特許第6797093号(P6797093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6797093組織固定要素を採用する減圧ドレッシング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797093
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】組織固定要素を採用する減圧ドレッシング
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20201130BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   A61M27/00
   A61M1/00 130
【請求項の数】48
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-194765(P2017-194765)
(22)【出願日】2017年10月5日
(62)【分割の表示】特願2014-517248(P2014-517248)の分割
【原出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2018-20180(P2018-20180A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2017年10月27日
【審判番号】不服2019-7409(P2019-7409/J1)
【審判請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】61/500,915
(32)【優先日】2011年6月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ティモシー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ,タイラー
(72)【発明者】
【氏名】ホール,コリン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ロソール,ジャネット
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 井上 哲男
【審判官】 倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−505510(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/003521(WO,A1)
【文献】 特表2014−519960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61M 1/00
A61F 13/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織部位を治療するための減圧システムにおいて、
減圧を分配し流体を受け取る複数の流路を有する多孔質部材であって、第1面及び第2面を有し、前記多孔質部材の第1面に形成されて可撓性を提供するように構成された複数の切欠きをさらに有する多孔質部材と;
第1面及び第2面を有する流体透過性基板部材であって、前記多孔質部材の第2面が前記流体透過性基板部材の第1面に対向する、流体透過性基板部材と;
前記流体透過性基板部材の第2面に結合された組織固定要素と;
前記多孔質部材の第1面に適用され封止空間を形成するように構成された封止部材と;
を有することを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記多孔質部材が、発泡体であることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体透過性基板部材が、有窓ドレープまたは有窓膜であることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体透過性基板部材が、ポリエチレンであることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、前記流体透過性基板部材の第2面を部分的に覆っていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、流体透過性であることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、隔置されたパターンを有すること特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムにおいて、前記隔置されたパターンが、隔置された円形のパターンを有することを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、シリコーンであることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、前記組織部位に隣接して配置されるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記組織部位に対する前記組織固定要素の粘着力が、前記組織固定要素と前記流体透過性基板部材との間の結合力よりも小さくなるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、当該組織固定要素を通って流体が移動できるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記封止部材が、取付デバイスを有し、
前記組織固定要素が、前記多孔質部材を超えて延在して延長部を形成することを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記取付デバイスが、前記封止部材の少なくとも周辺に延在することを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記取付デバイスが、感圧接着剤であることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記多孔質部材の第2面が、前記流体透過性基板部材の第1面に結合されていることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記多孔質部材の第2面が、前記流体透過性基板部材の第1面に直接結合されていることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体透過性基板部材が、前記組織部位と前記多孔質部材との間に配置されるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記流体透過性基板部材が、前記多孔質部材と前記組織固定要素との間に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記封止空間に減圧を提供するように構成された減圧源をさらに有することを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムにおいて、前記減圧源の減圧の影響下で、流体を受け取るように構成された液体容器をさらに有することを特徴とするシステム。
【請求項22】
組織部位を治療するための減圧システムにおいて、
減圧を分配し流体を受け取る複数の流路を有する多孔質部材であって、第1面及び第2面を有し、前記多孔質部材の第1面に形成されて可撓性を提供するように構成された複数の切欠きをさらに有する多孔質部材と;
有窓膜であり、かつ第1面及び第2面を有する流体透過性基板部材であって、前記多孔質部材の第2面が前記流体透過性基板部材の第1面に対向する、流体透過性基板部材と;
前記流体透過性基板部材の第2面に結合された組織固定要素であって、流体透過性である組織固定要素と;
前記多孔質部材の第1面に適用され封止空間を形成するように構成された封止部材と;
を有することを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項22に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、隔置されたパターンを有すること特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項23に記載のシステムにおいて、前記隔置されたパターンが、隔置された円形のパターンを有することを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項22に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、シリコーンであることを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項22に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、前記組織部位に隣接して配置されるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項22に記載のシステムにおいて、前記組織部位に対する前記組織固定要素の粘着力が、前記組織固定要素と前記流体透過性基板部材との間の結合力よりも小さくなるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項22に記載のシステムにおいて、前記封止部材が、当該封止部材の組織部位に対向する面に取付デバイスを有し、前記組織固定要素が、前記多孔質部材を超えて延在して延長部を形成することを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項28に記載のシステムにおいて、前記取付デバイスが、前記封止部材の少なくとも周辺に延在することを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項28に記載のシステムにおいて、前記取付デバイスが、感圧接着剤であることを特徴とするシステム。
【請求項31】
組織部位を治療するための減圧システムにおいて、
減圧を分配し流体を受け取る複数の流路を有する多孔質部材であって、第1面及び第2面を有し、前記多孔質部材の第1面に形成されて可撓性を提供するように構成された複数の切欠きをさらに有する多孔質部材と;
有窓膜であり、かつ第1面及び第2面を有する流体透過性基板部材であって、前記多孔質部材の第2面が前記流体透過性基板部材の第1面に対向する、流体透過性基板部材と;
前記流体透過性基板部材の第2面に結合され、かつ前記多孔質部材を超えて延在して延長部を形成する組織固定要素であって、流体透過性である組織固定要素と;
前記多孔質部材の第1面に適用され封止空間を形成するように構成された封止部材であって、当該封止部材の組織部位に対向する面に取付デバイスを有する封止部材と;
を有することを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項31に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、隔置されたパターンを有することを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項32に記載のシステムにおいて、前記隔置されたパターンが、隔置された円形のパターンを有することを特徴とするシステム。
【請求項34】
請求項31に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、シリコーンであることを特徴とするシステム。
【請求項35】
請求項31に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、当該組織部位に隣接して配置されるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項36】
請求項31に記載のシステムにおいて、前記組織部位に対する前記組織固定要素の粘着力が、前記組織固定要素と前記流体透過性基板部材との間の結合力よりも小さくなるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項37】
請求項31に記載のシステムにおいて、前記取付デバイスが、前記封止部材の少なくとも周辺に延在することを特徴とするシステム。
【請求項38】
請求項31に記載のシステムにおいて、前記取付デバイスが、感圧接着剤であることを特徴とするシステム。
【請求項39】
組織部位を治療するための減圧システムにおいて、
減圧を分配し流体を受け取る複数の流路を有する多孔質部材であって、第1面及び第2面を有し、前記多孔質部材の第1面に形成されて可撓性を提供するように構成された複数の切欠きをさらに有する多孔質部材と;
有窓膜であり、かつ第1面及び第2面を有する流体透過性基板部材であって、前記多孔質部材の第2面が前記流体透過性基板部材の第1面に対向する、流体透過性基板部材と;
前記流体透過性基板部材の第2面に結合する組織固定要素であって、隔置されたパターンを有する組織固定要素と;
を有することを特徴とするシステム。
【請求項40】
請求項39に記載のシステムにおいて、前記隔置されたパターンが、隔置された円形のパターンを有することを特徴とするシステム。
【請求項41】
請求項39に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、シリコーンであるシステム。
【請求項42】
請求項39に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が、前記組織部位に隣接して配置されるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項43】
減圧を用いて組織部位を治療するためのシステムにおいて、
減圧を分配し流体を受け取るように構成された多孔質部材であって、第1面及び第2面を有し、前記多孔質部材の第1面に形成されて可撓性を提供するように構成された複数の切欠きをさらに有する多孔質部材と;
前記多孔質部材の前記第2面に隣接する有窓膜と;
前記有窓膜と隣接する組織固定要素であって、前記有窓膜の100%未満を覆うパターンを有する、組織固定要素と;
前記多孔質部材の第1面及び前記組織部位に適用され封止空間を形成するように構成された封止部材と;
を有することを特徴とするシステム。
【請求項44】
請求項43に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素が非水溶性であることを特徴とするシステム。
【請求項45】
請求項43に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素がシリコーンであることを特徴とするシステム。
【請求項46】
請求項43に記載のシステムにおいて、前記組織固定要素がシリコーンゲルであることを特徴とするシステム。
【請求項47】
請求項43に記載のシステムにおいて、前記有窓膜がポリエチレンであることを特徴とするシステム。
【請求項48】
請求項43に記載のシステムにおいて、
前記組織固定要素がシリコーンゲルであり、かつ
前記有窓膜がポリエチレンである、
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、2011年6月24日に出願された「Reduced−Pressure Dressings Employing Tissue−Fixation Elements」と題する米国仮特許出願第61/500,915号明細書の出願の利益を主張する。
【0002】
本開示は、概して医療システムに関し、より詳細には、ただし限定するものではなく、組織固定要素を採用する減圧ドレッシングに関する。
【背景技術】
【0003】
臨床研究および診療により、組織部位に近接して減圧を提供することにより、組織部位における新生組織の増殖が促進され加速されることが分かった。この現象の適用例は多数あるが、減圧の適用は、創傷の治療に特に成果があった。この治療(医学界では「陰圧創傷療法」、「減圧療法」または「真空療法」と呼ばれることが多い)には、治癒の迅速化および肉芽組織の形成の促進を含むことができる、多くの利点がある。通常、減圧は、多孔質パッドまたは他のマニホールド装置を介して組織にかけられる。多孔質パッドは、組織に減圧を分配し、組織から引き出される流体を送る。減圧を、流体の除去等、他の治療に適用することも可能である。
【発明の概要】
【0004】
例示する実施形態によれば、組織部位を治療する減圧システムは、分配マニホールドと、分配マニホールドの上に配置されて分配マニホールドを収容する封止空間を生成する封止部材と、封止空間に減圧を提供する、封止空間に流体結合された減圧源と、減圧源からの減圧の影響下で、患者から流体を受け取る、分配マニホールドに流体結合された液体容器とを備える。分配マニホールドは、減圧を分配し流体を受け取る複数の流路を有する多孔質部材を備える。多孔質部材は、第1面および組織に面する第2面を有する。分配マニホールドは、第1面および組織に面する第2面を有する流体透過性基板部材をさらに備える。多孔質部材の組織に面する第2面は、流体透過性基板部材の第1面に近接する。流体透過性基板部材の組織に面する第2面は、表面積Aを有する。分配マニホールドはまた、第1面および組織に面する第2面を有する組織固定要素も備える。組織固定要素の第1面は、流体透過性基板部材の組織に面する第2面に結合され、組織固定要素の組織に面する第2面は表面積Aを有する。表面積およびは、以下の式に従って関連付けられる。すなわち、0.05A<A<0.6Aである。
【0005】
別の例示的な実施形態によれば、減圧により患者の組織部位を治療する方法は、
分配マニホールドを、分配マニホールドの組織固定要素を使用して、分配マニホールドが前記組織部位に実質的に隣接したままであるように、組織部位に仮付けするステップと、分配マニホールドを封止部材で覆って、分配マニホールドを収容する封止空間を形成するステップと、封止空間に減圧を提供するステップとを含む。分配マニホールドは、減圧を分配し流体を受け取る多孔質部材を備える。多孔質部材は、組織部位に面する表面積Aを有する。分配マニホールドはまた、多孔質部材に結合された組織固定要素を備える。組織固定要素は、組織部位に面する表面積Aを有し、0.05A<A<0.6Aである。
【0006】
別の例示的な実施形態によれば、減圧により患者の組織部位を治療する方法は、仮付けユニットを提供するステップと、多孔質部材を備える分配マニホールドを提供するステップと、仮付けユニットを組織部位に接して配置するステップと、分配マニホールドを仮付けユニットに接して、分配マニホールドが、仮止めユニットおよび組織部位以外の外部支持なしに組織部位に隣接したままであるように配置するステップとを含む。本方法はさらに、分配マニホールドを封止部材で覆って、分配マニホールドを収容する封止空間を生成するステップと、分配マニホールドに減圧を提供するステップとを含む。
【0007】
別の例示的な実施形態によれば、患者の組織部位に減圧を提供する減圧システムで使用される分配マニホールドは、減圧を分配し流体を受け取る複数の流路を有する多孔質部材を備える。多孔質部材は、第1面および組織に面する第2面を有する。分配マニホールドはさらに、第1面および組織に面する第2面を有する流体透過性基板部材を備える。多孔質部材の組織に面する第2面は、流体透過性基板部材の第1面に近接する。流体透過性基板部材の組織に面する第2面は表面積Aを有する。分配マニホールドはまた、第1面および組織に面する第2面を有する組織固定要素も備える。組織固定要素の第1面は、流体透過性基板部材の組織に面する第2面に結合される。組織固定要素の組織に面する第2面は表面積Aを有し、0.05A<A<0.6Aである。
【0008】
別の例示的な実施形態によれば、患者の組織部位に減圧を提供する減圧システムで使用される分配マニホールドを製造する方法は、減圧を分配し流体を受け取る複数の流路を有する多孔質部材を提供するステップを含む。多孔質部材は、第1面および組織に面する第2面を有する。本方法はさらに、第1面および組織に面する第2面を有する流体透過性基板部材を提供するステップを含む。流体透過性基板部材の組織に面する第2面は表面積Aを有する。本方法はさらに、多孔質部材の組織に面する第2面を、流体透過性基板部材の第1面に結合するステップと、第1面および組織に面する第2面を有する組織固定要素を提供するステップとを含む。組織固定要素の組織に面する第2面は表面積Aを有する。AおよびAは、以下の関係を有する。すなわち、0.05A<A<0.6Aである。本方法はさらに、組織固定要素の第1面を、流体透過性基板部材の組織に面する第2面に結合するステップを含む。
【0009】
別の例示的な実施形態によれば、減圧により患者の組織部位を治療する方法は、患者を、患者が治療中の大部分の時間ありつづける姿勢である主流となる姿勢に配置するステップと、組織固定要素を用いて、患者が主流となる姿勢であり続ける間に、組織部位に多孔質部材を仮付けするステップとを含む。主流となる姿勢では、組織部位は、重力場に対して実質的に平行である。本方法はさらに、多孔質部材を封止部材で覆って封止空間を形成するステップと、封止空間に減圧を提供するステップとを含む。
【0010】
例示的な実施形態の他の特徴および利点は、以下の図面および詳細な説明を参照して明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、組織部位を治療する減圧システムの例示的な実施形態の一部が断面で示されている概略図である。
図2図2は、分配マニホールドの例示的な実施形態の概略断面図である。
図3図3は、多孔質部材および組織固定要素の例示的な実施形態の概略底面(組織に面する側の平面)図である。
図4図4は、多孔質部材および組織固定要素の例示的な実施形態の概略底面図である。
図5図5は、多孔質部材および組織固定要素の例示的な実施形態の概略底面図である。
図6図6は、多孔質部材および組織固定要素の例示的な実施形態の概略底面図である。
図7図7は、多孔質部材および組織固定要素の例示的な実施形態の概略底面図である。
図8図8は、組織部位を治療する減圧システムの例示的な実施形態の一部の概略断面図である。
図9図9は、患者の上の分配マニホールドの概略上面図である。
図10図10は、組織部位を治療する減圧システムの例示的な実施形態の一部の概略断面図である。
図11図11は、切欠きを有する多孔質部材の例示的な実施形態の概略斜視図である。
図12図12は、切欠きを有する多孔質部材の例示的な実施形態の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例示的な非限定的な実施形態の以下の詳細な説明では、その一部をなす添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することができるように十分詳細に記載されており、他の実施形態を利用することができることと、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく論理的な構造的変更、機械的変更、電気的変更および化学的変更を行うことができることとが理解される。当業者が本明細書に記載される実施形態を実施することができるために必要ではない詳細を避けるために、説明は、当業者には既知である一定の情報を省略している場合がある。以下の詳細な説明は、限定する意味で解釈されるべきではなく、例示的な実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0013】
ここで主に図1および図2を参照すると、減圧によって患者104の組織部位102を治療する減圧システム100が提示されている。減圧治療を、組織増殖を促進し、創傷の接合に役立ち、流体を取り除くために、または他の目的のために使用することができる。特に示さない限り、本文書を通して使用する「または」は、相互排他性を必要としない。組織部位102は、非限定的な例として、切開部106であり得る。切開部106は、縫合糸108が切開部106を閉鎖位置で保持するのに役立つように示されている。切開部106は、患者104の表皮110、真皮112を通り、皮下組織114内に入ることができる。組織部位102は、骨組織、脂肪組織、筋肉組織、皮膚組織、脈管組織、結合組織、軟骨、腱、靭帯または他のあらゆる組織を含む、あらゆるヒト、動物または他の生物の生体組織であり得る。
【0014】
減圧システム100は、組織部位102に隣接して配置される分配マニホールド116を備えている。分配マニホールド116は、減圧を分配し流体を受け取る複数の流路を有する多孔質部材118を備えている。多孔質部材118は、第1面120および組織に面する第2面122を有している。図2に最もよく示すように、分配マニホールド116は、第1面125および組織に面する第2面127を有する流体透過性基板部材124も備えることができる。多孔質部材118の組織に面する第2面122は、流体透過性基板部材124の第1面125に近接している。流体透過性基板部材124の組織に面する第2面127は表面積Aを有している。
【0015】
分配マニホールド116の多孔質部材は、組織部位に減圧をもたらし、組織部位に流体を送達し、または組織部位から流体を取り除くのに役立つように設けられている物質または構造体を指す。多孔質部材118は、典型的には、分配マニホールド116の周囲の組織部位102に提供されかつそこから取り除かれる流体を分配する複数の流路または経路を有している。1つの例示的な実施形態では、流路または経路は、組織部位102から提供されるかまたは取り除かれる流体の分配を促進するように相互接続されている。多孔質部材118は、組織部位102と直接接触して配置することができかつ減圧を分配する、生体適合性材料であり得る。多孔質部材118の例としては、限定なしに、たとえばセル状(cellular)発泡体、連続気泡発泡体、多孔質組織集合体、液体、ゲル、および流路を含むかまたは流路を含むように硬化する発泡体等、流路を形成するように構成された構造要素を有するデバイスを含むことができる。多孔質部材118を、発泡体、ガーゼ、フェルトマット、または特定の生物学的用途に適した何らかの他の材料から作製することができる。一実施形態では、多孔質部材118は、多孔質発泡体であり、流路として作用する相互接続された複数のセルまたは細孔を含む。多孔質発泡体は、San Antonio、TexasのKinetic Concepts,Incorporated製のGranuFoam(登録商標)材料等、ポリウレタン、連続気泡、網状発泡体であり得る。状況によっては、多孔質部材118を使用して、薬剤、抗菌剤、成長因子およびさまざまな溶液等の流体を組織部位102に分配することも可能である。多孔質部材118の中または上に、吸収性材料、ウィッキング材料、疎水性材料および親水性材料等、他の層を含めることができる。
【0016】
1つの例示的な実施形態では、多孔質部材118を、開放創で使用される場合に、使用に続いて患者の体内から取り除く必要がない、生体吸収性材料から構成することができる。好適な生体吸収性材料としては、限定なしに、ポリ乳酸(PLA)およびポリグリコール酸(PGA)のポリマーブレンドを挙げることができる。ポリマーブレンドとしては、また、ポリカーボネート、ポリフマレートおよびカプロラクトン(capralactone)を挙げることができる。多孔質部材118は、さらに、新たな細胞増殖のためのスキャフォールド(足場材料)としての役割を果たすことができ、または細胞増殖を促進するために、多孔質部材118とともにスキャフォールド材料を使用することができる。スキャフォールドは、細胞増殖のためのテンプレートを提供する3次元多孔質構造体等、細胞の増殖または組織の形成を強化するかまたは促進するために使用される物質または構造体である。スキャフォールド材料の例示的な例としては、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、コーラル(coral)ハイドロキシアパタイト、炭酸塩または加工された同種移植片材料が挙げられる。多孔質部材118は、あらゆる形状、たとえば矩形、正方形、三角形、円形または他のあらゆる形状をとることができる。
【0017】
図2に示すように、多孔質部材118の側縁123を、多孔質部材118における組織部位102または組織部位102に近い領域に対する力を滑らかにオフロードする(offload)ような形状の縁とすることができる。たとえば、多孔質部材118の側縁123を、非限定的な例として、図示するような45度角度あるいは30度角度または力をオフロードするのに役立つ別の角度で形成することができる。図10および図11に関連して後に説明するように、多孔質部材118に対し、多孔質部材118の可撓性を高めるように第1面120に切欠きを形成することができる。
【0018】
分配マニホールド116は、流体透過性基板部材124を備えることができる。流体透過性基板部材124は、多孔質部材118による組織部位102の刺激を防止するかまたは阻止するように動作可能である。流体透過性基板部材124は、織物材料、(ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸塩、セルロース系およびそれらのコポリマー、ならびに非電離放射線滅菌法が使用される場合はポリプロピレン等の繊維形成ポリマーを用いる)不織材料、(上に列挙したような繊維形成ポリマーを用いる)有窓ドレープあるいは膜、高密度発泡体(多孔質部材118より密度が高い)、または流体透過を可能にしながら多孔質部材118による組織部位102の刺激を阻止するあらゆる材料であり得る。流体透過性基板部材124は、組織固定要素126(さらに後述する)の取付を容易にすることができる。流体透過性基板部材124を、接着ボンド、フレームラミネーションあるいはヒートラミネーション、スプレー接着剤、ホットメルト、または他のあらゆる装置あるいは技法を使用して分配マニホールド116に結合することができる。流体透過性基板部材124を、圧縮発泡体またはフェルト発泡体および共発泡(co−blown)発泡体および膜等を使用することによって一体型発泡体または膜を形成することにより、分配マニホールド116に結合することができる。
【0019】
流体透過性基板部材124は、組織部位102を治療するために薬剤、たとえば抗菌薬、リドカインまたは他の物質を含むことができる。流体透過性基板部材124は、中実基板であってもよく、または多孔質部材118を部分的にのみ覆ってもよい。結合されたとは、別個の物体を介する結合を含み、直接の結合を含む。結合されたという用語はまた、各々が同じ物質片から形成されることによって互いに連続している2つ以上の構成要素も包含する。結合は、化学ボンドを介する等の化学的結合、機械的結合、熱的結合または電気的結合も含むことができる。流体結合は、流体が指定された部品または位置の間で連通することができることを意味する。
【0020】
分配マニホールド116は、組織固定要素126を備えている。後にさらに説明するように、組織固定要素126は、分配マニホールド116を組織部位102に仮付けするかまたは少なくとも一時的に取り付けるように動作可能であるが、減圧システム100の他の態様が適用される。組織固定要素126は、第1面128および組織に面する第2面130を有している。組織固定要素126の第1面128を、流体透過性基板部材124の組織に面する第2面127に、またはいくつかの実施形態では、多孔質部材118の組織に面する第2面122に直接、結合することができる。組織固定要素126の組織に面する第2面130は表面積Aを有している。組織固定要素126の粘着性は、流体透過性基板部材124が多孔質部材118から分離する前に組織固定要素126が組織部位102から分離するようなものであり得る。言い換えれば、組織固定要素126の組織部位102への粘着性の強度は、組織固定要素126と流体透過性基板部材124との間の結合の強度より小さい。
【0021】
流体透過性基板部材124の表面積Aに対する組織固定要素126の表面積Aの関係は、0.05A<A<0.6Aであり得る。表面積A、A間の他の関係が企図される。非限定的な例示的な例として、以下の関係を実現することができる。すなわち、0.10A<A<0.8A、0.10A<A<0.5A、0.15A<A<0.4A、0.20A<A<0.4Aまたは他の関係である。表面積の関係は、組織固定要素126の所与の粘着性に対して、表面積Aが、重力場131からの重力にも関らず、分配マニホールド116を組織部位102に隣接して保持するのに適した力を提供する、というものである。流体透過性基板部材124を利用しない例示的な実施形態では、関係は、多孔質部材118の組織に面する第2面122の表面積Aと組織固定要素126の面積Aとの関係として類似しており、たとえば0.05A<A<0.7Aである。
【0022】
組織固定要素126は、多くの形状をとるかまたは多くのパターンを形成することができる。たとえば、組織固定要素126は、図3および図4に示すように、流体透過性基板部材124の組織に面する第2面127(または別法として、多孔質部材118の組織に面する第2面122)に結合された、隔置されたストリップまたはラインを含むことができる。組織固定要素126がとることができるパターンの他の例としては、限定なしに、図5に示すような(均一なまたはランダムな)島または円、図6に示すような同心円、図7に示すようなメッシュ、同心正方形、三角形、ダイヤモンドまたは他のあらゆるパターンが挙げられる。典型的には、パターンは、流体透過性基板部材124の組織に面する第2面127(または別法として、多孔質部材118の組織に面する第2面122)の100パーセント未満の被覆率を含むが、組織固定要素126を通る流体流動を可能にする組織固定要素126が使用される場合、100パーセント(100%)被覆率を使用することができる。非限定的な例として、図3では、AはAのおよそ25%(0.25)であり、図4では、AはAのおよそ50%(0.5)である。
【0023】
組織固定要素126は、水溶性接着剤または非水溶性接着剤であり得る。1つの例示的な実施形態では、組織固定要素126は、液体との接触の少なくとも1時間後に溶解し、それにも関らず接触して少なくとも10分間残る、水溶性接着剤である。別の例示的な実施形態では、組織固定要素126は、水性液体との接触によって活性化される接着剤である。別の例示的な実施形態では、組織固定要素126は、液体と接触すると少なくとも10分間残り、液体との接触の少なくとも1時間以内または3時間以内に実質的に溶解する、水溶性接着剤である。水溶性接着剤を用いるいくつかの実施形態では、使用者が組織固定要素126の溶解速度を上昇させたい場合、多孔質部材118内に食塩水を注入することができる。
【0024】
組織固定要素126の非水溶性版では、多孔質部材118または流体透過性基板部材124上の組織固定要素126の広がりは、最初から治療のために分配マニホールド116を通して減圧の流れを可能にするのに適しており、同時に、重力場131が直接逆らう場合であっても分配マニホールド116を適所に維持するように仮付けするのに適している。いくつかの実施形態では、組織固定要素126の粘着性に対し、多孔質部材118または流体透過性基板部材124の種々の位置において強度を変化させることができる。
【0025】
非可溶性組織固定要素126を用いる実施形態では、非可溶性接着剤を使用することができる。非可溶性接着剤の非限定的な例としては、コロイド、ヒドロゲル、シリコーン、ラストマー(lastomer)、アクリル樹脂、ポリウレタンおよびポリビニルアセテートが挙げられる。水溶性組織固定要素126を用いる実施形態では、組織固定要素126を形成するために水溶性分散性接着剤を使用することができる。使用することができる可溶性または感水分散性接着剤の非限定的な例としては、以下が挙げられる。すなわち、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、改質セルロース(カルボキシメチルセルロース[CMC]等)およびセルロースエーテル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアミド、ポリエステルおよびポリウレタン等のヒドロキシおよびカルボキシ改質ポリマーならびにそれらの塩(たとえばナトリウム、カリウムおよびアンモニウム)、ポリアクリルアミド、グアルおよびキサンタン等のゴム、ポリエチレングリコールである。また、水溶性を、pHの変化を通してまたは置換によって引き起こすことができる。たとえば、カルボン酸ナトリウムを形成するカルボキシル基からのナトリウム塩の形成を引き起こすことができる。これらの変化は、ドレッシング(創傷)に高pH溶液を追加して、カルボキシル官能基(酸性)が中和され水溶性となるか、または添加剤がポリマーマトリックス内にあり、(創傷または外因、たとえば点滴からの)湿気の吸収時に活性化し可動となる等、外因を用いてもたらすことができる。十分であり得る1つの市販の水溶性物質は、回路基板のウェーブ(wave)はんだ付けで用いられる「Water Soluble Tape」であり、St.Paul、Minnesotaの3Mから入手可能である。組織固定要素126を、追加の治療利益を提供するために含まれるさまざまな薬剤、たとえば銀を用いて形成することができる。組織固定要素126を、組織部位102のさらなる調整を可能にするか、または治療されている組織部位102の近くの刺激の低減に役立つことができる、ゲルまたはコロイドから形成することも可能である。
【0026】
図2に示すように、リリースライナ129を用いて、組織固定要素126の組織に面する第2面130を覆うことができる。リリースライナ129は、組織固定要素126の組織に面する第2面130を、保管のために、または組織固定要素126が適用される前に覆う。リリースライナ129は、第1面135および組織に面する第2面137を有している。保管状態では、リリースライナ129の第1面135は、組織固定要素126の組織に面する第2面130に取外し可能に結合されている。
【0027】
再び主に図1を参照すると、減圧システム100は、分配マニホールド116および無傷の表皮110の一部の上に配置されて分配マニホールド116を収容する封止空間133を形成する、封止部材132をさらに備えている。封止部材132は、流体シールを提供するいかなる材料でもあり得る。流体シールは、関連する減圧源またはサブシステムを考慮して所望の部位において減圧を維持するのに適したシールである。封止部材132は、たとえば、不透過性または半透過性エラストマー材料であり得る。エラストマー材料は、エラストマーの特性を有している。エラストマーとは、概して、ゴム様特性を有するポリマー材料を指す。より詳細には、大部分のエラストマーは、極限伸びが100%を超え、著しい弾力性がある。材料の弾力性は、弾性変形から回復する材料の能力を指す。エラストマーの例としては、限定されないが、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ポリウレタン(PU)、EVA膜、コポリエステルおよびシリコーンを挙げることができる。封止部材材料のさらなる具体的な例としては、シリコーンドレープ、3M Tegaderm(登録商標)ドレープ、またはPasadena、CaliforniaのAvery Dennison Corporationから入手可能なもの等、ポリウレタン(PU)ドレープが挙げられる。
【0028】
封止部材132は、組織に面する側136に取付デバイス134を有することができる。取付デバイス134を用いて、患者の表皮110、またはガスケットあるいは追加の封止部材等の別の層に対して、封止部材132を保持することができる。取付デバイス134は多くの形態をとることができる。たとえば、取付デバイス134は、封止部材134の周辺またはすべての周囲に延在する、医療的に許容可能な感圧接着剤であり得る。さらなる例として、取付デバイス134は、両面ドレープテープ、ペースト、ハイドロコロイド、ハイドロゲルまたは他の封止デバイスあるいは要素であり得る。
【0029】
減圧システム100は、封止空間133にかつ分配マニホールド116に流体結合することができる減圧源138をさらに備えている。減圧源138を、減圧送達導管140によって減圧インタフェース142に結合することができる。減圧源138を、図1に示すように外部供給源とすることができ、減圧送達導管140に流体結合することができる。別法として、減圧源138を、多孔質部材118内に組み込むか、または分配マニホールド116に隣接して配置することができる。減圧源138は、真空ポンプ、壁面吸込み、マイクロポンプまたは他の供給源等、減圧を供給するあらゆるデバイスであり得る。組織部位にかけられる減圧の量および特質は、通常、用途に従って変化するが、減圧は、典型的には、−5mmHg(−667Pa)と−500mmHg(−66.7kPa)との間、より典型的には−75mmHg(−9.9kPa)と−300mmHg(−39.9kPa)との間、より典型的にはさらに−100mmHg(−13.3kPa)と−150mmHg(−19.9kPa)との間となる。
【0030】
減圧システム100のいくつかの実施形態では、減圧インタフェース142は、封止空間133への流体連通を提供する。1つの例示的な実施形態では、減圧インタフェース142は、San Antonio、TexasのKCIから入手可能なT.R.A.C.(登録商標)PadまたはSensa T.R.A.C.(登録商標)Padである。
【0031】
減圧とは、概して、治療を受けている組織部位における、周囲圧力より低い圧力を指す。大部分の場合、この減圧は、患者がいるところの大気圧より低くなる。別法として、減圧は、組織部位における静圧であり得る。減圧は、最初に、分配マニホールド116、減圧送達導管140内に、かつ組織部位102に近接して流体流を発生させることができる。組織部位102の周囲の静圧が所望の減圧に近づくに従い、流れは沈殿する可能性があり、減圧を維持することができる。特に示さない限り、本明細書での述べる圧力の値はゲージ圧である。送達される減圧を、一定とするかまたは変化させる(パターン化するかまたはランダムとする)ことができ、連続してまたは断続的に送達することができる。本明細書における使用と一貫して、減圧または真空圧の増大は、概して、絶対圧における相対圧を指す。
【0032】
減圧源138によって提供される減圧の影響下で患者104から流体を受け取るために、液体容器(receptor)144を、分配マニホールド116に流体結合する(または分配マニホールド116の一態様として含める)ことができる。液体容器144を、図1に示すようにキャニスタ146とすることができ、または分配マニホールド116に関連する吸収層とすることができる。
【0033】
主に図1および図2を参照すると、1つの例示的な実施形態による動作時、分配マニホールド116は、適切に寸法が決められた分配マニホールド116を選択するか、または分配マニホールド116を適切な寸法に切断することにより、組織部位102に対して寸法が決められる。適用可能である場合、分配マニホールド116は、リリースライナ129を除去することによって適用の準備がなされる。組織固定要素126の組織に面する第2面130が組織部位102に隣接して配置される。組織固定要素126は、少なくとも一時的に組織部位102に付着する。したがって、分配マニホールド116は、組織部位102に実質的に隣接したままである。このように、患者104は、組織部位102を重力場131に対して平行にすることができ、それにも関らず、分配マニホールド116は、組織部位102の上の所望の位置に残る。分配マニホールド116は、すべての外部支持体が除去された場合であっても組織部位102に接したままであることができ、それにより、分配マニホールド116は、組織固定要素126のみによって、場合によっては、ある程度まで組織部位102自体によって吊るされる。言い換えれば、分配マニホールド116を、組織固定要素126以外のいかなる追加の器具または支持体もなしに組織部位102に隣接して保持することができる。
【0034】
そして、分配マニホールド116および無傷の表皮110の一部の上に封止部材132を配置して、封止空間133を生成することができる。分配マニホールド116は、封止空間133内に配置される。まだ付与されていない場合、減圧インタフェース142を封止部材132に付与することができる。減圧送達導管140を、減圧源138と減圧インタフェース142との間に流体結合することができる。減圧源138が起動され、それにより、封止空間133に減圧が供給され、流体が、組織部位102から液体容器144まで流れることができる。組織固定要素126のパターンにより、治療中、組織部位102において収縮力が360℃で発生する可能性がある。収縮力は、減圧の影響下で分配マニホールド116または封止部材132の収縮によって発生する。
【0035】
水溶性組織固定要素126を用いる実施形態では、組織固定要素126は、最初に、組織部位102に隣接して分配マニホールド116を保持し、その後、時間の経過により、組織固定要素126は溶解する。1つの例示的な実施形態では、組織固定要素126は、液体と接触して少なくとも10分間残り、液体との接触の少なくとも1時間、2時間または3時間以内で溶解する。組織固定要素126が多孔質部材118の組織に面する第2面122または流体透過性基板部材124を部分的に覆うため、減圧は、分配マニホールド116を通って組織部位102まで即座に流れることができ、組織固定要素126が溶解するに従ってより利用可能な流路でそのように流れることができる。他の実施形態では、非水溶性組織固定要素126を使用して、組織固定要素126のパターンは残り、組織固定要素126の部分の間の適切な流れを可能にするか、または組織固定要素126自体が、組織固定要素126を通る流体流を可能にすることができ、すなわち、組織固定要素126は流体透過性であり得る。
【0036】
ここで主に図8を参照すると、減圧システム100の別の例示的な実施形態の一部が提示されている。図8の減圧システム100は、図1の減圧システム100に類似しているが、以下の2つの主な相違がある。すなわち、多孔質部材118には複数の可鍛性部材152が追加されており、流体透過性基板部材124は、多孔質部材118の側縁123を超えて延在している。
【0037】
複数の可鍛性部材152は、脚、腕、胸部または複雑な面等、患者104の湾曲面に適応するために、分配マニホールド116を塑性変形させる。複数の可鍛性部材152を、鋼またはあらゆる塑性変形可能な部材から形成することができる。断面では、複数の可鍛性部材152のうちの1つのみが示されているが、いかなる数の隔置された部材を含めることも可能であることが理解されるべきである。動作時、分配マニホールド116は、治療される患者104の湾曲面の形状に対して塑性変形する。複数の可鍛性部材152は形状を保持する。そして、減圧システム100を、先に提示した配置に類似して適用することができる。
【0038】
ここで主に図9を参照すると、減圧システム100の別の例示的な実施形態の一部の上面図が提示されている。多孔質部材118は、切開部106に破線で示されており、切開部106もまた破線で示されている。この実施形態では、組織固定要素126は、多孔質部材118を超えて延在して延長部154を形成している。延長部154は、患者104の表皮110への力をオフロードするのに役立つ。他の実施形態では、流体透過性基板部材124は、力をオフロードするために多孔質部材118を超えて延在することができる。
【0039】
ここで主に図10を参照すると、分配マニホールド116の別の例示的な実施形態が提示されている。図10では、封止部材132はまだ付与されていない。図10の分配マニホールド116は、多孔質部材118の第1側120に複数の切欠き156または切れ目が形成されていることを除いて、先の実施形態に類似している。複数の切欠き156は分配マニホールド116が、患者104の身体部分とともに、または患者の身体の動きにより撓むかまたは湾曲するのに役立つ。複数の切欠き156を、図10に示唆するような側部切れ目、図11に示すような切れ目の格子あるいはメッシュパターン、図12に示すような六角形切れ目、または別の形状とすることができる。
【0040】
別の例示的な実施形態では、組織固定要素126は、液体活性(liquid−activated)接着剤であり得る。こうした実施形態では、組織固定要素126を、組織部位における創傷からの液体、食塩、または皮膚処置液によって活性化することができる。使用者は、組織固定要素126の液体活性接着剤を組織部位102に接して配置し、存在する液体が組織固定要素126の粘着性を活性化することができるようにする。
【0041】
別の例示的な装置では、組織固定要素126を、流体透過性基板部材124の一態様として含めることができる。たとえば、1つの例示的な実施形態では、流体透過性基板部材124は、材料に高吸収繊維が織り込まれた織物材料であり得る。高吸収繊維は、湿潤すると粘着性になる。他の感水ポリマーまたは架橋水溶性ポリマー(たとえば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ならびにキサンタンおよびグアル等の他の天然ゴム)等、湿潤すると粘着性を提供するように、流体透過性基板部材124に他の繊維または材料を含めることができる。
【0042】
別の例示的な実施形態では、組織固定要素126を、第1面128および組織に面する第2面130両方にリリースライナ、たとえばリリースライナ129があって、別個に保管することができる。使用時、リリースライナは第1面128から取り除かれ、多孔質部材118の組織に面する第2面122、または流体透過性基板部材124の組織に面する第2面127に付与される。そして、リリースライナは、組織固定要素126の組織に面する第2面130から取り除かれ、組織固定要素126は組織部位102と接触する。別法として、リリースライナを、まず組織固定要素126の組織に面する第2面130から取り除き、組織部位102に付与することができる。そして、リリースライナを、組織固定要素126の第1面128から取り除くことができ、多孔質部材118または流体透過性基板部材124を、組織固定要素126に隣接して付与することができる。別の例示的な実施形態では、組織固定要素126の粘着性および強度を、組織固定要素126が、切開部106を閉鎖位置で保持する際に縫合糸を補うかまたは縫合糸として機能するようなものとすることができる。
【0043】
別の例示的な装置では、封止部材132を多孔質部材118の第1面120に付与することができ、組織固定要素126を、流体透過性基板の組織に面する第2面127、または多孔質部材118の組織に面する第2面122に固定することができる。リリースライナ129は、組織固定要素126の組織に面する第2面130および封止部材132の組織に面する第2面139を覆うことができる。このように、封止部材132を付与するためにリリースライナ129を取り除くことにより、リリースライナ148もまた組織固定要素126から取り除かれていることが確実になる。
【0044】
本明細書における例示的な実施形態では、封止部材132が付与されている間に多孔質部材118を適所に保持する追加の器具を必要とすることなく、分配マニホールド116を1人の使用者によって付与することができる。さらに、使用者は、封止部材132を付与するために両手を利用することができる。組織固定要素126の粘着性は、封止部材132が付与される前に、使用者が組織部位102に対して多孔質部材118を再配置することができる、というものであり得る。
【0045】
さらに、患者が、患者が治療中の大部分の時間とどまる姿勢である主流となる姿勢にある状態で、分配マニホールド116を付与することができる。これは、組織部位102が(重力場131に対して平行な)垂直面にある患者が、垂直姿勢のままである間に分配マニホールド116が付与されることが可能であることを意味する。対照的に、こうした患者104に置かれた分配マニホールド116が、(重力場131に対して垂直な)水平姿勢で組織部位102に付与される場合、患者は、再度垂直姿勢になる時、分配マニホールド116が患者に対して快適ではないように引っ張って嵌まると感じる可能性がある。
【0046】
本発明およびその利点について、いくつかの例示的な実施形態に関連して開示したが、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更、置換、並べ替えおよび改変を行うことができることが理解されるべきである。いかなる1つの実施形態に関連して記載されるいかなる特徴も、他のいかなる実施形態にも適用可能であり得ることが理解されよう。たとえば、図8の可鍛性部材152を図1の実施形態に含めることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12