(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797399
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】網戸
(51)【国際特許分類】
E06B 9/52 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
E06B9/52 E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-174838(P2016-174838)
(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公開番号】特開2018-40161(P2018-40161A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107929
【氏名又は名称】セイキ総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】守谷 崇
(72)【発明者】
【氏名】青山 武史
(72)【発明者】
【氏名】守谷 将人
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−93546(JP,A)
【文献】
特開2012−162964(JP,A)
【文献】
特開2009−235705(JP,A)
【文献】
特開2004−44270(JP,A)
【文献】
実開昭56−65099(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3201782(JP,U)
【文献】
実開昭62−101998(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/52−9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠材が方形に枠組みされて建物開口部の障子よりも屋外側に設置される金属製網戸枠を備え、該網戸枠における四周の枠材の屋内側に面ファスナー取付用の平面部を形成して、該平面部に一対の面ファスナーの一方である第1の面ファスナー片を固定し、
一方、上記網戸枠の平面部に上記面ファスナーを介して取り付けるネットは、その四周に、可撓性を有する板材の連結により形成したネット枠を固定すると共に、上記網戸枠に固定された第1の面ファスナー片に接合させる第2の面ファスナー片を、上記ネット枠に上記ネットと共に固定することにより枠付きネットとし、
該枠付きネットを、上記網戸枠に対して上記第1及び第2の面ファスナー片の接合によって取り付けるようにした網戸において、
上記網戸枠における枠材の平面部に対する第1の面ファスナー片の固定を、該平面部における第1の面ファスナー片の取付位置の両側に沿って突設している固定用突条の内側への屈曲による該面ファスナー片の側端の挟着によって行い、
上記ネット枠を構成する四周の板材の両端を接合するコーナー連結部材を、隅角部において互いに接合する板材端部に対してそれぞれ重なるところの互いに直交する板材連結部と、該板材連結部の内角側に張り出す把持部とを備えたものとし、
該板材連結部をそれぞれ直交する板材端部に接合すると共に、該把持部を、上記板材連結部が交差する隅部から内側のネット上に該ネットから離間した状態で張り出すことにより、該把持部とその下のネットとの間に、ネット枠の把持のための指掛け間隙を形成し、
網戸枠及び/又は枠付きネットの隅角部における第1及び第2の面ファスナー片の相互を接合させる係合子の一部を無機能化することにより、網戸枠とネット枠の隅角部の接合力を弱める方向で調整している、
ことを特徴とする網戸。
【請求項2】
上記網戸枠における枠材の平面部に、弾性シートを介して第1の面ファスナー片を積層し、上記固定用突条の屈曲により、上記第1の面ファスナー片と共に上記弾性シート側端を挟着することによって、該第1の面ファスナー片の固定を行っている、
ことを特徴とする請求項1に記載の網戸。
【請求項3】
上記網戸枠における枠材の平面部に対して第1の面ファスナー片の固定を行う上記固定用突条を、その先端部に沿って、固定すべき面ファスナー片の表面に食い込む圧接突縁を備えたものとしている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の網戸。
【請求項4】
網戸枠の上下の枠材間の中間部を横方向に仕切る中桟を一対の縦の枠材間に架設し、
該中桟は、それにより仕切られる網戸枠内の上下の仕切領域に面する側に、それぞれ、上記網戸枠の枠材に設けた第1の面ファスナー取付用の平面部に対応する中桟平面部を設けると共に、該中桟平面部における面ファスナー片の取付位置の両側に沿ってそれぞれ第1の面ファスナー片の固定用突条を突設してなり、
該中桟により仕切られた上下のそれぞれの仕切領域に、それぞれ、上記枠付きネットを独立に取り付け可能に形成している、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の網戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物開口部に防虫等の目的で取り付けるネットを、屋内側から容易に着脱可能にした網戸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、中高層の集合住宅等に設置される防虫網戸の落下防止やメンテナンスの容易化のために、該防虫網戸を建物開口部枠に固定的に設置して、ネットを網戸枠に屋内側から洗浄や交換のために容易に着脱可能にすることが求められ、それを簡易に行える手段も種々提案されているので、一般的な住宅に用いられている網戸のように、網戸枠の屋外側面にネットの固定を行うものについても、該網戸枠の屋内側からの簡易な作業でネットの着脱や交換を行えるようにすることが望まれている。
【0003】
但し、防虫網戸のネットは、家屋内への虫の侵入を防止するものであるために、それを建物開口部の最外側に設けて、その屋内側に障子を設けることにより、障子の開閉操作時にも屋内への虫の侵入を防止し、しかも、該ネットの着脱や交換は障子を開放した状態で簡易且つ速やかに行う必要があるものである。そして、このような要求に対応できるネットの取付手段としては、一般に多用されている面ファスナーが、着脱操作の簡便性や操作性において極めて望ましいが、それを用いる場合にも以下に述べるような問題がある。
【0004】
まず、網戸において、ネットを網戸枠に屋内側から取り外しや取り付け可能にするために、網戸枠に対してネットを屋内側から面ファスナーで着脱可能にしたものは、既に特許文献1等において提案されている。この種の既提案のものは、網戸枠の内側に一方の係着部材(面接着テープや面ファスナーなど)が接着剤で取り付けられ、防虫網の周辺部に取り付けた他方の係着部材を、上記網戸枠の一方の係着部材に着脱自在に係着可能にしたものである。
【0005】
しかしながら、一般にアルミニウム系形材で形成されているところの耐久性がある網戸枠は、建物の直射日光に曝される部位に設置され、盛夏においては、人体がそれに接触したときに火傷する程度の高温になり、また、厳冬期には極度の低温下に置かれ、更に、豪雨時にはネットの目を通して該ネットの固定部が雨水にも晒されるという過酷な環境に置かれるものである。そのため、該網戸枠の屋内面側に面ファスナーを両面接着テープやその他の接着剤で直接的に取り付けている場合には、当該接着剤における接着力の上記環境での耐久性を長期にわたって維持できるか否かと言う点で問題がある。
【0006】
しかも、網戸枠における接着剤の劣化に伴う損傷等でその補修を行う場合には、ネット自体の汚れや損傷に伴う交換とは異なり、建物の外装等の修理を伴う可能性があるだけでなく、比較的広範囲の補修になるため、網戸の使用者に大きな経済的な負担を掛ける可能性があり、面ファスナーを用いてネットの交換や洗浄を簡易に行うことを可能にするに当たっては、可及的に網戸枠側に損傷が生じないようにすることが望まれる。
【0007】
また、上記接着剤の耐久性の問題とは別に、金属等の剛性ある網戸枠の屋内側の全周に一方の面ファスナー片を取り付け、ネットの周辺部に補強用のネット枠を介して他方の面ファスナー片を取り付けて、洗浄や網戸枠への着脱の容易化を図るための可撓性を持たせた枠付きネットを、上記網戸枠の面ファスナー片に着脱自在に取り付ける場合に、強い風等による枠付きネットの飛散を避けるためには、接合力において勝れた面ファスナーを用いて、枠付きネットの周辺はできるだけ強力に網戸枠に固定することが望まれる。
【0008】
しかしながら、そのような接合強度を持つ面ファスナーを用いた場合、枠付きネットの周辺部分にはそれを網戸枠の面ファスナー片から離脱させるための把持部分が必要であって、それを設けないで、ネット周辺部を、そこに固定した補強用のネット枠と共に、面ファスナーの離脱のための把持部分として使用すると、現実的には網戸枠からの枠付きネットの取り外し操作が容易でないばかりでなく、ネット周辺部に固定した補強用のネット枠の損傷が頻発する可能性がある。そのため、上記網戸においては、網戸枠に面ファスナーで取り付けた枠付きネットを該網戸枠から簡単且つ容易に離脱させるための構成を付設しておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭62−101998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の技術的課題は、建物開口部の障子よりも屋外側に設置される網戸枠に屋内側からネットを簡単且つ容易に着脱可能にするために、着脱操作の簡便性や操作性において望ましい面ファスナーを用いるに当たり、上記網戸枠が一般的に劣悪な環境に置かれることから、その環境に耐える手段により網戸枠に対して面ファスナーを固定するようにした網戸を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の技術的課題は、網戸枠に枠付きネットを上記面ファスナー片で着脱自在に取り付ける場合には、強い風等による枠付きネットの飛散を避けるために、接合力において勝れた面ファスナーを用いる必要があるが、そのような面ファスナーを用いた場合には、網戸枠からネットを簡単且つ容易に取り外すことが困難になることから、網戸枠に取り付けた枠付きネットを該網戸枠から簡単且つ容易に離脱させる構成を付設し、枠付きネットの離脱に必要な力を小さくできるようにした網戸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明によれば、枠材が方形に枠組みされて建物開口部の障子よりも屋外側に設置される金属製網戸枠を備え、該網戸枠における四周の枠材の屋内側に面ファスナー取付用の平面部を形成して、該平面部に一対の面ファスナーの一方である第1の面ファスナー片を固定し、一方、上記網戸枠の平面部に上記面ファスナーを介して取り付けるネットは、その四周に、可撓性を有する板材の連結により形成したネット枠を固定すると共に、上記網戸枠に固定された第1の面ファスナー片に接合させる第2の面ファスナー片を、上記ネット枠に上記ネットと共に固定することにより枠付きネットとし、該枠付きネットを、上記網戸枠に対して上記第1及び第2の面ファスナー片の接合によって取り付けるようにした網戸において、上記網戸枠における枠材の平面部に対する第1の面ファスナー片の固定を、該平面部における第1の面ファスナー片の取付位置の両側に沿って突設している固定用突条の内側への屈曲による該面ファスナー片の側端の挟着によって
行い、上記ネット枠を構成する四周の板材の両端を接合するコーナー連結部材を、隅角部において互いに接合する板材端部に対してそれぞれ重なるところの互いに直交する板材連結部と、該板材連結部の内角側に張り出す把持部とを備えたものとし、該板材連結部をそれぞれ直交する板材端部に接合すると共に、該把持部を、上記板材連結部が交差する隅部から内側のネット上に該ネットから離間した状態で張り出すことにより、該把持部とその下のネットとの間に、ネット枠の把持のための指掛け間隙を形成し、網戸枠及び/又は枠付きネットの隅角部における第1及び第2の面ファスナー片の相互を接合させる係合子の一部を無機能化することにより、網戸枠とネット枠の隅角部の接合力を弱める方向で調整していることを特徴とする網戸が提供される。
【0013】
網戸枠に対してネット枠を接合している第1及び第2の面ファスナー片を離脱させる場合に、面ファスナーの分布密度が集中的に高い枠付きネットの隅角部分を一挙に離脱させることは、比較的大きな力を必要とすることから何らかの離脱補助部片を備えなければ困難である。また、テープ状の面ファスナー片を離脱させる場合には、該面ファスナーの一端の微小部分の接合を外した後に、その端部から離れる方向に次第に外していくのが、常に微小部分の離脱を連続的に行うことになるために離脱が容易であり、これに対し、テープ状の面ファスナー片の中間部分から離脱を開始するのは、最初に一気に離脱させる面積が大きくなるので比較的困難であるという特性がある。
【0014】
このような観点からすれば、上記枠付きネットの取り外しのための上記把持部とネットとの間に、ネット枠の把持のための指掛け間隙を形成しておくことは、枠付きネットの隅角部における面ファスナーの分布密度が高いことから適切とは言えないが、逆に、網戸枠と枠付きネットの隅角部における第1及び第2の面ファスナー片の係合子の一部を切除するなどにより、該係合子の一部を無機能化して、網戸枠とネット枠の隅角部の接合力を弱める方向で調整すると、上記把持部の下の指掛け間隙に挿入した指の上動操作によって、網戸枠とネット枠の隅角部の接合力を弱めた部分に非常に近い部位において、枠付きネットを網戸枠の隅角部から離脱させることができて、面ファスナーの離脱の開始が容易になり、しかも、網戸枠に対する枠付きネット自体の全体的な接合強度は高い状態に維持することが可能になる。
【0015】
本発明に係る上記網戸の好ましい実施形態においては、上記網戸枠における枠材の平面部に、弾性シートを介して第1の面ファスナー片を積層し、上記固定用突条の屈曲により、上記第1の面ファスナー片と共に上記弾性シート側端を挟着することによって、該第1の面ファスナー片の固定を行い、更に、必要があれば、上記第1の面ファスナー片の固定を行う上記固定用突条を、その先端部に沿って、固定すべき面ファスナー片の表面に食い込む圧接突縁を備えたものとして構成することもできる。
【0016】
上述のように、網戸枠における枠材の平面部に対する第1の面ファスナー片の固定を、該面ファスナー片の両側に沿って突設した固定用突条の屈曲による該面ファスナー片の側端の直接的な挟着によって機械的に行うと、網戸枠への面ファスナー片の固定を接着剤等の接合力に依存する場合のように、過酷な自然環境に置かれる金属製網戸枠からの長期にわたる加熱冷却の作用が面ファスナー片の接着剤に直接的に伝達されて、該接着剤の保持力に影響を与えるような可能性がなく、網戸枠に対する面ファスナー片の接合力に耐久性が付与されることになり、枠付きネットの洗浄や交換による網戸の長期有効利用が可能になる。
【0018】
また、本発明に係る網戸の他の好ましい実施形態においては、網戸枠の上下の枠材間の中間部を横方向に仕切る中桟を一対の縦の枠材間に架設し、該中桟は、それにより仕切られる網戸枠内の上下の仕切領域に面する側に、それぞれ、上記網戸枠の枠材に設けた第1の面ファスナー取付用の平面部に対応する中桟平面部を設けると共に、該中桟平面部における面ファスナー片の取付位置の両側に沿ってそれぞれ第1の面ファスナー片の固定用突条を突設してなり、該中桟により仕切られた上下のそれぞれの仕切領域に、それぞれ、上記枠付きネットを独立に取り付け可能に形成される。
【0019】
上記中桟を備えた網戸は、本発明に係る網戸が基本的にはネットの取り外しによる洗浄や交換を容易にするものであることから、枠付きネットそのものを小型化して洗浄や交換の操作性をより一層改善し、或いは、網戸枠内における上下方向の部位によって、ネットの機能の選択を可能にするためにも有効なものである。
【発明の効果】
【0020】
以上に詳述した本発明の網戸によれば、網戸枠に対する屋内側からのネットの着脱に、その操作の簡便性や操作性において望ましい面ファスナーを用いるに当たり、網戸枠が一般的に劣悪な環境に置かれることから、それに対する面ファスナー片の固定を、網戸枠に突設している固定用突条の屈曲による面ファスナー片の側端の挟着により行うようにしているので、長期にわたり、その環境に耐えて網戸枠に対し面ファスナーを安定的に固定することができる。
【0021】
また、網戸枠に枠付きネットを上記面ファスナー片で着脱自在に取り付ける場合には、強い風等による枠付きネットの飛散を避けるために、接合力において勝れた面ファスナーを用いる必要があるが、そのような面ファスナーを用いた場合にも、上記本発明の構成によれば、網戸枠に取り付けた枠付きネットを該網戸枠から簡単且つ容易に離脱させることができ、しかしながら、上記強い風等による枠付きネットの飛散を避けるための接合力を持たせることを可能にした網戸を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る網戸の実施例における網戸枠の構成を、一部を分解して示す斜視図である。
【
図2】(a)は、上記実施例における網戸枠の縦の枠材の断面図、(b)は、同横の枠材の断面図である。
【
図3】(a)は、上記実施例における網戸枠の枠材2又は3に第1の面ファスナー片を直接的に取り付けた状態を示す拡大断面図、(b)は、同枠材2又は3に対して、弾性シートを介して第1の面ファスナー片を積層して取り付けた状態を示す拡大断面図である。
【
図4】上記網戸枠に取り付ける枠付きネットの構成を示す分解斜視図である。
【
図5】上記枠付きネットにおけるネット枠の隅角部に設ける係合子除去部についての説明図である。
【
図6】本発明に係る網戸の組み上げ状態を室内側から見た斜視図である。
【
図7】本発明に係る網戸において左右の縦の枠材間に中桟を取り付ける状態を示す一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面は、本発明に係る網戸の実施例を示すもので、この網戸においては、
図1に例示するように、四周の枠材が方形に枠組みされて建物開口部の障子よりも屋外側に設置される金属製網戸枠1が用いられる。上記網戸枠1は、各一対の縦及び横の枠材2,3における各両端の連結により構成され、建物の躯体に固定的に取り付けることもできるが、該躯体に設けたサッシ等における開閉自在の障子の屋外側に設けられたレールに沿って開閉自在なものとして設置することもできる。なお、
図1の網戸枠1は、その左手前側に建物開口部の障子が存在し、右前方側を建物の屋外側に向けて設置するものとして描いている。
【0024】
図1、
図2及び
図6を参照して、上記縦横の枠材2,3により方形に枠組みされる網戸枠1の構成について説明するに、該網戸枠1は、汎用の耐久性あるアルミニウム系その他の金属製の押出し形材で形成され、該網戸枠1の縦横の枠材2,3は、
図2の(a)及び(b)において明瞭に示すように、それらの枠材の本体部4,5と、該本体部からそれらの枠組み時の内側に向けて延出して、その屋内面側に面ファスナー取付用の平面部6a,7aを形成したネット取付用の延出部6,7とを備えている。なお、上記枠材2,3の本体部4,5と延出部6,7とは一体に形成されているので、該本体部4,5と延出部6,7とが明確に区分されたものとして備えられたものではない。
【0025】
上記縦横の枠材2,3の両端部を連結するコーナー部においては、
図1からわかるように、縦の枠材2の上下両端部における本体部4及び延出部6の各一部を切除することにより本体部4内に形成した嵌入溝2aに対して、横の枠材3の端部3aを嵌入し、横の枠材3内に形成しているビスポケット3bに対して、縦の枠材2の内壁2bに設けたビス孔を通してビスを螺挿するなどの手段で、縦横の枠材2,3を各コーナー部において連結することにより、網戸枠1を方形に枠組みするものである。
【0026】
一方、上記縦横の枠材2,3の各延出部6,7に設けた平面部6a,7aは、枠材2,3に対して
図4に示すような防虫用のネット14を着脱自在に張設するためのもので、
図2及び
図3に示すように、一対の面ファスナーの一方である第1の面ファスナー片10aを取り付ける取付位置の両側に沿って、該面ファスナー片10aを固定するための固定用突条8を、互いに内向きに屈曲させてそれぞれ突設している。この固定用突条8による面ファスナー片10aの固定は、
図3の(a)に示すように、上記一対の固定用突条8の間の平面部6a,7a上に面ファスナー片10aを配置した状態で、該固定用突条8の先端部を押圧ローラ等の工具により内側に屈曲させ、該面ファスナー片10aの両側端を上記平面部6a,7aとの間に挟着させることにより行うものである。
【0027】
上記固定用突条8を屈曲させて、第1の面ファスナー片10aの両側端を平面部6a,7aとの間に挟着する場合に、該固定用突条8による面ファスナー片10aの両側端の固定を一層強固に行うには、
図2及び
図3に示しているように、上記固定用突条8を、その先端部に沿って、固定すべき面ファスナー片10aの表面に食い込むように隆起させた圧接突縁8aを付設したものとすればよい。また、必要に応じて、上記固定用突条8を屈曲させたときに、その圧接突縁8aが第1の面ファスナー片10aに食い込む部位に対向する平面部6a,7aに、該圧接突縁8aの食い込みにより凹状に変形する該面ファスナー片10aの変形部位を受け入れる凹条9を設けて、固定用突条8による面ファスナー片10aの固定部位の保持力を高めることもできる。
【0028】
更に、上記網戸枠1における枠材2,3の平面部6a,7aには、
図3の(b)に示すように、耐候性・耐熱性の塩化ビニール等の弾性シート12を介し、それに上記第1の面ファスナー片10aを積層したうえで、
図3の(a)を参照して上述した場合と同様に、上記固定用突条8の屈曲により、第1の面ファスナー片10aと共に上記弾性シート12の側端を上記平面部6a,7aとの間に挟着し、それによって、該第1の面ファスナー片10aの固定を行うこともできる。この場合には、弾性シート12が断熱性を有するものとすることにより、それと面ファスナー片10aとの間に接着剤を用いても、それに対する枠材2,3からの熱伝導が制限されるので、接着剤に対する熱伝導の影響を緩和することができる。
【0029】
上述のようにして縦横の枠材2,3の各延出部6,7における平面部6a,7aに取り付けた第1の面ファスナー片10aは、網戸枠1に防虫用のネット14を張設するための
図4及び
図6に示すような枠付きネット13を、上記第1の面ファスナー片10aと対をなす第2の面ファスナー片10bによって取り付けるためのものである。
【0030】
なお、上記面ファスナーは、一般的に、相互に接合させ得る多数のフック状とパイル状の係合子11を密に植設したものとして構成されているが、上記第1及び第2の面ファスナー片10a,10bとしては、それらの何れを選択してもよい。しかしながら、例えば網戸枠1の枠材2,3に取り付ける第1の面ファスナー片10aとしては、前述の過酷な環境に耐え、また、ネット14の隙間を通して砂埃が係合子の間に入り易いことから、それらに耐える素材であることが望ましく、また、第2の面ファスナー10bとしては、枠付きネット13として、洗浄、洗濯に耐えるものであることが望まれる。
【0031】
上記枠付きネット13の構成について具体的に説明すると、該枠付きネット13は、
図4に示すように、上記網戸枠1の平面部6a,7aに取り付ける防虫用のネット14の四周に、可撓性を有する合成樹脂製の板材16の連結により形成した方形のネット枠15を固定すると共に、上記網戸枠1に固定された第1の面ファスナー片10aに接合させる第2の面ファスナー片10bを、該ネット枠15に上記ネット14を介して両面接着テープ等の接着剤17で固定することにより形成したものである。
【0032】
また、該枠付きネット13においてネット14の四周に取り付けるネット枠15は、網戸枠1に対する枠付きネット13の着脱操作ついての簡便性や操作性に優れ、しかも、ネット14と一体化された状態での洗浄、洗濯に耐える可撓性を持った板材16の強固な連結により形成したものである必要があり、そのため、ネット枠15の四周の板材16の両端を相互に接合するコーナー連結部材18を、上記ネット枠15の隅角部において互いに接合する板材16の端部に対してそれぞれ重なるところの、互いに直交する板材連結部18aと、該両板材連結部18aの内角側に張り出す把持部18bとを備えたものとし、該板材連結部18aをそれぞれ直交する板材16の端部に接着や溶着等で接合するようにしている。
【0033】
しかも、上記板材16の両端は、コーナー連結部材18による連結と同時に、
図6からわかるように、該コーナー連結部材18の把持部18bを、上記板材連結部18aが交差する隅角部から内側のネット14上に、該ネット14から離間した状態で張り出すことにより、該把持部18bとその下のネット14との間に、ネット枠15の把持のための指掛け間隙19を形成させている。
【0034】
上記コーナー連結部材18の把持部18bの下に形成した指掛け間隙19は、それに指を掛けて枠付きネット13を引き出しても、面ファスナーの分布密度が集中的に高い枠付きネット13の隅角部を一挙に離脱させることには困難性があり、しかしながら、面ファスナーの離脱を容易にするためにその接合強度を全体的に低下させると、強い風等による枠付きネット13の飛散の可能性が増大するため、この枠付きネット13においては、
図5に示すように、枠付きネット13の各隅角部において、第1及び第2の面ファスナー片10a,10bの相互を接合させる係合子11の一部を無機能化するところの係合子除去部10cを形成させて、網戸枠1と枠付きネット13の隅角部の接合力を弱める方向で調整する手段を採用し、上記隅角部における面ファスナー片10a,10bの相互の離脱を容易にしながら、網戸枠1に対する枠付きネット13の接合強度の低下を抑止できるように構成している。
【0035】
上記網戸枠1と枠付きネット13の隅角部における第1及び第2の面ファスナー片10a,10bの係合子11の無機能化とは、該面ファスナー片の係合子11の一部を切除するとか、一部の係合子11の加熱により係合機能を消失させるとか、ネット枠15を構成する板材16の両端をコーナー連結部材18で接合する際に、面ファスナー片の隅角部に位置する部分に、上記板材16とコーナー連結部材18とを連結する鳩目状或いはリベット状の部材などにより、該隅角部の面ファスナー片の係合子11を押さえ込んでその接合力を消失させるなどの手段を用い、面ファスナー片10a,10bの接合機能を抑制することを意味し、この係合子11の無機能化は、少なくとも第1及び第2の面ファスナーのうちの一方の係合子について行えばよい。面ファスナーの接合力の調整は、面ファスナー片の隅角部にどの程度の大きさの係合子除去部10cを形成するかによって行うことができる。
【0036】
特に、上述したように、コーナー連結部材18の把持部18bの下に指掛け間隙19を設けて枠付きネット13の隅角部の持ち上げを容易にすると同時に、該枠付きネット13の隅角部における面ファスナーの一部の係合子11を無機能化して、上記把持部18bよりも更に隅角部側における面ファスナーの接合力を低下させると、枠付きネット13の取り外しのために指掛け間隙19へ挿入した指先の操作により把持部18bを上動させたときに、枠付きネット13の隅角部側が網戸枠1に対して浮上し易くなり、そのため、上記把持部18bとは別に枠付きネット13の隅角部先端を持ち上げるように操作すると、枠付きネット13は網戸枠1から容易に離脱させることが可能になる。しかも、枠付きネット13におけるネット枠15に取り付けた第1及び第2の面ファスナー片10a,10bは、上記把持部18bの操作以外では簡単に離脱させることができず、網戸枠1に対して安定的に保持させることができる。
【0037】
以上に詳述したように、前記網戸枠1における枠材2,3に取り付けた第1の面ファスナー10aに対して、
図4を参照して説明した枠付きネット13を、それに取り付けた第2の面ファスナー10bを、屋内側からの接合によって取り付けると、
図6に示すような網戸を得ることができる。
【0038】
また、本発明に係る網戸は、
図7に要部を示すように、網戸枠1の上下の横の枠材3間の中間部に、該網戸枠1内を上下に横方向に仕切る中桟21を、一対の縦の枠材2間に架設したものとして構成することもできる。該中桟21は、それにより仕切られる網戸枠1内の上下の仕切領域24に面する側に、それぞれ上記網戸枠1の屋内側に設けた第1の面ファスナー取付用の平面部7aに対応する中桟平面部23aを設けると共に、該中桟平面部23aにおける面ファスナー片の取付位置の両側に沿ってそれぞれ第1の面ファスナー片10aの固定用突条8を突設してなり、該中桟21により仕切られた上下のそれぞれの仕切領域24に、それぞれ枠付きネット13を独立に取り付け可能に形成したものである。上記中桟21を備えた網戸における該中桟21に関連する部分の構成以外は、
図1〜
図5に示した実施例と何ら変わるところはなく、枠付きネット13も、そのサイズを上記中桟21により仕切られた仕切領域24に合わせて使用できるものである。
【0039】
上記中桟21を備えた網戸は、本発明に係る上記網戸がネット14の取り外しによる洗浄や交換を容易にするものであることから、枠付きネット13そのものを小型化して洗浄や交換の操作性をより一層改善し、或いは、網戸の上半部に外部の透視性がよいネット14を張設すると共に、網戸の下半部に室内透視が困難なネット14、或いは装飾性に富んだ絵模様などを付した目隠し兼用のネット14、更には、幼児やペットの猫による損傷を受けにくい高強度のネット14を張設したりするなど、網戸枠1内における上下方向の部位によって、ネットの機能の選択を可能にするためにも有効なものである。
【符号の説明】
【0040】
1 網戸枠
2,3 枠材
6a,7a 平面部
8 固定用突条
10a 第1の面ファスナー片
10b 第2の面ファスナー片
13 枠付きネット
14 ネット
15 ネット枠
16 板材