サンプル2を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて1週間静置した。その後、容器からサンプル2を取り出し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、サンプル2の重量を測定した。前記試験に供した後のサンプル2の重量を測定し、これを重量Cとした。そして、下記式からゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=(C−B)/(A−B)×100
粘着剤層の初期のゲル分率は、80%以上であるのが好ましい。ゲル分率が低いことは打痕が残りやすいなどの不具合につながる。
【0153】
<投錨力>
実施例、及び比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを25mm×150mmの大きさにカットし、これの粘着剤層面と、50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム表面にインジウム−酸化錫を蒸着させた蒸着フィルムの蒸着面とが接するよう貼り合わせた。その後、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部を手で剥離し、粘着剤層がポリエチレンテレフタレートフィルム側に付着しているのを確認した上で、島津製作所製の引っ張り試験機AG−1を用いて180°方向に300mm/分の速度で剥離した際の応力(N/25mm)を測定(25℃)した。
投錨力が15N/25mm以上であることが、リワーク時の糊残りや、加工時の糊欠けや糊脱落がなく、良好である。また、前記の剥離の際の破壊状態を「凝集破壊(アンカーコート層または粘着剤層の破壊)」または「界面剥離(アンカーコート層と粘着剤層の界面での剥離)」で示す。なお、比較例7では、粘着剤層の架橋剤としてイソシアネート系架橋剤のみを用いた場合のため、48時間のエージング後に測定した投錨力である。実施例および他の比較例は粘着剤層付偏光フィルムを作製後24時間以内(エージングをしていない)に測定した値である。
【0154】
【表1】
【0155】
表1中、過酸化物は、商品名:ナイパーBMT 40SV、ベンゾイルパーオキサイド、日本油脂(株)製;
イソシアネー系は、商品名:タケネートD110N、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、三井化学(株)製;
X−41−1810:オリゴマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤、アルコキシ基量:30重量%、メルカプト当量:450g/mol,信越化学工業(株)製;
KBM‐802:モノマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤、信越化学工業(株)製;
KBM‐803:モノマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤、信越化学工業(株)製;
X−41−1056:オリゴマー型のエポキシ基含有シランカップリング剤、アルコキシ基量:17重量%、エポキシ当量:280g/mol、信越化学工業(株)製;
を示す。
また、実施例10の架橋剤はイソシアネート系架橋剤と過酸化物架橋剤の併用系である。
オキサゾリン基含有ポリマー:エポクロスWS−700((株)日本触媒製);
ポリウレタン系樹脂:タケラックW−6020(三井化学ポリウレタン(株)製);
エポキシ樹脂:セロキサイド2021P((株)ダイセル製);を示す。