特許第6797326号(P6797326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6797326
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】刃物研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 3/36 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
   B24B3/36 F
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-176540(P2020-176540)
(22)【出願日】2020年10月21日
【審査請求日】2020年10月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】月本 拓延
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−122382(JP,A)
【文献】 特開昭48−12592(JP,A)
【文献】 特開2017−104948(JP,A)
【文献】 米国特許第6752702(US,B1)
【文献】 実開昭62−19153(JP,U)
【文献】 特開2013−233612(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0295823(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/148878(WO,A1)
【文献】 特開2004−330323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/00 − 3/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃物の刃先を研磨する刃物研磨装置であって、
回転軸を回転させるモータと、
それぞれ円錐台形状の第1部分と第2部分とがそれぞれの頂面を対向させて貼り合わされた形状であるとともに、前記回転軸に直接連結された研磨体と、
前記モータ及び前記研磨体を支持する支持体と、
前記支持体の下方に位置する土台と、
前記支持体と前記土台との間に配置された弾性部材と、
前記回転軸に対して前記研磨体の一方側に配置され、かつ前記刃先と接する第1接点を有する第1ガイド部と、
前記回転軸に対して前記研磨体の他方側に配置され、かつ前記刃先と接する第2接点を有する第2ガイド部と、
前記第1接点と前記第2接点とを結ぶ線上に前記刃先をガイドするスリットを有し、前記土台と連結して前記研磨体、前記モータ、及び前記支持体を覆うよう配置されたカバーと、を備え、
前記第1接点と前記第2接点とを含む面上に前記研磨体の前記第1部分の円錐面と前記第2部分の円錐面とが位置しており、
前記弾性部材は、前記刃先が前記第1接点、前記第2接点、前記第1部分の円錐面、及び前記第2部分の円錐面に接する状態になったときに、前記第1接点及び前記第2接点から離れる方向の付勢力を前記刃先に与えるよう設けられ、
前記第2ガイド部は、それぞれ前記研磨体より細かい粒度の2本の柱状の研磨材が鋭角状に交差するよう配置されて形成されている、
刃物研磨装置。
【請求項2】
前記刃先が前記第1接点、前記第2接点、前記第1部分の円錐面、及び前記第2部分の円錐面に接する状態になったときに、前記研磨体が前記刃先に与える付勢力が0.2〜4.0Nである、
請求項1に記載の刃物研磨装置。
【請求項3】
前記刃物を研磨する際に発する音が80dB以下である、
請求項1または請求項2に記載の刃物研磨装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、上方から見たときに、
前記研磨体に対して前記モータ側の、前記回転軸の延長線に対して一方側及び他方側にそれぞれ配置された第1弾性部材及び第2弾性部材と、
前記研磨体に対して前記モータとは逆側の、前記回転軸の延長線上に配置された第3弾性部材と、を含む、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の刃物研磨装置。
【請求項5】
前記第1弾性部材、前記第2弾性部材、及び前記第3弾性部材が同一形状である、
請求項4に記載の刃物研磨装置。
【請求項6】
前記モータは、前記第1ガイド部から前記第2ガイド部に向かう方向とは逆方向に前記研磨体が前記刃先に摺接する方向に前記回転軸を回転させる、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の刃物研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、刃物の刃先を研磨する刃物研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された、モータと、モータシャフトに固定された砥石と、スプリングとを備える電動砥石があった。一方で、特許文献2に記載された、モータを有さない刃物研磨具であって、研磨体を支持する支持体と、土台と、支持体と土台との間に位置する弾性部材及びガイド部材を備える構成の刃物研磨具があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭48−73893号公報
【特許文献2】特開2018−122382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された電動砥石では、使用者が刃物の刃先を砥石に押し付けることで回転する砥石により刃先を研磨することとなる。このとき、刃先の研磨の程度は、使用者が刃先を砥石に押し付ける力によって大きく左右され、刃先の研磨が不十分であったり、刃先が研磨され過ぎたりする場合があった。この課題は、仮に特許文献2に記載のような弾性部材を追加した構成としたとしても同様であった。本発明は、使用者の習熟度などにかかわらず、刃先を効果的に研磨することが可能な刃物研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、次のような構成の刃物研磨装置を提供する。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記する場合があるが、本発明の各構成要素はこれらの具体的な構成に限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0006】
本発明の一の手段は、
刃物の刃先を研磨する刃物研磨装置(100)であって、
回転軸を回転させるモータ(4)と、
それぞれ円錐台形状の第1部分(51)と第2部分(52)とがそれぞれの頂面を対向させて貼り合わされた形状であるとともに、前記回転軸に直接連結された研磨体(5)と、
前記モータ及び前記研磨体を支持する支持体(3)と、
前記支持体の下方に位置する土台(1)と、
前記支持体と前記土台との間に配置された弾性部材(81、82、83)と、
前記回転軸に対して前記研磨体の一方側に配置され、かつ前記刃先と接する第1接点(61a1、61b1)を有する第1ガイド部(61)と、
前記回転軸に対して前記研磨体の他方側に配置され、かつ前記刃先と接する第2接点(62a1、62b1)を有する第2ガイド部(62)と、
前記第1接点と前記第2接点とを結ぶ線上に前記刃先をガイドするスリット(21)を有し、前記土台と連結して前記研磨体、前記モータ、及び前記支持体を覆うよう配置されたカバー(2)と、を備え、
前記第1接点と前記第2接点とを含む面上に前記研磨体の前記第1部分の円錐面と前記第2部分の円錐面とが位置しており、
前記弾性部材は、前記刃先が前記第1接点、前記第2接点、前記第1部分の円錐面、及び前記第2部分の円錐面に接する状態になったときに、前記第1接点及び前記第2接点から離れる方向の付勢力を前記刃先に与えるよう設けられ、
前記第2ガイド部は、それぞれ前記研磨体より細かい粒度の2本の柱状の研磨材(62a、62b)が鋭角状に交差するよう配置されて形成されている、
刃物研磨装置である。
【0007】
上記の刃物研磨装置では、第1ガイド部と第2ガイド部とによって、刃先を所定の進行方向に沿って移動させやすくすることができる。これにより、刃先を安定して研磨することができる。また、第2ガイド部が研磨体より細かい粒度の研磨材で形成されている。そのため、第2ガイド部が刃先に対する仕上げ砥石として機能し、研磨体で比較的粗く研磨された刃先を、より細かく研磨することができる。また、第2ガイド部が刃先に確実に当接するため、仕上げ研磨を確実に行うことができる。また、スリット内の所定の直線方向に沿って刃先が進行し、その移動経路内に研磨体、及び仕上げ砥石として機能する第2ガイド部が位置するため、刃先に対する粗い研磨と仕上げ研磨とを一連の動作で完了させることができる。また、研磨体を、円錐台形状の帳面を貼り合わせた形状にすることで、1つの研磨体で刃先の両側面を研磨することができる。これにより、複数の研磨体を備える構成とする必要がなくなり、コンパクトな刃物研磨装置にすることができる。また、第1ガイド部と第2ガイド部とが、刃先が必要以上に下側に押し込まれないようにするストッパとして機能し、研磨体に対して過度な圧力で刃先が押し付けられることを防止することができる。また、上記の刃物研磨装置では、刃物の刃先が第1接点、第2接点、第1部分の円錐面、及び第2部分の円錐面に接する状態になったときに、第1接点及び第2接点から離れる方向、すなわち上向きの付勢力を刃先に与える構成としている。これにより、研磨される刃先に対して適度な付勢力を与えることができるため、使用者にかかわらず、刃先を効果的に研磨することができる。上記の刃物研磨装置では、このような構成により、刃先を効果的に研磨することができる。
【0008】
一般的に、刃先を研磨する際、比較的粗い研磨を行った後に、細かい研磨を行うことで、刃先をより良い状態に研磨することができる。ここで、先に行う粗い研磨は、研磨時の仕事量(加工量)が大きくなるのに対して、後に行う細かい研磨は、研磨時の仕事量(加工量)が少なくなる。よって、後者の細かい研磨は手動でも比較的簡単に行うことができるものの、前者の粗い研磨は手動よりも電動で行ったほうが好ましい。上記の刃物研磨装置では、進行方向に沿って刃先を動かすと、研磨体により電動で刃先を粗く研磨した後、第2ガイド部により手動で刃先を細かく研磨することができる。この構成により、仕上げ研磨を電動で行う構成と比較すると、より小型の装置にしつつ、効率のよい研磨を行うことが可能となる。
【0009】
上記刃物研磨装置において、好ましくは、
前記刃先が前記第1接点、前記第2接点、前記第1部分の円錐面(51a)、及び前記第2部分の円錐面(52a)に接する状態になったときに、前記研磨体が前記刃先に与える付勢力が0.2〜4.0Nである。
【0010】
上記の刃物研磨装置では、研磨体から刃先に対して、研磨に最適な付勢力を与えることができる。これにより、より効果的な刃先の研磨を行うことができる。さらに、刃先から研磨体に対して過度な圧力が与えられることがないため、モータの回転が停止することを防止することができる。
【0011】
上記刃物研磨装置において、好ましくは、
前記刃物を研磨する際に発する音が80dB以下である。
【0012】
上記の刃物研磨装置では、モータの回転軸に直接研磨体が連結され、かつ刃先に過度な圧力が与えられない構成とすることなどによって、使用時に発生する騒音が80dB以下に抑制されている。これにより、騒音の少ない刃物研磨装置にすることができる。また、騒音の原因となる振動も抑制されるため、使用者に安心感を与える刃物研磨装置にすることができる。
【0013】
上記刃物研磨装置において、好ましくは、
前記弾性部材は、上方から見たときに、
前記研磨体に対して前記モータ側の、前記回転軸の延長線に対して一方側及び他方側にそれぞれ配置された第1弾性部材(81)及び第2弾性部材(82)と、
前記研磨体に対して前記モータとは逆側の、前記回転軸の延長線上に配置された第3弾性部材(83)と、を含む。
【0014】
上記の刃物研磨装置では、第1弾性部材、第2弾性部材、及び第3弾性部材により支持体を弾性的に支持する構成とすることで、より安定的に支持体を支持可能な構成とすることができる。また、モータを有する構成としているため、モータを有さない構成と比較すると重量が増加し、かつモータが配置された側に重心が偏るが、モータの両側に弾性部材を配置した構成となっているため、支持体全体を安定的に支持しやすい構成となっている。
【0015】
上記刃物研磨装置において、好ましくは、
前記第1弾性部材、前記第2弾性部材、及び前記第3弾性部材が同一形状である。
【0016】
上記の刃物研磨装置では、3つの弾性部材により発生する付勢力を均一にすることができるため、支持体全体を安定的に支持することができる。また、研磨体を介して刃先に与えられる付勢力を、ばらつきなく均一にすることができる。
【0017】
上記刃物研磨装置において、好ましくは、
前記モータは、前記第1ガイド部から前記第2ガイド部に向かう方向とは逆方向に前記研磨体が前記刃先に摺接する方向に前記回転軸を回転させる。
【0018】
上記の刃物研磨装置では、研磨対象の刃物の刃先が進行方向に移動する際に減速させることができ、これにより効果的に刃先の研磨を行うことができる。
【0019】
また、本発明の一の手段の刃物研磨装置は、
刃物の刃先を研磨する刃物研磨装置(100)であって、
回転軸を回転させるモータ(4)と、
前記回転軸に直接連結された研磨体(5)と、
前記回転軸に対して前記研磨体の一方側に配置され、かつ前記刃先と接する第1接点(61a1、61b1)を有する第1ガイド部(61)と、
前記回転軸に対して前記研磨体の他方側に配置され、かつ前記刃先と接する第2接点(62a1、62b1)を有する第2ガイド部(62)と、を備え、
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方が研磨材で形成された構成としてもよい。
【0020】
上記の刃物研磨装置では、第1ガイド部及び第2ガイド部の少なくとも一方が、刃先の向きを安定させて刃先の角度を一定に保つためのガイド機能と研磨機能とを兼ねているため、ガイド機能を有する部材と研磨機能を有する部材とを別々に設ける構成と比較して部品点数を少なくし、コンパクトな構成にすることができる。また、上記刃物研磨装置では、研磨体に加え、第1ガイド部及び第2ガイド部の少なくとも一方により刃先を研磨することができるため、目的に応じた態様で刃先を効果的に研磨することが可能となる。例えば、研磨体により研磨した後に刃先が当接する第2ガイド部を研磨材で形成した場合には、第2ガイド部を仕上げ砥石として機能させ、刃先をより鋭利に研磨しやすい構成にすることができる。また、研磨体により研磨する前に刃先が当接する第1ガイド部を研磨材で形成した場合には、第1ガイド部により比較的粗く研磨した後に、研磨体により細かく研磨することなどが可能となる。また、第1ガイド部及び第2ガイド部の双方を研磨材で形成した場合には、例えば、第1ガイド部、研磨体、第2ガイド部の順に粒度が小さくなる構成にしておけば、刃先をより鋭利に研磨しやすい構成にすることができる。
【0021】
また、本発明の一の手段の刃物研磨装置は、
刃物の刃先を研磨する刃物研磨装置(100)であって、
回転軸を回転させるモータ(4)と、
前記回転軸に直接連結された研磨体(5)と、
前記モータ及び前記研磨体を支持する支持体(3)と、
前記支持体の下方に位置する土台(1)と、
前記支持体と前記土台との間に配置された弾性部材(81、82、83)と、
前記回転軸に対して前記研磨体の一方側に配置され、かつ前記刃先と接する第1接点(61a1、61b1)を有する第1ガイド部(61)と、
前記回転軸に対して前記研磨体の他方側に配置され、かつ前記刃先と接する第2接点(62a1、62b1)を有する第2ガイド部(62)と、を備え、
前記弾性部材は、前記刃先が前記第1接点、前記第2接点、前記第1部分の円錐面、及び前記第2部分の円錐面に接する状態になったときに、前記第1接点及び前記第2接点から離れる方向の付勢力を前記刃先に与えるよう設けられた構成としてもよい。
【0022】
上記の刃物研磨装置では、第1ガイド部と第2ガイド部とが、刃先が必要以上に下側に押し込まれないようにするストッパとして機能し、研磨体に対して過度な圧力で刃先が押し付けられることを防止することができる。
【0023】
上記刃物研磨装置において、前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方が研磨材で形成された構成としてもよい。このような構成によれば、第1ガイド部及び第2ガイド部がストッパとして機能するのに加え、第1ガイド部及び第2ガイド部の少なくとも一方は研磨機能を兼ねる。つまり、第1ガイド部及び第2ガイド部の少なくとも一方は、刃先を研磨する際、刃先の向きを安定させて刃先の角度を一定に保つためのガイド機能と、刃先が必要以上に下側に押し込まれて刃先に過度な圧力がかかることを抑制するストッパ機能と、研磨機能とを1つの部材で兼用することができる。これにより、刃物研磨装置の部品点数を少なくし、コンパクトな構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、刃物研磨装置の外観斜視図である。
図2図2は、カバーを取り外した刃物研磨装置の斜視図である。
図3図3は、刃物研磨装置の部分分解斜視図である。
図4図4は、図3とは異なる方向から見た刃物研磨装置の部分分解斜視図である。
図5図5は、カバーを取り外した刃物研磨装置を上面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一形態の刃物研磨装置は、以下の点などを特徴としている。すなわち、刃物研磨装置は、使用者によらず刃物の刃先を効果的に研磨することが可能となるように、ストッパとして機能する第1ガイド部及び第2ガイド部と、研磨体を支持する支持体を弾性的に支持する弾性部材を備える構成としている。これにより、刃先に適度な付勢力が与えられる。さらに、刃物研磨装置は、刃先をより良い状態に研磨することを容易にするため、刃先に当接する第2ガイド部を、仕上げ砥石として機能する2本の研磨材で構成している。
【0026】
本発明の刃物研磨装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
【0027】
<1.実施形態>
<刃物研磨装置の構成>
図1に示されるように、刃物研磨装置100は、土台1及びカバー2を備える。刃物研磨装置100は、土台1とカバー2とが連結されることで筐体となり、内部の部材を覆っている。
【0028】
<カバー2>
カバー2には、スリット21及び矢印マーク22が設けられる。スリット21は、底部21aを有する溝状に形成され、一般的な刃物の厚さよりも大きい幅を有する。スリット21は、後述の第1ガイド部61の第1接点と第2ガイド部62の第2接点とを結ぶ線上に刃物の刃先をガイドする。スリット21は、例えば、上側で4mm、下側(底部側)で2mmの幅で形成される。スリット21のモータ4側の壁面は、逆側の壁面よりも上側まで延び、かつモータ4側に向かって湾曲する形状となっている。このように、モータ4側の壁面が逆側の壁面よりも上側まで延びていることにより、使用時に、使用者がモータ4のある側を把持した際、その把持した手の側に刃物の刃先が不意に近付くことを抑制することができる。また、スリット21の壁面が湾曲する形状で、かつ上側ほど開口幅が広く(大きく)なっているため、刃物をスリット21の下方に案内して入れやすい。スリット21からは、後述の研磨体5、第1ガイド部61、及び第2ガイド部62が視認される。矢印マーク22は、スリット21の側方に設けられ第1ガイド部61から第2ガイド部62に向かう方向を指す態様になっている。矢印マーク22は、研磨対象となる刃物の進行方向を使用者に対して示唆するものである。また、土台1及びカバー2の側面には、作動スイッチ73を露出させる孔部が形成される。
【0029】
図2図5に示されるように、刃物研磨装置100は、土台1及びカバー2に加え、支持体3、モータカバー31、モータ4、研磨体5、第1ガイド部61、第2ガイド部62、電池ボックス7、並びに弾性部材81、82、及び83を含んで構成される。カバー2は、これらの部材を覆っている。
【0030】
<土台1>
土台1は、カバー2と連結されることでカバー2を固定し、刃物研磨装置100の筐体を構成する。土台1は、刃物研磨装置100の底面部分となる。土台1は、刃物研磨装置100の各構成要素を、直接的または間接的に支持する。土台1は、支持体3の下方に位置する。土台1は、上面から見た平面視で矩形状であって、長手方向の一方側に電池ボックス7が配置され、他方側に支持体3、モータカバー31、モータ4、研磨体5、第1ガイド部61、及び第2ガイド部62などが配置される。土台1と電池ボックス7とは一体的に構成されていてもよいし、それぞれが別部材として構成されていてもよい。土台1には、それぞれが土台1から上側に向かって延びる、円筒状で、下側、すなわち土台1側に内底部を有する弾性部材保持部11、12、及び13が設けられる。弾性部材保持部11及び12は、モータ4の側方であって、それぞれ回転軸42の中心線B(図5参照)に対して対称となる位置に配置される。弾性部材保持部13は、回転軸42の延長線上の位置、すなわち中心線B上に配置される。弾性部材保持部11、12、及び13には、それぞれ弾性部材81、82、及び83が収容される。弾性部材保持部11、12、及び13の内底部には、それぞれ弾性部材81、82、及び83の一端が当接する。
【0031】
<支持体3、モータ4、及び研磨体5>
支持体3は、モータ4及び研磨体5を支持する。モータ4は、支持体3の電池ボックス7側に設置される。モータ4は、支持体3によって下側が覆われ、モータカバー31によって上側を覆われる。モータカバー31は、支持体3とネジで連結される。モータ4は、支持体3とモータカバー31とによって位置を固定される。モータ4は、電池ボックス7が配置された方向に端子41a及び41bを有する。モータ4は、回転軸42を有しており、後述のように電池ボックス7に設置された電池から端子41a及び41bに供給される電力によって、回転軸42を回転させる。モータ4には電池から6.0Vの電圧が供給され、これによって所定のトルクで回転軸を回転させる。モータ4のトルクは、200〜300gf・cmの範囲にすることが好ましく、例えば240gf・cmとなるものを使用する。回転軸42には、研磨体5が直接連結される。回転軸42は、スリット21が延びる方向に対して75°の傾斜を有するよう配置される。より具体的には、回転軸42は、第1ガイド部61から第2ガイド部62に向かう方向に対して75°の傾斜を有するよう配置される。なお、モータ4に供給される電圧は任意に変更可能である。また、第1ガイド部61から第2ガイド部62に向かう方向に対する回転軸42の傾斜角は、75°に限定されるものではなく、任意に変更可能である。ただし、回転軸42の傾斜角が60°〜80°になるようモータ4を配置すると、刃物研磨装置100の幅方向(進行方向)の大きさが大きくなることを抑制できるので好ましい。
【0032】
研磨体5は、それぞれが円錐台形状の第1部分51と第2部分52とが、それぞれの頂面を対向させて貼り合された形状である。研磨体5は、例えば、同一形状の第1部分51と第2部分52とを貼り合されることで形成される。研磨体5は、中心部に貫通孔が形成されており、この貫通孔に回転軸42が挿通されることでモータ4と連結されている。回転軸42と研磨体5との間には、互いに強固に連結させるための接着剤等の連結補助材が用いられてもよい。研磨体5の粒度は、後述の第2ガイド部62の粒度よりも粗い。研磨体5の粒度は#50〜#320が好ましく、例えば#150とする。なお、第1部分51と第2部分52とは必ずしも同一形状である必要はないが、同一形状であることが好ましい。
【0033】
支持体3は、モータ4を直接支持し、モータ4を介して間接的に研磨体5を支持する。支持体3には、それぞれ円筒状で上側に内天面部を有する3つの弾性部材保持部32a、32b、及び33が形成される。弾性部材保持部32a、32b、及び33は、それぞれ土台1に設けられた弾性部材保持部11、12、及び13と対向する位置に設けられ、下側、すなわち土台1側が解放されている。弾性部材保持部32a、32b、及び33には弾性部材81、82、及び83がそれぞれ収容される。弾性部材保持部32a、32b、及び33の内天面部には、それぞれ弾性部材81、82、及び83の一端が当接する。支持体3は弾性部材81、82、及び83を介して土台1と接触している。つまり、支持体3は、弾性部材81、82、及び83を介して、弾性的かつ間接的に土台1によって支持されているといえる。
【0034】
<弾性部材81、82、及び83>
弾性部材81、82、及び83は、支持体3と土台1との間に配置される。弾性部材81、82、及び83は、同一形状であって同一材料のコイルバネである。弾性部材81、82、及び83のバネ係数は共通である。弾性部材81は、弾性部材保持部11と、弾性部材保持部11を覆うように配置された弾性部材保持部32aとによって覆われるよう配置される。弾性部材81の下側の端部は弾性部材保持部11の内底部に当接し、上側の端部は弾性部材保持部32aの内天面部に当接する。弾性部材82は、弾性部材保持部12と、弾性部材保持部12を覆うように配置された弾性部材保持部32bとによって覆われるよう配置される。弾性部材82の下側の端部は弾性部材保持部12の内底部に当接し、上側の端部は弾性部材保持部32bの内天面部に当接する。弾性部材83は、弾性部材保持部13と、弾性部材保持部13を覆うように配置された弾性部材保持部33とによって覆われるよう配置される。弾性部材83の下側の端部は弾性部材保持部13の内底部に当接し、上側の端部は弾性部材保持部33の内天面部に当接する。
【0035】
弾性部材81、82、及び83は、使用時に研磨体5に刃物の刃先が押し当てられると、押し当てられた力に応じて収縮し、反発力としての付勢力を、研磨体5を介して刃先に与える。なお、弾性部材81、82、及び83は、例えば板バネのような、コイルバネ以外の弾性体を用いてもよい。また、弾性部材81、82、及び83は、形状や材料が互いに異なってもよいが、支持体3に対して均等に付勢力を与える構成とすることが好ましい。
【0036】
<電池ボックス7>
電池ボックス7は、モータ4が配置された側に端子71a及び71bを有する。端子71a及び71bは、それぞれ導線72a及び72bによってモータ4の端子41a及び41bと電気的に接続される。電池ボックス7は、収容された電池から、導線72a及び72bを介してモータ4に対して電力を供給する。電池ボックス7には4つの電池が収容される。電池ボックス7に収容された電池は直列接続されており、これによって電池ボックス7からの出力電圧が6.0Vとなる。なお、電池ボックス7からの出力電圧は、モータ4の特性に応じて任意に変更される。
【0037】
電池ボックス7は、カバー2と対向する部分に、カバー2に向かって延びる複数のリブ74を有する。これらのリブ74は、土台1とカバー2とが連結した状態のときにカバー2に当接する。これらのリブ74が設けられることで、モータ4が作動して回転軸42及び研磨体5を回転させたときに発生する振動及び騒音を抑制している。なお、このようなリブを有さない構成としてもよい。
【0038】
電池ボックス7の側面には、作動スイッチ73が設けられる。作動スイッチ73は、カバー2の外側に露出しており、使用者により操作可能になっている。使用者によって作動スイッチ73が操作されて刃物研磨装置100がオン状態になると、電池ボックス7からモータ4に対して電力が供給されてモータ4の回転軸42が回転する。刃物研磨装置100がオン状態のときに作動スイッチ73が操作されて刃物研磨装置100がオフ状態になると、電池ボックス7からモータ4に対する電力の供給が停止し、モータ4の回転軸42が回転を停止する。
【0039】
<第1ガイド部61、第2ガイド部62>
第1ガイド部61は、2本の円柱状の樹脂部材61a及び61bを含む。樹脂部材61a及び61bは、例えば、ポリアセタール樹脂により形成されるが、これに限定されない。2本の円柱状の樹脂部材61a及び61bは、鋭角状に交差するよう配置される。言い換えれば、第1ガイド部61を構成する2本の樹脂部材61a及び61bはX字状に配置される。樹脂部材61aと61bとは、同一形状かつ同一部材であることが好ましいが、必ずしも同一形状かつ同一部材でなくてもよい。
【0040】
第2ガイド部62は、2本の円柱状の研磨材62a及び62bを含む。2本の円柱状の研磨材62a及び62bは、鋭角状に交差するよう配置される。言い換えれば、第2ガイド部62を構成する2本の研磨材62a及び62bはX字状に配置される。研磨材62aとび62bとは、同一形状かつ同一部材であるが、必ずしも同一形状かつ同一部材でなくてもよい。
【0041】
第2ガイド部62の研磨材62a及び62bは、研磨体5より細かい粒度を有する。研磨材62a及び62bの粒度は#600〜#3000が好ましく、例えば#1000とする。
【0042】
第1ガイド部61と第2ガイド部62とは、研磨体5を挟んで一方側と他方側とに配置される。第1ガイド部61及び第2ガイド部62は、使用者が刃物の刃先を研磨する際に、刃先の向きを安定させて刃先角度を一定に保ちつつ、刃先を直線状にガイドする。第2ガイド部62は、使用時に、刃物が研磨体5に当接した後に当接するよう、使用時の刃物の進行方向において、研磨体5よりも進行方向側に位置している
【0043】
<刃物研磨装置100の使用>
刃物研磨装置100が使用されるときは、まず、使用者によって刃物研磨装置100がオン状態にされ、モータ4が回転する状態にされる。研磨対象となる刃物は、使用者によって、刃先を下にしてスリット21から研磨体5に向かって挿入される。挿入された刃物の刃先は、まず研磨体5に接触し、研磨体5を介して弾性部材81、82、及び83から刃先に対して与えられる付勢力に抗しながらさらに下方に押し込まれる。刃先は、一方側が第1ガイド部61に接し、他方側が第2ガイド部62に接したところで、第1ガイド部61及び第2ガイド部62によって、それ以上下方に押し込まれることを抑制される。すなわち、第1ガイド部61及び第2ガイド部62は刃物の押し込みを規制するストッパとして機能する。このように、第1ガイド部61及び第2ガイド部62によって、研磨体5に対する刃先の押し込み量が所定量に規制されるため、使用時に、弾性部材81、82、及び83の作用により研磨体5から刃先に対して与えられる付勢力が一定となる。このとき、研磨体5から刃先に対して与えられる付勢力が適度な範囲になるように、弾性部材81、82、及び83を設計する。使用時に研磨体5から刃先に対して与えられる付勢力は、0.2〜4.0Nの範囲にすることが好ましく、より好ましくは0.4〜2.5Nの範囲にする。弾性部材81、82、及び83から与えられる付勢力がこの範囲となるように設計することで、刃先を適度に研磨することができる。さらに、刃先から研磨体5に対して与えられる付勢力によってモータ4の回転が停止したり、研磨に不十分な程度にまで減速したりすることがなくなる。
【0044】
図5の平面図に点線Aで示されているのは、使用時、すなわち刃先の研磨時に刃物の刃先の延びる方向である。図5から判るように、刃先は、第1ガイド部61の61a1及び61b1の2点と、第2ガイド部62の62a1及び62b1の2点と当接する。これらの61a1及び61b1を「第1接点」と呼ぶ。62a1及び62b1を「第2接点」と呼ぶ。さらに、刃先は、研磨体5の第1部分51の円錐面51a、及び第2部分52の円錐面52aと当接する。つまり、刃先は、直線状に並んだ、第1ガイド部61の2点の第1接点、第2ガイド部62の2点の第2接点、第1部分51の円錐面51a、及び第2部分52の円錐面52aと接触する。言い換えれば、刃先を研磨する際には、第1部分51の円錐面51a及び第2部分52の円錐面52aは、第1ガイド部61の2点の第1接点と第2ガイド部62の2点の第2接点とを結ぶ線上に位置する。この状態のとき、弾性部材81、82、及び83により、刃先に対して、第1接点及び第2接点から離れる方向、すなわち上側に向かう付勢力が与えられる。また、刃物研磨装置100が使用されていない状態のときは、第1部分51の円錐面51a及び第2部分52の円錐面52aは、第1ガイド部61の2点の第1接点と第2ガイド部62の2点の第2接点とを含む面上に位置することとなる。
【0045】
この状態から使用者は、矢印マーク22が示す進行方向である、第1ガイド部61から第2ガイド部62の方向に向かって、刃物を第1ガイド部61、第2ガイド部62、及び研磨体5に当接させながら移動させる。これにより、研磨体5が回転しながら刃先に摺接し、刃先が研磨されていく。このとき、研磨体5は、刃先と当接する上側が、図5の矢印5aの方向に向かって回転する。すなわち、モータ4は、第1ガイド部61から第2ガイド部62に向かう方向とは逆方向に研磨体5が刃先と摺接するよう、回転軸42を回転させる。研磨体5がこのように刃先に摺接することで、刃先が進行方向である第1ガイド部61から第2ガイド部62に向かう方向とは逆側の力を刃先に与えることとなる。これにより、刃先が進行方向に移動する際に減速させることができ、より効果的に刃先の研磨を行うことができる。ただし、モータ4が上記とは逆方向に回転する構成を採用してもよい。
【0046】
刃先は、研磨体5によって研磨されたのち、使用者によって第2ガイド部62に摺接することとなる。上記のとおり、第2ガイド部62は2本の円柱状の研磨材62a及び62bによって構成されているため、第2ガイド部62に摺接した刃先が研磨される。第2ガイド部62の研磨材62a及び62bは研磨体5よりも細かい粒度を有しているため、第2ガイド部62は、研磨体5によって研磨された刃先をさらに細かく研磨する仕上げ砥石として機能する。
【0047】
刃物研磨装置100では、モータ4の回転軸42に研磨体5が直接接続されていることなどから、従来の構成と比較して騒音を小さくすることができている。本実施形態の刃物研磨装置100の使用中に発生する騒音は、80dB以下になっている。このような騒音の減少には、上記特徴に加え、電池ボックス7とカバー2との間にリブ74が設けられていること、支持体3を支持する弾性部材が3つ設けられていることなども有効に作用する。
【0048】
<2.変形例>
上記実施形態の刃物研磨装置は、以下のような変形例を採用することができる。なお、以下で説明する変形例は本発明を限定的に解釈させるものではなく、具体例として記載されるものである。
【0049】
実施形態の第1ガイド部61は2本の円柱状の樹脂部材61a及び61bを含んで構成されていたが、これに限定されない。樹脂部材61a及び61bは円柱状ではなく多角柱状であってもよい。また、第1ガイド部61は樹脂以外の材料を用いて構成してもよいが刃物の刃先により容易に損傷しない適度な硬度を有する材料であることが好ましい。また、第1ガイド部61は、2本の柱状の部材を組み合わせた構成に代えて、鋭角なV字状の溝を有する部材により構成されてもよい。
【0050】
実施形態の第2ガイド部62は2本の円柱状の研磨材62a及び62bを含んで構成されていたが、これに限定されない。研磨材62a及び62bは円柱状ではなく多角柱状であってもよい。また、第2ガイド部62は、2本の柱状の研磨材を組み合わせた構成に代えて、鋭角なV字状の溝を有する研磨材により構成されてもよい。
【0051】
上記のような第1ガイド部61を採用した場合、刃先が当接する第1接点が実施形態のような2点ではなく、線状になることがある。また、第1接点が1点となることがある。同様に、上記のような第2ガイド部62を代用した場合、刃先が当接する第2接点が実施形態のような2点ではなく、線状になることがある。また、第2接点が1点となることがある。
【0052】
実施形態では3つの弾性部材81、82、及び83によって支持体3を弾性的に支持していたが、弾性部材の数は必ずしも3つでなくてもよい。例えば、土台1と支持体3との間に比較的大きな径を有する1つの弾性部材を有するような構成を採用してもよい。ただし、3つの弾性部材81、82、及び83を有する構成は、支持体3を安定的に支持しつつ、研磨体5に対しても安定した付勢力を与えることができるため好ましい。
【0053】
実施形態では電池ボックス7を有する構成としたが、電池による電力の供給に代え、100Vまたは200Vなどの交流電圧を供給される構成としてもよい。この場合、刃物研磨装置100の内側または外側に、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータを有する構成とすることが好ましい。ただし、実施形態のように電池により作動する構成とすると、電源コードを省略したり、コンバータが不要になったりすることで、刃物研磨装置100を小型化できるため好ましい。
【0054】
実施形態では、第2ガイド部62が研磨体5よりも細かい粒度の研磨材で形成された例について説明したが、第2ガイド部62は研磨体5と同じ粒度の研磨材で形成されてもよいし、第2ガイド部62が研磨体5より粗い粒度の研磨材で形成されてもよい。
【0055】
また、第2ガイド部62に代えて、または加えて、第1ガイド部61が研磨材で形成されてもよい。すなわち、第1ガイド部61及び第2ガイド部62の少なくとも一方が研磨材で形成された構成としてもよい。このような構成では、第1ガイド部61及び第2ガイド部62の少なくとも一方が、刃先の向きを安定させて刃先の角度を一定に保つためのガイド機能と研磨機能とを兼ねているため、ガイド機能を有する部材と研磨機能を有する部材とを別々に設ける構成と比較して部品点数を少なくし、コンパクトな構成にすることができる。また、研磨体5に加え、第1ガイド部61及び第2ガイド部62の少なくとも一方により刃先を研磨することができるため、目的に応じた態様で刃先を効果的に研磨することが可能となる。例えば、研磨体5により研磨する前に刃先が当接する第1ガイド部61を研磨材で形成した場合には、第1ガイド部61により比較的粗く研磨した後に、研磨体5により細かく研磨することなどが可能となる。また、第1ガイド部61及び第2ガイド部62の双方を研磨材で形成した場合には、例えば、第1ガイド部61、研磨体5、第2ガイド部62の順に粒度が小さくなる構成にしておけば、刃先をより鋭利に研磨しやすい構成にすることができる。なお、第1ガイド部61及び第2ガイド部62の少なくとも一方を研磨材とした場合のそれぞれの粒度は上記に限定されるものではなく、任意に変更してもよい。
【0056】
また、刃物研磨装置1の第1ガイド部61及び第2ガイド部62は、上記のようにガイド機能と研磨機能とに加え、刃先が必要以上に下側に押し込まれて研磨体5が刃先に過度な圧力がかかることを抑制するストッパ機能を有する。そのため、ガイド機能、研磨機能、及びストッパ機能をそれぞれ別部材で実現する構成と比較して、刃物研磨装置1の部品点数を少なくし、コンパクトな構成にすることができる。
【0057】
<3.実施形態の特徴>
以上、実施形態、及び複数の変形例を例示して説明した一実施形態の刃物研磨装置は、以下のような特徴を有する。
【0058】
刃物研磨装置100では、第1ガイド部61と第2ガイド部62とによって、刃先を所定の進行方向に沿って移動させやすくすることができる。これにより、刃先を安定して研磨することができる。また、第2ガイド部62が研磨体5より細かい粒度の研磨材で形成されている。そのため、第2ガイド部62が刃先に対する仕上げ砥石として機能し、研磨体5で比較的粗く研磨された刃先を、より細かく研磨することができる。また、第2ガイド部62が刃先に確実に当接するため、仕上げ研磨を確実に行うことができる。また、スリット21内の所定の直線Aの方向に沿って刃先が進行し、その移動経路内に研磨体5、及び仕上げ砥石として機能する第2ガイド部62が位置するため、刃先に対する粗い研磨と仕上げ研磨とを一連の動作で完了させることができる。また、研磨体5を、円錐台形状の帳面を貼り合わせた形状にすることで、1つの研磨体5で刃先の両側面を研磨することができる。これにより、複数の研磨体を備える構成とする必要がなくなり、刃物研磨装置100をコンパクトにすることができる。さらに、第1ガイド部61と第2ガイド部62とが、刃先が必要以上に下側に押し込まれないようにするストッパとして機能し、研磨体5に対して過度な圧力で刃先が押し付けられることを防止することができる。また、刃物研磨装置100では、刃物の刃先が第1接点61a1及び61b1、第2接点62a1及び62b1、第1部分51の円錐面51a、ならびに第2部分52の円錐面52aに接する状態になったときに、第1接点61a1及び61b1ならびに第2接点62a1及び62b1から離れる方向、すなわち上向きの付勢力を刃先に与える構成としている。これにより、研磨される刃先に対して適度な付勢力を与えることができるため、使用者にかかわらず、刃先を効果的に研磨することができる。刃物研磨装置100では、このような構成により、刃先を効果的に研磨することができる。
【0059】
また、刃物研磨装置100では、進行方向に沿って刃先を動かすと、研磨体5によって電動で刃先を粗く研磨した後、第2ガイド部62によって手動で刃先を細かく研磨することができる。この構成により、仕上げ研磨を電動で行う構成と比較すると、より小型の装置にしつつ、効率のよい研磨を行うことが可能となる。
【0060】
また、刃物研磨装置100では、使用時に研磨体5から刃先に対して与えられる付勢力が0.2〜4.0Nとなる。そのため、研磨体5から刃先に対して、研磨に最適な付勢力を与えることができる。これにより、より効果的な刃先の研磨を行うことができる。さらに、刃先から研磨体5に対して過度な圧力が与えられることがないため、モータ4の回転が停止することを防止することができる。
【0061】
また、刃物研磨装置100では、モータ4の回転軸42に直接研磨体5が連結され、かつ刃先に過度な圧力が与えられない構成とすることなどによって、使用時に発生する音が80dB以下に抑制されている。これにより、使用時に刃物研磨装置100から発生する騒音を小さくすることができている。また、騒音の原因となる振動も抑制されるため、使用者に安心感を与える構成となっている。
【0062】
また、刃物研磨装置100では、支持体3を支持する3つの弾性部材81、82、及び83を含んだ構成としている。上方から見たときに、弾性部材81及び82は、研磨体5に対してモータ4側に配置される。弾性部材81と弾性部材82とは、回転軸42の延長線に対して一方側及び他方側にそれぞれ配置される。つまり、弾性部材81及び82によって、モータ4が挟まれる配置となっている。また、上方から見たときに、弾性部材83は、研磨体5に対してモータ4とは逆側の、回転軸42の延長線上に配置される。刃物研磨装置100では、このように、3つの弾性部材81、82、及び83により支持体3を弾性的に支持する構成とすることで、より安定的に支持体3を支持可能な構成としている。また、モータ4を有する構成としているため、モータ4を有さない構成と比較すると重量が増加し、かつモータ4が配置された側に重心が偏るが、モータ4を挟むように弾性部材81及び82を配置した構成となっているため、支持体3の全体を安定的に支持しやすい構成となっている。
【0063】
また、刃物研磨装置100では、弾性部材81、82、及び83を同一形状としている。そのため、刃物研磨装置100では、3つの弾性部材81、82、及び83により発生する付勢力を均一にすることができるため、支持体3の全体を安定的に支持することができる。また、研磨体5を介して刃先に与えられる付勢力が、ばらつきなく均一になっている。
【0064】
また、刃物研磨装置100では、モータ4は、第1ガイド部61から第2ガイド部62に向かう方向とは逆方向に研磨体5が刃先に摺接する方向に回転軸42を回転させる。これによって、研磨対象の刃物の刃先が進行方向に移動する際に減速させることができ、効果的に刃先の研磨を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
100…刃物研磨装置
1…土台
11、12、13…弾性部材保持部
2…カバー
21…スリット
22…矢印マーク
3…支持体
31…モータカバー
32a、32b、33…弾性部材保持部
4…モータ
41a、42b…端子
42…回転軸
5…研磨体
51…第1部分
52…第2部分
51a、52a…円錐面
61…第1ガイド部
61a、61b…樹脂部材
62…第2ガイド部
62a、62b…研磨材
7…電池ボックス
71a、71b…端子
72a、72b…導線
73…作動スイッチ
74…リブ
81、82、83…弾性部材
【要約】
【課題】刃物の刃先を研磨する刃物研磨装置において、使用者の習熟度などにかかわらず、刃先を効果的に研磨することが可能な刃物研磨装置を提供する。
【解決手段】刃物の刃先を研磨する刃物研磨装置を、モータと、研磨体と、モータ及び研磨体を支持する支持体と、土台と、弾性部材と、第1ガイド部と、第2ガイド部と、カバーと、を備えた構成とする。第1ガイド部の第1接点と第2ガイド部の第2接点とを含む面上に研磨体の第1部分の円錐面と第2部分の円錐面とが位置しており、弾性部材は、刃先が第1接点、第2接点、第1部分の円錐面、及び第2部分の円錐面に接する状態になったときに、第1接点及び第2接点から離れる方向の付勢力を刃先に与えるよう設けられ、第2ガイド部は、それぞれ研磨体より細かい粒度の2本の柱状の研磨材が鋭角状に交差するよう配置されて形成される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5