(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
経済成長と生活方式の変化に応じて食習慣にも最近多くの変化があった。特に、忙しい現代人はファーストフードなどの高熱量の食餌と少ない運動量により過体重及び肥満が増加している。世界保健機関(World Health Organisation、WHO)によると、全世界で10億以上の成人が過体重であり、そのうち少なくとも300万人以上が臨床的に肥満であり、特にヨーロッパでは毎年25万人、全世界的では年250万人以上が過体重に関連して死亡した(非特許文献1)。
【0003】
過体重及び肥満は、血圧とコレステロール値を増加させて心臓疾患、糖尿病、関節炎などの様々な疾患の発症または悪化の原因となっている。また、過体重及び肥満は成人だけでなく、子供や青少年でも動脈硬化、高血圧、高脂血症や心臓疾患などの発症率を増加させる主要な要因となっている。
このように、肥満は世界的な病気として各種疾患の原因になることもある深刻な病気であるが、個人の自助的な努力によって克服されると信じられており、肥満患者は患者自身の自制力が弱いためであると評価されている。
しかし、肥満は意外に治療が容易ではなく、その理由は肥満が食欲調節及びエネルギー代謝の作用機序に関連する複雑な疾患であるからである。したがって、肥満を治療するためには患者自身の努力だけでなく、食欲調節及びエネルギー代謝に関連する異常な作用機序を治療する方法が同時に実行されなければならないため、前記異常な作用機序を治療することができる医薬を開発しようとする努力が続けられている。
【0004】
前述した努力の結果として、リモナバン(Rimonabant、Sanofi-Aventis)、シブトラミン(Sibutramin、Abbott)、コントレイブ(Contrave、Takeda)、オルリスタット(Orlistat、Roche)などの肥満治療薬が開発されているが、これらは致命的な副作用を示したり、肥満の治療効果が不備であるという欠点があった。例えば、リモナバンは中枢神経障害の副作用を示し、シブトラミンとコントレイブは心血管副作用を示し、オルリスタットは1年服用すると約4kgの体重減少の効力を示すものに過ぎないと報告された。したがって、現在の肥満患者に安全に処方することができる肥満治療薬はほとんどない状態である。
【0005】
このように、従来肥満治療薬の問題点を解消することができる新たな医薬品を開発しようとする研究が活発に行われており、最近ではグルカゴン誘導体に関心が集中されている。グルカゴンは薬物治療または疾病、ホルモンや酵素の欠乏などの原因で血糖が低下し始めた場合、膵臓で生産される。グルカゴンは肝臓でグリコーゲンを分解してグルコースを放出するように信号伝達して、血糖値を正常なレベルまで高める役割をする。また、グルカゴンは血糖値の上昇効果に加えて、食欲抑制及び脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼ(hormone sensitive lipase)を活性化させて脂肪分解を促進し抗肥満効果を示すことが報告された。しかし、グルカゴンは低溶解度と中性pHでの沈殿により治療剤としてその使用が制限されてきた。
【0006】
このようなグルカゴンの誘導体中の一つであるグルカゴン−様−ペプチド-1(GLP-1)は、糖尿病患者の高血糖症を減少させる治療剤として開発中の物質である。GLP-1はインスリン合成と分泌促進、グルカゴンの分泌阻害、胃空腹抑制、グルコースの使用促進とともに、飲食物摂取を阻害する機能を有する。
【0007】
GLP-1と約50%のアミノ酸相同性を有するトカゲ毒液(lizard venom)から作られるエキセンディン-4(exendin-4)もGLP-1受容体を活性化させ、糖尿病患者の高血糖症を減少させることが知られている。しかし、前記GLP-1またはエキセンディン-4を含む肥満治療用の医薬品は嘔吐や吐き気の副作用を発生させるという問題点を示すことが報告された。
【0008】
そこで、前記GLP-1の代わりとして、GLP-1とグルカゴンの両方のペプチドの受容体に結合することができるオキシントモジュリン(oxyntomodulin)が脚光を浴びている。前記オキシントモジュリンはグルカゴンの前駆体であるフレ-グルカゴン(pre-glucagon)から作られるペプチドであって、GLP-1の飲食物摂取阻害、満腹感増進効果及びグルカゴンの脂肪分解機能を表し、抗−肥満薬としての可能性を高めている。
【0009】
しかし、オキシントモジュリンまたはその誘導体は生体内での半減期が短い反面、低い薬効のため毎日過量の薬物を投与しなければならないという重大な欠点がある。また、一つのペプチドにGLP-1とグルカゴン活性の両方が存在する場合、その活性比が固定されて様々な比率を有する二重アゴニスト(dual agonist)の使用が困難である。したがって、GLP-1とグルカゴンとの含量を調節して、様々な活性の割合で使用することができる併用治療がより効果的である。
【0010】
ただし、そのためには、中性pHで凝集されて時間の経過に応じて沈殿される低溶解度を示すグルカゴンの物性を改善することが要求される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前記目的を達成するための本発明の一 実施様態は、下記化学式(1)のアミノ酸配列を含み、天然型グルカゴンとpIが同一ではない、つまり相異する新規なグルカゴン誘導体を提供する。
[化1]
X1-X2-QGTF-X7-SDYS-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-F-X23-X24-W-L-X27-X28-T (1)
前記式において、
X1が、ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン(desamino-histidine)、ジメチル-ヒスチジン(N-dimethyl-histidine)、ベータ-ヒドロキシイミダゾプロピオン酸(beta-hydroxyimidazopropionic acid)、4-イミダゾ酢酸(4-imidazoacetic acid)、ベータ-カルボキシイミダゾプロピオン酸(beta-carboxyimidazopropionic acid)、トリプトファン、チロシンまたは不存在であり;
X2が、α-メチル-グルタミン酸(α-methyl-glutamic acid)、Aib(aminoisobutyric acid)、D-アラニン、グリシン、Sar(N-methylglycine)、セリンまたはD-セリンであり;
X7が、スレオニンまたはバリンであり;
X12が、リジンまたはシステインであり;
X13が、チロシンまたはシステインであり;
X14が、ロイシンまたはシステインであり;
X15が、アスパラギン酸、グルタミン酸またはシステインであり;
X16が、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、α-メチル-グルタミン酸またはシステインであり;
X17が、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リジン、アルギニン、セリン、バリンまたはシステインであり;
X18が、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、アルギニンまたはシステインであり;
X19が、アラニンまたはシステインであり;
X20が、リジン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、リジンまたはシステインであり;
X21が、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリンまたはシステインであり;
X23が、バリンまたはアルギニンであり;
X24が、バリン、ロイシン、グルタミンまたはアルギニンであり;
X27が、イソロイシンまたはメチオニンであり;
X28が、アルギニンまたはアスパラギンである。
(但し、前記化学式(1)のアミノ酸配列が配列番号:1と同一である場合は除く)。
【0016】
本発明によるグルカゴン誘導体は天然グルカゴンの一部アミノ酸を変形させて、天然グルカゴンと異なるpIを有することにより物性を改善したペプチド、ペプチド誘導体またはペプチド模倣体などを含む。
本発明において、用語「天然グルカゴン」とは、配列 His-Ser-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr(配列番号:1)を有する天然のヒトグルカゴンを示す。
本発明による化学式(1)の配列において、アミノ酸を通常的な方式の記載により左のN−末端から右のC−末端の方向に進行する。したがって、化学式(1)の配列である残基の「位置」について言及したときは天然のヒトグルカゴン及び他の分子内の位置について言及する場合と同様に解釈するべきである。
【0017】
本明細書全般を通じて、天然的に存在するアミノ酸に対する通常の1文字及び3文字コードが使用されるだけでなく、Aib(α-アミノイソ酪酸)、Sar(N-methylglycine)、α-メチル-グルタミン酸(α-methyl-glutamic acid)などのような他のアミノ酸に対して一般的に許容される3文字コードが使用される。
また、本明細書に言及されたアミノ酸はIUPAC-IUB命名法により、次のように略語で記載した。
アラニンA アルギニンR
アスパラギンN アスパラギン酸D
システインC グルタミン酸E
グルタミンQ グリシンG
ヒスチジンH イソロイシンI
ロイシンL リジンK
メチオニンM フェニルアラニンF
プロリンP セリンS
スレオニンT トリプトファンW
チロシンY バリンV
【0018】
本発明において、用語「ペプチド」とは、α-アミノ酸をはじめとする天然型及び非天然型アミノ酸やアミノ酸誘導体の2つ以上がペプチド結合で連結された形態の化合物を意味する。本発明における「グルカゴン誘導体」とは、化学式(1)の配列を含むペプチドまたはその誘導体、類似体または変形物を意味する。本発明によるペプチドはグルカゴンの一部のアミノ酸を置換の形態に変形させて、天然グルカゴンに比べてpIが変化されたペプチド模倣体(peptidomimetic)などを含む。本発明の一実施形態では、これらのグルカゴン誘導体がグルカゴン受容体活性を維持しながら天然型グルカゴンとは異なる等電点を有する。本発明のさらに具体的な形態では、グルカゴン誘導体はグルカゴン受容体活性を維持しながら生理的pHで天然型グルカゴンの溶解度が改善されたペプチドを意味する。
【0019】
本発明において、用語「pI」または「等電点(isoelectric point)」は、ポリペプチドのような巨大分子の全体純荷電(net charge)がない(0)場合のpH値を意味する。様々な荷電された官能基が存在するポリペプチドの場合、pH値がpIであることにおいて全体ポリペプチドの純荷電は0である。pIより高いpHでのポリペプチドの全体純荷電はマイナスになり、pIより低いpHでのポリペプチドの全体純荷電はプラスになる。
【0020】
pIは、この分野で通常的に使われる方法で測定したり推算することができる。例えば、ポリアクリルアミド、澱粉またはアガロースで構成される固定されたpH勾配ゲル上で等電点電気泳動により測定したり、例えば、ExPASyサーバーでpI/MWツール(http://expasy.org/tools/pi_tool.html; Gasteiger et al., 2003)を使用して、アミノ酸配列からpIを推算することができる。
【0021】
本発明の一具体的実施形態では、化学式(1)のアミノ酸配列を含むグルカゴン誘導体が配列番号:1に記載されている天然グルカゴンの配列でアミノ酸の置換、付加、欠失または翻訳後の変形(例えば、メチル化、アシル化、ユビキチン化、分子内共有結合)を経た物質として、グルカゴン受容体活性はそのまま維持しながら、天然グルカゴンに比べて変化されたpIを有し、溶液のpHに応じて増加された溶解度を示し、それによって生体内化学的安定性が向上された任意のペプチドを包括する。
【0022】
前記アミノ酸の置換または付加の際には、ヒトタンパク質で通常的に観察される20個のアミノ酸だけでなく、非定型または非自然発生アミノ酸及びアミノ酸誘導体を使用することができる。非定型アミノ酸の商業的な出所はシグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ChemPep、ジェンザイム・ファーマシューティカルズ(Genzyme Pharmaceuticals)などが含まれる。このようなアミノ酸が含まれているペプチド及び定型的なペプチド配列は商業化されたペプチド合成会社、例えば、米国のアメリカンペプチドカンパニー(American Peptide Company)やバケム(Bachem)、または韓国のエニゼン(Anygen)を通じて合成及び購入可能である。アミノ酸誘導体も同様の方法で入手することができ、その例を一部だけ挙げればデスアミノ-ヒスチジン(desamino-histidine)、ベータ-ヒドロキシイミダゾプロピオン酸(beta-hydroxyimidazopropionic acid)、4-イミダゾ酢酸(4-imidazoacetic acid )、ベータ-カルボキシイミダゾプロピオン酸(beta-carboxyimidazopropionic acid)などを使用することができる。
【0023】
グルカゴンは約7のpIを有し生理学的pH(pH6−8)の溶液中で不溶性であり、中性pHで沈殿される傾向がある。pH3以下の水溶液中でグルカゴンは初期には溶解されるが、1時間以内でゲル形成により沈殿する。ゲル化されたグルカゴンは主にβ-シートフィブリルからなり、このように沈殿されたグルカゴンはゲルが注射針や静脈に投与される場合は、血管を詰まらせるため注射剤として使用するのに適していない。沈殿過程を遅延させるために、酸性(pH2〜4)剤形を使用することが通常であるが、これにより短時間に比較的無凝集状態にグルカゴンを維持することができる。しかし、グルカゴンのフィブリル形成が低いpHで非常に迅速に行われるため、これらの酸性剤形は調製後すぐに注射されるべきである。
【0024】
pIに応じて溶液内でのタンパク質の溶解度、活性及び安定性が変わることは、当業界に広く知られている常識である(非特許文献2)。
【0025】
そこで、本発明では、天然グルカゴンの配列を変形してpIを変えることにより、安定性及び作用効果が延長されたグルカゴン誘導体を開発した。本発明のグルカゴン誘導体は、天然グルカゴンと比べて変化されたpIを有することにより、溶液のpHに応じて天然グルカゴンに比べて改善された溶解性及び高い安定性を示すことを特徴とする。
【0026】
本発明の一具体的実施形態でグルカゴン誘導体は前記化学式(1)のアミノ酸配列において、
X1が、ヒスチジンまたはトリプトファン、チロシンまたは不存在であり;
X2が、セリンまたはAib(aminoisobutyric acid)であり;
X7が、スレオニンまたはバリンであり;
X12が、リジンまたはシステインであり;
X13が、チロシンまたはシステインであり;
X14が、ロイシンまたはシステインであり;
X15が、アスパラギン酸またはシステインであり;
X16が、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリンまたはシステインであり;
X17が、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、バリンまたはシステインであり;
X18が、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンまたはシステインであり;
X19が、アラニンまたはシステインであり;
X20が、リジン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、リジンまたはシステインであり;
X21が、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリンまたはシステインであり;
X23が、バリンまたはアルギニンであり;
X24が、バリン、ロイシンまたはグルタミンであり;
X27が、イソロイシンまたはメチオニンであり;
X28が、アルギニンまたはアスパラギンであるペプチドであってもよい。(但し、前記化学式(1)のアミノ酸配列が配列番号:1と同一である場合は除く)。
より好ましくは、本発明のグルカゴン誘導体は配列番号:2〜34で記載されるアミノ酸配列中いずれか一つを含むペプチドであってもよい。
本発明のグルカゴン誘導体を含むペプチドは標準合成方法、組換え発現システム、または任意の他の当該分野の方法により製造されてもよい。したがって、本発明によるグルカゴン類似体は、例えば、下記を含む方法を含む多数の方法で合成されてもよい。
(a)ペプチドを個体状または液体状方法の手段で段階的にまたは断片組み立てによって合成し、最終ペプチド生成物を分離及び精製する方法;または
(b)ペプチドをエンコードする核酸作製物を宿主細胞内で発現させて、発現生成物を宿主細胞培養物から回収する方法;または
(c)ペプチドをエンコードする核酸作製物の無細胞試験管内発現を行い、発現生成物を回収する方法、または
(d)(a)、(b)及び(c)の任意の組み合わせでペプチドの断片を収得し、続いて断片を連結させペプチドを収得して、当該ペプチドを回収する方法。
【0027】
好ましい実施様態において、本発明のグルカゴン誘導体が天然グルカゴンに比べて変化されたpIを有することを確認した(表1参照)。したがって、本発明のグルカゴン誘導体は溶液のpHに応じて天然グルカゴンに比べ、改善された溶解度及び高い安定性を有するため、低血糖治寮剤として使用すると患者順応度を高めることができ、他の抗肥満治療剤との併用投与に適して低血糖及び肥満の予防または治療に有用に使用することができる。
そこで、本発明のグルカゴン誘導体は低血糖、肥満またはその関連疾患に対して魅力的な治療的選択を提供することができる。
例えば、本発明のグルカゴン誘導体はインスリンの主な対応調節ホルモンとして、糖尿病患者の重度の低血糖を治療するのに有用に使用することができる。
【0028】
また、本発明のグルカゴン誘導体は体重増加を予防したり、体重減少を促進したり、過体重を減らしたり、病的肥満を含む肥満(例えば、食欲、摂食、食品摂取、カロリー摂取及び/またはエネルギー消費の調節による)だけでなく、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患及び肥満誘導された睡眠無呼吸を含むが、これに限定されない関連疾患及び健康状態を治療するための薬剤として使用することができる。本発明のグルカゴン誘導体はまた、メタボリック症候群、高血圧、動脈硬化誘発脂質異常症、アテローム性動脈動化症、動脈硬化症、冠状動脈心疾患、脳卒中などのような肥満に関連する状態の治療に使用することができる。しかし、これらの病態において、本発明に係るグルカゴン誘導体の効果は前述した体重関連効果を介して全体的にまたは部分的に媒介されてもよいし、これとは独立的であってもよい。
【0029】
一方、本発明のグルカゴン誘導体の治療効果を高めるためにポリエチレングリコール(PEG)、糖鎖などをはじめとする高分子の修飾やアルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、免疫グロブリンなどとの融合など、当該技術分野の通常の技術を利用してグルカゴン誘導体を変形させることができる。例えば、本発明の化合物内の一つ以上のアミノ酸側鎖は生体内で可溶性及び/または半減期を増加させ/したり、生体利用率を増加させるために高分子に接合することができる。このような変形はまた治療学的タンパク質及びペプチドの消去(clearance)を減少させることが知られている。
【0030】
これらの高分子は水溶性(両親媒性または親水性)、無毒性及び薬学的に不活性であるものが適しており、好ましくはPEG、PEGの同種ポリマーまたはコポリマー、PEGのモノメチル置換ポリマー(mPEG)であるか、ポリリジン、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸のようなポリアミノ酸が含まれる。
前記のようなグルカゴン誘導体の変異体も本発明の範囲に含まれる。
もう一つの様態として、本発明は前記グルカゴン誘導体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0031】
本発明において、ポリヌクレオチドに対して使用した用語 「相同性」とは、野生型(wild type)アミノ酸配列及び野生型核酸配列との類似度を示すためのものであり、前記グルカゴン誘導体をコードするポリヌクレオチド配列と75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上同一である遺伝子配列を含む。このような相同性の比較は、肉眼や購入が容易な比較プログラムを使用して実行する。市販されているコンピュータプログラムは2つ以上の配列間の相同性をパーセント(%)で計算することができる。相同性(%)は隣接する配列について計算することができる。
前記グルカゴン誘導体をコードするポリヌクレオチドをベクターに挿入し、これを発現させることにより、前記グルカゴン誘導体を多量に確保することができる。
【0032】
このような組換え発現の場合、本発明のポリヌクレオチドは適切なベクター内に、一般的に挿入され、本発明のポリヌクレオチドを保有するクローニングまたは組換えベクターを形成することであり、これらのベクターはまた、本発明の範囲に含まれる。
【0033】
本発明において、用語「組換えベクター」は、適切な宿主内で目的ペプチド、例えばグルカゴン誘導体を発現させることができるように適切な調節配列に作動可能に連結された前記目的ペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を含有するDNA製造物を意味する。前記調節配列は、転写を開始することができるプロモーター、このような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び翻訳の終結を調節する配列を含む。組換えベクターは、適当な宿主細胞内に形質転換された後、宿主ゲノムとは無関係に複製されるか、機能することができ、ゲノムそれ自体に統合されうる。
本発明で使用される組換えベクターは、宿主細胞内で複製可能なものであれば特に限定されず、当業界に知られている任意のベクターを用いて作製することができる。通常使用されるベクターの例としては、天然の状態であるか、組換えされた状態のプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージが挙げられる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとしてpWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、及びCharon21Aなどを使用することができ、プラスミドベクターとしてpBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系及びpET系などを使用することができる。本発明で使用可能なベクターは特に制限されるものではなく、公知の発現ベクターを使用することができる。
【0034】
前記組換えベクターは本発明のグルカゴン誘導体を生産するために宿主細胞を形質転換させるのに使用される。また、本発明の一部である、このような形質転換細胞は本発明の核酸断片及びベクターの増殖に使用されるか、本発明のグルカゴン誘導体の組換え生産に使用された培養された細胞または細胞株であってもよい。
本発明において、用語「形質転換」とは、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを宿主細胞内に導入して宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードするタンパク質が発現できるようにすることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドが宿主細胞内で発現されることさえできれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するか、染色体外に位置するかに関係なく両方を含む。
【0035】
また、前記ポリヌクレオチドは標的タンパク質をコードするDNA及びRNAを含む。前記ポリヌクレオチドは宿主細胞内に導入されて発現することができるものであれば、いかなる形態で導入されるものであっても構わない。例えば、前記ポリヌクレオチドは自体的に発現されるのに必要なすべての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入されてもよい。前記発現カセットは通常、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結シグナル、リボソーム結合部位及び翻訳終結シグナルを含むことができる。前記発現カセットは自体複製が可能である発現ベクターの形態であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドはそれ自体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞において発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよいが、これに限定されない。
また、前記おいて、用語「作動可能に連結された」とは、本発明の目的ペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介するようにするプロモーター配列と前記遺伝子配列が機能的に連結されているものを意味する。
【0036】
本発明に適した宿主は本発明のポリヌクレオチドを発現するようにする限り、特に制限されない。本発明で使用することができる宿主の特定の例としては、大腸菌(E. coli)のようなエシェリキア(Escherichia)属細菌;バチルスサブチリス(Bacillus subtilis)のようなバチルス(Bacillus)属細菌; シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)のようなシュードモナス(Pseudomonas)属細菌;ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)のような酵母;スポドプテラ・フルギペルダ(Sf9)のような昆虫細胞;及びCHO、COS、BSCなどの動物細胞がある。
【0037】
他の実施様態として、本発明は前記グルカゴン誘導体を含む低血糖または肥満の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
本発明において、用語「予防」は、前記のグルカゴン誘導体または組成物の投与で肥満の発症を抑制または遅延させるすべての行為を意味し、「治療」は、前記グルカゴン誘導体または組成物の投与で、肥満の症状が好転したりするものになるすべての行為を意味する。
本発明において、用語「投与」は、ある適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は特に限定されないが、前記組成物が生体内の標的に到達することができる任意の一般的な経路を介して投与されてもよく、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与などになってもよい。
本発明において、用語「低血糖」は、糖尿病の急性症状の一つとして血中糖量が正常より低い状態をいうもので、一般的に血糖が50mg/dl以下である時をいう。低血糖症が生じる普通の原因は、経口血糖降下剤またはインスリンを使用している人がいつもより食事摂取量が少なかったり、活動量や運動量が超過した場合である。他にも飲酒や一部血糖値を落とす薬物の使用、重度の身体的疾患、副腎皮質ホルモンやグルカゴンなどのホルモン欠乏、インスリン生成膵臓腫瘍、インスリンに対する自己免疫疾患がある場合、胃切除術の患者、遺伝性炭水化物代謝酵素異常の疾患などによっても、低血糖が発生することがある。
低血糖の症状は元気がなく体の震えがあり、蒼白、冷や汗、めまい、興奮、不安、胸がドキドキする、空腹感、頭痛、疲労感などを含む。低血糖が長く続く場合は、痙攣や発作が起こることもあり、ショック状態がもたらされて意識を失うこともある。
【0038】
本発明において、用語「肥満」は、体内の脂肪組織が過剰な状態で、身体の肥満指数(体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値)が25以上であれば、肥満と定義される。肥満は長期間に渡ってエネルギー消費量に比べて栄養素を過剰に摂取した場合のエネルギー不均衡によって誘発されることが通常である。肥満は身体全体に影響を与える代謝疾患で、糖尿病及び高脂血症にかかる可能性が高くなり、性機能障害、関節炎、心血管系疾患の発症リスクが大きくなり、場合によってはガンの発生とも関連がある。
【0039】
本発明の薬学的組成物は薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含んでもよい。本発明において、用語「薬学的に許容可能な」とは、治療効果を示すことができる程度の十分な量と副作用を起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する感受性、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合または同時使用される薬物など医学分野でよく知られている要素に応じて、当業者によって容易に決定しうる。
本発明のグルカゴン誘導体を含む薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでもよい。前記担体は特にこれに限定されないが、経口投与の際には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用してもよく、注射剤の場合は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して使用してもよく、局所投与用の場合は、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用してもよい。
【0040】
本発明の組成物の剤形は、前述したような薬学的に許容可能な担体と混合して多様に製造されてもよい。例えば、経口投与の際には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、ウェファーなどの形態で製造してもよく、注射剤の場合は、単位投薬アンプルまたは多数回投薬形態で製造してもよい。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤などで剤形化してもよい。
一方、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが使用されてもよい。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0041】
また、本発明の薬学的組成物は錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、凍結乾燥製剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれか一つの剤形を有してもよい。
また、前記組成物は薬学的分野で通常の方法によって、患者の身体内投与に適した単位投与型の製剤、好ましくはペプチド医薬品の投与に有用な製剤形態で製剤化して、当業界で通常使用される投与方法を用いて、経口、または皮膚、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄膜腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹部内、鼻腔内、消化管内、局所、舌下、膣内または直腸経路を含む非経口投与経路によって投与されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0042】
また、前記グルカゴン誘導体は生理食塩水または有機溶媒のような薬剤で許可されたいくつかの伝達体(carrier)と混合して使用してもよく、安定性や吸水性を増加させるためにグルコース、スクロースまたはデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸( ascorbic acid)またはグルタチオンのような抗酸化剤(antioxidants)、キレート剤(chelating agents)、低分子タンパク質または他の安定化剤(stabilizers)などが薬剤として使用されうる。
本発明の薬学的組成物の投与量と回数は治療しようとする疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重及び疾患の重症度などのさまざまの関連因子とともに、活性成分である薬物の種類に応じて決定される。
【0043】
本発明の組成物の総有効量はシングル投与量(single dose)で患者に投与されてもよく、マルチ投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)によって投与されてもよい。本発明の薬学的組成物は疾患の程度によって有効成分の含量を変化させてもよい。好ましく本発明のグルカゴン誘導体の好ましい全体容量は一日で患者の体重1kgあたり約0.0001〜500mgであってもよい。しかし、前記グルカゴン誘導体の容量は薬学的組成物の投与経路及び治療回数だけではなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌及び排泄率なとの多様な要因を考慮して患者に対する有効投与量が決定されることであるため、このような点を考慮する時、当分野の通常知識を有する者であれば、本発明の組成物の特定の用途に応じた適切な有効投与量を決定することができる。前記本発明による薬学的組成物は本発明の効果を示す限り、その剤形、投与経路及び投与方法に特に制限されない。
【0044】
本発明の薬学的組成物は生体内持続性及び力価が優れるため、本発明の薬学的製剤の投与回数及び頻度を著しく減少させることができる。
特に、本発明の薬学的組成物は天然グルカゴンに比べて変化された、異なるpIを有するグルカゴン誘導体を有効成分に含むため、溶液のpHによって改善された溶解度及び高い安定性を示すことにより、低血糖または肥満治療のための安定なグルカゴン剤形の製造に有用に使用されうる。
また、前記薬学的組成物は単独または他の肥満予防または治療効果を示す薬学的製剤と併用して投与されてもよい。また、前記薬学的組成物は肥満予防または治療効果を示す薬学的製剤をさらに含んでもよい。
【0045】
前記肥満予防または治療効果を示す薬学的製剤は特にこれに制限されないが、GLP-1受容体アゴニスト(agonist)、GIP(glucose-dependent insulinotropic peptide)受容体拮抗剤(antagonist)、レプチン(Leptin)受容体アゴニスト、DPP-IV阻害剤、Y5受容体拮抗剤、MCH(Melanin-concentrating hormone)受容体拮抗剤、Y2/3/4受容体アゴニスト、MC3/4受容体アゴニスト、胃/膵臓リパーゼ(gastric/ pancreatic lipase)阻害剤、5HT2cアゴニスト、β3A受容体アゴニスト、アミリン(Amylin)受容体アゴニスト、グレリン(Ghrelin)拮抗剤及びグレリン受容体拮抗剤、FGF1、FGF21受容体アゴニスト、CCK(Cholecystokinin)受容体アゴニスト、PP(Pancreatic polypeptide)受容体アゴニスト、ドーパミン再吸収阻害剤などであってもよい。
【0046】
また他の態様として、本発明は前記グルカゴン誘導体またはこれを含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、低血糖または肥満の予防または治療方法を提供する。
本発明で前記個体は低血糖または肥満が疑われる個体であり、前記低血糖または肥満の疑いのある個体は該当疾患が発病されたか、発病可能性のあるヒトを含む、マウス、家畜などを含む哺乳動物を意味するが、本発明のグルカゴン誘導体で治療可能な個体は制限なく含まれる。本発明のグルカゴン誘導体を含む薬学的組成物を低血糖または肥満の疑いのある個体に投与することにより、個体を効率的に治療することができる。低血糖または肥満については、前記で説明した通りである。
本発明の方法は、グルカゴン誘導体を含む薬学的組成物を薬学的有効量で投与することを含んでもよい。適切な総一日使用量は、正しい医学的判断の範囲内で処置医によって決定され、一回または数回に分けて投与してもよい。しかし、本発明の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては他の製剤が使用されるかどうかを含め、具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と一緒に使用されたり同時使用される薬剤をはじめとする様々な因子と医薬分野によく知られている同様の因子に応じて異なって適用することが望ましい。
【0047】
また他の様態として、本発明は低血糖または肥満の予防または治療用医薬品の製造において、前記グルカゴン誘導体の用途を提供する。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1.グルカゴンに対してcAMP反応を示す細胞株の生産
ヒトグルカゴン受容体遺伝子のcDNA(OriGene Technologies, Inc. 米国)でORFに該当する部分を鋳型にして、EcoRI切断部位とXhoI切断部位をそれぞれ下記配列番号:35及び36の正方向及び逆方向プライマーを利用したPCRを行った。
この時、PCR反応は95℃で60秒の変性、55℃で60秒のア二リング及び68℃で30秒の伸長過程を30回繰り返し行った。これにより増幅されたPCR産物を1.0%アガロスゲルで電気泳動した後、450bpサイズのバンドを溶離して収得した。
正方向プライマー:5′−CAGCGACACCGACCGTCCCCCCGTACTTAAGGCC−3′(配列番号35)
逆方向プライマー:5′−CTAACCGACTCTCGGGGAAGACTGAGCTCGCC−3′(配列番号36)
【0050】
前記PCR産物を公知となった動物細胞発現ベクターであるx0GC/dhfrでクローニングして組換えベクターxOGC/GCGRを製造した。
前記製造した組換えベクターxOGC/GCGRを10%FBS含有DMEM/F12培地で培養したCHO DG44細胞にリポフェクタミンを用いて形質転換し、1mg/mLG418及び10nMメトトレキセートを含む選別培地で選別培養した。これから制限希釈法でモノクローナル細胞株を選別して、このうちグルカゴンに対して優れた濃度依存的cAMP反応を示す細胞株を最終的に選別した。
【0051】
実施例2.グルカゴン誘導体の合成
pIに応じて溶液内でのタンパク質の溶解度、活性及び安定性が異なることは当業界に広く知られている常識である(非特許文献2).そこで、改善された物性を有するグルカゴン誘導体を開発するために、配列番号:1の天然グルカゴンのアミノ酸配列を陰電荷及び陽電荷を示すアミノ酸残基に置換して、下記表1のようなグルカゴン誘導体を合成した。
【表1】
【0052】
前記表1に記載された配列番号:8〜31及び33〜34の配列でXで表記されたアミノ酸は非天然型アミノ酸である Aib(aminoisobutyric acid)を意味し、配列番号32の−は該当の位置に残基が存在してないことを、2つの残基に下線及びボールドで表示された場合は、その2つの残基の間で共有結合リングが形成されたことを示す。
【0053】
実施例3.グルカゴン誘導体pI測定
前記実施例2で合成されたグルカゴン誘導体の改善された物性を確認するため、ExPASyサーバーでpI/Mwツール(http://expasy.org/tools/pi_tool.html; Gasteiger et al., 2003)を使用してアミノ酸配列からpIを推算した。
【表2】
【0054】
前記表2に示したように、配列番号:1の天然グルカゴンが6.8のpIを有する反面、本発明によるグルカゴン誘導体は約4〜9範囲のpIを有し、改善された物性を示した。本発明によるグルカゴン誘導体は天然グルカゴンとは異なるpIを有するため、溶液pH条件により改善された溶解度及び高い安定性を示すことができる。
したがって、本発明によるグルカゴン誘導体は低血糖治療剤として使用すると、患者順応度を高めることができ、他の抗肥満治療剤、例えばGLP−1受容体拮抗剤、GIP(glucose-dependent insulinotropic peptide)受容体拮抗剤などとの併用投与に適合して低血糖及び肥満治療剤として有用に使用することができる。
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施されることを理解できるだろう。これに関連して、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないものと理解しなければならない。本発明の範囲は、前記の詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. 下記化学式(1)のアミノ酸配列を含み、天然形グルカゴンとpIが同一ではないグルカゴン誘導体:
[化1]
X1-X2-QGTF-X7-SDYS-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-F-X23-X24-W-L-X27-X28-T(1)
前記式において、
X1が、ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン(desamino-histidine)、ジメチル-ヒスチジン(N-dimethyl-histidine)、ベータ-ヒドロキシイミダゾプロピオン酸(beta-hydroxyimidazopropionic acid)、4-イミダゾ酢酸(4-imidazoacetic acid)、ベータ-カルボキシイミダゾプロピオン酸(beta-carboxyimidazopropionic acid)、トリプトファン、チロシンまたは不存在であり;
X2が、α-メチル-グルタミン酸(α-methyl-glutamic acid)、Aib(aminoisobutyric acid)、D-アラニン、グリシン、Sar(N-methylglycine)、セリンまたはD-セリンであり;
X7が、スレオニンまたはバリンであり;
X12が、リジンまたはシステインであり;
X13が、チロシンまたはシステインであり;
X14が、ロイシンまたはシステインであり;
X15が、アスパラギン酸、グルタミン酸またはシステインであり;
X16が、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、α-メチル-グルタミン酸またはシステインであり;
X17が、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リジン、アルギニン、セリン、バリンまたはシステインであり;
X18が、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、アルギニンまたはシステインであり;
X19が、アラニンまたはシステインであり;
X20が、リジン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、リジンまたはシステインであり;
X21が、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリンまたはシステインであり;
X23が、バリンまたはアルギニンであり;
X24が、バリン、ロイシン、グルタミンまたはアルギニンであり;
X27が、イソロイシンまたはメチオニンであり;
X28が、アルギニンまたはアスパラギンである。
(但し、前記化学式(1)のアミノ酸配列が配列番号:1と同一である場合は除く)。
2. 化学式(1)のアミノ酸配列において、
X1が、ヒスチジンまたはトリプトファン、チロシンまたは不存在であり;
X2が、セリンまたはAib(aminoisobutyric acid)であり;
X7が、スレオニンまたはバリンであり;
X12が、リジンまたはシステインであり;
X13が、チロシンまたはシステインであり;
X14が、ロイシンまたはシステインであり;
X15が、アスパラギン酸またはシステインであり;
X16が、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリンまたはシステインであり;
X17が、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、バリンまたはシステインであり;
X18が、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンまたはシステインであり;
X19が、アラニンまたはシステインであり;
X20が、リジン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、リジンまたはシステインであり;
X21が、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリンまたはシステインであり;
X23が、バリンまたはアルギニンであり;
X24が、バリン、ロイシンまたはグルタミンであり;
X27が、イソロイシンまたはメチオニンであり;
X28が、アルギニンまたはアスパラギンである(但し、前記化学式(1)のアミノ酸配列が配列番号:1と同一である場合は除く)、上記1に記載のグルカゴン誘導体。
3. 前記グルカゴン誘導体が、グルカゴン受容体刺激活性がある、上記1に記載のグルカゴン誘導体。
4. 前記グルカゴン誘導体が、配列番号2〜34のアミノ酸配列で構成された群から選択されたアミノ酸配列を含むものである、上記1に記載のグルカゴン誘導体。
5. 上記1〜4のいずれか一項に記載のグルカゴン誘導体をコードするポリヌクレオチド。
6. 上記1〜4のいずれか一項に記載のグルカゴン誘導体を有効成分として含む低血糖の予防または治療用薬学的組成物。
7. 上記1〜4のいずれか一項に記載のグルカゴン誘導体を有効成分として含む肥満の予防または治療用薬学的組成物。
8. 薬学的に許容可能な担体をさらに含む、上記6に記載の薬学的組成物。
9. 薬学的に許容可能な担体をさらに含む、上記7に記載の薬学的組成物。
10. 前記薬学的組成物が、単独または他の肥満予防または治療効果を示す薬学的製剤と併用して投与されるものである、上記7に記載の薬学的組成物。
11. 前記薬学的組成物が、肥満予防または治療効果を示す薬学的製剤をさらに含む、上記7に記載の薬学的組成物。
12. 前記肥満予防または治療効果を示す薬学的製剤をGLP-1受容体アゴニスト(agonist)、GIP(glucose-dependent insulinotropic peptide)受容体拮抗剤(antagonist)、レプチン(Leptin)受容体アゴニスト、DPP-IV阻害剤、Y5受容体拮抗剤、MCH(Melanin-concentrating hormone)受容体拮抗剤、Y2/3/4受容体アゴニスト、MC3/4受容体アゴニスト、胃/膵臓リパーゼ(gastric/ pancreatic lipase)阻害剤、5HT2cアゴニスト、β3A受容体アゴニスト、アミリン(Amylin)受容体アゴニスト、グレリン(Ghrelin)拮抗剤及びグレリン受容体拮抗剤、FGF1、FGF21受容体アゴニスト、CCK(Cholecystokinin)受容体アゴニスト、PP(Pancreatic polypeptide)受容体アゴニスト、ドーパミン再吸収阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、上記10に記載の薬学的組成物。
13. 前記肥満予防または治療効果を示す薬学的製剤をGLP-1受容体アゴニスト(agonist)、GIP(glucose-dependent insulinotropic peptide)受容体拮抗剤(antagonist)、レプチン(Leptin)受容体アゴニスト、DPP-IV阻害剤、Y5受容体拮抗剤、MCH(Melanin-concentrating hormone)受容体拮抗剤、Y2/3/4受容体アゴニスト、MC3/4受容体アゴニスト、胃/膵臓リパーゼ(gastric/ pancreatic lipase)阻害剤、5HT2cアゴニスト、β3A受容体アゴニスト、アミリン(Amylin)受容体アゴニスト、グレリン(Ghrelin)拮抗剤及びグレリン受容体拮抗剤、FGF1、FGF21受容体アゴニスト、CCK(Cholecystokinin)受容体アゴニスト、PP(Pancreatic polypeptide)受容体アゴニスト、ドーパミン再吸収阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、上記11に記載の薬学的組成物。
14. 上記1〜4のいずれか一項に記載のグルカゴン誘導体またはこれを含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、低血糖または肥満の予防または治療方法。
15. 低血糖または肥満の予防または治療用医薬品の製造における、上記1〜4のいずれか一項に記載のグルカゴン誘導体の用途。