(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記機械的固液分離工程で生じる含油汚泥と、前記分離汚泥のいずれか一方又は両方を脱水処理し、脱水汚泥を得ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機性排水の水処理方法。
前記分離汚泥を、前記有機性排水の油分濃度とSS濃度との少なくともいずれかに応じて返送することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機性排水の水処理方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、微生物を利用した生物処理が排水処理に用いられているが、油分を含有する排水(以下、含油排水)は生物分解に多くの時間を要する上、微生物の表面を油分が覆うと微生物の呼吸や発酵が阻害され、微生物の失活を招くという問題があった。
【0003】
また、生物処理のなかでも膜分離式活性汚泥法(MBR法)は、膜面へも油分が付着する事で、固液分離も困難になるという問題もある。従って、生物処理を利用する場合には、適切な油分の除去が必要である。
【0004】
含油排水から油分を除去する方法としては、オイルトラップ、凝集沈殿処理、加圧浮上処理が挙げられる。この種の従来における技術としては、以下の技術が知られている。
【0005】
特許文献1には、加圧浮上分離装置に替え、油分の分解特性の優れた微生物を排水に添加することにより油脂類を分解する排水処理が記載されている。しかしこのような微生物の管理は難しく、必ずしも添加した菌が増殖するとは限らないため、菌を安定して増殖させることが困難であり、処理状態が不安定となる事が多い。
【0006】
しかも、微生物活性維持のためには微生物を継続的に添加する必要性があるが、その価格は高額であり、技術的な問題とコスト的な問題から本格的な普及には至っていない。
【0007】
特許文献2には、従来の加圧浮上分離処理と比較して、より微細な気泡を発生させることにより、固形分回収率を向上させる排水処理が記載されている。しかし、気泡を固形物に付着する基本原理は従来と同様で、除去した固形物に気泡が付着する。
【0008】
そのため、フロス貯槽上部にフロスが溜まり、脱水機への汚泥供給濃度が変動し、脱水汚泥含水率が変動する問題があり、気泡が付着したままの汚泥をポンプで移送するとキャビテーションが発生し、ポンプ内部に気体が存在するため空廻り運転となり、移送不能となる場合がある。従って、特許文献2では、固形物をそのまま汚泥処理する事が出来ず、気泡を分離するための脱泡槽が必要となり、設備が大きくなると共に維持管理費も増加する。
【0009】
特許文献3では、無機凝集剤を併用するが、無機凝集剤由来の金属水酸化物が発生し、無機汚泥発生量が流入SSより増加することがある。しかも、原水の性質が変動する毎に、薬品注入量、加圧空気量(気-固比)、フロス掻取速度、フロス掻取界面高さなどの調整が必要であり、運転管理が煩雑となる問題がある。
【0010】
非特許文献1には、原水に凝集剤を注入して凝集反応槽で撹拌した後、この液の一部を加圧水として用いて空気を溶解し、凝集撹拌液と混合してフロックに気泡を付着させて浮上分離槽に流入させる加圧浮上処理法が記載されている。この処理方法では、上部で掻寄せられた含油汚泥にも微細な気泡が付着する。気泡が付着した状態では濃縮が進行せず、後段の汚泥処理設備が大きくなる問題や、移送ポンプにキャビテーションが発生して良好な運転が妨げられる等の問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この様な従来における技術では、含油排水を処理し、後段で生物処理を行う際に、従来技術である加圧浮上処理法・凝集沈殿処理法を前処理として実施する事が多い。
図1は、従来技術の一方法としての加圧浮上処理法の一例を示すフローシートである。
【0014】
凝集加圧浮上処理では、まず、無機凝集剤と有機高分子凝集剤(A)を添加して、油分を凝集させ、フロックを形成する。次に、加圧浮上槽内で、空気を溶解させた加圧水を注入することにより、加圧浮上槽表面にフロックを浮上させる。
【0015】
加圧浮上槽表面に浮上したフロックはフロス又は汚泥と呼ばれるが、ここでは含油汚泥と称する。最後に、水面上部に浮上する含油汚泥を掻寄機で系外に排出し、加圧浮上槽の中間水が処理水となる。このような凝集加圧浮上処理には、以下の課題が挙げられる。
【0016】
(1)無機凝集剤と有機高分子凝集剤の2種類を使用するため、各薬品のタンク、溶解槽、供給ポンプなどの設備が必要となり、投資金額が大きくなる。
【0017】
(2)各薬品の注入率を適正に制御する必要があるため、運転管理作業が煩雑となる。
【0018】
(3)加圧浮上槽本体についても溶解空気量、加圧水量、掻取速度調節など運転管理項目が多く、運転管理作業が煩雑となる。
【0019】
(4)無機凝集剤は酸性であるため、その注入量に応じて、アルカリ(例:苛性ソーダ)を添加して反応に適切なpHとする工程が更に必要となり、運転費用が高額となる。
【0020】
(5)無機凝集剤中の金属に由来する汚泥が発生するため、流入固形物量より多くの含油汚泥が生じる。
【0021】
(6)排水中に溶解している又は固形物として存在しているリンが凝集され、含油汚泥として排出されるため、後段生物処理で栄養剤としてのリンが必要となる。
【0022】
(7)含油汚泥の含水率は94〜98%と高く、含油汚泥が大量に発生する。このため、別のタイプの有機高分子凝集剤(B)を用いた脱水処理設備が必要となる。またその前処理として、付着している微細気泡を除去するために撹拌装置を具備した脱気処理設備(脱気槽等)も必要となる。
【0023】
本発明は、上記課題に鑑み成されたものであり、その目的とするところは、油分を含有する有機性排水の処理方法及び処理装置において、微生物の無機栄養源(リン等)が過剰に除去されず、アルカリ度の消費を少なくでき、低含水率での脱水処理で、凝集剤由来の汚泥の発生を抑制し、しかも、排出する汚泥量が少ない方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成とすることができる。
【0025】
(I)油分及び有機物を含む有機性排水を処理する処理方法に関するものであって、有機性排水にカチオン性有機高分子凝集剤を添加し、油分及び有機物の凝集フロックを含む処理水を形成する凝集処理工程と、前記凝集フロックを含む処理水を、前記凝集フロックと分離液とに機械的に固液分離する機械的固液分離工程と、前記機械的に固液分離された分離液を生物処理する生物処理工程とを有し、前記生物処理工程と、前記生物処理工程後の後処理のいずれか一方又は両方で生じる分離汚泥を、前記凝集処理工程と、前記凝集処理工程よりも前段の工程の少なくとも一方の工程へ返送して処理することを特徴とする。
【0026】
(II)上記後処理は、前記機械的固液分離工程とは異なる工程であって、生物処理工程で有機物が除去された処理水を更に固液分離して前記分離汚泥を得る、固液分離工程であることを特徴とする。
【0027】
(III)更に脱水工程を有し、当該脱水工程は、上記のような分離汚泥と、機械的固液分離工程で生じる含油汚泥とから選択される、少なくとも1種以上の汚泥を脱水処理し、脱水汚泥を得る工程であることを特徴とする。
【0028】
(IV)上記分離汚泥の返送工程は、有機性排水の油分濃度とSS濃度の少なくともいずれかに応じて返送することを特徴とする。
【0029】
(V)更に、本発明は、油分を含有する有機性排水の処理装置に関するものであって、処理装置は、油分及び有機物を含む有機性排水をpH調整するpH調整手段と、前記pH調整された有機性排水をカチオン性有機高分子凝集剤と混合して油分及び有機物を凝集させ、凝集フロックを含む処理水を得る凝集手段と、前記凝集フロックを含む処理水を、前記凝集フロックと分離液とに固液分離する固液分離手段と、前記固液分離された分離液中の有機物を除去して汚泥と処理水とに分離する生物処理手段と、前記生物処理で生じる汚泥と、当該生物処理後の後処理で生じる汚泥のうち、少なくとも一方の汚泥を、前記凝集手段又はそれよりも上流側の一ヶ所以上の返送場所へ返送する返送手段とを有し、前記返送手段は、前記有機性排水の油分濃度と、当該有機性排水のSS濃度の少なくとも一方の濃度に応じ、前記汚泥を前記凝集手段又は当該凝集手段の前段の装置へ返送することを特徴とすることを特徴とする。
【0030】
上記のような発明は、例えば以下のような効果(i)〜(iii)を奏する。
(i)従来技術と比較して作業負荷が少ない。すなわち、一般的な加圧浮上処理では、無機凝集剤と有機高分子凝集剤の注入率の調整、溶解空気量の調整、加圧水量の調整、掻寄速度の調整等必要な運転管理項目が多く、運転管理が煩雑となっていた。これに対し、上記発明は、機械的固液分離に用いる固液手段(装置)の、運転速度の調整が運転管理の主要項目にすぎない。
【0031】
(ii)上記発明は、カチオン性有機高分子凝集剤(油脂分離ポリマ)を主たる凝集剤として使用するため、従来の凝集剤(特に、アルミ系凝集剤、鉄系凝集剤等の無機凝集剤)を使用しないか、使用する場合も僅かな量を必要とするにすぎず、リンの除去率が低く、アルカリ度の消費も少ないという利点もある。
【0032】
すなわち、従来技術で無機凝集剤としてアルミ系凝集剤を用いた場合、凝集剤の反応式として、下記式
Al
2(SO
4)
3+6HCO
3−=2Al(OH)
3+6CO
2+3SO
42−
を経て、下記式
2Al(OH)
3/Al
2(SO4)
3=0.23
となり、硫酸アルミニウム1mg/Lあたり、0.23mg/Lの汚泥が凝集剤由来の汚泥として発生する(以上、水処理薬品ハンドブック 技報堂出版)。
【0033】
上記工程において、リン酸(PO
43−)は、Al
3++PO
43−=AlPO
4となり難水溶性のリン酸塩を生成するため、同時にリンが除去されていた。また、鉄系凝集剤を使用する場合も、鉄イオンによりリンが除去されるため、アルミ系、鉄系に係らず、無機凝集剤を用いる場合はリンの除去が問題になった。
【0034】
更に、無機凝集剤を使用する場合はアルカリ度の消費も問題になった。例えば、アルミ系凝集剤として、硫酸アルミニウム(Al
2(SO
4)
3・18H
2O)を使用した場合、硫酸アルミニウム1mg/Lに対し、アルカリ度0.45mg/Lを消費するため、苛性ソーダとして0.36mg/Lの注入が必要であった。
【0035】
(iii)カチオン性有機高分子凝集剤の作用により、強固なフロックが形成されるため、機械式固液分離装置で低含水率での脱水処理が可能であり、凝集剤(特に無機凝集剤)由来の汚泥も発生しないため、排出する汚泥量が少ない。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、作業負荷が少ない上に、脱水汚泥の含水率の低減が可能であり、汚泥排出量も減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は特定の具体例に限定されるものではない。
【0039】
図2は本発明を模式的に示すフローシートであり、本発明の水処理方法及び処理装置では、被処理水にカチオン性有機高分子凝集剤を添加し、凝集処理を行った後、機械的に固液分離した後の処理水を生物処理する。必要であれば生物処理後の処理水を後処理に供することも可能であり、この後処理の具体的な例としては、前段の機械的固液分離とは異なる装置を用いた固液分離工程がある。
【0040】
本発明の水処理方法及び処理装置では、生物処理で発生した汚泥(余剰汚泥)と、後処理で発生した汚泥のうち、いずれか一方又は両方の汚泥が返送され、返送された汚泥は被処理水と同様の処理工程を辿る。以下により具体的に説明する。
【0041】
<被処理水(有機性排水)>
本発明において、処理の対象となる被処理水は、油分と有機物を含む有機性排水であって、食品加工工場、食品製造工場、飲料生産工場、機械工場、自動車工場など各種工場で発生する排水や下水、し尿、浄化槽からの放流水を挙げることができる。被処理水は特に限定されず、更に、ショッピングセンタ、レストラン、スーパーマーケット、ホテル、病院などの各種施設から排出される排水(厨房排水)を挙げることができる。
【0042】
油分とは常温で液体の油のみならず、常温で固体の脂肪、即ち、油脂類全般を示す。被処理水に含まれる油分としては、例えば、植物油、動物油、鉱物油などがあり、これら油分は1種又は2種以上が含有される。一般的に、排水中の油分の濃度は、ヘキサン抽出物質として測定される(JIS K0102)。
【0043】
有機物は、上記油分と、上記油分以外の有機物を全て含む概念である。すなわち、有機性排水には、油分のみを含む場合と、油分に加え、油分以外の有機物も含む場合がある。有機物としては、炭水化物、タンパク質、脂質、核酸、植物油、動物油、鉱物油、アルコール類、脂肪酸、界面活性剤、塗料など1種以上の有機物を挙げることができる。また、有機物は、動植物由来の物質でも化学的に合成された物質でもよい。また、上記物質から製造された物質でも上記物質の分解物でもよい。更に、被処理水は無機物を含む場合もある。
【0044】
次に、本発明に用いるカチオン性有機高分子凝集剤の一例について説明する。
【0045】
<カチオン性有機高分子凝集剤(油脂分離ポリマ)>
−種類
カチオン性有機高分子凝集剤は特に限定されないが、カチオン性モノマーの単独重合体又は共重合体、カチオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの共重合体などから1種以上を選択して使用することができる。本発明では、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄などの無機凝集剤と明確に区別するため、有機高分子凝集剤と記載するが、一般的には単に高分子凝集剤と称される。
【0046】
カチオン性モノマーとしては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの中和塩、3級塩若しくは4級塩などから1種以上選択することが可能であり、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート又はジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの中和塩、3級塩若しくは4級塩などが挙げられる。これらの中でもジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級塩が好ましく、より好ましくはアンモニウム塩である。
【0047】
ノニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルなどから1種以上を選択して用いることができる。アニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリルアミド−メチルプロパンスルホン酸、及びこれらの金属塩又はアンモニウム塩などから1種以上を選択して用いることができる。
【0048】
なお、(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの両方を含む概念であり、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸の両方を含む概念であり、更に、(メタ)アクリルアミドはアクリルアミドとメタクリルアミドの両方を含む概念である。
【0049】
また、カチオン性有機高分子凝集剤としては、非アミジン系高分子凝集剤に加え、アミジン単位を有するアミジン系高分子凝集剤、アミジン系高分子凝集剤と非アミジン系高分子凝集剤を混合した高分子凝集剤などが挙げられる。
【0050】
カチオン性有機高分子凝集剤の態様は、粉末状、液状(ディスパージョン状、エマルジョン状)などが挙げられる。
【0051】
−カチオン度
上述したように、原料モノマーの種類や凝集剤の態様は限定されるものではないが、本発明は、カチオン度が50mol%以上、即ち、ポリマの全モノマー単位(ユニット)中にカチオン性モノマー単位を50mol%以上含むカチオン性有機高分子凝集剤を用いることが好ましく、特に好ましいカチオン度は60mol%以上、その中でも80mol%以上が好ましい。
【0052】
更に、実質カチオン性モノマーからなる(100mol%)カチオン性有機高分子凝集剤を使用することもできる。なお、カチオン度は、凝集剤の原料モノマーに含まれるカチオン性モノマーの割合(mol%)として定義することができる。
【0053】
一般的に、排水中に含まれる油分は、界面活性剤やアルカリ成分によって、排水中に細かく分散し、油分粒子の表面は負に帯電している。一般的な汚濁物質のゼータ電位に比べて、油分粒子のゼータ電位は著しく低く、通常のカチオン性有機高分子凝集剤を加えても、フロックは形成されないか、フロックが形成されても機械的な固液分離に耐える強いフロックは形成されない。
【0054】
一方、カチオン度が50mol%以上のカチオン性有機高分子凝集剤を加えて混合すると、カチオン性有機高分子凝集剤の大きく正に帯電した(正の電荷密度が高い)分子鎖が排水中に細かく分散した油分を捕捉し、機械的な固液分離に耐える強いフロックを形成することができる。
【0055】
−分子量
カチオン性有機高分子凝集剤の分子量は特に限定されないが、分子量が500万以上であることが好ましく、特に600万以上、その中でも800万以上であることが好ましい。ここでの分子量は、固有粘度法で測定・算出された値であり、その測定、算出法の詳細は、「ポリマー凝集剤使用の手引き」の112〜116頁(東京都下水道サービス株式会社、平成14年3月発行)に記載されている。
【0056】
上述したように排水中の油分は細かく分散しているので、通常のカチオン性有機高分子凝集剤を加えても、フロック形成は形成されないか、フロックが形成されても機械的な固液分離に耐える強いフロックは形成されない。一方、分子量が500万以上のカチオン性有機高分子凝集剤を添加して混合すると、カチオン性有機高分子凝集剤の長い分子鎖が排水中に細かく分散した油分を捕捉し、機械的な固液分離に耐える強いフロックを形成することができる。
【0057】
−粘度
分子量と同じ観点から、カチオン性有機高分子凝集剤の特性を溶液粘度で定義することもできる。具体的には、カチオン性有機高分子凝集剤を純水に2g/Lで溶解したときの溶液粘度は、200mPa・s以上であることが好ましく、特に220mPa・s以上、その中でも250mPa・s以上であることが好ましい。
【0058】
また、カチオン性有機高分子凝集剤を純水に1g/Lで溶解した場合、その水溶液の粘度は100mPa・s以上であることが好ましく、特に120mPa・s以上、その中でも150mPa・s以上であることが好ましい。
【0059】
なお、上記粘度は、濃度が1g/Lと2g/Lのいずれの場合も、B形粘度計、JIS K7117−1:1999の附属書1(参考)に記載されているスピンドルSB2号を使用し、25℃、60min
−1の回転速度で測定した値である。スピンドルはロータとも呼ばれる。
【0060】
−溶媒
カチオン性有機高分子凝集剤は、好ましくは溶媒に溶解又は分散させた凝集剤溶液として使用する。この溶媒としては、純水、水道水、工業用水、地下水、各種排水処理の処理水、海水などを挙げることができる。カチオン性有機高分子凝集剤の凝集力を最大限発揮させる観点からは、純水、水道水を使用することが好ましい。一方、経済性の観点からは、工場用水、地下水、各種排水処理の処理水を使用することが好ましい。
【0061】
−注入量
カチオン性有機高分子凝集剤の注入量は、3〜300mg/Lであることが好ましく、特に5〜200mg/L、その中でも10〜150mg/Lであることが好ましい。なお、注入量は、1Lの被処理水20に対する量であって、被処理水20を返送汚泥と混合した場合は、1Lの混合液2に対する量を示す。凝集剤溶液を使用する場合の注入量は、溶媒を除いた凝集剤自身の量を意味する。
【0062】
また、被処理水20のCOD
Crに対するカチオン性有機高分子凝集剤の注入率は、0.2%〜10.0%であることが好ましく、特に0.3%〜7.0%、その中でも0.3%〜2.0%であることが好ましい。カチオン性有機高分子凝集剤の注入量が高すぎると、処理コストが高くなるだけではなく、フロックの粘性が増して固液分離が困難になる、フロックが崩れやすくなる等の問題が生じる。
【0063】
[その他の薬剤]
本発明は、無機凝集剤など他の薬剤を使用しなくても、油分を含む排水を処理可能ではあるが、上記カチオン性有機高分子凝集剤以外の薬剤の使用を何ら制限するものではない。具体的には、カチオン性有機高分子凝集剤の他、無機凝集剤、有機高分子凝結剤、脱水補助材などの1種以上の薬剤を添加することもできる。
【0064】
無機凝集剤としては硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、ポリ硫酸第2鉄(ポリ鉄)、硫酸第2鉄、塩化第2鉄あるいはこれらの混合物が使用可能である。有機高分子凝結剤としては縮合系ポリアミン、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダリン、ポリビニルピリジン、ジアリルアミン塩・二酸化硫黄共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・二酸化硫黄共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・アクリルアミド共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・ジアリルアミン塩酸塩誘導体共重合体、アリルアミン塩重合体が挙げられる。
【0065】
縮合系ポリアミンの具体例としては、アルキレンジクロライドとアルキレンポリアミンとの縮合物、アニリンとホルマリンの縮合物、アルキレンジアミンとエピクロルヒドリンとの縮合物、アンモニアとエピクロルヒドリンとの縮合物などが挙げられる。エピクロルヒドリンと縮合するアルキレンジアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、ジブチルアミンが挙げられる。
【0066】
脱水補助材は特に限定されないが、被処理水に分散して油の除去に寄与する油除去剤が好ましい。油除去剤は、天然高分子系油除去剤、合成高分子系油除去剤のうち1種以上を用いることが可能であり、その態様も粉体、短繊維状など特に限定されないが、化学構造中に親水性部分と疎水性部分の少なくとも一方を有する物質であって、好ましくは親水性部分と疎水性部分の両方を含む物質を用いる。
【0067】
天然高分子系油除去剤は、親水性物質であれば特に限定されず、天然物をそのまま、天然物からの抽出物、天然物の精製品、天然物の加工品(化学修飾、変性)、天然物の再生品など多用なものを使用することができるが、好ましくはセルロース系物質、タンパク質系物質であり、特に好ましくはセルロース系物質である。
【0068】
合成高分子系油除去剤は、化石原料から合成される親油性物質であれば特に限定されず、ポリオレフィン、ビニル系重合体、脂肪族ポリエステルその他樹脂材料を1種以上用いることができる。更に、分子鎖の絡み合いまたは三次元的な架橋構造のネットワークの中に油分を分子レベルで抱き込む吸油性ポリマを0.1mmから約5mmに無定形に粉砕した粉末も使用可能である。
次に、本発明の処理装置について説明する。
【0069】
<処理装置>
図3〜
図6は、それぞれ第1例〜第4例の水処理方法と、それに用いる処理装置を説明するための図面であり、同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。これらの処理装置1a〜1dは、凝集手段15と、固液分離手段(固液分離装置6)と、生物処理手段(生物処理槽9)とを有しており、必要に応じて前処理用の装置(pH調整手段13)や後処理用の装置(固液分離装置10)等、他の手段や装置を設置してもよい。以下に各手段について具体的に説明する。
【0070】
−凝集手段15
凝集手段15は、凝集槽3と供給手段14とを有しており、供給手段14にはカチオン性有機高分子凝集剤の粉体又は溶液、好ましくは水溶液又は水分散液が収容される。供給手段14は、凝集槽3又はその前段、好ましくは凝集槽3に接続され、最終的にカチオン性有機高分子凝集剤が凝集槽3内部に供給される。凝集手段15で処理された凝集槽処理水5は、直接又は他の処理装置を経て、固液分離手段へ送られる。
【0071】
−固液分離手段(固液分離装置6)
固液分離装置6は特に限定されないが、重力式沈殿処理設備よりも、脱水効率、設置面積、操作管理等の点で機械的固液分離装置が好ましく、また、加圧浮上装置のような凝集浮上分離装置よりも、加圧、遠心力、減圧(真空排気)又はこれらの組み合わせによりフロックを機械的に固液分離する装置がより好ましい。
【0072】
機械的な固液分離装置6としては、従来から汚泥脱水や汚泥濃縮に使用されている脱水機や濃縮機を1台又は2台以上組み合わせて使用することが可能であり、汚泥脱水機としては、スクリュープレス脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、多重円板型脱水機、多重板型スクリュープレス脱水機、回転加圧脱水機、真空脱水機、楕円板型脱水機等があり、汚泥濃縮機としては、スクリュー濃縮機、ベルト濃縮機、遠心濃縮機、楕円板型濃縮機がある。
【0073】
図7、8の符号6a、6bは第1例、第2例の固液分離装置を示す部分断面図であって、これらの固液分離装置6a、6bは、フロックを連続処理するフロック移動手段35を有している。フロック移動手段35は、例えば、回転ロールのようなベルト駆動手段37と、ベルト駆動手段37に架け渡されたベルト36とを有している。上記凝集槽処理水5は、フロック投入口33を介してベルト36上に供給され、ベルト駆動手段37の回転により、ベルト36と共に略水平方向に移動する。
【0074】
ベルト36の一部又は全部はろ布で構成されており、被処理水は移動の間にフロックと水分とに固液分離され、分離した処理水7はベルト36下方の捕捉手段34に補足され、分離したフロック(含油汚泥8)は排出口39から排出される。含油汚泥8を排出後のベルト36はフロック投入口33側へ戻り、凝集槽処理水5が再度供給されるが、フロック投入口33側に戻る前に、洗浄管38からの洗浄水を散布し、ベルト36を洗浄してもよい。
【0075】
このように、上記固液分離装置6a、6bはいずれも固液分離処理の連続処理に適しているが、より好ましくは第2例の固液分離装置6bのように、加圧手段41を設置する(
図8)。加圧手段41はフロックを加圧(圧搾)する装置であって、例えば、排出口39の手前に配置された1枚以上の加圧板42を有している。
【0076】
加圧板42は鉛直面からフロック投入口33側へ傾斜し、その下端とベルト36との間には隙間があり、その隙間を通過する際に、フロックは加圧板42でベルト36に押し付けられて加圧(圧搾)される。このときの加圧圧力は、隙間の大きさ、加圧板42の傾斜角度及び枚数、フロックの移動速度及び供給量等を加圧条件とし、1以上の加圧条件を変更することで、調整することができる。
【0077】
なお、加圧手段41は加圧板42に限定されず、加圧ロールのような他の形状の加圧部材を用いてもよい。いずれの場合も、加圧手段41により、フロックの含水率を効率良く低下させることができる。フロックに加える圧力は装置や固液分離条件により適宜変更可能であるが、200kPa以下が好ましく、特に1kPa〜150kPaが好ましく、その中でも1kPa〜100kPaが好ましく、より好ましくは10kPa以上、更に好ましくは15kPa以上、特に好ましくは20kPa以上である。上記圧力は、第2例の固液分離装置6bの場合は加圧板42の加圧条件で調整することができるし、スクリュープレス脱水機の場合は、スクリューの回転数や出口の開度を調整して内部圧力を調整することができる。
【0078】
上記凝集手段15と固液分離装置6a、6bでは、フロック形成工程と固液分離工程を別々に行っていたが、遠心脱水機のように、フロック形成工程と固液分離工程を同時に行う装置を採用することもできる。
【0079】
遠心脱水機は、例えば、筒状のケーシングと、ケーシングに挿通された中空の外胴ボウルと、外胴ボウルに挿通された内胴スクリューとを有しており、外胴ボウルと内筒スクリューは、回転軸線を中心に、同一方向に異なる速度で回転し、回転差が生じるように構成されている。
【0080】
被処理水は内胴スクリューの内部空間に供給されるが、その前段でカチオン性有機高分子凝集剤又はその溶液が混合され、その混合溶液は、内胴スクリューの供給口から外胴ボウルと内胴スクリューとの間の隙間(プール)に供給される。供給された混合溶液は撹拌混合されながら強い遠心力を受け、生成したフロックの固液分離が進む。内胴スクリューの外面にはスクリュー羽根が取り付けられており、固液分離で生じた含油汚泥は、回転するスクリュー羽根により移送され、最終的に固液分離装置の排出口から排出される。他方、分離した処理水は汚泥排出側との水位差により、含油汚泥とは別の排出口から排出される。
【0081】
上記いずれの固液分離装置を用いた場合も、フロックから分離した処理水(機械的固液分離装置処理水7)は、生物処理手段へ送られる。
【0082】
−生物処理手段(生物処理槽9)
生物処理手段は、生物(特に微生物)を利用するものであれば限定されず、嫌気性微生物、好気性微生物のいずれか一方又は両方を利用し、機械的固液分離装置処理水7から有機物、油分、無機物(窒素、リン、金属)などの残留物質を除去する。
【0083】
生物処理手段は、通常、上記のような微生物を収容した生物処理槽9で構成される。本発明では、前段の凝集手段15及び固液分離装置6a、6bにより、有機性排水中の油分の大部分が予め除去されるので、生物処理槽9の方式や使用条件には制限がない。例えば、通常の活性汚泥法の他、膜分離を利用した活性汚泥法(MBR法)、微生物が付着(固定)した担体を利用した生物膜方式でもよいし、微生物が付着した担体を浮遊させる担体添加方式でもよいし、複数方式を組み合わせてもよい。
【0084】
これらの中でも、生物処理槽9の内部に膜分離処理装置を設置し、処理水を生物処理槽9で固液分離するMBR法は、余剰汚泥を処理水7から固液分離し、懸濁物質の流出を低減可能な上、後述する汚泥返送の管理も簡易になるので、本発明に特に適している。
【0085】
生物処理槽9を設置台数も特に限定されない。例えば、機械的固液分離処理水7を、複数の生物処理槽9に順番に通水し、多段的に処理することも可能である。更に、機械的固液分離処理水7や原水(被処理水20)の水質に合わせて通水する生物処理槽9の種類を選択し、固液分離手段と生物処理槽9との接続を切り替えてもよい。
【0086】
いずれの場合も、生物処理で残留物質が除去された処理水は、処理装置1c、1dの外部に放出されるか(
図5、6)、後処理用の装置に供給される(
図3、4)。この後処理は特に限定されないが、好ましくは、含油汚泥8の分離に用いた装置6とは別の固液分離手段を用いる。
【0087】
−固液分離手段(固液分離装置10)
後処理用の固液分離手段には、前段の固液分離装置6とは異なる固液分離装置10を用いる。この固液分離装置10の種類は特に限定されず、前段の固液分離装置6と同じ種類の装置を用いることも可能であるが、より好ましくは、重力式沈殿処理設備、凝集沈殿処理設備、膜分離処理設備又はこれらの組合せであるが、より好ましくは膜分離処理設備である。
【0088】
この固液分離装置10で、生物処理後も残留する物質が除去され、処理水は処理装置1a、1bの外部へ放出される。他方、この固液分離装置10では分離汚泥が発生し、更に、その前段の生物処理槽9でも余剰汚泥が発生する。
図3〜6の符号11は、固液分離装置10と、生物処理槽9から得られる分離汚泥11を示している。
【0089】
これらの分離汚泥11と、固液分離装置6の含油汚泥8のうち、いずれか1種以上の汚泥を脱水する汚泥脱水機12を設置することも可能であり(
図3、5)、汚泥脱水機12としては、前段の固液分離装置6と同様の装置を用いることができる。しかし、汚泥脱水機12を設置する場合も設置しない場合も、本発明の処理装置1a〜1dは、分離汚泥11を返送するための返送手段17を有する。
【0090】
−返送手段17
返送手段17は特に限定されないが、例えば、配管、ポンプ、流量調整装置(フローメーター、フローコントローラ)、バルブ、制御装置などの1以上の部材又はこれらの組合せで構成される。
【0091】
返送手段17は、返送元として、前段の固液分離装置6よりも下流側の装置9、10に接続され、返送先として凝集手段15又はそれよりも上流側の装置に接続されている。好ましくは、返送元は生物処理槽9と後段の固液分離装置10のいずれか一方又は両方であり、返送先は凝集手段15の上流側の装置又は配管であり、より好ましくは、返送先として凝集槽3の上流に混合槽を設置する。本発明の処理方法では、この返送手段17を用い、分離汚泥11の一部又は全部を返送する。
【0092】
次に、本発明の処理方法について具体的に説明する。
【0093】
<水処理方法>
本発明の水処理方法は、いずれの処理装置1a〜1dを使用する場合も、上述した有機性排水を被処理水20とする。前処理として、pH調整剤(酸・アルカリ等)、無機凝集剤、上記カチオン性有機高分子凝集剤以外の凝集剤(特に、カチオン性有機高分子凝集剤より低分子量の有機凝結剤)、脱水補助材などから1種以上を選択し、被処理水20に添加することも可能である。
【0094】
ただし、栄養源(リン)の除去による生物処理への影響や、汚泥量の増加などを考慮すると、無機凝集剤の使用量は一般的な使用量(例:1000mg/L)よりも少なくすべきであり、アルミ系凝集剤と鉄系凝集剤の少なくとも一方を含む無機凝集剤10を、1Lの被処理水20に対し、500mg未満、好ましくは100mg未満、より好ましくは50mg未満、特に好ましくは10mg未満添加し、更に、無機凝集剤を実質的に添加しないことも可能である。
【0095】
凝集手段15には、必要に応じて前処理された被処理水20と、返送手段17で返送した分離汚泥11の少なくとも一方、より好ましくは両方を供給する。
【0096】
分離汚泥11は全量を返送してもよいし(
図4、6)、必要量のみを返送し、残部を他の装置(汚泥脱水機12)で処理してもよい(
図3、5)が、より具体的には、前処理前の被処理水20の水質(油分濃度、SS濃度)や、被処理水20の供給量に応じて、分離汚泥11を返送する。
【0097】
具体的には、被処理水20の供給量に対する、分離汚泥11の汚泥濃度(SS濃度)が100〜200mg/Lになるように返送量を決定する。例えば、被処理水20の供給量が100m
3/日、分離汚泥11の汚泥濃度が5,000mg/Lの場合、下記式Iのように、分離汚泥11の返送量は1日当たり2m
3以上4m
3以下となる。
【0098】
100[m
3/日]×(100〜200)[mg/L]/5000[mg/L]=2〜4[m
3/日]…式I
【0099】
但し、上記範囲を超えて返送量を増やす場合もあり、例えば、以下の試験手順で予備試験を行い、判定することができる。
【0100】
容器に1Lの被処理水20(前処理前)を分取し、所定の注入率(例えば、供給手段14の設定値)でカチオン性有機高分子凝集剤を加え、撹拌機(回転速度50min
−1、撹拌時間10分)で被処理水とカチオン性有機高分子凝集剤とを混合し、フロックを形成する。この撹拌機の回転速度と撹拌時間は、凝集手段15での回転速度、撹拌時間(滞留時間)に合わせて変更することができる。
【0101】
次に、篩(目開き1mm)と加圧板(圧力50kPa)を用いて、フロックを含む被処理水を汚泥と分離液に固液分離し、フロックの強度を確認する。このとき、分離液に濁り等が確認される場合は、被処理水20の油分濃度と被処理水20のSS濃度の少なくとも一方に対する凝集性が不十分と見做し、分離汚泥11の返送量と、薬剤(カチオン性有機高分子凝集剤等)の注入量の少なくとも一方を増加させる。この試験手順は必ずしも必須ではなく、過去に行った試験結果、被処理水20の油分濃度やSS濃度、排出元工場の稼働条件等から、必要返送量を推定することもできる。
【0102】
返送した分離汚泥11は、被処理水20とは別に凝集手段15へ供給し、処理することも可能ではあるが、好ましくは、凝集手段15よりも上流で、被処理水20と分離汚泥11を混合した混合液2を凝集手段15へ供給する。
【0103】
最も好ましくは、凝集槽3の上流側に混合槽を設置し、この混合槽で、pH調整手段13からpH調整剤を添加してpH調整を行い、更に、被処理水20と分離汚泥11を混合させて混合液2を形成し、pH調整後の混合液2を凝集手段15で処理する。混合液2のpHは凝集に適したpH(例:pH3〜11)、より好ましくは後段の生物処理にも適したpH(例:pH5〜8)とする。
【0104】
凝集槽3には撹拌手段が設置されており、分離汚泥11と被処理水20とを含む混合液2に、供給手段14からカチオン性有機高分子凝集剤を添加し、撹拌すると、被処理水20中の油分及び有機物が凝集し、凝集フロックが形成される。
【0105】
分離汚泥11は凝集手段15よりも下流の装置9、10で発生するため、既にカチオン性有機高分子凝集剤が付着しており、分離汚泥11の返送量に応じて、カチオン性有機高分子凝集剤も返送されることになる。即ち、混合液2には、供給手段14からのカチオン性有機高分子凝集剤に加え、分離汚泥11由来のカチオン性有機高分子凝集剤も供給されることになる。
【0106】
しかも、分離汚泥11に含まれるフロックが核となって凝集フロックが成長するので、新たなカチオン性有機高分子凝集剤や、その他凝集剤(無機凝集剤)の添加量を増やさなくても、凝集フロックが成長し、強固なフロックとなる。従って、凝集槽処理水5を固液分離装置6で機械的に固液分離しても、フロックが破損し難く、効率良く濃縮・脱水処理をすることができる。
【0107】
この濃縮・脱水処理により、被処理水20由来の油分やSSの多くが含油汚泥8として処理水7から除去される。含油汚泥8は、脱水機12の脱水汚泥と混合して廃棄してもよいし、単独で助燃材などに再利用してもよい。更に、含油汚泥8を、単独又は分離汚泥11と共に脱水機12で脱水した後、廃棄してもよい。
【0108】
他方、機械的固液分離装置処理水7は、放流側の要求水質により、そのまま処理装置1a〜1dから放流してもよいが、好ましくは生物処理槽9で好気的又は嫌気的に生物処理する。
【0109】
この処理水7からは、油分やSSが含油汚泥8として予め除去されているため、BOD負荷が低く、生物処理槽9での滞留時間の短縮や、余剰汚泥の減量などが可能になり、残留油分による微生物の失活も防止される。しかも、本発明は、無機凝集剤の使用を抑えることができるので、多くの微生物の生育に必要なリンが処理水7に残留しており、生物処理槽9の管理も簡易になる。
【0110】
生物処理槽9で生成した余剰汚泥は、生物処理槽9の膜装置で固液分離後、又はそのまま分離汚泥11として一部又は全部を返送する。生物処理槽9で有機物が除かれた後の処理水は、水質に応じてそのまま排出し、必要に応じて後段の固液分離装置10で固液分離してから外部に排出する。この固液分離装置10で分離される汚泥も、分離汚泥11として一部又は全部を返送する。
【0111】
このように、本発明は、油分を含油汚泥8として除去した後に発生する分離汚泥11を返送するので、油分等の生物処理や膜ろ過に悪影響を与える物質は返送せずに、凝集に必要な物質(フロック核、カチオン性有機高分子凝集剤)のみを主に返送して再利用することができる。
【0112】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
【実施例】
【0113】
<試験例1>
第4例の処理装置1d(
図6)を用いて油分含有有機性排水の処理試験を実施した。この処理試験では、先ず、酸、アルカリで被処理水20を凝集最適pHに調整すると共に(pH=7.1)、生物処理槽9からの余剰汚泥(分離汚泥11)を400mg/Lの返送量で返送し、混合液2とした。この混合液2を凝集槽3に導入し、供給手段14から被処理水1L当たり70mgのカチオン性有機高分子凝集剤(油脂分離ポリマ)を添加し、撹拌した。
【0114】
凝集槽処理水5は、
図8の固液分離装置6bで機械的に濃縮・脱水処理し、処理水7と含油汚泥8とに分離させた。
【0115】
これとは別に、比較例として、無機凝集剤(硫酸バンド)と苛性ソーダを注入し、高分子凝集剤を更に添加した後に、従来技術の加圧浮上法でフロックを除去した。被処理水のpH(pH調整後)、SS濃度、油分(ヘキサン抽出物質)、BOD、COD、リン濃度と共に、上記試験条件を下記表1にまとめた。
【0116】
【表1】
【0117】
上記表中、「油脂分離ポリマ」はジメチルアミノエチルアクリレート四級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合体からなるカチオン性有機高分子凝集剤(カチオン度85mol%、分子量900万)であり、上記表中、「ポリマ」はアニオン性有機高分子凝集剤(水ing社の商品名「エバグロースA−151」)である。従来技術では、無機凝集剤である硫酸バンドの添加によるpH低下を補うため、NaOHの添加が必須であり、本発明と比較して処理コストが増加した。またP0
4−P濃度は、従来技術では処理水の残留がほぼ0mg/Lとなり、従来技術では、生物処理に栄養剤としてのリンの注入が必要となることが確認された。
【0118】
<試験例2>
第2例の処理装置1b(
図4)を用いて油分含有有機性排水の処理試験を実施した。この処理試験では、先ず、酸、アルカリで被処理水20を凝集最適pHに調整すると共に(pH=7.1)、後段の固液分離装置10から分離汚泥11の一部(100mg/L、mg/Lは被処理水1L当たりの量、以下同じ)を返送し、混合液2とした。
【0119】
この混合液2を凝集槽3に導入し、供給手段14から12mg/Lのカチオン性有機高分子凝集剤(試験例1と同じ油脂分離ポリマ)と、100mg/Lの脱水補助材(セルロース)を添加して、撹拌し、フロックが形成された凝集槽処理水5を機械的固液分離装置6で濃縮・脱水し、処理水7と含油汚泥8とに分離させた。
【0120】
含油汚泥8は廃棄し、処理水を生物処理槽9で処理した後、その処理水を、後段の固液分離装置10(重力式沈殿処理)で処理した。この固液分離装置10で処理後の処理水について、ヘキサン抽出物質を測定した。その測定結果を、試験条件と共に下記表2に記載する。
【0121】
【表2】
【0122】
上記表2から明らかなように、本発明によれば、ヘキサン抽出物質の処理水残留量が極めて低く、油分が十分に除去されたことが確認された。
【0123】
また、余剰の分離汚泥11を含油汚泥8と混合し、汚泥脱水機で脱水処理したところ、汚泥処理が一元化できた上に、脱水処理後の含油汚泥含水率は、80.4%となった。これに対し、従来技術による脱水汚泥の含水率は85%程度であり、本発明の優位性が確認された。