特許第6797317号(P6797317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6797317
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】有機物質製造システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20201130BHJP
   B01D 53/38 20060101ALI20201130BHJP
   C12M 1/113 20060101ALI20201130BHJP
   C12M 1/21 20060101ALI20201130BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   C12M1/00 C
   B01D53/38
   C12M1/113
   C12M1/00 Z
   C12M1/21
   C12M1/34 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-555998(P2019-555998)
(86)(22)【出願日】2019年10月9日
(86)【国際出願番号】JP2019039823
【審査請求日】2019年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2019-54060(P2019-54060)
(32)【優先日】2019年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】東海林 了
(72)【発明者】
【氏名】濱地 心
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05235843(US,A)
【文献】 国際公開第2016/017573(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
B01D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ガスから有機物質を生産する有機物質製造システムであって、触媒反応装置と、前記触媒反応装置から排出される排気ガス中の前記合成ガスの一酸化炭素、二酸化炭素、水素及び窒素の成分組成を測定するための測定装置と、前記触媒反応装置の排気ガス出口から前記測定装置の排気ガス入口までの間に位置する分離装置と、を備え、前記分離装置は、前記排気ガスからの泡沫及び液体の分離除去と、前記排気ガスからの蒸気の分離除去とを、同時に又はこの順に行う、有機物質製造システム。
【請求項2】
前記触媒反応装置は、合成ガス資化性細菌を生物触媒として含む反応部である微生物発酵槽を有し、
前記泡沫は、前記有機物質の副生物の少なくとも一部及び前記反応部に含まれる物質の一部を含む、
請求項1に記載の有機物質製造システム。
【請求項3】
前記合成ガスの構成成分の合成ガスに対する含有量の変動幅が標準的な含有割合に対して±1〜30%の範囲内である、請求項1又は2に記載の有機物質製造システム。
【請求項4】
前記分離装置は、排気ガスに含まれる蒸気の50質量%以上、液体の80質量%以上、及び泡沫の80質量%以上を分離除去する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機物質製造システム。
【請求項5】
前記測定装置に供給される前記排気ガスの流量が0.01〜1m/hrである、請求項1〜のいずれか1項に記載の有機物質製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機物質製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一酸化炭素及び水素を含む合成ガスを原料として、微生物発酵によってエタノール等の有機物質を製造する有機物質製造システムが注目されている。
【0003】
特許文献1には、「廃棄物を部分酸化させることにより合成ガスを生成させる合成ガス生成炉と、前記合成ガスから有機物質を生成させる微生物を含む発酵器と、前記発酵器に対する前記合成ガスの供給量が不足する際に、固体又は液体の養分を前記発酵器に供給する養分供給部と、を備える、廃棄物からの有機物質の製造装置。」及び「合成ガス生成炉において廃棄物を部分酸化させることにより合成ガスを生成させる工程と、発酵器において、微生物に、前記合成ガスから有機物質を生成させる工程と、前記発酵器に対する前記合成ガスの供給量が不足する際に、固体又は液体の養分を前記発酵器に供給する養分供給工程と、を備える、廃棄物からの有機物質の製造方法。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/017573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
合成ガスからエタノール等の有機物質を製造する有機物質製造システムは、合成ガスの組成変動に対応するため、触媒反応装置に供給する合成ガス及び触媒反応装置から排出する排気ガスの成分組成を測定装置によって連続的に測定している。しかし、触媒反応装置から排出する排気ガスには、蒸気、液体又は泡沫が混入している場合がある。排気ガス中のこのような混入物は、測定装置の故障の原因となり、排気ガスの成分組成を連続的に測定できなくなることがある。特に、これらの混入物に有機物が含まれるときは、排気ガスの流路を閉塞してしまい、排気ガスの成分組成の連続測定ができなくなることがある。
【0006】
そこで、本発明は、触媒反応装置から排出される排気ガスに蒸気、液体及び泡沫が混入している場合であっても、測定装置によって排気ガスの成分組成を連続的に測定できる有機物質製造システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の構成によって解決される。
[1]合成ガスから有機物質を生産する有機物質製造システムであって、触媒反応装置と、前記触媒反応装置から排出される排気ガスの成分組成を測定するための測定装置と、前記触媒反応装置の排気ガス出口から前記測定装置の排気ガス入口までの間に位置する分離装置と、を備え、前記分離装置は、前記排気ガスからの泡沫及び液体の分離除去と、前記排気ガスからの蒸気の分離除去とを、同時に又はこの順に行う、有機物質製造システム。
[2]前記合成ガスの構成成分の合成ガスに対する含有量の変動幅が標準的な含有割合に対して±1〜30%の範囲内である、[1]に記載の有機物質製造システム。
[3]前記分離装置は、排気ガスに含まれる蒸気の50質量%以上、液体の80質量%以上、及び泡沫の80質量%以上を分離除去する、[1]又は[2]に記載の有機物質製造システム。
[4]前記測定装置に供給される前記排気ガスの流量が0.01〜1m/hrである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の有機物質製造システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、触媒反応装置から排出される排気ガスに水蒸気、水及び泡沫が混入している場合であっても、測定装置によって排気ガスの成分組成を連続的に測定できる有機物質製造システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の有機物質製造システムの概要図である。
図2図2は、実施例1における排水量の測定結果を表すグラフである。
図3図3は、比較例1における排水量の測定結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図1を参照しながら説明する。ただし、本発明は、後述する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限り、種々の変形が可能である。
【0011】
[有機物質製造システム]
図1は、本発明の有機物質製造システムの一実施形態を表す概要図である。図1に示される有機物質製造システム10は、合成ガスから有機物質を製造するための装置である。
【0012】
製造された有機物質の用途は、特に限定されない。製造された有機物質は、例えば、プラスチック又は樹脂の原料として用いることもできるし、燃料として用いることもできる。
【0013】
有機物質製造システム10は、触媒反応装置1と、分離装置8と、測定装置9とを備えている。触媒反応装置1は、合成ガス入口と、有機物質出口と、排気ガス出口を有する(いずれも図示せず)。前記合成ガス入口は、合成ガス供給ライン2によって、合成ガス供給源(図示せず)と接続されている。前記有機物質出口は、有機物質抜取ライン3が接続されている。前記排気ガス出口には、排気ガス排出ライン4によって、流路切替器5が接続されている。流路切替器5には、排気ガス排出ライン6及び排気ガス測定ライン7が接続されている。排気ガス測定ライン7には、測定装置9が接続されている。流路切替器5と測定装置9との間の排気ガス測定ライン7の途中には、分離装置8が配置されている。流路切替器5を省略して、排気ガス排出ライン4と排気ガス測定ライン7とを直接接続してもよい。合成ガス供給源と合成ガス入口との間の合成ガス供給ライン2の途中には、測定装置9と同様の測定装置(図示せず)を配置してもよい。
【0014】
触媒反応装置1は、合成ガスAから有機物質Bを製造する装置である。合成ガスAは、合成ガス供給源から、合成ガス供給ライン2を通じて、触媒反応装置1に供給される。
【0015】
触媒反応装置1は、触媒を含む反応部を含む。触媒は、合成ガスAから有機物質Bを生成する。触媒は、生物触媒、金属触媒等であってよいが、生物触媒が好ましい。合成ガスAから有機物質Bとしてエタノールを製造する場合の生物触媒は、Clostridium autoethanogenum(クロストリジウム・オートエタノゲナム)等の合成ガス資化性細菌が好ましい。合成ガス資化性細菌を触媒として用いる場合、触媒反応装置1は、微生物発酵槽と、微生物発酵槽内の液状培地を保温するための保温手段と、微生物発酵槽内の液状培地を撹拌するための撹拌手段とを有することが好ましい。
【0016】
分離装置8は、排気ガスCから泡沫及び液体を分離除去するための泡沫液体分離装置8aと、排気ガスCから蒸気を分離除去するための蒸気分離装置8bの構成にしてもよい。泡沫液体分離装置8aは、排気ガスCから泡沫及び液体を分離除去できる装置であれば特に限定されない。泡沫液体分離装置8aは、例えば、泡沫を切断して気体と液体に分離し、液体化した泡沫及び泡沫とは別に含まれていた液体を除去できる装置である。このような装置としては、気泡除去フィルター、消泡装置等が挙げられる。気泡除去フィルターとしては、具体的には、H600シリーズインラインフィルター(ハムレット社製)が挙げられるが、これらに限定されない。8aと8bは、各々を1つもしくは2つ以上有していてもよい。複数用意することで、組成変動が極端に大きい場合にも対応が可能となる。
【0017】
蒸気分離装置8bは、排気ガスCから蒸気を分離除去できる装置であれば特に限定されない。蒸気分離装置8bは、例えば、蒸気を液化して気体と分離し、液化した蒸気を除去できる装置である。このような装置としては、表面張力式気液分離装置、遠心力式気液分離装置が挙げられる。表面張力式気液分離装置としては、具体的には、NRLシリーズ表面張力応用マイクロ蛇腹溝気液分離器(日冷工業社製)が挙げられる。
【0018】
測定装置9は、排気ガスCの成分組成を測定する装置である。測定装置9は、排気ガスCの成分組成を測定できる装置であれば特に限定されないが、例えば、ガスクロマトグラフ(GC)、質量分析計(MS)、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)等である。
【0019】
[有機物質製造方法]
本発明の有機物質製造方法は、合成ガスを触媒反応装置に供給する合成ガス供給工程と、触媒反応装置において合成ガスから有機物質を合成する有機物質合成工程と、前記反応装置から排気ガスを排出する排気ガス排出工程と、前記排気ガスに混入している蒸気、液体及び泡沫のうち少なくとも1種を前記排気ガスから分離除去する混入物除去工程と、前記排気ガスの成分組成を測定する排気ガス測定工程とを含む。以下では、本発明の有機物質製造システム10を用いる場合の本発明の有機物質製造方法の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
合成ガス供給工程では、合成ガスAを、合成ガス源(図示せず)から合成ガス供給ライン2を通じて、触媒反応装置1の合成ガス入口に供給する。合成ガスAは、例えば、一酸化炭素、水素、二酸化炭素及び窒素を含む混合ガスである。合成ガスは、廃棄物焼却炉から発生する原料ガス、製鉄所から発生する原料ガス等の原料ガスを処理して、製造したものが好ましい。合成ガスAの触媒反応装置1への供給量は、合成ガス供給ライン2に設置した測定装置から得られる合成ガスAの成分組成、及び排気ガス測定ライン7に設置した測定装置から得られる排気ガスCの成分組成に基づいて、触媒反応装置1による有機物質Bの製造が効率的に行えるように設定することが好ましい。
【0021】
合成ガスAの成分組成は、原料ガスの組成の変動等の影響により、変動する場合がある。合成ガスAの成分組成が変動する場合、原料ガスAの各構成成分の原料ガスAに対する含有割合の変動幅は、通常、標準的な含有割合に対して±1〜30%の範囲内である。例えば、合成ガスAが一酸化炭素を含む場合であって、合成ガスA中の一酸化炭素の標準的な含有割合が30体積%であるとき、変動幅が±30%であるとは、合成ガスA中の一酸化炭素の含有割合が、21体積%(−30%変動)〜39体積%(+30変動)体積%の範囲で変動することをいう。
【0022】
有機物質合成工程では、触媒反応装置1の、触媒を含む反応部において、合成ガスAからの有機物質Bの合成が行われる。有機物質Bとしては、例えば、アルコール、有機酸、脂肪酸、油脂、ケトン、バイオマス又は糖である。アルコールの具体例はエタノールであり、有機酸の具体例は酢酸である。有機物質Bとしては、エタノールが特に好ましい。合成された有機物質Bは、触媒反応装置1の有機物質出口から、有機物質抜取ライン3を通じて、触媒反応装置1の外部に抜き取る。
【0023】
排気ガス排出工程では、触媒反応装置1の排気ガス出口に接続された排気ガス排出ライン4を通じて、排気ガスCを排出する。排気ガスCは、合成ガスAのうち有機物質Bの合成に使われなかった余剰分の他に、有機物質Bの副生物の少なくとも一部と、反応部に含まれる物質の一部とを含むことがある。このような有機物質Bの副生物の少なくとも一部及び反応部に含まれる物質の一部は、通常、蒸気、液体及び泡から選択される1種以上の状態で、混入物として、排気ガスCに含まれる。このような混入物が、測定装置9内部に侵入すると、測定装置9の動作不良、故障の原因となる。また、このような混入物は、排気ガス測定ライン7の閉塞を引き起こし、排気ガスCの成分組成の測定が不可能になる。
【0024】
混入物除去工程では、排気ガスCに含まれる蒸気、液体及び泡沫のうち少なくとも1種の状態の混入物を排気ガスCから分離除去する。排気ガス排出工程により排出された排気ガスCは、排気ガス排出ライン4、流路切替器5、及び排気ガス測定ライン7を経由して、排気ガス測定ライン7の途中に配置された分離装置8に導かれる。分離装置8において、泡沫液体分離装置8aによる排気ガスCからの泡沫及び液体の分離除去を行い、次いで、蒸気分離装置8bによる排気ガスCからの蒸気の分離除去を行う。排気ガスCから泡沫及び液体を分離除去する方法としては、例えば、泡沫を切断して気体と液体に分離し、液体化した泡沫及び泡沫とは別に含まれていた液体を除去する方法が挙げられる。排気ガスCから蒸気を分離除去する方法としては、例えば、蒸気を液化して気体と分離し、液化した蒸気を除去する方法が挙げられる。混入物除去工程では、分離装置8によって、排気ガスCに含まれる蒸気の50質量%以上、液体の80質量%以上、及び泡沫の80質量%以上を分離除去することが好ましい。
【0025】
排気ガス測定工程では、排気ガスCの成分組成を測定する。排気ガスCの成分組成を分析する方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)法、マススペクトル(MS)法、ガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)法、フーリエ変換赤外分光(FTIR)法等が挙げられる。測定装置9に流入する排気ガスCの流量は、特に限定されないが、0.01〜1m/hrの範囲が好ましい。
【0026】
本実施形態によれば、混入した蒸気、液体及び泡沫を除去した後の排気ガスCを測定装置9に供給することによって、測定装置9が動作不良に陥ることなく、排気ガスCの成分組成を連続的に測定できる。
【0027】
上述の実施形態では、分離装置8において、泡沫液体分離装置8aによる処理後に蒸気分離装置8bによる処理を行っているが、これに限定されない。例えば、ミストセパレータやノックアウトポッドを冷却し、泡と同時に蒸気も除去できる構成にすることによって、泡沫液体分離装置8a及び蒸気分離装置8bによる処理を同時に行える構成としたりしてもよい。
【実施例】
【0028】
以下では実施例によって本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されず、本発明の要旨を変更しない限り、種々の変形が可能である。
【0029】
[実施例1]
<原料ガスの製造>
ごみ焼却設備で一般廃棄物を燃焼して発生したガスを原料ガスとして用いた。原料ガスの成分組成は、一酸化炭素30体積%、二酸化炭素30体積%、水素30体積%及び窒素10体積%であった。
【0030】
<合成ガスの製造>
圧力変動吸着(PSA)装置を用いて、原料ガスを80℃まで加温し、原料ガスに含まれる二酸化炭素を、もとの含有量(30体積%)の60〜80%になるように除去した。除去後、150℃のスチームを用いた二重管式熱交換器によってガスを昇温し、次に、25℃の冷却水を用いた二重管式熱交換器によってガスを再冷却して、不純物を析出させた。析出した不純物をフィルターで除去して、合成ガスを製造した。
【0031】
<微生物発酵及び排気ガスの排出>
触媒反応装置1に液状培地を充填し、合成ガス資化性細菌Clostridium autoethanogenum(クロストリジウム・オートエタノゲナム)の種菌を添加した。液状培地の温度を36〜38℃に維持しながら、触媒反応装置1に合成ガス供給ライン2を通じて合成ガスを連続的に供給して、嫌気条件で発酵を行わせた。余剰の合成ガス及び発酵によって発生したガスを、排気ガス排出ライン4を通じて、排気ガスとして触媒反応装置1から排出した。
【0032】
<排気ガスからの泡沫及び液体の分離>
触媒反応装置1から排出した排気ガスを、流路切替器5から分岐する排気ガス測定ライン7に導き、排気ガス測定ライン7上に設置した泡沫液体分離装置8a(インラインフィルター、ハムレット社製、140μmのフィルタエレメント内蔵)を通過させて、排気ガスから泡沫及び液体を分離した。
【0033】
<排気ガスからの水蒸気の分離>
泡沫液体分離装置8aを通過させた排気ガスを、さらに蒸気分離装置8b(気液分離装置、日冷工業社製)を通過させて、排気ガスから蒸気を除去した。
【0034】
<排水量の測定>
蒸気分離装置8bから20m離れた場所に設置した測定装置9の直前の位置からの排水量を1日2〜5回測定した。排気ガス測定ライン7の測定装置9の直前の位置の温度は−10〜45℃(外気温)であった。図2に測定結果を示す。
【0035】
<排気ガスの測定結果>
排気ガスの測定結果を評価した。排気ガスから泡沫、液体及び蒸気が分離できている場合は、測定装置9による排気ガスの測定結果が良好(○)である。排気ガスから泡沫、液体及び蒸気が分離できていない場合は、測定装置9による排気ガスの測定結果が不良(×)である。排気ガス測定ライン7が閉塞した場合は、排気ガスの測定が不能(−)である。
【0036】
[比較例1]
泡沫液体分離装置8a及び蒸気分離装置8bを使用しなかった点を除いて、実施例1と同様にして排水量の測定及び排気ガスの測定結果を評価した。図3に排水量の測定結果を示す。
【0037】
[比較例2]
蒸気分離装置8bを使用しなかった点を除いて、実施例1と同様にして排気ガスの測定結果を評価した。
【0038】
[比較例3]
泡沫液体分離装置8aを使用しなかった点を除いて、実施例1と同様にして排気ガスの測定結果を評価した。
【0039】
[比較例4]
泡沫液体分離装置8aと蒸気分離装置8bの順序を逆に変更した点を除いて、実施例1と同様にして排気ガスの測定結果を評価した。
【0040】
【表1】
【0041】
[結果の説明]
実施例1では、有機物を含む泡沫及び液体を排気ガスと分離でき、排気ガスの連続測定ができた。これに対して、比較例1では、泡沫及び液体が測定装置に侵入してしまい、排気ガスの連続測定ができなかった。比較例2〜4では、有機物を含む泡及び液体の分離が不十分であり、測定結果が得られなかった。このことから、前段として泡沫液体分離装置による泡沫及び液体の分離及び除去を行い、後段として蒸気分離装置による蒸気の分離及び除去を行うことで、測定装置に泡沫及び液体が侵入することがなく、排気ガスの連続的な測定を行えることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の有機物質製造システムは、触媒反応装置から排出する排気ガスの成分組成を連続的に測定できるので、合成ガスの成分組成の変動に対応した有機物質の生産を可能とする。そのため、エタノール等の有機物質を高効率で製造することができ、合成ガスの利用率を高めることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 触媒反応装置
2 合成ガス供給ライン
3 有機物質抜取ライン
4、6 排気ガス排出ライン
5 流路切替器
7 排気ガス測定ライン
8 分離装置
8a 泡沫液体分離装置
8b 蒸気分離装置
9 測定装置
10 有機物質製造システム
【要約】
触媒反応装置から排出される排気ガスに蒸気、液体及び泡沫が混入している場合であっても、測定装置によって排気ガスの成分組成を連続的に測定できる有機物質製造システムを提供する。成分組成が変動する合成ガスから有機物質を生産する有機物質製造システム(10)であって、触媒反応装置(1)と、排気ガスの成分組成を測定するための測定装置(9)と、前記触媒反応装置の排気ガス出口から前記測定装置の排気ガス入口までの間に位置する分離装置(8)と、を備え、前記分離装置(8)は、前記排気ガスからの泡沫及び液体の分離除去と、前記排気ガスからの蒸気の分離除去とを、同時に又はこの順に行う、有機物質製造システム。
図1
図2
図3