(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シール部材には、同心円状に複数の環状凸部が設けられ、該複数のシール用環状凸部の高さは、前記シール部材の外径端側から内径端側に向かって段階的に低くなっている請求項1に記載のねじ締結具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるシールワッシャは、第1のシール部と第2のシール部のゴム材がワッシャ本体に設けられた貫通孔を通じて連結される複雑な形状であり、成形性が悪いことから、生産性悪化とコスト上昇が予想される。
また、車両への組付け時、シールワッシャは、樹脂成型品にボルトが取付けられた後に挿嵌されるため、組付け作業性が悪い。そこで、シールワッシャを予めボルトに装着してアッセンブリとしておくことが考えられる。しかし、アッセンブリ化するための工程が必要となり、コストがかさむ。また、アッセンブリとしたとしても、輸送時に外れるおそれもある。
また、シールワッシャの第2のシール部は、ボルトの頭部側の軸部外周面に圧接される構成で、軸部の径よりも小径の場合、シールワッシャを装着する際には、軸部の先端側から頭部側まで、第2のシール部を拡径させた状態で挿し通す必要があるが、その間には軸部の径より大径のねじ山を乗り越える必要があり、時間がかかり作業性が悪い。
さらに、シールワッシャがボルトと別体で、第1及び第2のシール部が設けられたことで、シールワッシャとボルト頭部との接触面と、シールワッシャと相手部品との接触面との、2つの接触面が金属面接触するまで締め付ける必要があるので、軸力消費が多くなり、低軸力領域の使用は難しい。
【0005】
本発明の目的は、生産性が良く、かつ組立て作業性の良い構成で、低軸力領域でも使用可能であり、ワッシャの内外周の止水機能を兼ね備えたねじ締結具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、
頭部と、ねじが形成された軸部と、を有するボルトと、
前記軸部に挿入され頭部に接触するワッシャと、
該ワッシャの外周側に固定されるシール部材と、を有し、
前記ワッシャは、被締結部材に接触する座面と、該座面を取り囲むように設けられた凹部と、を有し、該凹部に前記シール部材が固定され、前記座面が前記被締結部材に接触した状態で前記シール部材が前記被締結部材に止水状態で接触するねじ締結具において、
前記軸部に、前記ワッシャ内周の開口部周縁に全周的に止水状態でかしめ固定されるかしめ部が設けられ
、
前記シール部材の外周には、無負荷状態で、前記ワッシャの凹部に接着される前記シール部材の接着部の外径端よりも外側に張出す張出し部を有し、
前記張出し部の前記被締結部材と反対側の背面は、ねじ先端方向に向かって徐々に拡径する方向に傾斜する傾斜面となっていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ワッシャの内周側の止水は、軸部に設けたかしめ部によって行い、弾性材によるシール部はワッシャの外周側のみでよいので、成形性がよい。
また、ワッシャは、かしめ部によってボルトと一体化されているので、ワッシャをボルトの軸部に挿入する作業が不要で、締結時の組付け作業も簡単である。
また、ワッシャ本体の座面が被締結部材に接触するまでに必要な荷重は、外周側のシール部を圧縮するだけとなるので、低軸力領域の使用が可能となる。
【0008】
また
、仮に、水没したとしても、張り出し部に加わる水圧が張り出し部に作用し、シール部材の接触面圧を高めることができる。
特に、弾性材料の経年劣化により、へたりが生じ、シール部材接触面圧が低下していても、張出し部が、水圧により、接触面圧を発生させることで、止水性能を維持することができる。
また、締め付けた状態で外側に膨らむ構成ではなく、無負荷状態で張出す構成としているので、へたりが生じても、張出し形状が維持される。
また、本発明の他の態様は、前記シール部材に、複数の環状凸部が同心円状に設けられ、これら複数の環状凸部の高さが、シール部材の外径端側から内径端側に向かって段階的に低くなっている構成とする。
水の浸入部であるシール部材の外径端側から確実にシール部材を圧縮でき、接触面圧を高くすることができる。また、環状凸部により、被締結部材との接触面積を減らすことで、圧縮荷重を軽減することができ、軸力消費を抑制できる。
また、前記シール部材の内径端部には、欠肉部を設けてもよい。
被締結部材に締結する際に、シール部材の内径端部がワッシャ本体の座面側にはみ出し、はみ出し部が、座面と被締結部材の間で噛み込まれ、軸力低下および止水性能低下が生じるおそれがある。シール部材の内径端部に、欠肉部を設けておけば、シール部材の内径端部のワッシャの座面側へのはみ出しを防止することができ、噛み込みによる軸力低下及び止水性能低下を防止することができる。
【0009】
また、前記シール部材は、前記ワッシャ本体に設けられた固定孔に嵌合する嵌合部を有する構成とする。
このようにすれば、シール部材が嵌合部で保持されるので、保管時、運搬時、作業時等において、外周部が他の部品等と干渉した場合でも、ワッシャからのシール部材の剥離を防止することができる。
また、前記固定孔と前記嵌合部には、前記固定孔から前記嵌合部が抜ける方向に対して互いに係合する抜け止め部を設けることができる。
このように抜け止め部を設ければ、剥離防止効果を発揮することができる。
また、嵌合部の先端は、ワッシャの頭部側端面と同一面を含む、固定孔の内部側に位置することが好適である。 このようにすれば、装着作業の際に、嵌合部が取付部分と干渉するおそれがなく、スムースに装着することができる。
また、本発明の他の態様は、シール部材は、ワッシャの凹部に接着固定されている。
このようすれば、構成を簡素化することができる。
接着固定する場合にも、シール部材の内径端部には欠肉部を設けることができる。
また、シール部材の内周とワッシャの座面の外周との間に隙間を設けてもよい。
このようにすれば、欠肉部を形成することなく、内径端部の噛み込みを防止することができる。
シール部材は撥水性の部材とすることができる。
撥水性を有していれば、シール部材にへたりが生じても、被締結部材側に撥水性を有していれば、止水性能を維持することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上の通り、本発明によれば、生産性が良く、かつ組立て作業性の良い構成で、低軸力領域でも使用可能であり、ワッシャの内外周の止水機能を兼ね備えねじ締結具を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を、図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
まず、本発明の
参考例1に係るねじ締結具の全体構成について、
図1(A)及び
図2を参照して説明する。
図1(A)は、本
参考例に係るねじ締結具のワッシャ部分を断面にして示す一部断面正面図、
図2(A)乃至(C)はねじ締結具の外観を示す図である。以下の説明では、主として
図1(A)を参照し、必要に応じて
図2を参照して説明するものとする。
このねじ締結具1は、頭部2と、ねじ部13が形成された軸部4と、を有するボルト1
0と、軸部4に嵌合するシール部材40付きのワッシャ20と、をカシメ固定して一体的に組付けた構成となっている。
頭部2は、頂部側の長方形状等の四角形状の大径部2aと、軸部4側の円柱状の小径部2bとを有し(
図2(A),(B)参照)、小径部2bが大径部2aの対向する2辺間の間隔よりも小径となっている。小径部2bの軸部4側の端面が頭部座面2cとなっており、軸部4に挿入されたワッシャ20が接している。
軸部4は、頭部2側からねじ先に向けて、ワッシャ20が装着される嵌合軸部11と、ねじの無い首下部12と、ねじが形成されたねじ部13と、ねじ部13の先端からさらにねじ先側に延びるねじの無い小径のガイド部14とから構成されている。嵌合軸部11の径は、ねじ成形前径、首下部12の径は、ねじ部13の谷径以上、ガイド部14は要求寸法に応じた径である。
軸部4には、首下部12と嵌合軸部11の境界部に、ワッシャ20の開口部周縁に全周的に止水状態で接触する環状のかしめ部30が設けられ、このかしめ部30と頭部座面2cとの間でワッシャ20が軸方向に移動不能に固定されている。
【0013】
図1(C)は、このかしめ部30を拡大して示している。
かしめ部30は、首下部12の嵌合軸部11との境界部が中心軸線Nに対して直交方向外側に向けて断面山形に張り出した構成で、張り出した外径側の先端部30aはワッシャ20の金属の座面21に円環状に被さっている。
一方、かしめ部30がワッシャ20の開口部周縁22と接する面は、かしめ部30の最大径となる先端部30aから径方向中心側に向かって徐々に頭部2側に傾斜する傾斜面31となっている。ワッシャ20の開口部周縁22の形状も、かしめ部30の傾斜面31に倣った傾斜面となっている。このかしめ部30の傾斜面31と開口部周縁22の形状については、図示するような円錐面状になるとは限らず、かしめ加工時に接触面間に加わる力と各部材の塑性変形によって種々の形状となるが、基本的にくさび状に食い込み、止水状態で接触している。
本実施形態1のねじ部3は転造によって成形されるもので、かしめ部30についても転造時に成形される。すなわち、首下部12の転造時に、
図1(C)に1点鎖線で示す素材部分15を径方向内方に圧縮することにより、金属材料の一部を変形させてかしめ部30を成形するもので、開口部周縁角部が圧潰されてかしめ部30の傾斜面31がくさび状に食い込み、外径側の先端部30aがワッシャ20の座面21の開口部周縁22に円環状に被着される。かしめ部30は首下部12とワッシャ20の座面21との付け根に位置する首下部32に対応する。首下部32は、テーパ形状又は複合R形状等となっている。
【0014】
次に、
図1(A),(B)を参照して、ワッシャ20について説明する。
ワッシャ20は金属製で、ワッシャ20の座面21を全周的に取り囲むように配置される弾力性を有する環状のシール部材40が設けられている。ワッシャ20には、このシール部材40が装着される環状の凹部24が設けられている。
凹部24は、座面21と平行な底面24aと、底面24aと座面21の間の段差部24bとを有し、底面24aにシール部材40の端面が密接した状態で装着され、段差部24bにシール部材40の内周面が接触した状態で装着されている。円環状のシール部材40は、後述する締め付け時に被締結部材との接触圧によって圧縮変形し、シール部材40にて取り囲まれるワッシャ20の座面21が被締結部材に着座することで、軸力を確実に確保することができる。
また、シール部材40は、ワッシャ20の外端部に設けた凹部24に装着されているので、ワッシャ20の座面21の面積を大きくとることができ、また、被締結部材の穴径が異形の場合や、円形でも一般的な穴径よりも大きい場合でも、軸力受圧面積を確保するために、容易に設計することができる。
【0015】
次に、シール部材40について、主として
図1(B)を参照し、一部
図2(C)を補完的に参照して、詳細に説明する。
シール部材40には、
図1(B)、
図2(C)に示すように、同心円状に、複数、この実施形態では、2つの環状凸部41a〜41bが設けられている。以下の説明では、外径側から内径側に向かって、第1環状凸部41a、第2環状凸部41bと、それぞれ区別し
て説明するものとする。なお、環状凸部の数については、2つを例示して説明するが、これに限定されるものではなく、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
第1環状凸部41a、第2環状凸部41bは、いずれも、その突出端部が、ワッシャ20の座面21を基準にして、座面21よりも所定高さだけ軸部4の先端側に突出している。この突出高さは、最も外側に位置する第1環状凸部41aの高さt1が最も高く、第2環状凸部41bの突出高さt2の順に、段階的に低くなっている。図では、各突出高さは誇張して示している。
この突出高さは、第1環状凸部41aの頂部、第2環状凸部41bの頂部を結ぶ線Lが1直線上に配置され、この線Lの軸直角方向に対する角度θは、概ね0〜3°程度に設定されている。0〜3°は一つの目安であって、3°以上でもよい。角度θは、第1環状凸部41a及び第2環状凸部41bの突出高さt1,t2と、各頂部間の径方向の間隔(ピッチ)とによって定まるもので、各頂部間の間隔が小さくなれば大きくなり、頂部間の間隔が大きければ小さくなる。具体的には、径方向の間隔が0.5〜3mm程度、突出高さが0.2mm程度を想定している。径方向の間隔や突出高さの数値は、一例であって、これらの数値に限定されるものではない。突出高さについては、シール部材40の材質、弾性特性、表面状態、ぬれ性等によって決定されるものであり、径方向の間隔と突出高さから角度θが設定される。
また、第1環状凸部41aと第2環状凸部41bの間には環状の第1谷底部43aが設けられ、この第1谷底部43aは、ワッシャ20の座面21よりも所定量凹んだ位置にある。
【0016】
シール部材40の座面21に隣接する内径端部には、欠肉部40aが設けられている。欠肉部40aは、ワッシャ20の座面21よりも凹んだ環状の溝形状で、座面21よりも低い環状の溝底部40a1と、内周側傾斜面40a2と、外周側傾斜面40a3と、を備えている。内周側傾斜面40a2は、溝底部40a1から軸部の先端側に向けて徐々に内側に変位するように傾斜して座面21の外径端21aまで延び、外周側傾斜面40a3が軸部4の先端に向けて徐々に外側に開くように傾斜して第2環状凸部41bの頂部まで延びている。
欠肉部40aは、上記溝形状に限定されず、たとえば、
図1(D)に示すように、角部を直線状(円錐面状)に切り欠いた面取り部40a5によって構成してもよい。この面取り部40a5の内径端は、ワッシャ20の座面21と同一高さに位置しているが、座面21よりも低くなっていてもよい。これらの欠肉部40aの構成は例示であって、これらの形状に限定されるものではなく、シール部材40の内径端部の肉を所定幅にわたって切り欠いた種々の形状を選択することができる。
一方、シール部材40の外周面40cは、無負荷状態でワッシャ20の外径端よりも小さい、ストレート形状となっている。外周面の断面形状は、ストレート形状に限定されず、抜き勾配等のテーパ形状でもよいし、外側に膨らんだ形状でもよく、最大径がワッシャ20の外径よりも小さくなっていればよい。このようにすれば、輸送時、組付け時の引っ掛け等により剥がれることを防止することができる。この実施形態では、締付けた場合に、
図1(B)及び
図4に示すように、シール部材40の外周面には外側へ張出す肉の膨らみによって張出し部40bが構成される。張出し部40bは、ワッシャ20の凹部24に接着されるシール部材40の接着部の外径端40b2よりも外側に張出した部分であり、図示例では、ワッシャ20の外径端より大径に張出している。張出し部40bの頂部と反対側の背面40b1は、ねじ先端方向に向かって徐々に拡径する方向に傾斜する傾斜面となる。また、図示例のように、無負荷時のシール部材40の外周面40cがストレートの形状であっても、圧縮代(突出高さ)を大きくしておけば、張出し量を大きくすることができる。
図示の形態では、張出し部40bの最大径がワッシャ20の外径よりも大径となっているが、ワッシャ20の外径より小径であってもよい。
【0017】
シール部材40は、射出成型によってワッシャ20と一体成形されるもので、ワッシャ20の凹部24には、軸方向に貫通する固定孔23が周方向に複数設けられており、シール部材40の裏面には、この固定孔23に嵌合するシール材流入部(嵌合部)42が成形されている。このシール材流入部42は軸方向に直線的に延びる円柱形状で、固定孔23に対して嵌合している。
このシール材流入部42の抜け止め構造として、
図2(B),(D)に示すように、ワ
ッシャ20の頭部側端面25に固定孔23を連結するような環状溝323aを設け、環状溝323aに流入固化したランナ部342aによって、抜け止め部を構成している。上記したランナ部342aの溝幅最小径は、頭部2の最大径部、図示例では大径部2aの角部の外接円C1よりも外側に位置している。このようにすれば、頭部2を回避して金型の型面によってランナ部342aを密閉することができ、成形が容易となる。
このようにすれば、シール部材40がランナ部342aで保持され、保管時、運搬時、作業時等において、外周部が他の部品等と干渉した場合でも、ワッシャ20からシール部材40が剥離することを防止することができる。
なお、ワッシャ20の頭部側端面25に露出するシール材流入部42及びランナ部342aの露出面は、頭部側端面25と同一面となっている。シール材流入部42及びランナ部342aは、ワッシャ20の頭部側端面25から突出していないこと、言い換えれば、頭部側端面25と同一面を含み、頭部側端面25よりも凹状に窪んでいることが好ましい。
なお、シール部材40は、特に射出成型する必要はなく、別成形として、後から組み付ける構成としてもよい。
シール部材40の材料としては、各種樹脂及び各種ゴム材料を用いることができるが、撥水性を備えていれば、より止水効果が向上する。
シール部材40の撥水性については、例えば、接触角が90°以上、より好ましくは100°以上の撥水性材料(JISR3257「基板ガラス表面の濡れ性試験方法」に準拠)を用いれば、経年変化によって、シール部材40の接触面圧が低下し、さらに、反発力がゼロになって、撥水性によって、止水機能を有する。特に、接触する相手材の表面が撥水加工されていることが好適である。
【0018】
次に、
図3を参照して、本
参考例のねじ締結具による締結作業について説明する。
図3(A)に示すように、ねじ締結具1は、たとえば、車体の内装部品あるいは外装部品である樹脂パネル等の取付板300に設けられたボルト取付部301に頭部2が保持され、軸部4が取付板300に対して直角に突出する状態に維持される。
ボルト取付部301は、取付板300に対して所定間隔を隔てて平行に配置される四角形状の保持板303と、保持板303の3辺を取付板300に支持する支持壁304を備え、保持板303の一辺側が開放された扁平なボックス形状となっている。保持板303には開放側の端辺から保持板303のほぼ中央まで直線的に延びる溝302が設けられている。取付板300と保持板303との間隔は、頭部2の大径部2aの厚みより若干大きく、溝302は、頭部2の小径部2bが挿通可能な幅を有している。
ねじ締結具1の装着作業は、頭部2の大径部2aの天面を、取付板300に沿ってスライドさせ、小径部2bを保持板303の溝302に差し入れ、
図3(B)に示すように装着する。
この装着作業の際に、
図4に示すように、シール材流入部42及びランナ部342aの露出面が固定孔23が開口するワッシャ20の頭部側端面25と同一面となっているので、シール材流入部42がボルト取付部301の保持板303に干渉するおそれがなく、スムースに装着することができる。シール材流入部42及びランナ部342aがワッシャ20の頭部側端面25よりも突出していると、寸法によっては、ボルト取付部301の保持板303と干渉し、装着に支障がでるおそれがある。
一方、軸部4については、軸部4を被締め付け材である車体パネル100の軸穴101に挿入し、車体パネル100の内側に突出する軸部4にナット200を締め付け固定する。
図4は、締め付け固定された状態を示している。締め付け時には、まず、シール部材40が車体パネル100に接触し、締め付け力が増大するにつれて、シール部材40が軸方向に圧縮され、金属製のワッシャ20の座面21が車体パネル100に着座し、さらに締め付けることで、ワッシャ20の座面21と車体パネル100との金属接触により、所要の軸力が発揮されるので、長期にわったって、適正な軸力が維持される。
また、上記したように、かしめ部30によってワッシャ20をボルト10に一体的に固定して一つのねじ締結具1としているので、部品点数を減らすことができるとともに、軽量化を図ることができ、また、締結作業も一つのねじ締結具1を締め付けるだけでよいの
で、作業性が飛躍的に向上する。
【0019】
特に、シール部材40を軸部4の中心軸線を含む面で切断した断面形状は角が面取りされた四角形状で、内周側角部に欠肉部40aが設けられているので、圧縮されたシール部材40が座面21側にはみ出して噛みこむおそれが無く、軸力低下及び止水性能低下を防止できる。
この「はみ出し」について、
図5を参照して説明する。
図5(A)は、比較例として、シール部材40の内径端部40a´に、欠肉部40aが無い場合を仮想的に示している。この場合、
図5(B)に示すように、ワッシャ20の座面21と被締結部材との間でシール部材40が圧縮されると、シール部材40の内径端部40a´がワッシャ20の座面21側にはみ出し、ワッシャ20の座面21と被締結部材の間で、はみ出し部Wを噛み込むおそれがある。
これに対して、本実施形態のように、シール部材40の内径端部に欠肉部40aを設けておけば、
図5(C)、(D)に示すように、シール部材40が圧縮されても、座面21側にはみ出さない。
【0020】
止水機能について
次に、
図4を参照して止水機能について説明する。
図4に示すように、頭部2側は外部空間に露出しており、水の浸入ルートは、ワッシャ20の内周側、すなわち、頭部座面2cとワッシャ20の頭部側端面25との接触面間の隙間からワッシャ20の内周とボルト10の嵌合軸部11及び首下部12との嵌合面間の隙間を伝って車体パネル100の軸穴101側に至るルートと、ワッシャ20の外周側、すなわち、ワッシャ20の座面21と車体パネル100との接触面間から車体パネル100の軸穴101に至る第2ルートがある。
第1ルートについては、ワッシャ20の開口部周縁22に密接するかしめ部30によって止水される。特に、かしめ部30は、傾斜面31がワッシャ20の内周の開口部周縁22にくさび状に食い込んで接触圧が高く保持されているので、優れたシール性が維持されている。
一方、第2ルートについては、ワッシャ20の外周に設けられたシール部材40によって、シールされる。
第1環状凸部41a,第2環状凸部41bのシール作用について
水の浸入部であるシール部材40の外径端側から確実にシール部材40を圧縮でき、接触面圧を高くすることができる。また、第1,第2環状凸部41a,41bにより、被締結部材との接触面積を減らすことで、圧縮荷重を軽減することができ、軸力消費を抑制できる。また、ワッシャ20の外径端より大径に張出す張出し部40bが形成されるので、第1環状凸部41aの被締結部材との接触面積がワッシャ20よりも広い範囲に拡がり、全体としては軸力消費を抑制しつつ、シール性を高くすることができる。
また、シール部材40で、へたりが生じたとしても、上記したように、シール部材40が撥水性を有する材料で構成されていれば、止水性能を維持することもできる。
さらに、ワッシャ20の外径端より大径に張出す張出し部40bが形成されるので、仮に、水没したとしても、水圧が張出し部40bに作用し、シール部材40の接触面圧、この実施形態では第1環状凸部41aのシール面圧を確保することができ、止水効果が高ま
る。水圧は張出し部40bの頂部と反対側の背面40b1に作用し、張出し部40bを被締結部材に向けて押し付けて、第1環状凸部41aのシール面圧を高める効果を奏する。
【0021】
次に、
本発明のシール部材の
実施形態および上記参考例の各種変形例について説明する。以下の説明では、主として上記
参考例と異なる点についてのみ説明するものとし、同一の構成部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
実施形態1
図6(A)は、
実施形態1を示している。
図6(A)に示すように、シール部材40には、無負荷状態でワッシャ20の外径端よりも大径に張出す張出し部40bを全周的に設けることもできる。この形態では、第1環状凸部41aの一部が外方に張出しており、第1環状凸部41aの頂部41a1が、ワッ
シャ20の外径線Mを跨いで、その内側から外側まで延びる幅広の構成となっている。また、張出し部40bの頂部と反対側の背面40b1は、ねじ先端方向に向かって徐々に拡径する方向に傾斜する傾斜面となっている。なお、背面40b1の形状は、
図6(A)の形状に限定されない。
【0022】
実施形態2
図6(B)は、
実施形態2を示している。
図6(B)は、環状凸部を設けずに、シール部材240の被締結部材側の面を平坦なシール面241とした構成となっている。この場合でも、外径側に張出し部40bを設けることができるし、内径側に欠肉部40aを設けることができる。
シール面241はワッシャ20の座面21を基準にして、座面21よりも所定高さtだけ軸部4の先端側に突出している。
この態様のシール部材240は、ワッシャ20の座面21が被締結部材に接触するまでに必要な荷重は、上記
参考例に比較して高くなるものの、シール部材40を圧縮するだけなので、上記実施形態と同様に低軸力領域の使用が可能となる。
なお、シール面241は、ねじ軸の中心線に対して直交する平面となっているが、二点鎖線で示すように、内径端側から外径端に向けて下方(軸部の先端側)に傾斜する傾斜角を有する構成となっていてもよい。
【0023】
変形例
1
図7は、
上記参考例の変形例
1を示している。
この変形例
1は、シール部材40の抜け止め部の変形例である。
図7(A),(B)は、固定孔23の裏面(頭部側)側の開口縁に面取り部23aを設けた構成例である。シール材流入部42の先端部には、径大に膨出する膨出部42aが設けられ、膨出部42aが面取り部23aに係合してシール材流入部42の抜け止めが図られている。面取り部23aは固定孔23の開口角部を円錐面形状にカットした構成で、膨出部42aの面取り部23aとの接触面は、面取り部23aに対応して頭部側に向けて逆円錐面形状に拡径する構成となっている。この
変形例では、膨出部42aと面取り部23aが、固定孔23からシール材流入部42が抜ける方向に対して互いに係合する抜け止め部を構成している。
このようにシール部材40が膨出部42aで保持されるので、保管時、運搬時、作業時等において、外周部が他の部品等と干渉した場合でも、ワッシャ20からシール部材40が剥離することを防止することができる。
なお、ワッシャ20の頭部側端面25に露出するシール材流入部42の露出面42bは、ワッシャ20の頭部側端面25から突出していないこと、言い換えれば、頭部側端面25と同一面を含み、頭部側端面25よりも凹状に窪んでいることが好ましい。
この固定孔23の面取り部23aも、
図7(A)に示すように、頭部2の最大径部、図示例では大径部2aの角部の外接円C1よりも外側に位置させることにより、頭部2を回避して金型の型面によって面取り部23aを密閉することができ、成形が容易となる。頭部2の径が大きく、外接円C1が、
図7(C)に示すように、面取り部23aに近接する場合には、面取り部23aの形状を、面取り部23aの外周円を一部切断したカット部23bを有するような優弧形状とすることもできる。
なお、抜け止め部の形状としては、上記したような円錐形状の膨出部42aと面取り部23aに限るものではなく、たとえば、
図7(D)に示すような、段差のついた円筒状のザグリ部223aとなっていてもよい。すなわち、膨出部42aがザグリ部223aに係合してシール材流入部42の抜け止めが図られる。
【0024】
変形例
2
図8(A)は、変形例
2を示している。
図8(A)は、最も単純な例で、単純な平ワッシャ形状のシール部材340で、内周面344と外周面345は、座面21に対して直交する方向に直線状に延び、シール面341と反対側の背面が、凹部24の底面24aに接着材343によって貼り付けられている。この場合にも、締め付け時におけるシール部材340の内径端の噛み込みを防止するために、シール部材340の内径端に欠肉部340aが設けられている。型成形ではないので、欠肉部340aは、複雑な形状ではなく、面取り形状によって構成することができる。
このような貼り付け構成のシール部材340の形態は、型成形が困難な材料を使用する場合に好適である。
なお、この形態例では、接着材343を使用しているが、シール部材340の材料が溶着可能な材料であれば溶着することも可能であるし、機械的に結合してもよい。さらに、機械的な結合を接着材による結合を組み合わせてもよい。
【0025】
実施形態3
図8(B)は、
本発明の実施形態3を示している。
この
実施形態3は、シール部材340の外周に、無負荷状態で、ワッシャ20の外径端よりも外側に張出す張出し部40bを設けたものである
。
【0026】
変形例
3
図9は、変形例
3を示している。
図9(A)には無負荷状態、
図9(B)には、
図9(A)の無負荷状態から締め付けて外周面345に張出し部340bが形成された状態が示されている。このように、無負荷状態でシール部材340の外周面345がストレートの形状であったとしても、外側への膨らみによって張出し部340bが形成され、圧縮代を大きくしておけば、張出し量を大きくすることができる。
図示例では、無負荷時のシール部材340の外周面345はワッシャ20の外周面とほぼ同一径で、膨らんだ分だけワッシャ20の外周面から張り出すことになる。シール部材340の外径は、ワッシャ20の外径よりも小径であってもよく、要するに外周面の膨らみによって形成される張出し部が、ワッシャ20の外径よりも大径となるように構成されていればよい。なお、無負荷状態のシール部材340の外周面345の形状については、直線状には限定されない。
また、この変形例
3は、シール部材340の内径端の噛み込みを防止するために、シール部材340の内周面344と、ワッシャ20の段差部24bとの間に、隙間gが設けられている。このように隙間gを設ければ、変形例4のような欠肉部340aが不要である。
隙間gの大きさは、シール部材の内周面も、締め付け時に内側に変形するので、変形を吸収可能な大きさに設定される。
【0027】
なお、上記
参考例及びシール部材の各
実施形態及び変形例では、凹部24については、外側が開放された構成となっているが、開放された構成に限定されず、外側が開放されない凹溝形状となっていてもよい。また、頭部2が、部品を保持するための特殊形状となっているが、このような部品保持用に限定されるものではない。また、かしめ部について、ねじの転造と同時にかしめるものについて説明したが、首下部に、かしめるための段差部を設け、軸方向にかしめることによっても成形することができる。
【課題】生産性が良く、かつ組立て作業性の良い構成で、低軸力領域でも使用可能で、軸力低下を防止しながら、ワッシャの内外周の止水機能を兼ね備えたねじ締結具を提供する。
【解決手段】頭部2と、ねじ部13が形成された軸部4と、を有するボルト10と、軸部4に挿入され頭部2に接触するワッシャ本体20Aと、このワッシャ本体20Aの外周側に設けられるシール部材40と、を有するワッシャ20と、を備え、ワッシャ本体20Aの座面21が被締結部材に接触した状態で、シール部材40が被締結部材に止水状態で接触するねじ締結具において軸部4に、ワッシャ20内周の開口部周縁に全周的に止水状態でかしめ固定されるかしめ部30が設けられていることを特徴とする。