(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の詳細を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0010】
<高分子化合物1>
本発明の一態様である高分子化合物(以下、「本発明の高分子化合物1」と略す場合がある。)は、下記式(A−1)〜(A−4)、及び(B−1)〜(B−3)で表される繰り返し構造から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【化5】
(式(A−1)〜(A−4)、及び(B−1)〜(B−3)中、R
1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の炭化水素基を、R
2はそれぞれ独立してハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、R
3は単結合、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を、R
4は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の3価の炭化水素基を、R
aはそれぞれ独立して単結合、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を、R
bはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜6の炭化水素基を、mはそれぞれ独立して0〜3の整数を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
2の炭化水素基はR
1の炭化水素基及び/又はR
2のその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよい。また、R
bが炭化水素基である場合、R
bの炭化水素基はR
aの炭化水素基及び/又はR
bのその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよい。)
本発明者らは、特定のメタロセン錯体(詳細については後述する。)を利用することにより、アルコキシアレーン類やピリジン類の環上の炭素−水素結合(C−H結合)を活性化して、アルケン類への付加反応を進行させることができることを明らかとしている。そして、アルケン類として炭素−炭素二重結合を2つ有するジエン類を使用することにより、重付加反応が進行して、高分子化合物を効率良く製造できることを見出したのである。なお、下記式は「アルコキシアレーン類」として「1,4−ジメトキシベンゼン」を、「ジエン類」として「1,4−ジビニルベンゼン」を使用した場合の反応機構を表した式である(下記式において1,4−ジメトキシベンゼンは、2位で1,4−ジビニルベンゼンに付加しているが、置換基等によってアルコキシアレーン類の付加する位置を制御できるため、本発明の高分子化合物は2位で結合したものに限定されるものではない。)。
【化6】
また、2位(o位)にメチル基(−CH
3)を有するアルコキシアレーン類やピリジン類を使用した場合、メチル基の炭素−水素結合が活性化されて、メチル基の位置でアルケン類への付加反応が進行することも本発明者らは明らかとしている。下記式は、「ピリジン類」として「2,6−ルチジン」を、「ジエン類」として「2,5−ノルボルナジエン」を使用した場合の反応機構を表した式である。
【化7】
即ち、炭素−炭素結合(C−C結合)が形成する重付加反応によって、アルコキシアレーン類やピリジン類に由来する芳香族環とジエン類に由来する脂肪族鎖を主鎖に有する有用な高分子化合物を簡便に製造できるのである。
なお、式(A−4)は、3次元的に重合が進んだことにより形成した繰り返し構造を表しており、式(A−4)中の「・・・」は、その先がアルコキシアレーン類由来の構造とジエン類由来の構造を繰り返す構造であることを意味する。
【化8】
以下、「式(A−1)〜(A−4)、及び(B−1)〜(B−3)で表される繰り返し構造」等について詳細に説明する。
【0011】
R
1はそれぞれ独立して「炭素数1〜6の炭化水素基」を表しているが、「炭化水素基」は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。
R
1の炭化水素基の炭素数は、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。
R
1としては、メチル基(−CH
3)、エチル基(−C
2H
5)、n−プロピル基(−
nC
3H
7)、i−プロピル基(−
iC
3H
7)、n−ブチル基(−
nC
4H
9)、t−ブチル基(−
tC
4H
9)、フェニル基(−C
6H
5)等が挙げられる。
【0012】
R
2はそれぞれ独立して「ハロゲン原子」、又は「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基」を表しているが、「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」とは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む連結基を炭素骨格の内部又は末端に含んでいてもよいことを意味するものとする。なお、「炭化水素基」は、前述のものと同義である。従って、「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」炭化水素基には、例えば−CH
2−O−CH
3のようなエーテル基を炭素骨格の内部に含む炭素数2の炭化水素基、及び−O−CH
2−CH
3のようなエーテル基を炭素骨格の末端に含む炭素数2の炭化水素基等が含まれる。
R
2が炭化水素基である場合、R
2の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは14以下である。
R
2が炭化水素基である場合、R
2に含まれる官能基や連結基としては、アミド基(−NHCO−)、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、ヨード基(−I)、ジメチルアミノ基(−N(CH
3)
2)等が挙げられる。
R
2としては、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、ヨード基(−I)、メチル基(−CH
3)、エチル基(−C
2H
5)、n−プロピル基(−
nC
3H
7)、i−プロピル基(−
iC
3H
7)、n−ブチル基(−
nC
4H
9)、t−ブチル基(−
tC
4H
9)、フェニル基(−C
6H
5)、ナフチル基(−C
10H
7)、メトキシフェニル基(−C
6H
4OCH
3)、ピリジル基(−C
5H
4N)、メトキシ基(−OCH
3)、エトキシ基(−OC
2H
5)、フェノキシ基(−OC
6H
5)、メトキシフェノキシ基(−OC
6H
4OCH
3)等が挙げられる。なお、下記式は、メトキシフェニル基、ピリジル基、メトキシフェノキシ基である。
【化9】
R
2が炭化水素基である場合、R
2の炭化水素基はR
1の炭化水素基及び/又はR
2のその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよいが、環状構造を形成している状態としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化10】
なお、R
2の炭化水素基がR
1の炭化水素基及び/又はR
2のその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成している場合の炭化水素基の炭素数は、総炭素数が20以下であると考えるものとする。
【0013】
R
3は「単結合」、又は「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基」を表しているが、「2価の炭化水素基」とは、2つの結合部位を有する炭化水素基であることを意味し、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。なお、「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」は、前述のものと同義である。また、R
3が単結合である状態としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化11】
R
3が炭化水素基である場合、R
3の炭化水素基の炭素数は、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは14以下、特に好ましくは8以下である。
R
3が炭化水素基である場合、R
3に含まれる官能基や連結基としては、アミド基(−NH−)、アミド基(−NHCO−)、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、エステル結合(−COOC
nH
2n−)、チオエーテル基(−S−)、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、ヨード基(−I)、ジメチルアミノ基(−N(CH
3)
2)等が挙げられる。なお、高分子化合物の化学的安定性の観点から、R
3は主鎖としてヘテロ原子を含まないことが好ましく、より具体的には、アミド基(−NHCO−)、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)を含まないことが好ましい。「主鎖」の詳細については、後述するものとする。
R
3としては、単結合、メチレン基(−CH
2−)、エチレン基(−C
2H
4−)、n−プロピレン基(−C
3H
6−)、i−プロピレン基(−CH(CH
3)CH
2−)、フェニレン基(−C
6H
4−)等が挙げられる。
【0014】
R
4は「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の3価の炭化水素基」を表しているが、「3価の炭化水素基」とは、3つの結合部位を有する炭化水素基であることを意味し、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。なお、「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」は、前述のものと同義である。
R
4の炭化水素基の炭素数は、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは14以下、特に好ましくは8以下である。
R
4としては、メチン基(>CH−)、メチルメチン基(>C(CH
3)−)、下記式で表されるもの等が挙げられる。
【化12】
【0015】
R
aはそれぞれ独立して「単結合」、又は「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基」を表しているが、「2価の炭化水素基」と「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」は、前述のものと同義である。また、R
aが単結合である状態としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化13】
R
aが炭化水素基である場合、R
aの炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは14以下である。
R
aが炭化水素基である場合、R
aに含まれる官能基や連結基としては、アミド基(−NHCO−)、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、ヨード基(−I)、ジメチルアミノ基(−N(CH
3)
2)等が挙げられる。なお、高分子化合物の化学的安定性の観点から、R
aは主鎖としてヘテロ原子を含まないことが好ましく、より具体的には、アミド基(−NHCO−)、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)を含まないことが好ましい。「主鎖」の詳細については、後述するものとする。
R
aとしては、単結合、メチレン基(−CH
2−)、エチレン基(−C
2H
4−)、n−プロピレン基(−C
3H
6−)、i−プロピレン基(−CH(CH
3)CH
2−)、フェニレン基(−C
6H
4−)、ナフチレン基(−C
10H
6−)、ジフェニレン基(−C
6H
4C
6H
4−)等が挙げられる。
【0016】
R
bはそれぞれ独立して「水素原子」、又は「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜6の炭化水素基」を表しているが、「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」は、前述のものと同義である。
R
bが炭化水素基である場合、R
bに含まれる官能基や連結基としては、アミド基(−NHCO−)、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、ヨード基(−I)、ジメチルアミノ基(−N(CH
3)
2)等が挙げられる。
R
bとしては、水素原子、メチル基(−CH
3)、エチル基(−C
2H
5)、n−プロピル基(−
nC
3H
7)、i−プロピル基(−
iC
3H
7)、n−ブチル基(−
nC
4H
9)、t−ブチル基(−
tC
4H
9)等が挙げられる。
R
bが炭化水素基である場合、R
bの炭化水素基はR
aの炭化水素基及び/又はR
bのその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよいが、R
bの炭化水素基がR
aの炭化水素基及び/又はR
bのその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成している状態としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化14】
なお、R
bの炭化水素基がR
aの炭化水素基及び/又はR
bのその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよい場合の炭化水素基の炭素数は、R
aとR
bの炭化水素基の炭素数の合計が20以下であると考えるものとする。
【0017】
mはそれぞれ独立して0〜3の整数を表しているが、好ましくは2以下、より好ましくは1以下である。
【0018】
式(A−1)で表される繰り返し構造としては、下記式(A−1−1)〜(A−1−6)の何れかで表されるものが挙げられる。
【化15】
(式(A−1−1)〜(A−1−6)中、R
1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の炭化水素基を表す。)
【0019】
式(A−2)で表される繰り返し構造としては、下記式(A−2−1)〜(A−2−9)の何れかで表されるものが挙げられる。
【化16】
(式(A−2−1)〜(A−2−9)中、R
1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の炭化水素基を表す。)
【0020】
式(A−3)で表される繰り返し構造としては、下記式(A−3−1)〜(A−3−3)の何れかで表されるものが挙げられる。
【化17】
(式(A−3−1)〜(A−3−3)中、R
1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の炭化水素基を表す。)
【0021】
式(A−4)で表される繰り返し構造としては、下記式(A−4−1)〜(A−4−2)で表されるものが挙げられる。
【化18】
(式(A−4−1)〜(A−4−2)中、R
1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の炭化水素基を表す。)
【0022】
式(B−1)で表される繰り返し構造としては、下記式(B−1−1)〜(B−1−27)の何れかで表されるものが挙げられる。
【化19】
(式(B−1−1)〜(B−1−9)中、Xはハロゲン原子を表す。)
【0023】
式(B−2)で表される繰り返し構造としては、下記式(B−2−1)〜(B−2−9)の何れかで表されるものが挙げられる。
【化20】
(式(B−2−1)〜(B−2−9)中、Xはハロゲン原子を表す。)
【0024】
式(B−3)で表される繰り返し構造としては、下記式(B−3−1)〜(B−3−3)の何れかで表されるものが挙げられる。
【化21】
【0025】
<高分子化合物2>
本発明の別の一態様である高分子化合物(以下、「本発明の高分子化合物2」と略す場合がある。)は、下記式(E)及び(F)で表される繰り返し構造から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【化22】
(式(E)及び(F)中、R
1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の炭化水素基を、R
2はそれぞれ独立してハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、R
aはそれぞれ独立して単結合、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を、R
bはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜6の炭化水素基を、mはそれぞれ独立して0〜3の整数を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
2の炭化水素基はR
1の炭化水素基及び/又はR
2のその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよい。また、R
bが炭化水素基である場合、R
bの炭化水素基はR
aの炭化水素基及び/又はR
bのその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよい。)
本発明者らは、アルコキシアレーン構造及び/又はピリジン構造と脂肪族炭素−炭素二重結合の両方を有する化合物を使用することにより、単独で重付加反応が進行し、高分子化合物を効率良く製造できることも見出したのである。なお、下記式は「アルコキシアレーン構造及び/又はピリジン構造と脂肪族炭素−炭素二重結合の両方を有する化合物」として「4−アリルアニソール」を使用した場合の反応機構を表した式である。
【化23】
なお、「式(E)及び(F)で表される繰り返し構造」のR
1、R
2、R
a、R
b、mは、前述のものと同様である。
【0026】
式(E)で表される繰り返し構造としては、下記式(E−1)〜(E−4)の何れかで表されるものが挙げられる。
【化24】
(式(E−1)〜(E−4)中、R
1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の炭化水素基を表す。)
【0027】
式(F)で表される繰り返し構造としては、下記式(F−1)〜(F−4)の何れかで表されるものが挙げられる。
【化25】
【0028】
本発明の高分子化合物1及び本発明の高分子化合物2は、主鎖にアルコキシアレーン構造のアルコキシ基の酸素原子及びピリジン構造の窒素原子以外のヘテロ原子を含まないことが好ましい。なお、「主鎖」とは、炭素数が最大となる高分子化合物の幹(骨格)を意味し、より具体的には結合が開裂した場合に高分子化合物の分子量が半減してしまう幹(骨格)を意味するものとする。例えば、下記式で表される繰り返し構造の場合、太線で表された幹(骨格)が「主鎖」ということになり、かかる高分子化合物は、主鎖にピリジン構造の窒素原子以外のヘテロ原子を含まないことになる。主鎖にヘテロ原子を含まないことによって、構造に由来する難点を解消することができる。
【化26】
【0029】
本発明の高分子化合物1及び本発明の高分子化合物2は、式(A−1)〜(A−3)、及び(B−1)〜(B−3)で表される繰り返し構造等以外の構造、分子量、架橋構造の有無等は特に限定されない。
以下、本発明の高分子化合物1及び本発明の高分子化合物2の分子量等について詳細に説明する。
【0030】
本発明の高分子化合物1及び本発明の高分子化合物2における式(A−1)〜(A−3)、及び(B−1)〜(B−3)で表される繰り返し構造及び式(E)及び(F)で表される繰り返し構造の含有比率(繰り返し構造を複数種類有する場合は総含有比率)は、物質量換算で、通常20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは100%である。
【0031】
本発明の高分子化合物1及び本発明の高分子化合物2の数平均分子量(M
n)は、通常500以上、好ましくは600以上、より好ましくは700以上であり、通常200,000以下、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下である。
本発明の高分子化合物1及び本発明の高分子化合物2の重量平均分子量(M
w)は、通常600以上、好ましくは700以上、より好ましくは800以上であり、通常200,000以下、好ましくは170,000以下、より好ましくは150,000以下である。
本発明の高分子化合物1及び本発明の高分子化合物2の分子量分布(M
w/M
n)は、通常1.1以上、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上であり、通常5以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下である。
上記範囲内であると、高分子化合物を様々な用途に利用し易くなる。
なお、高分子化合物1及び本発明の高分子化合物2の平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用した公知の方法で測定することができる。
【0032】
本発明の高分子化合物1及び本発明の高分子化合物2は、結晶性、非結晶性の何れであってもよいが、結晶性の高分子化合物であることが好ましい。結晶性の高分子化合物であると、様々な用途に利用し易くなる。
【0033】
本発明の高分子化合物1及び本発明の高分子化合物2の融点(T
m)は、通常10℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上であり、通常350℃以下、好ましくは330℃以下、より好ましくは300℃以下である。
本発明の高分子化合物のガラス転移点(T
g)は、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、通常350℃以下、好ましくは330℃以下、より好ましくは300℃以下である。
上記範囲内であると、高分子化合物を様々な用途に利用し易くなる。なお、高分子化合物の融点やガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を使用した公知の方法で測定することができる。
【0034】
本発明の高分子化合物1及び本発明の高分子化合物2の用途は、特に限定されず、高分子化合物の特性に応じて適宜選択することができるが、例えば絶縁材料、光学用機能性フィルム、磁気テープ、写真フィルム、包装フィルム、容器、自動車部品等が挙げられる。
【0035】
本発明の高分子化合物1及び本発明の高分子化合物2の製造方法は、特に限定されず、クロスカップリング重合等の公知の重合法を利用して製造することが挙げられるが、特定のメタロセン錯体及びイオン性化合物の存在下、アルコキシアレーン類及び/又はピリジン類とジエン類とを反応させる方法、又はアルコキシアレーン構造及び/又はピリジン構造と脂肪族炭素−炭素二重結合の両方を有する化合物を重合させる方法を利用して製造することが好ましい。なお、これらの方法については、「高分子化合物の製造方法1」及び「高分子化合物の製造方法2」において詳細に説明する。
【0036】
<高分子化合物の製造方法1>
本発明の高分子化合物1は、例えば式(D)で表されるメタロセン錯体、及び非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物の存在下、アルコキシアレーン類及び/又はピリジン類とジエン類とを反応させることにより製造することができる。「非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物」によって「式(D)で表されるメタロセン錯体」が活性なカチオン性の錯体に変化し、前述のように「アルコキシアレーン類」や「ピリジン類」の炭素−水素結合を活性化して、ジエン類と重付加反応が進行するものと考えられる。かかる反応は、ヘテロ原子を利用せずに、主鎖となる炭素−炭素結合(C−C結合)を形成できる非常に有用な反応であると言える。
なお、下記式(D)で表されるメタロセン錯体及び非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物の存在下、アルコキシアレーン類及び/又はピリジン類とジエン類とを反応させて高分子化合物を生成する重合工程(以下、「重合工程1」と略す場合がある。)を含む高分子化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法1」と略す場合がある。)も本発明の一態様である。
【化27】
(式(D)中、Mはスカンジウム原子、イットリウム原子、サマリウム原子、ガドリニウム原子、又はルテチウム原子を、Rは窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、Q
1及びQ
2はそれぞれ独立してモノアニオン配位子、又は多座配位子におけるアニオン性配位座を、Lはそれぞれ独立して中性ルイス塩基、又は多座配位子におけるルイス塩基性の中性配位座を、nは0〜5の整数を、wは0〜3の整数を表す。但し、nが2以上の整数である場合、Rの炭化水素基はRのその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよい。)
以下、「式(D)で表されるメタロセン錯体」、「非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物」、「アルコキシアレーン類」、「ピリジン類」、「ジエン類」等について詳細に説明する。
【0037】
(式(D)で表されるメタロセン錯体)
【化28】
Rの炭化水素基の炭素数は、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは14以下である。
Rに含まれる官能基や連結基としては、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、ヨード基(−I)、ホスフィノ基(−PR’
2)、アルコキシ基(−OR’)、アリールオキシ基(−OAr)、トリアルキルシリル基(−SiR’
3)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)R’
2)等が挙げられる。
Rとしては、メチル基(−CH
3)、エチル基(−C
2H
5)、n−プロピル基(−
nC
3H
7)、i−プロピル基(−
iC
3H
7)、n−ブチル基(−
nC
4H
9)、t−ブチル基(−
tC
4H
9)、フェニル基(−C
6H
5)、ナフチル基(−C
10H
7)等が挙げられる。
nが2以上の整数である場合、Rの炭化水素基はRのその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよいが、環状構造を形成している状態としては、下記式で表されるようなインデニル環、オクタヒドロフルオレニル環、フルオレニル環が挙げられる。
【化29】
メタロセン配位子としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化30】
【0038】
Q
1及びQ
2はそれぞれ独立にモノアニオン配位子、又は多座配位子におけるアニオン性の配位座を表しているが、「多座配位子におけるアニオン性の配位座」とは、Mに配位する配位子が多座配位子であり、かかる多座配位子がアニオン性の配位座Q
1のほかに、別のアニオン性の配位座Q
2や中性ルイス塩基性の配位座Lを有していることを意味する。
モノアニオン配位子としては、1)ヒドリド、2)窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、及びヒ素原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、3)アミド基、4)ホスフィノ基等が挙げられる。
アニオン性の配位座としては、メチレンアニオン(
−CH
2−)、フェニルアニオン(
−C
6H
5−)等が挙げられる。
【0039】
窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、及びヒ素原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、下記式(x)で表される基、下記式(y)で表される基が挙げられる。
η
3−C
3R
x5 (x)
(式(x)中、R”はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を表す。)
CH
2C
6R
y14ER
y2n−o (y)
(式(y)中、R
y1は、それぞれ独立に水素又はアルキル基を、EはN、P、As、O、又はSを、R
y2はそれぞれ独立してアルキル基又はアリール基を、nは1または2を表す。)
アミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、メチルエチルアミド基、ジ−t−ブチルアミド基、ジイソプロピルアミド基、ジフェニルアミド基等が挙げられる。
ホスフィノ基は、ジフェニルホスフィノ基、ジシクロヘキシルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジメチルホスフィノ基等が挙げられる。
【0040】
Lはそれぞれ独立して中性ルイス塩基、又は多座配位子における中性ルイス塩基性の配位座を表しているが、「多座配位子における中性ルイス塩基性の配位座」とは、Mに配位する配位子が多座配位子であり、かかる多座配位子が中性ルイス塩基性の配位座Lのほかに、別の中性ルイス塩基性の配位座Lやアニオン性の配位座Q
1、Q
2を有していることを意味する。
中性ルイス塩基としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム等が挙げられる。
中性ルイス塩基性の配位座としては、アミノ基が挙げられる。
【0041】
式(D)で表されるメタロセン錯体としては、下記式で表される(C
5Me
5)Sc(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2、(C
5Me
5)Y(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2ものが挙げられる。
【化31】
【0042】
式(D)で表されるメタロセン錯体としては、例えば(1)Li,X.;Nishiura,M.;Mori,K.;Mashiko,T.;Hou,Z.Chem.Commun.4137,(2007).や(2)Shima,T.;Nishiura,M.;Hou,Z.Organometallics 30,2513,(2011).に記載された方法に従って合成することができる。
【0043】
重合工程における式(D)で表されるメタロセン錯体の使用量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、アルコキシアレーン類及び/又はピリジン類1molに対して、通常0.0005mol以上、好ましくは0.001mol以上、より好ましくは0.002mol以上であり、通常0.2mol以下、好ましくは0.15mol以下、より好ましくは0.1mol以下である。上記範囲内であると、高分子化合物を収率良く製造し易くなる。
【0044】
(非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物)
「非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物」は、任意の非配位性アニオンとカチオンによって形成されるイオン性の化合物を意味し、非配位性アニオンやカチオンの具体的種類は特に限定されないことを意味する。
【0045】
非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが好ましく、テトラ(フェニル)ボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等の4価のホウ素アニオンが挙げられる。これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C
6F
5)
4]
−)が特に好ましい。
【0046】
カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。
カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオンが含まれる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンとしては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンが挙げられる。
アンモニウムカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン、ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。
ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンが挙げられる。これらの中でも、アニリニウムカチオン、カルボニウムカチオンが好ましく、トリフェニルカルボニウムカチオン([Ph
3C]
+)、ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0047】
非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1'−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。これらの中でも、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0048】
重合工程における非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物の使用量は、通常、メタロセン錯体に対して1当量用いる。
【0049】
(アルコキシアレーン類)
「アルコキシアレーン類」とは、芳香族環にアルコキシ基が結合した構造を有する有機化合物を意味し、その他の構造等については特に限定されないが、下記式(a−1)〜(a−4)の何れかで表される化合物が挙げられる。
【化32】
(式(a−1)〜(a−4)中、R
1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の炭化水素基を、R
2はそれぞれ独立してハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、R
3は単結合、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を、R
4は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の3価の炭化水素基を、mはそれぞれ独立して0〜3の整数を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
2の炭化水素基はR
1の炭化水素基及び/又はR
2のその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよい。)
なお、R
1、R
2、R
3、R
4、mの詳細については、前述のものと同様である。
アルコキシアレーン類としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化33】
【0050】
(ピリジン類)
「ピリジン類」とは、ピリジン構造を有する有機化合物を意味し、その他の構造等については特に限定されないが、下記式(b−1)〜(b−3)の何れかで表される化合物が挙げられる。
【化34】
(式(b−1)〜(b−3)中、R
2はそれぞれ独立してハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、R
3は単結合、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を、mはそれぞれ独立して0〜3の整数を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
2の炭化水素基はR
2のその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよい。)
なお、R
2、R
3、mの詳細については、前述のものと同様である。
ピリジン類としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化35】
【0051】
(ジエン類)
「ジエン類」とは、炭素−炭素二重結合を2つ有する有機化合物を意味し、その他の構造等については特に限定されないが、下記式(c)で表される化合物が挙げられる。
【化36】
(式(c)中、R
aはそれぞれ独立して単結合、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を、R
bはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜6の炭化水素基を表す。但し、R
bが炭化水素基である場合、R
bの炭化水素基はR
aの炭化水素基及び/又はR
bのその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよい。)
なお、R
a、R
bの詳細については、前述のものと同様である。
ジエン類としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化37】
【0052】
<高分子化合物の製造方法2>
本発明の高分子化合物2も、例えば式(D)で表されるメタロセン錯体、及び非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物の存在下、アルコキシアレーン構造及び/又はピリジン構造と脂肪族炭素−炭素二重結合の両方を有する化合物を重合させることによって製造することができる。
なお、下記式(D)で表されるメタロセン錯体及び非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物の存在下、アルコキシアレーン構造及び/又はピリジン構造と脂肪族炭素−炭素二重結合の両方を有する化合物を重合させて高分子化合物を生成する重合工程(以下、「重合工程2」と略す場合がある。)を含む高分子化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法2」と略す場合がある。)も本発明の一態様である。
【化38】
(式(D)中、Mはスカンジウム原子、イットリウム原子、サマリウム原子、ガドリニウム原子、又はルテチウム原子を、Rは窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、Q
1及びQ
2はそれぞれ独立してモノアニオン配位子、又は多座配位子におけるアニオン性配位座を、Lはそれぞれ独立して中性ルイス塩基、又は多座配位子におけるルイス塩基性の中性配位座を、nは0〜5の整数を、wは0〜3の整数を表す。但し、nが2以上の整数である場合、Rの炭化水素基はRのその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよい。)
なお、「式(D)で表されるメタロセン錯体」、「非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物」は、前述のものと同様である。
【0053】
(アルコキシアレーン構造及び/又はピリジン構造と脂肪族炭素−炭素二重結合の両方を有する化合物)
「アルコキシアレーン構造及び/又はピリジン構造と脂肪族炭素−炭素二重結合の両方を有する化合物」は、芳香族環にアルコキシ基が結合したアルコキシアレーン構造及び/又はピリジン構造と、脂肪族の炭素−炭素二重結合とを有するものであれば、その他の構造等については特に限定されないが、下記式(e−1)〜(f−1)の何れかで表される化合物が挙げられる。
【化39】
(式(e−1)及び(f−1)中、R
1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の炭化水素基を、R
2はそれぞれ独立してハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を、R
aはそれぞれ独立して単結合、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を、R
bはそれぞれ独立して水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜6の炭化水素基を、mはそれぞれ独立して0〜3の整数を表す。但し、R
2が炭化水素基である場合、R
2の炭化水素基はR
1の炭化水素基及び/又はR
2のその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよい。また、R
bが炭化水素基である場合、R
bの炭化水素基はR
aの炭化水素基及び/又はR
bのその他の炭化水素基と連結して環状構造を形成していてもよい。)
なお、R
1、R
2、R
a、R
b、mの詳細については、前述のものと同様である。
アルコキシアレーン構造及び/又はピリジン構造と脂肪族炭素−炭素二重結合の両方を有する化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化40】
【0054】
重合工程1におけるアルコキシアレーン類及び/又はピリジン類とジエン類の使用量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、アルコキシアレーン類及び/又はピリジン類1molに対して、通常0.8mol以上、好ましくは0.9mol以上、より好ましくは1mol以上であり、通常2mol以下、好ましくは1.8mol以下、より好ましくは1.5mol以下である。上記範囲内であると、高分子化合物を収率良く製造し易くなる。
【0055】
重合工程1及び重合工程2の操作手順、反応条件等は特に限定されず、公知の方法や条件を適宜採用することができるが、窒素ガス等の不活性ガスを充填した反応器に、式(D)で表されるメタロセン錯体、アルコキシアレーン類及び/又はピリジン類、ジエン類、溶媒等を投入し、所定の反応温度に加熱する方法が挙げられる。
溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
反応温度は、通常25℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上であり、通常150℃以下、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下である。
反応時間は、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間以上であり、通常100時間以下、好ましくは90時間以下、より好ましくは80時間以下である。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0057】
<
1H−NMR測定>
実施例で得られた高分子化合物の
1H−NMR測定は、日本電子社製「ECX400P型」核磁気共鳴装置を用い、下記条件で行った。
積算回数:16回
繰り返し時間:3.3sec
溶媒:1,1,2,2−テトラクロロエタン−d
2
試料濃度:25g/L
測定温度:25−120℃
【0058】
<
13C−NMR測定>
実施例で得られた高分子化合物の
13C−NMR測定も、日本電子社製「ECX400P型」核磁気共鳴装置を用い、下記条件で行った。
積算回数:200−1000回
パルス繰り返し時間:5.5秒
溶媒:1,1,2,2−テトラクロロエタン−d
2
試料濃度:25g/L
測定温度:25−120℃
【0059】
<分子量測定>
実施例で得られた高分子化合物の分子量測定は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC、東ソーHLC−8221GPCHT,Column GMHHR−H HT×3)を用い、下記条件で行った。
溶離液:1,2−ジクロロベンゼン
カラム温度:145℃
標準物質:標準ポリスチレン
【0060】
<融点(T
m)とガラス転移点(T
g)の測定>
実施例で得られた高分子化合物の融点(T
m)とガラス転移点(T
g)は、セイコー電子社製示差走査熱量測定(DSC)DSC220を用い、下記条件で行った。
窒素雰囲気下(10mL/min)、約5−10mgの試料を300℃まで昇温し、3分間300℃で保持した後、10℃/分で−100℃まで冷却した。次いで−100℃で3分間保持した後、10℃/分で300℃まで昇温させた。この2度目の昇温時のチャートからガラス転移点(T
g)や結晶溶融ピークの頂点の温度で決定される融点(T
m)および融解熱量(ΔH)を算出した。
【0061】
<試薬の準備>
・2,5−ノルボルナジエン:関東化学株式会社から購入。
・1,4−ジビニルベンゼン:ウィティッヒ試薬を用いてテレフタルアルデヒドから調製。
・4,4’−ジメトキシビフェニル:ウィティッヒ試薬を用いて4,4’−ビフェニルジカルボキシアルデヒドから調製。
・1,4−ジメトキシベンゼン:東京化成工業株式会社から購入。
・4,4’−ジメトキシビフェニル:東京化成工業株式会社から購入。
・[Ph
3C][B(C
6F
5)
4]:Strem Chemical Inc.から購入。
・(C
5Me
5)Y(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2,(C
5Me
5)Sc(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2:Chem.Commun.,2007,4137;Organometallics 30,2513,(2011)に基づき調製。
・4−アリルアニソール:関東化学株式会社から購入。
・3−アリルアニソール:J. Org. Chem., 2004, 69, 2859に基づき調製。
・4−p−アニシルブテン:J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 7831に基づき調製。
・5−p−アニシルペンテン:Angew. Chem., Int. Ed. 2015, 54, 5451に基づき調製。
【0062】
[実施例1:1,4−ジメトキシベンゼンと1,4−ジビニルベンゼンの共重合]
【化41】
(1)窒素ガスで満たされたグローブボックス内で、(C
5Me
5)Y(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2(12.3mg,0.025mmol)のトルエン溶液(トルエン:1mL)を含んだシュレンク管に、撹拌しながら[Ph
3C][B(C
6F
5)
4](23.0mg,0.025mmol)のトルエン溶液(トルエン:2mL)を加えた。
(2)5分後、1,4−ジメトキシベンゼン(0.069g,0.5mmol)を加えた。
(3)さらに5分間撹拌した後、1,4−ジビニルベンゼン(0.065g,0.5mmol)を加えた。
(4)密閉したシュレンク管をグローブボックスから取り出し、70℃に加熱して24時間撹拌した。
(5)室温に戻した後、メタノールを添加して、重合反応をクエンチした。
(6)重合生成物をろ別し、メタノールで洗浄して、60℃下で真空乾燥させて高分子化合物を得た(0.110g,収率82.0%)。
【0063】
得られた高分子化合物の
1H−NMR、
13C−NMR、平均分子量、ガラス転移点(T
g)の測定結果を下記に示す。
1H−NMR:d=3.00(s,8H),3.83(s,6H),6.73(s,2H),7.22(s,4H)
13C−NMR:d=32.10,36.01,56.56,114.08,128.27,128.34,128.37,151.84.
M
n=1.2kgmol
−1,M
w/M
n=1.82
T
g=31.6℃
【0064】
[実施例2:1,4−ジメトキシベンゼンと4,4’−ジビニルビフェニルの共重合]
【化42】
(1)窒素ガスで満たされたグローブボックス内で、(C
5Me
5)Y(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2(12.3mg,0.025mmol)のトルエン溶液(トルエン:1mL)を含んだシュレンク管に、撹拌しながら[Ph
3C][B(C
6F
5)
4](23.0mg,0.025mmol)のトルエン溶液(トルエン:2mL)を加えた。
(2)5分後、1,4−ジメトキシベンゼン(0.069g,0.5mmol)を加えた。
(3)さらに5分間撹拌した後、4,4’−ジビニルビフェニル(0.103g,0.5mmol)を加えた。
(4)密閉したシュレンク管をグローブボックスから取り出し、70℃に加熱して24時間撹拌した。
(5)室温に戻した後、メタノールを添加して、重合反応をクエンチした。
(6)重合生成物をろ別し、メタノールで洗浄して、60℃下で真空乾燥させて高分子化合物を得た(0.055g,収率31.9%)。
【0065】
得られた高分子化合物の
1H−NMR、
13C−NMR、平均分子量、ガラス転移点(T
g)の測定結果を下記に示す。
1H−NMR:d=3.05(s,8H),3.82(s,6H),6.72(s,2H),7.33(d,J=7.5Hz,4H),7.58(d,J=7.5Hz,4H).
13C−NMR:d=31.96,36.13,56.61,114.19,126.
77,128.89,128.97,129.09,138.79,141.38,151
.92.
M
n=0.79kgmol
−1,M
w/M
n=1.86
T
g=69.0℃
【0066】
[実施例3:1,4−ジメトキシベンゼンと2,5−ノルボルナジエンの共重合]
【化43】
(1)窒素ガスで満たされたグローブボックス内で、(C
5Me
5)Sc(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2(11.2mg,0.025mmol)のトルエン溶液(トルエン:1mL)を含んだシュレンク管に、撹拌しながら[Ph
3C][B(C
6F
5)
4](23.0mg,0.025mmol)のトルエン溶液(トルエン:2mL)を加えた。
(2)5分後、1,4−ジメトキシベンゼン(0.138g,1.0mmol)を加えた。
(3)さらに5分間撹拌した後、2,5−ノルボルナジエン(0.092g,1.0mmol)を加えた。
(4)密閉したシュレンク管をグローブボックスから取り出し、70℃に加熱して24時間撹拌した。
(5)室温に戻した後、メタノールを添加して、重合反応をクエンチした。
(6)重合生成物をろ別し、メタノールで洗浄して、60℃下で真空乾燥させて高分子化合物を得た(0.229g,収率99%)。
【0067】
得られた高分子化合物の
1H−NMR、
13C−NMR、平均分子量、融点(T
m)の測定結果を下記に示す。
1H−NMR:d=1.5−2.0(m,9H),2.16(br s,2H),2.34(br s,2H),2.72(br s,4H),3.47(br s,2H),3.61(br s,2H),3.95(br s,6H),4.02(br s,6H),6.90−7.14(m,4H).
13C−NMR:d=34.50,35.07,37.63,38.17,40.01,40.40,41.64,42.44,47.77,56.07,109.44,109.84,133.06,133.16,133.36,133.46,151.34,151.41,151.46.
M
n=13.1kgmol
−1,M
w/M
n=2.46
T
m=231.6℃
【0068】
[実施例4:4,4’−ジメトキシビフェニルと2,5−ノルボルナジエンの共重合]
【化44】
(1)窒素ガスで満たされたグローブボックス内で、(C
5Me
5)Sc(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2(11.2mg,0.025mmol)のトルエン溶液(トルエン:1mL)を含んだシュレンク管に、撹拌しながら[Ph
3C][B(C
6F
5)
4](23.0mg,0.025mmol)のトルエン溶液(トルエン:2mL)を加えた。
(2)5分後、4,4’−ジメトキシビフェニル(0.214g,1.0mmol)を加えた。
(3)さらに5分間撹拌した後、2,5−ノルボルナジエン(0.092g,1.0mmol)を加えた。
(4)密閉したシュレンク管をグローブボックスから取り出し、70℃に加熱して24時間撹拌した。
(5)室温に戻した後、メタノールを添加して、重合反応をクエンチした。
(6)重合生成物をろ別し、メタノールで洗浄して、60℃下で真空乾燥させて高分子化合物を得た(0.303g,収率99%)。
【0069】
得られた高分子化合物の
1H−NMR、
13C−NMR、平均分子量、ガラス転移点(T
g)の測定結果を下記に示す。
1H−NMR:d=1.2−1.9(m,10H),2.03(br s,2H),2.15(br s,2H),2.66(br s,3H),3.47(br s,2H),3.26(br s,2H),3.36(br s,2H),3.95(br s,12H),6.97(br s,4H),7.24−7.69(m,8H).
13C−NMR:d=34.28,34.67,37.48,37.92,39.34,40.34,41.44,41.50,41.84,55.50,55.68,110.52,114.18,124.49,124.78,128.40,133.44,135.66,135.89、135.96,156.51,156.66,158.41.
M
n=0.80kgmol
−1,M
w/M
n=2.01
T
g=157.8℃
【0070】
[実施例5:2,6−ルチジンと2,5−ノルボルナジエンの共重合]
【化45】
(1)窒素ガスで満たされたグローブボックス内で、(C
5H
5)Y(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2(8.4mg,0.02mmol)のトルエン溶液(トルエン:1mL)を含んだシュレンク管に、撹拌しながら[Ph
3C][B(C
6F
5)
4](18.6mg,0.02mmol)のトルエン溶液(トルエン:2mL)を加えた。
(2)5分後、2,6−ルチジン(0.054g,0.5mmol)を加えた。
(3)さらに5分間撹拌した後、2,5−ノルボルナジエン(0.046g,0.5mmol)を加えた。
(4)密閉したシュレンク管をグローブボックスから取り出し、70℃に加熱して72時間撹拌した。
(5)室温に戻した後、メタノールを添加して、重合反応をクエンチした。
(6)重合生成物をろ別し、メタノールで洗浄して、60℃下で真空乾燥させて高分子化合物を得た(0.066g,収率66.3%)。
【0071】
得られた高分子化合物の
1H−NMR、
13C−NMR、平均分子量、ガラス転移点(T
g)の測定結果を下記に示す。
1H−NMR:d=1.2−1.5(m,5H),1.75−2.01(m,4H),2.24(br s,1H),2.38−2.71(m,4H),6.89(s,2H),7.43(s,1H).
13C−NMR:d=31.19,32.46,32.62,36.79,36.95,37.17,37.41,38.00,39.76,40.67,41.38,41.68,42.80,44.70,45.00,45.21,120.16,128.42,129.24,136.12,160.72.
M
n=20.3kgmol
−1,M
w/M
n=1.70
T
g=35.3℃
【0072】
[実施例6:4−アリルアニソールの重合]
【化46】
(1)窒素ガスで満たされたグローブボックス内で、(C
5Me
5)Sc(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2(9.0mg,0.02mmol)のトルエン溶液(トルエン:1mL)を含んだシュレンク管に、撹拌しながら[Ph
3C][B(C
6F
5)
4](18.4mg,0.02mmol)のトルエン溶液(トルエン:2mL)を加えた。
(2)5分後、4−アリルアニソール(0.148g,1.0mmol)を加え、さらに5分間撹拌した。
(3)密閉したシュレンク管をグローブボックスから取り出し、80℃に加熱して72時間撹拌した。
(4)室温に戻した後、メタノールを添加して、重合反応をクエンチした。
(5)重合生成物をろ別し、メタノールで洗浄して、60℃下で真空乾燥させて高分子化合物を得た(0.131g,収率89.0%)。
【0073】
得られた高分子化合物の
1H−NMR、
13C−NMR、平均分子量、ガラス転移点(T
g)の測定結果を下記に示す。
1H−NMR:d=1.20(br s,3H),2.63(br s,1H),2.90(br s,1H),3.41(br s,1H),3.78(br s,3H),6.76(d,
3J=7.8Hz,1H),6.96(d,
3J=7.8Hz,1H),7.08(br s,1H).
13C−NMR:d=19.65,34.37,43.07,55.65,110.35,127.20,127.86,133.58,135.05,155.14.
M
n=2.0kgmol
−1,M
w/M
n=1.30
T
g=45℃
【0074】
[実施例7:3−アリルアニソールの重合]
【化47】
(1)窒素ガスで満たされたグローブボックス内で、(C
5Me
5)Sc(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2(9.0mg,0.02mmol)のトルエン溶液(トルエン:1mL)を含んだシュレンク管に、撹拌しながら[Ph
3C][B(C
6F
5)
4](18.4mg,0.02mmol)のトルエン溶液(トルエン:2mL)を加えた。
(2)5分後、3−アリルアニソール(0.148g,1.0mmol)を加え、さらに5分間撹拌した。
(3)密閉したシュレンク管をグローブボックスから取り出し、80℃に加熱して72時間撹拌した。
(4)室温に戻した後、メタノールを添加して、重合反応をクエンチした。
(5)重合生成物をろ別し、メタノールで洗浄して、60℃下で真空乾燥させて高分子化合物を得た(0.031g,収率20.0%)。
【0075】
得られた高分子化合物の
1H−NMR、平均分子量、ガラス転移点(T
g)の測定結果を下記に示す。
1H−NMR:d=1.10−1.22(m,3H),2.52−2.60(m,1H),2.80−2.99(m,1H),3.31−3.49(m,1H),3.60−3.78(m,3H),6.56(s,1H),6.66−6.78(m,1H),7.00−7.11(m,1H).
M
n=1.1kgmol
−1,M
w/M
n=1.32
【0076】
[実施例8:4−p−アニシルブテンの重合]
【化48】
(1)窒素ガスで満たされたグローブボックス内で、(C
5Me
5)Sc(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2(9.0mg,0.02mmol)のトルエン溶液(トルエン:1mL)を含んだシュレンク管に、撹拌しながら[Ph
3C][B(C
6F
5)
4](18.4mg,0.02mmol)のトルエン溶液(トルエン:2mL)を加えた。
(2)5分後、4−p−アニシルブテン(0.162g,1.0mmol)を加え、さらに5分間撹拌した。
(3)密閉したシュレンク管をグローブボックスから取り出し、80℃に加熱して72時間撹拌した。
(4)室温に戻した後、メタノールを添加して、重合反応をクエンチした。
(5)重合生成物をろ別し、メタノールで洗浄して、60℃下で真空乾燥させて高分子化合物を得た(0.151g,収率93.0%)。
【0077】
得られた高分子化合物の
1H−NMR、
13C−NMR、平均分子量、ガラス転移点(T
g)の測定結果を下記に示す。
1H−NMR:d=1.31(br s,3H),1.89(br s,1H),2.02(br s,1H),2.54(br s,1H),2.61(br s,1H),3.28(br s,1H),3.83(br s,3H),6.82(br s,1H),7.01(br s,1H),7.07(br s,1H).
13C−NMR:d=18.68,29.64,31.11,36.76,53.14,108.10,123.76,124.64,132.58,132.97,152.74.
M
n=2.8kgmol
−1,M
w/M
n=1.59
T
g=31℃
【0078】
[実施例9:5−p−アニシルペンテンの重合]
【化49】
(1)窒素ガスで満たされたグローブボックス内で、(C
5Me
5)Sc(CH
2C
6H
4NMe
2−o)
2(9.0mg,0.02mmol)のトルエン溶液(トルエン:1mL)を含んだシュレンク管に、撹拌しながら[Ph
3C][B(C
6F
5)
4](18.4mg,0.02mmol)のトルエン溶液(トルエン:2mL)を加えた。
(2)5分後、5−p−アニシルペンテン(0.176g,1.0mmol)を加え、さらに5分間撹拌した。
(3)密閉したシュレンク管をグローブボックスから取り出し、80℃に加熱して72時間撹拌した。
(4)室温に戻した後、メタノールを添加して、重合反応をクエンチした。
(5)重合生成物をろ別し、メタノールで洗浄して、60℃下で真空乾燥させて高分子化合物を得た(0.165g,収率94.0%)。
【0079】
得られた高分子化合物の
1H−NMR、
13C−NMR、平均分子量の測定結果を下記に示す。
1H−NMR:d=1.19(br s,3H),1.40−1.70(m,4H),2.45−2.60(m,2H),3.15−3.25(m,1H),3.78(br s,3H),6.74(d,
3J=8.2Hz,1H),6.88−7.00(m,2H).
13C−NMR:d=18.65,27.48,29.27,32.99,34.54,53.18,108.03,123.61,124.58,132.49,133.28,152.66.
M
n=2.0kgmol
−1,M
w/M
n=1.78